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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】男性用パンツ
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/02 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A41B9/02 H
A41B9/02 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021129543
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023023744
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】593029075
【氏名又は名称】株式会社アズ
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】築山 智
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/086307(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3158643(JP,U)
【文献】国際公開第2019/004426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身頃の前面に陰茎を露出するための開口部が形成され、身頃の上部に腰ゴム部が周方向に形成されている男性用パンツであって、
前記身頃は、伸縮性に富んだニット素材で構成され、
前記開口部が形成されている身頃の前面を被覆する前立て部が、前記身頃を構成する素材よりも伸縮しない、肌触りの良い布帛素材で構成され、
前記前立て部は、前立て部の上部に、身頃の前面にある腰ゴム部に接続するための前立てゴム部を備え、
前記前立てゴム部の幅方向の両端と前記腰ゴム部とが接続され、前記前立て部の下端と前記身頃の股部とが接続されて、前記身頃に前記前立て部が取り付けられており、前記前立てゴム部と前記腰ゴム部との間が遊離して通気部が形成されている
ことを特徴とする男性用パンツ。
【請求項2】
前記前立てゴム部は、前記前立て部の本体部分よりも幅広に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の男性用パンツ。
【請求項3】
前記前立てゴム部と前記腰ゴム部との接続箇所は、前記前立て部の本体部分の端から着用者の左右の上前腸骨棘の位置までの間にある
ことを特徴とする請求項1又は2記載の男性用パンツ。
【請求項4】
前記前立て部は、楊柳素材で構成されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の男性用パンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性用のパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
男性には陰茎や陰嚢があり、パンツを着用した時に陰茎と陰嚢が密着することで股間に熱籠りが生じてしまうことがある。そのため、このような股間の熱籠りを軽減するため、陰茎と陰嚢とを分離させて着用するパンツが提案されている。かかるパンツは、フロントの前立て部に空間を形成し、その空間で陰茎を保持し、パンツ内部で陰嚢を保持するというものである。例えば、特許文献1では、陰茎下部と陰嚢上部を区分収納することにより、発汗に伴う水分の蒸発を促進する男性下着が開示されている。
【0003】
また、従来の男性用パンツは、伸縮性に富んだニット素材か、または、伸び縮みの少ない布帛素材のいずれか単一素材で構成されている。股間部の快適性に配慮すると、さらっとした風合いの伸び縮みの少ない布帛素材を用いるのがよいとされる。一方、パンツ全体の着用感を優先すれば、ニットのようなストレッチ性のある素材で身頃を構成するのがよいとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-125570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、伸縮性に富んだニット素材と伸び縮みの少ない布帛素材の2つの素材の両方を縫合して男性用パンツを形成すると、それぞれの素材が洗濯後の伸縮性に差異があるため、外観不良を引き起こすという問題がある。すなわち、ニット素材は縮みやすく、布帛は縮みにくいため、洗濯後に身頃部分と股間部分とのバランスが崩れてしまうことになる。
【0006】
また、上記特許文献1のパンツでは、下着前方に陰茎を突き出すための穴が設けられているものの、陰茎を保持する空間が不十分であり、股間部の熱籠りの軽減効果に乏しく着用感も良好とはいえないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、股間部と身頃とを異なる素材で構成しても良好な外観を保ちつつ、かつ、股間部の熱籠りを軽減し快適な着用感が得られる男性用パンツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る男性用パンツは、身頃の前面に陰茎を露出するための開口部が形成され、身頃の上部に腰ゴム部が周方向に形成されている男性用パンツであって、前記身頃は、伸縮性に富んだニット素材で構成され、前記開口部が形成されている身頃の前面を被覆する前立て部が、前記身頃を構成する素材よりも伸縮しない、肌触りの良い布帛素材で構成され、前記前立て部は、前立て部の上部に、身頃の前面にある腰ゴム部に接続するための前立てゴム部を備え、前記前立てゴム部の幅方向の両端と前記腰ゴム部とが接続され、前記前立て部の下端と前記身頃の股部とが接続されて、前記身頃に前記前立て部が取り付けられており、前記前立てゴム部と前記腰ゴム部との間が遊離して通気部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、股間部を肌ざわりの良い素材で構成し、身頃を伸縮性に優れた別の素材で構成し、両者を前立て部の上部に形成したゴム部両端と身頃の腰ゴム部とで接続するとともに、前立て部の下端と身頃の股部とを接続することで、前立て部と身頃とを接続するので、接続箇所が少なく、洗濯後に身頃と股間部とのバランスが崩れることなく良好な外観を保ちつつ、股間部の熱籠りを軽減して良好な着用感の男性用パンツが実現される。
【0010】
ここで、前記前立てゴム部は、前記前立て部の本体部分よりも幅広に形成されているのが好ましく、前記前立てゴム部と前記腰ゴム部との接続箇所は、前記前立て部の本体部分の端から着用者の左右の上前腸骨棘の位置までの間にあるのが好ましい。
【0011】
これによれば、通気部からの十分な通気性が確保されるので、股間部の熱籠りをさらに軽減することができる。
【0012】
また、前記前立て部は、楊柳素材で構成されているのが好ましい。
【0013】
これによれば、肌との接触面積が少なくなり、べとつかず、肌ざわりが良好な男性用パンツが実現される。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る男性用パンツによれば、前立て部を肌ざわりが良好な素材で構成し、身頃を伸縮性に富んだ別の素材で構成し、前立て部の上部に形成したゴム部を身頃の腰ゴム部に接続するとともに、前立て部の下端を身頃の股部に接続することにより、前立て部と身頃とを接続するので、股間部の熱籠りを軽減して快適な着用感の男性用パンツが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】男性用パンツの正面図である。
図2】男性用パンツの斜視図である。
図3】男性用パンツの側面図である。
図4図1のA-A線断面図である。
図5】前立て部を縫着する前の状態を示す斜視図である。
図6】男性用パンツを着用した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、男性用パンツの正面図であり、図2は斜視図、図3は側面図である。図4図1のA-A線での断面図である。
【0018】
男性用パンツ1は、下半身に着用する男性用の下着で、着用時に陰茎と陰嚢とを分離させることで股間の熱籠りを軽減するよう構成されており、大きく分けて身頃2と前立て部10とを備えている。
【0019】
身頃2は、経方向および緯方向のいずれの方向にも伸縮する、伸縮性に富んだ素材、例えばニット生地で構成されており、着用時にニット素材によるフィット感がもたらされる、言い換えれば、パンツ全体としての良好な着用感が得られるようになっている。身頃2の上部にはウエストゴムである腰ゴム部3が周方向に形成されており、身頃2の前面には開口部5が形成されている。開口部5は、着用時に身頃2から外へ陰茎を露出するための孔である。この開口部5の下方で、身頃2の内側には、着用時に陰嚢を保持する空間である内側収納部6が形成されている。
【0020】
このように、男性用パンツ1は、着用時に、開口部5から陰茎を露出させ、陰嚢を内側収納部6において保持することで、陰茎と陰嚢とを分離させて着用することができるようになっており、これにより股間における熱籠りの軽減が図られている。
【0021】
前立て部10は、身頃2の前面に取り付けられ、前面を被覆し開口部5から露出される陰茎を隠すとともに保持する。前立て部10は、さらっとした風合いの伸び縮みの少ない布帛素材で構成されている。すなわち、前立て部10は、身頃2よりも伸縮性の点では劣るものの、肌触りの良い織生地で構成されている。ここにいう布帛素材としては、例えば楊柳素材などが用いられる。経方向のシボが入れられた楊柳素材は、肌との接触面積を少なくして、べとつかず、肌ざわりが良好となるので好ましい。また、楊柳素材は、緯方向(幅方向)へ多少の伸縮が可能になっている点でも好ましい。その理由については、後述する。
【0022】
前立て部10は、正面視において、上方から下方にかけて幅が狭くなる形状(略逆三角形の形状)となっており、左右の側部である前立て側部14は、緩やかに湾曲しながら下方に向かうように形成されている。
【0023】
前立て側部14は、身頃2と繋がれておらず身頃2から遊離しており、排尿時等に陰茎を露出させることができるようにするとともに、側部から陰茎が保持されている空間(身頃2と前立て部10との間)への通気を確保して股間の熱籠りを軽減している。なお、前立て部10は、下方に膨出させて形成され、開口部5から露出される陰茎の収納部となる前立て凹部15を備えている。
【0024】
また、前立て部10は、上部に前立て部10を身頃2に取り付けるための前立てゴム部11を備えている。前立てゴム部11は、ウエストゴムである腰ゴム部3と同じ素材または腰ゴム部3と同様に伸縮する素材で構成されている。
【0025】
前立てゴム部11は、左右の端部である腰ゴム縫着部12において、身頃2の前面にある腰ゴム部3に縫着されており、左右それぞれの腰ゴム縫着部12の中間は縫着されずに腰ゴム部3から遊離しており、その結果として通気部13が形成されている。
【0026】
この通気部13が形成されていることにより、着用時に上部から陰茎が保持されている空間への通気が確保されるので、股間の熱籠りをさらに軽減し、ひいては、着用による股間部の不快感を軽減することが可能になっている。なお、左右それぞれの腰ゴム縫着部12の中間を一切縫着しないという趣旨ではなく、通気部13が形成されていれば、左右それぞれの腰ゴム縫着部12の中間に縫着箇所を設けてもよい。
【0027】
前立てゴム部11の幅は、前立て部10の本体部分の幅よりも広くなるように設定されている。通気部13における十分な通気性を確保する観点からである。前立てゴム部11を前立て部10の本体部分の幅と同じにすると、着用時に前立てゴム部11と腰ゴム部3とが重なり合うだけで通気部13の形成が不十分になりうる。したがって、前立てゴム部11の幅を前立て部10の本体部分の幅よりも広くして、通気部13を形成しうる遊びを設ける必要がある。一方、あまりに前立てゴム部11の幅を広くすると、着用感の悪化を招くおそれがある。そのため、前立てゴム部11の幅は、前立て部10の本体部分の端から着用者の左右の上前腸骨棘の位置までの間に腰ゴム縫着部12が位置するよう、着用時のバランスを考慮して設定するのが好ましい。
【0028】
さらに、前立て部10は、下端において、身頃2の股部4に縫着されている。身頃2と前立て部10との縫着箇所は、それぞれの生地の特性を有効に発揮させるうえで、なるべく少なくするのが好ましい。そのため、前立て部10を身頃2に縫着する箇所が最小限となるよう、前立て部10の下端は、身頃2の底マチ部で幅の狭くなる箇所である股部4に縫着されている。また、上述のように、前立て部10を緯方向へ伸縮する楊柳素材で構成することで、身頃2の股部4の緯方向への伸縮に追随させられるので、身頃2と前立て部10との素材の相違により洗濯後などの外観不良の発生を防止することができる。
【0029】
図5は、前立て部10を縫着する前の状態を示す斜視図である。
【0030】
図5に示すように、身頃2の股部4に前立て部10の下端を縫着した後、前立て部10の上部に取り付けられた前立てゴム部11の左右両端の腰ゴム縫着部12を腰ゴム部3に縫着することにより、本実施形態の男性用パンツ1は形成される。
【0031】
図6は、本実施形態の男性用パンツ1を着用した状態を示す断面図である。
【0032】
上記の構成を備えた男性用パンツ1を着用すると、開口部5から突き出した陰茎を前立て部10の前立て凹部15に収納し、陰嚢を内側収納部6において保持することで、陰茎と陰嚢とを分離した状態にすることができ、股間における熱籠りを軽減することができる。
【0033】
このとき、前立て部10は、その上部が前立てゴム部11を介して腰ゴム部3に縫着され、下端が股部4に縫着されており、前立て部10の左右の前立て側部14は縫着されていないので、側部から陰茎が保持されている空間への通気が確保され股間における熱籠りのさらなる軽減が図られている。
【0034】
さらに、前立てゴム部11と腰ゴム部3との縫着は、前立てゴム部11の左右両端の腰ゴム縫着部12においてなされ、その中間部分は縫着されずに通気部13が形成されているので、上部から陰茎が保持されている空間への通気が確保され、股間における熱籠りがより一層改善されることになる。
【0035】
このように、本実施形態の男性用パンツ1によれば、肌ざわりが良好な伸び縮みの少ない楊柳素材等の布帛素材で構成される前立て部10の上部に前立てゴム部11を取り付け、この前立てゴム部11を腰ゴム部3に縫着することにより、伸縮性に富んだニット生地等の素材で構成される身頃2と前立て部10とを接続するように構成されているので、股間部の不快感の軽減とパンツ全体の快適な着用感とを両立させることができる。このとき、前立て部10と身頃2とを異なる素材で構成することになるが、前立て部10と身頃2との接続箇所は、腰ゴム縫着部12の2箇所と身頃2の股部4のみであるから、素材の相違に基づく洗濯後の外観不良が発生しにくくなっている。
【0036】
また、前立て部10と身頃2との間の陰茎が保持される空間は、前立てゴム部11と腰ゴム部3との間で形成される通気部13および前立て側部14からの通気がなされるので、着用時の股間の熱籠りが改善され、着用による股間部の不快感の軽減が図られている。
【0037】
以上、本発明に係る男性用パンツについて、実施の形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0038】
例えば、上記実施の形態では、ボクサーブリーフタイプのパンツを図示して説明したが、股間部が前開きになっているものであれば、タイツなどの男性用パンツであってもよい。
【0039】
また、上記実施の形態では、身頃と前立て部とを接続する方法として縫着を例として示したが、樹脂を用いた接着など他の接続方法であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、男性用パンツに適用可能であり、特にボクサーブリーフやタイツなどの股間部が前開きになっている男性用パンツとして有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 男性用パンツ
2 身頃
3 腰ゴム部
4 股部
5 開口部
6 内側収納部
10 前立て部
11 前立てゴム部
12 腰ゴム縫着部
13 通気部
14 前立て側部
15 前立て凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6