(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】酸素原子の結合に基づき、且つフェニルアクリジンを含む四座シクロメタル化白金(II)錯体及び使用
(51)【国際特許分類】
C07F 15/00 20060101AFI20240201BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240201BHJP
C07D 401/14 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
C07F15/00 F CSP
C09K11/06 660
C07D401/14
(21)【出願番号】P 2022534408
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 CN2021099514
(87)【国際公開番号】W WO2021249514
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】202010521756.6
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515126422
【氏名又は名称】浙江工▲業▼大学
(73)【特許権者】
【識別番号】522224966
【氏名又は名称】浙江華顕光電技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲余▼ 遠斌
(72)【発明者】
【氏名】李 貴傑
(72)【発明者】
【氏名】沈 剛
(72)【発明者】
【氏名】周 春松
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0233446(US,A1)
【文献】特開2013-023500(JP,A)
【文献】特開2019-006755(JP,A)
【文献】Inorganic Chemistry,2020年,59(6),P.3718-3729
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/
C09K 11/
C07D 401/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素原子の結合に基づき、且つフェニルアクリジンを含む四座シクロメタル化白金(II)錯体であって、
一般式(I)の構造を有する、ことを特徴とする四座シクロメタル化白金(II)錯体。
【化1】
(I)
(R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、一置換、二置換、三置換、四置換又は未置換を表し、且つR
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素、重水素、アルキル基、アリール基又はそれらの組み合わせで
ある。)
【請求項2】
基板に請求項1に記載の前記四座シクロメタル化白金(II)錯体を含む発光層を有する、ことを特徴とする有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光材料の技術分野に関し、具体的には、酸素原子の結合に基づき、且つフェニルアクリジンを含む四座シクロメタル化白金(II)(Quadridentate Cyclometalated Platinum II)錯体及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED、即ち、有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode)は、自律型発光素子でバックライトが不要であり、応答速度が速く、エネルギー消費が低く、発光効率が高く、コントラストが高く、生産プロセスが簡単であり、大面積生産可能という利点がある。初期の素子で採用された発光材料は主に有機小分子蛍光材料であり、スピン統計量子学では、蛍光材料の理論的な内部量子効率がわずか25%でしかないことが示されている。1998年、米国プリンストン大学のForrest教授は、室温における有機金属錯体分子材料のリン光電界発光現象は、重金属原子の強力なスピン軌道結合を利用して一重項状態から三重項状態への電子の項間交差を効果的に促進することができ、これにより、OLED素子は、電気励起によるすべての一重項状態及び三重項状態励起子(exciton)を十分に利用することで、発光材料の理論的な内部量子効率を100%に到達させることができることを発見した(Nature,1998,395,151)。
【0003】
初期で研究されたシクロメタリック白金(II)(Cyclometalated Platinum II)錯体のリン光材料は、二座配位子及び三座配位子を含む有機金属分子であることが多い。その剛性は低く、二座配位子がねじれやすく振動することにより、そのリン光量子効率が低下する(Inorg.Chem.2002,41,3055)。三座配位子を含むシクロメタル化白金(II)錯体は、分子が2番目の配位子(例えば、Cl-、フェノキシアニオン、アルキニルアニオン、カルベンなど)を必要とすることにより、錯体の電気化学的安定性、光化学的安定性、及び熱安定性が低下するため、二座及び三座シクロメタル化白金(II)錯体のリン光材料は、いずれも安定して効率的なOLED素子の製造に不利であり、特に市販のリン光材料の要求を満たすのは困難である。したがって、安定して効率的なリン光材料を如何に設計及び開発するかは、依然としてOLED分野の重要な内容である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施例の目的は、従来のリン光材料における分子安定性の不足の問題を解決するために、酸素原子の結合に基づき、且つフェニルアクリジンを含む四座シクロメタル化白金(II)錯体及びその使用を提供することにあり、該錯体分子は強く発光可能で、安定性がよいという利点を有するため、OLED素子における発光材料として使用可能である。
【0005】
上記の目的を達成するために本発明で採用される技術案は次の通りである。
【0006】
第1の態様では、本発明の実施例は酸素原子の結合に基づき、且つフェニルアクリジンを含む四座シクロメタル化白金(II)錯体を提供し、前記四座シクロメタル化白金(II)錯体は一般式(I)の構造を有する。
【化1】
(I)
ただし、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、一置換、二置換、三置換、四置換又は未置換を表し、且つR
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素、重水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、ヘテロアリール基又はそれらの組み合わせであり、且つ2つ又は複数の隣接するR
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、又は選択的に接続して縮合環を形成する。
【0007】
第2の態様では、本発明の実施例は、基板に第1の態様に記載の四座シクロメタル化白金(II)錯体を含む発光層を有する有機発光素子をさらに提供する。
【0008】
以上の技術案に基づき、該錯体は四座配位子を採用することで、剛性が高くなり、発光材料の光安定性を向上させることができ、同時に該錯体分子は強く発光できることから、OLED素子における発光材料として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の実施例における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に使用する必要がある図面を簡単に紹介する。
【0010】
図1は、本発明の実施例における白金錯体Pt1のDCM溶液、PMMAにおける室温での発光スペクトル、2-MeTHFにおける77Kでの発光スペクトルである。ここで、DCM、PMMA、2-MeTHFは、それぞれジクロロメタン、ポリメタクリル酸メチル、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0011】
図2は、375nmの紫外光500W/M
2の励起下で白金錯体Pt1がドープされたポリスチレンフィルムに対する光安定性のテストである。
【0012】
図3は、375nmの紫外光500W/M
2の励起下で白金錯体Pt(bp-2)、Pt(bp-3)、Pt(bp-4)、Pt(bp-5)がドープされたポリスチレンフィルムに対する光安定性のテストである。
【0013】
図4は、本実施例における発光素子の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る化合物は、「任意に置換された」部分を含むことができる。通常、「置換された」という用語(前に「任意の」という用語が存在するかどうかにかかわらず)は、示された部分の1つ又は複数の水素が適切な置換基で置き換えられることを意味する。特に明記しない限り、「任意に置換された」基は、基の各置換可能な位置に適切な置換基を有し、与えられたいずれかの構造に、1個を超える位置が、指定の基から選択される1個を超える置換基で置換可能である場合、各位置の置換基は同じでも異なっていてもよい。本発明で予想される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定した又は化学的に実現可能な化合物を形成するものである。ある態様では、反対に明示的に示されない限り、各置換基をさらに任意に置換してもよい(すなわち、さらなる置換又は未置換)ことが含まれる。
【0015】
化合物の構造は、次の式で表すことができ、
【化2】
次の式と同等であると理解され、
【化3】
ただし、通常、mは整数である。すなわち、(R
a)
mは5つの単独した置換基R
a(1)、R
a(2)、R
a(3)、R
a(4)、R
a(5)を表すと理解される。
【0016】
以下の例において新規化合物の調製方法を提供するが、このタイプの化合物の調製はこの方法に限定されない。本専門技術分野では、本特許で保護されている化合物は修飾・調製が容易であるため、以下に挙げられる方法又は他の方法を採用して調製することができる。以下の例は実施例としてのみ使用されており、本特許の保護範囲を制限するためのものではない。温度、触媒、濃度、反応物、及び反応手順はいずれも変更、異なる反応物に対して異なる条件を選択して前記化合物を調製するために変更することができる。
【0017】
1H NMR(500MHz)スペクトルは、ANANCEIII(500M)型核磁気共鳴スペクトロメーターで測定され、特に説明しない限り、核磁気共鳴はいずれもDMSO-d6又は0.1%TMSを含むCDCl3を溶媒として使用し、ただし、1H NMRスペクトルはCDCl3を溶媒とすると、TMS(δ=0.00ppm)を内部標準とし、DMSO-d6を溶媒とすると、TMS(δ=0.00ppm)又は残留DMSOピーク(δ=2.50ppm)又は残留水ピーク(δ=3.33ppm)を内部標準とする。13C NMRスペクトルでは、CDCl3(δ=77.00ppm)又はDMSO-d6(δ=39.52ppm)を内部標準とする。1H NMRスペクトルデータでは、s=singlet、一重線;d=doublet、二重線;t=triplet、三重線;q=quartet、四重線;p=quintet、五重線;m=multiplet、多重線;br=broad、広幅線である。
【0018】
酸素原子の結合に基づき、且つフェニルアクリジンを含む四座シクロメタル化白金(II)錯体の合成実施例
以下の合成方法を参照して調製可能である。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0019】
上記の合成方法は、ある生成物を限定するものではないことが理解でき、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、一置換、二置換、三置換、四置換又は未置換を表し、且つR1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素、重水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、ヘテロアリール基又はそれらの組み合わせであり、且つ2つ又は複数の隣接するR1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立して、又は選択的に接続して縮合環を形成する。材料の投入順序と具体的な反応条件は限定されず、例えば、温度、溶媒の種類及び使用量、触媒の種類及び使用量、配位子の種類及び使用量、アルカリの種類及び使用量、反応基質の使用量が挙げられ、当業者は、本発明の実施例における例から合理的な発想を容易に得ることができる。他の基の定義は、一般式(I)と一致する。
【0020】
実施例1:白金錯体Pt1は次の経路で合成可能である。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
中間体1aの合成:磁気撹拌ローター付きの乾燥した3つ口フラスコに、順に3-ブロモ-9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン(2.88g、10.00mmol、1.00当量)、2-ブロモピリジン(1.74g、11.00mmol、1.10当量)、ヨウ化銅(I)(95mg、0.50mmol、0.05当量)、リチウム-t-ブトキシド(1.20g、15.00mmol、1.50当量)、1-メチルイミダゾール(16mg、0.20mmol、0.02当量)を加えた後に、真空引きして窒素に3回置換し、窒素保護下でトルエン(25mL)を加えた。該混合物を120℃のオイルバスで攪拌して24時間反応させ、室温まで冷却し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィカラムで分離して精製し、溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル=50:1-10:1、生成物1eを得て、白色固体3.20gで収率が88%である。
1H NMR(500MHz,CDCl
3):δ1.65(s,6H),6.73(dd,J=8.0,1.5Hz,1H),6.79(d,J=2.0Hz,1H),7.00(td,J=7.5,1.5Hz,1H),7.03-7.07(m,1H),7.08(dd,J=8.0,2.0Hz,1H),7.24-7.26(m,1H),7.27-7.29(m,1H),7.42-7.45(m,2H),7.78-7.81(m,1H),8.65-8.66(m,1H)。
【0021】
中間体1bの合成:磁気撹拌ローター付きの乾燥した3つ口フラスコに、順にm-ブロモフェノール(8.65g、50.00mmol、1.00当量)、2-ブロモピリジン(11.85g、75.00mmol、1.50当量)、ヨウ化銅(I)(952mg、5.00mmol、0.10当量)、ピコリン酸(1.23g、10.00mmol、0.20当量)、リン酸カリウム(22.23g、105.00mmol、2.10当量)を加えた後に、真空引きして窒素に3回置換し、窒素保護下でジメチルスルホキシド(40mL)を加えた。該混合物を105℃のオイルバスで攪拌して24時間を反応させ、室温まで冷却し、セライトで濾過し、酢酸エチルを加えて抽出し、炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、有機層を水で2回洗浄し、水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィカラムで分離して精製し、溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル=100:1-20:1、生成物1bを得て、白色固体10.2gで収率が81%である。1H NMR(500MHz,CDCl3):δ7.08(d,J=8.5Hz,1H),7.14-7.18(m,2H),7.36-7.43(m,3H),7.86-7.90(m,1H),7.08(ddd,J=4.5,2.0,0.5Hz,1H)。
【0022】
中間体1cの合成:磁気撹拌ローター付きの乾燥した3つ口フラスコに、順に中間体1b(4.00g、16.06mmol、1.00当量)、ビス(ピナコラト)ジボロン(7.34g、28.90mmol、1.80当量)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(468mg、0.64mmol、0.04当量)、酢酸カリウム(6.30g、64.24mmol、4.00当量)を加えた後に、真空引きして窒素に3回置換し、窒素保護下でジメチルスルホキシド(45mL)を加えた。該混合物を80℃のオイルバスで攪拌して24時間反応させ、室温まで冷却し、酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を水で2回洗浄し、水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィカラムで分離して精製し,溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル=20:1-10:1、生成物1cを得て、白色固体4.07gで収率が85%である。1H NMR(500MHz,CDCl3):δ1.33(s,12H),6.87-6.89(m,1H),6.95-6.99(m,1H),7.24(ddd,J=4.0,3.0,1.5Hz,1H),7.41(t,J=7.5Hz,1H),7.56(dd,J=2.5,1.0Hz,1H),7.64-7.66(m,1H),7.67-7.68(m,1H),8.19(ddd,J=3.0,2.0,1.0Hz,1H)。
【0023】
配位子1の合成:磁気撹拌ローター付きの乾燥した3つ口フラスコに順に中間体1a(1.30g、3.57mmol、1.00当量)、中間体1c(1.17g、3.92mmol、1.10当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(123mg、0.11mmol、0.03当量)、炭酸カリウム(987mg、7.14mmol、2.00当量)を加えた後に、真空引きして窒素に3回置換し、窒素保護下でトルエン(20mL)、エタノール(4mL)、水(4mL)を加えた。該混合物を90℃のオイルバスで攪拌して24時間反応させ、室温まで冷却し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィカラムで分離して精製し、溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル=10:1-5:1、生成物の配位子1を得て、白色固体0.95gで収率が58%である。1H NMR(500MHz,CDCl3):δ1.70(s,6H),6.76(dd,J=8.0,1.0Hz,1H),6.90(dt,J=1.5,0.5Hz,1H),6.97(d,J=2.0Hz,1H),7.00(m,2H),7.05(m,2H),7.06(td,J=2.5,1.0Hz,1H),7.0-7.09(m,2H),7.20-7.21(m,1H),7.24-7.25(m,1H),7.27-7.28(m,1H),7.32-7.34(dt,J=8.0,1.0Hz,1H),7.36-7.39(t,J=8.0Hz,1H),7.46(dd,J=7.5,1.5Hz,1H),7.50(d,J=8.0Hz,1H),7.65-7.69(m,1H),7.82(ddd,J=8.0,7.5,2.0Hz,1H),8.19(ddd,J=2.5,2.0,0.5Hz,1H),8.67-8.69(m,1H)。
【0024】
Pt1の合成:磁気撹拌ローター付きの乾燥した3つ口フラスコに、順に中間体の配位子1(200mg、0.44mmol、1.00当量)、二塩化白金(127mg、0.48mmol、1.05当量)を加えた後に、真空引きして窒素に3回置換し、窒素保護下でベンゾニトリル(30mL)を加えた。該混合物を180℃の加熱ジャケットで攪拌して72時間反応させ、室温まで冷却し、窒素保護下でカリウム-t-ブトキシド(948mg、8.8mmol、20当量)、テトラヒドロフラン(20mL)を加え、70℃まで昇温し、3時間反応させた。室温まで冷却し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィカラムで分離して精製し、溶離剤:石油エーテル/ジクロロメタン=3:1-1:1、生成物Pt1を得て、黄色固体104mgで収率が37%である。1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ1.28(s,3H),δ1.85(s,3H),6.77(dd,J=8.0,1.0Hz,1H),6.93-6.99(m,2H),7.12-7.14(m,2H),7.19(td,J=7.5,1.5Hz,1H),7.21-7.23(m,2H),7.29(dd,J=8.0,1.5Hz,1H),7.33-7.35(m,1H),7.44(d,J=8.5Hz,1H),7.49(d,J=1.5Hz,1H),7.54(dd,J=7.5,1.5Hz,1H),7.94-7.98(m,1H),8.17-8.21(m,1H),8.61(dd,J=7.5,1.5Hz,1H),8.67(dd,J=6.0,2.0Hz,1H)。
【0025】
金属Pt(II)錯体の性能評価の実施例
以下、本発明の上記実施例で調製された錯体に対して光物理学的分析を行った。
光物理学的分析:発光スペクトル、励起状態の寿命はともにHORIBA FL3-11分光計でテストを完了した。テスト条件:低温での発光スペクトル及び励起状態の寿命のテストは発光材料の2-メチルテトラヒドロフラン固体溶液であり、室温での発光スペクトル及び励起状態の寿命テストは発光材料のジクロロメタン溶液であり、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)フィルムサンプルのドーピング濃度は5%である。
【0026】
四座白金錯体Pt1のリン光発光材料の光物理学的特性のデータは以下の表1に示すとおりである。
【0027】
表1 四座白金錯体Pt1のリン光発光材料の光物理学的特性のデータのリスト
【表1】
注:DCMはジクロロメタン、2-MeTHFは2-メチルテトラヒドロフラン、PMMAはポリメタクリル酸メチルである。λは波長、λ
maxは最大波長、τは材料の励起状態の寿命、Φ
PLはリン光量子效率である。
【0028】
表1のデータから分かるように、第一に、白金錯体Pt1のリン光発光材料はさまざまな異なる環境での発光波長がいずれも緑色光の範囲にあり、良好な緑色光の発光材料であり;第二に、白金錯体Pt1のリン光発光材料は、非常に短い励起状態の寿命(τ)を有し、特に室温でのジクロロメタン溶液又はポリメタクリル酸メチルフィルムにおける励起状態の寿命は、ともに10μs以下であり、短い励起状態の寿命は、それを発光材料としたOLED素子の応答速度の向上に寄与し、同時にそのリン光効率の改善にも有益であり、素子の製造に寄与し;第三に、ジクロロメタン溶液における量子効率は34%であり、該金属白金錯体が強く発光することを示し;第四に、白金錯体Pt1のリン光発光材料は異なる環境及び条件下での最大発光波長(λ
max)シフトが非常に小さく、
図1から分かるように、白金錯体Pt1のリン光発光材料は低温(77K)での2-メチルテトラヒドロフラン、室温でのジクロロメタン、及び室温でのポリメタクリル酸メチルで得られた発光スペクトルの比較図における、λ
maxシフトが非常に小さく、この材料が高い発光光色安定性を有することを示した。
【0029】
表2 白金錯体Pt1の高分解能マススペクトル
【表2】
該分子の高分解能と水素スペクトルによって白金錯体Pt1の構造の正確性が検証された。
【0030】
開発された材料の安定性を検証するために、5wt%のPt1がドープされたポリスチレンフィルムの光安定性をテストし、励起光源は375nmの紫外光で、光強度:500W/m
2である。その光安定性のデータは
図2に示すとおりである。同時に、文献(Inorganic Chemistry,2020,59,3718.)に既に報告されているシクロメタル化白金(II)錯体Pt(bp-2)、Pt(bp-3)、Pt(bp-4)及びPt(bp-5)と比較し、その構造は次のとおりであり、すべての光安定性のデータはPt1と同じ条件下でテストした。
【化13】
【0031】
図2から、リン光発光材料5%のPt1:ポリスチレンフィルムが375nmの紫外光の励起下で(光強度:500W/m
2)の光安定性に優れており、1%減衰するときに120分かかったことがわかった。
【0032】
図2と
図3の比較から、同じ条件下でPt1は光安定性テストで2時間で1%減衰し、比較用のPt(bp-2)は2時間で約15%減衰し、Pt(bp-3)、Pt(bp-4)及びPt(bp-5)は2時間で約40%~60%減衰したことがわかった。これにより、本願で開発された酸素原子により結合されたPt1の光安定性は、上記の文献の窒素原子により結合された四座金属Pt(II)錯体の光安定性よりもはるかに高いことがわかった。
【0033】
本発明に係る四座シクロメタル化白金(II)のリン光発光材料は有機電界発光素子の発光層として適用される。有機発光素子では、正極と負極の2極から発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を発生して発光させる。一般式(I)で表される本発明の錯体は、リン光発光材料として、有機フォトルミネッセンス素子又は有機電界発光素子などの優れた有機発光素子に適用可能であることによって、有機フォトルミネッセンス素子は、基板に少なくとも発光層が形成された構造を有する。また、有機電界発光素子は、少なくとも陽極、陰極、及び陽極と陰極との間の有機層が形成された構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含み、発光層のみで構成されてもよく、発光層に加えて1層以上の有機層を有してもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子遮断層、正孔遮断層、電子注入層、電子輸送層、励起子遮断層などが挙げられる。正孔輸送層は、正孔注入機能を有する正孔注入輸送層であってもよく、電子輸送層は、電子注入機能を有する電子注入輸送層であってもよい。具体的な有機発光素子の構造は
図4に示すとおりである。
図4では、下から上に7層があり、順に基板、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極を表し、そのうち、発光層はゲスト材料がホスト材料にドープされた混合層である。
【0034】
実施例1で示される化合物をリン光発光材料としてOLED素子に適用し、構造は次のとおりである。
ITO/HATCN(10nm)/TAPC(65nm)/CBP:実施例1で示される化合物(10~20wt.%、20nm)/Bepp2(10nm)/Li2CO3:Bepp2(5%、30nm)/Li2CO3(1nm)/Al(100nm)
そのうち、ITOは透明陽極、HATCNは正孔注入層、TCTAは正孔輸送層、CBPはホスト材料、実施例1で示される化合物(10~20wt.%はドーピング濃度、20nmは発光層の厚さである)はゲスト材料、Bepp2は電子輸送層、Li2CO3は電子注入層、Alは陰極である。括弧内のナノメートル(nm)単位の数字はフィルムの厚さである。
【0035】
なお、前記構造は本発明の発光材料の使用の一例であり、本発明で示される発光材料の具体的なOLED素子構造に対する限定を構成せず、リン光発光材料も実施例1で示される化合物に限定されない。
【0036】
素子における適用材料の分子式は次のとおりである。
【化14】
【0037】
当業者は、上記の実施形態が本発明を実現する具体的な実施例であり、実際の使用では、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細にさまざまな変更を行うことができることが理解できる。例えば、本発明の精神から逸脱しない場合、ここで説明される多くの置換基の構造は、他の構造で置き換えることができる。