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特許7429293シミュレーション装置およびシミュレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】シミュレーション装置およびシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/00 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022536017
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2020027368
(87)【国際公開番号】W WO2022013941
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲頼▼木 稔
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131143(WO,A1)
【文献】特開2007-150340(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168590(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を基板に装着する部品装着工程を実施する部品装着機に交換可能に装備される機器の形状データを記憶したデータベースと、
前記部品装着工程の実施方法を記述した工程プログラムに含まれる構成情報であって、前記部品装着工程で前記部品装着機に装備する前記機器を定めた前記構成情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記構成情報が定めている前記機器の前記形状データを前記データベースから取得する取得部と、
取得された前記形状データに基づいて、前記部品装着工程のシミュレーションに用いる仮想的な前記部品装着機の内部機器構成を構築し、前記機器の相互間の干渉の有無を検査する構築部と、を備え
前記干渉の有無の検査結果が良好でない場合に、前記工程プログラムの修正を受け付け、修正された前記工程プログラムに基づいて、前記抽出部、前記取得部、および前記構築部が再び動作する、
シミュレーション装置。
【請求項2】
前記構築部は、前記取得部によって取得された前記形状データ、および前記部品装着機に固定的に装備された機器の形状データに基づいて、前記内部機器構成を構築する、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記データベースは、前記部品および前記基板の形状データを記憶しており、
前記抽出部は、前記工程プログラムに含まれる原材料情報であって、前記部品装着工程で使用する前記部品および前記基板を定めた前記原材料情報を抽出し、
前記取得部は、抽出された前記原材料情報が定めている前記部品および前記基板の前記形状データを前記データベースから取得し、
前記シミュレーション装置は、前記内部機器構成、取得された前記部品および前記基板の前記形状データ、ならびに前記工程プログラムを用いて、前記部品装着工程の前記シミュレーションを実行する実行部をさらに備える、
請求項1または2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記実行部は、前記干渉の有無の検査結果が良好である場合に、前記部品装着工程の前記シミュレーションを実行する、請求項3に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記実行部は、前記内部機器構成、取得された前記部品および前記基板の前記形状データ、前記工程プログラム、ならびに前記部品装着機に固定的に装備された機器の形状データを用いて、前記シミュレーションを実行する、請求項3または4に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記実行部は、次の1)~3)の少なくとも一項目を実施する、
1)前記部品装着工程に問題点が有るか否かの判定、
2)前記工程プログラムが適正であるか否かの判定、
3)前記部品装着工程の所要時間の試算、
請求項3~5のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記機器の前記形状データは、形状に関するデータに加えて、動作特性および性能の少なくとも一方に関するデータを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
交換可能に装備される前記機器は、前記部品を採取して前記基板に装着する部品装着具、前記部品装着具を保持して移動する装着ヘッド、前記部品装着具および前記装着ヘッドの少なくとも一方を交換可能に保持する交換装置、前記部品を供給する部品供給ユニット、複数の前記部品供給ユニットを保持する部品供給パレット、前記基板を搬送する基板搬送装置、ならびに、前記部品装着具に採取された前記部品を撮像するカメラ装置の一つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
部品を基板に装着する部品装着工程を実施する部品装着機に交換可能に装備される機器の形状データをデータベースに記憶する記憶ステップと、
前記部品装着工程の実施方法を記述した工程プログラムに含まれる構成情報であって、前記部品装着工程で前記部品装着機に装備する前記機器を定めた前記構成情報を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記構成情報が定めている前記機器の前記形状データを前記データベースから取得する取得ステップと、
取得された前記形状データに基づいて、前記部品装着工程のシミュレーションに用いる仮想的な前記部品装着機の内部機器構成を構築し、前記機器の相互間の干渉の有無を検査する構築ステップと、を備え
前記干渉の有無の検査結果が良好でない場合に、前記工程プログラムの修正を受け付け、修正された前記工程プログラムに基づいて、前記抽出ステップ、前記取得ステップ、および前記構築ステップを再び実行する、
シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品装着工程のシミュレーションに用いるシミュレーション装置、およびシミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、部品装着工程を実施する部品装着機がある。部品装着機における生産効率を高めるため、稼働を開始する以前に部品装着工程のシミュレーションを実行して、設備構成や工程の実施方法を適正化することが行われている。この種のシミュレーションに関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、電子部品実装ラインにおいて、目標タクトタイムに合致した設備構成を選択する設備構成最適化のシミュレーション方法が開示されている。この方法では、実装データおよび装置データに基づいて生産用データを作成し、この生産用データに基づき当該電子部品実装ラインにおいて当該基板の生産を行わせた場合のタクトタイムを演算し、この演算結果を目標タクトタイムと比較することにより当該設備構成の適否を判定する。これによれば、目標タクトタイムに合致した設備構成を選択することができるとされており、換言すると、電子部品実装ラインを構成する部品装着機の台数および機種を適正化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-146641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、部品装着機の台数および機種を変更してシミュレーションを繰り返すことにより、設備構成の最適化が可能となる。しかしながら、多くの部品装着機は、部品や基板の様々な種類に対応するために、複数種類の機器を交換可能に装備している。例えば、部品装着具には、大型部品用ノズル、小型部品用ノズル、および異形部品用の挟持チャックなどの種類がある。このため、部品や基板の種類に対応するように部品装着機の内部機器構成を構築することが、シミュレーションを実行する前提条件となっている。
【0006】
ここで、部品装着機に装備する機器の種類は、部品装着工程の実施方法を記述した工程プログラムに指定されている。このため、シミュレーションの準備作業で、オペレータは、工程プログラムを参照して機器の形状データを寄せ集め、シミュレーション装置にセットして内部機器構成を構築していた。この従来方法では、シミュレーションの対象となる基板の種類を変更するたびに、手作業で内部機器構成を構築しなおす必要があり、多大な手間がかかっていた。加えて、多数の形状データの管理が煩雑であるので、選択誤り等の人為的ミスのおそれがあった。
【0007】
それゆえ、本明細書では、部品装着工程のシミュレーションの準備作業の手間を軽減することができるシミュレーション装置、およびシミュレーション方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、部品を基板に装着する部品装着工程を実施する部品装着機に交換可能に装備される機器の形状データを記憶したデータベースと、前記部品装着工程の実施方法を記述した工程プログラムに含まれる構成情報であって、前記部品装着工程で前記部品装着機に装備する前記機器を定めた前記構成情報を抽出する抽出部と、抽出された前記構成情報が定めている前記機器の前記形状データを前記データベースから取得する取得部と、取得された前記形状データに基づいて、前記部品装着工程のシミュレーションに用いる仮想的な前記部品装着機の内部機器構成を構築する構築部と、を備えるシミュレーション装置を開示する。
【0009】
また、本明細書は、部品を基板に装着する部品装着工程を実施する部品装着機に交換可能に装備される機器の形状データをデータベースに記憶する記憶ステップと、前記部品装着工程の実施方法を記述した工程プログラムに含まれる構成情報であって、前記部品装着工程で前記部品装着機に装備する前記機器を定めた前記構成情報を抽出する抽出ステップと、抽出された前記構成情報が定めている前記機器の前記形状データを前記データベースから取得する取得ステップと、取得された前記形状データに基づいて、前記部品装着工程のシミュレーションに用いる仮想的な前記部品装着機の内部機器構成を構築する構築ステップと、を備えるシミュレーション方法を開示する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示するシミュレーション装置やシミュレーション方法では、工程プログラムに含まれる構成情報に基づいて、装備する機器の形状データをデータベースから自動で取得し、部品装着工程のシミュレーションに用いる仮想的な部品装着機の内部機器構成を構築する。これによれば、従来オペレータ行っていた形状データを寄せ集める準備作業の少なくとも一部が自動化される。したがって、部品装着工程のシミュレーションの準備作業の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】部品装着機の内部機器構成を説明する図である。
図2】実施形態のシミュレーション装置の機能ブロック図である。
図3】シミュレーション装置の動作を説明する動作フローの図である。
図4】シミュレーション装置の動作を図式的に説明するイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.部品装着機9の内部機器構成
まず、実施形態のシミュレーション装置1の適用対象となる部品装着機9の内部機器構成について、図1を参考にして説明する。部品装着機9は、部品Pを基板Kに装着する部品装着工程を実施する。図1の左側に部品装着機9の構成要素が示され、右側に部品装着機9を実際に構築した状態が示されている。また、図1の右上に示されるように、部品装着機9の左右方向は、基板Kを搬送するX軸方向であり、部品装着機9の前後方向は、Y軸方向となる。部品装着機9は、本体91、および交換可能に装備される複数の機器で構成される。
【0013】
本体91は、図1の中央に示されている。本体91は、フレーム92、ヘッド駆動機構93、および図略の電源部や制御部などで構成される。フレーム92は、本体91を形成する部材であるとともに、複数の機器を取り付ける部材でもある。フレーム92の底部は概ね矩形であり、フレーム92の上部は機器の取り付けに適した形状に加工されている。ヘッド駆動機構93は、フレーム92に固定的に装備される機器である。ヘッド駆動機構93は、一対のY軸レール94、Y軸スライダ95、Y軸駆動部96、二個のヘッド取り付け座97、および図略のX軸駆動部などで構成される。
【0014】
一対のY軸レール94は、フレーム92の左右の上縁に設けられてY軸方向に延在し、相互に離隔して平行配置される。Y軸スライダ95は、X軸方向に長い部材であり、両方のY軸レール94に跨って装架される。Y軸駆動部96は、Y軸スライダ95をY軸方向に移動させる。Y軸駆動部96として、右側のY軸レール94の外側に配置されたリニアモータ機構を例示できる。なお、Y軸駆動部96として、ボールねじ送り機構やその他の機構を用いてもよい。
【0015】
二個のヘッド取り付け座97は、Y軸スライダ95に装架される。二個のヘッド取り付け座97は、X軸駆動部に駆動され、相互の干渉を避けつつX軸方向に別々に移動可能となっている。ヘッド取り付け座97は、Y軸駆動部96およびX軸駆動部の駆動にしたがって水平二方向へ移動する。ヘッド取り付け座97には、後述する装着ヘッド83やダミーヘッド84が交換可能に装備される。
【0016】
本体91に交換可能に装備される機器として、部品装着具、装着ヘッド83、ダミーヘッド84、交換装置85、部品供給ユニット、部品供給パレット87、基板搬送装置88、およびカメラ装置89がある。部品装着具は、部品Pを採取して基板Kに装着する機器である。部品装着具には、吸着ノズル81や挟持チャック82などの種類がある。さらに、吸着ノズル81には、吸着する部品Pの大きさに対応してノズル径などが相違する複数のサイズがある。部品装着具は、装着ヘッド83や交換装置85に交換可能に装備される。
【0017】
装着ヘッド83は、部品装着具を保持して移動する機器である。装着ヘッド83には、保持する部品装着具の種類や個数が相違する複数の種類がある。例えば、複数の吸着ノズル81を保持する装着ヘッド83や、一個の挟持チャック82を保持する装着ヘッド83などがある。装着ヘッド83の取り付け部は、ヘッド取り付け座97に交換可能に取り付けられる。
【0018】
ダミーヘッド84は、装着ヘッド83と同じ取り付け部をもつ。ダミーヘッド84は、部品装着工程に関与しない。一方のヘッド取り付け座97に取り付けられた装着ヘッド83だけで所定の部品装着工程の全てを実施できる場合、他方のヘッド取り付け座97にダミーヘッド84が交換可能に取り付けられる。
【0019】
交換装置85は、交換用の部品装着具を保持して装着ヘッド83に提供するとともに、不要になった部品装着具を装着ヘッド83から受け取る機器である。交換装置85には、保持する部品装着具のサイズや個数が相違する複数の種類がある。交換装置85は、フレーム92の中央付近の上部に交換可能に装備される。なお、装着ヘッド83の自動交換を行う部品装着機9において、交換装置85は、交換用の装着ヘッド83を保持してもよい。
【0020】
部品供給ユニットは、複数の部品Pを保持して供給する機器である。部品供給ユニットには、テープフィーダ86、スティックフィーダ、およびトレイ装置などの種類がある。テープフィーダ86は、複数の部品Pをそれぞれキャビティに保持したキャリアテープを用いる。スティックフィーダは、複数の部品Pを一列に保持した長筒状のスティックを用いる。トレイ装置は、複数の部品Pを格子状に保持したトレイを用いる。これらの部品供給ユニットは、部品供給パレット87に交換可能に装備される。
【0021】
部品供給パレット87は、複数の部品供給ユニットを保持する。部品供給パレット87には、部品供給ユニットの種類および個数が相違する複数の種類がある。部品供給パレット87は、保持する部品供給ユニットに合わせて、部分的に修正が加えられてもよい。図1の右側の部品装着機9において、手前側の部品供給パレット87に2個のテープフィーダ86が配列されており、実際には多数のテープフィーダ86が配列される。
【0022】
部品供給パレット87は、移動用のキャスタ871およびハンドル872が設けられて台車形状に形成されている。これにより、部品供給パレット87の交換作業が容易化される。二個の部品供給パレット87は、フレーム92の手前側および後側に交換可能に装備される。これに限定されず、一個の部品供給パレット87が、フレーム92の手前側または後側に交換可能に装備されてもよい。
【0023】
基板搬送装置88は、基板Kを搬送する機器である。標準的な基板搬送装置88は、基板Kの幅寸法の変化に対応可能な調整範囲をもつ。それでも、調整範囲を超える特に大型や小型の基板Kの搬送用に、特殊な基板搬送装置88を用いることがある。また、一般的な薄板状の基板Kでなく、三次元形状の基板相当部材の搬送用に、特殊な基板搬送装置88を用いることがある。基板搬送装置88は、フレーム92の中央付近の上部に交換可能に装備され、X軸方向に延在する。なお、部品装着機9の一部には、標準的な基板搬送装置88がフレーム92に固定的に装備された機種がある。
【0024】
カメラ装置89は、部品装着具に採取された部品Pを撮像する機器である。カメラ装置89には、視野角などの撮像条件やピクセルの大きさなどの性能が相違する複数の種類がある。さらに、部品Pから伸びたリード線を撮像する特殊なカメラ装置89を用いることがある。カメラ装置89は、フレーム92の中央付近の上部に交換可能に装備され、上向きで撮像を行う。なお、部品装着機9の一部には、標準的なカメラ装置89がフレーム92に固定的に装備された機種がある。
【0025】
図1の右側の部品装着機9において、手前側の部品供給パレット87のすぐ奥の上部に、交換装置85およびカメラ装置89が装備されている。その奥側に、基板搬送装置88が装備され、さらに奥側に二個目の部品供給パレット87が装備されている。これらの機器よりも上方に位置する二個のヘッド取り付け座97に、装着ヘッド83およびダミーヘッド84が装備されている。
【0026】
2.工程プログラム4およびデータベース5
実施形態のシミュレーション装置1は、仮想的な部品装着機9の内部機器構成を構築して、部品装着工程のシミュレーションを実行する。シミュレーション装置1は、シミュレーションを実行する以前に、工程プログラム4およびデータベース5にアクセスする。なお、データベース5は、シミュレーション装置1の一部分とみなすことができる。
【0027】
工程プログラム4は、部品装着機9における部品装着工程の実施方法を記述したものである。工程プログラム4は、別の名称、例えば加工プログラムや生産プログラム、生産用データ(特許文献1)、ジョブデータ、生産レシピ等と呼称される場合もある。工程プログラム4は、基板Kの生産を開始する以前に、基板Kの種類ごとに作成される。部品装着機9における実際の部品装着工程は、工程プログラム4にしたがって進められる。図2に示されるように、工程プログラム4は、構成情報41および原材料情報42を含む。
【0028】
構成情報41は、部品装着工程で部品装着機9に装備する機器を定めている。構成情報41は、例えば、機器の種別や個体を特定可能な識別コードを用いて表される。構成情報41は、さらに、一部の機器の配置を定めている。具体的に、部品供給パレット87に配列される複数のテープフィーダ86の配列順序は、構成情報41に定められている。換言すると、供給する部品Pの種類の配列順序が、工程プログラム4に定められている。また、交換装置85に配列される複数の部品装着具の配列位置は、複数のテープフィーダ86の配列順序と同様、構成情報41に定められている。
【0029】
原材料情報42は、部品装着工程で使用する部品Pの種類、および基板Kの種類を定めている。原材料情報42は、例えば、部品Pや基板Kの種類を特定可能な識別コードを用いて表される。工程プログラム4は、前記した以外に、基板Kの搬入出に関する情報や、複数の部品Pの装着順序に関する情報、部品Pの種類と使用する部品装着具の対応関係の情報などを含む。
【0030】
図2に示されるように、データベース5は、部品装着機9に交換可能に装備される機器の形状データ51を記憶している。データベース5は、さらに、固定的に装備される機器の形状データ52を記憶している。形状データ(51、52)は、構成情報41との対応付けが可能なデータ形式で記述される。形状データ(51、52)は、形状に関するデータに加えて、動作特性および性能の少なくとも一方に関するデータを含む。
【0031】
例えば、複数の吸着ノズル81を保持する装着ヘッド83の形状データ51は、装着ヘッド83自身の形状に関するデータに加えて、吸着ノズル81を保持した保持状態のデータを含む。さらに、装着ヘッド83の形状データ51は、吸着ノズル81が部品Pの吸着や装着を行うときの下降位置のデータや、吸着ノズル81の昇降速度のデータや、部品Pの吸着動作や装着動作の所要時間のデータや、各種の誤差補正の実施方法および所要時間のデータを含む。
【0032】
また、ヘッド駆動機構93の形状データ52は、ヘッド駆動機構93自身の形状に関するデータに加えて、装着ヘッド83が装備された装備状態のデータを含む。さらに、ヘッド駆動機構93の形状データ52は、装着ヘッド83の移動可能領域のデータや、装着ヘッド83の移動速度パターンのデータや、位置制御の誤差補正の実施方法および所要時間のデータを含む。
【0033】
さらに、フレーム92については、固定的に装備された機器の一種類と見なされて、形状データ52が作成される。フレーム92の形状データ52は、フレーム92の形状および寸法諸元のデータに加えて、機器の取り付け位置のデータを含む。フレーム92およびヘッド駆動機構93の形状データ52は、本体91の形状データ52と言い換えることができる。本体91の形状データ52は、部品装着機9の機種ごとに作成されてデータベース5に記憶される。
【0034】
データベース5は、さらに、部品Pおよび基板Kの形状データ53を記憶している。形状データ53は、原材料情報42との対応付けが可能なデータ形式で記述される。部品Pの形状データ53は、部品Pの外観形状、寸法諸元、電極の配置、および外観色などのデータを含む。部品Pの形状データ53は、部品装着具による採取動作および装着動作や、カメラ装置89による撮像動作および画像処理などに使用される。
【0035】
基板Kの形状データ53は、基板の外観形状、寸法諸元、位置基準マークの配置、および回路パターン上のランドの配置などのデータを含む。ランドの配置により、部品Pの装着位置が定まる。基板Kの形状データ53は、基板搬送装置88による搬送動作や、部品装着具による部品Pの装着動作などに使用される。
【0036】
データベース5は、稼働する部品装着機9の機種、装備される機器、使用される部品Pおよび基板Kを対象として、予め作成される。データベース5は、シミュレーション装置1以外の装置、例えば、工程プログラム4を自動生成する装置からのアクセスが可能となっている。つまり、データベース5は、複数の装置で共用される。
【0037】
3.シミュレーション装置1の構成
次に、実施形態のシミュレーション装置1の構成について、図2のブロック図を参考にして説明する。シミュレーション装置1は、入力部11や表示部12をもつコンピュータ装置を用いて構成される。シミュレーション装置1は、ソフトウェアで実現された四つの機能部、すなわち抽出部21、取得部22、構築部23、および実行部24を備える。
【0038】
抽出部21は、工程プログラム4から構成情報41を抽出し、さらに、原材料情報42を抽出する。取得部22は、抽出された構成情報41が定めている機器の形状データ51をデータベース5から取得する。取得部22は、さらに、抽出された原材料情報42が定めている部品Pおよび基板Kの形状データ53をデータベース5から取得する。
【0039】
構築部23は、取得された機器の形状データ51に基づいて、部品装着工程のシミュレーションに用いる仮想的な部品装着機9の内部機器構成を構築する。詳細には、構築部23は、交換可能に装備される機器の形状データ51、および部品装着機9に固定的に装備された機器の形状データ52に基づいて、内部機器構成を構築する。なお、固定的に装備された機器の形状データ52は、本体91の形状データ52と同じ意味である。
【0040】
構築部23は、さらに、構築した内部機器構成の中で機器の相互間の干渉の有無を検査する。例えば、フレーム92に対して基板搬送装置88が重なることなく、かつ隙間なく取り付けられるか否かを検査する。また、構築部23は、装着ヘッド83に対して部品装着具が干渉することなく適正な姿勢で保持されるか否かを検査する。
【0041】
仮に工程プログラム4に誤りがあって、装着ヘッド83の種類に適合しない過大な部品装着具が定められていると干渉が生じ、装着ヘッド83は部品装着具を保持できないことになる。また、装着ヘッド83の種類に適合しない過小な部品装着具が定められていると、装着ヘッド83に保持された部品装着具が揺れ動き、あるいは脱落することになる。構築部23は、干渉の不具合に限らず、構成上の不具合を検出して表示部12に表示し、オペレータに通知する。
【0042】
実行部24は、構築された内部機器構成、取得された部品Pおよび基板Kの形状データ53、ならびに工程プログラム4を用いて、部品装着工程のシミュレーションを実行する。詳細には、実行部24は、固定的に装備された機器の形状データ52を併せて用い、シミュレーションを実行する。
【0043】
実行部24は、さらに、シミュレーションの中で次の1)~3)の少なくとも一項目を実施する、
1)部品装着工程に問題点が有るか否かの判定
2)工程プログラムが適正であるか否かの判定
3)部品装着工程の所要時間の試算
【0044】
上記の1)で、例えば、装着済みの部品が次以降の部品の装着動作を行う部品装着具に干渉する問題点が有るか否かを判定することができる。つまり、部品装着工程を実際に行うことができるか否かを事前に判定することができる。また、問題点がない場合でも、上記の2)で、動作しない機器(例えば使われない部品装着具)の有無の調査や、動作効率の評価などを行って、工程プログラムが適正であるか否かを判定することができる。換言すると、工程プログラムをデバッグして、適正度を評価することができる。さらに、上記の3)により、実際に生産を行うときのスケジュールに目途をつけることができる。実行部24は、シミュレーションの実行結果を表示部12に表示する。
【0045】
4.シミュレーション装置1の動作
次に、シミュレーション装置1の動作について、図3の動作フローおよび図4のイメージ図を参考にして説明する。図3のステップS1で、オペレータは、機器の形状データ(51、52)、ならびに部品Pおよび基板Kの形状データ53をデータベース5に記憶させる。この操作は、シミュレーション装置1の入力部11から行われてもよく、データ転送などの他の方法が用いられてもよい。
【0046】
次のステップS2で、オペレータは、適用対象となる部品装着機9の機種を入力部11から指定する。これにより、シミュレーション装置1は、部品装着機9の機種を認識することができる。次のステップS3で、シミュレーション装置1は、当該機種の本体91(フレーム92およびヘッド駆動機構93)の形状データ52をデータベース5から取得して、本体91の立体イメージを作成する。この立体イメージは、仮想空間内に仮想的に作成されるイメージである。
【0047】
次のステップS4で、オペレータは、シミュレーションの対象とする工程プログラム4を入力部11から指定する。これにより、シミュレーション装置1は、指定された工程プログラム4にアクセスすることができる。次のステップS5で、シミュレーション装置1の抽出部21は、工程プログラム4から構成情報41を抽出する。構成情報41は、図4に示されるように、工程プログラム4内で三分割されて記述されている。
【0048】
すなわち、第一構成情報411は、装備される装着ヘッド83、ダミーヘッド84、交換装置85、部品供給パレット87、基板搬送装置88、およびカメラ装置89を定めている。第二構成情報412は、装備される部品装着具を定めている。第三構成情報413は、装備される部品供給ユニットを定めている。構成情報41の三分割に整合するように、形状データ51は、第一形状データ511、第二形状データ512、および第三形状データ513に分割された状態でデータベース5に記憶される。
【0049】
次のステップS6で、取得部22は、抽出された構成情報41(411~413)が定めている機器の形状データ51(511~513)をデータベース5から取得する。次のステップS7で、構築部23は、取得された形状データ51(511~513)に基づいて、各機器の立体イメージを作成する。
【0050】
さらに、構築部23は、ステップS3で作成した本体91の立体イメージに各機器の立体イメージを仮想的に取り付けてゆく。これにより、構築部23は、仮想的な部品装着機9の内部機器構成を構築することができる。図4の右側に示された部品装着機9は、仮想空間内のイメージであるが、図1に示された実際の部品装着機9と同一形状になる。
【0051】
次のステップS8で、構築部23は、機器の相互間の干渉の有無を検査して、動作フローの分岐先を決定する。検査結果が良好でない場合のステップS9で、オペレータは、工程プログラム4を修正する。この後、動作フローの実行は、ステップS5に戻される。検査結果が良好である場合、動作フローの実行は、ステップS10に進められる。
【0052】
ステップS10で、抽出部21は、図4に示されるように、工程プログラム4から原材料情報42を抽出する。原材料情報42は、工程プログラム4内において、使用する部品Pを定めた部品情報421、および使用する基板Kを定めた基板情報422に二分割されて記述されている。原材料情報42の二分割に整合するように、形状データ53は、部品形状データ531および基板形状データ532に分割された状態でデータベース5に記憶される。
【0053】
次のステップS11で、取得部22は、抽出された原材料情報42(421、422)が定めている形状データ53(531、532)をデータベース5から取得する。次のステップS12で、実行部24は、部品装着工程のシミュレーションを実行する。つまり、実行部24は、基板搬送装置88による基板Kの搬送、部品供給ユニットによる部品Pの供給、装着ヘッド83および部品装着具による部品の採取および装着、部品装着具の交換、およびカメラ装置89による撮像などの動作を、仮想空間内の立体イメージを用いてシミュレーションする。
【0054】
次のステップS13で、実行部24は、シミュレーションの実行結果を表示部12に表示する。実行結果が良好である場合、オペレータは、動作フローを終了させる。実行結果が良好でない場合、オペレータは、工程プログラム4を修正して、ステップS5以降の動作フローを再度実行させてもよい。あるいは、オペレータは、ステップS2で部品装着機9の機種を変更指定して、以降の動作フローを再度実行させてもよい。
【0055】
なお、ステップS1は、部品装着機9に交換可能に装備される機器の形状データ51をデータベース5に記憶する記憶ステップに相当する。ステップS5は、工程プログラム4に含まれて部品装着機9に装備する機器を定めた構成情報41を抽出する抽出ステップに相当する。ステップS6は、構成情報41が定めている機器の形状データ51をデータベース5から取得する取得ステップに相当する。ステップS7は、形状データ51に基づいて、部品装着工程のシミュレーションに用いる仮想的な部品装着機9の内部機器構成を構築する構築ステップに相当する。つまり、図4の動作フローは、実施形態のシミュレーション方法を示している。
【0056】
実施形態のシミュレーション装置1やシミュレーション方法によれば、従来オペレータが行っていた形状データ51を寄せ集める準備作業の少なくとも一部が自動化される。したがって、部品装着工程のシミュレーションの準備作業の手間を軽減することができる。加えて、シミュレーション装置1は、データベース5を用いて多数の形状データ51の管理を行い、構成情報41に基づいて形状データ51を自動的に取得するように構成されているので、選択誤り等の人為的ミスのおそれが解消される。
【0057】
5.実施形態の応用および変形
なお、基板搬送装置88およびカメラ装置89がフレーム92に固定的に装備された部品装着機9において、基板搬送装置88およびカメラ装置89の形状データは、本体91の形状データ52として扱われる。また、動作フローで説明したオペレータの操作の一部は、デフォルト値を設定しておく方法などにより、自動化することができる。さらに、実施形態のシミュレーション装置1は、工程プログラム4の自動生成や自動適正化処理を実行する装置と複合一体化することが可能である。その他にも、実施形態は、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1:シミュレーション装置 21:抽出部 22:取得部 23:構築部 24:実行部 4:工程プログラム 41:構成情報 42:原材料情報 5:データベース 51:形状データ 52:形状データ 53:形状データ 81:吸着ノズル 82:挟持チャック 83:装着ヘッド 84:ダミーヘッド 85:交換装置 86:テープフィーダ 87:部品供給パレット 88:基板搬送装置 89:カメラ装置 9:部品装着機 91:本体 92:フレーム 93:ヘッド駆動機構
図1
図2
図3
図4