(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】手摺笠木の隅部構造
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
E04F11/18
(21)【出願番号】P 2023066353
(22)【出願日】2023-04-14
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000101776
【氏名又は名称】アルメタックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】林 将弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 征人
(72)【発明者】
【氏名】重兼 寛人
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-197673(JP,A)
【文献】実開平2-143431(JP,U)
【文献】特開2013-234441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺を支持する支柱または壁体の頂部に固定された笠木底板に笠木カバーを被せ、前記笠木カバーの屋外側縁部及び屋内側縁部に形成された係合部を、前記笠木底板の屋外側縁部及び屋内側縁部に形成された被係合部にそれぞれ弾性的に嵌合させることによって設置される手摺笠木において、前記手摺笠木が隅部を形成する箇所の左右に配置される笠木カバーが、それらの端面間に隅部ジョイナーを介装して留め継ぎされる手摺笠木の隅部構造であって、
前記笠木カバーは、山形または円弧状の断面形状を有する天面部と、前記天面部の屋外側縁部から下向きに延設された屋外側壁部と、前記天面部の屋内側縁部から下向きに延設された屋内側壁部と、を具備して、前記笠木底板に設けられた被係合部に嵌合可能な係合部が、前記屋外側壁部及び前記屋内側壁部の裏面側にそれぞれ形成されており、
前記隅部ジョイナーは、可撓性を有する合成樹脂材料により形成され、前記左右の笠木カバーの斜めに切断された端面間に挟まれて前記各端面を塞ぐ隔壁部と、前記隔壁部の下縁部から左右に張り出して前記各笠木カバーの裏面を支持する受け部と、前記隔壁部の上縁部から左右に張り出して前記各笠木カバーの表面に被さる押え部と、を具備し、
前記押え部の張り出し幅は前記受け部の張り出し幅よりも小さくなるように形成され、
前記受け部と前記笠木カバーとが適所においてリベットその他の留め具により接合されるとともに、
前記受け部には、前記隔壁部の長さ方向周りの捻れ剛性を相対的に低下させる低剛性部が設けられている
ことを特徴とする手摺笠木の隅部構造。
【請求項2】
請求項1に記載された手摺笠木の隅部構造において、
前記低剛性部は、前記受け部の左右方向への張り出し幅を部分的に減じることによって構成されている
ことを特徴とする手摺笠木の隅部構造。
【請求項3】
請求項1に記載された手摺笠木の隅部構造において、
前記低剛性部は、前記受け部に、隅部の交差角と平行に延びる溝部を設けることによって構成されている
ことを特徴とする手摺笠木の隅部構造。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載された手摺笠木の隅部構造において、
前記低剛性部は、前記笠木カバーの裏面との間に隙間を設けるように形成されている
ことを特徴とする手摺笠木の隅部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、ベランダ、開放廊下、屋上パラペット等に設けられる手摺の隅部に適用される手摺笠木の隅部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
薄肉のアルミ押出型材等からなる金属製の長尺笠木を手摺の頂部に設置するための設置構造として、手摺を支持する支柱や壁体の頂部に、上向きに開口した略溝形の断面形状を有する笠木底板(あるいは下板、受け具、連結具等とも)をネジ止め等によって固定した後、下向きに開口した略山形または略円弧状の断面形状を有する笠木カバーを笠木底板に被せ、笠木カバーの屋外側縁部及び屋内側縁部を笠木底板の屋外側縁部及び屋内側縁部にそれぞれ弾性的に嵌合させる、という設置構造が公知である(例えば特許文献1、2等)。
【0003】
さらに、特許文献3には、このようにして笠木が設置される手摺の隅部(出隅または入隅)において、直交する左右の笠木の端部をそれぞれ平面視45度に切断して「留め」の形に突き合せ、その突き合わせ面に隅部金具を挟んで連結する隅部構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-176405号公報
【文献】特開2003-293535号公報
【文献】特開2004-019137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に開示された手摺笠木の隅部構造は、手摺を支持する支柱や壁体の隅部にあらかじめ隅部金具をビス止め等で固定しておき、その隅部金具の両側に左右の笠木底板をそれぞれ突き当てて、それらもビス止め等で固定した後、左右の笠木カバーを左右の笠木底板にそれぞれ被せて嵌合させる、という手順で施工される。
【0006】
しかし、そのようにして隅部を現場で突き合わせる施工方法は、現場で部材を斜めに切断する作業や、隅部に隣接する直線部との取り合い寸法を調整して美麗に継ぎ合わせる作業に手間がかかる。そこで、本出願人は、隅部の左右両側に笠木底板をビス止め等で固定しておくとともに、隅部を形成する左右の笠木カバーはあらかじめ所定寸法に加工してL字形に留め継ぎし、その状態で左右の笠木底板に被せて嵌合させる施工方法を採用している。
【0007】
その施工方法では、左右の笠木カバーの突き合わせ箇所の裏面に、笠木カバーの断面形状に合致する金属薄板製の隅部ジョイナーを重ねてリベットで止め付けた状態で隅部に施工している。これにより、笠木カバーの突き合わせ箇所を隙間なく美麗に納める仕上げを実現してはいるが、一方で以下のような課題を発見している。
【0008】
すなわち、あらかじめL字形に留め継ぎした笠木カバーを笠木底板に被せて嵌合させる際、左右の笠木カバーを同時に左右の笠木底板に嵌合させるのは相当の力を要して難しいため、一方の笠木カバーを一方の笠木底板に嵌合させた後、他方の笠木カバーを他方の笠木底板に嵌合させる、という手順を採ることになる。その途中、一方の笠木カバーが笠木底板に嵌合されて、他方の笠木カバーが未だ他方の笠木底板に嵌合されていない状態では、左右の笠木カバーの高さに数mm程度の段差が生じるため、左右の笠木カバーを連結する隅部ジョイナーには、その材長方向(隅角の2等分線方向)周りに捻れようとする力が作用し、その結果、隅部ジョイナーまたは笠木カバーの端面近傍に変形や亀裂が生じてしまうおそれがある。
【0009】
本願が開示する発明は、かかる施工上の問題点に着目して想起されたものであり、あらかじめ左右の笠木カバーをL字形に留め継ぎして笠木底板に嵌合させる手摺笠木の隅部構造において、左右の笠木カバー間に介装する隅部ジョイナーを、嵌合作業の途中に生じる左右の笠木カバー間の段差に柔軟に追従させることで、手摺隅部の施工性を改善することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するために本願が開示する発明は、手摺を支持する支柱または壁体の頂部に固定された笠木底板に笠木カバーを被せ、前記笠木カバーの屋外側縁部及び屋内側縁部に形成された係合部を、前記笠木底板の屋外側縁部及び屋内側縁部に形成された被係合部にそれぞれ弾性的に嵌合させることによって設置される手摺笠木において、前記手摺笠木が隅部を形成する箇所の左右に配置される笠木カバーが、それらの端面間に隅部ジョイナーを介装して留め継ぎされる手摺笠木の隅部構造として、前記笠木カバーは、山形または円弧状の断面形状を有する天面部と、前記天面部の屋外側縁部から下向きに延設された屋外側壁部と、前記天面部の屋内側縁部から下向きに延設された屋内側壁部と、を具備して、前記笠木底板に設けられた被係合部に嵌合可能な係合部が、前記屋外側壁部及び前記屋内側壁部の裏面側にそれぞれ形成されており、前記隅部ジョイナーは、可撓性を有する合成樹脂材料により形成され、前記左右の笠木カバーの斜めに切断された端面間に挟まれて前記各端面を塞ぐ隔壁部と、前記隔壁部の下縁部から左右に張り出して前記各笠木カバーの裏面を支持する受け部と、前記隔壁部の上縁部から左右に張り出して前記各笠木カバーの表面に被さる押え部と、を具備し、前記押え部の張り出し幅は前記受け部の張り出し幅よりも小さくなるように形成され、前記受け部と前記笠木カバーとが適所においてリベットその他の留め具により接合されるとともに、前記受け部には、前記隔壁部の長さ方向周りの捻れ剛性を相対的に低下させる低剛性部が設けられている、との構成を採用する。
【0011】
この発明における前記低剛性部は、前記受け部の左右方向への張り出し幅を部分的に減じることによって構成することができる。
【0012】
また、この発明における前記低剛性部は、前記受け部に、隅部の交差角と平行に延びる溝部を設けることによって構成することもできる。
【0013】
また、前記低剛性部は、前記笠木カバーの裏面との間に隙間を設けるように形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
前述のように構成される手摺笠木の隅部構造によれば、あらかじめ左右の笠木カバーをL字形に留め継ぎした状態で隅部両側の笠木底板に嵌合させる作業途中、嵌合済の笠木カバーと未嵌合の笠木カバーとの間に段差が生じても、笠木カバーの端面間に介装した隅部ジョイナーの低剛性部が捻れ変形して、その段差に追従する。これにより、隅部ジョイナーや笠木カバーの端面近傍に変形や亀裂が生じることを防いで、手摺の隅部における笠木カバーの装着作業の施工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願が開示する発明が適用される手摺笠木の一般部における断面図である。
【
図2】
図1に示す手摺笠木の出隅に使用される隅部ジョイナーの表面側の斜視図であ る。
【
図3】
図2に示す隅部ジョイナーの裏面側の斜視図である。
【
図4】
図2に示す隅部ジョイナーの(a)平面図、(b)側面図、(c)底面図であ る。
【
図5】
図2に示す隅部ジョイナーの(a)A-A断面図、(b)B-B断面図である 。
【
図6】
図2に示す隅部ジョイナーの(a)屋外側の正面図、(b)屋内側正面図、( c)C-C切断部端面図である。
【
図7】
図2に示す隅部ジョイナーの作用を示す説明図である。
【
図8】
図1に示す手摺笠木の入隅に使用される隅部ジョイナーの表面側の斜視図であ る。
【
図9】
図8に示す隅部ジョイナーの裏面側の斜視図である。
【
図10】
図8に示す隅部ジョイナーの(a)平面図、(b)側面図、(c)底面図で ある。
【
図11】
図8に示す隅部ジョイナーの(a)D-D断面図、(b)E-E断面図であ る。
【
図12】
図8に示す隅部ジョイナーの(a)屋外側の正面図、(b)屋内側正面図、 (c)F-F切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<手摺笠木>
本願が開示する発明が適用される手摺笠木は基本的に、手摺を支持する支柱あるいは壁体等の頂部に、手摺の延設方向に沿って固定される笠木底板と、その笠木底板に被せられる笠木カバーと、を含んで構成される。
図1は、本願が開示する発明が適用される一実施形態としての手摺笠木の、一般部(直線部)における材軸直交断面を示している。
図1においては、左側が屋外側、右側が屋内側である。
【0018】
例示の手摺笠木を構成する笠木底板1及び笠木カバー2はともに、薄肉のアルミ押出型材等からなる長尺部材である。笠木カバー2は、略「ヘ」の字形の山形断面を有する天面部21と、天面部21の屋外側縁部から下向きに延設された屋外側壁部22と、天面部21の屋内側縁部から下向きに延設された屋内側壁部23と、を具備している。天面部21の形状をより詳細に説明すると、屋外寄りに設けられた稜線部211から屋外側に向けて下降する急斜面部212と、稜線部211から屋内側に向けて下降する緩斜面部213と、緩斜面部213と屋内側壁部23とを接続する面取部214と、を組み合わせて天面部21が形成されている。
【0019】
屋外側壁部22の裏面側には、屋内側に向かって水平に張り出す屋外側係合片24が設けられており、屋内側壁部23の裏面側には、屋外側に向かって水平に張り出す屋内側係合片25が設けられている。これら屋外側係合片24及び屋内側係合片25によって、笠木底板1に対する係合部が構成される。
【0020】
一方、例示形態に係る笠木底板1は、ガラス板等の手摺面材3を保持し得るように下向きに開口した面材保持凹部11と、面材保持凹部11の下縁部から屋外側及び屋内側にそれぞれ同じ高さで水平に張り出す屋外側基板部12及び屋内側基板部13と、を具備し、屋内側基板部13が支柱4の上端部に、ビス止め等によって固定される。
【0021】
屋外側基板部12と面材保持凹部11との接続箇所には、屋外側に開口する屋外側係合溝14が、ガイド斜面16とともに形成されている。また同様に、屋内側基板部13の縁部近傍には、屋内側に開口する屋内側係合溝15が、ガイド斜面17とともに立設形成されている。これら屋外側係合溝14及び屋内側係合溝15によって、笠木カバー2の係合部を保持する被係合部が構成される。
【0022】
この笠木底板1に上方から笠木カバー2を被せ、まず笠木カバー2の屋外側係合片24を笠木底板1の屋外側係合溝14に係合させた後、笠木カバー2の屋内側を下向きに押し込んで、屋内側係合片25を笠木底板1の屋内側係合溝15に弾性的に嵌合させると、笠木カバー2が笠木底板1に装着される。屋内外の係合順序は反対でも構わない。必要に応じて、笠木底板1の屋内側基板部13と笠木カバー2の屋内側係合片25との重合箇所がビス止めされる。
【0023】
<出隅>
図2~
図6は、
図1の手摺笠木が出隅を形成する箇所に使用される隅部ジョイナー5の構成例を示す。隅部においては、隅部を挟む左右両側の笠木カバー2の端面が平面視45度に切断されて留め継ぎされるが、本願が開示する発明では、それらの端面間に例示のような隅部ジョイナー5が介装される。なお、
図2及び
図3中に二点鎖線で記載した笠木カバー2は、図面サイズの都合で短く切断されたように表しているが、実際はもっと長く、数十cm程度の長さに切断した状態で留め継ぎされる。
【0024】
隅部ジョイナー5は、適度な可撓性と十分な耐候性とを備える合成樹脂材料(特に好ましくはASA樹脂)により成形された部材である。隅部ジョイナー5は、左右の笠木カバー2、2の端面間に挟まれる隔壁部51と、隔壁部51の下縁部から左右に張り出して各笠木カバー2、2の裏面を支持する受け部52と、隔壁部51の上縁部から左右に張り出して各笠木カバー2、2の表面に被さる押え部53と、を具備するものとして構成される。
【0025】
隔壁部51は、斜めに切断された笠木カバー2の端面全体を塞ぐ直立壁状の部位であり、その厚さは2mm~3mm程度に設定されている。
【0026】
受け部52は、例示形態にあっては、笠木カバー2の天面部21の略「ヘ」の字断面に添う天面受け部521と、笠木カバー2の屋外側壁部22及び屋内側壁部23の裏面に添って張り出す屋外側壁受け部522及び屋内側壁受け部523と、によって構成されている。受け部52の厚さは1.5mm~2.0mmで、左右への張り出し幅は等しく、片側20mm~30mm程度に設定されている。
【0027】
押え部53は、例示形態にあっては、笠木カバー2の天面部21の断面に添う天面押え部531と、笠木カバー2の屋外側壁部22及び屋内側壁部23の表面に添う屋外側壁押え部532及び屋内側壁押え部533と、によって構成されている。押え部53の厚さも1.5mm~2.0程度mmで、左右への張り出し幅は受け部52よりも遥かに小さく、片側2mm~4mmずつに設定されている。施工後の外観に現れる押え部53の幅を小さくすることより、隅部の意匠性が良好になる。
【0028】
このような隅部ジョイナー5が、隅部を挟んで隣接する左右の笠木カバー2、2の端面間に介装され、受け部52の適所が笠木カバー2にリベット6その他の留め具によって接合される。例示形態では、笠木カバー2の緩斜面部213と隅部ジョイナー5の天面受け部521との重合箇所、及び笠木カバー2の屋内側壁部23と隅部ジョイナー5の屋内側壁受け部523との重合箇所が、それぞれリベット6によって接合されている。
【0029】
そして、本願が開示する発明の要部は、このようにして左右の笠木カバー2、2と一体的に連結される隅部ジョイナー5に、隔壁部51の長さ方向(隅角の2等分線方向)周りの捻れ剛性を相対的に低下させる低剛性部55が設けられている点にある。例示形態では、隔壁部51の長さ方向における屋内側1/4程度の範囲において、天面受け部521の張り出し幅を屋外側部分の半分程度に減じるとともに、天面受け部521と屋内側壁受け部523との間に出隅の交差角と平行に延びる溝部56を切り込むことによって、低剛性部55が形成されている。さらに、張り出し幅を減じた低剛性部55は、屋外側部分との間に受け部52の厚さ程度の段差(
図4(b)、
図5(b)参照)を介して連続するように設けられており、これによって低剛性部55と笠木カバー2の裏面との間に微小な隙間が形成されることとなる。
【0030】
隅部ジョイナー5の受け部52にこのような低剛性部55を設けることにより、受け部52の屋内側が、屋外側に比べて相対的に捻れやすくなる。より詳細には、隔壁部51に対して、天面受け部521の屋内側1/4程度の範囲及び屋内側壁受け部523が、隔壁部51の長さ方向周りの捻れ変形に追従しやすくなる。
【0031】
図7は、この隅部ジョイナー5を左右の笠木カバー2、2の端面間に介装して一体的に連結し、その連結体を出隅に固定した左右の笠木底板1、1に嵌合させる際の施工状態を表している。この工程では、連結された左右の笠木カバー2、2が屋外側から隅部に当てがわれて、左右の笠木カバー2、2の屋外側係合片24が、左右の笠木底板1、1の屋外側係合溝14にそれぞれ係合される。そこから、まず図中左側の笠木カバー2の天面部21の屋内寄りを下向きに押し込むことで、左側の笠木カバー2の屋内側係合片25を、左側の笠木底板1の屋内側係合溝15に弾性的に嵌合させることができる。
【0032】
続いて、右側の笠木カバー2を右側の笠木底板1に嵌合させるのであるが、右側の笠木カバー2の屋内側係合片25が未だ右側の笠木底板1の屋内側係合溝15に嵌合されていない
図7の状態では、左側の笠木カバー2の屋内側壁部23と右側の笠木カバー2の屋内側壁部23との間に3mm~4mm程度の段差が生じる。このとき、隅部ジョイナー5の受け部52に設けられた低剛性部55が隔壁部51の長さ方向周りに捻れて、その段差に追従することにより、笠木カバー2及び隅部ジョイナー5の変形や損傷を防止するのである。なお、低剛性部55が捻れるときに、隅部ジョイナー5の屋内側壁受け部523と笠木カバー2の屋内側壁部23の裏面とが干渉しないように、屋内側壁受け部523の縁端部にはR加工が施されている(
図3等参照)。
【0033】
図7の状態から右側の笠木カバー2も押し込んで、その屋内側係合片25を右側の笠木底板1の屋内側係合溝15に嵌合させると、左右の段差は消失し、左右の笠木カバー2、2が高さを揃えてしっかりと笠木底板1、1に装着される。こうして、手摺の隅部における笠木カバー2の装着作業を好適に実施することができる。
【0034】
<入隅>
図8~
図12は、
図1の手摺笠木が入隅を形成する箇所に使用される隅部ジョイナー5の構成例を示す。入隅用の隅部ジョイナー5も前述した出隅用の隅部ジョイナー5と同様に、適度な可撓性と十分な耐候性とを備える合成樹脂材料により成形され、左右の笠木カバー2、2の端面間に挟まれる隔壁部51と、隔壁部51の下縁部から左右に張り出して各笠木カバー2、2の裏面を支持する受け部52と、隔壁部51の上縁部から左右に張り出して各笠木カバー2、2の表面に被さる押え部53と、を具備する。
【0035】
隔壁部51は、出隅用の隔壁部51と実質的に同じであり、受け部52及び押え部53も、平面視における隔壁部51からの張り出し方向が90度変わるだけで、その他の構成は出隅用と同じである。よって、出隅用の隅部ジョイナー5と機能または作用が共通する部位に同一の符号を付して、細部の説明は省略する。入隅用の隅部ジョイナー5を介して連結された左右の笠木カバー2、2を、入隅に固定された左右の笠木底板1、1に装着する作業手順、及びその際に捻れ変形を生じる隅部ジョイナー5の作用効果も、前述した出隅における説明と同じである。
【0036】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。特許請求の範囲及び明細書において使用している構成要素の名称は、発明を具体的に理解し易くするための便宜的なものであって、その名称が当該構成要素の概念や性状を必要以上に限定するものではない。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の詳細な形状、寸法、構造、材質、数量、他要素との結合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で、適宜、改変することができる。
【0037】
例えば、手摺笠木を構成する笠木カバー2及び笠木底板1の詳細な断面形状や互いの係合形態は、例示の形態に限定されるものではない。天面部21が曲面状の笠木カバー2でも適用可能である。また、隅部ジョイナー5に設ける低剛性部55は、例示の形態では屋内寄りに設けているが、屋外寄りに設けることもできる。例示の形態に記載した細部の寸法も理解を助けるための一例であり、各構成部材の形状や大きさに応じて適宜、変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願が開示する発明は、ベランダ、開放廊下、屋上パラペット等に設けられる手摺笠木の隅部構造として、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 笠木底板
11 面材保持凹部
12 屋外側基板部
13 屋内側基板部
14 屋外側係合溝
15 屋内側係合溝
16 ガイド斜面
17 ガイド斜面
2 笠木カバー
21 天面部
22 屋外側壁部
23 屋内側壁部
24 屋外側係合片
25 屋内側係合片
3 手摺面材
4 支柱
5 隅部ジョイナー
51 隔壁部
52 受け部
521 天面受け部
522 屋外側壁受け部
523 屋内側壁受け部
53 押え部
531 天面押え部
532 屋外側壁押え部
533 屋内側壁押え部
55 低剛性部
56 溝部
6 リベット
【要約】
【課題】左右の笠木カバーをL字形に留め継ぎして笠木底板に嵌合させる手摺笠木の隅部構造において、左右の笠木カバー間に介装する隅部ジョイナーを、嵌合作業の途中に生じる左右の笠木カバー間の段差に柔軟に追従させる。
【解決手段】隅部ジョイナー5は、可撓性を有する合成樹脂材料により形成され、左右の笠木カバー2、2の斜めに切断された端面間に挟まれて各端面を塞ぐ隔壁部51と、隔壁部51の下縁部から左右に張り出して各笠木カバー2、2の裏面を支持する受け部52と、隔壁部51の上縁部から左右に張り出して各笠木カバー2、2の表面に被さる押え部53と、を具備する。受け部52の張り出し幅は押え部53の張り出し幅よりも大きくなるように形成され、その受け部52には、隔壁部51の長さ方向周りの捻れ剛性を相対的に低下させる低剛性部55が設けられている。
【選択図】
図2