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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】温度変化検出装置及び温熱治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A61N5/067
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019190978
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021065292
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深野 秀樹
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0185189(US,A1)
【文献】国際公開第2019/026347(WO,A1)
【文献】特開2006-071549(JP,A)
【文献】特開2006-023200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06- 5/067
A61B 18/20-18/28
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にセンサ体を設けた導光用光ファイバと、
この導光用光ファイバの基端から入射させる光を出力する投光器と、
前記センサ体で生じさせるとともに前記導光用光ファイバで導いた反射光を検出する受光器と、
前記受光器から出力された信号を解析する解析器と
を備えた温度変化検出装置であって、
前記センサ体は、前記導光用光ファイバのコアの延長線上にコアを位置させたセンサ用光ファイバとし、
このセンサ用光ファイバは、前記導光用光ファイバの先端に第1空隙を介在させて接続し、
前記センサ用光ファイバの先端には、第2空隙を介在させて先端部材を装着し、かつ、この先端部材は、少なくとも先端が閉塞した形態であり、
前記受光器は、前記第1空隙の存在によって前記光から生じさせた第1反射光と、前記第2空隙の存在によって前記光から生じさせた第2反射光とが干渉して生成される干渉光を検出する、温度変化検出装置。
【請求項2】
先端にセンサ体を設けた導光用光ファイバと、
この導光用光ファイバの基端から入射させる光を出力する投光器と、
前記センサ体で生じさせるとともに前記導光用光ファイバで導いた反射光を検出する受光器と、
前記受光器から出力された信号を解析して温度変化を検出する解析器と
を備え、
前記センサ体から前記光を照射させることで前記光による照射領域を加温する温熱治療装置であって、
前記投光器は、前記照射領域を加温する第1の光と、前記反射光を生じさせる第2の光とを照射し、
前記センサ体は、前記導光用光ファイバのコアの延長線上にコアを位置させたセンサ用光ファイバとし、
このセンサ用光ファイバは、前記導光用光ファイバの先端に第1空隙を介在させて接続し、
前記センサ用光ファイバの先端には、第2空隙を介在させて先端部材を装着しており、かつ、この先端部材は、少なくとも先端が閉塞した形態であり、
前記受光器は、前記第1空隙の存在によって前記第2の光から生じさせた第1反射光と、前記第2空隙の存在によって前記第2の光から生じさせた第2反射光とが干渉して生成される干渉光を検出し、前記解析器で前記照射領域の温度変化を検出する、温熱治療装置。
【請求項3】
前記導光用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、
前記センサ用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとしている請求項2に記載の温熱治療装置。
【請求項4】
前記導光用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、
前記センサ用光ファイバは、グレーデッドインデックスマルチモード光ファイバとしている請求項2に記載の温熱治療装置。
【請求項5】
前記導光用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、
前記センサ用光ファイバは、ステップインデックスマルチモード光ファイバとしている請求項2に記載の温熱治療装置。
【請求項6】
前記導光用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、
前記センサ用光ファイバは、フォトニック結晶構造ファイバとしている請求項2に記載の温熱治療装置。
【請求項7】
前記導光用光ファイバと前記センサ用光ファイバとは、第1円筒管を介して接続することで前記第1空隙を形成し、
前記センサ用光ファイバと前記先端部材は、第2円筒管を介して接続することで前記第2空隙を形成している請求項3~5のいずれか1項に記載の温熱治療装置。
【請求項8】
前記先端部材を、先端を閉塞した前記第2円筒管で代用している請求項7に記載の温熱治療装置。
【請求項9】
前記先端部材は、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、
前記フォトニック結晶構造ファイバの基端側のコア部分を熱融解することで前記第1空隙を形成し、
前記フォトニック結晶構造ファイバの先端側のコア部分を熱融解することで前記第2空隙を形成している請求項6に記載の温熱治療装置。
【請求項10】
前記先端部材の先端面を、前記センサ用光ファイバの光軸と90°以外の角度で交差する傾斜面としている請求項2~9のいずれか1項に記載の温熱治療装置。
【請求項11】
前記センサ用光ファイバの基端面を、前記導光用光ファイバに向けて膨出させた凸レンズ面としている請求項3または請求項5に記載の温熱治療装置。
【請求項12】
前記先端部材の先端面を、前記センサ用光ファイバの光軸と90°以外の角度で交差する傾斜面としている請求項1に記載の温度変化検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化検出装置及び温熱治療装置に関し、特に、温度変化検出装置で温度変化を計測しながら温熱治療を実施可能とした温熱治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンの治療方法の一つとして温熱療法が知られている。温熱療法では、ガン細胞が正常細胞と比較して、40~45℃の温度範囲において生存率が低いという現象を利用しており、対象患部を加温することで治療を行っている。
【0003】
患部を所定の温度とする加温手段としては、一般的には、熱風、温水、赤外線などの熱伝導による外部加温手段が用いられている。しかし、外部加温手段による加温では、体内のガン細胞を局所的に加温することが困難な場合が多い。そこで、最近では、マイクロ波や電磁波を電極針を通じて照射して加温する方法や、超音波を照射して加温する方法などの内部加温手段が検討されている。
【0004】
外部加温手段を用いた温熱療法の場合でも、内部加温手段を用いた温熱療法の場合でも、目的の患部を加温すると同時に、患部の加温状態を確認するための温度計測を行うことは、非常に難しい。温度計測が必要な場合には、加温手段による患部の加熱を一旦停止して、温度センサ等で温度を計測することになるため、加温の停止による温度計測部位での温度低下の影響が生じやすく、比較的長い時間にわたって安定的に一定温度を維持することが重要な温熱療法に最適な状況となっていなかった。特に、内部加温手段を用いた温熱療法では、マイクロ波や電磁波あるいは超音波等を利用して加温を行っていることで、加温中の温度計測において温度センサが電磁的あるいは振動的な干渉を受けることで正常動作しないこともあり、温度計測を困難としていた。
【0005】
このような電磁的あるいは振動的な干渉を受ける環境下での温度の計測方法として、光ファイバとレーザ光を利用した温度の計測方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。光ファイバとレーザ光を利用した温度計測では、光ファイバの先端に設けたセンサ体でレーザ光の反射を生じさせ、特に、第1反射光と第2反射光とを生じさせることで干渉光を生じさせ、その干渉スペクトルの波長変化を検出することで温度変化を検出することとしている。しかも温度計測とともに、レーザ光によって患部の加熱も可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-68673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の光ファイバを利用した温度計測では、干渉スペクトルの大きな波長変化を生み出すために、センサ体には樹脂層が用いられている。この樹脂層は熱に弱く、医療器機として用いる際の滅菌処理に、低コストの高圧蒸気滅菌法が利用できないという問題があった。
【0008】
すなわち、最も多用されている滅菌処理である高圧蒸気滅菌法では、飽和水蒸気の中で121~134℃付近まで加熱することで微生物を死滅させているが、多くの樹脂層は、このような高温状態となることで状態変化や劣化が生じやすくなり、温度測定に誤差を生じさせてしまうおそれがあった。
【0009】
本発明者らは、このような現状に鑑み、耐熱性に優れた構造を各種検討し、高圧蒸気滅菌法に十分な耐性を有する本発明を成すに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の温度変化検出装置では、先端にセンサ体を設けた導光用光ファイバと、この導光用光ファイバの基端から入射させる光を出力する投光器と、センサ体で生じさせるとともに導光用光ファイバで導いた反射光を検出する受光器と、受光器から出力された信号を解析する解析器とを備えた温度変化検出装置であって、センサ体は、導光用光ファイバのコアの延長線上にコアを位置させたセンサ用光ファイバとし、このセンサ用光ファイバは、導光用光ファイバの先端に第1空隙を介在させて接続し、センサ用光ファイバの先端には、第2空隙を介在させて先端部材を装着しているものである。
【0011】
さらに、本発明の温度変化検出装置では、第1空隙の存在によって入射光から生じさせた第1反射光と、第2空隙の存在によって入射光から生じさせた第2反射光とが干渉して生成される干渉光を受光器で検出していることにも特徴を有するものである。
【0012】
また、本発明の温熱治療装置では、先端にセンサ体を設けた導光用光ファイバと、この導光用光ファイバの基端から入射させる光を出力する投光器と、センサ体で生じさせるとともに導光用光ファイバで導いた反射光を検出する受光器と、受光器から出力された信号を解析する解析器とを備え、センサ体から光を照射させることで、この光による照射領域を加温する温熱治療装置であって、投光器は、照射領域を加温する第1の光と、反射光を生じさせる第2の光とを照射し、センサ体は、導光用光ファイバのコアの延長線上にコアを位置させたセンサ用光ファイバとし、このセンサ用光ファイバは、導光用光ファイバの先端に第1空隙を介在させて接続し、センサ用光ファイバの先端には、第2空隙を介在させて先端部材を装着しているものである。
【0013】
さらに、本発明の温熱治療装置では、以下の点にも特徴を有するものである。
(1)受光器は、第1空隙の存在によって第2の光から生じさせた第1反射光と、第2空隙の存在によって第2の光から生じさせた第2反射光とが干渉して生成される干渉光を検出し、解析器で照射領域の温度変化を検出していること。
(2)導光用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、センサ用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとしていること。
(3)導光用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、センサ用光ファイバは、グレーデッドインデックスマルチモード光ファイバとしていること。
(4)導光用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、センサ用光ファイバは、ステップインデックスマルチモード光ファイバとしていること。
(5)導光用光ファイバは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、センサ用光ファイバは、フォトニック結晶構造ファイバとしていること。
(6)導光用光ファイバとセンサ用光ファイバとは、第1円筒管を介して接続することで第1空隙を形成し、センサ用光ファイバと先端部材は、第2円筒管を介して接続することで第2空隙を形成していること。
(7)先端部材を、先端を閉塞した第2円筒管で代用していること。
(8)先端部材は、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバとし、フォトニック結晶構造ファイバの基端側のコア部分を熱融解することで第1空隙を形成し、フォトニック結晶構造ファイバの先端側のコア部分を熱融解することで前記第2空隙を形成していること。
(9)先端部材の先端面を、前記センサ用光ファイバの光軸と90°以外の角度で交差する傾斜面としていること。
(10)センサ用光ファイバの基端面を、導光用光ファイバに向けて膨出させた凸レンズ面としていること。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高圧蒸気滅菌法での121~134℃という高温状態での影響を受けないセンサ用光ファイバを用いることで高温耐性を付与することができ、医療機器としての利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る温熱治療装置の概略構成図である。
図2】第1実施例のセンサ体の説明図である。
図3】干渉光の光スペクトルのグラフである。
図4】温度-波長シフト量の相関を示すグラフである。
図5】第2実施例のセンサ体の説明図である。
図6】第2実施例のセンサ体の変形例の説明図である。
図7】干渉光の光スペクトルのグラフである。
図8】温度-波長シフト量の相関を示すグラフである。
図9】第3実施例のセンサ体の説明図である。
図10】第3実施例のセンサ体の変形例の説明図である。
図11】第4実施例のセンサ体の説明図である。
図12】第4実施例のセンサ体の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の温度変化検出装置及び温熱治療装置では、センサ体を用いて生じさせた第1反射光と第2反射光とを干渉させて干渉光とし、この干渉光のスペクトルを検出することで温度変化を検出可能としているものであり、特にセンサ体を光ファイバで構成することで、高温耐性を向上させているものである。
【0017】
以下において具体的な実施例を示しながら詳説する。なお、実施例としては温熱治療装置として説明し、この温熱治療装置において温度変化検出装置を使用している。
【実施例1】
【0018】
第1実施例では、センサ用光ファイバとしてフォトニック結晶構造ファイバを用いた温熱治療装置としている。
【0019】
まず、温熱治療装置の全体構成を説明する。温熱治療装置は、図1の概略構成図に示すように、照射領域の患部を加温するための波長域としたレーザ光を出射する第1投光器11と、温度計測に用いる波長帯域の広い光を出射する第2投光器12を備えている。具体的には、本実施例では、第1投光器11は、1.48μmの波長の半導体レーザ光を照射する投光器を用い、第2投光器12は、1.52~1.62μmの波長の光を照射する投光器を用いている。
【0020】
第1投光器11から出射したレーザ光と第2投光器12から出射した光は、それぞれ適宜の光ファイバを介して波長多重分離装置15に入射させている。波長多重分離装置15では、第1投光器11から入射されたレーザ光と第2投光器12から入射された光とを合波して合波光として出射している。本実施形態では、第1投光器11と第2投光器12の2つの投光器を用いているが、第1投光器11と第2投光器12と波長多重分離装置15とを組み合わせて1つの投光器として見なしている。
【0021】
波長多重分離装置15から出射した合波光は、適宜の光ファイバを介してファイバ型光サーキュレータ13に入射させている。ファイバ型光サーキュレータ13は、波長多重分離装置15から入射された合波光を導光用光ファイバ14に出射している。
【0022】
導光用光ファイバ14は、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバであって、導光用光ファイバ14の基端に入射された合波光を、先端に設けたセンサ体Sに導いている。
【0023】
センサ体Sは、センサ用光ファイバ18を用いて構成している。特に、本実施例では、センサ用光ファイバ18はフォトニック結晶構造ファイバとしている。センサ用光ファイバ18は、そのコアを導光用光ファイバ14のコアの延長線上に位置させて、導光用光ファイバ14で導かれた合波光をセンサ用光ファイバ18に導いている。導光用光ファイバ14とセンサ用光ファイバ18は、熱融着させることで簡単に接続できる。
【0024】
センサ用光ファイバ18の先端には、本実施例ではシングルモードの光を伝搬させる光ファイバを先端部材19として装着している。この先端部材19とセンサ用光ファイバ18も、熱融着させることで簡単に接続できる。光ファイバで構成した先端部材19は、そのコアを、センサ用光ファイバ18のコアの延長線上、さらには導光用光ファイバ14のコアの延長線上に位置させておくことが望ましい。
【0025】
センサ用光ファイバ18と先端部材19を設けることで、後述するように第1反射光L1と第2反射光L2とを生成し(図2参照)、この第1反射光L1と第2反射光L2を導光用光ファイバ14によってファイバ型光サーキュレータ13に入射させている。導光用光ファイバ14において第1反射光L1と第2反射光L2とは互いに干渉して干渉光となり、ファイバ型光サーキュレータ13には干渉光を入射させている。
【0026】
ファイバ型光サーキュレータ13に入射された第1反射光L1と第2反射光L2の干渉光は、適宜の光ファイバを介してファイバ型光サーキュレータ13から波長多重分離装置15に入射させている。
【0027】
波長多重分離装置15では、ファイバ型光サーキュレータ13から入射された干渉光に対して、第2投光器12から入力された光の波長成分のみを波長分離し、この波長分離した光、すなわち、第1反射光L1と第2反射光L2との干渉光のみを受光器16に入射させている。
【0028】
受光器16は、光スペクトラムアナライザの機能を有しており、入射された干渉光に基づいて、各波長成分の光強度に比例した電気信号を生成して、解析器17に入力している。
【0029】
解析器17は、本実施形態ではパーソナルコンピュータで構成し、受光器16に入力された第1反射光L1と第2反射光L2とによって生じる干渉光の波長毎の光強度の出力信号を検出し、後述するように波長シフト量を検出することで温度変化を計測することとしている。本実施形態では、解析器17はパーソナルコンピュータで構成しているが、専用の処理を実行する装置を構築してもよい。
【0030】
以下において、図2を用いながら、第1反射光L1と第2反射光L2の生成方法について説明する。
【0031】
本実施例では、センサ用光ファイバ18としてフォトニック結晶構造ファイバを用いている。図2に示すように、フォトニック結晶構造ファイバは、コアの周囲にコアと平行に複数の空洞が配置されている。そこで、フォトニック結晶構造ファイバでは、端面のコアに向けて短時間の放電プラズマを照射することで、コアを含む中心部分のみに局所的な融解を生じさせることができ、凹状の窪みを形成することができる。
【0032】
本実施例のセンサ用光ファイバ18では、図2に示すように、基端側のコア部分に凹状の第1窪みC1を形成しており、さらに、先端側のコア部分に凹状の第2窪みC2を形成している。第1窪みC1が形成されたセンサ用光ファイバ18の基端と導光用光ファイバ14の先端とを接続することで第1空隙V1を形成している。また、第2窪みC2が形成されたセンサ用光ファイバ18の先端と先端部材19の基端とを接続することで第2空隙V2を形成している。
【0033】
導光用光ファイバ14によって第1空隙V1に導かれた合波光は、導光用光ファイバ14の端面を第1反射面P1として第1反射光L1を生じさせている。また、第1空隙V1と接するセンサ用光ファイバ18の基端面でも反射光が生じるが、この反射光は反射面が平面ではないため、第1反射面P1で生じる第1反射光L1と比較して強度が十分に小さく、干渉光の生成に大きな影響を与えていないと考えられる。
【0034】
導光用光ファイバ14によって第1空隙V1に導かれ、センサ用光ファイバ18に入射した合波光は、センサ用光ファイバ18によって第2空隙V2に導かれる。
【0035】
第2空隙V2に導かれた合波光は、第2空隙と接する先端部材19を基端面を第2反射面P2として第2反射光L2を生じさせている。ここで、光ファイバで構成した先端部材19の基端面は、強い第2反射光L2を生じさせるために、平坦面としておくことが望ましい。また、良好な平坦面を得られやすくするために先端部材19にはシングルモードの光を伝搬させる光ファイバを用いている。なお、第2空隙と接するセンサ用光ファイバ18の先端面でも反射光が生じるが、この反射光も反射面が平面ではないため、第2反射面P2で生じる第2反射光L2と比較して強度が十分に小さく、干渉光の生成に大きな影響を与えていないと考えられる。
【0036】
センサ用光ファイバ18によって第2空隙V2に導かれ、先端部材19に入射した合波光は、先端部材19の先端から照射可能としている。ここで、先端部材19の先端から照射される光は、主に、第1投光器11から出射されたレーザ光であって、先端部材19の先方に存在している物体、特に温熱治療装置として使用している場合には患部であり、所定の患部にレーザ光を照射して、照射領域を加温可能としている。
【0037】
先端部材19の先端側は、センサ用光ファイバ18の光軸と90°以外の角度で交差する傾斜面Tとしている。本実施例では、傾斜面Tは、センサ用光ファイバ18の光軸と約82°の角度で交差させている。先端部材19の先端面を傾斜面Tとすることで、先端部材19の先端面で生じた反射光がセンサ用光ファイバ18及び導光用光ファイバ14に導かれることを抑制している。
【0038】
本実施例では、先端部材19をシングルモードの光を伝搬させる光ファイバで構成しているが、これは後述する第2反射光L2を生じさせることを目的とした場合に好適であるためであり、必ずしも光ファイバである必要はなく、十分な強度の第2反射光L2を生成可能な適宜の部材を用いてもよい。
【0039】
本実施例では、導光用光ファイバ14及び先端部材19は、コア径が8.2μmで、クラッド径が125μmであるシングルモードの光ファイバを用い、センサ用光ファイバ18は、ファイバ外径が125μmである石英製のフォトニック結晶構造ファイバを用いた。また、センサ用光ファイバ18の長さは、約170μmとした。
【0040】
上記の構造としたセンサ体Sの周囲の温度を変えることで、図3に示すように、第1反射光L1と第2反射光L2との干渉光のスペクトルが波長シフトすることを確認した。特に、センサ体Sの温度を31℃から50.9℃に変化させることで、第1反射光L1と第2反射光L2との干渉光における光強度の凹凸が明瞭に見られるとともに、その凹凸の大きさである消光比は約15dBと十分な測定精度が得られる信号となっていた。
【0041】
さらに、センサ体Sの温度を変化させながら干渉光のスペクトルの波長シフト量を測定した結果を図4に示す。このような干渉光のスペクトルの波長シフトは、センサ体Sのセンサ用光ファイバ18の熱膨張に伴う光路長の増大だけでなく、センサ体Sのセンサ用光ファイバ18の屈折率変化によっても第2反射光L2の位相が大きく変化していることにより生じているものと考えられる。従って、干渉波長の変化から逆に周囲温度を見積もることができ、温度変化検出装置として利用できることがわかる。温度分解能は、約0.4℃と良好な値が得られた。
【実施例2】
【0042】
第2実施例では、センサ用光ファイバとしてグレーデッドインデックスマルチモード光ファイバを用いた温熱治療装置としている。
【0043】
本実施例では、上述した第1実施例とセンサ体の構成が異なるだけであるため、以下においてはセンサ体の構成と、第1反射光と第2反射光の生成方法のみを説明し、重複する説明は省略する。また、機能的に同じ構成部位については、上述した第1実施例で使用した符号と同じ符号を使用する。
【0044】
図5に示すように、本実施例でも導光用光ファイバ14は、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバであって、導光用光ファイバ14の基端に入射された合波光を、先端に設けたセンサ体Sに導いている。
【0045】
本実施例のセンサ体Sは、グレーデッドインデックスマルチモード光ファイバで構成したセンサ用光ファイバ28と、導光用光ファイバ14とセンサ用光ファイバ28との間に介設した第1円筒管D1と、センサ用光ファイバ28と先端部材19との間に介設した第2円筒管D2とで構成している。本実施例でも、先端部材19はシングルモードの光を伝搬させる光ファイバとしている。
【0046】
第1円筒管D1は、第1実施例の第1窪みC1の代替であり、第2円筒管D2は、第1実施例の第2窪みC2の代替であって、それぞれ第1空隙V1及び第2空隙V2を形成するためにセンサ用光ファイバ28の端部にそれぞれ装着している。第1円筒管D1及び第2円筒管D2は、それぞれ石英管とすることで、熱融着によって容易にセンサ用光ファイバ28の端部に装着できる。
【0047】
センサ体Sは、導光用光ファイバ14の先端に第1円筒管D1を熱融着することで導光用光ファイバ14に接続して、第1空隙V1を形成している。さらに、センサ体Sは、先端部材19の基端を第2円筒管D2を熱融着して、第2空隙V2を形成している。
【0048】
センサ用光ファイバ28は、導光用光ファイバ14のコアの延長線上にコアを位置させており、さらに、光ファイバで構成した先端部材19も、導光用光ファイバ14のコアの延長線上にコアを位置させている。
【0049】
導光用光ファイバ14によって第1空隙V1に導かれた合波光は、導光用光ファイバ14の端面を第1反射面P1として第1反射光L1を生じさせている。また、第1空隙V1と接するセンサ用光ファイバ28の基端面でも反射光が生じるが、導光用光ファイバ14から第1空隙V1に出射された合波光は、光の回折によって広がり角をもって第1空隙V1内を進行するため、センサ用光ファイバ28の基端面に達した際に導光用光ファイバ14のコアに向けて反射する光の強度が第1反射光L1と比較して十分に小さく、干渉光の生成に大きな影響を与えていないと考えられる。
【0050】
導光用光ファイバ14によって第1空隙V1に導かれ、センサ用光ファイバ28に入射した合波光は、センサ用光ファイバ28がグレーデッドインデックスマルチモード光ファイバであることによって、周期的に拡大と集光を繰り返しながら進行し、第2空隙V2に導かれる。なお、センサ用光ファイバ28は、センサ用光ファイバ28の先端において合波光が丁度集光する状態となる長さとしておくことが望ましい。
【0051】
第2空隙V2に導かれた合波光は、センサ用光ファイバ28の先端面を第2反射面P2として第2反射光L2を生じさせている。ここで、第2空隙V2に導かれて光ファイバで構成した先端部材19の基端面に達した合波光による反射光も生じるが、センサ用光ファイバ28から第2空隙V2に出射された合波光は、光の回折によって広がり角をもって第2空隙V2内を進行するため、先端部材19の基端面に達した際にセンサ用光ファイバ28のコアに向けて反射する光の強度が第2反射光L2と比較して十分に小さく、干渉光の生成に大きな影響を与えていないと考えられる。
【0052】
また、センサ用光ファイバ28の長さを、センサ用光ファイバ28の先端において合波光が丁度集光する状態となる長さとした場合には、センサ用光ファイバ28の先端面で最大の反射効率で第2反射光L2が生成することができる。
【0053】
一方、先端部材19の基端面で生じる反射光の影響を低減するために、図6に示すように、先端部材29を第2円筒管D2と一体形成により構成してもよい。この先端部材29は、第2円筒管D2をセンサ用光ファイバ28の先端に熱融着した後に、第2円筒管D2の先端側に放電プラズマを照射して先端部分を融解させ、整形することで先端部分を閉塞させた構造としている。このとき、第2空隙V2は、円錐台に近い形状となっている。先端部材29の先端面も、センサ用光ファイバ28の光軸と90°以外の角度で交差する傾斜面Tとして、この傾斜面Tで生じる反射光がセンサ用光ファイバ28及び導光用光ファイバ14に導かれることを抑制している。
【0054】
この先端部材29では、先端面の外周縁を融解させて丸みを持たせた形状とすることでレンズ状としており、先端部材29にまで導かれた合波光が先端部材29の先端から照射される際にレンズ作用による集光効果を生じさせて、目的の照射領域を効率的に加温できる。
【0055】
図6に示すように、第2円筒管D2の先端を閉塞させて形成した先端部材を、説明の便宜上、以下においては「先端部材代用円筒管」と呼ぶこととする。
【0056】
本実施例では、導光用光ファイバ14は、コア径が8.2μmで、クラッド径が125μmであるシングルモードの光ファイバを用い、センサ用光ファイバ28は、コア径が100μmで、クラッド径が125μmであるグレーデッドインデックスマルチモード光ファイバを用い、第1円筒管D1と第2円筒管D2は、外径が125μmである石英管を用いた。また、センサ用光ファイバ28の長さは約700μmとし、第1円筒管D1の長さは約170μmとした。
【0057】
上記の構造としたセンサ体Sの周囲の温度を変えることで、図7に示すように、第1反射光L1と第2反射光L2との干渉光のスペクトルが波長シフトすることを確認した。特に、センサ体Sの温度を30℃から50℃に変化させることで、第1反射光L1と第2反射光L2と干渉光における光強度の凹凸が明瞭に見られるとともに、その凹凸の大きさである消光比は約15dBと十分な測定精度が得られる信号となっていた。
【0058】
さらに、センサ体Sの温度を変化させながら干渉光のスペクトルの波長シフト量を測定した結果を図8に示す。このような干渉光のスペクトルの波長シフトは、センサ体Sのセンサ用光ファイバ18の熱膨張に伴う光路長の増大だけでなく、センサ体Sのセンサ用光ファイバ18の屈折率変化によっても第2反射光L2の位相が大きく変化していることにより生じているものと考えられる。従って、干渉波長の変化から逆に周囲温度を見積もることができ、温度変化検出装置として利用できることがわかる。温度分解能は、約0.4℃と良好な値が得られた。
【実施例3】
【0059】
第3実施例では、センサ用光ファイバとしてステップインデックスマルチモード光ファイバを用いた温熱治療装置としている。
【0060】
本実施例でも、上述した第1実施例とセンサ体の構成が異なるだけであるため、以下においてはセンサ体の構成と、第1反射光と第2反射光の生成方法のみを説明し、重複する説明は省略する。また、機能的に同じ構成部位については、上述した第1実施例及び第2実施例で使用した符号と同じ符号を使用する。
【0061】
図9に示すように、本実施例でも導光用光ファイバ14は、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバであって、導光用光ファイバ14の基端に入射された合波光を、先端に設けたセンサ体Sに導いている。
【0062】
本実施例のセンサ体Sは、ステップインデックスマルチモード光ファイバで構成したセンサ用光ファイバ38と、導光用光ファイバ14とセンサ用光ファイバ38との間に介設した第1円筒管D1と、センサ用光ファイバ38の先端に装着した先端部材代用円筒管D2'で構成している。センサ用光ファイバ38の先端に先端部材代用円筒管D2'を装着することで、第2空隙V2を形成している。なお、先端部材代用円筒管D2'の装着は、上述したように、センサ用光ファイバ38の先端に第2円筒管を装着し、この第2円筒管の先端側を閉塞させることで先端部材代用円筒管D2'の装着としている。
【0063】
センサ体Sは、導光用光ファイバ14の先端に第1円筒管D1を熱融着することで導光用光ファイバ14に接続し、第1空隙V1を形成している。
【0064】
センサ用光ファイバ38は、導光用光ファイバ14のコアの延長線上にコアを位置させている。
【0065】
導光用光ファイバ14によって第1空隙V1に導かれた合波光は、導光用光ファイバ14の端面を第1反射面P1として第1反射光L1を生じさせる。また、第1空隙V1と接するセンサ用光ファイバ38の基端面でも反射光が生じるが、導光用光ファイバ14から第1空隙V1に出射された合波光は、光の回折によって広がり角をもって第1空隙V1内を進行するため、センサ用光ファイバ38の基端面に達した際に導光用光ファイバ14のコアに向けて反射する光の強度が第1反射光L1と比較して十分に小さく、干渉光の生成に大きな影響を与えていないと考えられる。
【0066】
導光用光ファイバ14によって第1空隙V1に導かれ、センサ用光ファイバ38に入射した合波光は、センサ用光ファイバ38によって第2空隙V2に導かれる。
【0067】
第2空隙V2に導かれた合波光は、センサ用光ファイバ38の先端面を第2反射面P2として第2反射光L2を生じさせる。一方、第2空隙V2に入射した合波光は、先端部材代用円筒管D2'を透過して、先端部材代用円筒管D2'の先端から先方へ照射されて、目的の照射領域を加温する。
【0068】
本実施例では、第2反射光L2の強度が小さいことが予想される。そこで、図10に示すように、センサ用光ファイバ38の基端面を、導光用光ファイバ14に向けて膨出させた凸レンズ面Rとして、第2反射光L2を集光させながら導光用光ファイバ14に入射させることで、第2反射光L2の強度を向上させてもよい。これにより第1反射光L1と第2反射光L2との干渉光の消光比を大幅に向上できる。
【実施例4】
【0069】
第4実施例では、センサ用光ファイバとしてシングルモードの光を伝搬させる光ファイバを用いた温熱治療装置としている。
【0070】
本実施例でも、上述した第1実施例とセンサ体の構成が異なるだけであるため、以下においてはセンサ体の構成と、第1反射光と第2反射光の生成方法のみを説明し、重複する説明は省略する。また、機能的に同じ構成部位については、上述した第1~3実施例で使用した符号と同じ符号を使用する。
【0071】
図11に示すように、本実施例でも導光用光ファイバ14は、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバであって、導光用光ファイバ14の基端に入射された合波光を、先端に設けたセンサ体Sに導いている。
【0072】
本実施例のセンサ体Sは、シングルモードの光を伝搬させる光ファイバで構成したセンサ用光ファイバ48と、導光用光ファイバ14とセンサ用光ファイバ48との間に介設した第1円筒管D1と、センサ用光ファイバ48の先端に装着した先端部材代用円筒管D2'で構成している。センサ用光ファイバ48の先端に先端部材代用円筒管D2'を装着することで、第2空隙V2を形成している。なお、先端部材代用円筒管D2'の装着は、上述したように、センサ用光ファイバ48の先端に第2円筒管を装着し、この第2円筒管の先端側を閉塞させることで先端部材代用円筒管D2'の装着としている。
【0073】
センサ体Sは、導光用光ファイバ14の先端に第1円筒管D1を熱融着することで導光用光ファイバ14に接続し、第1空隙V1を形成している。
【0074】
センサ用光ファイバ48は、導光用光ファイバ14のコアの延長線上にコアを位置させている。
【0075】
導光用光ファイバ14によって第1空隙V1に導かれた合波光は、導光用光ファイバ14の端面を第1反射面P1として第1反射光L1を生じさせる。また、第1空隙V1と接するセンサ用光ファイバ48の基端面でも反射光が生じるが、導光用光ファイバ14から第1空隙V1に出射された合波光は、光の回折によって広がり角をもって第1空隙V1内を進行するため、センサ用光ファイバ48の基端面に達した際に導光用光ファイバ14のコアに向けて反射する光の強度が第1反射光L1と比較して十分に小さく、干渉光の生成に大きな影響を与えていないと考えられる。
【0076】
導光用光ファイバ14によって第1空隙V1に導かれ、センサ用光ファイバ48に入射した合波光は、センサ用光ファイバ48によって第2空隙V2に導かれる。
【0077】
第2空隙V2に導かれた合波光は、センサ用光ファイバ48の先端面を第2反射面P2として第2反射光L2を生じさせる。一方、第2空隙V2に入射した合波光は、先端部材代用円筒管D2'を透過して、先端部材代用円筒管D2'の先端から先方へ照射されて、目的の照射領域を加温する。
【0078】
本実施例でも、第2反射光L2の強度が小さいことが予想される。そこで、図12に示すように、センサ用光ファイバ48の基端面を、導光用光ファイバ14に向けて膨出させた凸レンズ面Rとして、第2反射光L2を集光させながら導光用光ファイバ14に入射させることで、第2反射光L2の強度を向上させてもよい。これにより第1反射光L1と第2反射光L2とで生じる干渉光の消光比を大幅に向上できる。
【符号の説明】
【0079】
11 第1投光器
12 第2投光器
13 ファイバ型光サーキュレータ
14 導光用光ファイバ
15 波長多重分離装置
16 受光器
17 解析器
18 センサ用光ファイバ
19 先端部材
29 先端部材
S センサ体
C1 第1窪み
C2 第2窪み
V1 第1空隙
V2 第2空隙
P1 第1反射面
P2 第2反射面
L1 第1反射光
L2 第2反射光
D1 第1円筒管
D2 第2円筒管
D2' 先端部材代用円筒管
T 傾斜面
R 凸レンズ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12