(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】睡眠状態計測システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20240201BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20240201BHJP
A61B 7/04 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/08
A61B7/04 Y
(21)【出願番号】P 2020016209
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000101204
【氏名又は名称】株式会社oneA
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 優
(72)【発明者】
【氏名】大越 健史
(72)【発明者】
【氏名】葛原 弘安
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕史
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-201946(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221745(WO,A1)
【文献】特開2019-150585(JP,A)
【文献】特開2007-202939(JP,A)
【文献】特開2019-217233(JP,A)
【文献】特開2019-051129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
A61B 5/08-5/097
H04R 1/00
A61B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者への装着手段と、当該被験者の睡眠時の呼吸音を計測する呼吸音計測手段とを有する呼吸音計測装置と、
前記呼吸音計測装置と通信する通信手段及び表示手段を有する端末装置とを備え、
前記端末装置は、前記呼吸音計測手段の計測結果を受信し、当該受信した計測結果を基に被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間の情報を数値またはグラフの少なくとも一方の形式で前記表示手段に表示し
、
前記呼吸音計測装置は、被験者に振動を与えるためのバイブレータを備え、
前記端末装置は、前記バイブレータを振動させる振動モードにおける被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間の情報を含む第1睡眠情報と、前記バイブレータを振動させない無振動モードにおける被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間の情報を含む第2睡眠情報とを前記表示手段に並べて表示する、睡眠状態計測システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の睡眠状態計測システムにおいて、
前記呼吸音計測装置または前記端末装置には、前記呼吸音計測手段で計測された呼吸音の音量に基づいて、被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間を演算する演算手段を備え、
前記演算手段は、前記呼吸音の音量が所定の閾値未満の時間が所定時間未満の場合に、その期間を被験者の無呼吸期間とする一方で、前記呼吸音の音量が所定の閾値未満の時間が所定時間以上継続した場合、その期間を無呼吸期間としない、睡眠状態計測システム。
【請求項3】
請求項
2に記載の睡眠状態計測システムにおいて、
前記呼吸音計測装置及び前記端末装置の少なくとも一方には、被験者の睡眠時の呼吸音を録音する録音手段を備え、
前記演算手段が、前記呼吸音計測手段で計測された呼吸音の音量が所定の閾値以上の期間を前記いびき期間とし、当該いびき期間の録音データを切り出し、
前記端末装置に、前記切り出された録音データが保存される、睡眠状態計測システム。
【請求項4】
被験者への装着手段と、当該被験者の睡眠時の呼吸音を計測する呼吸音計測手段とを有する呼吸音計測装置と、
前記呼吸音計測装置と通信する通信手段及び表示手段を有する端末装置とを備え、
前記端末装置は、前記呼吸音計測手段の計測結果を受信し、当該受信した計測結果を基に被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間の情報を数値またはグラフの少なくとも一方の形式で前記表示手段に表示し、
前記呼吸音計測装置は、被験者の頸部に振動を与えるバイブレータを備え、
前記バイブレータは、被験者のいびき期間及び無呼吸期間の少なくとも一方において振動するように構成され、かつ、被験者の睡眠状態の計測開始から所定時間は振動を停止させる振動停止モードの設定ができるように構成されている、睡眠状態計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の睡眠状態を計測する睡眠状態計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠中のいびきにより周囲の人に迷惑がかかったり、いびきから無呼吸状態となり閉塞性無呼吸症候群を併発するおそれがある。そこで、いびきや睡眠時無呼吸状態を計測する計測装置が望まれている。
【0003】
特許文献1には、装着者の睡眠時に計測された加速度の所定周波数帯の波の強度に基づいて装着者のいびきの傾向を決定し、そのいびきの傾向に基づいて睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクを算出する睡眠時いびき解析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、いびきの傾向に基づいて睡眠時無呼吸症候群が発症するリスクが表示されるのにとどまり、改善の余地があった。
【0006】
ここに開示された発明は、睡眠状態計測システムにおいて、被験者が、自己の睡眠状態をより具体的に把握しやすい表示をおこなうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る睡眠状態計測システムは、被験者への装着手段と、当該被験者の睡眠時の呼吸音を計測する呼吸音計測手段とを有する呼吸音計測装置と、前記呼吸音計測装置と通信する通信手段及び表示手段を有する端末装置とを備え、前記端末装置は、前記呼吸音計測手段の計測結果を受信し、当該受信した計測結果を基に被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間の情報を数値またはグラフの少なくとも一方の形式で前記表示手段に表示する。
【0008】
本態様によると、端末装置に、被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間の情報が、数値またはグラフの少なくとも一方の形式で表示されるので、被験者にとって、自己の睡眠状態をより具体的に把握しやすい表示にすることができる。具体的に、被験者は、各睡眠状態の期間を把握することにより、自己の体調のような内部要因、や周囲の環境状態等の外部要因と、睡眠状態との相関を取ることができるようになる。これにより、被験者が睡眠状態の改善のために有効な対策を検討しやすくなる。
【0009】
前記呼吸音計測装置は、被験者に振動を与えるためのバイブレータを備え、前記端末装置は、前記バイブレータを振動させる振動モードにおける被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間の情報を含む第1睡眠情報と、前記バイブレータを振動させない無振動モードにおける被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間の情報を含む第2睡眠情報とを前記表示手段に並べて表示する。
【0010】
このような表示形態をとることにより、被験者が、振動モードにおける睡眠状態と、無振動モードにおける睡眠状態とを容易に比較することができるようになる。また、振動モードを使用することによる効果を客観的に把握することができるようになる。
【0011】
前記呼吸音計測装置または前記端末装置には、前記呼吸音計測手段で計測された呼吸音の音量に基づいて、被験者のいびき期間、通常呼吸期間及び無呼吸期間を演算する演算手段を備え、前記演算手段は、前記呼吸音の音量が所定の閾値未満の時間が所定時間未満の場合に、その期間を被験者の無呼吸期間とする一方で、前記呼吸音の音量が所定の閾値未満の時間が所定時間以上継続した場合、その期間を無呼吸期間としない、としてもよい。
【0012】
このような構成にすることで、意図せずに相対的に長い時間にわたって装置が浮いているような場合の計測結果を無呼吸期間から排除することができる。これにより、無呼吸期間の計測精度が下がるのを防ぐことができる。
【0013】
前記呼吸音計測装置及び前記端末装置の少なくとも一方には、被験者の睡眠時の呼吸音を録音する録音手段を備え、前記演算手段が、前記呼吸音計測手段で計測された呼吸音の音量が所定の閾値以上の期間を前記いびき期間とし、当該いびき期間の録音データを切り出し、前記端末装置に、前記切り出された録音データが保存される、としてもよい。
【0014】
このように、録音機能を備えることで、被験者が具体的にどのようないびきをかいているかを把握することができる。また、いびき期間のデータを切り出すので、録音に使用する記憶領域を節約することができる。
【0015】
前記呼吸音計測装置は、被験者の頸部に振動を与えるバイブレータを備え、前記バイブレータは、被験者のいびき期間及び無呼吸期間の少なくとも一方において振動するように構成され、かつ、被験者の睡眠状態の計測開始から所定時間は振動を停止させる振動停止モードの設定ができるように構成されていてもよい。
【0016】
これにより、就寝開始から相対的に短い時間でバイブレータが振動し、被験者が寝付けなくなることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、被験者が、自己の睡眠状態をより具体的に把握しやすい表示をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図6】睡眠状態計測システムの動作の一例を示すフローチャート
【
図7A】睡眠状態計測アプリのホーム画面の一例を示した図
【
図7B】睡眠状態計測アプリのグラフ画面の一例を示した図
【
図7C】睡眠状態計測アプリの比較画面の一例を示した図
【
図7D】睡眠状態計測アプリの履歴画面の一例を示した図
【
図7E】睡眠状態計測アプリのグラフ画面の一例を示した図
【
図8A】呼吸音計測装置による呼吸音計測プロセスの一例を示すフローチャート
【
図8B】呼吸音計測装置による呼吸音計測プロセスの一例を示すフローチャート
【
図9】呼吸音計測装置の計測結果の一例を示す波形図
【
図10】睡眠状態計測システムの動作の他の例を示すフローチャート
【
図11】睡眠状態計測システムの動作の他の例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0020】
<睡眠状態計測システム>
図1に示すように、睡眠状態計測システムは、被験者の睡眠時の呼吸音を計測する呼吸音計測装置1と、呼吸音計測装置1と双方向通信が可能に構成された端末装置80とを備える。呼吸音計測装置1と端末装置80とは、有線接続や、Bluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した近距離無線で直接接続されてもよいし、インターネット回線21等のネットワークを介して接続されてもよい。
図1では、呼吸音計測装置1と端末装置80とがインターネット回線21を介して接続されている例を示している。また、
図1の例では、端末装置80は、インターネット回線21を介して外部のサーバ装置22及び他の端末装置23と接続されている。他の端末装置23は、特に限定されないが、例えば、タブレットPCや、スマートフォンである。ここでは、被験者が端末装置80(例えば、スマートフォン)と、他の端末装置(例えば、タブレットPC)との2台の端末装置を持っているものとする。端末装置80と端末装置23とが、互いに通信しあって双方のデータを共有するようにしてもよい。また、サーバ装置22が複数の端末装置80と通信を行い、複数の端末装置80から受信されたデータを管理したり、データの解析や評価をするようにしてもよい。
【0021】
-呼吸音計測装置-
呼吸音計測装置1は、被験者Pが、就寝前に、被験者頸部Pnに装着し、睡眠時における吸気・呼気の気流音(以下、単に呼吸音という)を計測するためのものである。具体的に、呼吸音計測装置1は、ネックバンド型の装置であり、被験者頸部の周方向に沿って装着可能に構成されている。
【0022】
以下の説明では、被験者Pの呼吸音計測装置1の装着状態を基準として、上下方向及び左右方向を定義する。また、被験者Pの正面(胸)側を前、背中側を後と定義する。また、呼吸音計測装置1の装着状態を基準として、「被験者側」を定義するものとする。後述するネックバンド10や計測部40等の説明に際して、被験者側を「内側」その反対側を「外側」として説明する場合がある。
【0023】
具体的には、
図2及び
図3に示すように、呼吸音計測装置1は、円弧状(例えば、略半円形状)に形成されたネックバンド10と、呼吸音を計測するための計測部40とが周知構造のヒンジ60で連結された構成を有する。ヒンジ60は、
図3の実線で示す展開位置と
図3に仮想線で示す折曲位置との間で、ネックバンド10に対して計測部40を回動できるように支持している。ネックバンド10は、装着手段の一例である。
【0024】
ネックバンド10は、例えば、被験者頸部Pnに沿うように円弧状(例えば、略C字状)に形成される。ネックバンド10は、被験者Pにより、開口部分を両側に広げられた後、被験者頸部Pnの後ろ側から被験者頸部Pnに向かって装着され、被験者頸部Pnを周方向の外側から挟み込むように構成されている(
図3参照)。
【0025】
計測部40は、内側に収容空間が形成された収容ケース41を有する。収容空間には、加速度センサ51、マイクロフォン52、フォトセンサ53、バイブレータ50、モニタランプ55、通信モジュール56、マイクロプロセッサ等の電子部品が実装された基板(図示省略)と、電子部品に電源を供給するバッテリ59とが収容される。マイクロプロセッサは、例えば、CPUとメモリ等を有している。メモリには、CPUで実行されるプログラムが格納されたり、マイクロフォン52で取得された呼吸音のデータが保存される。CPUは、例えば、メモリに格納されたプログラムに基づいて呼吸音計測装置1の動作を制御する。CPUは、呼吸音計測装置1の全体動作を制御する制御部57の一例である。メモリは、マイクロフォン52で取得された呼吸音データを保存するための記憶部58の一例である。
【0026】
図4には、計測部40のブロック構成図を示している。制御部57は、マイクロフォン52で取得された呼吸音を処理する呼吸音処理部571と、バイブレータ50の振動を制御するバイブレータ制御部572とを備える。制御部57の動作については、後ほど説明する。
【0027】
計測部40には、収容ケース41の内面から被験者側に向かって突設された当接部70が設けられている。当接部70の先端には、被験者の呼吸音を導入するための導音口71が形成され、その導音口を囲むようにリング状の当接面72が形成されている。当接面72は、呼吸音計測装置1が装着された際に、被験者頸部Pnに当接する。導音口71は、計測部40に内蔵されたマイクロフォン52(
図2では図示省略)に向かって内径が次第に狭まるテーパー状になっている。尚、当接部70は、計測部40に出没自在に支持され、計測部40に取り付けられたばね等の弾性部材78により突出方向に付勢されていてもよい。当接部70及びマイクロフォン52は、呼吸音取得手段の一例である。
【0028】
収容ケース41の内面には、周方向及び上下の略中央位置に矩形状の開口42が形成されている。開口42は、フォトセンサ53の計測光を通過させるための計測窓として用いられる。
【0029】
収容ケース41の側面(上面)には、押しボタン式の電源ボタン54と、モニタランプ55とが設けられる。被験者は、電源ボタン54を押すことで、呼吸音計測装置1の電源のオン/オフができるようになっている。モニタランプ55は、呼吸音計測装置1の電源のオン/オフ状態や通信状態、充電状態等を表示する。また、図示しないが、収容ケース41の側面に、外部機器との通信及びバッテリへの充電をするためのコネクタを設けてもよい。
【0030】
加速度センサ51は、被験者の体位/体動を検出するためのものであり、周知構造である。
【0031】
バイブレータ50は、制御部57の制御を受けて振動する。具体的な動作は、後ほど説明するが、例えば、被験者Pが無呼吸状態のときや、被験者Pのいびきが大きいときに、被験者頸部Pnに振動を伝えて姿勢を変化させる。図示は省略するが、バイブレータ50は、振動を被験者頸部Pnに伝えやすくする観点から、収容ケース41と密着するように取り付けられる。
【0032】
通信モジュール56は、周知構造の無線/有線のモジュールであって、後述する端末装置80の通信モジュール84との間で双方向通信ができるように構成されている。通信モジュール84は、通信手段の一例である。
【0033】
図5は、端末装置80の構成例を示すブロック図である。なお、
図5では、本実施形態のシステムとしての機能を発揮するための構成を示しており、端末装置に関わるすべての機能を示しているわけではない。前述の呼吸音計測装置1についても同様である。
【0034】
-端末装置-
端末装置80は、例えば、タッチパネル式のスマートフォンやタブレットPCである。
図5に示すように、端末装置80は、タッチパネル81と、マイクロフォン82と、スピーカー83と、通信モジュール84と、制御ユニット90とを備える。制御ユニット90は、記憶部91と、制御部92とを備える。制御部92は、睡眠情報演算部921と、表示制御部922とを備える。
【0035】
タッチパネル81は、被験者のタッチ操作を受け付ける操作手段としての機能と、後述する睡眠状態計測アプリのコンテンツを表示画面に表示させる表示手段としての機能を有する。
【0036】
マイクロフォン82は、いびき音を含む被験者の音声データを取得する。なお、睡眠状態計測アプリのコンテンツとして、いびき音の録音が含まれる場合、マイクロフォン82を介して被験者のいびき音が取得され、記憶部91に保存される。
【0037】
スピーカー83は、制御ユニット90の制御を受けて、各種音声を再生する。例えば、端末装置80に音声認識による音声操作機能が実装されている場合、音声操作による結果を音声で再生したりすることができる。
【0038】
通信モジュール84は、周知構造の無線/有線のモジュールであって、呼吸音計測装置1の通信モジュール56との間で双方向通信ができるように構成されている。また、前述のとおり、通信モジュール84はインターネット回線21に接続され、インターネット回線21を介して、外部のサーバ装置22及び他の端末装置23と接続される。
【0039】
<呼吸音の計測及び表示>
図6は、睡眠状態計測システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図6において、左側(ステップS11~S15)は呼吸音計測装置1の動作フローを示し、右側は端末装置80の動作フローを示す。なお、端末装置80には、睡眠状態計測アプリがインストールされているものとする。睡眠状態計測アプリは、例えば、ネットワークを介してダウンロードされる。
【0040】
ステップS11において、呼吸音計測装置1が電源オフの状態から電源ボタン54が長押しされると、呼吸音計測装置1が起動される。次のステップS12において、呼吸音計測装置1では、バッテリ59の残量があるかどうかが確認され、バッテリ59の残量が十分でない場合には、呼吸音計測装置1の電源がオフされ、処理を終了する。一方で、バッテリ59の残量が十分残っている場合、動作は継続される。
【0041】
ステップS41において、端末装置80の睡眠状態計測アプリが起動されると、端末装置80には、睡眠状態計測アプリのホーム画面が表示される。
【0042】
図7Aには、タッチパネル81の表示画面800に、睡眠状態計測アプリのホーム画面が表示される画像の一例を示している。
【0043】
-ホーム画面-
図7Aに示すように、ホーム画面では、表示画面800の下端部に、帯状のメニューバー810が配置され、メニューバーには、選択可能なメニューに対応するアイコンが配置されている。
図7Aの例では、図面左側から順に、(1)ホーム画面にもどるための「ホームアイコン」、(2)グラフを表示させるための「グラフアイコン」、(3)計測データを比較するための「比較アイコン」、(4)計測履歴を確認するための「履歴アイコン」、及び、(5)各種設定をする設定画面に進むための「設定アイコン」、が配置されている。
【0044】
ホーム画面の中央領域820(メニューバー以外の領域)には、被験者の睡眠状態(計測結果)を示す円グラフ824が表示される。表示される計測結果は、特に限定されないが、
図7Aの例では、直近の計測データについて表示させた例を示している。本実施形態では、睡眠時間(円グラフ824の中央に記載)を「快眠」、「いびき」、「無呼吸」及び「不明」の4つに分類して、グラフとして表示させた例を示す。「快眠」とは、通常の睡眠状態であることを示す。「いびき」とは、いびきをかいている状態を示し、具体的には、呼吸音計測装置1で計測された呼吸音が所定の第1閾値Vt1以上の場合が該当する。「無呼吸」とは、睡眠時無呼吸状態を示し、具体的には、呼吸音計測装置1で計測された呼吸音が所定の第2閾値Vt2未満の場合が該当する。「不明」とは、制御ユニット90において、正確な呼吸音計測がなされていないと判断された期間を示す。「不明」の判断基準については、後ほど説明する。
【0045】
また、ホーム画面において、円グラフの周囲を囲むリング状に、睡眠レベルについて示す睡眠レベル情報を表示させている(
図7Aのドットハッチング領域825参照)。睡眠レベル情報の表示は、特に限定されないが、例えば、睡眠状態について複数段階のランク分けをし、そのランクに応じた色を表示させる。例えば、(1)無呼吸状態が1時間に5回以上ある場合、睡眠レベルが最も低いことを示す赤いリングを表示させ、(2)いびきをかいている期間が睡眠時間に対して所定の割合以上であれば睡眠レベルが中程度であることを示す黄色いリングを表示させ、(3)赤色と黄色に該当しない場合において睡眠時間が所定以上であれば、睡眠レベルが高いことを示す緑色のリング、を表示させる。このように、表示画面800に睡眠計測データを表示させることによって、被験者がアプリの立ち上げ以外の操作なしに睡眠状態の計測結果(概要)が確認できるようになる。また、色によって睡眠レベルがわかるようにしているので、被験者が、面倒な計算をすることなく一目で睡眠レベルを把握することができるようになっている。
【0046】
図7Aでは、ホーム画面の中央領域に、上記の円グラフの他に、例えば、(1)呼吸音計測装置1のバッテリの残量情報821、(2)呼吸音計測装置1とのBluetooth接続状態(通信状態)を示す接続情報822、(3)呼吸音計測装置1から端末装置80にデータを取得させるためのデータ取得ボタン823、が表示された例を示す。
【0047】
-設定画面-
端末装置80側において、睡眠状態計測アプリが起動されると、ステップS41では、被験者による各種設定が実行される。具体的には、被験者が「設定アイコン」をタップすると、各種設定を行うための設定画面が開かれる。具体的な図示は省略するが、例えば、設定画面では、呼吸音計測装置1の動作モードを設定することができる。呼吸音計測装置1の動作モードの種類は、特に限定されない。例えば、設定画面において、振動モードとして(1)呼吸音計測装置1が、いびきと判定したとき(以下、いびき判定時という)及び無呼吸と判定したとき(以下、無呼吸判定時という)に、バイブレータ50を振動させるいびき+無呼吸低減モード、(2)いびき判定時にのみバイブレータ50を振動させるいびき低減モード、(3)無呼吸判定時にのみバイブレータ50を振動させる無呼吸低減モード、(4)バイブレータ50を振動させないモニタリングモードの中から設定できるようにしてもよい。
【0048】
また、例えば、設定画面において、いびき検出感度(いびきの検出しやすさ)を設定できるようにしてもよいし、バイブレータ50の振動の強さを設定できるようにしてもよい。また、バイブレータ50を振動させ始めてから所定時間経過後に、所定期間バイブレータ50の振動を停止させる設定ができるようにしてもよい。また、呼吸音計測装置1による計測開始時間や計測終了時間の設定、いわゆるタイマー設定ができるようにしてもよい。なお、被験者が設定変更しない場合には、上記の設定処理はスルーされる。
【0049】
《通信の確立プロセス》
また、睡眠状態計測アプリが起動されると、端末装置80と呼吸音計測装置1との間で通信を確立するための処理(以下、通信確立処理という)が実行される。通信確立処理は、周知技術を採用する。なお、例えば、初めて呼吸音計測装置1を使用する場合に、設定画面において、端末装置80に通信対象となる呼吸音計測装置1を選択させ、登録できるようにしてもよい。そうすると、通信確立処理に必要な時間や処理が軽減される場合がある。
【0050】
端末装置80と呼吸音計測装置1とが通信可能状態になると、相互の時刻を同期させる時刻同期処理が実行される。時刻同期処理の方法は、特に限定されないが、例えば、端末装置80の時刻情報を、呼吸音計測装置1に送信し、呼吸音計測装置1がその時刻情報を自機のリアルタイムクロックに反映させる。このように、時刻同期処理を行うことで、計測データと表示データとの間の時刻ずれを防ぐことができる。また、端末装置80から呼吸音計測装置1に、上記の設定画面で設定された設定情報が送信される。
【0051】
呼吸音計測装置1は、時刻同期処理が終わると、端末装置80との間の通信を遮断し、計測モード(呼吸音計測)になり、通信モジュール56の電源をOFFにする。このように、データのやり取りがないときに通信モジュール56の電源をOFFすることで、バッテリ59を長持ちさせることができる。
【0052】
《呼吸音の計測プロセス》
その後、ステップS13において、呼吸音計測装置1では、呼吸音の計測処理が実行される。
図8A及び
図8Bは、
図6のステップS13の呼吸音の計測処理の制御プロセスについて一例を示したものである。
【0053】
図8Aに示すように、ステップS201では、端末装置80から受信した設定情報が反映される。設定情報は、例えば、あらかじめ記憶部58にデフォルト値が格納されており、制御部57は、記憶部58の設定情報のうち、変更されている情報の書き換えを行う。
【0054】
次のステップS202では、制御部57は、被験者が所定時間以内に呼吸音計測装置1を首に装着したかどうかを判定する。呼吸音計測装置1が被験者の首に装着されたか否かは、例えば、加速度センサ51やマイクロフォン52の計測結果に基づいて判定する。所定時間が経過しても呼吸音計測装置1の装着が確認できない場合(S202でNO)、制御部57は、呼吸音計測装置1の電源をオフにし、処理を終了する。装着確認のための所定時間は、特に限定されないが、例えば、数分程度である。
【0055】
制御部57において、呼吸音計測装置1の装着が確認されると(S202でYES)、呼吸音計測のためのタイマー設定を行う(ステップS203)。例えば、互いに異なる3つの時間t1,t2,t3(t1<t2<t3)が設定される。
【0056】
制御部57は、呼吸音計測装置1が被験者の首に装着されていることを再度確認するとともに(ステップS204)、電源ボタン54の長押しがされていないことを確認し(ステップS205)、呼吸音の計測工程に入る(ステップS206)。具体的に、制御部57は、マイクロフォン52から出力された音声データに基づいて被験者の呼吸音を計測する。被験者の呼吸音の計測は、計測終了となるまでの期間、継続して実行される。
【0057】
制御部57は、呼吸音の計測と並行して、所定時間t1毎に、加速度センサ51から得られた加速度データを基に、被験者の体位を検出する(ステップS210~S212)。
【0058】
図8Bに進み、制御部57の呼吸音処理部571では、呼吸音の計測と並行して、所定時間t2毎に、マイクロフォン52で取得された音声データ(呼吸音)の音量に基づいて、いびきの有無の判定をするとともに、睡眠時無呼吸の発生の有無を判定する(ステップS231~S233)。
【0059】
図9には、呼吸音計測装置1を用いて被験者の呼吸音を計測した結果の一例を示している。
図9の上段には、マイクロフォン52から取得された音声データの計測波形を示す。
図9の計測波形において、横軸は計測時刻であり、縦軸は呼吸音の音量である。また、
図9の中段は、呼吸音計測装置1において、呼吸音の音量を基に、睡眠状態を判定した結果を示している。
【0060】
具体的に、本実施形態では、
図9に示すように、呼吸音計測装置1において、マイクロフォン52から取得された呼吸音の音量が所定の第1閾値Vt1以上の場合に、いびきであると判定する。また、呼吸音計測装置1は、マイクロフォン52から取得された呼吸音の音量が第2閾値Vt2未満の場合に無呼吸であるものと判定し、第1閾値Vt1と第2閾値Vt2との間は通常の睡眠状態(快眠)であると判定する。
【0061】
図8Bに戻り、ステップS234において、制御部57のバイブレータ制御部572は、バイブレータの振動判定を行う。具体的には、バイブレータ制御部572は、端末装置80から送られてきた振動モードを確認する。そして、振動モードと、いびき及び無呼吸の判定結果とに基づいて、条件が合致する場合には、ステップS235に進み、バイブレータを振動させる。例えば、バイブレータ制御部572は、振動モードがいびき判定時に振動させる設定となっている場合に、いびきありと判定されたときには、バイブレータを振動させる。次のステップS236では、ステップS231の判定をするかどうかの判断の基となる時間t2をリセットする。
【0062】
次のステップS237~S239では、制御部57は、所定時間t3毎に、上記の判定結果や各センサでの計測データを保存する。保存先は、特に限定されないが、例えば、呼吸音計測装置1に内蔵されている記憶部58に保存される。また、所定時間t3毎に、通信モジュール56を介して、端末装置80等にデータを送信し、端末装置80内の記憶部に記憶させたり、端末装置80の表示画面800に表示させるようにしてもよい。
【0063】
そして、端末装置80では、上記のステップS204からステップS239の処理が繰り返し実行され、所定の計測時間が経過すると、ステップS240でYES判定となり、制御部57は、呼吸音計測装置1の電源をオフにし、処理を終了する。また、呼吸音の計測中に、呼吸音計測装置1が被験者の首から外れたり、電源ボタン54が長押しされた場合には、制御プロセスがステップS220に進み、それまでの判定結果や各センサーでの計測データが記憶部58に保存され、呼吸音計測装置1の電源がオフにされ、処理が終了となる。
【0064】
《計測データの取得プロセス》
図6に戻り、例えば、朝になって被験者がデータ取得ボタン823を押下すると、端末装置80では、計測データの取得処理が実行される。具体的には、前述の通信確立処理が実行され、端末装置80と呼吸音計測装置1とを通信可能状態にする。通信確立後、端末装置80から呼吸音計測装置1に計測データ(呼吸音データを含む)の要求が送信され(ステップS42)、呼吸音計測装置1から端末装置80に、マイクロフォン52で計測された計測データが送信される。ここで、計測データには、被験者の呼吸音データ、体位データ、電源ボタン54を操作した時刻のデータを含む時刻データ等が含まれる。
【0065】
呼吸音計測装置1は、計測データの送信が終わると、端末装置80にデータ送信終了を通知して、通信機能をOFFにする(ステップS15)。端末装置80では、計測データの取得が終わると、表示処理が実行される(ステップS43)。なお、被験者がデータ取得ボタン823の操作の有無にかかわらず、所定時刻に呼吸音計測装置1から端末装置80にデータが送信されるようにしてもよい。また、所定量のデータ蓄積に基づいて、呼吸音計測装置1から端末装置80にデータが送信されるようにしてもよい。
【0066】
《睡眠状態情報の表示プロセス》
ステップS43において、端末装置80の制御ユニット90では、睡眠情報演算部921が呼吸音計測装置1から受信した計測データに基づいて表示データを生成する。そして、表示制御部922が、睡眠情報演算部921で生成された表示データを表示画面800に表示させる。
【0067】
以下において、各表示画面を例示しながら、睡眠情報演算部921による具体的な演算内容についても説明する。
【0068】
-グラフ画面-
図7Bは、前述のグラフアイコンがタップされた場合に表示画面800に表示される画像の一例を示している。以下、
図7Bの画面全体のことを「グラフ画面」と呼ぶものとする。
【0069】
グラフ画面の下端部には、前述のメニューバー810が配置される。メニューバー810では、グラフ画面が選択されていることがわかるように表示される。グラフ画面の上端領域840には、表示させるデータの取得日付が示され、スライドボタン841をタップすることで、表示日を変更できるようになっている。
【0070】
グラフ画面の中央のデータ表示領域830(メニューバーと上端領域以外の領域)には、被験者の睡眠状態(計測結果)を示す情報が表示される。データ表示領域830の下段は、例えば、被験者の睡眠状態情報がテキスト形式で表示されるテキスト領域834である。テキスト領域834の表示項目は特に限定されないが、例えば、被験者の睡眠時間に関する睡眠時間情報として、その晩のトータルの睡眠時間、就寝時刻、起床時刻が表示される。例えば、被験者のいびき情報として、睡眠時間中におけるいびきをかいていた時間の総和(以下、単に「いびき時間」という)やいびきの回数、睡眠時間に対するいびきの割合が表示される。例えば、被験者の無呼吸情報として、睡眠時間中における無呼吸であった時間の総和(以下、単に「無呼吸時間」という)や無呼吸回数、無呼吸の最長継続時間、1時間あたりの無呼吸の平均回数が表示される。
【0071】
睡眠情報演算部921は、受信した計測データに基づいて、上記の睡眠時間情報、いびき情報及び無呼吸情報を生成したり、演算したりする。例えば、睡眠情報演算部921は、いびき回数として、呼吸音の音量が、前述の第1閾値Vt1を小音量側から大音量側に向かってクロスした回数をカウントする。同様に、睡眠情報演算部921は、無呼吸回数として、呼吸音の音量が、前述の第2閾値Vt2を大音量側から小音量側に向かってクロスした回数をカウントする。
【0072】
データ表示領域830の上段は、被験者の睡眠状態情報をグラフ形式で表示させるグラフ領域832である。グラフ領域832に表示させるグラフの形式は、特に限定されないが、ここでは、折れ線グラフと棒グラフを組み合わせて表示させた例を示している。
【0073】
折れ線グラフは、睡眠期間中のいびきの大きさが視覚的にわかるようになっている。睡眠情報演算部921は、例えば、受信した計測データに基づいて、各時刻における呼吸音をプロットしたグラフを生成する。なお、被験者にいびきの大きさがわかりやすいように、
図7Bのデータ表示領域830の左上に示すように音量の範囲を図示してもよい。また、図示しないが所定音量以上の領域を色分けしたり、
図9に示すように、第1閾値Vt1及び/または第2閾値Vt2にラインを引いて領域の区分けをしてもよい。
【0074】
棒グラフは、上段に、睡眠期間における睡眠状態として、前述の「快眠」、「いびき」、「無呼吸」及び「不明」の4つに分類し、各時間帯における睡眠状態を表示させた例を示す。また、下段に、被験者の体位情報を表示させた例を示す。睡眠情報演算部921は、例えば、受信した計測データに基づいて、各時間帯における睡眠状態や体位状態を演算する。
【0075】
なお、睡眠状態や体位状態のデータをどのような形態で表示させるかについては、特に限定されない。例えば、睡眠状態に関し、
図9の中段に示すように、呼吸音の音量と、第1閾値Vt1及び第2閾値Vt2との関係に基づいて判定した生データを表示させるようにしてもよいし、その生データに対して加工を加えた加工データを表示させるようにしてもよい。
【0076】
また、
図7Bでは、睡眠時間全体の結果がわかるように表示しているが、表示方法はこれに限定されない。例えば、拡大表示をさせる拡大アイコン835をグラフ画面内に表示させるようにしてもよい。
図7Eには、拡大アイコン835がタップされた場合の表示画面の例を示しており、具体的に、1時間の睡眠状態が表示された例を示している。
図7Eでは、例えば、グラフエリアをスワイプ(指を右から左、左から右へ操作)することでスクロールし、表示時間帯を変更できるようになっている。このような表示形態にすることで、被験者が、俯瞰した情報と詳細情報の両方を確認できる。なお、睡眠時間の表示は、1時間毎に限定されず、他の時間区切りでもよい。
【0077】
《表示データの加工》
以下において、データの加工について例示する。
【0078】
例えば、無呼吸の表示に関し、所定の規定時間(例えば、5分)以上、無呼吸と判断されるような場合に、その判定領域を「不明」と表示させる、または、表示対象から除外するようにしてもよい。本実施形態の呼吸音計測装置1では、呼吸音の音量が所定の第2閾値Vt2未満の場合に、無呼吸であるものとしている。一方で、被験者は睡眠中に動く場合があり、一時的に呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnから浮いてしまう恐れがある。そこで、呼吸音データの音量が第2閾値Vt2未満の時間が所定の規定時間以上継続した場合に、「不明」または表示対象から除外する。これにより、呼吸音計測装置1が被験者頸部Pnから浮いている場合と、無呼吸状態とを判別することができるようになる。
【0079】
図9では、被験者の呼吸音量が第2閾値Vt2を下回ったのが5回あり、そのうちの時刻t6から時刻t7の期間、及び、時刻t14から時刻t15の期間は、上記の規定時間を超えており、「不明」とした例を示している。「不明」の期間は、例えば、次に呼吸音が取れると解除される(例えば、時刻t7及び時刻t15参照)。
【0080】
また、いびき状態から無呼吸状態に短時間で遷移する場合がある。このような場合に、「快眠」と判断される期間があるが、「快眠」の期間が所定時間未満の場合に、その前後のいびき又は無呼吸の期間に組み込むようなことをしてもよい(時刻t2から時刻t4の期間参照)。
【0081】
-比較画面-
図7Cは、前述のメニューバー810の比較アイコンがタップされた場合に表示画面800に表示される画像の一例を示している。以下、
図7Cの画面全体のことを「比較画面」と呼ぶものとする。前述のメニューバー810には、比較画面が選択されていることがわかるように表示される。
【0082】
比較画面の中央のデータ表示領域(メニューバー以外の領域)には、バイブレータを振動させた場合と、振動させない場合との比較データを並べて表示させる。ここでは、振動モードの結果と、モニタリングモードの計測結果を表示させる例について示す。
【0083】
具体的に、
図7Cの例では、データ表示領域を上下の2つの領域に分けている。データ表示領域の画面上側は平均を比較する平均比較領域850であり、画面下側は各日のデータを比較する各日比較領域860である。上下の領域とも、上側の領域851,861に棒グラフで比較結果を示し、下側の領域852,862に数値で比較結果を示している。
【0084】
平均比較領域850では、左側の領域853に振動モードの結果を示し、中央の領域854にモニタリングモードの結果を示し、右側の領域に最新の結果を示している。このように、バイブレータを振動させた場合と、振動させない場合との比較データを並べて表示させることで、被験者は、振動モードを使用することによる効果を容易に確認することができる。また、具体的には図示しないが、例えば、複数の振動モードがある場合に、それらを並べて表示させることで、被験者毎に、どのようなモードを使用すれば、効果が高いのか等を定量的に比較し、把握することができる。855は、スライドボタンを示し、タップすることで別の観点や内容の比較結果が表示できるようになる。
【0085】
各日比較領域860では、日ごとの計測結果について、棒グラフと数値により睡眠状態が把握できるようになっている。モードと記載されている欄には、振動モードなのか、モニタリングモードなのかを示す識別記号が表示されている。そして、被験者が表示期間のうちで、モニタリングモードと振動モードの両方を使用した場合、各日比較領域860にも、モニタリングモードの結果(破線領域863参照)と、振動モードの結果(破線領域864参照)とが並べて表示される。これにより、被験者は、より細かく、体調や周囲の環境を加味して、使用するモードと効果との関係を比較し、検証することができるようになる。855は、スライドボタンを示し、タップすることで別の観点や内容の比較結果が表示できるようになる。
【0086】
-履歴画面-
図7Dは、前述の履歴アイコンがタップされた場合に表示画面800に表示される画像の一例を示している。以下、
図7Dの画面全体のことを「履歴画面」と呼ぶものとする。
【0087】
履歴画面の下端部には、前述のメニューバー810が配置される。メニューバー810では、履歴画面が選択されていることがわかるように表示される。履歴画面の上端領域840には、表示させる期間(例えば、表示対象年月)が示され、スライドボタン871をタップすることで、表示日を変更できるようになっている。
【0088】
履歴画面の中央のデータ表示領域870(メニューバー以外の領域)には、計測履歴の一覧を確認することができる。例えば、
図7Dの例では、上下にスクロール操作をすることで、月ごとの一覧データを確認することができる例を示している。
【0089】
<その他の実施形態>
例えば、上記の実施形態に加えて、いびき音が録音できるように構成されていてもよい。
【0090】
図10及び
図11には、いびき音の録音機能を含む睡眠状態計測システムの動作について示している。睡眠状態計測システムの構成については、上記の実施形態と共通の構成でよい。なお、
図10及び
図11において、
図6と共通の制御フローについては、同じ符号を付している。ここでは、
図6との相違点を中心に説明するものとし、共通の制御フローについて、説明を省略する場合がある。
【0091】
《いびきの録音プロセス(1)》
図10の例では、呼吸音計測装置1において、ステップS13の呼吸音を計測している途中(ステップS21でNO)に、制御部57において、所定以上のいびき音が検出されたか否かを判定するようにしている(ステップS22)。所定以上のいびきが発生していない場合、ステップS13における呼吸音の計測を継続する。
【0092】
一方で、所定以上のいびき音が検出された場合(ステップS22でYES)、呼吸音計測装置1は、通信モジュール56の通信機能をオンさせて、端末装置80に録音指示を送信する(ステップS24)。この間も、ステップS13の計測動作は継続される。
【0093】
ステップS51において、録音指示を受けた端末装置80では、制御部92が、マイクロフォン82を介して録音されたいびき音データを記憶部91に保存する。端末装置80では、例えば、あらかじめ設定された期間(例えば、数分程度)のいびき音データを録音する。いびき音データは、例えば、グラフ画面の折れ線グラフに紐づけされ、被験者が折れ線グラフをタップすると、その部分の録音データを聞くことができるようになっている。
【0094】
ステップS24で録音指示が終わると、呼吸音計測装置1では、通信機能がオフされ、制御フローはステップS13に戻る。なお、呼吸音計測装置1側に録音機能を設けて、ステップS14の計測データ送信時に録音データをあわせて送信するようにしてもよい。
【0095】
《いびきの録音プロセス(2)》
図11の例では、端末装置80は、睡眠状態計測アプリが起動された後に、睡眠中の被験者の呼吸音を録音する。具体的には、端末装置80は、例えば、ステップS41で睡眠状態計測アプリを起動させた後のステップ61において、睡眠状態計測アプリの画面に録音を開始させることを示すアイコンを表示させる。そして、端末装置80は、被験者のアイコンへのタップ操作に基づいて録音を開始するようにしてもよい。また、被験者の操作なしに、睡眠状態計測アプリが起動されてから所定時間経過後に自動的に録音が開始されるようにしてもよい。または、所定の時刻(被験者によるタイマー設定を含む)から自動的に録音が開始されるようにしてもよい。
【0096】
ステップS42の処理は、
図6と同じであり、例えば、朝になって被験者がデータ取得ボタン823を押下すると、端末装置80では、計測データの取得処理が実行される。
【0097】
次のステップS62において、端末装置80は、計測データの取得が終わると、受信した計測データと、自機の録音データとの紐づけを行う。具体的には、呼吸音計測装置1と端末装置80との時刻同期がとれているので、お互いのデータの取得時刻に基づいて、相互のデータの紐づけを行う。
【0098】
次のステップS63において、端末装置80は、録音データの編集を行う。例えば、端末装置80は、いびきと判定されたいびき領域についての録音データを残し、それ以外の録音データを削除する。また、例えば、いびきの中で所定の音量以上のものを録音データとして残すようにしてもよい。また、無呼吸と判定された無呼吸領域の音を残すようにしてもよい。どのような音を残すかについては、予め端末装置80にインストールされた設定に基づいて自動的に設定されるようにしてもよいし、被験者が設定できるようにしてもよい。このように、特定の音を残すような編集作業をすることで、端末装置80で使用する記憶部91の記憶領域を節約することができる。なお、ステップS63の処理は行わなくてもよい。そうすることで、被験者は、就寝中の周囲音とともに寝息音を聞くことができ、睡眠状態と周囲の環境状態との相関関係をより詳細に知ることができる。
【0099】
次のステップS43の表示処理は、前述の実施形態と同様である。なお、例えば、
図7Eに示すように、グラフ画面のグラフと対応する位置にスピーカーアイコン836を表示させ、そのスピーカーアイコン836がタップされた位置に対応する時刻に録音されたいびき音が再生できるように構成されていてもよい。
【0100】
《バイブレータの非動作設定処理》
端末装置80の設定操作において、被験者が、呼吸音の計測開始から所定時間を経過するまで所定期間、バイブレータを振動させない振動一時停止モードが設定できるように構成されていてもよい。呼吸音計測装置1では、振動一時停止モードが設定されている場合でも、計測開始から所定期間は、いびきや無呼吸に応じてバイブレータを動作させない。例えば、被験者が寝入ったあとに、すぐにバイブレータが動作すると寝入りの邪魔をすることになる場合がある。このようなバイブレータ50の非動作時間の設定をできるようにすることで、被験者が寝付けなくなることを防止することができる。
【0101】
また、上記実施形態において、ネックバンド10の形状は、略C字形状に限定されるものではない。ネックバンド10は、被験者の頸部に装着されて被験者頸部の呼吸音がマイクロフォン52で計測できるように構成されていればよく、例えば、ビニールや繊維等の柔らかい素材で形成されたネックバンドを首に巻付け、面ファスナーやアジャスターバックルのような係止具で係止するような構成であってもよい。
【0102】
また、上記の実施形態では、端末装置80の制御部92において睡眠状態の演算をするものとしたが、同様の演算を呼吸音計測装置1側で行い、その演算結果を端末装置80に送るようにしてもよい。
【0103】
また、
図10及び
図11において、端末装置80側で録音を実行するものとしたが、呼吸音計測装置1で録音をするようにしてもよい。この場合、呼吸音計測装置1では、マイクロフォン52が録音データを取得し、端末装置80に計測データとあわせて録音データが送信される。
【0104】
また、上記の実施形態では、呼吸音計測装置1は、ネックバンド式であるものとしたが、これに限定されない。図示は省略するが、例えば、呼吸音計測装置1が、被験者の頸部や胸に貼り付けて呼吸音を計測するような貼付型装置であってもよい。貼付型の呼吸音計測装置は、例えば、装着手段としての貼付パッドと、貼付パッドから伝達される呼吸音を計測する呼吸音計測手段とを備える。なお、貼付パッド及び呼吸音計測手段は周知構成を採用することができる。また、呼吸音計測装置1が、被験者の胸部に巻き付けて使用するようなバンド式の装置であってもよい。バンド式の呼吸音計測装置1では、例えば、胸部に巻き付けるバンドが装着手段に相当し、その装着手段に被験者の呼吸音を計測する呼吸音計測手段が取り付けられる。そして、呼吸音計測装置1の形態や構成が異なるような場合においても、呼吸音計測装置1と端末装置80とのやり取りや、端末装置80での表示方法等は、上記の実施形態と同じような形態や方法を採用することができ、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、主に在宅等で被験者の睡眠時の呼吸音に基づいて睡眠状態を計測する睡眠状態計測システムとして有用である。
【符号の説明】
【0106】
1 呼吸音計測装置
10 ネックバンド(装着手段)
50 バイブレータ
80 端末装置
81 タッチパネル(表示手段)
84 通信モジュール(通信手段)
92 制御部(演算手段)
82 マイクロフォン