(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】情報処理システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/20 20180101AFI20240131BHJP
【FI】
G16H40/20
(21)【出願番号】P 2023167854
(22)【出願日】2023-09-28
【審査請求日】2023-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301017433
【氏名又は名称】有限責任監査法人トーマツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 研介
(72)【発明者】
【氏名】木下 渉
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】岡本 麻里
(72)【発明者】
【氏名】本田 保貴
(72)【発明者】
【氏名】趙 楊
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-43176(JP,A)
【文献】特開2023-91669(JP,A)
【文献】特開2021-51534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療に用いられる製品の適応の情報を取得する適応情報取得部と、
医療施設に所属する医師について属性の情報を取得する属性情報取得部と、
前記医療施設において販売された前記製品の販売総数の情報を取得する販売総数取得部と、
前記製品の適応、及び前記医師の属性に関する複数の仮説を取得する仮説取得部と、
複数の前記仮説のそれぞれから導出される数式と、前記販売総数とから、前記医師ごとに、又は前記製品が使用された適応症ごとに、前記製品の個別販売数に課される拘束条件、及び最尤の前記個別販売数を求める目的関数を生成する生成部と、
生成された前記拘束条件及び前記目的関数に基づいて、最尤の前記個別販売数を推定する推定部と、
推定された最尤の前記個別販売数の情報を出力する出力部と、
を有する情報処理システム。
【請求項2】
前記属性情報取得部は、前記属性の情報として、前記複数の医師がそれぞれ実際に診察した患者数、又は診察したと推定される推定患者数の情報を取得する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記属性情報取得部は、前記属性の情報として、前記複数の医師のそれぞれの診療科、又は職位の情報を取得する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記属性情報取得部は、ユーザが前記医師から入手した前記属性の情報を該ユーザから取得する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
複数の前記仮説は、ユーザが前記医師から入手した情報に基づく仮説を含む
ことを特徴とする
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
出力部を有するコンピュータを、
医療に用いられる製品の適応の情報を取得する適応情報取得部と、
医療施設に所属する医師について属性の情報をそれぞれ取得する属性情報取得部と、
前記医療施設において販売された前記製品の販売総数の情報を取得する販売総数取得部と、
前記製品の適応、及び前記医師の属性に関する複数の仮説を取得する仮説取得部と、
複数の前記仮説のそれぞれから導出される数式と、前記販売総数とから、前記医師ごとに、又は前記製品が使用された適応症ごとに、前記製品の個別販売数に課される拘束条件、及び最尤の前記個別販売数を求める目的関数を生成する生成部と、
生成された前記拘束条件及び前記目的関数に基づいて、最尤の前記個別販売数を推定する推定部と、
推定された最尤の前記個別販売数の情報を前記出力部に出力させる出力制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療に用いられる製品の売上調査に用いる情報処理システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の統計情報を利用して営業又はマーケティングにおけるターゲットを明確化する手法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、販売しようとする農作物の原価を、準備費用、農作業費用、出荷費用、作付面積等により算出する営農支援システムが記載されている。
また、特許文献2には、単位期間における対象薬剤の全体エリアの処方数量を、対象薬剤の単位期間における平均投与日数と対象薬剤の1人あたりの1日平均投与量で割ることによって、単位期間における対象薬剤の全体エリアにおける処方患者数を決定し、決定されたその処方患者数に、全体エリアの処方数に占める対象エリアの処方数の比率を乗じることによって、単位期間におけるその対象薬剤の対象エリアの処方患者数を決定してそれを端末装置へ送信するコンピュータシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-197940号公報
【文献】特開2022-142063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、それぞれの予想売上額の算出によって、どの区画の農作物の利益率が高いかを把握することができ、圃場を分割した区画の分割数、区画の面積、区画ごとの農作物を最適なものに選択し、収益性の高い圃場の最適な営農を行うことができる。しかし、この技術は農作物に対するものであり、医薬品等の製品と、その適応、及び、それをエンドユーザである患者に販売する医師の属性とを考慮して、製品販売に関する各種の仮説を検証することに応用することはできない。
また、特許文献2に記載の技術は、推定結果に対して、全体エリアのうちの対象エリアの診療科比率、及び各診療科に所属する医師数割合を考慮した補正をすることができる。しかし、この技術は、推定結果に対して、職位等の医師の他の属性、又は製品販売に関する各種の仮説の影響を反映させることはできない。
【0006】
本発明の目的の一つは、製品の医療施設ごとの販売総数から、医師の属性、仮説の影響を考慮して、それらの製品についての尤もらしい医師ごとの個別販売数を推定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一の態様において、医療に用いられる製品の適応の情報を取得する適応情報取得部と、医療施設に所属する医師について属性の情報を取得する属性情報取得部と、前記医療施設において販売された前記製品の販売総数の情報を取得する販売総数取得部と、前記製品の適応、及び前記医師の属性に関する複数の仮説を取得する仮説取得部と、複数の前記仮説のそれぞれから導出される数式と、前記販売総数とから、前記医師ごとに、又は前記製品が使用された適応症ごとに、前記製品の個別販売数に課される拘束条件、及び最尤の前記個別販売数を求める目的関数を生成する生成部と、生成された前記拘束条件及び前記目的関数に基づいて、最尤の前記個別販売数を推定する推定部と、推定された最尤の前記個別販売数の情報を出力する出力部と、を有する情報処理システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、製品の医療施設ごとの販売総数から医師の属性、仮説の影響を考慮して、それらの製品についての尤もらしい医師ごとの個別販売数を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る情報処理装置1の構成の例を示す図。
【
図8】情報処理装置1の動作の流れの例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
<情報処理装置の構成>
図1は、本発明に係る情報処理装置1の構成の例を示す図である。本発明に係る情報処理装置1は、医薬品、医療器具等、医療に用いられる製品の販売総数の実績を分析して、その分析結果を製品の営業活動、及びマーケティング活動に活用するための情報処理を行う装置である。情報処理装置1は、例えばコンピュータである。
図1に示す情報処理装置1は、プロセッサ11、メモリ12、通信部13、入力部14、及び出力部15を有する。これらの構成は、例えばバスで互いに通信可能に接続されている。
【0011】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されているプログラムを読出して実行することにより情報処理装置1の各部を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0012】
入力部14は、各種の入力をするための操作ボタン、キーボード、タッチパネル、マウス等の操作子を備えており、操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ11に送る。この操作は、例えば、ボタンに対する押下、タッチパネルに対するジェスチャー等である。
【0013】
出力部15は、各種の出力をするためのデバイスである。出力部15は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ11の制御の下、ユーザに情報を伝えるための画像を表示する。この表示画面の上には、入力部14の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。また、出力部15は、合成された音声によって情報をユーザに伝えるスピーカを有してもよい。
【0014】
通信部13は、有線又は無線により情報処理装置1を外部装置等に通信可能に接続する通信回路である。なお、上述した入力部14、又は出力部15は、この通信部13を経由した外部装置であってもよい。入力部14、又は出力部15が通信部13を経由した外部装置により代用される場合、情報処理装置1は、これらを有しなくてもよい。
【0015】
メモリ12は、プロセッサ11に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を有する。
【0016】
なお、メモリ12は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。また、メモリ12は、適応DB121、属性DB122、販売総数DB123、仮説DB124、及び導出プログラムDB125を記憶する。
【0017】
<適応DBの構成>
図2は、適応DB121の例を示す図である。適応DB121は、製品ごとにその製品の適応に関する情報(適応情報という)を記憶するデータベースである。
図2に示す適応DB121は、「製品ID」、「製品名」、及び「適応情報」の各項目を有する。製品IDは、上述した医療に用いられる製品を一意に識別するための識別情報である。製品名は、その製品の名称である。適応情報は、その製品の適応に関する情報である。
【0018】
ここで「適応」とは、上述した製品の効果が医学的に認められ、使用の対象となることをいう。適応情報は、製品が主に効果を発揮する症状、副作用等として効果が認められる症状、禁忌とされる症状等についての情報である。例えば適応情報は「医師が処方できる適応疾患には、化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌、がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌、再発又は遠隔転移を有する食道癌がある。」といった内容の情報である。なお、適応DB121は、製品が厚生労働省等の公的機関による承認に関する情報を記憶してもよい。
【0019】
<属性DBの構成>
図3は、属性DB122の例を示す図である。属性DB122は、上述した製品の販売先である施設(診療所、病院、介護施設等)ごとに、その施設に所属する医師と、その属性とを対応付けて記憶するデータベースである。
図3に示す属性DB122は、施設リスト1221、及び属性表1222を有する。
【0020】
施設リスト1221は、上述した施設を列挙したリストである。施設リスト1221は、「施設ID」、及び「施設名」の各項目を有する。施設IDは、上述した施設を一意に識別するための識別情報である。施設名は、その施設の名称である。
【0021】
属性表1222は、各施設に所属する医師を、その属性と対応付けて列挙した表である。
図3に示す属性表1222は、施設リスト1221に列挙された施設ごとに一つずつ対応付けられている。この属性表1222は、「医師ID」、及び「属性」の各項目を有する。そして、この「属性」の項目は、例えば、「診療科」、「職位(変数1)」、「適応1の予測値(変数2)」、「適応2の予測値(変数3)」等の副項目を有する。
【0022】
医師IDは、対応する医療施設に所属する医師をそれぞれ識別するための識別情報である。医師IDは、医師の氏名と対応付けられていてもよい。
【0023】
属性は、対応する医師IDで識別される医師の属性を示す情報である。属性には、上述した通り、複数の副項目があってもよい。例えば、「診療科」は、医師が所属する診療科を示す。すなわち、
図3に示す医師ID「A」で識別される医師が所属する診療科は、「泌尿器科」である。
【0024】
「職位」は、その医師の職位を示す情報である。職位とは、医療施設における地位、担当内容、階級、決定権、職掌等である。職位は、例えば順序尺度、間隔尺度、比率尺度等で表される。職位は名義尺度で表されてもよい。
【0025】
「適応1の予測値」「適応2の予測値」は、それぞれ適応1、適応2で識別される症状に対する医師の担当割合、専門性、信頼性等の予測値を示す指標である。これら各適応の予測値も順序尺度、間隔尺度、比率尺度等で表される。例えば、この予測値は、それが高い医師ほど、対応する症状の患者を担当する可能性が高い。したがって、この予測値が高い医師ほど、対応する症状に適応のある製品を使用(販売)する可能性が高い。
【0026】
なお、
図3に示す属性DB122をメモリ12に記憶している情報処理装置1は、医師の属性情報として、医師それぞれの診療科、又はその職位の情報を取得する。すなわち、この情報処理装置1は、属性の情報として、複数の医師のそれぞれの診療科、又は職位の情報を取得する情報処理システムの例である。
【0027】
<販売総数DBの構成>
図4は、販売総数DB123の例を示す図である。販売総数DB123は、実際に各施設に販売された製品それぞれの総数(販売総数ともいう)の情報を、それらの施設の区分、仮説の重要度等とともに記憶するデータベースである。販売総数DB123は、例えば一か月、二か月、四半期ごと等、決められた期間にわたって各施設に販売された製品の総数を記憶してもよい。
図4に示す販売総数DB123は、製品IDリスト1231、施設IDリスト1232、及び販売情報1233を有する。
【0028】
製品IDリスト1231は、製品の識別情報を列挙したリストであり、適応DB121に列挙された情報と共通の情報である。施設IDリスト1232は、施設の識別情報を列挙したリストであり、属性DB122の施設リスト1221に列挙された情報と共通の情報である。例えば、施設IDリスト1232は、製品IDリスト1231に列挙された製品IDのそれぞれに対応付けられる。
【0029】
販売情報1233は、或る製品について、或る施設に実際に販売された総数、つまり販売総数を記憶する。また、販売情報1233は、販売総数のほか、上述した或る製品、或る施設の組合せごとに、その組合せに関する情報を記憶する。組合せに関する情報は、例えば、施設が属する地域区分、製品の主な適応を示す主要適応、それぞれの仮説の重要度等である。これらの情報は、例えば、JSON(JavaScript(登録商標) Object Notation)等のシリアライズフォーマットによって、文字列として記述される。
図4に示す販売情報1233は、製品IDリスト1231に列挙された製品IDと、施設IDリスト1232に列挙された施設IDと、の組合せごとに、一つずつ対応付けられる。
【0030】
<仮説DBの構成>
図5は、仮説DB124の例を示す図である。仮説DB124は、製品の販売に関して営業担当者等が発見した傾向、法則等を記憶するデータベースである。
図5に示す仮説DB124は、「仮説ID」、及び「仮説内容」の各項目を有する。仮説IDは、仮説をそれぞれ識別するための識別情報である。仮説IDは、仮説を発見した営業担当者の識別情報と対応付けられていてもよい。仮説内容は、仮説の内容を示した文字列等である。例えば、
図5に示す仮説DB124において、仮説ID「R1」で識別される仮説の内容は、「主適応(適応1)の売上は少なくとも全体の80%以上をカバー」というものである。
【0031】
なお、仮説の他の例としては、以下のもの等が挙げられる。
「医師または適応の売上は、所属する施設売上以下である」
「按分結果は、予測モデルの結果に予測信頼度に応じて近くなる」
「売上の上下限は、予測モデルの予測値の予測区間に基づく」
「医師売上集計と施設売上集計の和は施設売上と一致する」
「診療所では、がん領域の売上は0である」
「この施設では、特定の疾患には他社製品を利用する方針が定まっている」
「高齢化地域に所在する施設では、患者一人当たりの治療期間が短く、患者一人当たりの売上が低い」
【0032】
<導出プログラムDBの構成>
図6は、導出プログラムDB125の例を示す図である。導出プログラムDB125は、仮説内容に沿った情報処理を実行するための処理を記述したプログラムを記憶するデータベースである。
図6に示す導出プログラムDB125は、仮説内容から導出されたプログラム群を記憶している。このプログラム群を構成する各プログラムは、少なくとも仮説DB124に記述されている仮説IDで識別される仮説の数だけ存在している。
【0033】
導出プログラムDB125に記憶されている個々のプログラムは、具体的な販売総数、属性情報、適応情報等の諸条件を引数として受け取り、対応付けられた仮説に沿ってこれらの諸条件を当てはめた場合の数式と、その数式が目的関数であるか、拘束条件であるかの区別とを返す。
【0034】
なお、仮説とプログラムとの対応付けは、予め仮説内容を読んで理解したプログラマによって行われてもよい。また、この対応付けは、予め決められた生成ルールによって行われてもよい。さらに、この対応付は、過去にプログラマによって行われた複数の対応付けの統計データから機械学習により行われてもよい。また、仮説DB124に記載されている仮説と、導出プログラムDB125に記載されているプログラムとが一対一で対応付けられる場合、仮説DB124と導出プログラムDB125とは分けなくてもよく、一つのデータベースであってもよい。
【0035】
<情報処理装置の機能的構成>
図7は、情報処理装置1の機能的構成の例を示す図である。
図7において、情報処理装置1の通信部13は省かれている。
【0036】
情報処理装置1のプロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムを実行することにより、適応情報取得部111、属性情報取得部112、販売総数取得部113、仮説取得部114、導出部115、生成部116、推定部117、及び出力制御部118として機能する。
【0037】
適応情報取得部111は、医療に用いられる製品について、その適応情報を入力部14から取得する。この場合、この適応情報は、ユーザが入力部14を操作することによって情報処理装置1に入力される。適応情報取得部111は、入力部14から入力されたこの適応情報をメモリ12の適応DB121に記憶する。また、適応情報取得部111は、既に記憶されている適応情報を適応DB121から読出して取得する。
【0038】
つまり、この適応情報取得部111は、医療に用いられる製品の適応の情報を取得する適応情報取得部の例である。
【0039】
属性情報取得部112は、医療施設に所属している医師について、それぞれの属性情報を入力部14から取得する。この場合、この属性情報は、ユーザが入力部14を操作することによって情報処理装置1に入力される。属性情報取得部112は、入力部14から入力されたこの属性情報をメモリ12の属性DB122に記憶する。また、属性情報取得部112は、既に記憶されている属性情報を属性DB122から読出して取得する。
【0040】
つまり、この属性情報取得部112は、医療施設に所属する医師について属性の情報を取得する属性情報取得部の例である。
【0041】
販売総数取得部113は、例えば、予め決められた期間に医療施設において販売された製品の総数である販売総数の情報を入力部14から取得し、メモリ12の販売総数DB123に記憶する。また、販売総数取得部113は、既に記憶されている販売総数の情報を販売総数DB123から読出して取得する。
【0042】
つまり、この販売総数取得部113は、医療施設において販売された製品の販売総数の情報を取得する販売総数取得部の例である。
【0043】
仮説取得部114は、上述した仮説内容を営業担当者等であるユーザの操作により、入力部14から取得する。仮説取得部114は、入力部14から取得したこの仮説内容に例えば識別情報を付加してメモリ12の仮説DB124に記憶する。また、仮説取得部114は、既に記憶されている仮説の情報を仮説DB124から読出して取得する。
【0044】
つまり、この仮説取得部114は、製品の適応、及び医師の属性に関する複数の仮説を取得する仮説取得部の例である。
【0045】
導出部115は、導出プログラムDB125を参照して、仮説取得部114が取得した仮説のそれぞれに対し、その仮説に沿ったプログラムを導出する。
【0046】
生成部116は、販売総数取得部113から製品の販売総数に関する情報を取得し、導出部115から仮説に沿ったプログラムを取得する。また、生成部116は、適応情報取得部111から上述した適応情報を取得するとともに、属性情報取得部112から上述した属性情報を取得する。そして、生成部116は、製品の販売総数と、適応情報と、属性情報とを、それぞれ仮説に沿ったプログラムに組入れて、その製品の医師ごとの販売数(個別販売数ともいう)に課されるべき拘束条件、及び最尤の個別販売数を求める目的関数を生成する。
【0047】
つまり、この生成部116は、複数の仮説のそれぞれから導出される数式と、販売総数とから、医師ごとに、又は製品が使用された適応症ごとに、製品の個別販売数に課される拘束条件、及び最尤の個別販売数を求める目的関数を生成する生成部の例である。
【0048】
推定部117は、生成部116が生成した拘束条件、及び目的関数を用いて、上述した最尤の個別販売数を推定する。推定部117は、数理最適化のアルゴリズムにより、上記の拘束条件を満たし、かつ、上記の目的関数が最適な値になるように個別販売数を推定する。なお、最適とは、予め目的関数に定められた方向性であって、最大又は最小のいずれかである。
【0049】
つまり、この推定部117は、生成された拘束条件及び目的関数に基づいて、最尤の個別販売数を推定する推定部の例である。
【0050】
出力制御部118は、推定部117が推定した最尤の個別販売数を出力部15に出力させる。つまり、この出力制御部118は、推定された最尤の個別販売数の情報を出力部に出力させる出力制御部の例である。
【0051】
<生成の事例>
以下に、導出部115、及び生成部116により、仮説から拘束条件が導出されるケースAと、目的関数が導出されるケースBとを説明する。
【0052】
[ケースA]仮説から拘束条件が導出される場合
導出部115は、仮説取得部114から仮説として「主適応(適応1)の売上は少なくとも全体の80%以上をカバー」を取得する。そして、この導出部115は、取得したこの仮説に沿ったプログラムを導出プログラムDB125から抽出して生成部116に供給する。
【0053】
生成部116は、販売総数の情報として、『[{“販売総数”:“100”},{“適応1比率”:“0.8”}]…』という文字列を取得する。そして、生成部116は、導出部115から供給されたプログラムに販売総数の情報を組入れる。このとき、生成部116は、仮説の内容から生成した結果が拘束条件であると判断し、その旨を示すフラグとともにこの拘束条件を推定部117に供給する。
【0054】
例えば、販売総数に記載された“販売総数”の値をSとし、“適応1比率”の値をλとし、按分結果をxiとした場合、適応1に該当するインデックスの集合をGとすると、上述した仮説に沿った数式として、以下の式(1)が成り立つ。
【0055】
【0056】
生成部116は、導出部115から供給されたプログラムにより示される数式に販売総数の情報を組入れることにより、上述した式(1)に応じた処理、演算手順を生成する。そして、仮説の内容に、例えば「80%以上を…」といった文言があることから、生成した処理が拘束条件を示すものであると判断し、その旨のフラグを生成する。
【0057】
なお、例えば、一つの仮説に対してプログラマが一つのプログラムを作成し、データベースに記憶させている場合、仮説と仮説に対応するプログラムとは一対一に対応付けられているため、上述した通り、仮説DB124と導出プログラムDB125とは一つのデータベースで表現されてもよい。この場合、導出部115は、単に仮説に対応するプログラムを取得すればよく、生成部116は、導出部115から供給されたプログラムに対応付けられたフラグを取得すればよい。この場合、生成部116は、仮説の文言を判断しなくてもよい。
【0058】
推定部117は、適応情報取得部111から上述した適応情報を、属性情報取得部112から上述した属性情報を、それぞれ取得する。そして、さらに生成部116から上述した拘束条件と、その旨のフラグと、を取得すると、推定部117は、この拘束条件に適応情報、及び属性情報を反映させる。そして推定部117は、他の仮説から生成される他の全ての拘束条件、及び目的関数(複数の場合、その総和)と、に基づいて演算を行い、医師それぞれの個別販売数を推定する。なお、推定部117は、この演算に分岐限定法等の既存のアルゴリズムを用いてもよい。
【0059】
[ケースB]仮説から目的関数が導出される場合
導出部115は、仮説取得部114から仮説として「按分結果は、予測モデルの結果に予測信頼度に応じて近くなる」を取得する。予測信頼度を測る方法は、例えばガウス過程が挙げられる。そして、この導出部115は、取得したこの仮説に沿ったプログラムを導出プログラムDB125から抽出して生成部116に供給する。
【0060】
生成部116は、販売総数の情報として、『[{“販売総数”:“100”},…{“仮説R1の重要度”:“80”}]…』という文字列を取得する。そして、生成部116は、導出部115から供給されたプログラムに販売総数の情報を組入れる。このとき、生成部116は、仮説の内容から生成した結果が目的関数であると判断し、その旨を示すフラグとともにこの目的関数を推定部117に供給する。
【0061】
推定部117は、上述した通り、適応情報、及び属性情報をそれぞれ取得する。そして、推定部117は、供給された上述の目的関数が予測モデルを要求するものである、と判断するとメモリ12から図示しない機械学習済みのパラメータ群等から構成される予測モデルを読出して取得する。さらに推定部117は、取得したこの予測モデルに、上述した適応情報、属性情報を反映させることで、医師それぞれの個別販売数についての予測値を算出する。
【0062】
例えば、推定部117は、属性情報として、施設ID「H1」で識別される或る医療施設に所属する医師のデータを読出し、そのうちのnからn+m番目に記載された医師について、個別販売数の予測値を取得するとともに、n+m+1からn+2m+1番目に記載された医師について、予測信頼度を取得する。このとき、真の按分結果をxi、予測モデルによる按分結果(予測値)をyi、信頼区間の幅の逆数をwiとすると、上述した仮説に沿った数式として、以下の式(2)が成り立つ。
【0063】
【0064】
生成部116は、導出部115から供給されたプログラムにより示される数式に販売総数の情報を組入れることにより、上述した式(2)に応じた処理、演算手順を生成する。そして、仮説の内容に、例えば「…に応じて近くなる」といった文言があることから、生成した処理が目的関数を示すものであると判断し、その旨のフラグを生成する。
【0065】
推定部117は、適応情報取得部111から上述した適応情報を、属性情報取得部112から上述した属性情報を、それぞれ取得する。そして、さらに生成部116から上述した目的関数と、その旨のフラグと、を取得すると、推定部117は、この目的関数に適応情報、及び属性情報を反映させる。そして推定部117は、全ての拘束条件、及び目的関数と、に基づいて演算を行い、医師それぞれの個別販売数を推定する。
【0066】
<情報処理装置の動作>
図8は、情報処理装置1の動作の流れの例を示すフロー図である。情報処理装置1のプロセッサ11は、ユーザが操作する入力部14から、医療施設において販売された、医療に用いられる製品の販売総数の情報を取得する(ステップS101)。
【0067】
また、ステップS101と並行してプロセッサ11は、営業担当者等であるユーザが操作する入力部14から、製品の適応、及び医師の属性に関する知見である仮説を取得する(ステップS102)。そして、このプロセッサ11は、取得した仮説に応じて、例えば予め定められたルールに基づき、その仮説を示す数式を導出する(ステップS103)。
【0068】
ステップS101によって販売総数の情報が取得され、ステップS102、ステップS103によって仮説を示す数式が導出されると、プロセッサ11は、ユーザが操作する入力部14から、上述した製品の適応情報を取得する(ステップS104)。また、ステップS105と並行してプロセッサ11は、ユーザが操作する入力部14から、上述した医療施設に所属する医師ごとの属性情報を取得する(ステップS105)。
【0069】
ステップS104によって適応情報が取得され、ステップS105によって属性情報が取得されると、プロセッサ11は、これらを用いて製品の個別販売数に課される拘束条件と、最尤の個別販売数を求めるための目的関数とを生成する(ステップS106)。そして、プロセッサ11は、これらの目的関数・拘束条件によって医師それぞれの上述した製品の個別販売数を推定する(ステップS107)。そして、プロセッサ11は、出力部15を制御して、推定されたこの結果を出力する(ステップS108)。
【0070】
以上、説明した動作により、この情報処理装置1は、評価の対象となっている製品、医療施設について、例えば、一定期間にわたって、その医療施設においてその製品が販売された総数しかわからない場合であっても、その医療施設に所属する医師の属性と、その医療施設に関する蓄積された仮説とに基づいて、その製品の医師ごとの最尤の個別販売数を推定することができる。
【0071】
特に、この情報処理装置1は、仮説の内容に対して予め決められた規則を適用することで、その仮説の種類を判別し、その種類に応じた演算処理を実行するので、例えば、販売に関する仮説が定性的なものであるか、定量的なものであるかを区別しなくてもよい。
【0072】
また、本発明に係る情報処理装置1は、販売総数と個別販売数との関係を機械学習によって表現することが可能であるが、機械学習の他にも営業担当者等が医療施設の内情等を知得した部分的な知見を規則に組入れて統一的に扱うことが可能であるから、機械学習のみで情報を扱う場合に比べて推定結果の精度を向上させることができる。
【0073】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は、互いに組合されてもよい。
【0074】
<1>
上述した実施形態において、情報処理装置1は、CPUで構成されるプロセッサ11を有していたが、情報処理装置1を制御する制御手段は他の構成であってもよい。
【0075】
すなわち、情報処理装置1は、CPU以外にも、例えばGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、プログラマブル論理デバイス等、各種のプロセッサ等を、プロセッサ11として有してもよい。
【0076】
<2>
上述した実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。
【0077】
上述した動作を一以上の情報処理装置のそれぞれのプロセッサが協働して行う場合、これら一以上の情報処理装置によって構成される情報処理システムは、医療に用いられる製品の適応の情報を取得する適応情報取得部と、医療施設に所属する医師について属性の情報を取得する属性情報取得部と、医療施設において販売された製品の販売総数の情報を取得する販売総数取得部と、製品の適応、及び医師の属性に関する複数の仮説を取得する仮説取得部と、複数の仮説のそれぞれから導出される数式と、販売総数とから、医師ごとに、又は製品が使用された適応症ごとに、製品の個別販売数に課される拘束条件、及び最尤の個別販売数を求める目的関数を生成する生成部と、生成された拘束条件及び目的関数に基づいて、最尤の個別販売数を推定する推定部と、推定された最尤の個別販売数の情報を出力する出力部と、を有する情報処理システムの例である。
【0078】
また、プロセッサの各動作の順序は、上述した実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0079】
<3>
上述した実施形態において、推定部117として機能するプロセッサ11は、生成部116により生成された拘束条件、及び目的関数に適応情報、及び属性情報を反映させて演算を行い、対象となる医療施設において対象となる製品の、医師それぞれの個別販売数を推定していたが、目的関数の種類を判別して、その判別結果に応じて異なる演算を行ってもよい。例えば、プロセッサ11は、生成された目的関数が二次式で構築されているか否かに基づいて、演算処理を変えてもよい。この場合、プロセッサ11は、目的関数のうち一つでも二次式が含まれているものが存在していれば、混合整数二次計画問題のために用意された演算処理を実行し、それが存在していなければ、二次計画問題のために用意された演算処理を実行すればよい。
【0080】
この変形例によれば、情報処理装置1は、仮説内容から個別販売数の推定問題に適したアルゴリズムを選択することができる。
【0081】
<4>
上述した実施形態において、情報処理装置1のプロセッサ11によって実行されるプログラムは、出力部を有するコンピュータを、医療に用いられる製品の適応の情報を取得する適応情報取得部と、医療施設に所属する医師について属性の情報をそれぞれ取得する属性情報取得部と、前記医療施設において販売された前記製品の販売総数の情報を取得する販売総数取得部と、前記製品の適応、及び前記医師の属性に関する複数の仮説を取得する仮説取得部と、複数の前記仮説のそれぞれから導出される数式と、前記販売総数とから、前記医師ごとに、又は前記製品が使用された適応症ごとに、前記製品の個別販売数に課される拘束条件、及び最尤の前記個別販売数を求める目的関数を生成する生成部と、生成された前記拘束条件及び前記目的関数に基づいて、最尤の前記個別販売数を推定する推定部と、推定された最尤の前記個別販売数の情報を前記出力部に出力させる出力制御部、として機能させるためのプログラムの例である。
【0082】
このプログラムは、磁気テープ及び磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリ等の、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムは、インターネット等の通信回線経由でダウンロードされてもよい。
【0083】
<5>
上述した実施形態において、属性情報取得部112として機能するプロセッサ11は、医療施設に所属する医師の属性情報として、「診療科」、「職位」、「適応1の予測値」等の情報を取得していたが、これ以外にも、例えば、その医師が実際に診察した患者数の情報を取得してもよい。また、属性情報取得部112は、例えば、営業担当者等が経験から割り出した所定の割合に応じて、医師ごとに、その医師が診察したと推定される推定患者数の情報を属性情報として取得してもよい。
【0084】
この場合、この情報処理装置1は、属性の情報として、複数の医師がそれぞれ実際に診察した患者数、又は診察したと推定される推定患者数の情報を取得する情報処理システムの例である。
【0085】
<6>
上述した実施形態において、ユーザが入力する属性情報の出所について限定はなかったが、この属性情報は、営業担当者等であるユーザが直接、医師から入手した情報であってもよい。この場合、情報処理装置1は、ユーザが医師から入手した属性の情報をそのユーザから取得する情報処理システムの例である。
【0086】
<7>
上述した実施形態において、ユーザが入力する仮説の出所について限定はなかったが、この仮説は、営業担当者等であるユーザが直接、医師から入手した情報であってもよい。この場合、この情報処理装置1は、ユーザが医師から入手した情報に基づく仮説を取得する情報処理システムの例である。
【符号の説明】
【0087】
1…情報処理装置、11…プロセッサ、111…適応情報取得部、112…属性情報取得部、113…販売総数取得部、114…仮説取得部、115…導出部、116…生成部、117…推定部、118…出力制御部、12…メモリ、121…適応DB、122…属性DB、1221…施設リスト、1222…属性表、123…販売総数DB、1231…製品IDリスト、1232…施設IDリスト、1233…販売情報、124…仮説DB、125…導出プログラムDB、13…通信部、14…入力部、15…出力部。
【要約】
【課題】製品の医療施設ごとの販売総数から医師の属性、仮説の影響を考慮して、それらの製品についての尤もらしい医師ごとの個別販売数を推定する。
【解決手段】適応情報取得部111は、製品についての適応情報を取得する。属性情報取得部112は、医療施設に所属している医師それぞれの属性情報を取得する。販売総数取得部113は、医療施設において販売された製品の販売総数の情報を取得する。仮説取得部114は、仮説内容を取得する。導出部115は、導出プログラムDB125を参照して、仮説のそれぞれに沿ったプログラムを導出する。生成部116は、製品の販売総数を、仮説に沿ったプログラムに組入れて、その製品の医師ごとの個別販売数に課されるべき拘束条件、及び最尤の個別販売数を求める目的関数を生成する。推定部117は、拘束条件、及び目的関数に適応情報、及び属性情報を組入れて、最尤の個別販売数を推定する。
【選択図】
図7