(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】更生管の接続方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/163 20060101AFI20240201BHJP
B29C 65/50 20060101ALI20240201BHJP
B29C 63/26 20060101ALI20240201BHJP
F16L 1/00 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
F16L55/163
B29C65/50
B29C63/26
F16L1/00 J
(21)【出願番号】P 2019208981
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早間 泰之
(72)【発明者】
【氏名】牧原 宏
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203530(JP,A)
【文献】特開2018-081015(JP,A)
【文献】特開2002-122287(JP,A)
【文献】特開2004-205020(JP,A)
【文献】特開2008-051207(JP,A)
【文献】特開2001-289637(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203823(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2036449(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/163
B29C 65/50
B29C 63/26
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の内部に形成された更生管同士の継ぎ目に内側から止水バンドを取り付けることによって当該更生管同士を接続する更生管の接続方法において、
互いに平行な回転軸を有する3以上の車輪が前記回転軸の径方向及び軸方向に互いに間隔をあけて設けられた台車を前記更生管の内部に持ち込み、
平面視で全ての前記回転軸が前記更生管の管軸と平行となるように、かつ、前記車輪を前記更生管の内周面に接触させた状態で、前記台車を前記更生管の下端よりも上から放ったとき、前記台車が当該台車の自重により前記更生管の周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡に沿うように前記台車を配置し、
前記台車に載置したレーザ水準器から前記更生管の周方向に延びるライン状のレーザ光を前記更生管の内周面へ向けて前記更生管の軸方向と直交する方向に照射し、
前記更生管の内周面に照射された前記レーザ光を目印にして前記止水バンドの取付位置を特定した後、当該取付位置に前記止水バンドを取り付けることを特徴とする更生管の接続方法。
【請求項2】
請求項1に記載の更生管の接続方法において、
前記台車に前記レーザ水準器を載置した状態で、前記台車を前記更生管の下端よりも上から放ち、前記台車が前記更生管の周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡を探索することを特徴とする更生管の接続方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の更生管の接続方法において、
前記車輪は、複数の第1車輪と、複数の第2車輪とを含み、
複数の前記第1車輪は、前記第1車輪の回転軸の軸方向に互いに間隔をあけて配置され、
複数の前記第2車輪は、前記第1車輪の回転軸から径方向に離れ、かつ、前記第2車輪の回転軸の軸方向に互いに間隔をあけて配置された前記台車を使用することを特徴とする更生管の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管路に設けられる更生管を接続する接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、老朽化した下水道の管路更生方法として、新たな管となる部材をマンホールから既設管の内部に挿入して更生管を形成する方法が知られている。
【0003】
更生管は、単独管と複合管に分類することができる。単独管は、既設管と一体構造とならない更生管である。一方、複合管は、既設管とその内側の更正管とがモルタルなどの充填材によって一体構造になっている更生管であり、そのため、新管と同等の耐久性を有することが特徴となっている。
【0004】
更生管を形成する工法としては、例えば、熱または光で硬化する樹脂を含浸させたバルーンをマンホールから既設管内に加圧反転させながら挿入した後、熱または光を当該バルーンに照射して硬化させ、更生管を構築する反転工法、熱または光で硬化する樹脂材料または熱可塑性樹脂材料からなる連続パイプを既設管内に引き込み、水圧または蒸気圧で加圧して既設管の内面に圧着させる形成工法、樹脂材料からなる部材を既設管内に嵌合させながら製管し、既設管との間隙にモルタルなどを充填して更生管を構築する製管工法、既設管の内径よりも小さい外径の管筐を既設管に敷設した後、それらの間隙に充填材を注入して管を構築する鞘管工法等がある。
【0005】
上述した複数の工法のうち、製管工法は、帯状の長い樹脂材を機械で螺旋状に巻いて更生管を作っておき、この更生管と既設管との間隙にモルタルなどを充填して複合管を形成していくことで、マンホールから次のマンホールまでの間を製管機により連続して製管できるというメリットがある。
【0006】
しかし、
図1に示すようにマンホール間が長い場合や、
図2に示すように既設管が屈曲している場合は、マンホール間で更生管が複数本になる。たとえば、地下埋設物の交差や水路の横断箇所では、既設管は水位差を利用したベントサイフォン構造を利用しているため、マンホール間の管路が屈曲しており、この場合は、更生管を既設管内で複数本接続する必要がある。
【0007】
製管工法の場合、既設管と製管の間隙をモルタルなどの充填材を注入する工法であるため、更生管同士の継ぎ目を塞ぐ必要がある。更生管同士の継ぎ目には、敷設後、管の内水圧、および外水圧に耐える水密性が求められるので、止水バンドと金属拡張内面バンドで止水する方法(止水バンド工法)が適用されることがある(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-40398号公報
【文献】特開2005-121178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、製管工法の場合、帯状の樹脂材を螺旋状に巻いて嵌合させながら更生管を形成するため、接続面となる端面は、平滑な面にはならず、
図3に示すように螺旋状に巻かれている樹脂材の巻端が突出した状態になっている。このため、更生管同士の接続面間には、15~20mmの隙間が生じてしまう。
【0010】
止水バンドを取り付ける際には、更生管同士の隙間が生じる位置に止水バンドを合わせる必要がある。止水バンドの取付位置をマーキング(けがき)によって示そうとする場合、更生管の端面をどこに合わせるかをスケーラ(定規)で測長する方法は基準位置が分からないため、困難である。また、止水バンドは、管内の下水流を妨げないように厚みを薄くしなければならないので、自重で変形しやすく取付時に自立させることが難しい。従って、止水バンドを更生管の軸方向に対して垂直に立てることが困難である。仮に、止水バンドが軸方向に対して垂直でなく、斜めになった状態で取り付けられた場合、止水バンドの周長が更生管の周長と一致しなくなるため、止水バンドと更生管との間に隙間ができてしまい、外水圧により漏水するおそれがある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、止水バンドを更生管の軸方向に対して垂直に取り付けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、レーザ水準器と、レーザ水準器を載置可能な台車を更生管の内部に持ち込み、レーザ水準器及び台車を用いて止水バンドの取付位置を正確に示すことができるようにした。
【0013】
第1の発明は、既設管の内部に形成された更生管同士の継ぎ目に内側から止水バンドを取り付けることによって当該更生管同士を接続する更生管の接続方法において、互いに平行な回転軸を有する3以上の車輪が前記回転軸の径方向及び軸方向に互いに間隔をあけて設けられた台車を前記更生管の内部に持ち込み、前記車輪を前記更生管の内周面に接触させた状態で、前記台車を前記更生管の下端よりも上から放ったとき、前記台車が当該台車の自重により前記更生管の周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡に沿うように前記台車を配置し、前記台車に載置したレーザ水準器から前記更生管の周方向に延びるライン状のレーザ光を前記更生管の内周面へ向けて前記更生管の軸方向と直交する方向に照射し、前記更生管の内周面に照射された前記レーザ光を目印にして前記止水バンドの取付位置を特定した後、当該取付位置に前記止水バンドを取り付けることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、既設管の内部に更生管を形成した後、更生管同士を接続する際、台車を更生管の内部に持ち込み、この台車の車輪を更生管の内周面に接触させてから台車を更生管の下端よりも上から放ったときに、台車が更生管の周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡を見つけることができる。
【0015】
例えば、車軸が2本以上ある台車を更生管の下端よりも上から放ったときに、少なくとも1つの車輪が更生管の内周面から浮き上がった状態であると、台車が更生管の周方向に振れて動くことができない。この場合は、車輪の回転軸と更生管の軸方向とが平行ではなく、車輪の回転軸が更生管の軸方向に対して傾斜した位置関係になっているということであるから、レーザ水準器を台車に載置してレーザ光を照射したとしても、更生管の軸方向と直交する方向に照射することはできない。このようなレーザ光を利用して止水バンドの取付位置を特定してしまうと、止水バンドを更生管の軸方向に対して垂直に立てることができなくなり、止水バンドと更生管との間に隙間ができてしまう。
【0016】
一方、台車がその自重により更生管の周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡を見つけることができれば、車輪の回転軸と更生管の軸方向とが平行であるということであり、レーザ水準器を台車に載置してレーザ光を照射すると、更生管の軸方向と直交する方向に照射することができる。このレーザ光を目印にして止水バンドの取付位置を特定した後、当該取付位置に止水バンドを取り付けることで、止水バンドを更生管の軸方向に対して垂直に立てることができる。これにより、止水バンドと更生管との間に隙間ができなくなるので、外水圧により漏水するおそれは無くなる。
【0017】
第2の発明は、前記台車に前記レーザ水準器を載置した状態で、前記台車を前記更生管の下端よりも上から放ち、前記台車が前記更生管の周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡を探索することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、レーザ水準器を載置した台車はレーザ水準器の重量が加わることにより重くなっており、この重い台車を利用することで、移動軌跡を正確に特定することができる。
【0019】
第3の発明は、前記車輪は、複数の第1車輪と、複数の第2車輪とを含み、複数の前記第1車輪は、前記第1車輪の回転軸の軸方向に互いに間隔をあけて配置され、複数の前記第2車輪は、前記第1車輪の回転軸から径方向に離れ、かつ、前記第2車輪の回転軸の軸方向に互いに間隔をあけて配置された前記台車を使用することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、台車が少なくとも4つの車輪を備えているので、レーザ水準器を台車に載置した時に安定させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、台車が更生管の周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡を見つけ、その移動軌跡に沿うように配置した台車にレーザ水準器を載置し、更生管の周方向に延びるライン状のレーザ光を更生管の軸方向と直交する方向に照射することにより、レーザ光を目印にして止水バンドの取付位置を特定することができる。これにより、止水バンドを更生管の軸方向に対して垂直に立てることができる取付位置を簡単にかつ正確に特定することができ、施工後の外水圧による漏水を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る更生管の接続方法が適用される下水道管渠のマンホール間距離が長い場合を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る更生管の接続方法が適用される下水道管渠の既設管が屈曲している場合を説明する図である。
【
図6】台車の車輪の回転軸と更生管の管軸とが平行である場合を示す断面図である。
【
図7】
図6におけるVII-VII線断面図である。
【
図8】台車の車輪の回転軸と更生管の管軸とが平行でない場合を示す断面図である。
【
図10】レーザ水準器からレーザ光を照射した状態を示す更生管の断面図である。
【
図11】けがき線を引いた更生管の一部分を示す斜視図である。
【
図12】止水バンドを取り付けた状態の
図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る更生管の接続方法が適用される下水道管渠Sを示している。下水道管渠Sは、複数のマンホールM1、M2、M3と、既設管100A、100B、100Cとを備えている。マンホールM1に既設管100Aが接続されている。マンホールM1とマンホールM2に既設管100Bが接続されている。マンホールM2とマンホールM3に既設管100Cが接続されている。マンホールM1とマンホールM2との離間距離に比べて、マンホールM2とマンホールM3との離間距離が長く設定されており、このため、既設管100Cの方が既設管100Bよりも長くなっている。
【0025】
図1に示す下水道管渠Sで管路更生を行う場合、樹脂材料からなる部材を既設管100A、100B、100Cの内部において嵌合させながら製管し、既設管100A、100B、100Cとの間隙にモルタルなどを充填して更生管(ライナー管ともいう)1A、1B、1C、1Dを構築する製管工法を用いることができる。既設管100Aの内部に更生管1Aを形成し、既設管100Bの内部に更生管1Bを形成し、既設管100Cの内部に更生管1C、1Dを形成する。製管工法では、帯状の長い樹脂材を機械で螺旋状に巻いて更生管1A、1B、1C、1Dを作っておき、この更生管1A、1B、1C、1Dと既設管100A、100B、100Cとの間隙にモルタルなどを充填して既設管100A、100B、100Cと更生管1A、1B、1C、1Dとが一体構造になった複合管を形成することができる。
【0026】
各更生管1A、1B、1C、1Dは同じように形成することができるが、マンホールM2とマンホールM3との離間距離が長くなっていることから、これに対応するように既設管100Cも長くなっており、このため、既設管100Cには、マンホールM2からマンホールM3側へ向けて形成された更生管1Cと、マンホールM3からマンホールM2側へ向けて形成された更生管1Dとが存在することになる。従って、更生管1Cと更生管1Dとを接続する必要がある。
【0027】
また、
図2は、既設管が屈曲している下水道管渠S1を示しており、この下水道管渠S1は、複数のマンホールM4、M5と、既設管100D、100Eとを備えている。マンホールM4に既設管100Dが接続されている。マンホールM4とマンホールM5に既設管100Eが接続されている。既設管100D、100Eは屈曲している。
【0028】
図2に示す下水道管渠S1で管路更生を行う場合も製管工法を用いることができる。既設管100Dの内部に更生管1E、1Fを形成し、既設管100Eの内部に更生管1G、1H、1Iを形成する。既設管100Dが屈曲しているので、マンホールM4から延びる更生管1Fと、その反対側から延びる更生管1Eとが既設管100Dの内部に形成されることになる。従って、更生管1Eと更生管1Fとを接続する必要がある。
【0029】
また、既設管100Eも屈曲しているので、マンホールM4からマンホールM5側へ向けて形成された更生管1Gと、マンホールM5からマンホールM4側へ向けて形成された更生管1Iと、それらの間に形成された更生管1Hとが既設管100Eの内部に存在することになる。従って、更生管1Gと更生管1Hとを接続するとともに、更生管1Hと更生管1Iとを接続する必要がある。
【0030】
以下の実施形態の説明では、
図1に示す更生管1Cと更生管1Dとを接続する場合について説明するが、本発明は、更生管1Cと更生管1Dとの接続だけでなく、更生管1Gと更生管1Hとを接続する場合や、更生管1Hと更生管1Iとを接続する場合に適用することができる。
【0031】
図3は、
図1の更生管1C、1Dのみを抜き出して示したものである。製管工法の場合、帯状の樹脂材を螺旋状に巻いて嵌合させながら更生管1Cを作製するため、更生管1Cにおける更生管1Dとの接続面となる端面2Aは、平滑な面にはならず、螺旋状に巻かれている樹脂材の巻端が突出した突起部2Cを有する面になる。同様に、更生管1Dにおける更生管1Cとの接続面となる端面2Bは、螺旋状に巻かれている樹脂材の巻端が突出した突起部2Dを有する面になる。
【0032】
このため、更生管1C、1D同士の端面2A、2b間には、継ぎ目500となる隙間が形成されることになり、その継ぎ目500の寸法Hは、15~20mm程度になることがある。一般的に、更生管1C、1D同士の継ぎ目500には、その内側から止水バンド300A(
図1に示す)を取り付けることによって当該更生管1C、1D同士を接続する。なお、
図2に示す例では、更生管1E、1F同士の継ぎ目に止水バンド300Bを取り付け、更生管1G、1H同士の継ぎ目に止水バンド300Cを取り付け、更生管1H、1I同士の継ぎ目に止水バンド300Dを取り付けるようにしているが、止水バンド300A、300B、300C、300Dは全て同じ構造にすることができ、また同じ取り付け方法で取り付けることができる。
【0033】
止水バンド300Aは、上記特許文献1、2等に開示されているように、ゴム製バンドと、当該ゴム製バンドを止め付けるための止付金具(金属拡張バンド)とで構成することができるが、これら文献のもの以外の止水バンドを用いることもできる。このような止水バンド300Aは、管内の下水流を妨げないように厚みを薄くしなければならないので、止付前の状態では自重で変形しやすくなっている。
【0034】
止水バンド300Aを取り付ける際には、更生管1Cの内周面に止水バンド300Aの一端部の位置を示すけがき線400(
図3に示す)を引いたり、更生管1Dの内周面に止水バンド300Aの他端部の位置を示すけがき線401を引くことが行われる。けがき線400、401を目印にして止水バンド300Aを取り付けることができるが、仮に、止水バンド300Aが更生管1C、1Dの軸方向に対して垂直でなく、斜めになった状態で取り付けられた場合、止水バンド300Aの周長が更生管1C、1Dの周長と一致しなくなるため、止水バンド300Aと更生管1C、1Dとの間に隙間ができてしまい、外水圧により漏水するおそれがあるので、止水バンド300Aを更生管1C、1Dの軸方向に対して垂直に取り付ける必要がある。本実施形態では、
図4や
図5に示すような台車10及びレーザ水準器20を用いた更生管1C、1Dの接続方法を適用することにより、簡単な作業で止水バンド300Aを更生管1C、1Dの軸方向に対して垂直に取り付けることができる。
【0035】
(台車10の構成)
図4及び
図5に示すように、台車10は、2つの第1車輪11、11と、2つの第2車輪12、12と、車体13とを備えている。車体13は、レーザ水準器20を載置することが可能な大きさの板材等で構成することができる。車体13の材質や形状は特に限定されるものではなく、例えば樹脂材等で構成されたものであってもよい。レーザ水準器20と車体13とは着脱可能に一体化されていてもよいし、レーザ水準器20を車体13に対して単に載置するようにしてもよいし、レーザ水準器20を車体13に対して固定するようにしてもよい。
【0036】
第1車輪11は、第1支持部材11a及び回転軸11bにより車体13に対して回転可能に支持されている。第1支持部材11aは、車体13の下面に固定することができる。第1車輪11の支持構造は、図示した構造に限られるものではなく、例えば回転軸が仮想軸であってもよい。第1車輪11、11は、回転軸11bの軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。一方の第1車輪11の回転軸11bと、他方の第1車輪11の回転軸11bとは、例えば
図7に示す直線Bと平行であり、この実施形態では、一方の第1車輪11の回転軸11bと、他方の第1車輪11の回転軸11bとが直線B上に位置するように、第1車輪11、11が車体13に取り付けられている。なお、一方の第1車輪11の回転軸11bが直線B上に位置し、他方の第1車輪11の回転軸11bが直線B上にはなく、当該直線Bと平行な直線(図示せず)上に位置するように、第1車輪11、11を車体13に取り付けることもできる。
【0037】
第2車輪12は、第2支持部材12a及び回転軸12bにより車体13に対して回転可能に支持されている。第2支持部材12aも第1支持部材11aと同様に車体13の下面に固定することができる。第2車輪12の支持構造も図示した構造に限られるものではなく、例えば回転軸が仮想的な軸であってもよい。
【0038】
第2車輪12、12は、第1車輪11の回転軸11bから径方向に離れ、かつ、第2車輪12の回転軸12bの軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。一方の第2車輪12の回転軸12bと、他方の第2車輪12の回転軸12bとは、例えば
図7に示す直線Cと平行であり、この実施形態では、一方の第2車輪12の回転軸12bと、他方の第2車輪12の回転軸12bとが直線C上に位置するように、第2車輪12、12が車体13に取り付けられている。なお、一方の第2車輪12の回転軸12bが直線C上に位置し、他方の第2車輪12の回転軸12bが直線C上にはなく、当該直線Cと平行な直線(図示せず)上に位置するように、第2車輪12、12を車体13に取り付けることもできる。直線Bと直線Cとは平行である。
【0039】
また、第1車輪11、11の一方を省略してもよいし、第2車輪12、12の一方を省略してもよい。つまり、この実施形態では4輪の台車10を使用しているが、3輪の台車10を使用することもできる。また、図示しないが、5輪以上の車輪を有する台車を使用することもできる。台車10は、水平面に載置した時に、車体13の上面が水平になるように、車輪11、12の径や車体13が構成されている。
【0040】
(レーザ水準器20の構成)
レーザ水準器20は、例えば建築現場等で使用されている器具であり、ライン状のレーザ光を照射することによって各種目印を部材表面に形成することができるように構成されている。すなわち、レーザ水準器20は、レーザ発信器や各種センサ、制御装置等を内蔵した本体部21と、本体部21の下部に設けられた複数の支持脚22とを備えており、例えばスイッチをONにすると、鉛直方向を検出するセンサによって現時点での鉛直方向を検出し、その鉛直方向に沿うように、レーザ発信器がレーザ光を照射する。このレーザ光の照射方向を本体部21に記憶させておくことができる。
【0041】
(更生管の接続方法)
次に、更生管の接続方法について説明する。まず、上述した台車10及びレーザ水準器20を用意し、
図1に示すマンホールM2から更生管1Cの内部に持ち込む。このとき、台車10及びレーザ水準器20をマンホールM3から更生管1Dの内部に持ち込んでもよい。
【0042】
その後、
図6に仮想線で示すように、台車10の第1車輪11及び第2車輪12を更生管1Cの内周面に接触させた状態で、台車10を更生管1Cの下端よりも上に配置した後、そこから放つ。台車10を放ったとき、台車10が当該台車10の自重により更生管1Cの周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡を探索する。
図7に示すように平面的に見たとき、第1車輪11の回転軸11b上の直線Bと、第2車輪12の回転軸12b上の直線Cとが更生管1Cの管軸Aと平行な位置関係にあれば、台車10が更生管1Cの内周面をその周方向に振れて動き、そのときに要する力は小さなものになるので、例えば
図6に仮想線で示す位置から台車10を放つと、台車10が最下端位置に到達した後、慣性力によって矢印E方向へ上るように走行した後、速度が0になり、最下端位置に再び到達し、今度は矢印F方向に上る。これを繰り返して台車10が最下端位置で停車する。
【0043】
更生管1Cの周方向に振れて動くときの台車10の移動軌跡は、
図7に示すように平面的に見た場合、管軸Aと直交する方向に延びる直線Dとなる。この直線Dと、第1車輪11の回転軸11b上の直線Bとは直交する関係となり、また、直線Dと、第2車輪12の回転軸12b上の直線Cとは直交する関係となる。台車10の進行方向が更生管1Cの周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡Dに沿うように台車10を配置する。
【0044】
一方、
図8や
図9に示すように、第1車輪11の回転軸11b上の直線Bと、第2車輪12の回転軸12b上の直線Cとが更生管1Cの管軸Aに対して傾斜する位置関係にあるときには、台車10が更生管1Cの周方向に振れ難くなる。すなわち、第1車輪11の回転軸11b上の直線Bと、第2車輪12の回転軸12b上の直線Cとが更生管1Cの管軸Aに対して傾斜していると、いずれかの車輪が更生管1Cの内周面から浮き上がった状態になり、このため、台車10が更生管1Cの周方向に振れて動くことができなくなる。
【0045】
つまり、台車10を更生管1Cの下端よりも上から放ったときに振れ動けば移動軌跡Dに沿うように台車10が位置していることが分かり、振れ動かなければ移動軌跡Dに沿うように台車10が位置していないことが分かる。従って、作業者は、台車10を移動軌跡Dに沿うように容易に位置付けることができる。
【0046】
台車10を移動軌跡Dに沿うように配置して停車した状態で台車10に載置したレーザ水準器20のスイッチをONにする。なお、レーザ水準器20のキャリブレーションを管内に持ち込む前に行っておく。具体的には、レーザ水準器20を水平面に載置した状態でレーザ光が鉛直方向に照射されるようにレーザ光の照射方向を設定し、これをレーザ水準器20の本体部21に記憶させておく。
【0047】
レーザ水準器20のスイッチをONにすると、
図10に示すように、台車10に載置したレーザ水準器20は、レーザ水準器20から更生管1Cの周方向に延びるライン状のレーザ光Lを更生管1Cの内周面へ向けて更生管1Cの軸方向(管軸A方向)と直交する方向に照射する。
【0048】
なお、台車10にレーザ水準器20を載置した状態で台車10を振り動かしてもよいし、台車10にレーザ水準器20を載置せずに台車10のみ振り動かした後、台車10にレーザ水準器20を載置してもよい。
【0049】
レーザ光Lを更生管1Cの内周面に照射した状態で、レーザ光Lを目印にして止水バンド300Aの取付位置を特定する。例えば、
図11に示すように、レーザ光Lに沿って更生管1Cの内周面にけがき線600を引くことができる。このけがき線600は更生管1Cの周方向に連続していてもよいし、断続していてもよい。
【0050】
このようにして止水バンド300Aの取付位置を特定した後、
図12に示すように取付位置に止水バンド300Aを取り付ける。例えば、止水バンド300Aにおける更生管1Cとの接触面には、非加硫ゴムからなるシーラーを付けておくことができる。このシーラーを付けた止水バンド300Aの端部を、けがき線600に合わせた後、金属製の拡張バンド(図示せず)を止水バンド300Aの内側に配置し、拡張バンドを拡張させる。拡張バンドを拡張させることにより、止水バンド300Aのシーラーを更生管1Cの内周面に押しつけて塑性変形させることができる。これにより、止水性が向上する。
【0051】
シーラーは、水膨潤性添加物を含んでいてもよい。また、シーラーを構成する非加硫ゴムは、更生管1Cと既設管100Cとの間に充填する充填材であるモルタルと反応して結合するため、ひずみ抑制効果が得られるとともに、止水効果をより一層高めることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。帯状の硬質塩化ビニルを直径600mmのマンホールから既設管内に搬入し、既設管内で螺旋状に巻いて更生管を形成した。このときの更生管の内径は800mmであり、長さは80mであった。更生管の巻端を既設管内でサンダーカットにより面出した。更生管同士の継ぎ目の間隙は、20mmであった。
【0053】
レーザ水準器(クロスラインレーザー、QUIGO PLUS, BOSCH社製)を水平に搭載した台車を面出した更生管の内周面に置いた。台車の設置場所は、更生管の端部から80mm離れるように設定した。台車の車輪の回転軸は更生管の管軸方向に向くように配置した。第1車輪と第2車輪との回転軸間距離は200mmである。台車を更生管の下端部から10~20cm程度の高さまで上げ、第1車輪と第2車輪を更生管の内周面に接触させた状態にし、その状態から台車を放った。台車が更生管の内周面に沿って戻り、台車に振れる動きが出るように、台車の向きを調整した。このようにして台車が更生管の周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡を探索した。台車の向きを確認した後、レーザ水準器のスイッチを入れて、更生管の軸方向に垂直な面に沿ってレーザ光を照射した。
【0054】
レーザ光を照射した状態で、レーザ光をペンでなぞって、けがき線とした。けがき線に沿って直径800mm、幅185mmの止水バンドを配置するとともに、当該止水バンドの下部を更生管の下部に合わせて、止水バンドの外面のシーラー保護フィルムの一部を剥がして更生管の下部に止水バンドの下部を仮固定した。下部を仮固定した後、シーラー保護フィルムを更に剥がしながら、けがき線に沿うように止水バンドを更生管の内周面に当て、仮固定した。その後、接続するもう一方の更生管の端部近傍に、同様な方法で、更生管の下部から上部に向かってシーラーで止水バンドを仮固定をした。2本のシーラーで更生管に止水バンドを仮固定した後、止水バンドの2本のシーラーの間に形成されている溝に3分割されたステンレスバンド(金属拡張バンド)をはめ込み、油圧ジャッキによってステンレスバンドを拡張させ、ステンレスバンドの周方向に対向する端部の間にスペーサを入れてステンレスバンドを圧着固定した。これにより、止水バンドを更生管の軸方向に対して垂直に立てた状態で固定することができるので、止水バンドと更生管との間に隙間ができなくなり、外水圧により漏水するおそれは無くなる。
【0055】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、台車10が更生管1Cの周方向に振れて動くことが可能となる移動軌跡を見つけ、その移動軌跡に沿うように配置した台車10にレーザ水準器20を載置し、更生管1Cの周方向に延びるライン状のレーザ光Lを更生管1Cの軸方向と直交する方向に照射することにより、レーザ光Lを目印にして止水バンド300Aの取付位置を特定することができる。これにより、止水バンド300Aを更生管1Cの軸方向に対して垂直に立てることができる取付位置を簡単にかつ正確に特定することができ、施工後の外水圧による漏水を防止できる。
【0056】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0057】
また、図示しないが、台車10は、第1車輪11と第2車輪12との距離(ホイールベース)を変更可能に構成されていてもよい。更生管の径が大きい場合には、第1車輪11と第2車輪12との距離を延長させ、更生管の径が小さい場合には、第1車輪11と第2車輪12との距離を短縮する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明に係る更生管の接続方法は、例えば下水道管渠の既設管の内部に形成した更生管同士を接続する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1C 更生管
1D 更生管
10 台車
11 第1車輪
11b 回転軸
12 第2車輪
12b 回転軸
20 レーザ水準器
100C 既設管
300A 止水バンド
A 管軸
D 移動軌跡