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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】難燃性布帛
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/513 20210101AFI20240201BHJP
【FI】
D03D15/513
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019037660
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020139254
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 耕二
(72)【発明者】
【氏名】北阪 大輔
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-101294(JP,A)
【文献】特開2018-145545(JP,A)
【文献】特開2016-145430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0186875(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106400234(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/00 - 31/32
D03D 1/00 - 27/18
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性合成繊維Aと、難燃性合成繊維A以外の合成繊維Bとを含む布帛であって、難燃性合成繊維Aは難燃性ビニロン繊維であり、合成繊維Bはナイロン66からなるポリアミド繊維であり、かつ布帛中の難燃性合成繊維Aの含有量が60~80質量%、合成繊維Bの含有量が10~0質量%であり、かつ目付けが180~240g/m、通気度が14cm/cm・秒以上、拡散乾燥速度が50分以下であり、下記式(I)および(II)を満足することを特徴とする、難燃性布帛。
(I)平面摩耗強力≧100(回)
(II)平面摩耗強力÷(目付÷通気度)≧13
なお、平面摩耗強力は、JIS L1096 A-1法(荷重4.45N、研磨紙としてP800-Cwを使用)に従って算出される値である。
【請求項2】
JIS L1091E法によって測定されるLOI値(限界酸素指数)が24以上であることを特徴とする、請求項1に記載の難燃性布帛。
【請求項3】
JIS L1091 A-1法により区分される燃焼性試験において、燃焼性区分が2以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の難燃性布帛。
【請求項4】
さらにセルロース繊維を含むことを特徴とする、請求項1~3の何れかに記載の難燃性布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から難燃性布帛として、所定の限界酸素指数(LOI値)を充足する布帛が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の防炎性織布は、耐熱性繊維と炭化性難燃繊維とを含むものであり、通気性と軽量性とを確保しながらも同時に高い防炎性能を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-101294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の防炎性織布においては、摩耗強力について何ら検討されていないうえに速乾性に劣るものであるために、布帛の用途等が制限されるという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、通気性と軽量性とを確保しつつ、摩耗強力および速乾性にも優れる難燃性布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、布帛の平面磨耗強力と目付と通気度とが特定の式を満足する難燃性布帛は、通気性と軽量性とを確保しつつ、摩耗強力および速乾性にも優れるものであることを知見し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の(1)~(4)を要旨とする。
(1)難燃性合成繊維Aと、難燃性合成繊維A以外の合成繊維Bとを含む布帛であって、難燃性合成繊維Aは難燃性ビニロン繊維であり、合成繊維Bはナイロン66からなるポリアミド繊維であり、かつ布帛中の難燃性合成繊維Aの含有量が60~0質量%、合成繊維Bの含有量が10~0質量%であり、かつ目付けが180~240g/m、通気度が14cm/cm・秒以上、拡散乾燥速度が50分以下であり、下記式(I)および(II)を満足することを特徴とする、難燃性布帛。
(I)平面摩耗強力≧100(回)
(II)平面摩耗強力÷(目付÷通気度)≧13
なお、平面摩耗強力は、JIS L1096 A-1法(荷重4.45N、研磨紙としてP800-Cwを使用)に従って算出される値である。
(2)JIS L1091 E法によって測定されるLOI値(限界酸素指数)が24以上である、(1)の難燃性布帛。
(3)JIS L1091 A-1法により区分される燃焼性試験において、燃焼性区分が2以上である(1)または(2)の難燃性布帛。
(4)さらにセルロース繊維を含む、(1)~(3)の何れかの難燃性布帛。
【発明の効果】
【0008】
本発明の難燃性布帛は、通気性と軽量性とを確保しつつ、摩耗強力および速乾性にも優れ、快適性が良好であるために、防護服、防炎防護服、作業服、手袋、エプロン、ユニフォーム、アウトドア用品、またはインテリア用品などに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の難燃性布帛は、難燃性合成繊維A(以下、繊維Aという場合がある)と難燃性合成繊維A以外の合成繊維B(以下、繊維Bという場合がある)とを含む。
【0010】
本発明の難燃性布帛に含まれる繊維Aとしては、特に限定されるものではなく、例えば難燃性を付与したビニロン繊維、難燃性を付与したレーヨン、難燃性を付与したアクリル繊維、難燃性を付与したポリエステル繊維、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、炭素繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、モダアクリル繊維、メラミン繊維、フッ素繊維などが挙げられる。中でも難燃性、摩耗強力に顕著に優れるとともに、燃焼ガスの安全性、コストの観点から、難燃性を付与したビニロン繊維(難燃性ビニロン繊維)が好ましい。
【0011】
繊維Aは、難燃性の指標である、JIS L1091 E法によって測定されるLOI値(限界酸素指数)が28以上である繊維であることが好ましい。繊維Aの単糸繊度としては、特に限定されるものではないが、紡績性、強度等の観点から、0.5~3dtexが好ましい。
【0012】
本発明の難燃性布帛における、繊維Aの混用率は、難燃性、摩耗強力を損なわず、繊維Bの特性を確保するために、50~95質量%であることが好ましく、60~80質量%であることがより好ましい。
【0013】
本発明の難燃性布帛に含まれる繊維Bとしては、特に限定されるものではなく、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維などが挙げられる。中でも速乾性または摩耗強力に優れるために、ポリアミド繊維が好ましい。中でもナイロン66からなるポリアミド繊維が好適である。繊維Bの単糸繊度としては、特に限定されるものではないが、強度等の観点から、0.5~10dtexが好ましい。
【0014】
本発明の難燃性布帛における、繊維Bの混用率は、速乾性、摩耗強力を損なわず、繊維Aの特性を確保するために、5~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。
【0015】
ポリアミド繊維としては、引張強さが4cN/dtex以上であるものが好ましく、4~10cN/dtexであるものがより好ましく、6~7cN/dtexであるものがさらに好ましい。用いられるポリアミド繊維がこのような引張強さを満たすものであると、本発明の難燃性布帛は、優れた摩耗強力を備えることができるために好ましい。なお本発明において、繊維の引張強さは、「JIS L1013:2010 化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.5.1 標準時試験」に規定される引張強さの測定方法に準じて測定される値である。
【0016】
本発明の難燃性布帛において、繊維Aと繊維Bとの混用方法は、特に限定されるものではない。例えば、繊維Aの短繊維と繊維Bの短繊維とを含む紡績糸、繊維Aおよび繊維Bのマルチフィラメント糸、または繊維Aと繊維Bとからなる長短複合糸、繊維Aの短繊維紡績糸と繊維Bのフィラメント糸などを構成繊維として含む、難燃性布帛とすることができる。なかでも本発明の難燃性布帛としては、難燃性、摩耗強力、速乾性のバランスに優れるために、繊維Aの短繊維と繊維Bの短繊維とを含む紡績糸を含むことが好ましい。こうした紡績糸において、繊維Aと繊維Bとの質量比率は、(繊維A):(繊維B)=10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20であることがより好ましい。上記範囲とすることで、難燃性に優れるとともに、布帛の摩耗強力と速乾性を維持させることができる。こうした紡績糸の番手は、特に限定されるものではないが、例えば10~100番手であることが好ましく、摩耗強力の観点から10~50番手の双糸がより好ましく、20~35番手の双糸がさらに好ましい。
【0017】
本発明の難燃性布帛においては、さらにセルロース繊維が含まれていることが好ましい。セルロース繊維を含むことで、JIS L1091 E法によって測定されるLOI値(限界酸素指数)の低下を抑制することができる。セルロース繊維としては、特に限定されるものではなく、例えば、綿、麻などの天然セルロース繊維、ビスコースレーヨン、溶剤紡糸セルロース繊維などの再生セルロース繊維を用いることができる。中でも、難燃性ビニロン繊維との難燃性の相性がよいことから、綿が好ましい。本発明の難燃性布帛における、セルロース繊維の混用率は、速乾性を損なわないために、20質量%以下であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましい。
【0018】
本発明の難燃性布帛は、拡散乾燥速度が50分以下であり、中でも45分以下であることが好ましく、40分以下であることがより好ましい。
拡散乾燥速度は速乾性の指標となるものであり、以下のような手法で測定される。
すなわち10cm×10cmの試験片の質量(W)を測定する。試験片の裏側に0.6mlの水を滴下し、質量(W0)を測定する。次いで、水を滴下した後の試験片に対し、標準状態(20℃,65%RH)において質量(Wt)を測定する。そして試験片を秤に載せたままで、質量(Wt)が、以下の算出式により求められる残留水分率(%)が10%以下となるまでの時間を計測し、この時間を拡散乾燥速度とする。
残留水分率(%)={(Wt-W)/(W0-W)}×100
【0019】
拡散乾燥速度を上記の範囲とするためには、繊維Bとして好ましい種類のものを選択したり、後述するように下記式(I)および(II)を満足したりすることが好ましい。
【0020】
本発明の難燃性布帛は、下記式(I)および(II)を満足することを必須とする。なお下記式(I)および(II)において、平面磨耗強力とは、JIS L1096 A-1法(荷重4.45N、研磨紙として、日本研磨紙社製「P800-Cw」を使用)に従って算出される値である。
(I)平面摩耗強力≧100(回)
(II)平面摩耗強力÷(目付÷通気度)≧13
【0021】
上記式(I)および(II)が所定の範囲であることで、本発明の難燃性布帛は通気性と軽量性とを確保しつつ、摩耗強力および速乾性にも優れ、快適性のバランスに優れるものとなる。こうした理由から、上記式(I)は120回以上であることが好ましく、250回以上であることがより好ましく、280回以上であることがさらに好ましい。また、上記式(II)は15以上であることが好ましく、17以上であることがより好ましい。
【0022】
本発明の難燃性布帛において目付けは250g/m以下であることが好ましい。中でも180~240g/mであることがより好ましい。本発明の難燃性布帛における通気度は、通気性の指標となるものであり、フラジール法により測定される。こうした通気度は、14cm/cm・秒以上であることが好ましい。中でも、15~45cm/cm・秒であることがより好ましい。
【0023】
本発明の難燃性布帛は、難燃性を有しており、JIS L1091 E法によって測定されるLOI値(限界酸素指数)は24以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、26以上であることがさらに好ましい。また、本発明の難燃性布帛は、JIS L1091 A-1法により区分される燃焼性試験において、燃焼性区分が2以上であることが好ましい。
LOI値、燃焼性区分を上記の範囲とするためには、繊維Aの種類または布帛における混用率、さらには布帛の組織を好ましいものとすることができる。
【0024】
本発明の難燃性布帛の組織としては、織物、編物の何れでもよいが、難燃性、速乾性、摩耗強力などのバランスに優れる観点から、織物であることが好ましい。本発明の難燃性布帛が織物である場合、その組織としては平組織、綾組織、または朱子組織などが挙げられるが、なかでも、構成繊維を拘束し難く、空気を含み難いために難燃性が向上することから綾組織が好ましい。特に、摩耗強力に優れる観点から、リップ目を配する組織であることが好ましい。また編物である場合、組織としては得に限定されず、天竺、鹿の子、スムースなどの他、アトラス、トリコットハーフ、またはクインズコードなどが挙げられる。
【0025】
上記式(II)を所定範囲とするために、中でも本発明の難燃性布帛としては、構成繊維を繊維Aの短繊維および繊維Bの短繊維からなり、かつ繊維Aと繊維Bとの質量比率が10:90~90:10である10~100番手の紡績糸とし、こうした紡績糸を経糸または緯糸に用いたリップ目を配する綾織組織の布帛とすることが好ましい。
【0026】
本発明の難燃性布帛の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、防護服、防炎防護服、作業服、手袋、エプロン、ユニフォーム、アウトドア用品、またはインテリア用品などが挙げられる。
【実施例
【0027】
以下に実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
なお、それぞれの物性の測定方法又は評価方法は以下の通りである。
【0028】
<混用率>
JIS L1030-1およびJIS L1030-2に従って測定した。
<番手・密度>
JIS L1096 A法に従って測定した。
<質量>
105℃で2時間乾燥後の絶乾質量にて測定した。
【0029】
<限界酸素指数>
JIS L1091 E法に従って測定した。
【0030】
<燃焼性>
JIS L1091のA-1法による区分と、およびJIS L1091のA-4法による残炎時間、残じん時間、および燃焼長さとに従って評価した。
【0031】
<発煙性(燃焼時の発生ガス濃度)>
ASTM E602-05 検知管方式(シアン化水素:ドレーゲル検知管 8103601を使用)に従って測定した。なお、試験片を3枚重ねて燃焼させ、4分後のシアン化水素ガス濃度を測定した。
【0032】
<通気度(通気性)>
JIS L1096 A法 フラジール法に従って測定した。
【0033】
<平面摩耗強力>
JIS L0196 A-1法(平面法)に従って測定した。ただし荷重を4.45Nとし、研磨紙として、日本研磨紙社製「P800-CW」を用いた。
【0034】
<拡散乾燥速度>
前記の方法で測定した。
【0035】
<実施例1>
紡績糸として、難燃性ビニロン繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長38mm、ユニチカトレーディング社製、商品名「ミューロン」、LOI値32)とポリアミド繊維(ナイロン66、単糸繊度1.9dtex、繊維長38mm、引張強さ7cN/dtex)とを準備し、難燃性ビニロン繊維を75質量%、ポリアミド繊維を25質量%の割合で用い、公知の方法で紡績して、30番手双糸の紡績糸を得た。次いで、上記紡績糸を用いてタテ76本/インチ、ヨコ56本/インチの2/1綾組織とし、経方向、緯方向ともにともに2.5本/インチのピッチで、引きそろえによるリップ目を配する織物を得た。次に、上記織物を常法による精練漂白シルケットを施した後、スレン染料を用いて連続法による染色を実施した。そして、仕上げ剤として、日華化学社製 商品名「サンソフター GAconc. NEW 2%sol」を用いて浸漬し、ウェットピックアップ50%で絞り、熱処理、およびサンフォライズ処理を行って、実施例1の難燃性布帛(タテ85本/インチ、ヨコ56本/インチ)を得た。
【0036】
<実施例2>
経糸に難燃性ビニロン繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長38mm、ユニチカトレーディング社製、商品名「ミューロン」、LOI値32)を75質量%、綿(豪州綿カード)を25質量%の割合で用いた紡績糸(30番手双糸)を配した以外は、実施例1と同様にして実施例2の難燃性布帛を得た。
【0037】
<実施例3>
紡績糸として、難燃性ビニロン繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長38mm、ユニチカトレーディング社製、商品名「ミューロン」、LOI値32)、ポリアミド繊維(ナイロン66、単糸繊度1.9dtex、繊維長38mm、引張強さ7cN/dtex)、綿(豪州綿カード)を準備し、難燃性ビニロン繊維を75質量%、ポリアミド繊維を15質量%、綿を10質量%の割合で用いた紡績糸(30番手双糸)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3の難燃性布帛を得た。
【0038】
参考例4>
経糸に難燃性ビニロン繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長38mm、ユニチカトレーディング社製、商品名「ミューロン」、LOI値32)を75質量%、綿(豪州綿カード)を25質量%の割合で用いた紡績糸(30番手双糸)を配した以外は、実施例3と同様にして参考例4の難燃性布帛を得た。
【0039】
<実施例5>
紡績糸の番手を40番手双糸とした以外は、実施例1と同様にして実施例5の難燃性布帛を得た。
【0040】
<比較例1>
紡績糸として、難燃性ビニロン繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長38mm、ユニチカトレーディング社製、商品名「ミューロン」、LOI値32)75質量%と、綿(豪州綿カード)25質量%とからなる紡績糸を(30番手双糸)用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の布帛を得た。
【0041】
<比較例2>
織物組織を、ヨコ88本/インチ、ヨコ59本/インチの2/1の綾織とし、仕上げ後の密度をタテ92本/インチ、ヨコ60本/インチとした以外は、実施例1と同様にして比較例2の布帛を得た
【0042】
<比較例3>
紡績糸として、モダクリル繊維(単糸繊度2.2dtex、繊維長38mm、カネカ社製、商品名「プロテクスM」)75質量%と、綿(豪州綿カード)25質量%とを用いた紡績糸(30番手双糸)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3の布帛を得た。
【0043】
<比較例4>
紡績糸の番手を40番手双糸とした以外は、比較例1と同様にして比較例4の布帛を得た。
【0044】
<実施例6>
紡績糸として、難燃性ビニロン繊維(単糸繊度1.7dtex、繊維長38mm、ユニチカトレーディング社製、商品名「ミューロン」、LOI値32)とポリアミド繊維(ナイロン66、単糸繊度1.9dtex、繊維長38mm)を準備し、難燃性ビニロン繊維60質量%と、ポリアミド繊維40質量%とからなる、40番手双糸の紡績糸を得た。
【0045】
次いで、上記紡績糸を用いて、フロント1-0/0-1、バック2-3/1-0であり、44コース/インチ、29ウェール/インチ、ラック数150Rのタテ編地(クインズコード組織)を得た。次に、上記タテ編地に対し、常法によって精練漂白シルケットを施した後、スレン染料を用いてバッチ法による染色を実施した。仕上げ剤として、里田化工社製の商品名「NK-1 2%sol」を用いて、浸漬し、ウェットピックアップ100%で絞り、熱処理を行い実施例6の難燃性布帛を得た。
【0046】
<比較例5>
紡績糸として、ポリアミド繊維の代わりに綿(豪州綿コーマ)を25質量%で含む紡績糸を用いた以外は、実施例6と同様にして比較例5の布帛を得た。
【0047】
実施例および比較例の評価結果を、表1および表2にまとめて示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
(考察)
実施例1~3、5、6にて得られた難燃性布帛は、平面摩耗強力、目付および通気度のバランスに優れ、通気性と軽量性とを確保しつつ、摩耗強力および速乾性に優れるものであった。
実施例2~の難燃性布帛はセルロース繊維を含むために、実施例1と比較すると、平面摩耗強力はやや低くなったが、難燃性(LOI値)が向上した。
【0050】
実施例5の難燃性布帛は、構成繊維としての紡績糸が40番手と実施例1よりも細いものであったために、実施例1と比較すると平面摩耗強力は低くなったが、通気性が向上したために上記式(II)で得られる値は好ましいものとなり、快適性のバランスが良好であった。
【0051】
実施例6の難燃性布帛は編物であったために、織物である実施例1と比較すると、平面摩耗強力は低くなったが、通気性が向上したために上記式(II)で得られる値は好ましいものとなり、快適性のバランスが良好であった
【0052】
比較例1の難燃性布帛においては、ポリアミド繊維を用いていないために、拡散乾燥速度が遅くなるとともに、平面摩耗強力が低くなることで、上記式(II)で得られる値は本発明の範囲外となり、快適性のバランスに劣るものであった。
【0053】
比較例2の難燃性布帛においては、リップ組織の無い綾織を採用したことから摩耗強力に劣るために、平面摩耗強力を高くしようとして目付けを高めた。そのため、平面磨耗強力は良好であったが通気性に顕著に劣るものとなることで、上記式(II)で得られる値は本発明の範囲外となり、快適性のバランスに劣るものであった。
【0054】
比較例3の難燃性布帛においては、モダクリル繊維とセルロース繊維のみからなるために、上記式(II)で得られる値は本発明の範囲外となり、快適性のバランスに劣るものであった。また、燃焼時に発生する有害ガスが多く、安全性にも問題があるものであった。
【0055】
比較例4の難燃性布帛においては、比較例1の難燃性布帛の快適性のバランスを向上させるために、構成繊維としての紡績糸を40番手と細いものとして目付けを低減させて通気性を向上させた。しかし、平面摩耗強力が顕著に低く、本発明の効果を達成することができなかった。
【0056】
比較例5の難燃性布帛においてはポリアミド繊維を用いていないために、実施例6と比較すると、平面摩耗強力および拡散乾燥速度が悪くなり、上記式(II)で得られる値は本発明の範囲外となり、快適性のバランスに劣るものであった。