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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】天井下地固定金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
E04B9/18 A
E04B9/18 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019217450
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085308
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】393016837
【氏名又は名称】株式会社桐井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 智一
(72)【発明者】
【氏名】下氏 亮介
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 康二郎
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-007882(JP,A)
【文献】実開昭47-023914(JP,U)
【文献】実開平02-134222(JP,U)
【文献】特開2017-141597(JP,A)
【文献】実開昭56-159521(JP,U)
【文献】特開2017-040036(JP,A)
【文献】実開平07-010142(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/16, 9/18, 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体に天井下地を直固定するための天井下地固定金具であって、
前記支持構造体に係止される第一部材と、前記天井下地を係止する第二部材と、前記第一部材と前記第二部材とを連結する第三部材とを備え、
前記第一部材は、前記支持構造体に掛け止められる支持構造体固定部を備え、
前記第三部材は、前記第一部材と接合するための第一部材取付部と、前記第二部材と接合するための第二部材取付部とを備え、
前記第一部材取付部は、前記第一部材から突出するボルトが挿通するボルト挿通孔にて構成され、前記第三部材の一側面に上下方向に間隔をあけて複数設けられており、
前記第二部材は、前記天井下地を支持するための天井下地固定部と、前記第三部材の前記第二部材取付部に取り付けられる第三部材取付部とを備え、
前記第二部材の第三部材取付部および前記第三部材の第二部材取付部の少なくともいずれか一方は、前記第二部材の取付高さが調整可能に構成されている
ことを特徴とする天井下地固定金具。
【請求項2】
前記第二部材取付部は、前記第三部材の他側面に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の天井下地固定金具。
【請求項3】
前記第一部材取付部は、前記第三部材の前記一側面と交差する他側面にも上下方向に間隔をあけて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の天井下地固定金具。
【請求項4】
支持構造体に天井下地を直固定するための天井下地固定金具であって、
前記支持構造体に係止される第一部材と、前記天井下地を係止する第二部材と、前記第一部材と前記第二部材とを連結する第三部材とを備え、
前記第一部材は、前記支持構造体に掛け止められる支持構造体固定部を備え、
前記第三部材は、前記第一部材と接合するための第一部材取付部と、前記第二部材と接合するための第二部材取付部とを備え、
前記第一部材取付部は、前記第三部材の一側面に上下方向に間隔をあけて複数設けられており、
前記第二部材は、前記天井下地を支持するための天井下地固定部と、前記第三部材の前記第二部材取付部に取り付けられる第三部材取付部とを備え、
前記第二部材の第三部材取付部および前記第三部材の第二部材取付部の少なくともいずれか一方は、前記第二部材の取付高さが調整可能に構成されており、
前記第二部材取付部は、前記第三部材の一側面および他側面のそれぞれに上下方向に間隔をあけて複数設けられている
ことを特徴とする天井下地固定金具。
【請求項5】
前記第二部材は、前記第三部材にボルトにて固定されており、
前記第二部材の第三部材取付部および前記第三部材の第二部材取付部の少なくともいずれか一方は、上下方向に沿って延在する長孔にて構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の天井下地固定金具。
【請求項6】
支持構造体に天井下地を直固定するための天井下地固定金具であって、
前記支持構造体に係止される第一部材と、前記天井下地を係止する第二部材と、前記第一部材と前記第二部材とを連結する第三部材とを備え、
前記第一部材は、前記支持構造体に掛け止められる支持構造体固定部を備え、
前記第三部材は、前記第一部材と接合するための第一部材取付部と、前記第二部材と接合するための第二部材取付部とを備え、
前記第一部材取付部は、前記第三部材の一側面に上下方向に間隔をあけて複数設けられており、
前記第二部材は、前記天井下地を支持するための天井下地固定部と、前記第三部材の前記第二部材取付部に取り付けられる第三部材取付部とを備え、
前記第二部材の第三部材取付部および前記第三部材の第二部材取付部の少なくともいずれか一方は、前記第二部材の取付高さが調整可能に構成されており、
前記第二部材は、前記天井下地を係止するためのスリットを備えている
ことを特徴とする天井下地固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持構造体に天井下地を直固定するための天井下地固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
吊りボルトを用いずに、支持構造体に天井下地を直固定して工期短縮と工費削減を図った構造が知られている。従来、支持構造体に天井下地を固定するに際しては、支持構造体に天井下地をビスで直接固定したり、支持構造体に棒状の吊材を固定し吊材の下端部に天井下地材を釘やビスで固定する(特許文献1参照)ようになっていた。
【0003】
ところで、施工精度が悪い場合、支持構造体に不陸が発生する場合がある。この不陸を吸収するためには、支持構造体に墨打ちを行って基準線を表示し、この基準線に合わせて野縁受けなどの天井下地をビスなどで接合するようになっていた。そのため、不陸の大きい部分では、支持構造体と天井下地との重なり部分が小さく接合が困難である問題があった。
さらに、ビス止めなどの接合を行うに際して、天井下地を押さえた状態で作業を行わなければならないので、作業が煩雑で、作業に多くの手間を要する問題もあった。
【0004】
そこで本発明者は、天井下地の支持位置の高さ調整と接合を容易に行うことができる天井下地固定金具を発明した(特許文献2参照)。特許文献2の天井下地固定金具は、支持構造体に係止される第一部材と、天井下地を係止する第二部材とを備え、第二部材は、第一部材に対して取付高さが調整可能に取り付けられている。第一部材は、支持構造体に掛け止められる支持構造体固定部と、第二部材を固定するための第二部材固定部とを備えており、支持構造体固定部は、支持構造体に接合するための接合部を備え、第二部材固定部は、天井下地を接合するための接合部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-96764号公報
【文献】特開2017-40036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の天井下地固定金具は、第二部材が第一部材に対して取付高さが調整可能に取り付けられているものの、取付高さの調整可能寸法は大きくなく、さらに大きい調整可能寸法を要求される場合があった。
【0007】
このような観点から、本発明は、天井下地の支持位置の高さ調整可能寸法を大きくできる天井下地固定金具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明は、支持構造体に天井下地を直固定するための天井下地固定金具であって、前記支持構造体に係止される第一部材と、前記天井下地を係止する第二部材と、前記第一部材と前記第二部材とを連結する第三部材とを備えている。前記第一部材は、前記支持構造体に掛け止められる支持構造体固定部を備え、前記第三部材は、前記第一部材と接合するための第一部材取付部と、前記第二部材と接合するための第二部材取付部とを備えている。前記第一部材取付部は、前記第一部材から突出するボルトが挿通するボルト挿通孔にて構成され、前記第三部材の一側面に上下方向に間隔をあけて複数設けられており、前記第二部材は、前記天井下地を支持するための天井下地固定部と、前記第三部材の前記第二部材取付部に取り付けられる第三部材取付部とを備え、前記第二部材の第三部材取付部および前記第三部材の第二部材取付部の少なくともいずれか一方は、前記第二部材の取付高さが調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる天井下地固定金具によれば、第二部材と第三部材との高さ調整可能な構成の他に、第三部材の第一部材取付部が上下方向に間隔をあけて複数設けられているので、高さ調整の可能寸法を大きくすることができる。
【0010】
本発明の天井下地固定金具においては、前記第二部材取付部は、前記第三部材の前記一側面と交差する他側面に設けられているものが好ましい。このような構成によれば、支持構造体に対して交差する方向に天井下地を取り付けることができる。
【0011】
また、本発明の天井下地固定金具においては、前記第一部材取付部は、前記第三部材の他側面にも上下方向に間隔をあけて複数設けられているものが好ましい。このような構成によれば、支持構造体に対する天井下地の取付角度を変更できる。
【0012】
さらに、本発明の天井下地固定金具においては、前記第二部材取付部は、前記第三部材の一側面および他側面のそれぞれに上下方向に間隔をあけて複数設けられているものが好ましい。このような構成によれば、第三部材の上下方向が規制されないので、取付作業が容易になる。
【0013】
本発明の天井下地固定金具においては、前記第二部材は、前記第三部材にボルトにて固定されており、前記第二部材の第三部材取付部および前記第三部材の第二部材取付部の少なくともいずれか一方は、上下方向に沿って延在する長孔にて構成されているものが好ましい。このような構成によれば、容易な構成で、第二部材の取付位置高さを調整できる。
【0014】
また、本発明の天井下地固定金具においては、前記第二部材は、前記天井下地を係止するためのスリットを備えているものが好ましい。このような構成によれば、天井下地をスリットに挿入するだけで、容易に係止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る天井下地固定金具によれば、天井下地の支持位置の高さ調整可能寸法を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具を用いた天井構造を示した側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具を用いて天井下地を支持構造体に固定した状態を示した背面図である。
図3】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具を用いて天井下地を支持構造体に固定した状態を示した側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具を用いて天井下地を支持構造体に固定した状態を示した斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具を用いて天井下地を支持構造体に固定する前の状態を示した分解斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具の第一部材を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図である。
図7】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具の第二部材を示した図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図8】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具の第三部材を示した図であって、(a)は平面図、(b)は背面図、(c)は側面図である。
図9】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具を用いて天井下地を支持構造体に対して離間距離を大きくして固定した状態を示した斜視図である。
図10】第三部材の第一変形例を示した斜視図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る天井下地固定金具を用いて天井下地を支持構造体に対して平行に固定した状態を示した斜視図である。
図12】第三部材の第二変形例を示した斜視図である。
図13】本発明の実施形態に係る天井下地固定金具の天井下地および支持構造体に対する取付位置を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る天井下地固定金具について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態では、かかる天井下地固定金具を傾斜した天井に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る天井下地固定金具1は、支持構造体10に、天井下地20を直固定する。本実施形態では、天井下地固定金具1を支持構造体10に接合(たとえばビス止め)するとともに天井下地20を天井下地固定金具1に接合(たとえばビス止め)することで、天井下地20を支持構造体10に直固定している。なお、接合方法はビス止めに限定されるものではなく、釘止めや溶接等の他の接合方法であってもよい。
【0019】
支持構造体10は、梁などの建物構造体2から吊り下げられている。支持構造体10は、梁から下方に延在する複数の吊材11と、吊材11の下端部に取り付けられた第一の横架材12と、第一の横架材12の下端部に取り付けられた第二の横架材13とを備えている。第一の横架材12は、複数の吊材11,11・・の下部にブラケット14を介して架け渡されている。第二の横架材13は、平面視で第一の横架材12に直交しており、複数の第一の横架材12の下部に架け渡されている。第二の横架材13は、図示しないブラケットを介して第一の横架材12に固定されている。第二の横架材13は、たとえばリップ付溝型鋼(C形チャンネル)にて構成されている。
【0020】
天井下地20は、たとえば複数の野縁21と、野縁21に対して平面視で直交して配置された複数の野縁受け22とを備えている。野縁21と野縁受け22は、格子状に配列されている。野縁21は、天井板3を保持する部材であって、天井板3の上側に配置されている。野縁21は、たとえば断面C字状のリップ溝形形状を呈しており、ウェブが下側になるように配置されている。野縁21の下面には、天井板3が当接していて、ビス(図示せず)などの固定治具によって天井板3が固定されている。
【0021】
野縁受け22は、野縁21を保持する部材であって、野縁21の上側に配置されている。野縁受け22は、たとえば断面溝形のチャンネル材にて構成されており、一対のフランジ22a,22bが上下に位置してウェブ22cが立った状態で配置されている(図4参照)。野縁受け22は、下側のフランジ22bが野縁21の上面のリップ部21aに当接した状態で、野縁21と連結されている。野縁21と野縁受け22とは、公知の連結金具(図示せず)を介して連結されている。
【0022】
図2および図3に示すように、天井下地固定金具1は、支持構造体10に係止される第一部材30と、天井下地20を係止する第二部材50と、第一部材30と第二部材50とを連結する第三部材70とを備えている。
【0023】
第一部材30は、支持構造体10の第二の横架材13に係止される。図4乃至図6にも示すように、第一部材30は、スチール製の板材を断面門型形状に折曲げ加工して形成されている。第一部材30は、上板部31aと第一折曲部31bと第二折曲部31cとを備えている。第一部材30は、支持構造体固定部31を備えている。支持構造体固定部31は、天井下地固定金具1を第二の横架材13に掛け止めるとともにビス止めするための部位である。支持構造体固定部31は、上板部31aと第一折曲部31bと第二折曲部31cとで構成されている。
【0024】
上板部31aは、第二の横架材13の上側フランジ13a上に載置される。上板部31aは、第二の横架材13の上側フランジ13aに沿って配置され、上側フランジ13aを覆う。上板部31aは、天井下地固定金具1を掛け止める部分を構成する。
【0025】
第一折曲部31bは、上板部31aの一端側から下方に向かって直角に折曲している。第一折曲部31bは、第二の横架材13のリップ13b側に配置されて、リップ13bの表面に当接している。第一折曲部31bの下端部は、第二の横架材13の下端よりも下方に延在している。第一折曲部31bの下端部には、ボルト挿通孔33(図5および図6参照)が形成されている。ボルト挿通孔33は、第二の横架材13の下端よりも下方に形成されている。
【0026】
第二折曲部31cは、上板部31aの他端側から下方に向かって直角に折曲している。第二折曲部31cは、第二の横架材13の背面13c側に配置されて、背面13cの表面に当接している。第二折曲部31cの下端部は、第二の横架材13の下端よりも下方に延在し、第二折曲部31cの下端は、第一折曲部31bの下端と同じ高さになっている。第二折曲部31cには、天井下地固定金具1を第二の横架材13に固定するビスV1用のビス孔34が形成されている。ビス孔34は、第二の横架材13の背面13cに当接する位置で、上下二段に左右二つずつの合計4箇所に形成されている。このビス孔34の周囲が第二の横架材13に接合する(支持構造体10に接合する)ための接合部となる。なお、第一折曲部31bにも、ビス孔34と同軸位置にビス孔37が形成されている。これによって、第一折曲部31bを、第二の横架材13の背面13cの表面に当接させてビス止めすることができる。
【0027】
第二折曲部31cの下端部には、ボルト螺合孔35が形成されている。ボルト螺合孔35は、ネジ孔にて構成されていて、第一折曲部31bのボルト挿通孔33と同軸位置に形成されている。ボルト挿通孔33およびボルト螺合孔35には、第二の横架材13の下方を通過する開き防止用ボルトB1(図2乃至図5参照)が挿通される。開き防止用ボルトB1は、第一折曲部31bの下端部と第二折曲部31cの下端部との間に掛け渡され、開き防止用ボルトB1の先端部は、第三部材70側に突出する。開き防止用ボルトB1は、第一折曲部31bと第二折曲部31cとの距離を一定に保つことで、各折曲部31b,31c同士が開くのを防止している。また、開き防止用ボルトB1は、上板部31aと第一折曲部31bと第二折曲部31cとで第二の横架材13を囲っているので、天井下地固定金具1が第二の横架材13から外れるのを防止する機能も備えている。
【0028】
第二折曲部31cの下端部の水平方向一端部には、第一折曲部31bから離間する方向に延在する突部38が形成されている。突部38は、第二折曲部31cの下端部を直角に折り曲げることで形成されている。突部38は、第三部材70の側面に当接することで、第一部材30の第三部材70に対する水平位置を規制する位置決めガイドの役目を果たす。
【0029】
第二部材50は、野縁受け22を係止した状態で第三部材70に固定される。図2乃至図5および図7に示すように、第二部材50は、スチール製の板材を折曲げ加工して形成されている。第二部材50は、平面視で断面コ字状を呈していて、背面部51と一対の側面部52,52とを備えている。第二部材50は、天井下地20を支持するための天井下地固定部58と、第三部材70の第二部材取付部72に取り付けられる第三部材取付部57とを備えている。
【0030】
背面部51は、第三部材70に当接する部分であって、縦長の矩形形状を呈している。背面部51には、ボルト挿通孔53が形成されている。ボルト挿通孔53は、縦方向に延在する長孔にて構成されている。ボルト挿通孔53には、第二部材50を第三部材70に固定するためのボルトB2が挿通する。ボルト挿通孔53が、第三部材取付部57となっている。このようにボルトB2が長孔に挿通されるので、第二部材50は、第三部材70に対して取付高さが調整可能となっている。固定するボルトB2は1本であり、第二部材50は、第三部材70に対して傾斜した状態で固定することも可能となっている。ボルト挿通孔53の下方には、ビス孔54が形成されている。ビス孔54には、第二部材50から第三部材70に向かって打たれるビスV2が挿通される。ビスV2は、第三部材70に対する第二部材50の角度調整を行った後に打たれる。
【0031】
背面部51の上端には、側面部52と同じ方向に折れ曲がる折曲部55が設けられている。折曲部55は、背面部51を補強するリブの役目を果たす。
【0032】
側面部52は、背面部51の幅方向両端からそれぞれ直角に折り曲げられている。一対の側面部52,52は、同じ形状である。側面部52は、背面部51の下端よりも下方に延在している。側面部52には、野縁受け22を係止するためのスリット56が形成されている。スリット56は、背面部51の下端の下側位置に形成されている。スリット56は、野縁受け22の上側のフランジ22aの断面形状と略同じ切込断面を有していて、フランジ22aが挿入可能となっている。スリット56は水平方向に延在していて、内部にフランジ22aが挿入されることで、野縁受け22が第二部材50に係止される。スリット56が、天井下地固定部58となっている。第二部材50が第三部材70に取り付けられると、野縁受け22は、第二部材50と第三部材70の他側面74とで挟まれる。これによって野縁受け22は、スリット56の抜け出し方向に移動できない。第三部材70の他側面74が、野縁受け22(天井下地)のスリット56からの抜け防止部となっている。
【0033】
第三部材70は、第一部材30と第二部材50とを連結する部材である。図2乃至図5および図8に示すように、第三部材70は、スチール製の板材を折り曲げ加工して形成されており、断面L字形状の長尺材にて構成されている。第三部材70は、第一部材30と接合するための第一部材取付部71と、第二部材50と接合するための第二部材取付部72とを備えている。
【0034】
第一部材取付部71は、第三部材70の直交する二つの側面のうち、一方の側面73(以下「一側面73」という)に設けられている。第一部材取付部71は、第一部材30の第二折曲部31cの下端部から突出した開き防止用ボルトB1の先端部が挿通するボルト挿通孔75にて構成されている。ボルト挿通孔75は、複数設けられており、上下方向に所定間隔をあけて配置されている。第一部材30のボルト螺合孔35から突出した開き防止用ボルトB1の先端部は、ボルト挿通孔75を通過している。これによって、第三部材70が開き防止用ボルトB1の先端部に係止され、第三部材70が仮固定される。開き防止用ボルトB1の先端部が挿通されるボルト挿通孔75を変えることによって、第一部材30に対する第三部材70の取付高さを調整することができる。なお、開き防止用ボルトB1の先端部にナットを螺合させ、一側面73をナットと第二折曲部31cとで挟持することで、第一部材30を第三部材70に接合するようにしてもよい。
【0035】
一側面73の左右幅方向両端部には、ビス孔76が上下方向に所定間隔をあけて複数設けられている。ビス孔76には、第二折曲部31cを第二の横架材13に固定するビスV1が挿通される。ビス孔76は、第二折曲部31cのビス孔34と同軸になるように配置されている。ボルト挿通孔75と四つのビス孔76,76・・との位置関係は、第一部材30のボルト挿通孔33とビス孔37,37・・との位置関係、およびボルト螺合孔35とビス孔34,34・・との位置関係と同等である。第三部材70のボルト挿通孔75と四つのビス孔76,76・・の組み合わせは、上下方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。第三部材70が開き防止用ボルトB1の先端部に係止されて仮固定された状態で、ビスV1を、ビス孔76,34および第二の横架材13の背面13cに打ち込むことで、第三部材70が第一部材30に固定される。
【0036】
第二部材取付部72は、第三部材70の直交する二つの側面のうち、他方の側面74(以下「他側面74」という)に設けられている。第二部材取付部72は、第二部材50のボルト挿通孔53に挿通されたボルトB2の先端部が螺合するボルト螺合孔77にて構成されている。ボルトB2の先端部をボルト螺合孔77に螺合させ、他側面74とボルトB2の頭部で、第三部材70の背面部51を挟持することで、第二部材50が第三部材70を接合している。
【0037】
他側面74の下端部には、野縁受け22を天井下地固定金具1に固定するビスV3用のビス孔78が形成されている。ビス孔78は、野縁受け22のウェブ22cに当接する位置(野縁受け22のスリット56からの抜け防止部の位置)で、左右二つの2箇所に形成されている。これによって、第三部材70の他側面74を、野縁受け22のウェブ22cに当接させてビス止めすることができる。
【0038】
次に、前記構成の天井下地固定金具1を用いて天井下地20を取り付ける手順を説明しながら作用効果を説明する。
【0039】
天井下地20を設置するに際しては、まず、第一部材30を上方から下ろして、第二の横架材13の所定位置に係止する。その後、開き防止用ボルトB1を取り付けて、第一部材30が落下しない状態とする。この状態で、第一部材30は、第二の横架材13の長手方向にスライド可能である。
【0040】
次に、第三部材70を第一部材30に取り付ける。このとき、第三部材70が上下方向に長尺であり、第一部材取付部71が上下方向に間隔をあけて複数設けられているので、高さ調整の可能寸法を大幅に大きくすることができる。具体的には、第三部材70の高さ調整可能寸法は、上端の第一部材取付部71と下端の第一部材取付部71との距離になるので、非常に大きい。例えば、図9に示すように、第三部材70の最上部の第一部材取付部71に第一部材30を接合すると、第二部材50を大幅に下方に下げることができるので、野縁受け22と第二の横架材13との離間距離が大きくなり、第二の横架材13に対する野縁受け22の取付高さを低くできる。また、第一部材30に対する第三部材70の取付高さは、第一部材取付部71の設置個所数から選択することができる。さらに、かかる天井下地固定金具1によれば、第三部材70の長さを長く設定することで、高さ調整可能寸法をさらに大きくできる。
【0041】
そして、第二部材50のスリット56に野縁受け22を係止した状態で、第二部材50を第三部材70へ当接させて、第二部材50の高さ調整を行った後に、ボルトB2を仮締めする。これによって第二部材50および野縁受け22が仮固定される。このとき、野縁受け22は、上側のフランジ22aがスリット56に挿入されるとともに、ウェブ22cが第三部材70の他側面74の下端部に当接している。したがって、野縁受け22は、第三部材70と第二部材50とで挟持されることになるので、天井下地固定金具1から落下することはない。
【0042】
第二部材50を仮固定した後に、第二部材50の取付高さを微調整する。これによって、野縁受け22の支持位置が細かく調整されるので、野縁受け22を精度高く設置することができる。このような第二部材50の取付高さの調整は、天井下地20が仮固定された状態、すなわち野縁受け22が周りの天井下地固定金具1に支持されている状態で行われるので、容易に行うことができる。
【0043】
第二部材50の取付高さの調整(野縁受け22の支持位置の調整)が完了したならば、ビスV1で第一部材30および第三部材70を第二の横架材13に固定するとともに、ビスV3で野縁受け22を第三部材70に固定する。さらに、ビスV2で第二部材50を第三部材70に固定する。これによって、野縁受け22が第三部材70および第一部材30を介して、第二の横架材13に一体化されることとなり、天井下地20が支持構造体10に直固定される。
【0044】
その後、野縁受け22に野縁21を取り付け、野縁21に天井板3を取り付ける。野縁受け22の位置精度が高いので、野縁21と天井板3の位置精度も高くなる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る天井下地固定金具1によれば、第二部材50と第三部材70との高さ調整可能な構成の他に、第三部材70が上下方向に長尺であり、第一部材取付部71が上下方向に間隔をあけて複数設けられているので、高さ調整の可能寸法を大幅に大きくすることができる。また、本実施形態では、第一部材30と第三部材70との間で、取付高さを大きく調整し、第二部材50と第三部材70との間で、取付高さを細かく調整できる。したがって、取付高さの調整可能寸法を大きくしつつ、取付高さの精度を高めることができる。
【0046】
次に、図10を参照しながら、第一変形例に係る第三部材70aについて説明する。前記実施形態では、第三部材70の第一部材取付部71は一側面73に設けられ、第二部材取付部72は他側面74に設けられているが、第一変形例に係る第三部材70aは、第一部材取付部71は一側面73に設けられ、第二部材取付部72は一側面73および他側面74の両面で上下両方に設けられている。第一変形例の第三部材70aは、上下方向に対称形状となっており、上下反転させても使用可能となっている。
【0047】
一側面73には、第二の横架材13に打ち込まれるビスV1用のビス孔76と、第一部材取付部71となるボルト挿通孔75とが上下方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。ビス孔76は、一側面73の上端縁から下端縁の全長に渡って設けられている。一側面73の上端部と下端部においては、端から四列めのビス孔76と五列めのビス孔76との間に、ボルト挿通孔75が設けられている(四列めのビス孔76部分まではボルト挿通孔75は設けられていない)。上端のボルト挿通孔75と下端のボルト挿通孔75との間には、ボルト挿通孔75がビス孔76と同じ間隔で並列されている。上端のボルト挿通孔75の上方と、下端のボルト挿通孔75の下方には、第二部材取付部72となるボルト螺合孔77がそれぞれ設けられている。ボルト螺合孔77は、一側面73の上端部と下端部において、端から三列めのビス孔76と四列めのビス孔76との間に設けられている。ボルト螺合孔77に対しては、野縁受け22に打ち込まれるビスV3用のビス孔78が一側面73の上端部と下端部の両方に組み合わされるが、本変形例では、端部のビス孔76とビス孔78が同じ位置になるように、ボルト挿通孔75とボルト螺合孔77の一が設定されている。したがって、ビス孔76とビス孔78とは共用化されている。
【0048】
他側面74には、第二部材取付部72となるボルト螺合孔77とビス孔78が設けられており、ボルト挿通孔75とビス孔76は設けられていない。ボルト螺合孔77とビス孔78とは、他側面74の上端部と下端部の両方にそれぞれ設けられている。他側面74のボルト螺合孔77は、一側面73のボルト螺合孔77と同じ高さに設けられ、他側面74のビス孔78は、一側面73のビス孔78と同じ高さに設けられている。
【0049】
以上のような構成の第三部材70aによれば、第二部材取付部72が第一部材取付部71と同じ面(一側面73)に設けられているので、図11に示すように、第一部材30と第二部材50の両方を一側面73に取り付けることで、野縁受け22を第二の横架材13に対して平行になるように配置することができる。野縁受け22を第二の横架材13に対して平行に配置した場合においても、第一部材取付部71を適宜選択することで、第一部材30に対する第三部材70aの取付高さを調整することができる。
【0050】
また、第二部材取付部72は、一側面73と他側面74の両方に設けられているので、前記実施形態のように、野縁受け22を第二の横架材13に対して、平面視で直交するように配置することもできる。さらに、第三部材70aの天地が規制されないので、施工が行い易くなる。
【0051】
次に、図12を参照しながら、第二変形例に係る第三部材70bについて説明する。第二変形例に係る第三部材70bは、第一部材取付部71は一側面73および他側面74の両面に設けられるとともに、第二部材取付部72は一側面73および他側面74の両面で上下両方に設けられている。第二変形例の第三部材70bは、上下方向に対称形状となっており、上下反転させても使用可能となっている。
【0052】
第二変形例の第三部材70bの一側面73には、ボルト挿通孔75、ビス孔76、ボルト螺合孔77およびビス孔78が設けられている。一側面73の各部の配置形状は、第一変形例の一側面73の各部と同様の配置形状となっている。第二変形例の第三部材70bの他側面74には、ボルト挿通孔75、ビス孔76、ボルト螺合孔77およびビス孔78が設けられている。他側面74の各部の配置形状は、一側面73の各部の同様の配置形状となっている。
【0053】
以上のような構成の第三部材70bによれば、第一部材取付部71と第二部材取付部72が一側面73と他側面74の両面に設けられているので、一側面73と他側面74のいずれの面にも、第一部材30を取り付けることができる。したがって、図13に示すように、平面視で直交する野縁受け22と第二の横架材13とのいずれの交差入隅部でも、第三部材70bを設置することができる。これによって、天井裏の設備機器や配管と干渉しないように、天井下地固定金具1の設置位置を適宜設定することができる。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態についてそれぞれ説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、材質、形状や大きさなど適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、第三部材7の第二部材取付部72をネジ孔(ボルト螺合孔77)とするとともに、第二部材50のボルト挿通孔53を長孔としているが、これに限定されるものではない。第三部材30の第二部材取付部72を長孔とするとともに、第二部材50のボルト挿通孔53をネジ孔としてもよい。また、ネジ孔を単なる貫通孔として、ボルトB2の先端部にナットを螺合することで、締め付ける構成としてもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、天井下地固定金具1は野縁受け22を固定しているが、これに限定されるものではない。天井下地20は、野縁21および野縁受け22以外のもの、たとえばシステム天井のTバーなどの下地材であってもよい。
【0056】
さらに、第一変形例および第二変形例の第三部材70a,70bでは、第二部材取付部72は、上端部と下端部の両方に設けられているが、下端部のみに設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 天井下地固定金具
10 支持構造体
13 第二の横架材
20 天井下地
21 野縁
30 第一部材
31 支持構造体固定部
50 第二部材
53 ボルト挿通孔(長孔)
56 スリット
57 第三部材取付部
58 天井下地固定部
70 第三部材
71 第一部材取付部
72 第二部材取付部
73 一側面
74 他側面
75 ボルト挿通孔
77 ボルト螺合孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13