(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】供給方法決定装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/087 20230101AFI20240131BHJP
【FI】
G06Q10/087
(21)【出願番号】P 2022565297
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2021042558
(87)【国際公開番号】W WO2022113894
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2020194749
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 皓介
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 史十
【審査官】星野 昌幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071502(JP,A)
【文献】特開2015-225351(JP,A)
【文献】特開2002-366220(JP,A)
【文献】特開2017-182448(JP,A)
【文献】特開2015-30578(JP,A)
【文献】国際公開第2014/128845(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 ~ 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を製造するサプライヤにより製造された製品を在庫として所有する倉庫および販売代理店からなる複数の拠点の中から前記製品を発注した発注拠点に製品を供給する供給拠点と、該供給拠点から前記発注拠点に前記製品を供給する供給手段とを決定する供給方法決定装置であって、
前記複数の拠点における前記製品の在庫状況を示す在庫情報と、前記複数の拠点のうちいずれの拠点が情報通信ネットワークを介して取得するデータに基づいて前記製品を製造可能な3Dプリンタを備えているかを示す製造装置情報と、を記憶し、
該記憶された前記在庫情報と前記製造装置情報とを用いて、前記複数の拠点のうち前記製品の在庫がある拠点を前記供給拠点として該供給拠点から前記発注拠点に所定数の前記製品を輸送した場合のコストおよびリードタイムと、前記複数の拠点のうち前記3Dプリンタを備えた拠点を前記供給拠点として、該供給拠点で前記3Dプリンタによって所定数の前記製品を製造して前記発注拠点に輸送した場合のコストおよびリードタイムとをそれぞれ演算し、
該演算したコストおよびリードタイムに基づいて前記複数の拠点の中から供給拠点および、該供給拠点からの製品の輸送方法または該供給拠点での製品の製造による供給手段を決定することを特徴とする供給方法決定装置。
【請求項3】
前記コストおよびリードタイムについてそれぞれ重視する度合いを示す重みを記憶しており、
前記重みを用いて前記コストおよびリードタイムに対してそれぞれ重み付けを行うことを特徴とする請求項2に記載の供給方法決定装置。
【請求項4】
製造コストと、輸送コストと、供給後在庫管理コストと、製造リードタイムと、輸送リードタイムと、の情報を供給拠点および供給手段ごとに記憶しており、
前記製造コストと、前記輸送コストと、前記供給後在庫管理コストと、前記製造リードタイムと、前記輸送リードタイムと、をそれぞれ点数に換算し、各点数に前記重みを乗算して重み付けを行うことを特徴とする請求項3に記載の供給方法決定装置。
【請求項7】
情報通信ネットワークにより接続される、複数のユーザ端末と、サーバに設けられた供給方法決定装置とから構成され、前記複数のユーザ端末が製品を製造するサプライヤにより製造された製品を在庫として所有する倉庫および販売代理店からなる複数の拠点にそれぞれ設けられ、前記供給方法決定装置が前記複数の拠点の中から前記製品を発注した発注拠点に製品を供給する供給拠点と、該供給拠点から前記発注拠点に前記製品を供給する供給方法とを決定する処理を行う供給方法決定システムであって、
前記供給方法決定装置は、
前記複数の拠点における前記製品の在庫状況を示す在庫情報と、前記複数の拠点のうちいずれの拠点が情報通信ネットワークを介して取得するデータに基づいて前記製品を製造可能な3Dプリンタを備えているかを示す製造装置情報と、を記憶し、
該記憶された前記在庫情報と前記製造装置情報とを用いて、前記複数の拠点のうち前記製品の在庫がある拠点を前記供給拠点として該供給拠点から前記発注拠点に所定数の前記製品を輸送した場合のコストおよびリードタイムと、前記複数の拠点のうち前記3Dプリンタを備えた拠点を前記供給拠点として該供給拠点で前記3Dプリンタによって所定数の前記製品を製造して前記発注拠点に輸送した場合のコストおよびリードタイムとをそれぞれ演算し、
該演算したコストおよびリードタイムに基づいて前記複数の拠点の中から供給拠点および、該供給拠点からの製品の輸送方法または該供給拠点での製品の製造による供給方法を決定し、
該決定された前記供給拠点および供給方法の情報を前記発注拠点が有する前記ユーザ端末に出力し、
前記ユーザ端末は、
前記供給方法決定装置から出力された前記供給拠点および供給方法の情報を表示することを特徴とする供給方法決定システム。
【請求項8】
前記供給拠点として決定される前記複数の拠点には、前記3Dプリンタを備えた前記発注拠点も含まれることを特徴とする請求項1に記載の供給方法決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設機械の保守部品の発注情報を取得し、最適な供給方法を決定する供給方法決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械やマイニング機械の保守部品事業では、近年のグローバル化の進展により世界の主要地域に在庫拠点を建設し、在庫拠点毎に数万品目に渡る保守部品の在庫管理を行っている。従来の保守部品の在庫管理方法として、例えば、世界各地の在庫拠点に対して、中央倉庫からのみ保守部品の在庫補充を行う単一方向のサプライチェーン構造を有するものや、各サービス拠点が保有する部品在庫を一元管理し、サービス拠点間で部品の発注および譲り受けを行うものが提案されている。特許文献1には、輸送コスト、在庫管理費、リードタイムを加味し、最適な輸送手段を決定するための技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、製品を中央倉庫から各在庫拠点に流通させ、また、在庫拠点同士の間で流通させることによって、各在庫拠点における在庫の調整を行う技術は存在していた。そして、近年の技術革新により、一部の製品については、3Dプリンタなどの製造装置によって製造することが可能となっており、これらの製造装置を活用することによって、在庫補充方法として、単なる流通だけでなく、地域倉庫や販売代理店などを含むサービス拠点での製造という新たな選択肢も増える可能性がある。かかる場合、製品の発注に対して、従来の流通とサービス拠点での製造とでリードタイム及びコストを比較して総合的に評価検討し、供給拠点および供給手段を決定する必要がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、3Dプリンタなどの製造装置の活用を視野に入れることにより、リードタイムの短縮、コストの低減、また、新規在庫を持たない方が良いか否かの判定を行うことができる供給方法決定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の供給方法決定装置は、
製品を製造するサプライヤにより製造された製品を在庫として所有する倉庫および販売代理店からなる複数の拠点の中から前記製品を発注した発注拠点に製品を供給する供給拠点と、該供給拠点から前記発注拠点に前記製品を供給する供給手段とを決定する供給方法決定装置であって、
前記複数の拠点における前記製品の在庫状況を示す在庫情報と、前記複数の拠点のうちいずれの拠点が情報通信ネットワークを介して取得するデータに基づいて前記製品を製造可能な3Dプリンタを備えているかを示す製造装置情報と、を記憶し、
該記憶された前記在庫情報と前記製造装置情報とを用いて、前記複数の拠点のうち前記製品の在庫がある拠点を前記供給拠点として該供給拠点から前記発注拠点に所定数の前記製品を輸送した場合のコストおよびリードタイムと、前記複数の拠点のうち前記3Dプリンタを備えた拠点を前記供給拠点として、該供給拠点で前記3Dプリンタによって所定数の前記製品を製造して前記発注拠点に輸送した場合のコストおよびリードタイムとをそれぞれ演算し、該演算したコストおよびリードタイムに基づいて前記複数の拠点の中から供給拠点および、該供給拠点からの製品の輸送方法または該供給拠点での製品の製造による供給手段を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、拠点における3Dプリンタなどの製造装置の活用を視野に入れることにより、リードタイムの短縮、コストの低減、また、新規在庫を持たない方が良いか否かの判定を行うことができる。本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態における供給方法決定システムが対象とするサプライチェーンの一例を示す図。
【
図2】本発明の実施形態における供給方法決定システムの構成図。
【
図3】供給方法決定装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【
図4】供給方法決定装置が備える機能を示すブロック図。
【
図13】供給方法決定装置の演算部によって実行される処理の一例を説明するフローチャート。
【
図14】演算部において使用される計算シートの一例を示す図。
【
図15】発注元のサービス拠点の表示部に表示される供給方法の一例を示す図。
【
図16】発注元のサービス拠点の表示部に表示される供給方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図16を参照して、本発明の実施形態に係る供給方法決定システムについて説明する。以下に説明する実施形態では、建設機械やマイニング機械の保守部品事業のサプライチェーンにおいて、取扱製品である保守部品の在庫補充を行う際の供給方法として、供給拠点および供給手段を決定するシステムを例に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態における供給方法決定システムが対象とするサプライチェーンの一例を示す図である。サプライチェーンは、サプライヤ101と、中央倉庫(CDP)102と、複数の地域倉庫103と、複数の販売代理店104を含む。なお、以下の説明で、中央倉庫102と地域倉庫103をメーカと称し、また、中央倉庫102と地域倉庫103と販売代理店104をサービス拠点または拠点と称することがある。
【0011】
サプライヤ101は、例えば保守部品を製造する工場であり、メーカの自社工場や、他社の製造工場が相当する。サプライヤ101は、メーカからの注文に応じて保守部品を製造し、サービス拠点である中央倉庫102に納品する機能を有する。
【0012】
中央倉庫102は、例えば建設機械やマイニング機械の保守部品を在庫として所有する拠点であり、例えばサプライチェーンの中で大規模な在庫を有する世界中央拠点である。中央倉庫102は、サプライヤ101に所望の保守部品を注文し、サプライヤ101から所望の保守部品を購入した保守部品を在庫として所有し、地域倉庫103からの注文を受注して、サービス拠点である発注元の地域倉庫103に保守部品を供給する、いわゆる卸しとして機能する。なお、中央倉庫102の数は、1つに限定されるものではなく、複数存在してもよい。
【0013】
地域倉庫103は、中央倉庫102と同様に、建設機械やマイニング機械の保守部品を在庫として所有する拠点であるが、例えば北米、南米、ヨーロッパ、アフリカ、アジアなどの地球上の複数の主要地域に設けられた中規模な在庫を有する拠点である。地域倉庫103は、中央倉庫102や自己以外の他の地域倉庫に対して所望の保守部品を発注する機能と、中央倉庫102や自己以外の他の地域倉庫から供給された保守部品を在庫として保有する一次倉庫としての機能と、発注を受けた発注元の販売代理店104に保守部品を供給する機能とを有する。
【0014】
販売代理店104は、中央倉庫102および地域倉庫103と同様に、建設機械やマイニング機械の保守部品を在庫として所有する拠点であるが、例えば主要地域内で更に地方や国ごとに設けられた小規模な在庫を有する拠点である。販売代理店104は、地域倉庫103や他の販売代理店104から供給された保守部品を在庫として保有する二次倉庫としての機能と、顧客窓口となるサービス拠点として顧客からの注文に応じた保守部品を販売する機能とを有する。
【0015】
上記のサプライチェーンでは、中央倉庫102から地域倉庫103あるいは、地域倉庫103から販売代理店104への保守部品の輸送、および、複数の地域倉庫103の間や複数の販売代理店104の間など、複数のサービス拠点102~104の間における保守部品の輸送には、船、飛行機、鉄道、トラックなどの複数の輸送手段の中から任意のものを用いることができる。
【0016】
そして、複数のサービス拠点102~104のうちの少なくとも一つは、保守部品を製造可能な製造装置として3Dプリンタを備えている。上記のサプライチェーンでは、発注元のサービス拠点(発注拠点)は、他のサービス拠点が在庫所有する保守部品を流通により受け取るだけでなく、他のサービス拠点において3Dプリンタを用いて製造された保守部品を受け取ることができる。また、自己のサービス拠点が所望とする保守部品を製造可能な3Dプリンタを備えている場合には、自己のサービス拠点が有する3Dプリンタで製造して販売することができる。
【0017】
複数のサービス拠点102~104に設置されている3Dプリンタは、全てが同じ機種である必要はなく、製造可能な保守部品が異なるものであってもよい。3Dプリンタは、公知のものを用いることができ、例えば金属製の造形物を製造可能な粉末焼結積層造形方式のものが用いられる。保守部品を造形するために3Dプリンタで使用するデータは、インターネットなどの情報通信ネットワークを介して、センタサーバ301や複数のサービス拠点102~104からダウンロードすることができる。
【0018】
本実施形態の供給方法決定システムは、
図1のサプライチェーンにおいて、発注拠点に保守部品を供給するために必要な日数とコストを供給手段別に計算し、一覧方式で表示する。
【0019】
図2は、本実施形態の供給方法決定装置を含む供給方法決定システムの構成図である。供給方法決定システム1は、各サービス拠点102~104にそれぞれ備え付けられるユーザ端末402~404と、供給方法決定装置401を有するセンタサーバ301とが情報通信ネットワーク300にそれぞれ接続されており、情報の双方向通信が可能な構成となっている。
【0020】
各サービス拠点102~104は、中央倉庫102に備えられるユーザ端末402と、複数の地域倉庫103にそれぞれ備えられるユーザ端末403と、複数の販売代理店104にそれぞれ備えられるユーザ端末404を有している。これらのユーザ端末402~404には、中央倉庫102および複数の地域倉庫103および複数の販売代理店104においてそれぞれ決定された各サービス拠点での保守部品ごとの発注情報を入力することができる。
【0021】
供給方法決定装置401は、ユーザ端末402~404の少なくとも一つから発注情報が入力されると、その入力された発注情報に基づいて、発注拠点における在庫補充費用を保守部品および供給ルートごとに算出し、その算出結果に基づいて在庫補充時の供給方法である供給拠点と供給手段を探索する。供給方法決定装置401は、発注拠点に保守部品を補充するために必要なコストおよびリードタイムを供給方法別に計算し、出力する機能を有する。供給方法決定装置401で計算された供給方法の情報は、センタサーバ301の供給方法決定装置401から発注拠点のユーザ端末に送信される。発注拠点のユーザ端末の表示部には、複数の供給方法の情報が一覧形式で表示される。発注拠点のユーザ端末が操作されて、複数の供給方法の中からニーズに合ったものが選択されると、発注拠点のユーザ端末から、選択された供給拠点のユーザ端末に対して保守部品を発注する情報が送信される。この保守部品を発注する情報には、発注元によって選択された供給手段の情報が含まれている。保守部品を発注する情報は、センタサーバ301の供給方法決定装置401に記憶される。発注拠点のユーザ端末から発注の情報を受けた供給元のサービス拠点(供給拠点)は、自己のユーザ端末に表示される供給手段にしたがって発注拠点に保守部品の供給を行う。
【0022】
ユーザ端末402~404は、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、供給方法等の情報を表示する表示部とを備える。ユーザ端末の入力部は、例えばキーボードやタッチパネル、マウスであり、ユーザ端末の表示部は、例えば液晶ディスプレイである。ユーザは、入力部を用いて、発注情報をユーザ端末402~404に入力する。ユーザ端末の表示部には、供給方法決定装置401によって算出された結果、つまり、推奨される供給方法である供給拠点と供給手段の情報が(
図15、
図16を参照)が表示される。
【0023】
図3は、供給方法決定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
供給方法決定装置401は、発注拠点のユーザ端末から入力されたデータを記憶するデータ記憶部410と、データ記憶部410に記憶したデータに基づいて所定の演算処理を実行する演算部420と、演算部420が実行した演算の結果を前述のデータ記憶部410に記録し、かつ画面表示部440に情報を受け渡す出力部430と、前述の出力部430が出力した情報を画面表示する画面表示部440と、を備える。
【0024】
データ記憶部410は、不揮発性メモリまたは磁気ディスクである。演算部420は、CPUとROMとRAMを備える。演算部420のCPUが、ROMに保存されたプログラムをRAMに展開して実行することにより、供給方法を決定する処理が実行される。出力部430は、映像出力回路およびデータ書き込み回路を備える。ただしこれらの回路が実現する機能はソフトウエアにより代替されてもよい。
【0025】
図4に示すように演算部420は、データ記憶部410が保持するデータに基づき、供給拠点、供給手段、供給日数および供給コストを演算し、推奨される供給方法として、供給拠点および供給手段のデータを提示するデータ演算部421を備える。
【0026】
出力部430は、データ演算部421によって演算された結果である推奨される供給方法のデータを出力するデータ出力部431を備える。データ出力部431は、演算部420の計算結果を、データ記憶部410に記憶させる。さらに、データ出力部431は、データ記憶部410に記憶させた情報を、画面表示部440に出力すると共に、発注拠点および供給拠点のユーザ端末402~404に出力する。ユーザ端末402~404への情報の出力は、情報通信ネットワーク300を介して行われる。
【0027】
画面表示部440は、演算部420によって算出された供給方法の情報を供給方法決定装置401のモニター画面に表示させる処理を行う。演算部420の演算結果である供給方法には、発注拠点に対して推奨される供給拠点および供給手段の情報が含まれており、センタサーバ301においても、結果を確認することができるようになっている。
【0028】
図4は、供給方法決定装置が備える機能を示すブロック図である。
データ記憶部410は、
図4に示すように、在庫情報411と、発注情報412と、輸送情報413と、3DP製造情報414と、3DP保持拠点情報415と、部品製造情報416と、点数換算情報417と、重み情報418と、を記憶することができる。
【0029】
図5は、在庫情報411の一例を示す図である。
在庫情報411は、製品の在庫状況を示すものであり、各拠点における保守部品の在庫数を表す情報が含まれている。在庫情報411は、拠点名801、品目802、在庫数(個)803、発注残数(個)804、発注残入荷予定日805、在庫カテゴリ806、1個当たり在庫管理コスト807、在庫日数(日)808、在庫管理コスト809の各フィールドから構成される。拠点名801のフィールドには、各拠点の名称が格納され、品目802のフィールドには、当該保守部品の部品名や部品番号などの情報が格納される。在庫数803のフィールドには、拠点が在庫している当該保守部品の在庫数の情報が格納され、発注残数804のフィールドには、発注によって拠点が必要とする当該保守部品の残数の情報が格納され、発注残入荷予定日805のフィールドには、拠点が必要とする当該保守部品が入荷する予定日の情報が格納される。ただし、発注残数が0の場合は、発注残入荷予定日805のフィールドはブランクとなる。
【0030】
在庫カテゴリ806のフィールドには、当該保守部品の在庫の有無の情報が格納され、在庫なしの場合には、発注残無しと、発注残有りのいずれかの情報も合わせて格納される。そして、1個当たり在庫管理コスト807のフィールドには、1個の当該保守部品を1日保管するのに必要とされる在庫管理費用(円)の情報が格納される。そして、在庫日数(日)のフィールド808には、当該保守部品を入庫してからの経過日数の情報が格納され、在庫管理コスト809のフィールドには、在庫となっている当該保守部品を全て管理するのに必要とされるトータルコストとして、当該保守部品の在庫数と1個当たりの在庫管理コストと在庫日数とを乗算した値の情報が格納される。
【0031】
図6は、発注情報412の一例を示す図である。
発注情報412には、複数の拠点のいずれかからの保守部品の発注数を表す情報が含まれる。発注情報412は、発注拠点901、品目902、数量903、発注受付日904、および発注納期日905の各フィールドから構成される。これらの各フィールドに格納される情報は、ユーザがいずれかの拠点から保守部品の発注を行うごとに、その発注内容に基づいて設定される。発注拠点901のフィールドには、発注を行った拠点の名称や拠点名を示すコード番号の情報が格納される。品目902のフィールドには、発注対象の保守部品の品目、すなわち名称が格納される。数量903のフィールドには、発注された保守部品の数量が格納される。発注受付日904のフィールドには、発注を受け付けた受付日の情報が格納される。発注納期日905のフィールドには、当該発注で指定された保守部品の納期が格納される。
【0032】
図7は、輸送情報413の一例を示す図である。
輸送情報413には、各拠点から発注拠点に保守部品を輸送した場合に必要とされる輸送費の情報が含まれており、航空便や船便、運送などの輸送手段ごとに分けて格納されている。輸送情報413は、品目1001、供給拠点1002、発注拠点1003、供給手段1004、輸送LT1005、および輸送コスト1006の各フィールドから構成される。品目1001のフィールドには、輸送対象の保守部品の品目、すなわち各保守部品の名称が格納される。供給拠点1002のフィールドには、当該保守部品の供給元となる拠点の名称が格納される。発注拠点1003のフィールドには、当該保守部品の発注元となるサービス拠点の名称が格納される。
【0033】
供給手段1004のフィールドには、航空便、船便、3Dプリンタ(3DP)を用いた製造など、当該保守部品を供給する手段の情報が格納される。輸送LT(日)のフィールド1005には、供給手段のフィールドに格納された方法によって、供給拠点から発注拠点に、当該保守部品を輸送する場合のリードタイム、すなわち日数が格納される。輸送コスト1006のフィールドには、品目1001のフィールドに格納された品目を、供給手段1004のフィールドに格納された供給手段によって、供給拠点から発注拠点まで当該保守部品を輸送する場合のコスト(円)が格納される。
【0034】
図8は、3DP製造情報414の一例を示す図である。
3DP製造情報414は、品目1101、製造可否1102、製造LT1103、および製造コスト1104の各フィールドから構成される。品目1101のフィールドには、3Dプリンタによって製造される保守部品の品目、すなわち名称が格納される。製造可否1102のフィールドには、当該保守部品を3Dプリンタによって製造することができるか否かの情報が格納される。製造LT1103のフィールドには、当該保守部品を3Dプリンタで製造した場合の製造リードタイム、すなわち製造日数が格納される。製造コスト1104のフィールドには、当該保守部品を3Dプリンタで製造した場合のコスト(円)が格納される。3DP製造情報414は、3Dプリンタの種類別に分けて格納されている。
【0035】
図9は、3DP保持拠点情報415の一例を示す図である。
3DP保持拠点情報415には、3Dプリンタを保持している拠点と、該拠点が保持している3Dプリンタの台数についての情報が含まれている。3DP保持拠点情報415は、拠点名1201および3Dプリンタ保有台数1202の各フィールドから構成される。拠点名1201のフィールドには、3Dプリンタを保有している拠点の名称が格納される。3Dプリンタ保有台数1202のフィールドには、当該拠点が保有している3Dプリンタの台数の情報が格納される。
【0036】
図10は、部品製造情報416の一例を示す図である。
部品製造情報416には、保守部品を製造する製造元の情報と、かかる製造元が製造した場合のリードタイムの情報とが含まれている。部品製造情報416は、品目1301、製造区分1302、製造LT1303、および製造コスト1304の各フィールドから構成される。品目1301のフィールドには、3Dプリンタによって製造される保守部品の品目、すなわち名称が格納される。製造区分1302のフィールドには、当該保守部品を外部業者に依頼する外注を行うか、または自社内で作製する内作とするかの情報が格納される。製造LT1303のフィールドに格納される情報は、当該保守部品を外注又は内作で製造した場合のリードタイム、すなわち日数が格納される。製造コスト1304のフィールドには、品目1301のフィールドに格納された品目を、製造区分1302で指定された外注又は内作により製造した場合のコスト(円)が格納される。
【0037】
図11は、点数換算情報417の一例を示す図である。
点数換算情報417は、製造LT1401とその点数1402、および、部品製造コスト1403とその点数1404のフィールドを備えている。製造LTのフィールド1401は、
図10に示す製造LT1303と同じであり、当該保守部品を外注又は内作で製造した場合のリードタイム(LT)、すなわち日数が格納され、点数1402のフィールドには、それぞれのリードタイム(LT)に対する点数が格納されている。そして、部品製造コスト1403のフィールドは、
図10に示す製造コスト1304と同じであり、品目1301のフィールドに格納された品目を、製造区分1302で指定された外注又は内作により製造した場合のコスト(円)が格納され、点数1404のフィールドには、それぞれの製造コストに対する点数が格納されている。製造LT1401の点数1402は、リードタイムが大きくなるのに応じて高くなるように設定され、部品製造コスト1403の点数1404は、コストが高くなるのに応じて高くなるように設定されている。
【0038】
図12は、重み情報418の一例を示す図である。
重み情報418は、方針1501と、重み1502と、内容1503のフィールドを備えている。方針1501のフィールドには、供給方法として重視する項目が格納される。例えば、製造のリードタイムの短縮を重視するLT重視の方針と、在庫の削減を重視した在庫削減重視の方針と、製造コストの低減を重視したコスト重視の方針と、輸送コストの低減を重視した輸送コスト重視の方針と、輸送のリードタイムの短縮を重視した輸送LT重視の方針が、格納されている。
【0039】
重み1502は、コストとリードタイムについてそれぞれ重視する度合いを示すものであり、予め設定されている。重み1502のフィールドには、各方針1501に応じた値が格納されており、0を最小値とし、1を最大値とする。内容1503のフィールドには、いずれの項目に重みを掛けるのかについての情報が格納されている。例えば、方針1501がLT重視である場合には「LT合計点数」に重み1502の値を掛け、在庫削減重視の場合には「供給後在庫管理コスト」に重み1502の値を掛け、コスト重視の場合には「コスト合計点数」に重み1502の値を掛ける。また、輸送コスト重視の場合には「輸送コスト点数」に重み1502の値を掛け、輸送LT重視の場合には「輸送LT点数」に重み1502の値を掛ける。重みは、固定値に限られるものではなく、例えば、最初は仮の値として設定し、フィードバックやAIを用いて適正な値に補正してもよい。例えば、予め設定された方針とコストおよびリードタイムとの差に応じて重みをフィードバック補正してもよい。
【0040】
(データ演算部421)
図4の説明に戻り、データ演算部421は、供給方法を演算する際に、互いに供給拠点および供給手段が異なる複数の供給方法を候補として抽出し、これら複数の供給方法の候補に対して、データ記憶部410に記憶されたリードタイムやコストなどのデータを用いて、候補別に点数を計算する。そして、互いの点数どうしを比較してそれぞれの候補の優先順位を決定する。
【0041】
図13は、供給方法決定装置の演算部420によって実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
まず、地域倉庫103や販売代理店104等のサービス拠点から保守部品の発注があると(S501でYES)、中央倉庫102及び発注拠点の近隣のサービス拠点(以下、近隣サービス拠点等)の在庫情報を取得する処理が行われる(S502)。そして、近隣サービス拠点等における在庫の有無を確認し、在庫がある場合には(S503でYES)、複数のサービス拠点のいずれに3Dプリンタが装備されているかが判断される(S504)。3Dプリンタが装備されているか否かが判断されるサービス拠点には、近隣サービス拠点等だけではなく、発注拠点も含まれる。3Dプリンタが装備されているか否かが判断されるいずれかのサービス拠点に発注拠点を含むことによって、将来、発注拠点に3Dプリンタを導入するか否かの判断に使用することができる。
【0042】
そして、いずれかのサービス拠点に3Dプリンタが装備されている場合には(S504でYES)、その3Dプリンタを用いて、発注拠点によって発注された保守部品が製造可能であるか否か、つまり、発注拠点によって発注された保守部品が、いずれかのサービス拠点に装備されている3Dプリンタによって製造可能な部品であるか否かが判断される。
【0043】
そして、発注拠点によって発注された保守部品が3Dプリンタを用いて製造可能な部品であると判断された場合には(S505でYES)、データ記憶部410に記憶されたデータを用いて、いずれかのサービス拠点から発注拠点に保守部品を供給する場合の日数(リードタイムLT)とトータルコストを点数化し、合計点数を計算する(S506)。
例えば、複数のサービス拠点のうち製品の在庫がある拠点から供給拠点に所定数の製品を輸送した場合のコストおよびリードタイムを演算して点数化し、その合計点数を計算する。また、複数のサービス拠点のうち3Dプリンタを備えた拠点で所定数の製品を製造して発注拠点に輸送した場合のコストおよびリードタイムを演算して点数化し、その合計点数を計算する。
供給拠点や供給手段が複数ある場合には、それぞれを供給方法の候補とし、これら複数の供給方法の候補に対して各々合計点数を計算する。そして、それぞれの候補の合計点数同士を比較して各候補に優先順位を付与し、ソートした点数を供給方法決定装置401のモニター画面に表示する(S509)。複数の供給方法の候補と、各候補がそれぞれ有する合計点数と、優先順位の情報は、供給方法決定装置401から発注拠点のユーザ端末に送信される。発注拠点のユーザ端末には、複数の供給方法の候補が優先順位の高い順に表示され、ユーザ端末の操作により、これら複数の供給方法の候補の中から所望の供給方法を選択することができるようになっている。
【0044】
一方、3Dプリンタを用いて製造可能な部品ではないと判断された場合には(S505でNO)、S506と同様の処理によって合計点数を計算すると共に、計算結果にフラグ1の情報を添付する(S507)。また、いずれのサービス拠点にも3Dプリンタが装備されていない場合には(S504でNO)、S506と同様に合計点数を計算すると共に、計算結果にフラグ2の情報を添付する(S508)。フラグ1又はフラグ2の情報が添付されている計算結果については、ユーザ端末に表示はされるが、供給方法として3Dプリンタを用いたものは選択できないようになっている。
【0045】
また、S503において、近隣サービス拠点等に在庫がないと判断された場合には(S503でNO)、発注残の有無が判断される(S511)。発注残の有無については、データ記憶部410の在庫情報411の在庫カテゴリ806のフィールドに記憶されている情報に基づいて判断される。そして、発注残ありの場合には(S511でYES)、S512~S516に移行し、S504~S508と同様の処理が行われる。そして、S511において発注残なしと判断された場合には(S511でNO)、S521~S525に移行し、S504~S508と同様の処理が行われる。
【0046】
図14は、演算部において使用される計算シートの一例を示す図である。
計算シートは、発注拠点701と、供給拠点702と、在庫カテゴリ703と、品目704と、発注数(個)705と、在庫数(個)706と、発注受付日707と、発注納期日708と、納期日までの日数(日)709と、供給手段710と、3DP製造可能部品判定711と、製造LT(日)712と、発注残納品までの日数(日)713と、輸送LT(日)714と、LT合計(日)715と、納期判定716と、製造コスト(円)717と、輸送コスト(円)718と、供給前在庫管理コスト(円)719と、供給後在庫数(個)720と、供給後在庫管理コスト(円)721と、コスト合計(円)722と、LT合計(点数)723と、コスト合計(点数)724と、合計点数725のフィールドを有している。
【0047】
LT合計(日)715は、製造LT(日)712と発注残納品までの日数(日)713と輸送LT(日)714とを合計した値であり、LT合計(点数)723は、データ記憶部410の点数換算情報417を用いて、LT合計(日)715を点数化した値である。コスト合計(円)722は、製造コスト(円)717と、輸送コスト(円)718と、供給前在庫管理コスト(円)719と、供給後在庫管理コスト(円)721とを合計した値であり、コスト合計(点数)724は、コスト合計(円)722を点数化した値である。そして、合計点数725は、LT合計(点数)723とコスト合計(点数)724とを合計することによって計算される。合計点数725は、LT合計(点数)723、コスト合計(点数)724、およびコスト合計(円)722の各項目に対して、方針に応じて予め設定された重み(
図12を参照)を掛けることにより計算されてもよい。
【0048】
図15と
図16は、発注元のサービス拠点の表示部に表示される供給方法の一例を示す図である。
出力部430は、ユーザ端末からのリクエストに応じて、ある部品の供給方法を発注拠点のユーザ端末に送信する。なお、発注拠点のユーザ端末に表示される結果と同じものが、供給方法決定装置401の画面表示部440にも表示される。発注拠点のユーザ端末には、供給方法決定システムを使用して発注拠点に発注部品を供給する場合に推奨される供給拠点等の情報が優先順位に並べて表示される。
図15は、発注元のサービス拠点がグループ会社である場合の例を示している。
図15に示す供給方法には、優先順位601と、供給拠点602と、供給手段603と、供給にかかる日数(日)604と、供給にかかるコスト(円)605の情報が含まれている。グループ会社のユーザは、自己のサービス拠点のユーザ端末を操作して、これらの複数の供給方法の中から最適な供給方法を選択することができる。例えば、供給にかかる日数(日)604が最も短い方法である優先順位が1位の方法を選択することや、供給にかかるコスト(円)605が最も安価な方法である優先順位が6位の方法を選択することもできる。
図16は、発注元のサービス拠点が別会社である場合の例を示している。
図16に示す供給方法には、優先順位611と、供給拠点612と、供給手段613と、納期(日付)614と、卸値(円)615の情報が含まれている。別会社のユーザは、自己のサービス拠点のユーザ端末を操作して、これらの複数の供給方法の中から最適な供給方法を選択することができる。例えば、納期(日付)614が最も短くかつ卸値(円)が最も安価な方法である優先順位が1位の方法を選択することや、卸値(円)615が最も安価な方法である優先順位が6位の方法を選択することもできる。
【0049】
上述の本実施形態にかかる供給方法決定システムによれば、供給手段として、航空便、船便等の運送方法に加えて、サービス拠点における3Dプリンタを用いた保守部品の製造も選択肢の一つとして追加される。そして、供給にかかる日数およびコストを勘案して、複数の供給方法の候補に優先順位を付けて抽出することができる。また、供給にかかる日数およびコストに重み付けをすることにより、供給側の方針を反映した供給方法の決定が可能となる。
【0050】
したがって、ユーザは、複数の供給方法の候補別に、供給にかかる日数およびコストを把握し、リードタイムの短縮、コストの低減、また、新規在庫を持たない方が良いか否かの判定を行うことができる。そして、これら複数の供給方法の候補の中から所望の候補を選択し、供給方法として決定することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・供給方法決定システム、101・・・サプライヤ、102・・・中央倉庫、103・・・地域倉庫、104・・・販売代理店、300・・・情報通信ネットワーク、301・・・センタサーバ、401・・・供給方法決定装置、402、403・・・ユーザ端末、410・・・データ記憶部、420・・・演算部、430・・・出力部、440・・・画面表示部、411・・・在庫情報、412・・・発注情報、413・・・輸送情報、414・・・3DP製造情報、415・・・3DP保持拠点情報(製造装置情報)、416・・・部品製造情報、417・・・点数換算情報、418・・・重み情報