(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】電線切断皮剥き装置、端処理電線製造装置、及び、端処理電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20240131BHJP
H01R 43/05 20060101ALI20240131BHJP
H01R 43/052 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H02G1/12 053
H01R43/05
H01R43/052
(21)【出願番号】P 2023174940
(22)【出願日】2023-10-10
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2022180810
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年に展示会で発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228257
【氏名又は名称】日本オートマチックマシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】木下 順夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕也
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-71751(JP,A)
【文献】特開2016-116438(JP,A)
【文献】特開昭54-118584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
H01R 43/05
H01R 43/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の長手方向に沿って配列された、電線を切断する切断刃(42)、及び、電線の被覆に切込みを入れる皮剥き刃(41・43)を具備する電線切断皮剥き装置(4)であって、
前記電線の長手方向に対する交差方向に往復駆動されるスライドブロック(45)と、
該スライドブロック(45)に取付けられた、前記皮剥き刃(41・43)を保持する皮剥き刃ホルダー(441)と、
前記スライドブロック(45)に搭載された、前記切断刃(42)を保持する切断刃ホルダー(443)、及び、該切断刃ホルダー(443)を前記交差方向に往復駆動する切断刃駆動アクチュエータ(44)と、
を備えることを特徴とする電線切断皮剥き装置(4)。
【請求項2】
前記切断刃駆動アクチュエータ(44)が空圧シリンダであることを特徴とする請求項1記載の電線切断皮剥き装置(4)。
【請求項3】
前記皮剥き刃ホルダー(441)が、第一皮剥き刃(41)及び第二皮剥き刃(43)の両者を保持する同一の物であって、
該皮剥き刃ホルダー(441)の電線長手方向の中央部に、前記切断刃(42)がスライドする凹部(441g)が形成されていることを特徴とする請求項1記載の電線切断皮剥き装置(4)。
【請求項4】
前記皮剥き刃ホルダー(441)と前記切断刃ホルダー(443)とが組合わさった状態で、前記スライドブロック(45)から取り外せるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の電線切断皮剥き装置(4)。
【請求項5】
電線切断後に、切断刃(42)を単独動作させて電線から退避させ、その後、1側電線W1を前進させたり、2側電線W2を後退させたりして、皮剥き長さが「皮剥き刃-切断刃間隔」よりも長い加工を行うことを特徴とする請求項1記載の電線切断皮剥き装置(4)。
【請求項6】
電線を送給する電線送給部(10)と、
送給された電線を任意の長さに切断するとともに、該電線の切断した端部の被覆を剥離する電線切断皮剥き部(4)と、
被覆剥離された前記電線端部を端処理する端処理部(60・90)と、
電線をクランプして各部に搬送するクランプ搬送部(20・70)と、を備える端処理電線製造装置(1)であって、
前記電線切断皮剥き部(4)が請求項1、2、3、4又は5記載の電線切断皮剥き装置(4)であることを特徴とする端処理電線製造装置(1)。
【請求項7】
芯線及び外周被覆を有する電線を、ある長さに切断し、次いで被覆を剥ぎ、その後に端処理する方法であって、請求項6記載の端処理電線製造装置(1)を用いることを特徴とする端処理電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を切断しその端部の被覆(皮)を剥く装置や、被覆剥離した後に電線端子を圧着する装置などに関する。特には、一本の製品電線を製造する時間(タクトタイム)を短縮し、生産性を高めた電線切断皮剥き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネス業界においては、電線を所要の長さに切断し、切断部の前後の被覆を剥き取り(ストリップし)、その後に接続用コネクタ端子を圧着接続する工程(切断・皮剥き・端子圧着工程)は、ワイヤーハーネスに用いられる多量の電線の大半が通過する、作業量が極めて多い基本的な工程である。この切断・皮剥き・端子圧着工程では、他の工程以上の生産効率向上と、品質向上が要求されてきた。その要求に応えるため、電線の自動処理機械は、改善と進化を続けてきた。今回、その改善のひとつとして、電線切断用ブレード駆動機構の構造と動作などについて、新規技術を提案する。
【0003】
電線の切断・皮剥き・端子圧着工程に用いる自動処理装置の従来例が、特開2014-7043に開示されている。この機械は、電線送給部や電線切断部、電線先端(トップ)の皮剥き部、1側電線(先端は切断され、後端は電線リールにつながった状態の電線)の旋回式搬送部、端子圧着機などを備える。この従来例の装置も、切断・皮剥き・端子圧着工程の生産効率向上と品質向上を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電線の切断・皮剥き工程における生産効率向上を図ることのできる装置又は方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この「課題を解決するための手段」、及び、「特許請求の範囲」、並びに、明細書の一部においては、添付図各部の参照符号を括弧書きして示すが、これは単に参考のためであって、権利範囲を添付図のものに限定する意図はない。
【0007】
本発明の電線切断皮剥き装置(4)は、 電線の長手方向に沿って配列された、電線を切断する切断刃(42)、及び、電線の被覆に切込みを入れる皮剥き刃(41・43)を具備する電線切断皮剥き装置(4)であって、 前記電線の長手方向に対する交差方向に往復駆動されるスライドブロック(45)と、 該スライドブロック(45)に取付けられた、前記皮剥き刃(41・43)を保持する皮剥き刃ホルダー(441)と、 前記スライドブロック(45)に搭載された、前記切断刃(42)を保持する切断刃ホルダー(443)、及び、該切断刃ホルダー(443)を前記交差方向に往復駆動する切断刃駆動アクチュエータ(44)と、 を備えることを特徴とする。
【0008】
上記切断刃駆動アクチュエータ(44)を駆動する「交差方向」は、一般的には電線長手方向の直角方向であり、標準的には上下方向(地球重力の方向)である。ただし、これに限定されない。アクチュエータの駆動方向は、一般的には、スライドブロック(45)の駆動方向と同じである。ただし、これに限定されない。
上記切断刃駆動アクチュエータ(44)は、好ましくは空圧シリンダである。空圧シリンダは、比較的に、高速・高加速、省スぺース、低価格、配管取り回し容易などの利点がある。
【0009】
切断刃は、次の理由により、ストロークが長い。すなわち、切断完了位置では一対の刃が十分にオーバーラップし、回避位置(電線フィード待機位置)では、V字型などの対向する切り刃が、電線が進行する空間から十分に逃げて、不用意に刃が電線に触れ電線が傷付くようなことを防止する必要がある。また、切断刃は、精密位置決めする(例えばモータ+ボールネジによる)必要はない。一方、皮剥き刃は、電線の種類(径・被覆厚さ)に応じて、切り込み位置(一対の刃が近接してオーバーラップした位置)を、精密に調整しなければならない。このような各刃の特性に応じて、本発明の好ましい実施形態においては、電動とシリンダ駆動を組み合わせた。
【0010】
従来の通常の電線切断皮剥き装置では、電線カット用ブレード及び被覆ストリップ用ブレードを取付けた、一体の取付け部品を上下スライド自在に設け、モータ駆動による上下刃の開閉移動で、カット(電線切断)やストリップ(被覆剥離)を行う。本発明の1形態では、電線カット用ブレードをシリンダで単独動作することにより、切断・被覆剥離工程の時間を短縮できる。さらに、下記のように周辺装置の改良と組み合わせることで、電線切断皮剥き端処理工程全体の動作タクトを、より短縮し、装置の生産性を向上させることができる。
【0011】
(1)シリンダ駆動前におけるスライドブロック(45)の事前下降による、切断距離(切断刃ストローク)の縮小。
(2)被覆屑吸引口の2側圧着機(90)側への配置。
(3)工程削減と無駄な前後動作削減(戻り旋回)。
【0012】
上記の電線切断皮剥き装置(4)においては、 前記皮剥き刃ホルダー(441)が、第一皮剥き刃(41)及び第二皮剥き刃(43)の両者を保持する同一の物であって、 該皮剥き刃ホルダー(441)の電線長手方向の中央部に、前記切断刃(42)がスライドする凹部(441g)が形成されていることができる。
【0013】
電線切断装置においては、上下の刃がオーバーラップしたときの両刃の隙間(上下刃のクリアランス)を0.01~0.02mmに維持する必要がある。この隙間が維持できないと、被覆剥離工程において、被覆バリや芯線傷などの品質問題が生じるおそれがある。上記隙間維持のための重要な要素の一つが、各刃のホルダーへの固定位置の精度である。この精度確保のために、ホルダー(441)の取付け位置と溝加工位置等他の精度や刃の加工寸法精度を高く設定している。それでも上記隙間が実現できない場合は、部品すり合わせが必要になる。皮剥き刃ホルダー(441)を、第一皮剥き刃(41)及び第二皮剥き刃(43)の両者を保持する同一の物とすることにより、組み立て箇所を一つ減らすことができ、精度劣化要因を減らすことができる。
なお、「同一の物」とは、第一・第二皮剥き刃が、同一の皮剥き刃ホルダー(43)に取り付けられている意味であって、皮剥き刃ホルダー(43)が「1個の構造部品からなる」という意味ではない。
【0014】
上記の電線切断皮剥き装置(4)においては、前記スライドブロック(45)を往復駆動する機構が電動であり、前記切断刃駆動アクチュエータ(44)の駆動により、前記切断刃(42)が電線を切断し、その後に電線から回避し、 電線切断後に電線を長手方向に移動させて皮剥き長さをセットし、 次いで皮剥き刃(41・43)が電線の被覆に切り込み、 次いで電線を長手方向に移動させて被覆を剥き取てることとしてもよい。
【0015】
上記の電線切断皮剥き装置(4)においては、 前記皮剥き刃ホルダー(441)と前記切断刃ホルダー(443)とが組合わさった状態で、前記スライドブロック(45)から取り外し可能に構成することができる。
各ブレードの取付けをモジューラー化することで、刃交換作業の容易かつ時間短縮を図ることができる。
【0016】
本発明の端処理電線製造装置(1)は、 電線を送給する電線送給部(10)と、 送給された電線を任意の長さに切断するとともに、該電線の切断した端部の被覆を剥離する電線切断皮剥き部(4)と、 被覆剥離された前記電線端部を端処理する端処理部(60・90)と、 電線をクランプして各部に搬送するクランプ搬送部(20・70)と、を備える端処理電線製造装置であって、 前記電線切断皮剥き部(4)が上記の電線切断皮剥き装置(4)であることを特徴とする。なお、本明細書でいう「端処理部」は、端子圧着機の他に、半田付け機や電気溶接装置、超音波溶着装置、コネクタハウジングへの挿入装置などの端処理機も含む。
【0017】
本発明の端処理電線の製造方法は、芯線及び外周被覆を有する電線を、ある長さに切断し、次いで被覆を剥ぎ、その後に端処理する方法であって、前記の切断皮剥き装置(4)を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、電線の切断・皮剥き工程における生産効率向上を図ることのできる装置又は方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る切断皮剥き装置4を含む端子圧着電線製造装置1の全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】実施形態の電線切断皮剥き装置4の全体構造を示す斜視図である。
【
図3】
図2の電線切断皮剥き装置4の切断刃42や皮剥き刃41・43の部分を拡大して示す側面図である。
【
図4】
図3の皮むき装置における皮むき工程を説明する図であり、(A)は電線が各刃の間に進入した状態、(B)は長さ決めカット時において切断刃が電線に近づいた状態、(C)は長さ決めカット後(切断完了)の状態、(D)は皮剥き刃が電線に接した状態、(E)は皮剥き刃が電線の被覆に切り込んで、次いで電線を皮剥き刃から前後に遠ざけて皮剥きしようとしている状態、(F)は皮剥き完了状態である。
【
図5】上の皮剥き刃41・43及び切断刃42が、切断皮剥き装置4に取付けられている状態の正面図である。
【
図6】上の皮剥き刃41・43及び切断刃42、及び、それらのホルダー441・443が、スライドブロック45やシリンダロッド448から取り外された状態である。
【
図7】上の切断刃42及びそのホルダー443と、皮剥き刃41・43及びそのホルダー441とを分解した状態である。(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
【
図8】上の皮剥き刃41・43をホルダー441から外し、上の切断刃42をホルダー443から外した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1;端子圧着電線製造装置、4;切断皮剥き部(装置)、10;電線送給部、
20;クランプ搬送部、21;旋回機構(旋回駆動手段)、23;前後機構(長手駆動手段)、
25;1側クランプ
40;ブレードユニット、41;皮剥き刃、42;切断刃、43;皮剥き刃、
44;シリンダ(切断刃駆動アクチュエータ)
45;スライドブロック、45h;ピン、45m;ボルト孔、45r;端面
47;ボールスクリュー、50;剥きカス吸引ダクト、50d;板
60;1側圧着機(端処理部、端子圧着部)
70;クランプ搬送部、71;2側クランプ、73;前後機構(長手駆動手段)、
75;旋回機構(旋回駆動手段)
81;排出クランプ
90;2側圧着機(端処理部、端子圧着部)
140;刃部、141・142;舌状片
413;ネジ、440;プレート
441;皮剥き刃ホルダー、441c;壁部、441g;凹部、441m;ボルト孔
442;プレート
443;切断刃ホルダー、443g;刃固定部、443g;刃固定部、443h;凹部、443k;延長部、443y;ロッド連結部、443z;内溝
445;ネジ、448;シリンダロッド、448b;リングフック部
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1を参照して、本発明の電線切断皮剥き装置(部)4や端子圧着機60・90を含む端子圧着(端処理)電線製造装置の全体構成を説明する。
【0022】
図1の各方向は、次のように呼ぶ。
図の上下方向;電線送給方向、前後方向
図の左右方向;左右方向、横方向
図の上方向;前、先
図の下方向;後、元
【0023】
端子圧着電線製造装置1は、機台(テーブル)3上に設置されており、下記の各主要部を備えている。
電線送給部10;
図1の下方に配置されており、コイル状に巻かれた電線束(図示されず)から電線を引き出して、図の上方に電線を送給する(電線を長手方向に繰り出す)。
【0024】
1側電線搬送部20;送給された電線の先端(トップ)をクランプする1側クランプ(ヘッド)25や、同クランプ25を電線長手方向にスライド(前後進)させる前後機構23、同機構23を旋回させる旋回機構21を有する。1側クランプ25は、送給され所定長さに切断される電線の後行部分(後端はまだリールにつながっている電線、「1側電線」という)の先端を把持し、切断皮剥き部4と1側端子圧着機60との間で搬送する(搬送経路は矢印参照)。なお、1側クランプ25の把持ツメは、エアシリンダ駆動による開閉構造となっており、電線送給繰り出し合わせた把持ツメ開閉を行うものである。1側電線搬送部20の前後機構23には、電線の繰り出し(太矢印参照)を案内するチューブ(図示されず)が配設されている。
【0025】
電線切断皮剥き部4;送給部10から1側電線搬送装置20を通って送り込まれた電線を、所定の長さに切断するとともに、電線切断部の先端(トップ)及び後端(テール)の被覆を皮剥き(ストリップ)する。切断皮剥き部4の図の右側には、皮剥きした被覆(剥きカス)を吸引して排出する吸引ダクト50が付設されている。
【0026】
1側圧着機60;切断・皮剥きされた1側電線の先端に端子を圧着する。1側圧着機60の図の右側(切断皮剥き部4寄りの側)には、1側電線端部検出器(光学式検査)69が付設されている。同検出器(光学式検査)69は、電線トップの皮剥き状態や端子の圧着状態、防水栓挿入状態を確認するものである。
【0027】
2側電線搬送部70;電線切断皮剥き部40において所定の長さに切断された電線(2側電線という)の後端(テール)をクランプする2側クランプ71や、同クランプ71を電線軸方向に出し引きする前後機構73、同機構73を旋回させる旋回機構75を有する。2側クランプ71は、2側電線の後端を、切断皮剥き部4と2側圧着機90との間で搬送する。2側電線搬送装置70の近くには、両端に端子を圧着した電線(製品)を払い出す排出機構(配出クランプ81など)も設けられている。
【0028】
2側圧着機90;切断・皮剥きされた2側電線の後端に端子を圧着する。2側圧着機90の図の左側(切断皮剥き部4寄りの側)には、2側電線後端部検出器(光学式検査)99が付設されている。同検出器(光学式検査)器99は、2側電線後端の皮剥き状態や端子の圧着状態、防水栓挿入状態を確認するものである。
【0029】
図2を参照しつつ、実施形態の電線切断皮剥き部(装置)4を説明する。
図2は、同部4の全体構造を示す斜視図である。この
図2における左右の方向は、図を見る者にとっての方向であって、
図1の左右とは整合しない。
図2には、各々上下一対の前端皮剥き刃41・41´、切断刃42・42´、及び、後端皮剥き刃43・43´が、処理される電線の長手方向(電線送給方向、前後方向)に並んで示されている(いわゆる切断刃・皮剥き刃のタンデム配置)。各刃41・42・43の集合体のことをブレードユニットということもある。
【0030】
各刃41・42・43は、上下に延びる長方形の板状であり、刃ホルダー441・443に、それらの基部が固定されている(ホルダーの詳細は
図5~
図8も参照しつつ後述する)。各刃の先端部(基部の反対側、上の刃の下端部・下の刃の上端部)には、切り刃が形成されている。また、刃の先端部は、左右方向の中央部がV字状に凹んでいる。このV字状部分によって、上下の刃が交差して前後にオーバーラップする際に、電線が刃の左右方向中心にセンタリングされる。
【0031】
皮剥き刃41・43のホルダー441は、詳しくは
図5~
図8を参照しつつ後述するが、平面視でU字型をしており、その前後端面に、各刃が固定されている。ホルダー441の右側端面は、スライドブロック45の端部左側面に当てられて固定されている。スライドブロック45は、ボールスクリュー47によって上下駆動される(詳細後述)。ホルダー441のU字の中の凹部441gは、切断刃42及びそのホルダー443が上下に動く空間となっている。
【0032】
切断刃42の基部(切り刃の反対側部分)は、切断刃ホルダー443の後側面の凹部443h(
図8参照)に固定されている。ホルダー443は、切断刃42の側の四角く分厚い板状の刃固定部443g、その上部に接続する延長部443k、および、その上部に接続するロッド連結部443yを有する。同連結部443yは、エアシリンダ44のシリンダロッド448に接続されており、切断刃42・ホルダー443は、エアシリンダ44によって上下駆動される。
【0033】
この実施形態の電線切断皮剥き装置4の特徴は、電線の長手方向の交差方向(実施形態では上下方向)に往復駆動されるスライドブロック45に搭載された、切断刃42、及び、それを保持する切断刃ホルダー443を、上記方向に往復駆動するシリンダ44を備えることである。
【0034】
上記の「交差方向」は、一般的には長手方向の直角方向であり、標準的には上下方向である(ただしそれに限定されず、水平方向であってもよい)。本実施形態においては、スライドブロック45は、精密な位置決めが可能な機構、すなわち、モータ(図示されず)とボールスクリュー47により、開閉移動される。というのは、上下に対向する一対の皮剥き刃41・43は、互いに近付く位置(閉位置)において、刃先が電線の芯線には食い込まず、被覆には適切な深さまで切込むという、微妙な位置で停止しなければならないからである。電線の径・被覆厚さは多種多様であるので、それらに応じて、皮剥き刃は、精密な切り込み位置制御を要する。
【0035】
具体的な構造としては、本実施形態の切断皮剥き装置4は、上下に延びるコラム48を主な構造体として構成されている。同コラム48には、同じく上下に延びるボールスクリュー47が、回転自在に取付けられている。ボールスクリュー47には、その上部と下部で、反対方向のらせん溝が切られている。そのらせん溝には、上下のスライダ459・459´の内部のボールナット(図示されず)が螺合している。この構成により、ボールスクリュー47が、ある方向及びその反対方向に回転すると、上下のスライダ459・459´は、互いに近づくか又は遠ざかるように、往復駆動される。
【0036】
一方、切断刃42は、電線を完全に切断すればよいのであるから、上下一対の刃がオーバーラップする閉位置の位置決め精度がそれほど求められない。そこで、切断刃は、対向する一対の刃がシリンダで高速駆動するようにしている。切断刃42の開位置(電線から遠ざかった回避位置)は、V字型などの対向する切り刃が、電線の存在・進行する空間から相当逃げていないと、不用意に刃が電線に触れて電線が傷付くおそれがある。このような事情により、切断刃はストロークが長いので、移動速度を早くして作動時間を短くし、タクトタイムを短縮することが重要である。このような各刃の特性に応じて、本実施形態においては、電動とシリンダ駆動を組み合わせてある。なお、シリンダをスライドブロックに搭載することにより、電動ボールネジの動作によるスライドブロックの動きと組み合わせることができ、電線切断までの時間(距離)を短縮することが可能となる。また、配置構造や部品点数の面からは、スライドブロックとの干渉防止構造や構成部品数を削減できる。
【0037】
次に、
図3・
図4を参照しつつ、切断刃42と皮剥き刃41・43の動作の一例を説明する。
図3は、切断刃42と皮剥き刃41・43のセット(ブレードユニット40)と、切断・皮剥きされる電線Wの側面図である。電線Wに付記された矢印は、電線Wの送給方向である。図には、「後」から「前」方向に並んだ、それぞれ上下一対の第一皮剥き刃41・切断刃42・第二皮剥き刃43が示されている。各刃は、前述の機構により、上下に駆動される。
図3の状態は、電線Wが送給されてきたところある。
【0038】
電線Wは、上下一対の第一皮剥き刃41・切断刃42・第二皮剥き刃43の間(刃部140)を通っている。刃部140には、上下前後の金属製の舌状片141・141´・142・142´が設けられている。
【0039】
図4は、皮むき装置における皮むき工程を説明する図であり、(A)は電線が各刃(退避)の間に進入した状態、(B)は切断刃42及び皮剥き刃41・43が電線に近づいた状態、(C)は長さ決めのための切断完了状態、(D)は切断刃が退避し皮剥き長さが設定された状態、(E)は皮剥き刃が電線被覆に切込んだ状態、(F)は電線を前後に引いて(皮剥き刃から遠ざけて)皮剥きし終わった状態である。
【0040】
図4(A)の電線が各刃の間に進入したときの状態では、切断刃42及び皮剥き刃41・43は、電線Wの進路から退避している(上刃は上に、下刃は下に逃げている)。電線Wは、図示省略されているが、前側の端部(先端、トップ)に、前工程で端子が圧着されている(電線先端に圧着された端子をトップ端子T1という)。そして、製品の長さ寸法に対応した長さだけ、前に送られている。なお、この(A)の状態から(F)の状態まで、1側クランプ25及び2側クランプ71は、切断皮剥き部4の前後で電線Wを把持している(図示省略)。
【0041】
図4(B)は、切断刃42及び皮剥き刃41・43が、電線に少し近づいた状態である。この(B)の状態への(A)からの移動は、モータ・ボールねじの駆動(スライドブロック45のスライド)により行われる。この(B)の状態で、皮剥き刃41・43のV字状の切り刃の両先端が、ほぼ電線送給の軸線の高さになっている。そのため、電線Wの左右方向の揺れは、皮剥き刃41・43の外には出ないように規制されている。
【0042】
図4(C)は、電線長さ決めのための切断が完了した状態である。切断刃42・42´は、
図4(B)の状態からエアシリンダ44によって高速駆動され、
図4(C)では、上下刃の切り刃の幅方向中央部がオーバーラップしている。前述したとおりであるが、切断後の先行電線を2側電線W2といい、後行電線を1側電線W1という。
【0043】
図4(D)は、切断刃42・42´が、エアシリンダ44の駆動により、電線から逃げて退避した状態である。また、電線Wを、その皮剥き長さに対応して、長手方向に移動させた状態である。すなわち、1側電線W1は(C)の切断時よりも後側に引かれており、2側電線W2は(C)の切断時よりも前側に引かれている。各電線の引き動作は、各電線の端部を把持する各クランプ25・71の前後動作による。皮剥き刃41・43は、電線の被覆の表面に近付いている。
上記の
図4(C)及び(D)の工程において、切断刃42を空圧シリンダ44で単独・高速動作させることにより、皮剥き刃41・43の停止中にも、また逆方向への移動中にも、切断刃42を移動させることができるため、切断・被覆剥離工程の時間を短縮できる。さらに、本実施形態の切断皮剥き装置4では、皮剥き長さが「皮剥き刃-切断刃間隔」よりも多少長い加工を行うことも容易である。すなわち、各電線クランプ25・71が切断皮剥ぎ装置4との干渉及び、反対面の電線等の干渉による曲がりが発生しない範囲で、電線切断・切断刃42退避後に、交互に1側電線W1を前進させたり、2側電線W2を後退させたりしても、電線の前後端が切断刃42に当たることはない。
【0044】
図4(E)は、皮剥き刃41・43を電線被覆に切込んだ状態である。この(E)の状態への(D)からの移動は、モータ・ボールねじの駆動(スライドブロック45のスライド)により行われる。
【0045】
図4(F)は、電線を前後に引いて(皮剥き刃から遠ざけて)、皮剥きし終わった状態である。各電線の引き動作は、各電線の端部を把持する各クランプ25・71の前後動作による。剥いた被覆カス(図示されず)は、皮剥き刃41・43の内側(切断刃42側)から、剥きカス吸引ダクト50内に負圧吸引され、排出される。
【0046】
本実施形態の切断皮剥き装置4では、エアシリンダとボールネジの直動動作を、それぞれ単独動作可能(同時動作も可能)に組合せた動作となっている。その結果の一例では、1タクト(
図4の(A)~次の(A)まで)の間の切断刃42の移動距離が10mmと、切断刃・皮剥き刃一式同一動作の比較例の場合の14.5mmと比べて、4.5mm短くなった。この移動距離の差を、ブレードユニット40の平均移動速度300mm/秒で割ると、その時間差は、0.015秒となる。その他の電線切断皮剥き工程で時間短縮、さらに、周辺装置における改善と組み合わせることで、全体動作タクトを有意に短縮することができ、生産性を向上できる。
【0047】
図5・
図6・
図7・
図8を参照しつつ、切断刃42や皮剥き刃41・43、及び、それらのホルダー441・443の詳細構造、並びに、刃交換の動作について説明する。なお、これらの図における左右の方向は、図を見る者にとっての方向であって、他の図(
図1・
図2など)の左右と整合しない場合もある。
【0048】
図5は、上の皮剥き刃41・43及び切断刃42が、切断皮剥き装置4に取付けられている状態の正面図である。
図6は、上の皮剥き刃41・43及び切断刃42、及び、それらのホルダー441・443が、スライドブロック45やシリンダロッド448から取り外された状態である。
図7は、上の切断刃42及びそのホルダー443と、皮剥き刃41・43及びそのホルダー441とを分解した状態である。(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
図8は、上の皮剥き刃41・43をホルダー441から外し、下の切断刃42をホルダー443から外した状態の斜視図である。
【0049】
上記の各図は、上の刃に関する図である。下の切断刃42´や皮剥き刃41´・43´、並びにそれらのホルダー441´・443´は、基本的には、上の刃やホルダーと上下線対称の形状・構造をしている。ここでは、上の刃やホルダーについて説明する。
【0050】
図5には、上の皮剥き刃41・43が、電線送給方向に見た状態(正面図)で示されている。 皮剥き刃41・43は、それの基部(切り刃の反対側部分)がホルダー441の端面の溝に嵌って、ネジ413で固定されている。
【0051】
皮剥き刃ホルダー441は、
図5に見られるように、左右に比較的長い壁部441cを有する。同壁部441cは、
図7(B)や
図8に見られるように、前後方向に対向する一対の壁部441cとして形成されている。
図7の(B)や
図8に分かり易く示すように、ホルダー441のU字の中の凹部441gは、切断刃42及びそのホルダー443が上下に動く空間となっている。皮剥き刃ホルダー441は、スライドブロック45の右下端面45r(
図6参照)に当てられて、それらのボルト孔45m・441mにボルト415が通されて固定されている。
【0052】
皮剥き刃ホルダー441は、上述のように、第一皮剥き刃41及び第二皮剥き刃43の両者を保持する同一の物である。
図8に示すように、U字のホルダー441の口(壁部441cの開放端部)は、プレート442が当てられて塞がれている。同プレート442の内側には、切断刃ホルダー443の刃固定部443gが、上下摺動自在・左右抜出し不能に当たっている。このような構造により、両皮剥き刃(41・43)のホルダーが別々の場合に比べて、各皮剥き刃(41・43)の間のズレが小さい。また、シリンダ駆動の切断刃42が、ぐらつかずに、スムーズに駆動案内される。別言すれば、切断ユニットが単独で動作しながら、各皮剥き刃41・43との位置関係を保ち、容易に位置決めと刃の交換作業を行うことができる。
【0053】
切断刃42の基部(切り刃の反対側部分)は、切断刃ホルダー443にネジ445で固定されている。ホルダー443は、
図7・
図8に分かり易く示すように、切断刃42の下部の分厚い板状の刃固定部443g、それに接続する延長部443k、および、それに接続するロッド連結部443yを有する。同連結部443yは、エアシリンダ44のシリンダロッド448に接続されており、切断刃42・ホルダー443は、エアシリンダ44によって上下駆動される。
【0054】
図6においては、上の皮剥き刃41・43及び切断刃42と、それらのホルダー441・443とが、組み合わさったままの状態で、スライドブロック45やシリンダロッド448から取り外されている。すなわち、ボルト444がボルト孔45m・441mから外され、皮剥き刃ホルダー441は、スライドブロック45の右下端面45rから右に離れている。切断刃ホルダー443は、ロッド連結部443yの内溝443z(
図7(B)参照)が、シリンダロッド448の先のリングフック部448bからスライドして外されている。
【0055】
図6の状態では、スライドブロック45とシリンダロッド448のリングフック部448bより、皮剥き刃ホルダー441と切断刃ホルダー443を取り外し、分離した状態にある。この状態においては、皮剥き刃ホルダー441の中央部の角溝にプレート440を取り付けた角穴に、ホルダー443が入った状態にあり、ホルダー443の形状により落下がしない。この皮剥き刃ホルダー441とホルダー443を分離したものが、
図7、
図8にて表記されている。
【0056】
図7は、上の切断刃42及びそのホルダー443と、上の皮剥き刃ホルダー441とを分離した状態である。すなわち、切断刃ホルダー443を、皮剥き刃ホルダー43に対して上に持ちあげて抜いている。
【0057】
図7の状態から、
図8に示すように、皮剥き刃41・43をホルダー441に止めているネジ413を外せば、皮剥き刃41・43をホルダー441から取り外すことができる。切断刃42をホルダー443に止めているネジ445を外せば、切断刃42をホルダー443から取り外すことができる。その後、新しい刃、あるいは違う形状・寸法の刃に取り替えることができる。各ブレード交換後、逆の手順にて、ブレードユニット40を取付ける。なお、
図5に示すように、スライドブロック45の位置決めピン45hに、ホルダー441の凸部442を当てて、ホルダー441をスライドブロック45に対して位置決めできる。
【0058】
なお、各々のホルダー441・443を複数個準備し、それらに新しい刃を組み込んでおけば、
図6の状態から、刃とホルダーの組み立てセットごと、一式で交換できる。この場合、刃の交換時間が短くなり、製造装置の休止時間を短縮できる。
【0059】
刃部140には、
図3に一番分かり易く示すように、金属薄板(一例)からなる舌状片141・141´・142・142´が設けられている。後側の上の舌状片141は、上の第一皮剥き刃41と、上の切断刃42の間に右から左に(
図3の紙面の裏から表に)差込まれている。後側の下の舌状片141´も、同様に、下の皮剥き刃41´と、下の切断刃42´の間に差込まれている。前側の上下の舌状片142・142´の各々も、同様に、上下の切断刃42・42´の各々と、皮剥き刃43・43´の各々の間に差込まれている。
【要約】
【課題】 電線の切断・皮剥き工程における生産効率を向上させる。
【解決手段】 電線切断皮剥き装置4は、電線の長手方向に沿って配列された、電線を切断する切断刃42、及び、電線の被覆に切込みを入れる皮剥き刃41・43を具備する。また、電線の長手方向に対する交差方向に往復駆動されるスライドブロック45と、該スライドブロック45に取付けられた、皮剥き刃41・43を保持する皮剥き刃ホルダー441を備える。さらに、スライドブロック45に搭載された、切断刃42を保持する切断刃ホルダー443、及び、該切断刃ホルダー443を交差方向に往復駆動する切断刃駆動アクチュエータ44を備える。
【選択図】
図2