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  • 特許-ボイラの水位制御方法 図1
  • 特許-ボイラの水位制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ボイラの水位制御方法
(51)【国際特許分類】
   F22D 5/00 20060101AFI20240201BHJP
   F22D 5/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F22D5/00 A
F22D5/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020055217
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156463
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000154668
【氏名又は名称】株式会社ヒラカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 裕介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】松浦 吉久
(72)【発明者】
【氏名】岡 幸広
(72)【発明者】
【氏名】木下 正成
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-008007(JP,U)
【文献】実開平02-092412(JP,U)
【文献】特開2011-252632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 5/00
F22D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの水位制御方法であって、
通常のボイラ運転時には、缶内の許容最高レベルの水位を検出するための第1の水位センサによる第1の検出水位と、缶内水位が低下して給水が必要になったことを検出する第2の水位センサによる第2の検出水位との間で水位が上下に変動するように、ボイラへの給水を行い、
前記缶内の許容最高レベルの水位を検出するための第1の水位センサが水位を検出していないときにボイラを高燃焼状態から低燃焼状態に移行する前にボイラへの給水を開始し、
給水開始から特定の設定時間が経過した後に燃焼状態を高燃焼状態から低燃焼状態に移行するとともに、前記給水により第1の水位センサが水位を検出した時点で給水を停止することを特徴とするボイラの水位制御方法。
【請求項2】
ボイラの水位制御方法であって、
通常のボイラ運転時には、缶内の許容最高レベルの水位を検出するための第1の水位センサによる第1の検出水位と、缶内水位が低下して給水が必要になったことを検出する第2の水位センサによる第2の検出水位との間で水位が上下に変動するように、ボイラへの給水を行い、
前記缶内の許容最高レベルの水位を検出するための第1の水位センサが水位を検出していないときにボイラの燃焼を停止する前にボイラへの給水を開始し、
給水開始から特定の設定時間が経過した後に燃焼を停止するとともに、前記給水により第1の水位センサが水位を検出した時点で給水を停止することを特徴とするボイラの水位制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラの水位制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラの水位を制御するに際しては、複数のレベルの水位を検出可能な複数の水位センサを設け、これらの水位センサの検出信号にもとづく制御が行われている(たとえば特許文献1)。
【0003】
ボイラが燃焼状態にあって缶水が蒸発しているときには、発生した蒸気が缶水中に混在することになるために、缶水容量が増大する。これによってボイラの水位すなわち缶内水位が上昇する。このような状況下において、ボイラを高燃焼状態から低燃焼状態へ移行すると、それに応じて蒸発量が低下することで、缶内水位も急激に低下する。その結果、安全確保のための低水位時の第一段目の燃焼遮断が行われる。
【0004】
また、燃焼している状態から燃焼が停止した場合には、缶水中の蒸気が無くなり、それによっても水位が低下すると、同様に第一段目の燃焼遮断が行われる。
【0005】
さらに、上記した第一段目の燃焼遮断時よりもさらに低水位となった状態となると、それにもとづき第二段目の燃焼遮断が行われる。
【0006】
これらの現象は、特に保有水量の少ないボイラにおいて発生しやすい。
【0007】
このような現象に対応するために、缶水中の蒸気量の低下にもとづく低水位時の燃焼遮断を避けることを目的として、高燃焼状態から低燃焼状態に移行するときや、燃焼状態から燃焼停止状態へ移行するときに、移行動作と同時にボイラへの給水を開始することが行われている。そして、缶内の水位が所定のレベルに達したことを水位センサ検出したなら、念のためにその後に一定時間が経過したあとで給水を停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-017414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、移行動作と同時にボイラへの給水を開始するとともに、缶内の水位が所定のレベルに達したことを水位センサ検出した後に一定時間が経過してから給水を停止するのでは、缶内が毎回高水位状態に達し、このため缶水が蒸気と一緒に缶外へ排出されるキャリーオーバ現象が発生する可能性が高くなる。キャリーオーバ現象が発生すると、缶水のpH値によっては各部に腐食が発生しやすいという問題点がある。
【0010】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、ボイラを高燃焼状態から低燃焼状態に移行するときや、燃焼状態から燃焼停止状態に移行するときに、缶水のレベルが急激に低下することによる低水位を原因とした燃焼遮断が発生することを防止したうえで、キャリーオーバ現象が発生することをも防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明のボイラの水位制御方法は、
通常のボイラ運転時には、缶内の許容最高レベルの水位を検出するための第1の水位センサによる第1の検出水位と、缶内水位が低下して給水が必要になったことを検出する第2の水位センサによる第2の検出水位との間で水位が上下に変動するように、ボイラへの給水を行い、
前記缶内の許容最高レベルの水位を検出するための第1の水位センサが水位を検出していないときにボイラを高燃焼状態から低燃焼状態に移行する前にボイラへの給水を開始し、
給水開始から特定の設定時間が経過した後に燃焼状態を高燃焼状態から低燃焼状態に移行するとともに、前記給水により第1の水位センサが水位を検出した時点で給水を停止することを特徴とする。
【0012】
本発明の、他の、ボイラの水位制御方法は、
通常のボイラ運転時には、缶内の許容最高レベルの水位を検出するための第1の水位センサによる第1の検出水位と、缶内水位が低下して給水が必要になったことを検出する第2の水位センサによる第2の検出水位との間で水位が上下に変動するように、ボイラへの給水を行い、
前記缶内の許容最高レベルの水位を検出するための第1の水位センサが水位を検出していないときにボイラの燃焼を停止する前にボイラへの給水を開始し、
給水開始から特定の設定時間が経過した後に燃焼を停止するとともに、前記給水により第1の水位センサが水位を検出した時点で給水を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボイラを高燃焼状態から低燃焼状態に移行する際や、ボイラの燃焼を停止する際に、あらかじめ缶内への給水を開始した後に燃焼状態の移行や停止を行うため、これらの移行時や停止時における缶水の急激な低下を防止することができる。さらに、第1の水位センサが水位を検出した時点で給水を停止し、それ以降は給水を行わないため、缶内の水位が所定の最高水位よりも高くなることが無く、したがってキャリーオーバの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態のボイラの水位制御方法を用いることがでるボイラの横断面図である。
図2図1における要部の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、保有水量が比較的少量である小形の煙管ボイラの横断面構造を示す。ここで11は缶体、12は燃焼室、13は多数の煙管、14は缶水である。15は缶水14の水面であって、この水面15よりも上側における缶体11の内部には、ボイラを運転することによって発生した蒸気16が充満している。蒸気16は、水面15から発生するとともに、缶水14の内部においても発生する。缶水14の内部で派生した蒸気16は、図示のように気泡の形態で缶水14の内部に混在する。
【0016】
図1および図2において、21は缶内水位を検出するための水位検出路で、水柱管22を有している。水柱管22は、水位を目視するためのガラス窓23を備えたガラス水面計24を有している。25は、水柱管22への蒸気側連絡管、26は、水柱管22への缶水側連絡管である。
【0017】
水柱管22は、缶体11の内部に連通していることから、缶体11の内部と同じ水位となる。そして水柱管22には、この水柱管22の内部の水位を検出することで缶体11の内部における缶水14の水位を検出するための複数の水位電極31、32、33、34が設けられている。これらの水位電極31、32、33、34は、上下方向に設けられた棒状体によって構成され、そのたとえば下端部が水面と接したことを検知することで、そのときの水位を検出することができる。水位電極31から水位電極34に向けて順に、検出する水位が段階的に低下するように構成されている。
【0018】
水位電極31は、缶内水位が上限値に達したことを検出する。すなわち、缶内の許容最高レベルの水位を検出する。水位電極32は、缶内水位が低下して給水が必要になったことを検出する。水位電極33は、水位電極32によって検出される位置よりも水位が下がって、第一段目の異常低水位となったことを検出する。水位電極34は、水位電極33によって検出される位置よりもさらに水位が下がって、第二段目の異常低水位となったことを検出する。
【0019】
このような構成における水位制御の詳細について説明する。通常のボイラ運転時にはその運転による蒸気の発生に伴って缶内水位が変動するが、水位電極32による検出位置まで水位が低下したときには、その検出にもとづき缶体11の内部へ水を供給するための給水ポンプの運転を開始する。これによって缶内水位が上昇するが、水位電極31による検出位置まで水位が上昇したときには、その検出にもとづき給水ポンプの運転を停止する。このような制御を繰り返すことで、缶内水位は、水位電極32による検出位置と水位電極31による検出位置との間で上下に変動する。この水位変動範囲は、正常範囲である。
【0020】
ボイラにおける燃焼状態を高燃焼状態から低燃焼状態へ移行させる場合について説明する。このときには、まず、水位電極31が水位を検出していない限り、強制的に給水ポンプを運転して缶内への給水を行う。そして、給水を開始してから一定の設定時間が経過した後に燃焼状態を高燃焼状態から低燃焼状態へ移行させる。この設定時間は、具体的には1~30秒程度が適当であり、缶内水位が水位電極32によって検出されるレベルと水位電極31によって検出レベルとの間のどのレベルにあっても、その後に低燃焼状態に移行したときに異常低水位の状態が発生しない時間とされる。つまり、こうすることで、缶内水位を所定のレベルまで上昇させたうえで高燃焼状態から低燃焼状態へ移行させることになるため、燃焼状態の移行に伴う水位の低下があっても、異常低水位まで低下することがなく、したがって安定な水位の状態を保ったまま高燃焼状態から低燃焼状態への移行を行うことができる。
【0021】
そして、給水ポンプの運転を開始した後に水位電極31が水位を検出したなら、缶内水位が十分なレベルに達したと判断することができるため、その時点で給水ポンプの運転を停止する。
【0022】
ボイラにおける燃焼状態を高燃焼状態から低燃焼状態へ移行させるときにおいて、水位電極31が水位を検出している場合には、缶内水位のレベルがすでに異常低水位を起こさない程度まで上昇していることを示しているので、上記した給水ポンプの運転を行うことなく、燃焼状態をただちに高燃焼状態から低燃焼状態へ移行させる。
【0023】
低燃焼状態への移行後は、同様に水位電極32と水位電極31とが水位を検出する範囲内の水位変動となるように給水ポンプを運転することで、正常な水位変動範囲内においてボイラを運転することができる。
【0024】
次に、ボイラにおける燃焼を停止させる場合について説明する。このときには、同様に、まず、最高水位を検出する水位電極31が水位を検出していない限り、強制的に給水ポンプを運転して缶内への給水を行う。そして、給水を開始してから一定の設定時間が経過した後に燃焼を停止させる。この設定時間は、具体的には同様に1~30秒程度が適当であり、缶内水位が水位電極32によって検出されるレベルと水位電極31によって検出レベルとの間のどのレベルにあっても、その後に燃焼を停止させたときに異常低水位の状態が発生しない時間とされる。こうすることで、缶内水位を所定のレベルまで上昇させたうえで燃焼を停止させることになるため、燃焼の停止に伴う水位の低下があっても、異常低水位まで低下することがなく、したがって安定な水位の状態を保ったまま燃焼の停止行うことができて、次の燃焼に備えることができる。
【0025】
そして、給水ポンプの運転を開始した後に水位電極31が水位を検出したなら、缶内水位が十分なレベルに達したと判断することができるため、その時点で給水ポンプの運転を停止する。
【0026】
ボイラにおける燃焼を停止させる場合において、水位電極31が水位を検出しているときには、缶内水位のレベルがすでに異常低水位を起こさない程度まで上昇していることを示しているので、上記した給水ポンプの運転を行うことなく、燃焼をただちに停止させる。
【0027】
水位電極32よりも低い位置の水位を検出することができる水位電極33が水位を検出しなくなったときは、それにより缶内水位が異常に低下したことが検出されて、第一段目の燃焼遮断が行われる。そして、さらに水位が低下して。最も下位の水位を検出するための水位電極34が水位を検出しなくなったときは、それにより缶内水位が特別異常に低下したことが検出されて、第二段目の燃焼遮断が行われる。
【0028】
なお、上記においてはボイラが図示の小形の煙管ボイラである場合について説明したが、本発明はこのようなボイラのみに限定して適用されるものではなく、他の構造のボイラにも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
11 缶体
14 缶水
15 水面
21 水位検出路
31 水位電極
32 水位電極
33 水位電極
34 水位電極
図1
図2