IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人九州大学の特許一覧 ▶ 学校法人日本医科大学の特許一覧

<>
  • 特許-自動運針器 図1
  • 特許-自動運針器 図2
  • 特許-自動運針器 図3
  • 特許-自動運針器 図4
  • 特許-自動運針器 図5
  • 特許-自動運針器 図6
  • 特許-自動運針器 図7
  • 特許-自動運針器 図8
  • 特許-自動運針器 図9
  • 特許-自動運針器 図10
  • 特許-自動運針器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】自動運針器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/062 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A61B17/062
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021502275
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007502
(87)【国際公開番号】W WO2020175479
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019035931
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「バイオニックヒューマノイドが拓く新産業革命」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】500557048
【氏名又は名称】学校法人日本医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182914
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 善紀
(72)【発明者】
【氏名】中楯 龍
(72)【発明者】
【氏名】江藤 正俊
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 誠
(72)【発明者】
【氏名】森田 明夫
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0235604(US,A1)
【文献】米国特許第06056771(US,A)
【文献】特表2011-509121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/00
A61N 7/00
A61F 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針支持部及び針受け部を有し、前記針支持部及び前記針受け部の間に対象物が配置された状態で、前記針支持部から前記針受け部へ糸付針を受け渡すことで運針を行う自動運針器であって、
前記針支持部及び前記針受け部の間に対象物を配置した際に、前記対象物と前記針受け部との間に設けられ、前記糸付針の運針方向に沿って前記糸付針が通過可能なスリットを有する中間板を有し、
前記中間板は、前記針受け部が前記糸付針を受けた後に、前記運針方向に沿って前記針受け部から離間することが可能とされている、自動運針器。
【請求項2】
前記針支持部及び前記針受け部の間に対象物が配置された状態で、前記針受け部から前記針支持部への前記糸付針の受け渡しが可能であって、
前記中間板は、前記針支持部及び前記針受け部の間に対象物を配置した際に、前記対象物と前記針支持部との間に設けられ、前記針支持部が前記糸付針を受けた後に、前記運針方向に沿って前記針支持部から離間することが可能とされている、請求項1に記載の自動運針器。
【請求項3】
前記針支持部、前記針受け部、及び、前記中間板は、同一方向に延在する互いに異なる3つのシャフトの一端側に対してそれぞれ取り付けられ、
前記3つのシャフトそれぞれの他端側に設けられ、前記3つのシャフトを個別に動かすことによって前記針支持部、前記針受け部、及び、前記中間板の相対位置を移動可能な操作部を有する、請求項1または2に記載の自動運針器。
【請求項4】
前記糸付針は、その側面に切り欠きを有し、
前記針支持部または前記針受け部は、
前記糸付針が前記運針方向に沿って移動可能とされた通路部と、
前記通路部に対して交差する方向に、前記通路部内に入り込むように移動可能な係止部と、を有し、
前記糸付針が前記通路部の所定の位置に移動した際に、前記係止部が前記糸付針の前記切り欠きに対して係止することで、前記糸付針の移動を規制する、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動運針器。
【請求項5】
前記係止部は、前記通路部を有する前記針支持部または前記針受け部を支持する支持部材に沿って延びるワイヤであって、
前記ワイヤの前記通路部側の端部とは逆側の端部を操作することによって、前記糸付針が前記通路部の所定の位置に移動した際に、前記係止部が前記糸付針の前記切り欠きに対して係止して、前記糸付針の移動を規制する、請求項4に記載の自動運針器。
【請求項6】
前記ワイヤは、前記支持部材に沿って設けられたパイプの内部に収容され、前記パイプに沿って移動可能とされている、請求項5に記載の自動運針器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運針器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対象物を縫合するための運針器として、本体部分から延びた2つのジョーエレメントのそれぞれに針の固定に係る固定手段及び開放手段が設けられた装置が開示されている。この装置では、固定手段及び開放手段を利用して2つのジョーエレメント間で針を受け渡して対象物の縫合が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-155332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、対象物に対して針を刺した後に、針を貫通させることが困難な可能性がある。そのため、運針を連続して縫合するためには、対象物の移動等の補助が必要となり、作業が複雑となる可能性がある。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、連続した縫合をより簡便な操作で行うことが可能な自動運針器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る自動運針器は、針支持部及び針受け部を有し、前記針支持部及び前記針受け部の間に対象物が配置された状態で、前記針支持部から前記針受け部へ糸付針を受け渡すことで運針を行う自動運針器であって、前記針支持部及び前記針受け部の間に対象物を配置した際に、前記対象物と前記針受け部との間に設けられ、前記糸付針の運針方向に沿って前記糸付針が通過可能なスリットを有する中間板を有し、前記中間板は、前記針受け部が前記糸付針を受けた後に、前記運針方向に沿って前記針受け部から離間することが可能とされている。
【0007】
上記の自動運針器によれば、対象物が針支持部と中間板の間に配置された状態で、針支持部から針受け部に対して糸付針の受け渡しが行われるので、糸付針が対象物に対して刺入される。このとき、針受け部が糸付針を受けた後に、運針方向に沿って中間板が針受け部から離間することが可能とされている。このため、中間板を利用して針支持部と中間板との間に配置された対象物に対する糸付針の移動を促進することができ、対象物に対する運針を好適に行うことができる。また、中間板が設けられるので糸付針を受ける側の針受け部に対して対象物が離間した状態で対象物に対する糸付針の刺入が行われるため、針受け部側に対象物が食い込むことも防がれるため、対象物の針受け部からの取り外し等の作業も発生せず、対象物に係る連続した縫合をより簡便に行うことができる。
【0008】
ここで、前記針支持部及び前記針受け部の間に対象物が配置された状態で、前記針受け部から前記針支持部への前記糸付針の受け渡しが可能であって、前記中間板は、前記針支持部及び前記針受け部の間に対象物を配置した際に、前記対象物と前記針支持部との間に設けられ、前記針支持部が前記糸付針を受けた後に、前記運針方向に沿って前記針支持部から離間することが可能とされている態様とすることができる。
【0009】
上記のように、針受け部から針支持部への糸付針の受け渡しも可能な構成とされている場合、針受け部と針支持部との間で糸付針の受け渡しを連続することが可能となり、対象物に係る連続した縫合をより簡便な操作で行うことができる。また、針支持部が糸付針を受けた後に、運針方向に沿って中間板が針支持部から離間することが可能とされている。このため、中間板を利用して針受け部と中間板との間に配置された対象物に対する糸付針の移動を促進することができ、対象物に対する運針を好適に行うことができる。また、中間板が設けられるので糸付針を受ける側の針支持部に対して対象物が離間した状態で対象物に対する糸付針の刺入が行われるため、針支持部側に対象物が食い込むことも防がれるため、対象物の針支持部からの取り外し等の作業も発生せず、対象物に係る連続した縫合をより簡便に行うことができる。
【0010】
また、前記針支持部、前記針受け部、及び、前記中間板は、同一方向に延在する互いに異なる3つのシャフトの一端側に対してそれぞれ取り付けられ、前記3つのシャフトそれぞれの他端側に設けられ、前記3つのシャフトを個別に動かすことによって前記針支持部、前記針受け部、及び、前記中間板の相対位置を移動可能な操作部を有する態様とすることができる。
【0011】
上記のように、3つのシャフトそれぞれの一端側に対して針支持部、針受け部及び中間板を取り付けて、他端側の操作部において、3つのシャフトを個別に動かす構成とした場合、シャフトの長さ等を利用して、操作部から離れた場所での対象物の縫合においても自動運針器を好適に利用することができる。
【0012】
前記糸付針は、その側面に切り欠きを有し、前記針支持部または前記針受け部は、前記糸付針が前記運針方向に沿って移動可能とされた通路部と、前記通路部に対して交差する方向に、前記通路部内に入り込むように移動可能な係止部と、を有し、前記糸付針が前記通路部の所定の位置に移動した際に、前記係止部が前記糸付針の前記切り欠きに対して係止することで、前記糸付針の移動を規制する態様とすることができる。
【0013】
上記のように、糸付針の側面に設けられた切り欠きに対して、係止部が係止することで糸付針の移動を規制する構成とすることで、針支持部または針受け部において糸付針を保持している際に、糸付針が移動することを防ぐことができる。また、係止部の係止及び解除によって、糸付針が移動可能な状態と移動を規制する状態とを簡単に切り換えることができるため、針支持部または針受け部での糸付針の受け渡しをスムーズに行うことができる。
【0014】
前記係止部は、前記通路部を有する前記針支持部または前記針受け部を支持する支持部材に沿って延びるワイヤであって、前記ワイヤの前記通路部側の端部とは逆側の端部を操作することによって、前記糸付針が前記通路部の所定の位置に移動した際に、前記係止部が前記糸付針の前記切り欠きに対して係止して、前記糸付針の移動を規制する態様とすることができる。
【0015】
上記のように、係止部をワイヤによって構成し、ワイヤを操作することで係止部の係止及び解除を切り換える構成とすることで、通路部を有する針支持部または針受け部に対して係止部を設けることによる大型化を防ぐことができる。また、支持部材に沿って延びるワイヤを係止部として用いることで、ワイヤの長さを調整することで針支持部または針受け部から離間した位置でも係止部の操作が可能となる。そのため、対象部の縫合を行う際に対象部に近い位置で係止に係る動作を行わなくてもよくなる。
【0016】
前記ワイヤは、前記支持部材に沿って設けられたパイプの内部に収容され、前記パイプに沿って移動可能とされている態様とすることができる。
【0017】
上記のようにパイプの内部にワイヤを収容して、パイプに沿って移動させる構成とすることで、支持部材に沿ったワイヤの移動の方向をパイプによって規制することが可能となる。そのため、ワイヤを利用した係止部の動作をより正確に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、連続した縫合をより簡便な操作で行うことが可能な自動運針器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、自動運針器の斜視図である。
図2図2は、自動運針器の運針部及びシャフト部の斜視図である。
図3図3は、自動運針器の運針部及びシャフト部の分解斜視図である。
図4図4(a)、図4(b)は、自動運針器に用いられる糸付針について説明する図である。
図5図5(a)、図5(b)は、自動運針器の運針部について説明する図である。
図6図6は、自動運針器の運針部について説明する図である。
図7図7(a)~図7(e)は、自動運針器の運針動作について説明する図である。
図8図8(a)~図8(d)は、自動運針器の運針動作について説明する図である。
図9図9は、自動運針器の操作部について説明する図である。
図10図10は、自動運針器の操作部について説明する一部分解斜視図である。
図11図11(a)~図11(c)は、中間板を有しない自動運針器について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。説明の便宜上、図面では必要に応じてXYZ座標系を示すと共に、これらの座標系を用いて説明する場合がある。
【0021】
図1は、本開示の一形態に係る自動運針器1の斜視図である。本実施形態に係る自動運針器1は、医療用糸付針を用いて対象となる組織等を縫合する際に用いられる。対象となる組織としては、例えば脳深部等が挙げられ、自動運針器1は、鼻腔内を経由して脳深部の組織を縫合する際に用いられる。ただし、縫合の対象となる組織は上記に限定されない。また、自動運針器1は、脳外科、耳鼻科、あるいは眼科領域で用いられるが、使用される領域はこれらに限定されない。
【0022】
図1に示す自動運針器1は、糸付針の運針操作を行う運針部2と、操作者が保持する操作部3と、運針部2と操作部3との間に設けられるシャフト部4と、を有する。シャフト部4は一方向(図1のX方向)に延び、一端側に運針部2が設けられ、他端側に操作部3が設けられる。自動運針器1は、操作者が操作部3を把持し、操作部3に設けられたハンドル5を操作部3のケース6に対して矢印H方向に動作させることで、運針部2に取り付けられた糸付針9の運針を行う。以下、運針部2及びシャフト部4について説明した後、操作部3について説明する。
【0023】
図2は、運針部2及び運針部2に連続するシャフト部4の一部拡大図であり、図3は、運針部2及びシャフト部4の分解斜視図である。
【0024】
運針部2は、一対のジョー20と、一対のジョー20の間に設けられた中間板30を含んで構成される。図2に示すように、ジョー20は、第1ジョー21と第2ジョー22とからなる。また、図3に示すように、シャフト部4は、第1シャフト41、第2シャフト42及び第3シャフト43を含む。第1シャフト41の一端に第1ジョー21が取り付けられている。第2シャフト42の一端に第2ジョー22が取り付けられている。また、第3シャフト43の一端に中間板30が取り付けられている。すなわち、第1シャフト41は、第1ジョー21に対する支持部材として機能する。また、第2シャフト42は、第2ジョー22に対する支持部材として機能する。さらに、第3シャフト43は、中間板30に対する支持部材として機能する。
【0025】
第1ジョー21及び第2ジョー22は、これらの間で糸付針9を受け渡すことで運針を行う。したがって、第1ジョー21及び第2ジョー22の両方が、対象物に対して針を通過させる前に針を支持する針支持部、及び、対象物に対して針を通過させる後に針を支持する針受け部としての機能を有する。換言すると、自動運針器1では、針支持部から針受け部への針の受け渡しだけでなく、針受け部から針支持部への針の受け渡しも行われる。具体的には、本実施形態では、第2ジョー22が針支持部であり、第1ジョー21が針受け部であるとする。このとき、第2ジョー22から第1ジョー21への針の受け渡しは針支持部から針受け部への針の受け渡しに相当し、第1ジョー21から第2ジョー22への針の受け渡しは針受け部から針支持部への針の受け渡しに相当する。具体的な手順については後述する。
【0026】
第1シャフト41、第2シャフト42及び第3シャフト43は、その外径及び内径がこの順に小さくなっている。すなわち、第1シャフト41の内径に対して第2シャフト42の外径が僅かに小さく、第2シャフト42の内径に対して第3シャフト43の外径が僅かに小さくされている。また、第1シャフト41、第2シャフト42及び第3シャフト43は、軸線A(図2参照)を基準に同軸に配置されている。すなわち、第1シャフト41の内部に第2シャフト42が入り込み、軸線A方向(X方向)に沿って第2シャフト42が移動可能である。また、第2シャフト42の内部に第3シャフト43が入り込み、軸線A方向(X方向)に沿って第3シャフト43が移動可能である。この結果、第1シャフト41、第2シャフト42及び第3シャフト43は、軸線A方向(X方向)に沿って相対位置を変更可能である。したがって、第1シャフト41、第2シャフト42及び第3シャフト43のそれぞれに取り付けられた第1ジョー21、第2ジョー22、及び中間板30も軸線A方向(X方向)に沿って相対位置を変更可能である。すなわち、第1ジョー21と第2ジョー22とは、軸線A方向(X方向)に沿ってその距離を変化させることができる。また、中間板30は、軸線A方向(X方向)に沿って第1ジョー21と第2ジョー22との間を移動可能とされている。なお、第1シャフト41は、操作部3のケース6に対して固定されている。したがって、第2シャフト42及び第3シャフト43が、第1シャフト41に対して相対位置を変更することにより、上記の移動が実現される。
【0027】
第1ジョー21、第2ジョー22、及び中間板30は、第1シャフト41、第2シャフト42及び第3シャフト43の軸線Aに対して同一の方向(図2及び図3における上側、+Z側)に突出している。第1ジョー21、第2ジョー22、及び中間板30の軸線に対する突出方向は固定されていて、突出方向において、軸線Aに沿って移動する。
第2ジョー22及び中間板30の移動を許容するために、第1シャフト41には軸線A方向に延びるスリット411が設けられている。また、第3シャフト43にも軸線A方向に延びるスリット431が設けられる。スリット431は、第2シャフト42に沿って延びるガイド管との干渉を回避するために設けられている。この点は後述する。
【0028】
中間板30は、第1ジョー21と第2ジョー22との間に設けられて、軸線A方向に対して交差する方向(具体的には直交する方向)に延びる主面を有する平板状の部材である。また、中間板30は、糸付針9が通過可能なスリット31を有している。糸付針9が軸線A上で運針される場合には、スリット31は、軸線A上に設けられる。スリット31の幅は、糸付針9の針部分よりも少し大きく、糸付針9はスリット31内を通過することができる。また、スリット31は上方(軸線Aから離間する方向、+Z方向)に開口していて、糸付針9の糸が当該開口を通過可能とされている。
【0029】
自動運針器1では、第1ジョー21と第2ジョー22との間で糸付針9の受け渡しを繰り返すことで運針を行う。したがって、糸付針9として両方向に鋭端を有する針が用いられる。図4では、自動運針器1において使用される糸付針9の針付近の拡大図を示している。図4(a)は糸付針の正面図であり、図4(b)は糸付針の上面図である。図4(a)及び図4(b)では、糸付針9を自動運針器1に取り付ける際の方向を基準にXYZ座標系を示している。
【0030】
糸付針9は、医療用糸付針であり、直針91と糸92とを含む。直針91は直線状の針であって、両端が鋭端となっている。したがって、直針91の両端から対象物に対して刺入することができる。糸92は直針91の中央に対して固定されている。直針91は、側面に2つの切り欠き93a,93bが設けられている。図4(b)に示すように、切り欠き93a,93bは、それぞれ直針91の両端に近い位置に、軸心(長手方向)を挟んで対向するように設けられている。また、切り欠き93a,93bは、それぞれ直針91の軸心に対して直交しつつ貫通した開口として設けられている。この切り欠き93a,93bは、直針91を一対のジョー20である第1ジョー21及び第2ジョー22にて支持する際に用いられる。糸付針9の直針91は、例えば、外径が0.4mmであり、長さが4.6mmのものを使用することができる。ただし、この大きさに限定されるものではない。
【0031】
図5及び図6は、第1ジョー21及び第2ジョー22の周辺の内部構造について説明する。図5(b)及び図6では、第1ジョー21及び第2ジョー22の周辺について、内部についても模式的に示している。
【0032】
まず、図5(a)を参照しながら、第1ジョー21の内部について説明する。第1ジョー21には、軸線A方向(X方向)に延びる貫通孔である第1通路部211が設けられる。第1通路部211は直針91の外径に対応している。また、第1ジョー21及び第1シャフト41内には、第1ガイド管212が設けられている。第1ガイド管212は、操作部3から延びるパイプであり、第1シャフト41内で操作部3から第1ジョー21まで軸線A方向に延在している。さらに、第1ジョー21側の端部近傍には、延在方向が軸線A方向(X方向)から、第1ジョー21の突出方向(+Z方向)に90°折り曲げられた屈曲部213が設けられている。第1ガイド管212の第1ジョー21側の端部212aは、上述のように屈曲部213を経て第1ジョー21の突出方向に開口している。さらにこの端部212aから連続して、第1ジョー21の突出方向(+Z方向)に延びる第1ワイヤ通路214が設けられている。第1ワイヤ通路214は、第1ジョー21の上端で開口している。第1ガイド管212は、例えば、ステンレスチューブ等により構成することができる。
【0033】
第1ガイド管212及び第1ワイヤ通路214内には第1ワイヤ215が挿入される。第1ワイヤ215は第1ガイド管212よりも長く、第1ガイド管212の操作部3側の端部(図示せず)と、第1ジョー21側の端部212aの両方から第1ワイヤ215の端部が突出した状態で第1ガイド管212に対して挿入されている。また、第1ジョー21側では、第1ガイド管212から突出した第1ワイヤ215は、第1ワイヤ通路214に沿って上方に延びる。第1ワイヤ215の径は、第1ガイド管212の内径よりも僅かに小さく、第1ワイヤ215は第1ガイド管212の延在方向に剃って第1ガイド管212に対してスライド可能とされている。第1ワイヤ215としては、例えば、超弾性NiTi合金などの曲がり癖がつきにくい金属材料を用いることができる。このような材料からなる第1ワイヤ215を用いた場合、上記のように屈曲部213を有する第1ガイド管212内において第1ワイヤ215をスムーズにスライドさせることができる。
【0034】
上記の第1ガイド管212及び第1ワイヤ通路214は、自動運針器1を上方(+Z方向)から見たときに、第1通路部211と完全に重なる位置ではなく、その一部のみが重なる位置に設けられる。例えば、第1通路部211が軸線Aに沿って延びている場合、第1ガイド管212は、軸線Aに対して僅かにずれた位置で軸線Aに平行に延在している。また、第1ワイヤ通路214は、第1ガイド管212の延在した位置から上方(第1ジョー21の突出方向)に延びるので、軸線Aとは重ならない位置に設けられる。ただし、第1ワイヤ通路214は、その一部が第1通路部211と連通している。すなわち、自動運針器1を上方(+Z方向)から見たときに、第1通路部211の側面(自動運針器1の場合は、+Y側の側面)において、第1通路部211と重なる位置に第1ワイヤ通路214が設けられる。上記の第1ガイド管212及び第1ワイヤ通路214内を第1ワイヤ215がスライドするとき、第1ワイヤ215は第1通路部211の側面を第1通路部211に対して直交する方向に通過することが可能とされている。
【0035】
ここで、糸付針9の直針91が第1通路部211内の所定の位置に配置されている状態で、第1ワイヤ215が第1通路部211の側面を通過させることで、この第1ワイヤ215が直針91の移動を規制し、糸付針9を支持することができる。
【0036】
図5(a)、図5(b)及び図6では、糸付針9が第1ジョー21において支持されている状態を示している。糸付針9は、第1ジョー21の第1通路部211内に挿入された状態であり、直針91の切り欠き部93aが、第1通路部211と第1ワイヤ通路214とが重なる位置に設けられている状態である。この状態が、糸付針9の直針91が第1通路部211内の所定の位置に配置されている状態である。なお、切り欠き部93aは、上下方向(Z方向)に延在するように、直針91の向きが制御されているとする。
【0037】
上記の状態で、第1ガイド管212の端部212aからの突出長が大きくなるように、第1ガイド管212に沿って第1ワイヤ215をスライドさせると、第1通路部211と第1ワイヤ通路214とが重なる位置を第1ワイヤ215が通ることになる。このとき、直針91に設けられた切り欠き93aが第1ワイヤ通路214と重なっている場合には、第1ワイヤ215は第1通路部211に対して直交した状態で、上方の第1ワイヤ通路214まで移動することができる。図5(a)、図5(b)及び図6では、上方の第1ワイヤ通路214まで第1ワイヤ215が移動できた状態を示している。
【0038】
図5(a)、図5(b)及び図6に示す状態では、直針91の切り欠き93aを埋めるように第1ワイヤ215が上下方向に延びているため、直針91は第1通路部211に沿った移動が規制されている。したがって、糸付針9は第1ジョー21に支持された状態となる。このように、第1ジョー21では、第1ワイヤ215が糸付針9の直針91に設けられた切り欠き93aに対して係止して、糸付針9の移動を規制する係止部として機能する。
【0039】
なお、直針91に設けられた切り欠き93aが第1ワイヤ通路214と重なっていない場合には、第1ワイヤ215が第1通路部211の側面を通って上方の第1ワイヤ通路214まで移動できない構成とすることで、第1通路部211の延在方向(軸線A方向)での直針91の位置ずれを防ぐことができると共に、位置ずれが生じている場合に運針を行うことを防ぐことができる。直針91に設けられた切り欠き93aが第1ワイヤ通路214と重なっている場合に限り第1ワイヤ215が通過可能となるように、第1通路部211、第1ワイヤ通路214、第1ワイヤ215及び切り欠き93aの大きさを設計しておくことで、上記の構成を実現することができる。
【0040】
上記では、第1ジョー21について説明したが、第2ジョー22においても同様の構成が設けられている。すなわち、第2ジョー22には、軸線A方向(X方向)に延びる貫通孔である第2通路部221が設けられる。また、第2ジョー22及び第2シャフト42内には、第2ガイド管222が設けられている。また、第2ガイド管222は、第2シャフト42内で操作部3から第2ジョー22まで軸線A方向に延在すると共に、第2ジョー22側の端部近傍には、延在方向が軸線A方向(X方向)から、第2ジョー22の突出方向(+Z方向)に90°折り曲げられた屈曲部223が設けられている。さらに、第2ガイド管222の第2ジョー22側の端部222aから連続して、第2ジョー22の突出方向(+Z方向)に延びる第2ワイヤ通路224が設けられている。第2ワイヤ通路224は、第2ジョー22の上端で開口している。第2ガイド管222は、例えば、ステンレスチューブ等により構成することができる。
【0041】
第2ガイド管222及び第2ワイヤ通路224内には第2ワイヤ225が挿入される。第2ワイヤ225は第2ガイド管222よりも長く、第2ガイド管222の操作部3側の端部(図示せず)と、第2ジョー22側の端部222aの両方から第2ワイヤ225の端部が突出した状態で第2ガイド管222に対して挿入されている。また、第2ジョー22側では、第2ガイド管222から突出した第2ワイヤ225は、第2ワイヤ通路224に沿って上方に延びる。第2ワイヤ225の径は、第2ガイド管222の内径よりも僅かに小さく、第2ワイヤ225は第2ガイド管222の延在方向に剃って第2ガイド管222に対してスライド可能とされている。第2ワイヤ225についても、第1ワイヤ215と同様に、例えば、超弾性NiTi合金などの曲がり癖がつきにくい金属材料を用いることができる。
【0042】
上記の第2ガイド管222及び第2ワイヤ通路224は、自動運針器1を上方(+Z方向)から見たときに、第2通路部221と完全に重なる位置ではなく、その一部のみが重なる位置に設けられる。この点は、第1ガイド管212及び第1ワイヤ通路214と同じである。ただし、第1通路部211及び第2通路部221の延在方向を基準に第1ガイド管212及び第1ワイヤ通路214がずれている側とは逆側にずれている。例えば、第2通路部221が軸線Aに沿って延びている場合、第2ガイド管222は、軸線Aに対して僅かにずれた位置で軸線Aに平行に延在している。また、第2ワイヤ通路224は、第2ガイド管222の延在した位置から上方(第2ジョー22の突出方向)に延びるので、軸線Aとは重ならない位置に設けられる。ただし、第2ワイヤ通路224は、その一部が第2通路部221と連通している。すなわち、自動運針器1を上方(+Z方向)から見たときに、第2通路部221の側面(自動運針器1の場合は、-Y側の側面)において、第2通路部221と重なる位置に第2ワイヤ通路224が設けられる。上記の第2ガイド管222及び第2ワイヤ通路224内を第2ワイヤ225がスライドするとき、第2ワイヤ225は第2通路部221の側面を第2通路部221に対して直交する方向に通過することが可能とされている。
【0043】
糸付針9の直針91が第2通路部221内の所定の位置に配置されている状態で、第2ワイヤ225が第2通路部221の側面を通過させることで、この第2ワイヤ225が直針91の移動を規制し、糸付針9を支持することができる。この点は、第1ワイヤ215が直針91の移動を規制する場合と同じである。すなわち、糸付針9が第2ジョー22の第2通路部221内に挿入された状態であり、糸付針9の直針91の切り欠き部93bが、第2通路部221と第2ワイヤ通路224とが重なる位置に設けられている状態で、第2ワイヤ225をスライドさせる。第2ガイド管222の端部222aからの突出長が大きくなるように、第2ガイド管222に沿って第2ワイヤ225をスライドさせると、第2通路部221と第2ワイヤ通路224とが重なる位置を第2ワイヤ225が通ることになる。このとき、直針91に設けられた切り欠き93bが第2ワイヤ通路224と重なっている場合には、第2ワイヤ225は第2通路部221に対して直交した状態で、上方の第2ワイヤ通路224まで移動することができる。図6では、上方の第2ワイヤ通路224まで第2ワイヤ225が移動できた状態を示している。このとき、直針91の切り欠き93bを埋めるように第2ワイヤ225が上下方向に延びているため、直針91は第2通路部221に沿った移動が規制されている。したがって、糸付針9は第2ジョー22に支持された状態となる。このように、第2ジョー22では、第2ワイヤ225が糸付針9の直針91に設けられた切り欠き93bに対して係止して、糸付針9の移動を規制する係止部として機能する。
【0044】
なお、第2ガイド管222は第2シャフト42内で操作部3まで延びているため、第2シャフト42内に第3シャフト43が挿入されると、第3シャフト43に対して第2ガイド管222が干渉する可能性がある。そこで、第3シャフト43に対してスリット431を設けることで、第2ガイド管222と第3シャフト43とが干渉することが防がれている(図6参照)。
【0045】
自動運針器1のシャフト部4の長さは、自動運針器1を使用する対象となる組織に到達するのに十分な長さであれば特に限定されず、自動運針器1を使用する対象となる組織を有する患者等の体格、縫合対象の組織と自動運針器1の操作者との位置関係などに応じて適宜選択することができる。自動運針器1を、鼻腔内を経由する脳深部の縫合に使用する場合には、シャフト部4の長さは、例えば、160mm程度とすることができる。また、シャフト部4の第1シャフト41、第2シャフト42、及び第3シャフトの断面形状は、上述のように互いに入れ込むことが可能な構造であれば特に限定されないが、例えば、上述のように断面を円形状とすることができる。また、シャフト部4(第1シャフト41)の外径は、自動運針器1を使用する対象となる組織に到達することが可能な外径であれば特に限定されず、自動運針器1を使用する対象となる組織を有する患者等の体格などに合わせて適宜選択することができる。自動運針器1を、鼻腔内を経由する脳深部の縫合に使用する場合には、シャフト部4の外径は、例えば、3mm程度とすることができる。
【0046】
また、シャフト部4に対する第1ジョー21、第2ジョー22及び中間板30の突出長(Z方向への長さ)は、例えば、2.5mm程度とされる。また、第1ジョー21及び第2ジョー22の長さ(シャフト部4の延在方向の厚さ:X方向に沿った長さ)は、例えば、2mm程度とされる。また、中間板30の厚さ(シャフト部4の延在方向の厚さ:X方向に沿った長さ)は、例えば、0.3mm程度とされる。また、第1ジョー21に設けられる第1通路部211及び第2ジョー22に設けられる第2通路部221の内径は、通路部の延在方向(シャフト部4の長手方向:X軸方向)に沿って直針91を挿入した際に、直針91が挿入可能であり、且つ、通路部内で直針91が軸線A方向(X方向)とは異なる方向に移動しない程度の大きさとされる。
【0047】
また、第1ワイヤ215及び第2ワイヤ225は、例えば、外径が0.2mm程度とされる。この場合、これらのワイヤを収容する第1ガイド管212及び第2ガイド管222は、それぞれ内部でワイヤが移動可能な程度の内径を有する。
【0048】
次に、図7及び図8を参照しながら、自動運針器1による運針方法について説明する。上述したように、自動運針器1では、第1ジョー21と第2ジョー22との間で糸付針9の受け渡しを行うことにより運針を行う。図7では、第2ジョー22から第1ジョー21への糸付針9の受け渡し手順を示し、図8では、第1ジョー21から第2ジョー22への糸付針9の受け渡し手順を示している。糸付針9は、自動運針器1の軸線A方向に沿って運針が行われる。すなわち、糸付針9の運針方向は軸線A方向に対応する。自動運針器1による運針は操作者が操作部3を操作することによって行われるが、図7及び図8では、操作部3の操作による運針部2における運針について説明する。また、以下の説明では、第1ジョー21に対する第2ジョー22及び中間板30の移動を中心に説明するが、第2ジョー22及び中間板30の移動は、上述したように第1シャフト41に対する第2シャフト42及び第3シャフト43の移動によって実現される。
【0049】
図7を参照しながら第2ジョー22から第1ジョー21への糸付針9の受け渡し手順を説明する。図7に示す例では、第2ジョー22が針支持部として機能すると共に、第1ジョー21が針受け部として機能する。まず、図7(a)に示すように、第2ジョー22側で糸付針9が保持されているとする。この状態を初期状態とする。初期状態では、第2ジョー22の第2通路部221内で糸付針9の直針91の切り欠き部93bに対して第2ワイヤ225が係止していることで、糸付針9が第2ジョー22に対して固定されている。この段階では、縫合の対象である対象物Oは、第2ジョー22と中間板30との間に設けられる。また、中間板30は、第1ジョー21に近接した状態に移動させて、対象物Oを配置するための第2ジョー22と中間板30の距離を広く確保している。なお、第1ジョー21と中間板30との間は、例えば、0.5mm程度離間させておくことができる。
【0050】
次に、図7(b)に示すように、糸付針9を保持する第2ジョー22を第1ジョー21側へ移動させる。第2ジョー22の移動に伴って糸付針9は対象物Oに対して刺入される。また、糸付針9の先端は、対象物Oを貫通した後中間板30のスリット31を通過し、第1ジョー21の第1通路部211に対して入り込む。第2ジョー22に保持された状態で糸付針9が移動するので、第2ジョー22の移動量に応じて第1ジョー21の第1通路部211内の所定位置まで糸付針9が移動する。
【0051】
この状態で、糸付針9を保持するジョーを第2ジョー22から第1ジョー21へ変更する。すなわち、第2ジョー22では、第2ワイヤ225を操作部3側へ移動させて第2ガイド管222の先端22aからの突出量を減らし、直針91の切り欠き93bに対する第2ワイヤ225による係止を解除する。一方、第1ジョー21では、第1ワイヤ215を第1ジョー21側へ移動させて第1ガイド管212の端部212aからの突出量を増やし、直針91の切り欠き93aに対して第1ワイヤ215を係止させる。これらの動作によって糸付針9の直針91が第2ジョー22から第1ジョー21に受け渡され、第1ジョー21が糸付針9を保持する状態になる。この状態では、糸付針9の直針91の中心(すなわち、糸92が取り付けられている位置)は、対象物Oを貫通しておらず、直針91のみが対象物Oに対して刺入している。
【0052】
次に、図7(c)に示すように、第2ジョー22を後退させて、第1ジョー21及び中間板30から離間させる。このとき、糸付針9の直針91は第1ジョー21により保持されているので、第2ジョー22のみが後退する。また、糸付針9は第1ジョー21側で対象物Oに対して刺入した状態が継続される。このとき、対象物Oは中間板30の近傍で直針91が刺入された状態となっている。
【0053】
次に、図7(d)に示すように、中間板30を第1ジョー21近傍から第2ジョー22側へ移動させる。このとき、糸付針9は第1ジョー21により保持されているので、第1ジョー21に対して移動しない。一方、中間板30の移動に伴って第1ジョー21から離間する方向に移動する。この結果、対象物Oとしては途中まで刺入されていた直針91がさらに、貫通する方向に移動しているといえる。また、直針91が半分以上対象物Oを通過すると、直針91に対して取り付けられている糸92も直針91による刺入孔を通過することになる。なお、直針91の半分以上が中間板30を通過した後は、糸92は中間板30のスリット31に通ることができるため、中間板30よりも第1ジョー21側に糸92は移動可能とされる。すなわち、中間板30によって糸92の移動が妨げることは防がれている。なお、第2ジョー22及び中間板30は同時に移動させてもよい。この場合でも、図7(c)及び図7(d)に示すように第2ジョー22及び中間板30の移動に伴って直針91が対象物Oに対して移動することになる。
【0054】
その後、図7(e)に示すように、中間板30が第2ジョー22側まで十分移動すると、対象物Oに対して途中まで刺入されていた直針91が対象物Oを貫通する。そして、対象物Oの刺入孔には糸92が通った状態となる。対象物Oに対して直針91の運針が一度行われた状態となる。
【0055】
次に、図8を参照しながら第1ジョー21から第2ジョー22への糸付針9の受け渡し手順を説明する。図8に示す例では、第2ジョー22が針支持部として機能すると共に、第1ジョー21が針受け部として機能し、針受け部から針支持部に対して糸付針9を受け渡す場合として、説明する。まず、図8(a)に示すように、第1ジョー21側で糸付針9が保持されているとする。この状態を初期状態とする。この状態は、図7(e)で示した状態と同じである。初期状態では、第1ジョー21の第1通路部211内で糸付針9の直針91の切り欠き部93aに対して第1ワイヤ215が係止していることで、糸付針9が第1ジョー21に対して固定されている。この段階では、縫合の対象である対象物Oは、第1ジョー21と中間板30との間に設けられる。また、中間板30は、第2ジョー22に近接した状態に移動させて、対象物Oを配置するための第1ジョー21と中間板30の距離を広く確保している。なお、第2ジョー22と中間板30との間は、例えば、0.5mm程度離間させておくことができる。
【0056】
次に、図8(b)に示すように、糸付針9を保持していない第2ジョー22及び中間板30を第1ジョー21側へ移動させる。第2ジョー22及び中間板30が移動することで、対象物Oが第1ジョー21側へ移動する。中間板30のスリット31を糸付針9の直針91が移動する程度まで中間板30が移動すると、中間板30の移動に伴って対象物Oが移動する。これにより、糸付針9は対象物Oに対して刺入される。また、糸付針9の第2ジョー22側の先端は、対象物Oを貫通した後、第2ジョー22の第2通路部221に対して入り込む。第2ジョー22の移動量に応じて第2ジョー22の第2通路部221内の所定位置まで糸付針9が移動する。
【0057】
この状態で、糸付針9を保持するジョーを第1ジョー21から第2ジョー22へ変更する。すなわち、第1ジョー21では、第1ワイヤ215を操作部3側へ移動させて第1ガイド管212の端部212aからの突出量を減らし、直針91の切り欠き93bに対する第1ワイヤ215による係止を解除する。一方、第2ジョー22では、第2ワイヤ225を第2ジョー22側へ移動させて第2ガイド管222の端部222aからの突出量を増やし、直針91の切り欠き93bに対して第2ワイヤ225を係止させる。これらの動作によって糸付針9の直針91が第1ジョー21から第2ジョー22に受け渡され、第2ジョー22が糸付針9を保持する状態になる。この状態では、糸付針9の直針91の中心(すなわち、糸92が取り付けられている位置)は、対象物Oを貫通しておらず、直針91のみが対象物Oに対して刺入している。
【0058】
次に、図8(c)に示すように、第2ジョー22を後退させて、第2ジョー22を中間板30から離間させる。このとき、糸付針9の直針91は第2ジョー22により保持されているので、第2ジョー22の後退に伴って直針91も後退する。一方、対象物Oは、中間板30に阻まれて直針91と一緒に動かないように規制されるので、第2ジョー22と共に移動する直針91は対象物Oを貫通する。このとき、直針91に対して取り付けられている糸92も直針91による刺入孔を通過することになる。糸92は中間板30のスリット31に通ることができるため、中間板30よりも第2ジョー22側に糸92は移動可能とされる。すなわち、中間板30によって糸92の移動が妨げることは防がれている。なお、図8(c)に示す動作を行う際に、中間板30は移動しないが、この場合でも中間板30は第2ジョー22から相対的に離間する方向に移動しているとも言える。
【0059】
次に、図8(d)に示すように、直針91が貫通した対象物Oを第1ジョー21と中間板30との間から外す。対象物Oの刺入孔には糸92が通った状態となる。対象物Oに対して直針91の運針が一度行われた状態となる。なお、図8(d)に示す状態は、図7(a)に示す状態と同じである。すなわち、図8(d)に示す状態にした後に、再び図7に示す一連の手順(第2ジョー22から第1ジョー21への運針)を行うことができる。
【0060】
上記の図7に示す動作と、図8に示す動作とを交互に繰り返すことで、対象物Oに対する運針を行うことができる。上述したように、図7に示す動作と図8に示す動作とは連続して行うことができるため、操作者の作業が煩雑となることが防がれる。
【0061】
次に、図9及び図10を参照しながら、自動運針器1の操作部3について説明する。上記の自動運針器1の運針部2における運針に係る動作は操作部3における操作者の操作によって行われる。本実施形態に係る自動運針器1では、図1を参照して説明したように、操作者がケース6に対してハンドル5を一度移動させることで、図7に示す一連の動作または図8に示す一連の動作を実行することが可能とされている。
【0062】
図9は、操作部3のケース6の一部である蓋部6aを取り外した状態を示す図であり、図10は、操作部3の内部の各部品の分解斜視図である。図10では、ハンドル5、ケース6、及び、ハンドル5に対して取り付けられているギヤ101及びバネ102については示していない。
【0063】
操作部3の内部には、本体部100が設けられる(図10参照)。図9に示すように、ハンドル5は、支点Bを中心に本体部100に対して回動可能に取り付けられている。ハンドル5を矢印H方向に沿ってケース6側(後方側;-X方向)に回動させると、ハンドル5のギヤ101、ラチェット103,104のギヤ103a,104aに対して回動が伝えられる。ハンドル5は、ケース6内に取り付けられたバネ102によって、元の位置に戻ることができる。
【0064】
一対のラチェット103,104、一対のカム105,106,一対のバネ107,108、一対の留め具109,110は、軸線C上に同軸に取り付けられている。ハンドル5の回動によって、ハンドル5のギヤ101からラチェット103,104のギヤ103a,104aに回転が与えられると、カム105,106は90度回転するように設定されている。なお、バネ102によりハンドル5を元の位置に戻すときは、一対のラチェット103,104、一対のバネ107,108、及び、一対の留め具109,110からなる構造によりカム105,106は回動しないように設計されている。
【0065】
カム105の内側の面にはそれぞれ2つのカム溝が掘られている。また、カム106の内側の面にはそれぞれ2つのカム溝111a,111bが掘られている(図10では、カム106のカム溝111a,111bのみを示している)。すなわち、これらの4つのカム溝によって、4つのカム動作を実現している。
【0066】
本体部100に設けられた突起112は、カム105に設けられた2つのカム溝のうち外側のカム溝に沿うカムフォロアとしての役割を果たすことができる。ここでは、突起112は、第1ワイヤ215の操作部3側の端部が取り付けられた第1係止部材固定端113と連動可能とされているとする。このとき、例えば、突起112に対してカム溝から図示上下方向(Z方向)の運動パターンを与えられると、第1係止部材固定端113が上下運動をする。この結果、第1ワイヤ215を第1ガイド管212に対して押し引きすることが可能とされている。すなわち、突起112に対して与えられた運動パターンに基づいて、第1ジョー21内での第1ガイド管212からの第1ワイヤ215の突出量を変化させることができる。
【0067】
また、突起114はカム105の内側のカム溝に沿うカムフォロアの役割を果たすことができる。ここでは、突起114は、第3シャフト43の操作部3側の端部が取り付けられた第3シャフト固定具115と連動可能とされているとする。このとき、突起114に図示左右方向(X方向)の運動パターンを与えられると、中間板30が固定された第3シャフト固定具115が駆動され、第3シャフト43が進退運動する。
【0068】
なお、図10には示されていない本体部100の裏面にも2つの突起が設けられていて、上記の突起112,114と同様の機構の動作を行う。すなわち、裏面の2つの突起は、2つのカム溝111a,111bによる運動パターンに応じて、第2ワイヤ225の操作部3側の端部が取り付けられた第2係止部材固定端116の上下運動、及び、第2シャフト42の操作部3側の端部が取り付けられた第2シャフト固定具117の進退運動を担う。
【0069】
これらの機構によって、ハンドル5を握るだけの操作入力によって、第1ジョー21、第2ジョー22、中間板30の相対位置の変化(第2ジョー22及び中間板30の移動)、第1ジョー21及び第2ジョー22における直針91を含む糸付針9の移動の規制及び解除動作が連動して行われ、1回の運針が完了する。
【0070】
なお、操作部3には、針脱着スイッチ118が設けられる。針脱着スイッチ118は、上記のカム105,106による機構とは別に第1ワイヤ215の移動を制御するものである。具体的には、針脱着スイッチ118を回転させると、針脱着スイッチ118に連動して動作するツメ119が第1係止部材固定端113を下方に押し下げる。したがって、カム105,106の状態によらず第1ジョー21内で第1ワイヤ215を第1ガイド管212側へ移動させることができる。そのため、直針91の移動の規制が解除される。これにより、第1ジョー21側で直針91が保持されている際に、第1ジョー21から針を取り外すことができる。
【0071】
上記の操作部3の構成例は、カム105,106の回転を利用した機構の一例である。操作部3は、カムを利用せずに構成してもよいし、上記とは別のカム機構を利用して構成してもよい。例えば、操作部3は、シャフトの移動制御等を電気的に行う構成としてもよい。
【0072】
上記の自動運針器1の材質は、自動運針器1を使用する対象となる組織に対して影響を与えない材質であれば特に限定されず、例えば、ステンレスまたはチタン合金等を用いることができる。そのほか、例えば、手術器具の材質として一般に用いられる、洗浄、消毒、または滅菌が可能な材質を用いることができる。また、自動運針器1全体の材質を共通とする必要は無く、例えば、第1シャフト41、第2シャフト42、第3シャフト43、及び、運針部2を構成する各部を上記の材質とし、操作部3付近は別の材質を用いてもよい。
【0073】
以上のように、本実施形態で説明した自動運針器1によれば、対象物Oが針支持部としての第2ジョー22と中間板30の間に配置された状態で、針支持部(第2ジョー22)から針受け部としての第1ジョー21に対して糸付針9の受け渡しが行われるので、糸付針9が対象物Oに対して刺入される。このとき、針受け部(第1ジョー21)が糸付針9を受けた後に、運針方向に沿って中間板30が針受け部(第1ジョー21)から離間することが可能とされている。このため、中間板30を利用して針支持部(第2ジョー22)と中間板30との間に配置された対象物Oに対する糸付針9の移動を促進することができ、対象物Oに対する運針を好適に行うことができる。また、中間板30が設けられるので糸付針9を受ける側の針受け部(第1ジョー21)に対して対象物Oが離間した状態で対象物Oに対する糸付針9の刺入が行われるため、針受け部(第1ジョー21)側に対象物Oが食い込むことも防がれるため、対象物Oの針受け部(第1ジョー21)からの取り外し等の作業も発生せず、対象物Oに係る連続した縫合をより簡便に行うことができる。
【0074】
上記の点、比較対象として図11を参照しながらさらに説明する。図11では、自動運針器1と比較して中間板30が設けられていない自動運針器1Xにおける運針の手順について説明する。図11(a)に示すように、第2ジョー22側で糸付針9が保持されているとする。この状態を初期状態とする。縫合の対象である対象物Oは、第2ジョー22と第1ジョー21との間に設けられる。
【0075】
次に、図11(b)に示すように、糸付針9を保持する第2ジョー22を第1ジョー21側へ移動させる。第2ジョー22の移動に伴って糸付針9は対象物Oに対して刺入される。また、糸付針9の先端は、対象物Oを貫通した後、第1ジョー21の第1通路部211に対して入り込む。第2ジョー22に保持された状態で糸付針9が移動するので、第2ジョー22の移動量に応じて第1ジョー21の第1通路部211内の所定位置まで糸付針9が移動する。この状態で、糸付針9を保持するジョーを第2ジョー22から第1ジョー21へ変更したとする。第2ジョー22から第1ジョー21への糸付針9の受け渡し自体は自動運針器1と同様に行われるとする。
【0076】
その後、図11(c)に示すように、第2ジョー22を後退させて、第1ジョー21から離間させる。このとき、糸付針9の直針91は第1ジョー21により保持されているので、第2ジョー22のみが後退する。また、糸付針9は第1ジョー21側で対象物Oに対して刺入した状態が継続される。このとき、対象物Oは直針91が刺入された状態となっている。ただし、この状態では、直針91が対象物Oに対して貫通していないため、直針91を対象物Oに対して貫通させる必要がある。そのためには、直針91が対象物Oを貫通するように、自動運針器1Xを対象物Oに対して移動させる、または、自動運針器1Xとは異なる器具等を用いて対象物Oを移動させるという動作が必要となる。また、図11(b)に示す段階で、直針91の刺入に伴って対象物Oが第1ジョー21に食い込むことも考えられる。その場合には、対象物Oを第1ジョー21から取り出す必要がある。自動運針器1Xを用いる場合、これらの作業が発生する可能性があるため、連続した縫合を行うためには作業が複雑となる可能性がある。また、対象物Oの周辺でこれらの動作を行う必要があるため、特に脳深部等の狭い空間での作業が困難となることが考えられる。
【0077】
これに対して、本実施形態で説明した自動運針器1は、図7及び図8等で説明したように、中間板30を用いることで対象物Oに対する直針91の貫通がスムーズに行われるため、対象物Oの周辺での対象物Oの移動等の作業が不要となり、連続した縫合を簡便に行うことができる。
【0078】
また、上記の自動運針器1では、図8等で説明したように、針受け部(第1ジョー21)から針支持部(第2ジョー22)への糸付針9の受け渡しも可能な構成とされている。このような構成とすることで、針受け部(第1ジョー21)と針支持部(第2ジョー22)との間で糸付針9の受け渡しを連続することが可能となり、対象物Oに係る連続した縫合をより簡便な操作で行うことができる。また、針支持部(第2ジョー22)が糸付針9を受けた後に、運針方向に沿って中間板30が針支持部(第2ジョー22)から離間することが可能とされている。このため、中間板30を利用して針受け部(第1ジョー21)と中間板30との間に配置された対象物Oに対する糸付針9の移動を促進することができ、対象物Oに対する運針を好適に行うことができる。また、中間板30が設けられるので、糸付針9を受ける側の針支持部(第2ジョー22)に対して対象物Oが離間した状態で対象物Oに対する糸付針9の刺入が行われるため、針支持部(第2ジョー22)側に対象物Oが食い込むことも防がれるため、対象物Oの針支持部(第2ジョー22)からの取り外し等の作業も発生せず、対象物Oに係る連続した縫合をより簡便に行うことができる。上記の効果は、図11を参照して説明した通りである。
【0079】
なお、本実施形態では、針支持部が第2ジョー22であり、針受け部が第1ジョー21であるとして説明したが、針支持部を第1ジョー21とし、針支持部を第2ジョー22として取り扱うこともできることは言うまでも無い。
【0080】
また、自動運針器1では、同一方向に延びる第2シャフト42、第1シャフト41、及び第3シャフト43の3つのシャフトそれぞれの一端側に対して針支持部(第2ジョー22)、針受け部(第1ジョー21)及び中間板30を取り付けて、他端側の操作部3において、3つのシャフトを個別に動かす構成とした場合、シャフトの長さ等を利用して、操作部3から離れた場所での対象物Oの縫合においても自動運針器1を好適に利用することができる。したがって、自動運針器1は、上述のように脳深部等における縫合にも用いることができる。
【0081】
また、自動運針器1では、糸付針9の側面に設けられた切り欠き93a,93bに対して、係止部としての第1ワイヤ215、第2ワイヤ225が係止することで糸付針9の移動を規制する構成としている。このような構成とすることで、針支持部(第2ジョー22)または針受け部(第1ジョー21)において糸付針9を保持している際に、糸付針9が移動することを防ぐことができる。また、係止部の係止及び解除によって、糸付針9が移動可能な状態と移動を規制する状態とを簡単に切り換えることができるため、針支持部(第2ジョー22)または針受け部(第1ジョー21)での糸付針9の受け渡しをスムーズに行うことができる。
【0082】
また、自動運針器1において、係止部は通路部を有する針支持部(第2ジョー22)または針受け部(第1ジョー21)を支持する支持部材としてのシャフトに沿って延びるワイヤであって、ワイヤの通路部側の端部とは逆側の端部を操作する。これによって係止部の係止及び解除を切り換える構成とすることで、通路部を有する針支持部(第2ジョー22)または針受け部(第1ジョー21)に対して係止部を設けることによる大型化を防ぐことができる。また、支持部材に沿って延びるワイヤを係止部として用いることで、ワイヤの長さを調整することで針支持部(第2ジョー22)または針受け部(第1ジョー21)から離間した位置でも係止部の操作が可能となる。そのため、対象部の縫合を行う際に対象部に近い位置で係止に係る動作を行わなくてもよくなる。
【0083】
また、自動運針器1では、係止部として利用される第1ワイヤ215及び第2ワイヤ225は、それぞれ、支持部材としてのシャフトに沿って設けられたパイプである第1ガイド管212及び第2ガイド管222の内部に収容され、パイプに沿って移動可能とされているこのように、パイプの内部にワイヤを収容して、パイプに沿って移動させる構成とすることで、支持部材に沿ったワイヤの移動の方向をパイプによって規制することが可能となる。そのため、ワイヤを利用した係止部の動作をより正確に制御することが可能となる。
【0084】
なお、自動運針器1のように、操作部3において第1ワイヤ215及び第2ワイヤ225の移動を制御可能な構成としておくことで操作部3の操作のみで第1ジョー21及び第2ジョー22での糸付針9の保持及び解放を切り換えることができるため、操作性が高められる。また、自動運針器1のように、ハンドル5の1回の動作のみによって、第1ジョー21及び第2ジョー22の間での糸付針9の受け渡し(1回の運針)を行う構成とした場合、操作者による操作性がさらに高められ、連続した縫合をより簡便な操作によって行うことができる。
【0085】
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0086】
例えば、自動運針器1を構成する各部の形状、大きさ等は適宜変更することができる。また、自動運針器1では、係止部がワイヤである場合について説明したが、係止部はワイヤとは異なる部材によって構成されていてもよい。異なる部材としては、例えば板状の部材等を用いることが考えられる。また、自動運針器1のように係止部の操作を操作部3において行うことが可能であると、操作者にとっての操作性を高めることができるが、係止部の動作及びその制御を行う場所は操作部3に限定されず、種々の変更を加えることができる。また、針支持部及び針受け部の一方または両方に係止部が設けられていない構成としてもよい。その場合、針支持部及び針受け部において針を支持するための何らかの機構を別途設けている態様としてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、脳深部等のように、操作部3から離れた場所で運針を行うためにシャフトを有する自動運針器1について説明したが、自動運針器の形状は上記に限定されない。対象物Oの場所及びその形状によって、運針器の形状は適宜変更される。また、糸付針の形状も対象物Oに応じて変更され、例えば、円弧状のカーブを有する糸付針を用いて縫合を行う場合もある。針の形状等に応じて運針方向も変わるので、それに応じた自動運針器の形状及び機構が設計される。上記実施形態で説明した針支持部及び針受け部の間に中間板を用いる構成は、自動運針器で使用する糸付針の形状及び運針の手法によらず、運針器全般に適用することができる。
【0088】
また、上記実施形態で説明した自動運針器1は、第1ジョー21及び第2ジョー22のどちらを起点としても糸付針9の受け渡しを行うことができる所謂両方向に運針が可能な構成であるが、運針方向が一方向に限定された自動運針器に対しても上記実施形態で説明した中間板を設ける構成は適用が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…自動運針器、2…運針部、3…操作部、4…シャフト部、5…ハンドル、6…ケース、9…糸付針、20…ジョー、21…第1ジョー、22…第2ジョー、30…中間板、41…第1シャフト、42…第2シャフト、43…第3シャフト、211…第1通路部、212…第1ガイド管、213…屈曲部、214…第1ワイヤ通路、215…第1ワイヤ、221…第2通路部、222…第2ガイド管、223…屈曲部、224…第2ワイヤ通路、225…第2ワイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11