IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧 ▶ 坂東電線株式会社の特許一覧

特許7429383フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法
<>
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図1
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図2
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図3
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図4
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図5
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図6
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図7
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図8
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図9
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図10
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図11
  • 特許-フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】フレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20240201BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240201BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20240201BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20240201BHJP
   H01R 12/61 20110101ALI20240201BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20240201BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01B13/00 525
H01B13/00 519
H01B13/00 521
H01B7/00 306
H01B7/00 305
H01B7/08
H02G15/08
H01R12/61
H01R43/02 B
H01R4/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020016168
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021125310
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391025534
【氏名又は名称】坂東電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】柴 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】久米 寛
(72)【発明者】
【氏名】萩原 昭生
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-93267(JP,A)
【文献】特開2014-220084(JP,A)
【文献】特開2005-135823(JP,A)
【文献】特開平5-121139(JP,A)
【文献】特開2014-191886(JP,A)
【文献】特開2003-123545(JP,A)
【文献】特開2014-154215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
H01B 7/00
H01B 7/08
H02G 15/08
H01R 12/61
H01R 43/02
H01R 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆により覆われた導体を備えた第1のフレキシブルフラットケーブルと第2のフレキシブルフラットケーブルとを接続するフレキシブルフラットケーブルの接続方法であって、
前記第1のフレキシブルフラットケーブルの少なくとも接続面側の絶縁被覆を除去して導体接続部を露出させる接続部露出工程と、
前記第2のフレキシブルフラットケーブルの絶縁被覆を除去して分岐部を露出させる分岐部露出工程と、
前記導体接続部と前記分岐部とを接触状態のもとで溶融して前記導体接続部と前記分岐部とを溶接する溶接工程と、
前記導体接続部と前記分岐部とを覆う保護フィルムを接続面に接着する接着工程とを有し、
前記導体接続部を露出させる際および前記分岐部を露出させる際には、絶縁被覆にレーザ光を照射して絶縁被覆を除去し、前記導体接続部と前記分岐部とを溶接する際にはレーザ光を照射して前記導体接続部と前記分岐部とを溶融接続する、
ことを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続方法
【請求項2】
前記接続部露出工程において、接続面側の絶縁被覆とその反対側の絶縁被覆とを除去して前記導体接続部を接続面とその反対側面とに露出させる、
ことを特徴とする請求項1記載のフレキシブルフラットケーブルの接続方法
【請求項3】
前記導体接続部と前記分岐部の少なくとも一方に、他方に向けて変位する変位部を加工する変位加工工程を有し、前記第1のフレキシブルフラットケーブルの接続面に前記第2のフレキシブルフラットケーブルの分岐接続面を重ねて前記導体接続部と前記分岐部とを接触させる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のフレキシブルフラットケーブルの接続方法
【請求項4】
前記導体接続部に前記接続面に向けて変位する第1の変位部を形成する第1の変位加工工程と、前記分岐部に前記分岐接続面に向けて変位する第2の変位部を形成する第2の変位加工工程とを有する、
ことを特徴とする請求項3記載のフレキシブルフラットケーブルの接続方法
【請求項5】
前記保護フィルムは、被覆層と前記被覆層よりも低い温度で溶融する熱可塑性接着剤からなる接着剤層とを有し、保護フィルムを前記接続面に接着する際に前記保護フィルムを加熱することにより、前記接着剤層を溶融させて前記導体接続部と前記分岐部とを覆う、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のフレキシブルフラットケーブルの接続方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のフレキシブルフラットケーブルを重ねてそれぞれの導体同士を接続するフレキシブルフラットケーブルの接続構造および接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器製品や自動車の電気系統の配線などにおいては、多くの配線材つまり電線が使用され、複数の電線が集合して配置される場合には、複数の丸電線を結束帯やチューブにより束にして形成されるワイヤハーネスが使用されている。一方、電線を配置するスペースが十分に確保できない場合には、少なくとも1本の平型の導体と導体を覆う絶縁被覆とを有するフレキシブルフラットケーブル(FFC)を使用すると、狭いスペースに多数本の平型導体を配置することができる。
【0003】
フレキシブルフラットケーブルの両端部にはコネクタが装着され、導体の両端部が絶縁被覆から露出され、コネクタの端子に接続されている。このように、フレキシブルフラットケーブルの接続は、コネクタを介した1対1の接続であり、丸電線で構成されたワイヤハーネスのように、導体相互を分岐接続するための自由度が低い。
【0004】
ここで、特許文献1には、幹線フレキシブルフラットケーブルとこれに接続される複数本の支線フレキシブルフラットケーブルとを備えた車両用の偏平状のワイヤハーネス構造が記載されており、幹線の導体と支線の導体は、ピアシング接続されている。また、特許文献2には、それぞれフレキシブルフラットケーブルである基幹ケーブルと分岐ケーブルとをピアシング接続するためのピアシングが記載されている。このようにピアシング接続により複数のフレキシブルフラットケーブルを接続する場合には、基幹ケーブルつまり幹線ケーブルに接続される分岐ケーブルつまり支線ケーブルの接続端部は、基幹ケーブルに対して平行となって重ねられる。
【0005】
さらに、特許文献3には、幹線用フレキシブルフラットケーブルの導体と、支線用フレキシブルフラットケーブルの導体とを、異方性導電接着フィルムを介して接続するスプライス構造のフレキシブルフラットケーブルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-112584号公報
【文献】特開2006-339126号公報
【文献】特開2008-108578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載のように導体同士をピアシング接続する場合には、金属製のピアシングを導体に突き刺しており、ピアシングが接続部に付加されるので、接続後のフレキシブルフラットケーブルの重量増加が避けられない。さらに、ピアシング接続の場合には、基幹ケーブルに対して分岐ケーブルの接続端部を平行に重ねなければならず、接続端部の配置形態が限られる。
【0008】
また、特許文献3に記載のように異方性導電接着フィルムを介して導体同士を接続する場合には、導体同士が直接接続されておらず、接続強度が高められないという問題点がある。
【0009】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、接続強度を高めることができるフレキシブルフラットケーブルの接続技術を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、接続に伴う重量増加を抑制することができるフレキシブルフラットケーブルの接続技術を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、接続端部の配置形態が限定されないフレキシブルフラットケーブルの接続技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のフレキシブルフラットケーブルの接続方法は、絶縁被覆により覆われた導体を備えた第1のフレキシブルフラットケーブルと第2のフレキシブルフラットケーブルとを接続するフレキシブルフラットケーブルの接続方法であって、前記第1のフレキシブルフラットケーブルの少なくとも接続面側の絶縁被覆を除去して導体接続部を露出させる接続部露出工程と、前記第2のフレキシブルフラットケーブルの絶縁被覆を除去して分岐部を露出させる分岐部露出工程と、前記導体接続部と前記分岐部とを接触状態のもとで溶融して前記導体接続部と前記分岐部とを溶接する溶接工程と、前記導体接続部と前記分岐部とを覆う保護フィルムを接続面に接着する接着工程とを有し、前記導体接続部を露出させる際および前記分岐部を露出させる際には、絶縁被覆にレーザ光を照射して絶縁被覆を除去し、前記導体接続部と前記分岐部とを溶接する際にはレーザ光を照射して前記導体接続部と前記分岐部とを溶融接続する、ことを特徴とする。
【0020】
請求項2に記載の本発明のフレキシブルフラットケーブルの接続方法は、上記請求項1記載の発明において、前記接続部露出工程において、接続面側の絶縁被覆とその反対側の絶縁被覆とを除去して前記導体接続部を接続面とその反対側面とに露出させる、ことを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の本発明のフレキシブルフラットケーブルの接続方法は、上記請求項1または2記載の発明において、前記導体接続部と前記分岐部の少なくとも一方に、他方に向けて変位する変位部を加工する変位加工工程を有し、前記第1のフレキシブルフラットケーブルの接続面に前記第2のフレキシブルフラットケーブルの分岐接続面を重ねて前記導体接続部と前記分岐部とを接触させる、ことを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の本発明のフレキシブルフラットケーブルの接続方法は、上記請求項13記載の発明において、前記導体接続部に前記接続面に向けて変位する第1の変位部を形成する第1の変位加工工程と、前記分岐部に前記分岐接続面に向けて変位する第2の変位部を形成する第2の変位加工工程とを有する、ことを特徴とする。
【0023】
請求項5に記載の本発明のフレキシブルフラットケーブルの接続方法は、上記請求項1~4の何れか一項に記載の発明において、前記保護フィルムは、被覆層と前記被覆層よりも低い温度で溶融する熱可塑性接着剤からなる接着剤層とを有し、保護フィルムを前記接続面に接着する際に前記保護フィルムを加熱することにより、前記接着剤層を溶融させて前記導体接続部と前記分岐部とを覆う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
第1のフレキシブルフラットケーブルの絶縁被覆を除去して露出される導体接続部と、第2のフレキシブルフラットケーブルの絶縁被覆を除去して露出される分岐部とを溶接接続するので、導体接続部と分岐部は溶融接続により金属組織的に接続された状態となり、接続強度が高められる。
【0025】
また、導体接続部と分岐部とを接着フィルム等を使用することなく、直接接触させて溶接するので、複数本のフレキシブルフラットケーブルからなるケーブル組立体の重量増加を抑制することができる。
【0026】
さらに、導体接続部と分岐部とを溶接接続するので、第1のフレキシブルフラットケーブルに対して、第2のフレキシブルフラットケーブルを直角方向としても、平行方向としてもいずれでも接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】幹線側のフレキシブルフラットケーブルとこれに接続された2本の分岐側のフレキシブルフラットケーブルとを有するフレキシブルフラットケーブル組立体の一例を示す一部省略平面図である。
図2図1におけるA部の拡大斜視図である。
図3図1におけるB部の拡大斜視図である。
図4図2におけるC-C線方向の拡大断面図である。
図5図4におけるD-D線方向の拡大断面図である。
図6】(A)は図4の分岐部を拡大して示す斜視図であり、(B)は分岐部が幹線側のフレキシブルフラットケーブルに直角方向に配置されて導体接続部に溶接された状態を拡大して示す斜視図であり、(C)は分岐部が幹線側のフレキシブルフラットケーブルに平行方向に配置されて導体接続部に溶接された状態を拡大して示す斜視図である。
図7】(A)~(E)はフレキシブルフラットケーブルの接続方法を示す工程図である。
図8】(A)は導体接続部の変位部の他の例を示す断面図であり、(B)は(A)の斜視図である。
図9】(A)は分岐部の変位部の他の例を示す断面図であり、(B)は(A)に示す分岐部の斜視図である。
図10】(A)および(B)はそれぞれ幹線側のフレキシブルフラットケーブルに直角配置される分岐側のフレキシブルフラットケーブルの変形例を示す斜視図である。
図11】分岐側のフレキシブルフラットケーブルにさらに他の分岐側のフレキシブルフラットケーブルが接続された平面形態のフレキシブルフラットケーブル組立体を示す斜視図である。
図12】分岐側のフレキシブルフラットケーブルにさらに他の分岐側のフレキシブルフラットケーブルが接続された立体形態のフレキシブルフラットケーブル組立体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0029】
図1は、フレキシブルフラットケーブル組立体10の一例を示しており、このフレキシブルフラットケーブル組立体10は、第1のフレキシブルフラットケーブルとしての幹線側のフレキシブルフラットケーブル11と、これに接続される第2のフレキシブルフラットケーブルとしての2本の分岐側のフレキシブルフラットケーブル12、13とを備えている。それぞれのフレキシブルフラットケーブル11~13は、FFCとも言われており、以下の記載においては、ケーブルとも略称されている。
【0030】
幹線側のケーブル11は、図2および図3に示すように、平型つまり扁平形状の4本の導体14a~14dを有し、全ての導体14a~14dは同一平面内に平行に配列され、絶縁被覆15により覆われている。ケーブル11の両端部には、コネクタ16,17が取り付けられており、導体14a~14dの端部に圧着された図示しない端子がコネクタ16,17に挿入されている。
【0031】
分岐側のケーブル12、13は平型の2本の導体18a、18bを有し、2本の導体18a、18bは同一平面内に平行に配列され絶縁被覆19により覆われている。それぞれの分岐側のケーブル12,13の一端部は幹線側のケーブル11の接続面20に接続され、他端部にはコネクタ21、22が取り付けられている。導体18a、18bの端部に圧着された図示しない端子がコネクタ21,22に挿入されている。なお、それぞれの分岐側のケーブル12,13の一端部のうち、幹線側のケーブル11の接続面20に接続される部分は分岐接続面20aを構成する。
【0032】
分岐側のケーブル12の一端部つまり接続端部は、幹線側のケーブル11に対して直角方向に延びており、分岐側のケーブル12は幹線側のケーブル11に対して直角に接続されている。これに対して、分岐側のケーブル13の接続端部は、幹線側のケーブル11に対して平行となっており、ケーブル13はケーブル11に対して平行に接続されている。図1に示すように、分岐側のケーブル13を折返し部13aの部分で折り曲げると、コネクタ21、22は相互に隣接して配置される。図1においては、幹線側のケーブル11の端部に折返し部11a、11bの部分で折り曲げることにより、コネクタ16,17がコネクタ21,22に並んだ状態となっている。
【0033】
なお、それぞれのケーブル11~13を構成する導体の本数は、上述した数に限定されることなく、少なくとも1本の導体を備えていればよく、任意の本数に設定することができる。
【0034】
図2図5に示すように、幹線側のケーブル11の絶縁被覆15には、2本の導体14a、14bに対応させて開口部23が形成されており、導体14a、14bには開口部23を介して接続面20に露出する導体接続部24が設けられている。一方、分岐側のケーブル12の端部の絶縁被覆19に形成された切欠き部25により導体18a、18bの端部が絶縁被覆19から突出して分岐部26が形成されている。開口部23は絶縁被覆15にレーザ光を照射して溶融除去することにより形成され、切欠き部25は絶縁被覆19にレーザ光を照射して溶融除去することにより形成される。
【0035】
幹線側のケーブル11と分岐側のケーブル12の端部とを重ねた状態のもとで、分岐側のケーブル12の導体18aの分岐部26は、幹線側のケーブル11の導体14aの導体接続部24に溶接され、導体18bの分岐部26は導体14bの導体接続部24に溶接される。これにより、分岐側のケーブル12の端部は幹線側のケーブル11に直角方向となって接続される。一方、分岐側のケーブル13の導体18bの分岐部26は、幹線側のケーブル11の導体14bの導体接続部24に溶接され、導体18aの分岐部26は導体14cの導体接続部24に溶接される。これにより、分岐側のケーブル13の端部は幹線側のケーブル11に平行となって接続される。
【0036】
それぞれの分岐部26を導体接続部24に対する溶接は、分岐部26と導体接続部24とを相互に接触させた状態のもとで、分岐部26にレーザ光を照射することにより行うことができる。レーザ光を照射すると、分岐部26と導体接続部24はそれぞれの接触部が溶融して溶融接続される。このように、溶融接続されるので、分岐部26と導体接続部24とは金属組織的に強固に接続され、第1のフレキシブルフラットケーブルとしての幹線側のケーブル11と、これに接続される第2のフレキシブルフラットケーブルとしての2本の分岐側のケーブル12、13との接続強度が高められる。なお、図2および図3において、符号27は溶融接続された部分を示す。
【0037】
図4に示すように、分岐側のケーブル12の分岐部26には幹線側のケーブル11に向けて変位する変位部28が第1の変位部として設けられている。この第1の変位部28は、図6(A)に示すように、分岐部26の接触面が絶縁被覆15の分岐接続面20aと同一面となるように分岐部26を階段形状に折り曲げることにより形成される。一方、幹線側のケーブル11の導体接続部24には分岐側のケーブル12の分岐部26に向けて変位する変位部29が第2の変位部として設けられている。この第2の変位部29は、図5に示すように、導体接続部24の接触面が絶縁被覆19の分岐接続面20aと同一面となるように導体接続部24を台形形状に折り曲げることにより形成される。
【0038】
分岐側のケーブル13の分岐部26にも図6(A)に示す変位部28と同様の変位部28が形成され、これが接続される幹線側のケーブル11の導体接続部24にも図5に示す形状の変位部29が形成されている。
【0039】
なお、導体接続部24に変位部29を形成することなく、分岐部26の変位部28の変位量を大きくしても、幹線側のケーブル11と分岐側のケーブル12,13とを重ねることにより、分岐部26を導体接続部24に接触させることができる。同様に、分岐部26に変位部28を形成することなく、導体接続部24に設けられる変位部29の変位量を大きくしても、幹線側のケーブル11と分岐側のケーブル12,13とを重ねることにより、分岐部26を導体接続部24に接触させることができる。
【0040】
このように、導体接続部24と分岐部26の少なくとも一方に他方に向けて変位する変位部を形成することにより、幹線側のケーブル11の接続面20に分岐側のケーブル12、13の端部の分岐接続面20aを重ねると、導体接続部24と分岐部26とを接触させることができる。そして、分岐部26と導体接続部24とを接触させた状態のもとで、分岐部26にレーザ光を照射することにより、分岐部26と導体接続部24とを確実に溶融接続することができる。
【0041】
図6(B)は、図2に示す分岐側のケーブル12の分岐部26が導体接続部24に溶接された状態を拡大して示しており、図6(C)は、図3に示す分岐側のケーブル13の分岐部26が導体接続部24に溶接された状態を拡大して示している。
【0042】
分岐部26が導体接続部24に接続された状態のもとで、接続面20には保護フィルム30が接着される。保護フィルム30は、図1図3においては、導体接続部24と分岐部26を示すために、二点鎖線で示しており、図4および図5においては、断面構造を示すために実線で示している。
【0043】
図4および図5に示す開口部23は、幹線側のケーブル11の絶縁被覆15を貫通して形成されており、接続面20に開口するとともに接続面20の反対側の面にも開口している。保護フィルム30は、被覆層31と接着剤層32とを有し、被覆層31が開口部23と切欠き部25とを覆って導体接続部24と分岐部26とを被覆するように、接続面20に接着されている。また、開口部23は接続面20の反対側の面にも開口しているので、保護フィルム30は反対側の面も覆っている。
【0044】
被覆層31と接着剤層32は、いずれも熱可塑性樹脂つまり熱可塑性接着剤により形成されており、接着剤層32の溶融温度は被覆層31の溶融温度よりも低い温度となっている。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)を被覆層31とする保護フィルム30においては、ポリエステル系の接着剤が接着剤層32として使用される。また、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を被覆層31とする保護フィルム30においては、ポリフェニレンサルファイド系の接着剤が接着剤層32として使用される。
【0045】
それぞれの保護フィルム30においては、接着剤層32の溶融温度が被覆層31の溶融温度よりも、例えば30度程度低く設定される。したがって、保護フィルム30を幹線側のケーブル11に重ねた状態のもとで、保護フィルム30を加熱すると、被覆層31は軟化することなく、接着剤層32が軟化して、開口部23と切欠き部25とが封止される。これにより、被覆層31の内側に気泡が含まれることなく、導体接続部24と分岐部26とが保護フィルム30により被覆される。
【0046】
次に、図7を参照しつつ、フレキシブルフラットケーブルの接続方法について説明する。なお、図7においては、図2に示す幹線側のケーブル11を第1のフレキシブルフラットケーブルとし、分岐側のケーブル12を第2のフレキシブルフラットケーブルとして、これらを接続する手順を示す。
【0047】
図7(A)は、幹線側のケーブル11にレーザ光Lを照射して絶縁被覆15を溶融して除去し、幹線側のケーブル11に開口部23を形成することによって、開口部23により導体接続部24を接続面20に露出させた接続部露出工程が終了した状態を示す。図7(A)においては、開口部23は幹線側のケーブル11を貫通しており、絶縁被覆15は、接続面20側の部分23aと、その反対側の部分23bとが除去されている。これにより、導体接続部24は接続面20側の部分とその反対側面とに露出されている。但し、レーザ光Lの照射量つまり照射エネルギーを調整することによって、接触面側の部分23aのみを除去するようにしてもよく、少なくとも接続面側の絶縁被覆15を除去すればよい。
【0048】
図7(B)は、分岐側のケーブル12にレーザ光Lを照射して絶縁被覆19を除去し、分岐側のケーブル12に切欠き部25を形成することによって、切欠き部25により分岐部26を露出させた分岐部露出工程が終了した状態を示す。このように、導体接続部24と分岐部26とを露出させる際にはレーザ光Lが照射される。
【0049】
図7(C)は、導体接続部24に変位部29を加工する第1の変位加工工程が終了した状態を示し、図7(D)は、分岐部26に変位部28を加工する第2の変位加工工程が終了した状態を示す。これらの変位部28,29は、プレス等により加工される。
【0050】
図7(E)は、分岐側のケーブル12を幹線側のケーブル11に重ねることにより、分岐部26を導体接続部24に接触させて、分岐部26にレーザ光Lを照射している状態の溶接工程を示す。レーザ溶接は、導体接続部24と分岐部26とが接触状態のもとで、これらを溶融して行われる。導体接続部24と分岐部26とを露出させるためにレーザ光を使用し、導体接続部24と分岐部26とを溶接するためにもレーザ光を使用しているので、同種のレーザ光照射装置により、それぞれの露出工程と溶接工程とを実施することができる。
【0051】
次いで、接着工程が実行されて、図4に示すように、保護フィルム30が分岐部26と導体接続部24が保護フィルム30により覆われる。なお、図7においては、幹線側のケーブル11と分岐側のケーブル12のうち、図4と同様の部分を示している。
【0052】
図8(A)は導体接続部24の変位部29の他の例を示す断面図であり、図8(B)は図8(A)の斜視図である。この変位部29は、エンボス加工により角錐台形に形成されている。変位部29の表面は、幹線側のケーブル11の接続面20と同一面となっている。このように、変位部29を角錐台形に形成すると、上述のように、変位部29を山形形状に折り曲げ加工した場合よりも変位部の強度を高めることができる。
【0053】
図9(A)は分岐部26の変位部28の他の例を示す断面図であり、図9(B)は図9(A)に示す分岐部の斜視図である。この変位部28は、変位部29と同様に、角錐台形に形成されており、変位部29の表面は、分岐側のケーブル12の分岐接続面20aと同一面となっている。
【0054】
図10(A)および図10(B)は、それぞれ幹線側のケーブル11に直角方向に配置される分岐側のケーブル12の変形例を示す斜視図である。
【0055】
図10に示す幹線側のケーブル11は4本の導体14a~14dを有し、分岐側のケーブル12も同様に4本の導体18a~18dを有している。図10(A)に示す幹線側のケーブル11の導体間ピッチP1と分岐側のケーブル12の導体間ピッチP2はほぼ同様である。このように、幹線側のケーブル11の導体間ピッチP1と分岐側のケーブル12の導体間ピッチP3とがほぼ同一であれば、図10(A)に示すように、分岐側のケーブル12を幹線側のケーブル11に対して直角方向に配置することができるだけでなく、平行方向に配置することもできる。
【0056】
これに対し、図10(B)に示すように、分岐側のケーブル12における導体間ピッチP3が、幹線側のケーブル11の導体間ピッチP1よりも小さい場合には、分岐側のケーブル12を幹線側のケーブル11に対して直角方向に配置することができる。但し、両方のピッチが相違していると、複数本の導体を有する分岐側のケーブル12を幹線側のケーブル11に平行方向には配置することができない。
【0057】
このように、本発明においては、分岐側のケーブル12を幹線側のケーブル11に対して、直角方向に配置することができるので、相互に導体間ピッチが相違する2本のケーブルの導体同士を接続することができる。
【0058】
図11は分岐側のケーブルにさらに他の分岐側のフラットケーブルが接続された平面形態のフレキシブルフラットケーブル組立体10を示す斜視図である。このフレキシブルフラットケーブル組立体10においては、幹線側のケーブル11に2本の分岐側のケーブル12,13が接続されるとともに、分岐側のケーブル13にはさらに分岐側のケーブル33が接続されている。この場合には、分岐側のケーブル13が第1のフレキシブルフラットケーブルに相当し、分岐側のケーブル33が第2のフレキシブルフラットケーブルに相当する。
【0059】
図12は分岐側のケーブルにさらに他の分岐側のケーブルが接続された立体形態のフレキシブルフラットケーブル組立体10を示す斜視図である。このフレキシブルフラットケーブル組立体10においては、図11と同様に、幹線側のケーブル11に2本の分岐側のケーブル12,13が接続されるとともに、分岐側のケーブル13にはさらに分岐側のケーブル33が接続されている。この場合には、幹線側のケーブル11は図において上下方向にも屈曲しており、分岐側のケーブル13も上下方向に屈曲している。
【0060】
このように、フレキシブルフラットケーブル組立体10が立体形態の場合にも、本発明を適用することができる。
【0061】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0062】
例えば、分岐側のケーブル12、13の端部の絶縁被覆19を除去して分岐部26を露出させることにより、幹線側のケーブル11の導体接続部24に分岐側のケーブル12、13の端部を溶接接続するようにしているが、分岐側のケーブル12、13の長手方向中央部等のように端部以外の部分で接続するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、電子機器や自動車などの電気配線における配線材として適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 フレキシブルフラットケーブル組立体
11~13 フレキシブルフラットケーブル(ケーブル)
11a、11b、13a 折返し部
14a~14d 導体
15 絶縁被覆
16、17 コネクタ
18a~18d 導体
19 絶縁被覆
20 接続面
20a 分岐接続面
21、22 コネクタ
23 開口部
24 導体接続部
25 切欠き部
26 分岐部
28、29 変位部
30 保護フィルム
31 被覆層
32 接着剤層
L レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12