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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】超音波ホーン
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/06 20060101AFI20240201BHJP
   B06B 1/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
B06B1/02 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022581071
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021004918
(87)【国際公開番号】W WO2022172352
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 広志
(72)【発明者】
【氏名】足立 卓也
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-146172(JP,A)
【文献】特開2005-236136(JP,A)
【文献】特表2016-524547(JP,A)
【文献】特開2005-319769(JP,A)
【文献】特開平6-286401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
B06B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動方向が前後方向となるように第1超音波振動子が内部に取付けられる縦振動発生部と、
前記縦振動発生部から前方に向かって延びて前記縦振動発生部で発生した超音波振動を増幅し、前端部にボンディングツールが取付けられるホーン部と、
前記縦振動発生部から後方に向かって延びるねじり振動発生部と、を含む、ワイヤボンディング装置に用いられる超音波ホーンであって、
前記ねじり振動発生部は、
前記縦振動発生部から後方に向かって延びる棒状体と、
前記棒状体の長手方向の中心軸の周りに軸対称に配置される前記棒状体よりも質量が小さい一対の振動部材と、
前記棒状体の長手方向の前記中心軸の周りに軸対称で、振動方向が周方向となるように前記棒状体と各前記振動部材との間に挟み込まれる一対の第2超音波振動子と、
前記棒状体と各前記振動部材との間に挟み込まれた各前記第2超音波振動子を圧縮して各前記第2超音波振動子をそれぞれ与圧する一対の与圧機構と、で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波ホーンであって、
前記棒状体は、一対の切欠き部が長手方向の前記中心軸の周りに軸対称に形成され、
各前記振動部材は、前記棒状体と別部材で、各前記切欠き部にそれぞれ嵌め込まれており、
前記与圧機構は、前記棒状体又は前記振動部材にねじ込まれて前記棒状体と前記振動部材との間に挟み込まれた前記第2超音波振動子を圧縮するボルトであること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波ホーンであって、
各前記振動部材は、前記棒状体の長手方向の前記中心軸の周りに軸対称に設けられた半径方向に延びるスリットでそれぞれ区画された部分であり、一部が前記棒状体とそれぞれ接続されており、
一対の前記第2超音波振動子は、前記棒状体と各前記振動部材との間の各凹部の中にそれぞれ配置されており、
前記与圧機構は、前記凹部の中の前記第2超音波振動子と前記棒状体との間又は前記第2超音波振動子と前記振動部材との間に差し込まれた楔であること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波ホーンであって、
前記第2超音波振動子は、高周波電力を印加した際に厚み方向に振動する圧電素子を複数枚積層して構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項5】
請求項3に記載の超音波ホーンであって、
前記棒状体は、
後端面から長手方向の中央にわたって形成されて中央部から水平方向に半径方向外側に向かって延びる一対の水平スリットと、
前記後端面から長手方向の中央にわたって形成されて前記中央部から上下方向に向かって半径方向外側に向かって延びる一対の縦スリットと、
長手方向の中央で中央部から斜め上下方向に向かって延びる一対の扇型スリットと、を備え、
一対の前記水平スリットと、一対の前記縦スリットと、一対の前記扇型スリットとは、前記棒状体の長手方向の前記中心軸の周りに軸対称にそれぞれ設けられており、
一の前記振動部材は、一の前記水平スリットと、一の前記縦スリットと、一の前記扇形スリットとで区画された部分であり、他の前記振動部材は、他の前記か水平スリットと、他の前記縦スリットと、他の前記扇形スリットとで区画された部分であり、
一の前記振動部材と、他の前記振動部材とは、それぞれ前記中央部で前記棒状体と接続されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先端に取付けられたボンディングツールを超音波振動させる超音波ホーンの構造と超音波ホーンの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ダイの電極とリードフレームのリードとの間をワイヤで接続するワイヤボンディング装置が多く用いられている。ワイヤボンディング装置は、キャピラリによってワイヤを電極の上に押し付けた状態でキャピラリを超音波振動させてワイヤと電極とをボンディングした後、ワイヤをリードまで掛け渡し、掛け渡したワイヤをリードの上に押しつけた状態でキャピラリを超音波させてワイヤとリードとをボンディングする。
【0003】
一方、ボンディング品質の向上と、ボンディング強度の向上に対応するため、ボンディングツールの先端を複数の方向に振動させる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ノッチにより電極面と平行な方向に分離された2つの領域が形成された圧電素子を積層した超音波振動子を超音波ホーンに取付け、圧電素子の各領域に異なる周波数の電力を供給して超音波ホーンに取付けられたボンディングツールの先端を複数の方向に振動させてスクラブ運動を発生させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6180736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された方法では、特殊な超音波振動子を用いるので、超音波振動子の構造や駆動装置が複雑になってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡便な構造で先端に取り付けたボンディングツールを複数の方向に振動させる超音波ホーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超音波ホーンは、振動方向が前後方向となるように第1超音波振動子が内部に取付けられる縦振動発生部と、縦振動発生部から前方に向かって延びて縦振動発生部で発生した超音波振動を増幅し、前端部にボンディングツールが取付けられるホーン部と、縦振動発生部から後方に向かって延びるねじり振動発生部と、を含む超音波ホーンであって、ねじり振動発生部は、縦振動発生部から後方に向かって延びる棒状体と、棒状体の長手方向の中心軸の周りに軸対称に配置される棒状体よりも質量が小さい一対の振動部材と、棒状体の長手方向の中心軸の周りに軸対称で、振動方向が周方向となるように棒状体と各振動部材との間に挟み込まれる一対の第2超音波振動子と、棒状体と各振動部材との間に挟み込まれた各第2超音波振動子を圧縮して各第2超音波振動子をそれぞれ与圧する一対の与圧機構と、で構成されていること、を特徴とする。
【0008】
これにより、第1超音波振動子によってボンディングツールの先端を超音波ホーンの前後方向に超音波振動させると共に、第2超音波振動子によってねじり振動発生部にねじり振動を発生させることにより、ボンディングツールの先端を前後方向に直交する横方向に超音波振動させることができる。
【0009】
本発明の超音波ホーンにおいて、棒状体は、一対の切欠き部が長手方向の中心軸の周りに軸対称に形成され、各振動部材は、棒状体と別部材で、各切欠き部にそれぞれ嵌め込まれており、与圧機構は、棒状体又は振動部材にねじ込まれて棒状体と振動部材との間に挟み込まれた第2超音波振動子を圧縮するボルトとしてもよい。
【0010】
振動部材を棒状体と別部材とし、その間に第2超音波振動子を挟んでボルトで締結するので、全体構成を簡便にすることができる。
【0011】
本発明の超音波ホーンにおいて、各振動部材は、棒状体の長手方向の中心軸の周りに軸対称に設けられた半径方向に延びるスリットでそれぞれ区画された部分であり、一部が棒状体とそれぞれ接続されており、一対の第2超音波振動子は、棒状体と各振動部材との間の各凹部の中にそれぞれ配置されており、与圧機構は、凹部の中の第2超音波振動子と棒状体との間又は第2超音波振動子と振動部材との間に差し込まれた楔でもよい。
【0012】
スリットにより振動部材を区画するので、部品点数を低減して簡便な構造とすることができる。
【0013】
本発明の超音波ホーンにおいて、第2超音波振動子は、高周波電力を印加した際に厚み方向に振動する圧電素子を複数枚積層して構成されてもよい。
【0014】
これにより、特殊な圧電素子を用いることなくボンディングツールの先端を横方向に超音波加振することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、簡便な構造で先端に取り付けたボンディングツールを複数の方向に振動させる超音波ホーンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の超音波ホーンの平面図である。
図2】実施形態の超音波ホーンの前端部を示す立面図である。
図3】実施形態の超音波ホーンのねじり振動発生部の軸方向の断面図であって、図1のA-A断面である。
図4】実施形態の超音波ホーンのねじり振動発生部の長手方向の断面図であって、図3に示すB-B断面である。
図5】実施形態の超音波ホーンのねじり振動発生部の長手方向の断面図であって、図3に示すC-C断面である。
図6】他の実施形態の超音波ホーンの平面図である。
図7】他の実施形態の超音波ホーンのねじり振動発生部の軸方向の断面図であって、図6のD-D断面である。
図8】他の実施形態の超音波ホーンのねじり振動発生部の長手方向の断面図であって、図7に示すE-E断面である。
図9】他の実施形態の超音波ホーンのねじり振動発生部の長手方向の断面図であって、図7に示すF-F断面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら実施形態の超音波ホーン100について説明する。図1に示すように、超音波ホーン100は、縦振動発生部10と、ホーン部20と、ねじり振動発生部30とで構成されている。尚、以下の説明では、超音波ホーン100の長手方向の中心軸101の延びる方向をY方向又は前後方向、水平面内でY方向と直角方向をX方向又は横方向、上下方向をZ方向とし、また、ホーン部20の側を前方又はY方向プラス側、ねじり振動発生部30の側を後方又はY方向マイナス側として説明する。尚、中心軸101は仮想軸である。
【0018】
縦振動発生部10は、ケーシング11と、第1超音波振動子13と、楔14とで構成されている。
【0019】
ケーシング11は、チタン等の金属製で中央に第1超音波振動子13を格納する開口12が設けられている。また、ケーシング11の外面には、X方向プラス側とX方向マイナス側とにそれぞれ延びる取付けアーム15が設けられている。
【0020】
第1超音波振動子13は、電圧を印加すると厚み方向に振動するピエゾ素子等の圧電素子を複数枚積層して構成されている。第1超音波振動子13は、振動方向である積層方向が前後方向となるようにケーシング11の開口12の中に取付けられている。そして、開口12の後端面と第1超音波振動子13の後端面との間には楔14が差し込まれている。楔14は第1超音波振動子13を前後方向に圧縮して第1超音波振動子13に前後方向の与圧を付与する。
【0021】
ホーン部20は、縦振動発生部10のケーシング11から前方に向かって延びて、縦振動発生部10で発生した前後方向の超音波振動を増幅する部分である。ホーン部20は、縦振動発生部10のケーシング11と一体に形成された金属製で、ケーシング11の前端に接続される根元部から前端部21に向かって幅、或いは直径が細くなっている。図2に示すように、ホーン部20の前端部21には、ボンディングツールであるキャピラリ51が取付けられている。
【0022】
図1図3に示すように、ねじり振動発生部30は、棒状体31と、一対の振動部材32a,32bと、一対の第2超音波振動子33a,33bと、一対の与圧機構である一対のボルト34a、34bとで構成されている。尚、図3において、一点鎖線102は、中心軸101を通り水平方向に延びる線であり、一点鎖線103は、中心軸101を通り上下方向或いはZ方向に延びる線である。一点鎖線102、103は中心軸101の位置を示すための仮想線である。図7においても同様である。
【0023】
棒状体31は、縦振動発生部10のケーシング11の後端から後方に延びる円柱状の金属部材であって、ケーシング11、ホーン部20と一体に形成されている。棒状体31は、後端部に断面が扇形で長手方向に延びる一対の切欠き部35a,35bが形成されている。図3に示すように、一対の切欠き部35a、35bは、棒状体31の長手方向の中心軸101の周りに軸対称となるように形成されている。尚、棒状体31長手方向の中心軸101は、図1を参照して説明した超音波ホーン100全体の長手方向の中心軸101と同一で、Y方向又は前後方向に延びる軸である。
【0024】
図3、4に示すように、一方の切欠き部35aの上面には、一方の第2超音波振動子33aが配置されている。一方の第2超音波振動子33aは、高周波電力を印加した際に厚み方向に超音波振動するピエゾ素子等の圧電素子を複数枚積層して構成されている。一方の第2超音波振動子33aは振動方向となる圧電素子の積層方向が周方向となるように一方の切欠き部35aの上に配置されている。
【0025】
一方の第2超音波振動子33aの上には、一方の振動部材32aが配置されている。一方の振動部材32aは、断面が四角の柱状部材であって、一方の切欠き部35aに嵌め込まれている。一方の振動部材32aは、金属製で棒状体31よりも質量が小さい部材である。また、振動部材32aは棒状体31とは別部材である。
【0026】
一方の振動部材32aは、一方の振動部材32aに設けられた孔と一方の第2超音波振動子33aに設けられた孔に通した一方のボルト34aの雄ねじ部を棒状体31の雌ねじ部にねじ込むことによって一方の第2超音波振動子33aと共に棒状体31に固定されている。従って、一方のボルト34aで一方の振動部材32aと一方の第2超音波振動子33aとを棒状体31の一方の切欠き部35aに固定すると、一方のボルト34aは、棒状体31の一方の切欠き部35aと一方の振動部材32aとの間に挟み込まれた一方の第2超音波振動子33aを矢印95a、96aのように圧縮して一方の第2超音波振動子33aを与圧する。このように、一方の第2超音波振動子33aは周方向に与圧されている。
【0027】
図3、5に示すように、他方の切欠き部35bは、一方の切欠き部35aと中心軸101の回りに軸対称に形成されておいる。下面には、一方の第2超音波振動子33a、一方の振動部材32a、一方のボルト34aと同様に他方の第2超音波振動子33bと他方の振動部材32bとが他方のボルト34bで固定されている。ここで、他方の第2超音波振動子33bと、他方の振動部材32bと、他方のボルト34bとは、それぞれ、一方の第2超音波振動子33aと、一方の振動部材32aと、一方のボルト34aと同一構造である。
【0028】
このように、他方の第2超音波振動子33bと、他方の振動部材32bと、他方のボルト34bとは、それぞれ一方の第2超音波振動子33aと、一方の振動部材32aと、一方のボルト34aと中心軸101の回りに軸対称に配置されている。また、他方の第2超音波振動子33bは、図3図5中の矢印95b、96bのように圧縮されて周方向に与圧されている。
【0029】
次に、以上の様に構成された超音波ホーン100の動作について説明する。第1超音波振動子13に高周波電力を印加すると、第1超音波振動子13は、図1中の矢印91のように前後方向に超音波振動する。ホーン部20は、縦振動発生部10で発生した前後方向の超音波振動を増幅して前端部21を図1中の矢印92に示すように前後方向に超音波振動させる。これにより、キャピラリ51の先端52(図2参照)が前後方向に超音波振動する。
【0030】
また、一方の第2超音波振動子33aに高周波電力を印加すると、一方の第2超音波振動子33aは周方向に超音波振動する。この超音波振動は、一方の第2超音波振動子33aを挟み込んでいる棒状体31と一方の振動部材32aに伝達される。一方の振動部材32aは、棒状体31よりも質量が小さいので、一方の振動部材32aは、棒状体31に対して周方向に超音波振動にする。
【0031】
同様に、他方の第2超音波振動子33bに高周波電力を印加すると、他方の第2超音波振動子33bが超音波振動して他方の振動部材32bが棒状体31に対して周方向に超音波振動する。
【0032】
一方の振動部材32aと他方の振動部材32bとは、中心軸101対して軸対称に配置されているので一対の振動部材32a、32bは中心軸101に対して軸対称に周方向に振動する。また、一対の第2超音波振動子33a、33bに印加する高周波電力の位相、大きさは同一なので、図3中に矢印97、98で示すように、一対の振動部材32a、32bの周方向の振動により、棒状体31に中心軸101の周りの同じ方向のねじりモーメントが印加される。これにより、棒状体31は、図1の矢印93に示す様に中心軸101の周りにねじり方向に超音波振動する。
【0033】
このねじり振動は、棒状体31からケーシング11に伝わって、ホーン部20を中心軸101の周りにねじり振動させる。これにより、図2に矢印94で示すように、ホーン部20の前端部21に取付けられたキャピラリ51の先端52がX方向又は横方向に振動する。
【0034】
以上、説明したように、超音波ホーン100は、第1超音波振動子13の超音波振動と第2超音波振動子33a、33bの超音波振動によってホーン部20の前端部21に取付けられたキャピラリ51の先端52を前後方向であるY方向と、横方向であるX方向の二方向に振動させることができる。これにより、ワイヤボンディング部のボンディング品質の向上と、ボンディング強度の向上を図ることができる。
【0035】
また、超音波ホーン100のねじり振動発生部30は、一対の切欠き部35a、35bを棒状体31の中心軸101に対して軸対称に形成し、一対の振動部材32a,32bと、一対の第2超音波振動子33a,33bと、一対のボルト34a、34bと、が中心軸101に対して軸対称となるように一対の切欠き部35a、35bに取付けられるので、棒状体31が中心軸101の周りに安定してねじり振動する。このため、超音波ホーン100は、横振動等ねじり振動以外の振動成分を抑制し、キャピラリ51の先端52を安定してX方向に超音波振動させることができる。
【0036】
更に、第2超音波振動子33a、33bが、高周波電力を印加した際に厚み方向に超音波振動するピエゾ素子等の一般的な圧電素子を複数枚積層して構成されているので、特殊な圧電素子を用いる必要がなく、コストを抑えることができる。
【0037】
また、超音波ホーン100は、ボルト34a、34bによって第2超音波振動子33a、33bを圧縮して与圧するので、与圧荷重を自由に調整することができ、第2超音波振動子33a、33bの超音波振動を安定させることができる。
【0038】
尚、以上の説明では、一対の第2超音波振動子33a、33bに印加する高周波電力の位相、大きさは同一として説明したが、超音波ホーン100の各部の寸法のずれを考慮して一対の第2超音波振動子33a、33bに印加する高周波電力の位相、大きさを少しずらしてもよい。この場合、位相、大きさのずれ量は、試験等によって決定してもよい。
【0039】
また、一方の振動部材32aは雌ねじ部を備え、一方のボルト34aを棒状体31に設けた孔と一方の第2超音波振動子33a設けた孔に通し、一方のボルト34aの雄ねじ部を一方の振動部材32aの雌ねじ部にねじ込むことによって棒状体31に固定するようにしてもよい。他方の振動部材32bも同様である。
【0040】
次に、図6~9を参照しながら、他の実施形態の超音波ホーン200について説明する。先に図1~5を参照して説明した超音波ホーン100と同様の部分には、同様の符号を付して説明は省略する。
【0041】
図6~8に示すように、棒状体131には、一対の水平スリット136a、136bと、一対の縦スリット137a、137bと、一対の扇形スリット137c、137dとが設けられている。一方の水平スリット136aと他方の水平スリット136bとは、棒状体131の中央部から水平に半径方向外側に向かって延びるスリットである。一方の縦スリット137aは、棒状体131の後端面から長手方向の中央にわたって形成された中央部から上方に半径方向外側に向かって延びるスリットである。また、他方の縦スリット137bは、棒状体131の後端面から長手方向の中央にわたって形成された中央部から下方に半径方向外側に向かって延びるスリットである。一方の扇形スリット137cは、棒状体131の長手方向の中央で中央部から斜め上方向に向かって扇形に広がるスリットである。また、他方の扇形スリット137dは、棒状体131の長手方向の中央で中央部から斜め下方向に向かって扇形に広がるスリットである。
【0042】
一方の水平スリット136aと、一方の縦スリット137aと、一方の扇形スリット137cとは、それぞれ他方の水平スリット136bと、他方の縦スリット137bと、他方の扇形スリット137dと中心軸101に対して軸対称に配置されている。
【0043】
一方の振動部材132aは、一方の水平スリット136aと、一方の縦スリット137aと、一方の扇形スリット137cとで区画される扇形断面部分である。振動部材132aは中央部で棒状体131と接続されている。同様に、図7図9に示すように、他方の振動部材132bは、他方の水平スリット136bと、他方の縦スリット137bと、他方の扇形スリット137dで区画される扇形断面部分であり、中央部で棒状体131と接続されている。
【0044】
先に説明したように、一方の水平スリット136aと、一方の縦スリット137aと、他方の扇形スリット137cとは、それぞれ他方の水平スリット136bと、他方の縦スリット137bと、他方の扇形スリット137dと中心軸101に対して軸対称に配置されている。従って、一方の振動部材132aと他方の振動部材132bとは中心軸101に対して軸対称に配置されている。
【0045】
また、棒状体131の一方の振動部材132aと対向する面には一方の凹部138aが設けられており、一方の凹部138aの中には振動方向となる積層方向が周方向となるように一方の第2超音波振動子133aが取付けられている。そして、一方の凹部138aの棒状体131と一方の第2超音波振動子133aとの間には、一方の楔139aが差し込まれて一方の第2超音波振動子133aを与圧している。同様に棒状体131の他方の振動部材132bと対向する面には他方の凹部138bが設けられ、他方の第2超音波振動子133bと他方の楔139bとが取付けられている。
【0046】
ここで、一方の振動部材132aと一方の凹部138aと一方の第2超音波振動子133aと一方の楔139aは、他方の振動部材132bと他方の凹部138bと他方の第2超音波振動子133bと他方の楔139bとそれぞれ中心軸101に対して軸対称に配置されている。
【0047】
超音波ホーン200の動作は先に説明した超音波ホーン100の動作と同様で、第1超音波振動子13の超音波振動と第2超音波振動子133a、133bの超音波振動によってホーン部20の前端部21に取付けられたキャピラリ51の先端52を前後方向であるY方向と、横方向であるX方向の二方向に振動させることができる。
【0048】
また、超音波ホーン200は、水平スリット136a、136bと、縦スリット137a、137bと、扇形スリット137c、137dによって各振動部材132a、132bを区画するので、部品点数を低減して簡便な構造とすることができる。
【0049】
更に、楔139a、139bによって第2超音波振動子133a,133bの与圧を調整できるので、与圧荷重を自由に調整することができ、第2超音波振動子133a、133bの超音波振動を安定させることができる。
【0050】
尚、一方の楔139aは、一方の振動部材132aと一方の第2超音波振動子133aとの間に差し込まれて一方の第2超音波振動子133aを与圧するようにしてもよいし。他方の楔139bも同様である。
【0051】
また、一方の第2超音波振動子133aが取付けられる一方の凹部138aは棒状体131ではなく、一方の振動部材132aの棒状体131と対向する面に設けられてもよい。他方の凹部138bも同様である。
【0052】
これにより、超音波ホーン200は、超音波ホーン100と同様、ワイヤボンディング部のボンディング品質の向上と、ボンディング強度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 縦振動発生部、11 ケーシング、12 開口、13 第1超音波振動子、14、139a、139b 楔、15 取付けアーム、20 ホーン部、21 前端部、30 ねじり振動発生部、31、131 棒状体、32a、32b、132a、132b 振動部材、33a,33b,133a,133b 第2超音波振動子、34a、34b ボルト、35a、35b 切欠き部、51 キャピラリ、52 先端、100、200 超音波ホーン、101 中心軸、136a、136b 水平スリット、137a、137b 縦スリット、137c,137d 扇形スリット、138a,138b 凹部。
図1
図2
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図9