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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電気自動車
(51)【国際特許分類】
   H02K 16/00 20060101AFI20240201BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20240201BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20240201BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240201BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20240201BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20240201BHJP
   F16C 35/073 20060101ALI20240201BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H02K16/00
B60K1/02
H02K21/14 M
H02K9/19
H02K7/102
F16C35/077
F16C35/073
B60T1/06 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020545779
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019056159
(87)【国際公開番号】W WO2019175170
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】18161618.6
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519425350
【氏名又は名称】フレット・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FLET GmbH
【住所又は居所原語表記】Westbahnhof 3B-5,38118 Braunschweig,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー、ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】グローテ、ヨッヘン
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10359159(DE,A1)
【文献】国際公開第2014/015209(WO,A2)
【文献】特開2001-190047(JP,A)
【文献】特開平11-266566(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02418242(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0054993(US,A1)
【文献】特開2010-142090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00 - 7/20
H02K 9/00 - 9/28
H02K 16/00 -16/04
B60K 1/02
H02K 21/14
F16C 35/077
F16C 35/073
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1電気モータモジュール(38.1)であって、
第1ロータシャフト(40.1)を有する第1ロータ(42.1)を具備し、
前記第1ロータシャフト(40.1)が第1シャフト連結構造(46a)を有する、第1電気モータモジュールと、
(b)少なくとも1つの第2電気モータモジュール(38.2)であって、
第2ロータシャフト(40.2)を有する第2ロータ(42.2)を具備し、
前記第2ロータシャフト(40.2)が第2シャフト連結構造(46b)を有する、第2電気モータモジュールと、
(c)前記第1ロータシャフト(40.1)を支持するために用いられる回転支承部(68)と、を備え、
(d)前記第1ロータシャフト(40.1)と前記第2ロータシャフト(40.2)とが前記シャフト連結構造(46)によって形状結合的に互いに連結されている、電気モータ(18)を有する電気自動車(10)において、
(e)前記シャフト連結構造(46)は、少なくとも部分的に前記回転支承部(68)によって取り囲まれ、
(f)少なくとも2つの電気モータモジュール(38.1、38.2)が同じ構造であり、
(g)各電気モータモジュールの各ロータは、それぞれ2つの回転軸受によって支承されており、それにより前記電気モータモジュールが互いに独立して機能し得、
(h)前記回転支承部(68)は、リング状に配置されている転動体(64)の第1セットを有する第1回転軸受(62a.1)と、
リング状に、かつ前記第1セットに対してずらして配置されている転動体(66)の第2セットを有する第2回転軸受(62b.2)とを有し、
前記シャフト連結構造(46)が少なくとも部分的に前記第1回転軸受(62a.1)と前記第2回転軸受(62b.2)とによって取り囲まれていることを特徴とする、電気自動車。
【請求項2】
少なくとも2つの電気モータモジュール(38.1、38.2)が永久磁石式同期モータであることを特徴とする、請求項1に記載の電気自動車(10)。
【請求項3】
(a)前記第1シャフト連結構造(46a)が軸方向に延在する凸部(58)を有し、
(b)前記第2シャフト連結構造(46b)が軸方向に延在する凹部を有し、それにより前記第1シャフト連結構造(46a)と前記第2シャフト連結構造(46b)とが接触面(Ki)に沿って軸方向に互いに当接することと、
(c)前記接触面(Ki)は、前記ロータ(42)の回転軸線(D)を含む角度測定平面(E)と最大5°の角度をなすことと
を特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の電気自動車(10)。
【請求項4】
(a)前記電気モータ(18)は、軸方向に延在する凸部(58)を有する回転エンコーダ連結構造(80)を有する回転エンコーダ(76)を有することと、
(b)前記回転エンコーダ(76)は、電気モータモジュール(38)のシャフト連結構造(46)と形状結合的に接続されていることと
を特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
【請求項5】
(a)前記電気モータ(18)は、軸方向に凸部(58)が延在するブレーキ連結構造(82)を有するブレーキ(78)を具備することと、
(b)前記ブレーキ(78)は、電気モータモジュール(38)又は回転エンコーダ(76)のシャフト連結構造(46)と形状結合的に接続されていることと、
を特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
【請求項6】
前記第1ロータシャフト(40.1)と前記第2ロータシャフト(40.2)とが冷却チャネル(84)を有することを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
【請求項7】
前記電気モータ(18)は、
(a)第1電気モータモジュール(38.1)であって、
第1ロータシャフト(40.1)を有する第1ロータ(42.1)と、
前記第1ロータシャフト(40.1)を支承するために用いられる回転支承部(68)と、を有し、
前記第1ロータシャフト(40.1)が第1シャフト連結構造(46a)を有する、第1電気モータモジュールと、
(b)少なくとも1つの第2電気モータモジュール(38.2)であって、
第2シャフト連結構造(46b)を有する第2ロータシャフト(40.2)を具備する第2ロータ(42.2)を有する、第2電気モータモジュールとから構成されており、
(c)前記第1ロータシャフト(40.1)と前記第2ロータシャフト(40.2)が前記シャフト連結構造(46)によって形状結合的に互いに連結されており、
(d)前記シャフト連結構造(46)は、少なくとも部分的に前記回転支承部(68)によって取り囲まれており、
(e)冷却チャネルが前記第1ロータ(42.1)と前記第2ロータ(42.2)とを通って延びる、ことを特徴とする請求項6に記載の電気自動車(10)。
【請求項8】
(a)前記第1ロータシャフトが
軸方向に延びる中心冷却チャネルと、
径方向外へ延びるとともに、前記中心冷却チャネルと接続されている供給分岐チャネル(110)と、
外へ延びるとともに、前記中心冷却チャネルと接続されている排出分岐チャネル(115)と、を有し、
(b)ステータが
冷却流体(86)を前記供給分岐チャネル(110)に供給するための冷却流体供給部(120)と、
前記排出分岐チャネル(115)から冷却流体(86)を導出するための冷却流体排出部(118)と、を有することを特徴とする、請求項6に記載の電気自動車(10)。
【請求項9】
冷却流体供給部(120)は、
シャフトリングチャネル(129)を形成する第1シャフトシール(122)と第2シャフトシール(124)と、
冷却流体(86)を前記リングチャネルに供給するように形成されている導管と、を有することを特徴とする、請求項6又は請求項8に記載の電気自動車(10)。
【請求項10】
前記第1ロータ(42.1)は、
(a)磁石支持体(54)と、
(b)前記磁石支持体(54)に取り付けられている複数の永久磁石(56)と、
(c)前記磁石支持体(54)を軸方向に通って延び、かつ中心冷却チャネルと接続されているサブチャネル(94)と、
を有することを特徴とする、請求項6~請求項9のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
【請求項11】
(a)永久磁石(56)は、ステータ電磁石(134)の径方向外側に配置されていることと、
(b)前記第1ロータシャフトは
第1軸方向に延在する第1スリーブ区分(104)と、
前記第1軸方向とは逆の方向に延在する第2スリーブ区分(106)と、
を有し、
前記スリーブ区分(104、106)が互いに対称であることと、
(c)前記スリーブ区分(104、106)が冷却チャネル(84)を含むことと、を特徴とする、請求項6~請求項10のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
【請求項12】
(a)スリーブ区分(104、106)は管状部材(102)に形成されており、
(b)前記管状部材(102)がウェブ(108)に取り付けられており、
(c)前記ウェブ(108)は、中心冷却チャネルを前記管状部材におけるアウターチャネルと接続する少なくとも1つの径方向外へ延びる接続チャネルを有することを特徴とする、請求項6~請求項11のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
【請求項13】
ステータ(116)は冷却接続パイプ(130)を有し、前記冷却接続パイプは、ステータ電磁石(134)を冷却するように配置されていることを特徴とする、請求項6~請求項12のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
【請求項14】
(a)前記電気モータ(18)は、
(i)第1電気モータモジュール(38.1)であって、
第1シャフト連結構造(46a)と第1冷却チャネル(84.1)とを有する第1ロータシャフト(40.1)を具備する第1ロータ(42.1)を備える、第1電気モータモジュールと、
(ii)少なくとも1つの第2電気モータモジュール(38.2)であって、
第2シャフト連結構造(46b)と第2冷却チャネル(84.2)とを有する第2ロータシャフト(40.2)を具備する第2ロータ(42.2)を備える、第2電気モータモジュールと、から構成されており、
(b)前記第1ロータ(42.1)と前記第2ロータ(42.2)とは前記シャフト連結構造(46)によって形状結合的に互いに連結されていることと、
(c)前記第1冷却チャネル(84.1)と前記第2冷却チャネル(84.2)は前記シャフト連結構造により互いに接続されていることを特徴とする、請求項6~請求項13のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
【請求項15】
(a)前記第1電気モータモジュール(38.1)は、第1ハウジング連結構造(70a.1)を有する第1モジュールハウジング(44.1)を具備し、
(b)前記第2電気モータモジュール(38.2)は、第2ハウジング連結構造(70b.2)を有する第2モジュールハウジング(44.2)を具備し、
(c)前記電気モータモジュール(38)は、前記電気モータモジュールのハウジング連結構造(44)によって形状結合的に互いに接続されていることと、
(d)前記ハウジング連結構造(70)は、前記第1回転軸受(62a.1)を径方向に取り囲むことを特徴とする、請求項14に記載の電気自動車(10)。
【請求項16】
(a)前記第1ハウジング連結構造(70)は、少なくとも部分的に第1円錐形ハウジングリングによってなり、
(b)前記第2ハウジング連結構造(70.2)は、少なくとも部分的に第2円錐形ハウジングリングによってなることと、
(c)前記円錐形ハウジングリングは、少なくとも部分的に円錐形の内面を有する連結クランプ(72)によって接続されていることを特徴とする、請求項15に記載の電気自動車(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)第1電気モータモジュールであって、第1ロータシャフトを有する第1ロータを具備し、ロータシャフトが第1シャフト連結構造を有する、第1電気モータモジュールと、(b)少なくとも1つの第2電気モータモジュールであって、第2ロータシャフトを有する第2ロータを具備し、第2ロータシャフトが第2シャフト連結構造を有する、第2電気モータモジュールと、(c)第1ロータシャフトを支持するために用いられる回転支承部(Drehlagerung)と、を備え、(d)第1ロータシャフトと第2ロータシャフトとが連結構造によって形状結合的に互いに連結されている電気モータを有する電気自動車に関する。これに加えて、本発明は、特に電気自動車用に形成されているがこれは必要ではない、上記の特性を有する電気モータに関する。
【0002】
これに加えて、本発明は、(a)ステータ電磁石を有するステータと、(b)永久磁石を有するロータとを具備する電気モータを有する電気自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、その最も一般的な形態では永久磁石式同期モータであり得るが必ずしもそうでなくてもよく、特に非同期式モータであってもよい電気モータを有する電気自動車に関する。この場合、ロータは永久磁石を有し得るが、これは必要ではない。
【0004】
旅客運送及び貨物運送のために電気自動車、特に乗用車の使用が増えつつある。1つの車両モデルに異なったモータ出力が提供されるべき場合、電気自動車の大量生産が複雑であることが分かった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、従来技術における欠点を低減するという課題にもとづいている。
【0006】
本発明は、連結構造が少なくとも部分的に回転支承部によって取り囲まれている一般的な電気自動車又は一般的な電気モータによってこの問題を解決する。
【0007】
本発明の利点は、このようにすることで電気モータを非常にコンパクトに製造できるということである。したがって、好ましい一実施形態によれば、ハウジング及びロータシャフトにおける連結構造による接続が、構造長さを付加的な軸方向の延長につながらないようにすることが可能である。
【0008】
これに加えて、このような連結構造は、通常、比較的簡単に製作できるという点で有利である。したがって、電気モータを2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の電気モータモジュールから組み立てることが可能である。あらゆるモジュール方式でのように、個々のコンポーネントをモジュール化することは、通常、より効率的な製造につながる。
【0009】
好ましくは、電気モータモジュールの数は20未満である。
【0010】
好ましい一実施形態では、各電気モータモジュールの各ロータがそれぞれ2つの回転軸受によって支承され、それにより電気モータモジュールは互いに独立して機能し得る。換言すると、各電気モータモジュールのロータは、電気モータモジュールが互いに接続されていない場合でも回転軸受によって支承される。
【0011】
好ましくは、回転軸受は転がり軸受である。
【0012】
好ましくは、少なくとも2つの電気モータモジュールが永久磁石式同期モータである。すべての電気モータモジュールが永久磁石式同期モータである場合は有利である。
【0013】
好ましくは、少なくとも2つの電気モータモジュールの定格出力は25~75キロワットである。
【0014】
好ましくは、シャフト連結構造は、回転支承部と同じ軸方向高さに配置されている。
【0015】
電気モータモジュールのロータシャフトは(組付状態で)同一直線上に延びる。
【0016】
好ましい一実施形態では、回転支承部は、リング状に配置されている転動体の第1セットを有する第1回転軸受と、リング状に、かつ第1セットに対してずらして配置されている転動体の第2セットを有する第2回転軸受とを具備する。シャフト連結構造は、この場合、好ましくは少なくとも部分的に、特に好ましくは完全に第1回転軸受と第2回転軸受とによって取り囲まれている。第1回転軸受及び/又は第2回転軸受は、例えば転がり軸受、特に玉軸受である。
【0017】
この実施形態の利点は、個々の各電気モータモジュールの連結構造が両側で少なくとも1つの転がり軸受によって支承されていることである。2つの電気モータモジュールをつなぎ合わせるために、それぞれの電気モータモジュールの2つの連結構造を形状結合的に互いに接続しさえすればよい。
【0018】
このアセンブリにおいて、電気モータモジュールのそれぞれ最外側に位置する回転軸受が互いに隣接することが有利である。このようにすることで、特にコンパクトな電気モータが得られる。電気モータのモジュール化が可能であることにより、電気モータは車両、特に乗用車に使用するためによく適している。もっとも、この電気モータは、他の車両にも、かつ他の領域にも適用可能である。
【0019】
好ましくは、第1シャフト連結構造は、軸方向に延在する連結構造、特に凸部を有している。すなわち、好ましくは、第1シャフト連結構造は、軸方向に延在する凸部を有する。第2シャフト連結構造は、好ましくは、同様に軸方向に延在する凹部を有し、それにより第1シャフト連結構造と第2連結構造とが軸方向に接触面に沿って互いに当接する。接触面がロータの回転軸を含む角度測定平面と最大5°の角度をなすことが有利である。このようにすることで、電気モータモジュールの接続部にトルクを印加する際にその他に生じ得る軸方向力が低減される。
【0020】
凸部と凹部とが非対称に形成されていることが可能である。この場合、凸部と凹部とが互いに当接する第1接触面が角度測定平面に相対して第2接触面とは別の角度で延在する。特に、角度のうちの1つがゼロであることが可能である。この場合、ロータが第1方向に回転する場合に軸方向力は決して生じない。これに対して、ロータが逆の方向に回転する場合にはより大きい力が生じる。
【0021】
好ましくは、電気モータが軸方向に延在する凸部を有する追加コンポーネント連結構造を有する少なくとも1つの追加コンポーネントを有し、追加コンポーネントは、電気モータモジュールの連結構造のうちの1つと形状結合的に接続されている。追加コンポーネントが電気モータモジュールと同じ連結構造を有することによって、追加コンポーネントは要求に応じて2つの電気モータモジュール間で任意に配置される。
【0022】
追加コンポーネントは例えば回転エンコーダ(Drehgeber)である。
【0023】
この場合、電気モータは、相応に、軸方向に延在する凸部を有する回転エンコーダ連結構造を有する回転エンコーダを有し、回転エンコーダは、電気モータモジュールの連結構造のうちの1つと形状結合的に接続されている。回転エンコーダが電気モータモジュールと同じ連結構造を有することにより、回転エンコーダを要求に応じて2つの電気モータモジュール間に任意に配置することができる。
【0024】
好ましくはすべての電気モータモジュールのロータシャフトが互いに形状結合的に連結可能な連結構造を有することに言及しておく。
【0025】
これに代えて、又はこれに加えて、追加コンポーネントはブレーキである。この実施形態では、電気モータは、軸方向に延在する凸部を有するブレーキ連結構造を有するブレーキを具備し、ブレーキは、電気モータモジュール又は回転エンコーダの連結構造と形状結合的に接続されている。
【0026】
さらにこれに代えて、又はこれに加えて、追加コンポーネントはクラッチである。
【0027】
本発明の第2の態様は、ステータ電磁石を有するステータと、永久磁石を有するロータとを備え、ロータシャフトが冷却チャネルを有する電気モータに関する。相応の電気モータを有する電気自動車は、同様に本発明による。換言すると、本発明によれば、電気モータを有する電気自動車であって、(a)ステータ電磁石を有するステータと、(b)永久磁石を有するロータとを有し、(c)第1ロータシャフトと第2ロータシャフトとが冷却チャネルを有する電気モータを有する電気自動車である。この電気自動車が請求項1に記載の特徴を有することが可能であるが必要ではない。上記の好ましい実施形態は、この段落に記載された発明の好ましい実施形態でもある。以下に挙げられる好ましい実施形態は2つの発明に関するものである。
【0028】
この電気モータが第1電気モータモジュールと第2電気モータモジュールとから構成され、電気モータモジュールが上記の特性を有することが有利である。第1ロータシャフトと第2ロータシャフトとがシャフト連結構造によって形状結合的に互いに連結されており、冷却チャネルが好ましくは第1ロータと第2ロータとを通って延びる。これに加えて、連結構造が少なくとも部分的に回転支承部によって取り囲まれることが有利である。このようにすることで、冷却されたロータとモジュール式に組み立てられた電気モータが得られる。
【0029】
ロータシャフトが軸方向に延びる中心冷却チャネルと、径方向外へ延びるとともに、中心冷却チャネルと接続されている供給分岐チャネル、これに加えて外へ延びるとともに中心冷却チャネルと接続されている排出分岐チャネルとを有することが有利である。このようにすることで、冷却流体を供給分岐チャネルを通じてステータに供給することが可能である。ステータは、好ましくは冷却流体、特に冷却液を供給分岐チャネルに供給するための冷却流体供給部、冷却流体を排出分岐チャネルから導出するための冷却流体排出部を具備する。
【0030】
冷却流体供給部がリングチャネルを形成する第1シャフトシールと第2シャフトシールとを有することが特に好ましい。これに加えて、冷却流体供給部は、好ましくは、冷却流体をリングチャネルへ供給するように形成されている導管を具備する。リングチャネルは、冷却流体が供給分岐チャネルに流れ込むように配置されている。換言すると、供給分岐チャネルは、ロータの長手軸に沿って軸方向長さの第1シャフトシールと第2シャフトシールとの間に配置されている。
【0031】
2つの電気モータモジュールは同じ構造であることが有利である。2つより多い電気モータモジュールが存在する限り、好ましくは電気モータモジュールの大半が、特に有利にはすべての電気モータモジュールが同じ構造である。電気モータモジュールが同じ構造であるという特徴は、特に、電気モータモジュールは少なくとも90重量パーセントが同じ部材からなることと解される。特に、好ましくは電気モータモジュールの少なくとも2つが少なくとも95重量パーセント、特に完全に、技術的機能のために必要な部材が一致する。電気モータモジュールがその機能と関係のない部材と、例えば色、又は当然のことながら場合によってはシリアル番号を有するラベルで区別されることが可能であるが、必要ではない。すべての電気モータモジュールが同じ構造であることが特に好ましい。
【0032】
好ましくは、電気モータモジュールのうちの少なくとも1つのモータは磁石支持体と、磁石支持体に取り付けられた複数の永久磁石とを具備する。ロータが、少なくとも軸方向にも磁石支持体を通って延びるとともに中心冷却チャネルと接続されているサブチャネル(Nebenkanal)を有することが有利である。このようにすることで、磁石支持体が効果的に冷却され得る。
【0033】
永久磁石は、キュリー温度を上回るとその磁性を失う。なぜなら電気モータ、特に電気自動車に搭載される電気モータは、比較的高温の周辺環境でも機能しなければならず、これに加えて永久磁石及び磁石支持体の加熱が特に渦電流損失によって回避可能でないので、永久磁石が過度に加熱されないことが確保されていなければならない。永久磁石の冷却温度を下回る所定の閾値温度を下回った場合に、これまで、このことは温度を検出することによって、及び相応のモータをオフにすることによって行われている。この手順は引き続き可能であり好ましいが、磁石支持体を冷却することによって、必要ではなくなる。
【0034】
永久磁石がステータ電磁石の径方向外側に配置されていることが特に有利である。その場合、電気モータは、アウターロータと呼ばれてもよい。ロータシャフトが、第1軸方向に延在する第1スリーブ区分と第1軸方向とは逆の方向に延在する第2スリーブ区分とを有するならば特に有利であり、スリーブ区分は好ましくは互いに対称であり、かつ好ましくは冷却チャネルを含む。これらの冷却チャネルは、好ましくは、冷却チャネル、特に中心冷却チャネルと接続されている。スリーブ区分の能動的冷却によって、電気モータが高い連続出力で運転され得る。
【0035】
スリーブ区分は、好ましくは、ウェブに取り付けられている管状部材に形成されている。ウェブは、好ましくは径方向外へ延びる接続チャネルを具備し、接続チャネルは、中心冷却チャネルを管状部材におけるアウターチャネルと接続する。上記の構造形式は、チャネルを有するスリーブ区分を比較的簡単に製造できるようにする。
【0036】
ここで、明細書全体において、特定の対象物が存在するという特徴は、特に、これらの対象物の少なくとも1つが存在することと解されることに言及しておく。この関連で、このことは、ウェブが少なくとも1つの径方向外へ延びる接続チャネルを有することを意味する。
【0037】
ステータが、電磁石を冷却するように配置されている冷却接続パイプ(Kuehlstutzen)を有するならば有利である。損失熱の大部分が電磁石において生じる。それと同時に、電磁石は、通常、永久磁石より温度の影響を受けにくい。それゆえ、冷却流体が冷却回路において流通され、流れ方向で冷却体の後にまず永久磁石、特に磁石支持体を冷却し、その後にステータ電磁石を冷却することが可能である。これに代えて、2つの冷却回路が存在し、1つの冷却回路が永久磁石を冷却し、第2冷却回路が電磁石を冷却することも可能である。
【0038】
電気モータは、上述したように少なくとも2つの電気モータモジュールから構成されているならば有利であり、それぞれの電気モータモジュールのモータはそれぞれ1つの冷却チャネルを有し、2つの冷却チャネルが互いに接続されており、それにより冷却流体が第1冷却チャネルから第2冷却チャネルに流れ得る。
【0039】
好ましくは、第1電気モータモジュールが第1ハウジング連結構造を有する第1モジュールハウジングを具備し、第2電気モータモジュールが第2ハウジング連結構造を有する第2モジュールハウジングを有し、電気モータモジュールがそのハウジング連結構造によって形状結合的に互いに接続されている。このことは、電気モータモジュールの連結の特に簡単な形態である。
【0040】
ハウジング連結構造は、好ましくは、外側から着脱可能に接続可能である。換言すると、それぞれ2つの連結された電気モータモジュールが外側から接続され、互いに外され得るが、その際、必ずしも他の電気モータモジュールが接続されるか、又は互いに外される必要がない。
【0041】
ハウジング連結構造がそれぞれ少なくとも部分的に円錐形ハウジングリングによってなることが特に有利である。電気モータモジュールがハウジング連結構造と互いに形状結合的に接続するためのコネクタを有することが有利である。コネクタは、好ましくは、外側から組付け可能に形成されている。換言すると、電気モータモジュールは、コネクタを外すだけで互いに分離可能である。コネクタは、外側から組付け可能である。
【0042】
好ましくは、コネクタはクランプであり、それによりハウジング連結構造は、クランプによって互いに接続されている。クランプは、好ましくは、少なくとも部分的に円錐形の内面を有し、円錐形の内面は通常、ハウジングリングとクランプとの間に線状接触ではなく、面状接触が生じるように形成されている。
【0043】
好ましくは、第1ロータシャフトと第2ロータシャフト、そして場合によって電気モータのさらに別の、シャフト連結構造によって連結されるコンポーネントが軸方向遊びをもって連結されている。製造公差による、又は運転中の熱に由来する長さ変化によるロータの軸方向の長さ変化は、シャフト連結構造における所定の軸方向の遊びによって補償される。
【0044】
以下、添付の図面をもとにして本発明について詳しく説明する。すべての図面は、様々な電気モータ型式のうちの1つで、すなわち本発明の好ましい実施形態である永久磁石式同期モータとして本発明を示す。しかし例えば非同期モータ又はブラシレス直流モータなどの他の電気モータ型式が使用されてもよい。図面は以下のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1a図1aは、本発明による電気モータを有する本発明による電気自動車の図である。
図1b図1bは、本発明による電気自動車の背面図である。
図1c図1cは、2つの切替クラッチと2つの被駆動アクスルとを有する第2実施形態による電気自動車の斜視図である。
図1d図1dは、4つの切替クラッチを備え、ロータが互いに平行に延びる本発明による2つの電気モータを有する第3実施形態による電気自動車の斜視図である。
図2a図2aは、インナーロータとして形成されているとともに本発明による電気モータの一部であってもよい電気モータモジュールの縮尺通りの斜視図である。
図2b図2bは、図2aによるインナーロータ形の電気モータモジュールのロータの斜視図である。
図3a図3aは、図2a及び図2bによる2つの電気モータモジュールからなるインナーロータの形態の本発明による電気モータに沿う横断面図である。
図3b図3bは、図3aによる電気モータモジュールの詳細図である。
図4a図4aは、3つの電気モータモジュールを備える第4実施形態による本発明による電気モータの縮尺通りの斜視図の部分図である。
図4b図4bは、部分図4aによる電気モータの部分分解図の部分図である。
図5図5は、インナーロータの形態の電気モータである電気モータモジュールに沿う横断面図である。
図6図6は、本発明による電気モータ又はアウターロータ電気モータである本発明による電気モータの電気モータモジュールに沿う横断面図である。
図7a図7aは、図6による電気モータモジュールのロータの等角斜視図の部分図である。
図7b図7bは、部分図7aによるロータシャフト及びロータのウェブの部分図である。
図8図8は、アウターロータ電気モータとして形成されている2つの電気モータモジュールを有する本発明による電気モータに沿う横断面図である。
図9a図9aは、等角斜視図のガラス体の図における本発明による電気モータのための冷却接続パイプの部分図である。
図9b図9bは、部分図9aによる冷却接続パイプのステータキャップ50に沿う横断面の部分図である。
図10図10は、電気モータモジュール38の別の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1aは、フロントアクスルの形態の第1軸12とリアアクスルの形態の第2軸14とを有する電気自動車の形態の本発明による電気自動車10を示す。第1軸12には、ホイール16.1、16.2が取り付けられており、第2軸14にはホイール16.3、16.4が取り付けられている。電気モータ18は、ディファレンシャルと呼ばれてもよいディファレンシャルギヤ20を介して第1軸12のホイール16.1、16.2を駆動する。
【0047】
電流がバッテリ22から電気モータ18に供給される。バッテリ22は、少なくとも2つの、この事例では8つのバッテリユニット24.1、24.2、...24.8を備える。この例ではバッテリは、電気モータ18に供給するための電気エネルギーの貯蔵又は電気エネルギーへの変換に用いられるガルバニ素子からなるあらゆる種類の組立体と解される。
【0048】
モータ回転軸線D18がバッテリユニット24.1、24.3、24.5、24.7とバッテリユニット24.2、24.4、24.6、24.8との間に延びることが見て取れる。モータ回転軸線D18の右側に配置されたバッテリユニット24.1、24.3、24.5、24.7の質量mは、モータ回転軸線D18の左側のバッテリエレメント、すなわちこの事例ではバッテリエレメント24.2、24.4、24.6及び24.8の質量miに相当する。
【0049】
2つの質量m、miが互いに相当するという特徴は、特に、2つの質量が最大20%、好ましくは最大15%互いに相違することと解される。
【0050】
電気自動車10は車両床26を具備する。この実施形態では、バッテリ22と電気モータ18とが車両床26に組み付けられている。これに加えて、電気自動車10は、特に金属板からなる例えば外被、並びにシート及びステアリングなどの図示されないコンポーネントを備える。
【0051】
図1bは、電気自動車10の背面図を示す。電気モータ構造高さhがバッテリ構造高さheに相当することが見て取れる。電気モータ構造高さhは、バッテリ22の質量の90%を包囲する、想定された最小体積の直方体Qiの高さである。これに加えて、図1bは、電気自動車10のボディ28を示す。これに加えて、車室36の平らな床34に配置されている運転席30と助手席32とが示されている。
【0052】
図1aに示された実施形態において、電気モータ18は相前後して連結された3つの電気モータモジュール38.1、38.2、38.3から構成されている。3つのすべての電気モータモジュール38.1、38.2、38.3は同じ構造であり、互いに連結されたロータシャフト40.1、40.2、40.3を有する。電気モータモジュール38.i(i=1、...N;Nは電気モータモジュールの数)は同じ構造である。
【0053】
図1cは、本発明による電気自動車10のボディなしの縮尺通りの斜視図を示し、電気自動車は第1切替クラッチ77.1と第2切替クラッチ77.2とを有している。第1切替クラッチは、電気モータ18と第1軸12のホイール16.1、16.2との間のトルク経路に位置する。第2切替クラッチ77.2は、電気モータ18と第2軸14のホイール16.3、16.4との間のトルク経路に位置する。切替クラッチ77.1、77.2は、好ましくは電気的に切替可能である。このようにすることで、電気自動車10を純粋な前輪駆動又は純粋な後輪駆動、あるいは純粋な全輪駆動とすることが可能である。
【0054】
図1dは、2つの電気モータ18.1、18.2を有する別の実施形態による本発明による、本発明による電気自動車の縮小された縮尺通りの斜視図を示す。2つの電気モータ18.1、18.2は、それぞれの回転軸線が互いに平行に延びる少なくとも2つのモジュールからなる。
【0055】
しかしこれは、技術的意味での平行ということであり、すなわち2つの軸線が数学的意味で互いに平行に延びるということは可能であるが必要ではないということである。特に、回転軸線が互いに、例えば3°未満の角度をなしてもよい。
【0056】
図2aは、第1ロータ42(図2bを参照)とモジュールハウジング44とを有するインナーロータ形の電気モータモジュール38を示す。ロータ42のロータシャフト40に第1連結構造46aが形成されている。モジュールハウジング44は、連結リングと称されてもよいハウジングリング48を備える。この事例では、ハウジングリング48はステータキャップ50aに形成されている。これに加えて、モジュールハウジング44は、第2ステータキャップ50bとステータ支持体52とを備え、ステータ支持体は、2つのステータキャップ50a、50bと接続されており、図示されたインナーロータ形の実施形態ではこれらの2つのステータキャップ間に配置されている。
【0057】
シャフト連結構造46は、部分的にモジュールハウジング44から軸方向に突出し、部分的にモジュールハウジング44の後ろに引っ込んでいる。
【0058】
図2bは、シャフト連結構造46a.1を有するロータ42と、第1連結構造46aの向かい側に配置されている第2シャフト連結構造46b.1とを有するロータ42を示す。ロータ42は磁石支持体54を具備し、この磁石支持体によって永久磁石56.1、56.2が配置されている。永久磁石56.j(j=1、2、...)は、北極と南極とがそれぞれ交互に外向きに配置されている。
【0059】
これに加えて、図2bは、第1連結構造46aが軸方向に延在する凸部58.1を有することを示す。組付状態において、この凸部58.1は2つの接触面K1、K2に沿って、隣接する電気モータモジュールの相補的連結構造に当接する。この事例では、接触面K1、K2は角度測定平面Eと0°~1°の角度をなす。角度測定平面Eは、ロータ42の回転軸線Dを含むとともに、それぞれの接触面Kと少なくとも一箇所で接するか、又は交差する平面である。
【0060】
これに加えて、ロータ42は、第1軸受座面60.1と第2軸受座面60.2とを具備する。
【0061】
図3aは、それぞれ同じ構造の電気モータモジュール38.1、38.2から構成されている本発明による電気モータ18の一実施形態の横断面を示す。
【0062】
第1電気モータモジュール38.1は、玉軸受の形態の第1回転軸受62a.1と第2回転軸受62b.1とを具備する。第2電気モータモジュール38.2は、回転軸受62a.2と第2回転軸受62b.2とを具備する。第1回転軸受62a.1は、リング状に配置された転動体64.1、64.2、...の第1セットを具備する。第2回転軸受62b.2は同様に、第1リングに対してずらしてある第2リングに沿って配置されている、転動体66.1、66.2、...、を具備する。2つの回転軸受62a.1及び62b.2は1つの回転軸受68をなす。第1電気モータモジュール38.1の連結構造46aが第2電気モータモジュール38.2の連結構造46b.2と形状結合を形成することと、連結構造46a.1、46b.2が回転支承部68によって取り囲まれていることが見て取れる。
【0063】
図3aは、第1電気モータモジュール38.1の連結構造46a.1が第2電気モータモジュール38.2の回転軸受62b.2の下まで延在することを示す。これは、ここに示される実施形態の他の特徴から独立した一般に好ましい実施形態である。これに加えて、連結構造46b.2は回転軸受62a.1の下まで延在する。
【0064】
本明細書中で軸方向長さという場合、これは回転軸線Dの方向に延在する模式的に図示されたx軸に沿う位置のことである。特に、それにより連結構造46a.1及び46b.2は、回転支承部38と同じ軸方向高さに配置されている。
【0065】
図3bは、図3aからの部分図を示す。モジュールハウジング44.1が第1円錐形ハウジングリングをなす第1ハウジング連結構造70a.1を具備することが見て取れる。第2モジュールハウジング44.2は、同様に第2円錐形ハウジングリングをなす第2ハウジング連結構造70b.2を具備する。2つのハウジング連結構造70a.1、70b.2は、連結クランプ72の形態のコネクタによって形状結合的に接続されている。連結クランプ72は、ハウジング連結構造70a.1、70b.2とそれぞれ面接触し、かつそれにより形状結合をもたらす円錐形内面74を具備する。
【0066】
これに加えて、図3bは、軸方向の構造長さL1が連結区分の軸方向長さL2の2倍未満であり、ここでは1.5倍未満であることを示す。軸方向構造長さL2は、シャフト連結部(Wellen-Koppelung)の軸方向長さに相当する。連結クランプ72の軸方向構造長さL3は、軸方向構造長さL2よりわずかに小さい。
【0067】
連結クランプ72は、これが外側から取り外され、かつ締め付けられ得るように形成されている。それによって、まずロータシャフトがそれぞれのシャフト連結構造によって互いに接続されることによって、2つの電気モータモジュール38.1、38.2を接続することが可能である。その後、ハウジングがコネクタ、ここではすなわち連結クランプ72によって互いに接続される。2つの電気モータモジュール38.1、38.2間の接続を解除するには、連結クランプ72を取り外しさえすればよく、次いで、ロータシャフトを軸方向に引き離すことができる。
【0068】
図4aは、3つの電気モータモジュール38.1、38.2、38.3、回転エンコーダ76、クラッチ77、及びブレーキ78を備える本発明による電気モータを示す。回転エンコーダ76とブレーキ78とは、電気モータモジュール38.iのロータシャフトに対して同軸に延びるシャフトをそれぞれ具備する。
【0069】
図4bは、図4aによる電気モータ18の部分分解図を示す。回転エンコーダ76が、電気モータモジュール38の連結構造46に相当する回転エンコーダ連結構造80a、80bを有することが見て取れる。
【0070】
ブレーキ78は、その他の連結構造と同様の構造である少なくとも1つのブレーキ連結構造82aを具備し、それによりブレーキ78は、回転エンコーダ76とも各電気モータモジュール38とも形状結合的に接続可能である。クラッチ77は、ブレーキ78と同じ連結構造を具備し、それによりクラッチは、ブレーキ78のように各電気モータモジュールと結合されてもよい。
【0071】
図5は、同時に独立した電気モータともみなされ得る電気モータモジュール38.1に沿う横断面を示す。ロータシャフト40に冷却チャネル84が配置されていることが見て取れる。冷却液の形態の冷却流体86は、この形態で冷却流体供給部88を通って軸方向に供給される。シールブッシュ90がロータシャフトとともに回転し、シールを介してロータシャフト40と接続されている。
【0072】
ロータシャフト40において、少なくとも1つの、好ましくは2つの仕切り壁92a、92bが配置されており、これらの仕切り壁は、冷却流体86が第1サブチャネル94a、第2サブチャネル94b、又はそれ以外の図示されないサブチャネルを通って流れることをもたらす。サブチャネル94a、94b、...は、軸方向にも径方向にも延び、そしてそれに伴い冷却チャネル84に対して略平行に延びる。サブチャネル94における冷却流体は磁石支持体54、そしてそれに伴い永久磁石56を冷却する。
【0073】
永久磁石56の径方向外側にステータ積層鉄心96が配置されている。ステータ積層鉄心96は、ステータ冷却チャネル98における冷却流体によって冷却される。ステータ冷却チャネル98は、ステータ積層鉄心の全幅に延在しないことが可能であり、特にコイルヘッド100a、100bはステータ冷却チャネル98も延在する軸方向長さ上になければならないというわけではない。
【0074】
図6は、本発明による電気モータモジュール38の別の実施形態を示し、この電気モータモジュールは同時に、本発明による電気モータの独立した実施形態を示す。図5による電気モータはインナーロータであるが、図6による電気モータ38は、永久磁石56がステータ積層鉄心96の径方向外側に配置されているアウターロータである。ステータ積層鉄心96a、96bは、ロータシャフト40と管状部材102との間の空間に係合し、管状部材は第1スリーブ区分104と第2スリーブ区分106とを有する。管状部材102は、ロータハブと称されてもよいウェブ108に取り付けられている。管状部材102とウェブ108とはT字形ロータエレメントをなす。
【0075】
ロータシャフト40は、供給分岐チャネル110を有し、この供給分岐チャネルによって冷却流体86を冷却チャネル84に送ることができる。仕切り壁92a、92b、92cは、分岐チャネル110からの冷却流体が、まず冷却チャネル84内に一部を残し、次いで第1ウェブチャネル112へ流れ込み、そこから管状部材102における図示されないチャネルへ流れ込むことができることをもたらす。そこで冷却流体が熱せられ、ウェブ108における第2ウェブチャネル114を通って流れ、チャネル84に戻る。排出分岐チャネル115を介して、冷却流体がロータ42からステータハウジング121とロータシャフト40との間のシャフトリングチャネル129に流れ、そこから冷却流体排出部118に流れ込む。
【0076】
冷却流体86は、冷却流体供給部120を介して供給分岐チャネル110に到達し、冷却流体供給部120は、同様にステータハウジング121に、この事例ではステータキャップ50b1に形成されている。冷却流体供給部120は、第1シャフトシール122と第2シャフトシール124とを備える。これに加えて、この実施形態では、第2シャフトシール124は、回転軸受62b.1をシールするために用いられる。しかし当然のことながら、第2シャフトシールを別の位置に配置することも可能である。
【0077】
図7aは、モジュール38.1のロータ42の等角図を示す。管状部材102がねじ126.1、126.2でウェブ108(図7bを参照)に取り付けられていることが見て取れる。
【0078】
図7bは、ウェブチャネル112、114を示し、これらのウェブチャネル間にウェブリングチャネル128が配置されている。冷却流体は、ウェブリングチャネル128から開いた(offene)部材102へ流れ、そしてそこから戻り、それにより第2ウェブチャネル114に到達する。
【0079】
図8は、アウターロータ形の2つの電気モータモジュール38.1、38.2から構成されている本発明による電気モータ18に沿う横断面を示す。
【0080】
図9aは、ステータキャップ50と、冷却流体のための流入部132及び冷却流体のための流出部133を有し、かつ冷却接続パイプ130を具備するステータ支持体52とからなるステータハウジング121の一部を示す。図9において、電気モータ18の冷却接続パイプが同様に図示されており、ここではその他の何度も現れるコンポーネントに数字の接尾辞「a」及び「b」と「1」及び「2」が付される。これらの数字は、何度も現れる対象物を可能な限り簡単に同じように呼ぶために用いられる。冷却接続パイプ130によって、アウターロータである電気モータのステータ電磁石134(図7及び図9を参照)が冷却される。
【0081】
図9bは、シャフトリングチャネル129を示すためのステータキャップ50とロータシャフト40とに沿う横断面を示す。
【0082】
図10は、シャフト連結構造46が複数歯に形成されている電気モータモジュール38の別の実施形態を示す。

以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記する。
[1] (a)第1電気モータモジュール(38.1)であって、
第1ロータシャフト(40.1)を有する第1ロータ(42.1)を具備し、
前記第1ロータシャフト(40.1)が第1シャフト連結構造(46a)を有する、第1電気モータモジュールと、
(b)少なくとも1つの第2電気モータモジュール(38.2)であって、
第2ロータシャフト(40.2)を有する第2ロータ(42.2)を具備し、
前記第2ロータシャフト(40.2)が第2シャフト連結構造(46b)を有する、第2電気モータモジュールと、
(c)前記第1ロータシャフト(40.1)を支持するために用いられる回転支承部(68)と、を備え、
(d)前記第1ロータシャフト(40.1)と前記第2ロータシャフト(40.2)とが前記シャフト連結構造(46)によって形状結合的に互いに連結されている、電気モータ(18)を有する電気自動車(10)において、
(e)前記シャフト連結構造(46)は、少なくとも部分的に前記回転支承部(68)によって取り囲まれていることを特徴とする、電気自動車。
[2] (a)各電気モータモジュールの各ロータは、それぞれ2つの回転軸受によって支承されており、それにより前記電気モータモジュールが互いに独立して機能し得、かつ
(b)少なくとも2つの電気モータモジュール(38.1、38.2)が同じ構造であることを特徴とする、[1]に記載の電気自動車(10)。
[3] 少なくとも2つの電気モータモジュール(38.1、38.2)が永久磁石式同期モータであることを特徴とする、[1]又は[2]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[4] 前記回転支承部(68)は、リング状に配置されている転動体(64)の第1セットを有する第1回転軸受(62a.1)を有し、
前記回転支承部(68)は、リング状に、かつ前記第1セットに対してずらして配置されている転動体(66)の第2セットを有する第2回転軸受(62b.2)を有することと、
前記シャフト連結構造(46)が少なくとも部分的に前記第1回転軸受(62a.1)と前記第2回転軸受(62b.2)とによって取り囲まれていることと、を特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[5] (a)前記第1シャフト連結構造(46a)が軸方向に延在する凸部(58)を有し、 (b)前記第2シャフト連結構造(46b)が軸方向に延在する凹部を有し、それにより前記第1シャフト連結構造(46a)と前記第2シャフト連結構造(46b)とが接触面(Ki)に沿って軸方向に互いに当接することと、
(c)前記接触面(Ki)は、前記ロータ(42)の回転軸線(D)を含む角度測定平面(E)と最大5°の角度をなすことと
を特徴とする、[1]~[4]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[6] (a)前記電気モータ(18)は、軸方向に延在する凸部(58)を有する回転エンコーダ連結構造(80)を有する回転エンコーダ(76)を有することと、
(b)前記回転エンコーダ(76)は、電気モータモジュール(38)のシャフト連結構造(46)と形状結合的に接続されていることと
を特徴とする、[1]~[5]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[7] (a)前記電気モータ(18)は、軸方向に凸部(58)が延在するブレーキ連結構造(82)を有するブレーキ(78)を具備することと、
(b)前記ブレーキ(78)は、電気モータモジュール(38)又は回転エンコーダ(76)のシャフト連結構造(46)と形状結合的に接続されていることと、
を特徴とする、[1]~[6]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[8] 前記第1ロータシャフト(40.1)と前記第2ロータシャフト(40.2)とが冷却チャネル(84)を有することを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[9] 前記電気モータ(18)は、
(a)第1電気モータモジュール(38.1)であって、
第1ロータシャフト(40.1)を有する第1ロータ(42.1)と、
前記第1ロータシャフト(40.1)を支承するために用いられる回転支承部(68)と、を有し、
前記ロータシャフト(40.1)が第1シャフト連結構造(46a)を有する、第1電気モータモジュールと、
(b)少なくとも1つの第2電気モータモジュール(38.2)であって、
第2シャフト連結構造(46b)を有する第2ロータシャフト(40.2)を具備する第2ロータ(42.2)を有する、第2電気モータモジュールとから構成されており、 (c)前記第1ロータシャフト(40.1)と前記第2ロータシャフト(40.2)が前記シャフト連結構造(46)によって形状結合的に互いに連結されており、
(d)前記シャフト連結構造(46)は、少なくとも部分的に前記回転支承部(68)によって取り囲まれており、
(e)冷却チャネルが前記第1ロータ(42.1)と前記第2ロータ(42.2)とを通って延びる、ことを特徴とする[1]に記載の電気自動車(10)。
[10] (a)前記ロータシャフト(40)が
軸方向に延びる中心冷却チャネルと、
径方向外へ延びるとともに、前記中心冷却チャネルと接続されている供給分岐チャネル(110)と、
外へ延びるとともに、前記中心冷却チャネルと接続されている排出分岐チャネル(115)と、を有し、
(b)ステータ(116)が、
冷却流体(86)、特に冷却液を前記供給分岐チャネル(110)に供給するための冷却流体供給部(120)と、
前記排出分岐チャネル(115)から冷却流体(86)を導出するための冷却流体排出部(118)と、を有することを特徴とする、[1]に記載の電気自動車(10)。
[11] 冷却流体供給部(88)は、
シャフトリングチャネル(129)を形成する第1シャフトシール(122)と第2シャフトシール(124)とを有し、
冷却流体(86)を前記リングチャネルに供給するように形成されている導管と、を有することを特徴とする、[1]又は[10]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[12] 前記第1ロータ(42.1)は、
(a)磁石支持体(54)と、
(b)前記磁石支持体(54)に取り付けられている複数の永久磁石(56)と、
(c)前記磁石支持体(54)を軸方向に通って延び、かつ中心冷却チャネルと接続されているサブチャネル(94)と、
を有することを特徴とする、[1]~[11]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[13] (a)永久磁石(56)は、ステータ電磁石(134)の径方向外側に配置されていることと、
(b)前記ロータシャフト(40)は、
第1軸方向に延在する第1スリーブ区分(104)と、
前記第1軸方向とは逆の方向に延在する第2スリーブ区分(106)と、
を有し、
前記スリーブ区分(104、106)が互いに対称であることと、
(c)前記スリーブ区分(104、106)が冷却チャネル(84)を含むことと、を特徴とする、[1]~[12]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[14] (a)スリーブ区分(104、106)は管状部材(102)に形成されており、
(b)前記管状部材(102)がウェブ(108)に取り付けられており、
(c)前記ウェブ(108)は、中心冷却チャネルを前記管状部材におけるアウターチャネルと接続する少なくとも1つの径方向外へ延びる接続チャネルを有することを特徴とする、[1]~[13]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[15] ステータ(116)は冷却接続パイプ(130)を有し、前記冷却接続パイプは、ステータ電磁石(134)を冷却するように配置されていることを特徴とする、[1]~[14]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[16] (a)前記電気モータ(18)は、
(i)第1電気モータモジュール(38.1)であって、
第1シャフト連結構造(46a)を有する第1ロータシャフト(40.1)を具備する第1ロータ(42.1)を備える、第1電気モータモジュールと、
(ii)少なくとも1つの第2電気モータモジュール(38.2)であって、
第2シャフト連結構造(46b)と第2冷却チャネル(84.2)とを有する第2ロータシャフト(40.2)を具備する第2ロータ(42.2)を備える、第2電気モータモジュールと、から構成されており、
(b)前記第1ロータ(42.1)と前記第2ロータ(42.2)とは前記シャフト連結構造(46)によって形状結合的に互いに連結されていることと、
(c)前記冷却チャネル(84.1、84.2)は互いに接続されていることを特徴とする、[1]~[15]のいずれか1項に記載の電気自動車(10)。
[17] (a)前記第1電気モータモジュール(38.1)は、第1ハウジング連結構造(70a.1)を有する第1モジュールハウジング(44.1)を具備し、
(b)前記第2電気モータモジュール(38.2)は、第2ハウジング連結構造(70b.2)を有する第2モジュールハウジング(44.2)を具備し、
(c)前記電気モータモジュール(38)は、前記電気モータモジュールのハウジング連結構造(44)によって形状結合的に互いに接続されていることと、
(d)前記ハウジング連結構造(70)は、前記第1回転軸受(62a.1)を径方向に取り囲むことを特徴とする、[16]に記載の電気自動車(10)。
[18] (a)前記第1ハウジング連結構造(70)は、少なくとも部分的に第1円錐形ハウジングリングによってなり、
(b)前記第2ハウジング連結構造(70.2)は、少なくとも部分的に第2円錐形ハウジングリングによってなることと、
(c)前記円錐形ハウジングリングは、少なくとも部分的に円錐形の内面を有する連結クランプ(72)によって接続されていることを特徴とする、[17]に記載の電気自動車(10)。
【符号の説明】
【0083】
10 電気自動車
12 第1軸
14 第2軸
16 ホイール
18 電気モータ
20 ディファレンシャル
22 バッテリ
24 バッテリユニット
26 車両床
28 ボディ
30 車両シート
32 助手席
34 床
36 車室
38 電気モータモジュール
40 ロータシャフト
42 ロータ
44 モジュールハウジング
46 シャフト連結構造
48 ハウジングリング
50 ステータキャップ
52 ステータ支持体
54 磁石支持体
56 永久磁石
58 凸部
60 軸受座面
62 回転軸受
64 転動体
66 転動体
68 回転支承部
70 ハウジング連結構造
72 連結クランプ
74 内面
76 回転エンコーダ
77 切替クラッチ
78 ブレーキ
79 連結ギヤ
80 回転エンコーダ連結構造
81 クラッチ連結構造
82 ブレーキ連結構造
84 冷却チャネル
86 冷却流体
88 冷却流体供給部
90 シールブッシュ
92 仕切り壁
94 サブチャネル
96 ステータ積層鉄心
98 ステータ冷却チャネル
100 コイルヘッド
102 管状部材
104 第1スリーブ区分
106 第2スリーブ区分
108 ウェブ
110 供給分岐チャネル
112 ウェブチャネル
114 第2ウェブチャネル
115 排出分岐チャネル
116 ステータ
118 冷却流体排出部
120 冷却流体供給部
121 ステータハウジング(ステータキャップ50とステータ支持体52とからなる)
122 第1シャフトシール
124 第2シャフトシール
126 ねじ
128 ウェブリングチャネル
129 シャフトリングチャネル
130 冷却接続パイプ
132 流入部
133 流出部
134 ステータ電磁石
A 軸距離
D 回転軸線
18 モータ回転軸
E 角度測定平面
i,j 連続添え字
接触面
L1 回転支承部の軸方向構造長さ
L2 連結構造のシャフトの軸方向構造長さ
L3 連結構造のハウジングの軸方向構造長さ
左側バッテリ質量
右側バッテリ質量
Q 中央パーセンタイル
Q1,Q2 直方体
10 車両質量重心
18 電気モータ質量重心
22 バッテリ質量重心
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図10