(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】地下構造物用蓋受枠セット
(51)【国際特許分類】
E02D 29/14 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
E02D29/14 A
(21)【出願番号】P 2020109742
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【氏名又は名称】長谷川 和家
(72)【発明者】
【氏名】大波 豊明
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-239308(JP,A)
【文献】実開平03-058343(JP,U)
【文献】実開平02-120540(JP,U)
【文献】特開2002-138505(JP,A)
【文献】特開2019-112827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物につながる開口を画定する受枠と、該受枠に支持されることで該開口を塞ぐ蓋体とを備えた地下構造物用蓋受枠セットにおいて、
前記受枠は、内周面よりも下方位置に斜め下方に突出した爪受片を有するものであり、
前記蓋体は、前記内周面に支持され外周部分に鍵穴が形成された蓋本体と、該蓋本体の裏側に軸部によって支持されたロック部材と、を有するものであり、
前記ロック部材は、弁蓋と、該弁蓋よりも下方位置に設けられた係止爪と、付勢手段とを有し、前記軸部を中心に、該弁蓋が前記鍵穴を閉塞するとともに該係止爪が前記爪受片の下方に位置する閉塞状態と、該弁蓋が該鍵穴を開放するとともに該係止爪が該爪受片の下方から退く開放状態とに回動可能であって、該閉塞状態で浮上すると該係止爪が該爪受片に係止して前記開口の開放を阻止する一方、該開放状態では該開口の開放を許容し、該付勢手段によって該閉塞状態に向かう方向に付勢されたものであり、
前記係止爪は、前記軸部の軸芯方向に一致する幅方向の長さが、前記鍵穴の該幅方向の長さの0.8~1.3倍のものであり、
前記爪受片は、該爪受片の下側で前記幅方向に間隔をあけて設けられ対向する対向面が該幅方向と直交する方向に沿った一対のリブによって補強されたものであり、
前記一対のリブは、前記間隔が、前記係止爪の幅方向の長さの1.1~1.4倍であることを特徴とする地下構造物用蓋受枠セット。
【請求項2】
前記一対のリブは、厚さの和が、前記間隔よりも大きいものであることを特徴とする請求項1記載の地下構造物用蓋受枠セット。
【請求項3】
前記爪受片は、その下面が、突出方向において斜め下方に傾斜しているとともに、基部の近傍が円弧状のものであり、
前記係止爪は、前記蓋体が浮上すると、前記基部の近傍に当接するものであることを特徴とする請求項1または2記載の地下構造物用蓋受枠セット。
【請求項4】
地下構造物につながる開口を画定する受枠と、該受枠に支持されることで該開口を塞ぐ蓋体とを備えた地下構造物用蓋受枠セットにおいて、
前記受枠は、内周面よりも下方位置に斜め下方に突出した爪受片を有するものであり、
前記蓋体は、前記受枠の内周面に支持され外周部分に鍵穴が形成された蓋本体と、該蓋本体の裏側に軸部によって支持されたロック部材と、を有するものであり、
前記ロック部材は、弁蓋と、該弁蓋よりも下方位置に設けられた係止爪と、付勢手段とを有し、前記軸部を中心に、該弁蓋が前記鍵穴を閉塞するとともに該係止爪が前記爪受片の下方に位置する閉塞状態と、該弁蓋が該鍵穴を開放するとともに該係止爪が該爪受片の下方から退く開放状態とに回動可能であって、該閉塞状態で浮上すると該係止爪が該爪受片に係止して前記開口の開放を阻止する一方、該開放状態では該開口の開放を許容し、該付勢手段によって該閉塞状態に向かう方向に付勢されたものであり、
前記係止爪は、前記軸部の軸芯方向に一致する幅方向の長さが、前記鍵穴の該幅方向の長さの0.8~1.3倍のものであり、
前記爪受片は、該爪受片の下側で前記幅方向に間隔をあけて設けられ対向する対向面が該幅方向と直交する方向に沿った一対のリブによって補強されたものであり、
前記一対のリブそれぞれの前記対向面と前記爪受片の下面との接続部に、R3mm~R5mmの円弧部が設けられていることを特徴とする地下構造物用蓋受枠セット。
【請求項5】
地下構造物につながる開口を画定する受枠と、該受枠に支持されることで該開口を塞ぐ蓋体とを備えた地下構造物用蓋受枠セットにおいて、
前記受枠は、内周面に形成された凹部と、該凹部の下方位置に斜め下方に突出した爪受片を有するものであり、
前記蓋体は、前記受枠の内周面に支持され外周部分に鍵穴が形成された蓋本体と、該蓋本体の裏側に軸部によって支持されたロック部材と、を有するものであり、
前記ロック部材は、前記蓋本体の周縁より突出したシール材を備えた弁蓋と、該弁蓋よりも下方位置に設けられた係止爪と、付勢手段とを有し、前記軸部を中心に、該シール材を前記凹部の上部内壁面に当接させて該弁蓋が前記鍵穴を閉塞するとともに該係止爪が前記爪受片の下方に位置する閉塞状態と、該弁蓋が該鍵穴を開放するとともに該係止爪が該爪受片の下方から退く開放状態とに回動可能であって、該閉塞状態で浮上すると該係止爪が該爪受片に係止して前記開口の開放を阻止する一方、該開放状態では該開口の開放を許容し、該付勢手段によって該閉塞状態に向かう方向に付勢されたものであり、
前記係止爪は、前記軸部の軸芯方向に一致する幅方向の長さが、前記鍵穴の該幅方向の長さの0.8~1.3倍のものであり、
前記爪受片は、該爪受片の下側で前記幅方向に間隔をあけて設けられ対向する対向面が該幅方向と直交する方向に沿った一対のリブによって補強されたものであり、
前記爪受片は、その下面が、前記凹部よりも外側から突出したものであり、
前記係止爪は、前記蓋体が浮上すると、前記爪受片の下面における、前記凹部よりも外側に当接するものであることを特徴とする地下構造物用蓋受枠セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物につながる開口を画定する受枠と、この受枠に支持されることで開口を塞ぐ蓋体とを備えた地下構造物用蓋受枠セットに関する。
【背景技術】
【0002】
下水道や上水道、あるいは電力、ガス、通信等における地下埋設物や地下施設等の地下構造物が地上につながる箇所には、地下構造物につながる開口を画定する受枠と、開口を塞ぐ蓋体とを備えた地下構造物用蓋受枠セットが設置される場合がある。本明細書では、蓋体の蓋本体が受枠に支持され開口が塞がれた状態(蓋本体が受枠に嵌め込まれた状態)を閉蓋状態と称し、閉蓋状態から蓋本体が開くことを開蓋と称することがある。さらに、地下構造物用蓋受枠セットを、蓋受枠セットと略称する場合がある。
【0003】
蓋受枠セットには、受枠に対して蓋本体を開閉可能に連結する蝶番構造と、不法投棄や不法侵入の防止、さらには、地下構造物内の圧力による開蓋を防止するためのロック部材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。なお、本明細書では、地下構造物内の圧力を、内圧と称することがある。
【0004】
ロック部材は、蓋本体の外周部分に形成された切欠き状の鍵穴(バール孔)を閉塞する弁蓋と、蓋本体に対して回動可能に支持する軸部と、係止爪と、弁蓋が鍵穴を閉塞する方向に付勢するバネ等の付勢手段を有している。弁蓋が鍵穴を閉塞する状態(閉塞状態)では、係止爪が受枠の爪受片に係止して開蓋が阻止される。また、鍵穴を閉塞している弁蓋を、開閉工具の先端で押してバネ等の付勢力に抗して弁蓋を押し下げることにより鍵穴が開放されるとともに、爪部が爪受片に係合しない状態に回動して開蓋が可能になる。
【0005】
このような蓋受枠セットは、集中豪雨などにより内水氾濫を起こして内圧が高まると、受枠に対して蓋体が所定高さ浮上して係止爪と爪受片とが係止した状態になり、蓋本体と受枠との隙間から内圧を解放する。それでも内圧が高まっていくと、下水道管等が破損する前に係止爪が破断し、これによって開蓋されて内圧を解放する。こうすることで、下水道管等の破損を防ぐと共に、蝶番構造が破壊されて蓋体が飛散してしまうことや、受枠の爪受片の破損や変形により受枠全体を交換しなければならないといった不具合を防止している。
【0006】
また、鍵穴からの侵入水に関し、密閉性を向上させた、いわゆる密閉型といわれる蓋受枠セットも採用されている(例えば特許文献2等参照)。
【0007】
特許文献2記載の蓋受枠セットは、受枠の内周面に凹部が形成されるとともに、ロック部材の弁蓋が蓋本体の周縁より突出したシール材を備えている。そして、閉塞状態では、シール材を凹部の上部内壁面に当接させることによって鍵穴の隙間を塞ぎ、これによって鍵穴からの侵入水を抑えることができるものである。以下、特許文献2記載の蓋受枠セットを、密閉型と称することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-219721号公報
【文献】特開2002-138505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、前述のロック部材を有する蓋体を用いる場合には、開閉工具によって係止爪が爪受片に係止しない状態にロック部材を回動させる際に、弁蓋の先端やシール材等と爪受片の上面との干渉を抑える必要がある。このため、密閉型の蓋受枠セットでは、蓋本体の周縁より突出したシール材との干渉を抑えるため爪受片の厚さが制限され、爪受片の破断強度が弱くなる傾向にある。この結果、内圧が高まって蓋体が浮上すると、係止爪が破断する前に、爪受片の破損や変形が生じてしまう虞がある。また、近年のゲリラ豪雨による内圧は凄まじく、係止爪が破断する場合であっても、飛散したり落下したりするものをできるだけ小さくすることが望まれている。
【0010】
本発明は前記事情に鑑み、係止爪の破断片を小さくする工夫がなされるとともに、爪受片を厚くすることができない密閉型であっても、爪受片の破損や変形を抑えることができる地下構造物用蓋受枠セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を解決する本発明の第1の地下構造物用蓋受枠セットは、地下構造物につながる開口を画定する受枠と、該受枠に支持されることで該開口を塞ぐ蓋体とを備えた地下構造物用蓋受枠セットにおいて、
前記受枠は、内周面よりも下方位置に斜め下方に突出した爪受片を有するものであり、
前記蓋体は、前記内周面に支持され外周部分に鍵穴が形成された蓋本体と、該蓋本体の裏側に軸部によって支持されたロック部材と、を有するものであり、
前記ロック部材は、弁蓋と、該弁蓋よりも下方位置に設けられた係止爪と、付勢手段とを有し、前記軸部を中心に、該弁蓋が前記鍵穴を閉塞するとともに該係止爪が前記爪受片の下方に位置する閉塞状態と、該弁蓋が該鍵穴を開放するとともに該係止爪が該爪受片の下方から退く開放状態とに回動可能であって、該閉塞状態で浮上すると該係止爪が該爪受片に係止して前記開口の開放を阻止する一方、該開放状態では該開口の開放を許容し、該付勢手段によって該閉塞状態に向かう方向に付勢されたものであり、
前記係止爪は、前記軸部の軸芯方向に一致する幅方向の長さが、前記鍵穴の該幅方向の長さの0.8~1.3倍のものであり、
前記爪受片は、該爪受片の下側で前記幅方向に間隔をあけて設けられ対向する対向面が該幅方向と直交する方向に沿った一対のリブによって補強されたものであり、
前記一対のリブは、前記間隔が、前記係止爪の幅方向の長さの1.1~1.4倍であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の地下構造物用蓋受枠セットによれば、前記係止爪の幅方向の長さを前記鍵穴の幅方向の長さの1.3倍以下に抑えて該係止爪の断面積を小さくしているため、該係止爪の破断片が小さくなる上、該係止爪が破断しやすくなる。また、前記係止爪の幅方向の長さを前記鍵穴の幅方向の長さの0.8倍以上に設定しているため、係止爪の破断強度が弱くなりすぎて必要な圧力解放耐揚圧性能を確保できない、といった不具合も回避することができる。
【0013】
さらに、前記一対のリブの間隔を、前記係止爪の幅方向の長さの1.4倍以下に設定しているため、前記爪受片における、該係止爪が係止して力がかかる部分の近くに該一対のリブが位置することになる。これにより、前記爪受片が効率的に補強され破断強度が向上する。これらの結果、前記爪受片を厚くすることができない(断面積を大きくすることができない)密閉型の蓋受枠セットであっても、前記爪受片の破損や変形を抑えることができる。また、前記一対のリブの間隔を、前記係止爪の幅方向の長さの1.1倍以上に設定しているため、蝶番構造のガタつきや鋳造品である受枠の製造誤差等によって該一対のリブ間への係止爪の挿入が困難になってしまう、といった不具合も回避することができる。
【0014】
また、本発明の地下構造物用蓋受枠セットにおいて、前記一対のリブは、厚さの和が、前記間隔よりも大きいものであってもよい。
【0015】
こうすることで、前記爪受片の破断強度をさらに向上させることができる。ここで、前記リブの厚さとは、前記軸部の軸芯方向の寸法をいう。また、前記一対のリブにおける厚さの和は、前記間隔の1.3倍以上がより好ましい。
【0016】
さらに、本発明の地下構造物用蓋受枠セットにおいて、前記爪受片は、その下面が、突出方向において斜め下方に傾斜しているとともに、基部の近傍が円弧状のものであり、
前記係止爪は、前記蓋体が浮上すると、前記基部の近傍に当接するものであってもよい。
【0017】
すなわち、前記爪受片の下面は、前記基部から先端に向かって斜め下方に傾斜しているものである。また、前記一対のリブを外周側で連結する後壁を有し、該後壁の内面と前記爪受片の下面との接続部に、円弧部が設けられたものであってもよい。
【0018】
前記爪受片は、その下面が、突出方向において斜め下方に傾斜しているとともに、基部の近傍が円弧状のものであれば、該基部の近傍の破断強度が向上する。そして、内圧が高まって前記蓋体が浮上すると、前記係止爪が、前記基部の近傍に当接する態様を採用すれば、該基部にかかるモーメントも小さくなり、該爪受片の破損や変形をより抑えることができる。
【0019】
前記目的を解決する本発明の第2の地下構造物用蓋受枠セットは、地下構造物につながる開口を画定する受枠と、該受枠に支持されることで該開口を塞ぐ蓋体とを備えた地下構造物用蓋受枠セットにおいて、
前記受枠は、内周面よりも下方位置に斜め下方に突出した爪受片を有するものであり、
前記蓋体は、前記受枠の内周面に支持され外周部分に鍵穴が形成された蓋本体と、該蓋本体の裏側に軸部によって支持されたロック部材と、を有するものであり、
前記ロック部材は、弁蓋と、該弁蓋よりも下方位置に設けられた係止爪と、付勢手段とを有し、前記軸部を中心に、該弁蓋が前記鍵穴を閉塞するとともに該係止爪が前記爪受片の下方に位置する閉塞状態と、該弁蓋が該鍵穴を開放するとともに該係止爪が該爪受片の下方から退く開放状態とに回動可能であって、該閉塞状態で浮上すると該係止爪が該爪受片に係止して前記開口の開放を阻止する一方、該開放状態では該開口の開放を許容し、該付勢手段によって該閉塞状態に向かう方向に付勢されたものであり、
前記係止爪は、前記軸部の軸芯方向に一致する幅方向の長さが、前記鍵穴の該幅方向の長さの0.8~1.3倍のものであり、
前記爪受片は、該爪受片の下側で前記幅方向に間隔をあけて設けられ対向する対向面が該幅方向と直交する方向に沿った一対のリブによって補強されたものであり、
前記一対のリブそれぞれの前記対向面と前記爪受片の下面との接続部に、R3mm~R5mmの円弧部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の地下構造物用蓋受枠セットによれば、前記係止爪の幅方向の長さを前記鍵穴の幅方向の長さの0.8~1.3倍に抑えて該係止爪の断面積を小さくしているため、該係止爪の破断片が小さくなる上、該係止爪が破断しやすくなる。さらに、前記爪受片に接続する前記円弧部によって、該爪受片の破断強度が向上する。これらの結果、前記爪受片を厚くすることができない密閉型であっても、該爪受片の破損や変形を抑えることができる。
【0021】
また、前記後壁の厚さを、袋部の奥行き寸法の0.5倍以上とする態様を採用してもよい。こうすることによっても、前記爪受片の破断強度を向上させることができる。
【0022】
前記目的を解決する本発明の第3の地下構造物用蓋受枠セットは、地下構造物につながる開口を画定する受枠と、該受枠に支持されることで該開口を塞ぐ蓋体とを備えた地下構造物用蓋受枠セットにおいて、
前記受枠は、内周面に形成された凹部と、該凹部の下方位置に斜め下方に突出した爪受片を有するものであり、
前記蓋体は、前記受枠の内周面に支持され外周部分に鍵穴が形成された蓋本体と、該蓋本体の裏側に軸部によって支持されたロック部材と、を有するものであり、
前記ロック部材は、前記蓋本体の周縁より突出したシール材を備えた弁蓋と、該弁蓋よりも下方位置に設けられた係止爪と、付勢手段とを有し、前記軸部を中心に、該シール材を前記凹部の上部内壁面に当接させて該弁蓋が前記鍵穴を閉塞するとともに該係止爪が前記爪受片の下方に位置する閉塞状態と、該弁蓋が該鍵穴を開放するとともに該係止爪が該爪受片の下方から退く開放状態とに回動可能であって、該閉塞状態で浮上すると該係止爪が該爪受片に係止して前記開口の開放を阻止する一方、該開放状態では該開口の開放を許容し、該付勢手段によって該閉塞状態に向かう方向に付勢されたものであり、
前記係止爪は、前記軸部の軸芯方向に一致する幅方向の長さが、前記鍵穴の該幅方向の長さの0.8~1.3倍のものであり、
前記爪受片は、該爪受片の下側で前記幅方向に間隔をあけて設けられ対向する対向面が該幅方向と直交する方向に沿った一対のリブによって補強されたものであり、
前記爪受片は、その下面が、前記凹部よりも外側から突出したものであり、
前記係止爪は、前記蓋体が浮上すると、前記爪受片の下面における、前記凹部よりも外側に当接するものであることを特徴とする。
【0023】
すなわち、本発明の第3の地下構造物用蓋受枠セットは、前記受枠の内周面に凹部が形成され、前記弁蓋の前記シール材が、該凹部の上部内壁面に当接して前記鍵穴を閉塞する密閉型の構造を前提とするものである。
【0024】
本発明の第3の地下構造物用蓋受枠セットによれば、前記係止爪の幅方向の長さを前記鍵穴の幅方向の長さの0.8~1.3倍に抑えて該係止爪の断面積を小さくしているため、該係止爪の破断片が小さくなる上、該係止爪が破断しやすくなる。さらに、前記係止爪は、前記蓋体が浮上すると、前記爪受片の下面における、前記凹部よりも外側に当接するものであるため、該係止爪の力が該凹部よりも外側の受枠部分にかかり該爪受片にかかる剪断力が減少する。これらの結果、前記爪受片を厚くすることができない密閉型であっても、該爪受片の破損や変形を抑えることができる。
【0025】
また、前記凹部と前記爪受片の上面とは、前記ロック部材が回動する際の前記シール材の先端の軌道に倣って断面視円弧状に連続したものであってもよい。この態様によっても、前記爪受片の破断強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、係止爪の破断片を小さくする工夫がなされるとともに、爪受片を厚くすることができない密閉型であっても、爪受片の破損や変形を抑えることができる地下構造物用蓋受枠セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】(a)は、本発明の第1の地下構造物用蓋受枠セットの一実施形態である蓋受枠セットの平面図であり、(b)は、(a)のA-A線断面図である。
【
図2】(a)は、
図1に示すロック部材を抜き出して示す図であり、(b)は、(a)のロック部材を図の左側から見た図である。
【
図3】(a)は、(b)を外側(図では上側)から見た図であり、(b)は、
図1(a)における破線の楕円で囲んだB部の受枠を示す図である。(c)は、(b)を内側(図では下側)から見た図であり、(d)は、(b)のD-D線断面図である。
【
図4】(a)は、
図1(b)における破線の円で囲んだC部を拡大して示す図であり、(b)は、(a)に示す弁蓋を開閉工具の先端で押してバネ等の付勢力に抗して弁蓋を押し下げた状態を示す図である。
【
図5】(a)は、
図1(b)に示す蓋受枠セットにおいて、内圧によって蓋体が浮上した様子を示す図であり、(b)は、(a)における破線の円で囲んだE部を拡大して示す図である。
【
図6】本発明の第2の地下構造物用蓋受枠セットの一実施形態である、第2実施形態の蓋受枠セットを示す図である。
【
図7】本発明の第3の地下構造物用蓋受枠セットの一実施形態である、第3実施形態の蓋受枠セットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
始めに本発明の第1の地下構造物用蓋受枠セットについて、第1実施形態を用いて説明する。本発明の第1の地下構造物用蓋受枠セットは、密閉型に限定されるものではないが、第1実施形態は、本発明の第1の地下構造物用蓋受枠セットの効果が大きい密閉型のものを例に挙げて説明する。
【0030】
図1(a)は、本発明の第1の地下構造物用蓋受枠セットの一実施形態である蓋受枠セット(地下構造物用蓋受枠セット)の平面図であり、同図(b)は、同図(a)のA-A線断面図である。なお、
図1(b)では、地面Gを示しているが、図面を簡略化するため、同図(a)のように地面Gを省略する場合がある。
【0031】
図1には、円盤状の蓋本体4を有する蓋体3と、その蓋体3を支持する筒状の受枠2とを備えた蓋受枠セット10が示されている。地下埋設物である下水道用排水管は地表から所定の深さの位置に埋設されており、その下水道用排水管の途中に、地下施設として、マンホールが設けられている。下水道用排水管もマンホールも地下構造物に相当する。マンホールは、既製のコンクリート成型品を積み上げた躯体によって、下水道用排水管から地表へ向かう縦穴として形成されている。受枠2は、その躯体の上に設けられたものであり、地下構造物であるマンホールにつながる開口を内周面21によって画定している。
【0032】
図1(b)に示すように、蓋体3は、蓋本体4の他に、ロック部材5と、蝶番部材6とを有するものである。蓋本体4は、受枠2の内周面21に支持されて開口を開閉自在に塞ぐものであり、
図1に示す蓋体3は、蓋本体4が受枠2に嵌合することで開口を塞いでいる(閉蓋状態)。蓋本体4は、鋳鉄製のものであり、その下面に補強用の蓋リブ42が設けられている。なお、蓋本体4は、鋳鉄以外の鉄製であってもよく、鉄以外の金属、樹脂もしくはコンクリート製であってもよい。また、蓋本体4の外周部分には、開閉工具を挿入するための切欠き状の鍵穴41が設けられている。
【0033】
図1(b)に示すように、蝶番部材6は、蓋本体4の下面における、鍵穴41と反対側の周縁部に軸63によって回動自在に連結されている。この蝶番部材6は、その中間部分に形成された鉤状突起61と、その下端部分に形成された抜止突起62とを備えている。また、受枠2の内周面21の下方位置には、蝶番座22が設けられている。この蝶番座22には、蝶番部材6が上下方向に貫通する貫通孔221と、被係合部222とが設けられている。これら蝶番部材6と蝶番座22とによって蝶番構造が構成され、蓋本体4を360度旋回あるいは180度転回させることができる。なお、抜止突起62は、蓋体3を持ち上げると蝶番座22に当接する部分であり、抜止突起62が蝶番座22に当接するまで蓋体3を持ち上げると、蓋本体4を垂直反転させることができる。
【0034】
蓋本体4の鍵穴41が形成された部分の裏側には、ロック部材5が軸部51によって支持されている。また、受枠2における、ロック部材5に対応した部分には、内周面21よりも下方位置に斜め下方に突出した爪受片23が設けられている。
【0035】
図2(a)は、
図1に示すロック部材を抜き出して示す図である。
図2(b)は、同図(a)のロック部材を図の左側から見た図である。なお、
図2(b)では、軸部51の周囲における蓋本体4の一部も示し、蓋本体4の裏側にロック部材5が支持されている状態を示している。
【0036】
図2(a)および同図(b)に示すように、ロック部材5は、蓋本体4の裏側に支持された一対の軸部51,51と、鍵穴41を閉塞する弁蓋52と、弁蓋52よりも下方位置に設けられた係止爪53と、錘54と、付勢手段としてのバネ(ダブルトーションスプリング)55を有している。弁蓋52は、弁座521と、弁座521上に配置されたシール材(パッキン)522と、シール材522上に配置された押え板523とを有している。具体的には、シール材522および押え板523が、ボルトとナットからなる固定部材によって弁座521に固定されている。前述したように本実施形態では密閉型の蓋受枠セット10を採用しており、シール材522は、その先端が、蓋本体4の周縁より突出している(
図4(a)等参照)。
【0037】
係止爪53は、軸部51の軸芯方向に一致する幅方向の長さW2が、鍵穴41の幅方向の長さW1の0.8~1.3倍に設定されている。
図2(b)に示すように、係止爪53は、その側面531が平行に構成されており、全体に均一の幅になっている。なお、
図2(b)では、係止爪53の幅方向の長さW2が、鍵穴41の幅方向の長さW1の1.25倍(例えば、W2が30mmに対してW1が24mm)に設定されたものを示している。
【0038】
ロック部材5は、一対の軸部51,51を中心に、弁蓋52が鍵穴41を閉塞する閉塞状態と、弁蓋52が鍵穴41を開放する開放状態とに回動可能なものである。また、錘54によって閉塞状態に向かう方向の力が付与されるとともに、バネ55によって閉塞状態に向かう方向に付勢されている。
【0039】
図3(b)は、
図1(a)における破線の楕円で囲んだB部の受枠を示す図である。
図3(a)は、同図(b)を外側(図では上側)から見た図であり、同図(c)は、同図(b)を内側(図では下側)から見た図である。また、
図3(d)は、同図(b)のD-D線断面図である。なお、
図3(a)~(c)においては、左右方向がロック部材5の軸部51(
図2(b)参照)における軸芯方向になる。
【0040】
図3(c)および同図(d)に示すように、受枠2の内周面における、蓋本体4の鍵穴41(
図1(a)参照)と対向する箇所には、外側に凹んだ凹部211が形成されており、凹部211の下方位置に斜め下方に突出した爪受片23が設けられている。爪受片23の上面231は、凹部211に連続しており、
図3(d)に示すように、凹部211の上端には、ロック部材5のシール材522(
図2参照)が当接する上部内壁面211aが形成されている。
【0041】
爪受片23は、爪受片23の下側で軸部51の軸芯方向に一致する幅方向に間隔Sをあけて立設し、対向する対向面241が幅方向と直交する方向に沿った一対のリブ24,24と、一対のリブ24,24を外周側で連結する後壁25とによって補強されている。
図3(b)に示すように、一対のリブ24,24それぞれの対向面241,241と、後壁25の内面251とによって、平面視略コ字状の袋部が形成され、この袋部に囲まれた空間Rにロック部材5の係止爪53が挿入される。また、本実施形態では、リブ24の対向面241と後壁25の内面251との接続部に、R3mm~R5mmの第1円弧部26が設けられている。この第1円弧部26によって、一対のリブ24,24が補強されている。
【0042】
図3(d)に示すように、本出願においては、爪受片23の下面232が後壁25の内面251に接続する部分を、爪受片23の下面232における基部232aとする。爪受片23の下面232は、基部232aから先端に向かって斜め下方に傾斜しているものである。すなわち、爪受片23の下面232における最も高い部分が基部232aとなる。この基部232aの近傍は、
図3(d)に示す断面視において、円弧状に構成されている。
【0043】
図3(c)に示すように、一対のリブ24,24の間隔Sは、ロック部材5の係止爪53の幅方向の長さW2(
図2(b)参照)の1.1~1.4倍に設定されている。
図3では、一対のリブ24,24の間隔Sが、係止爪53の幅方向の長さW2の1.33倍程度(例えば、W2が30mmに対してSが40mm)に設定されたものを示している。なお、一対のリブ24,24の間隔Sと係止爪53の幅方向の長さW2との対比のため、
図3(c)では、係止爪53を二点鎖線で概念的に示している。
【0044】
また、
図3(c)に示すように、本実施形態では、一対のリブ24,24は、軸部51の軸芯方向の寸法となる厚さT1の和が、一対のリブ24,24の間隔Sよりも大きくなるように構成されている。
図3では、一対のリブ24,24の厚さT1の和が、一対のリブ24,24の間隔Sの1.35倍(例えばSが40mmに対して、T1(27mm)+T1(27mm)=54mm)に設定されたものを示している。
【0045】
図4(a)は、
図1(b)における破線の円で囲んだC部を拡大して示す図である。
【0046】
この
図4(a)は、閉塞状態の様子を示している。具体的には、円弧状の矢印で示すように、錘54によって閉塞状態に向かう方向の力が付与されるとともに、バネ55によって閉塞状態に向かう方向に付勢されている。本実施形態は密閉型であり、シール材522の先端部分における上面が凹部211の上部内壁面211aに圧接し、弁蓋52が鍵穴41を閉塞している。このため、シール材522と受枠2との間には隙間が生じず、密閉性が向上している。また、
図4(a)に示す閉塞状態では、係止爪53が爪受片23の下方に位置している。すなわち、係止爪53が、袋部に囲まれた空間Rに挿入されており、蓋体3が浮上すると係止爪53が爪受片23に係止して開口の開放が阻止される(
図5参照)。
【0047】
図4(b)は、同図(a)に示す弁蓋を開閉工具の先端で押してバネ等の付勢力に抗して弁蓋を押し下げた状態を示す図である。
【0048】
この
図4(b)は、開放状態の様子を示している。具体的には、円弧状の矢印で示すように、ロック部材5が図では反時計回りに回動し、鍵穴41が開放されるとともに係止爪53が爪受片23の下方から退き、袋部に囲まれた空間Rの外に位置している。前述したように、シール材522は、先端が蓋本体4の周縁より突出している。このため、閉塞状態から開放状態にロック部材5が回動する際に、シール材522の先端と係止爪53の上面231との干渉を抑えるため爪受片23の厚さが制限されている。
【0049】
図4(b)に示す開放状態において、開閉工具Toの先端部分を鍵穴41の縁部分に係合させ、開閉工具を引き上げると、係止爪53が爪受片23に係止することなく開蓋することができる。すなわち、開放状態では、開口の開放が許容されている。
【0050】
図5(a)は、
図1(b)に示す蓋受枠セットにおいて、内圧によって蓋体が浮上した様子を示す図である。
【0051】
集中豪雨等によって内圧が所定以上に高まると、
図5(a)に示すように、蓋体3が浮上する。具体的には、蝶番部材6の鉤状突起61が蝶番座22の被係合部222に係合するとともに、係止爪53が爪受片23に係止した状態で、蓋本体4が高さh分浮上する。これにより、蓋本体4と受枠2との隙間から内圧を解放する。
【0052】
図5(b)は、同図(a)における破線の円で囲んだE部を拡大して示す図である。
【0053】
図5(b)に示すように、係止爪53が、爪受片23の下面232に接触した状態で係止爪53が爪受片23に係止している。なお、蓋体3が浮上する際には、図で示されている状態よりも、爪受片23の下面232における基部232a寄りに係止爪53が当接した後、ロック部材5が反時計回りに僅かに回動し、係止爪53が接触する位置が先端側に移動している。
【0054】
さらに内圧が高まっていくと、係止爪53が破断し、係止爪53と爪受片23との係止が解除される。これによって開蓋されて内圧が解放され、下水道管等の破損を防ぐと共に、蝶番構造が破壊されて蓋体3が飛散してしまうといった不具合を防止することができる。本実施形態では、係止爪53の側面531が平行となるように構成され全体に均一の幅になっているため、係止爪53の強度精度が安定し、爪受片23の破損や変形をより抑えることができる。
【0055】
図2(b)を用いて説明したように、係止爪53の幅方向の長さW2は、鍵穴41の幅方向の長さW1の1.3倍以下に設定されている。このため、係止爪53が破断しやすくなるとともに、その破断片も小さくすることができる。
【0056】
一方、係止爪53の幅方向の長さW2が、鍵穴41の幅方向の長さW1の0.8倍未満であると、係止爪53の破断強度が弱くなりすぎてしまう。この結果、例えば内圧が60kN~106kNの範囲内において係止爪が破断するといった、必要な圧力解放耐揚圧性能を確保することが困難になる虞があり好ましくない。
【0057】
また、
図3(c)等を用いて説明したように、係止爪53は、係止爪53の幅方向の長さW2の1.4倍以下の間隔Sで設けられた一対のリブ24,24によって補強されている。これにより、爪受片23の下面232における、係止爪53が係止して力がかかる部分の近くに一対のリブ24,24が位置することになる。この結果、爪受片23が効果的に補強されて破断強度が向上し、係止爪53が破断する前に、爪受片23が破損したり変形したりしてしまうことを防ぐことができる。すなわち、受枠2全体を交換しなければならないといった不具合を回避することができる。
【0058】
一方、一対のリブ24,24の間隔Sが、係止爪53の幅方向の長さW2の1.1倍未満であると、蝶番部材6と蝶番座22とのガタつきや、鋳造品である受枠2の製造誤差等によって、袋部に囲まれた空間Rへの係止爪53の挿入に支障が生じる虞があり好ましくない。
【0059】
さらに、本実施形態では、一対のリブ24,24は、軸部51の軸芯方向の寸法となる厚さT1の和が、一対のリブ24,24の間隔Sよりも大きくなるように構成されている。こうすることで、爪受片23の破断強度をさらに向上させることができる。ここで、爪受片23の破断強度を向上させるためには、一対のリブ24,24における厚さT1の和は、一対のリブ24,24の間隔Sの1.3倍以上がより好ましいが、2倍を超えると、爪受片23の破断強度はそれ以上向上しない。
【0060】
また、
図5(b)において一点鎖線で示す係止爪53’のように、係止爪53’の全長を長くする等により、係止爪53’が、爪受片23の下面232において、基部232aの近傍に当接する態様を採用してもよい。
図3(d)を用いて説明したように、本実施形態の爪受片23は、下面232が、突出方向において斜め下方に傾斜しているとともに、基部232aの近傍が円弧状のものであるため、基部232aの近傍の破断強度が向上する。さらに、基部232aの近傍に当接する態様を採用すれば、基部232aにかかるモーメントも小さくなり、爪受片23の破損や変形をより抑えることができる。ここでいう基部232aの近傍とは、爪受片23の下面232における、基部232aから先端までのうち、基部232a寄りの30%の領域をいうものとする。
【0061】
次に、
図1~
図5に示す蓋受枠のセットの他の実施形態と変形例について説明する。以下に説明する他の実施形態と変形例においては、
図1~
図5に示す実施形態との相違点を中心に説明し、
図1~
図5に示す実施形態における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0062】
図6は、本発明の第2の地下構造物用蓋受枠セットの一実施形態である、第2実施形態の蓋受枠セットを示す図である。
図6では、第1実施形態の
図3(c)に相当する様子を示している。
【0063】
図6に示すように、本実施形態では、一対のリブ24,24それぞれの対向面241と爪受片23の下面232との接続部に、R3mm~R5mmの第2円弧部27が設けられている。
【0064】
本実施形態では、爪受片23に接続する第2円弧部27によって、爪受片23の破断強度が向上し、密閉型であっても、爪受片23の破損や変形を抑えることができる。このため、本実施形態では、一対のリブ24の間隔Sは、第1の実施形態における、係止爪53の幅方向の長さW2(
図2(b)参照)の1.1~1.4倍といった要件に限定されるものではない。したがって、第2円弧部27を設ける分、第1の実施形態と比べ、相対的に一対のリブ24の間隔Sを大きくしてもよい。例えば、一対のリブ24の間隔Sを、係止爪53の幅方向の長さW2の1.3倍~1.7倍としてもよい。
【0065】
図7は、本発明の第3の地下構造物用蓋受枠セットの一実施形態である、第3実施形態の蓋受枠セットを示す図である。本発明の第3の蓋受枠セットは、凹部211を有する密閉型を前提とするものである。
図7では、第1実施形態の
図3(d)に相当する様子を示している。また、ロック装置については、係止爪53の先端部分のみを一点鎖線で模式的に示している。
【0066】
図7では、凹部211から垂下する鉛直線を二点鎖線で示しており、爪受片23は、その下面232が、凹部211よりも外側から突出したものである。係止爪53は、蓋体3が浮上すると(
図5(b)参照)、爪受片23の下面232における、凹部211よりも外側に当接する構成を採用している。なお、係止爪53を凹部211よりも外側に当接させる分、一点鎖線で示すように、爪受片23’の突出寸法を短くしてもよい。
【0067】
本実施形態によれば、係止爪53は、蓋体3が浮上すると、爪受片23の下面232における、凹部211よりも外側に当接するものであるため、係止爪53の力が凹部211よりも外側の受枠2部分にかかり爪受片23にかかる剪断力が減少する。このため、爪受片23を厚くすることができない密閉型であっても、爪受片23の破損や変形を抑えることができる。
【0068】
図8は、変形例の蓋受枠セットを示す図である。
図8(a)では、第1実施形態の
図4(a)に相当する様子を示し、
図8(b)では、第2実施形態の
図6に相当する様子を示している。
【0069】
図8(a)では、ロック部材5が回動する際におけるシール材522の軌道Orを破線で示しており、凹部211と爪受片23の上面231とは、軌道Orに倣って断面視円弧状に連続している。これにより、密閉型であっても、シール材522と爪受片23との干渉を避けつつ、爪受片23の破断強度を向上させることができる。
【0070】
また、
図8(a)に示すように、本変形例では後壁25の厚さを厚く構成し、閉鎖状態における係止爪53と後壁25の内面251との間隔を小さくしている。具体的には、
図8(b)に示すように、後壁25の厚さT2は、一対のリブ24,24の対向面241,241と後壁25の内面251とによって構成された袋部の奥行き寸法Deに対し、0.5~0.8倍に設定されている。この構成によっても、爪受片23の破断強度を向上させることができる。
【0071】
さらに、
図8(c)において、凹部211と爪受片23の上面231とが連続する部分を拡大して示すように、凹部211を上方に向かうに従い外側に拡がる方向に角度α(例えば3~5°)傾斜させる態様としてもよい。この態様としても、シール材522と爪受片23との干渉を避けつつ、爪受片23の破断強度を向上させることができる。
【0072】
以上説明した蓋受枠セット10によれば、係止爪53の破断片を小さくする工夫がなされるとともに、爪受片23を厚くすることができない密閉型であっても、爪受片23の破損や変形を抑えることができる。
【0073】
本発明は前述した実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【0074】
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 蓋受枠セット(地下構造物用蓋受枠セット)
2 受枠
21 内周面
211 凹部
211a 上部内壁面
23 爪受片
231 上面
232 下面
232a 基部
24 リブ
241 対向面
25 後壁
251 内面
27 第2円弧部
3 蓋体
4 蓋本体
41 鍵穴
5 ロック部材
51 軸部
52 弁蓋
522 シール材(パッキン)
53,53’ 係止爪
55 バネ(ダブルトーションスプリング)
6 蝶番部材