(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】海苔網処理方法
(51)【国際特許分類】
A01G 33/02 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
A01G33/02 101J
(21)【出願番号】P 2023061366
(22)【出願日】2023-04-05
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306012754
【氏名又は名称】株式会社山田鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】大津 安弘
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3212732(JP,U)
【文献】特開2006-151925(JP,A)
【文献】特開2005-348722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔網処理船を用いて海苔網を処理液で処理するための海苔網処理方法において、
海苔網処理船
の船体に処理体を取付け、
処理体の上部に海苔網を処理液に浸漬させるための処理槽
を形成するとともに、処理体の下部に処理液を貯留するための貯留槽
を形成し、処理槽の下部と貯留槽の上部を上下に貫通する連通孔で連結するとともに、処理槽と貯留槽との間にパイプを介してポンプを連結して、処理液を処理槽と貯留槽との間で循環させるための循環流路とを設け、
前記ポンプを駆動することにより処理液を処理槽と貯留槽との間で循環させながら海苔網を処理槽の処理液で処理することを特徴とする海苔網処理方法。
【請求項2】
前記循環流路に異物を除去するための異物除去手段を設けて、処理槽と貯留槽との間で循環する処理液に含有された異物を除去しながら海苔網を処理槽の処理液で処理することを特徴とする請求項1に記載の海苔網処理方法。
【請求項3】
前記貯留槽に貯留した処理液を
海上で処理槽に供給し、処理液を処理槽と貯留槽との間で循環させながら海苔網を処理槽の処理液で処理し、その後、
海上で処理槽の処理液を貯留槽に回収することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の海苔網処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔網処理船を用いて海苔網を処理液で処理するための海苔網処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、海苔の養殖には、海面に張設した海苔網が用いられている。この海苔網を海上において薬液で酸処理したり肥料で施肥処理したりする際には、海苔網処理船が使用されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の海苔網処理船では、船体に上方を開口させた処理槽を設け、処理槽に薬液や肥料などの処理液を注入しておき、航海しながら海面に張設されている海苔網を処理槽の処理液に浸漬させることによって酸処理や施肥処理などを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の海苔網処理船を用いた海苔網処理方法では、海上での海苔網の処理前に専用船舶から処理液が供給され、海上での海苔網の処理後に専用船舶で処理液が回収されていた。
【0006】
そのため、従来の海苔網処理船を用いた海苔網処理方法では、海上での処理液の供給や回収といった作業に多大な労力や時間を要していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、海苔網処理船を用いて海苔網を処理液で処理するための海苔網処理方法において、海苔網処理船の船体に処理体を取付け、処理体の上部に海苔網を処理液に浸漬させるための処理槽を形成するとともに、処理体の下部に処理液を貯留するための貯留槽を形成し、処理槽の下部と貯留槽の上部を上下に貫通する連通孔で連結するとともに、処理槽と貯留槽との間にパイプを介してポンプを連結して、処理液を処理槽と貯留槽との間で循環させるための循環流路とを設け、前記ポンプを駆動することにより処理液を処理槽と貯留槽との間で循環させながら海苔網を処理槽の処理液で処理することにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記循環流路に異物を除去するための異物除去手段を設けて、処理槽と貯留槽との間で循環する処理液に含有された異物を除去しながら海苔網を処理槽の処理液で処理することにした。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記貯留槽に貯留した処理液を海上で処理槽に供給し、処理液を処理槽と貯留槽との間で循環させながら海苔網を処理槽の処理液で処理し、その後、海上で処理槽の処理液を貯留槽に回収することにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、海苔網処理船を用いて海苔網を処理液で処理するための海苔網処理方法において、海苔網処理船に、海苔網を処理液に浸漬させるための処理槽と、処理液を貯留するための貯留槽と、処理液を処理槽と貯留槽との間で循環させるための循環流路とを設け、処理液を処理槽と貯留槽との間で循環させながら海苔網を処理槽の処理液で処理することにしているために、処理槽の処理液を良好な状態に保持することができ、処理の効果を向上させることができる。
【0012】
特に、前記循環流路に異物を除去するための異物除去手段を設けて、処理槽と貯留槽との間で循環する処理液に含有された異物を除去しながら海苔網を処理槽の処理液で処理することにした場合には、処理槽の処理液を一層良好な状態に保持することができ、処理の効果を向上させることができる。
【0013】
また、前記貯留槽に貯留した処理液を処理槽に供給し、処理液を処理槽と貯留槽との間で循環させながら海苔網を処理槽の処理液で処理し、その後、処理槽の処理液を貯留槽に回収することにした場合には、海上での専用船舶を用いた処理液の供給や回収といった作業を省くことができるので、処理に要する労力や時間を減縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る海苔網処理船を用いた海苔網処理方法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、海苔網処理船1は、上方を開放させた矩形箱型状の船体2の内部に海苔網を処理液で処理するための処理体3を着脱自在に取付けている。
【0017】
船体2は、処理体3の左右側部に作業者が作業をするための作業スペース4,5を形成するとともに、後部に船外機6を取付けている。
【0018】
処理体3は、上部に上方を開放させた矩形箱型状の処理槽7を形成するとともに、下部に矩形箱型の容器状の貯留槽8を形成している。
【0019】
これにより、海苔網処理船1では、貯留槽8を処理槽7の下部であって船体2の底部に配置した構成となっている。そのため、海苔網処理船1では、貯留槽8に貯留した処理液の重量によって海苔網処理船1の重心を低くすることができ、海上での安定な航行ができて処理の作業性を向上させることができる。
【0020】
処理槽7には、海苔網を処理するための薬液や肥料などの処理液が貯留される。
【0021】
貯留槽8には、処理槽7に供給する処理液や、処理槽7から回収した処理液が貯留される。
【0022】
処理槽7と貯留槽8とは、処理液を循環させるための循環機構9を介して連通連結されている。
【0023】
循環機構9は、貯留槽8の後側下部に形成された流出口10と処理槽7の後側上部に形成された流入口11とをパイプ12で接続し、パイプ12の中途部にポンプ13を設けている。パイプ12には、ポンプ13の上流側(流出口10とポンプ13との間)にストレーナー(異物除去装置)14を設けている。なお、ストレーナー14は、ポンプ13の上流側又は/及び下流側に設けてもよい。
【0024】
また、循環機構9は、処理槽7の前側下部及び貯留槽8の前側上部に形成された上下に貫通する連通孔15を介して処理槽7と貯留槽8とを連通連結させている。連通孔15には、網やパンチングメタルなどの多孔板16が着脱自在に設けられている。なお、連通孔15は、板等で閉塞することもできる。
【0025】
これにより、海苔網処理船1は、処理槽7→連通孔15(多孔板16)→貯留槽8→流出口10→循環機構9→流入口11→処理槽7の順で処理液が循環して流れる循環流路が形成され、循環機構9のポンプ13を駆動することにより貯留槽8に貯留された処理液を処理槽7に供給することができ、処理槽7に貯留された処理液を連通孔15に設けられた多孔板16を介して貯留槽8に回収することができ、処理槽7と貯留槽8との間で処理液を循環させることができるようになっている。
【0026】
その際に、処理液が循環する循環流路の途中に処理液に含まれる異物を除去するための異物除去手段としてストレーナー14や多孔板16を設けているために、処理液に混入した海苔や塵や不純物などを捕捉できるようにしている。なお、ポンプ13を停止するとともに連通孔15を板等で閉塞して、処理槽7に貯留した処理液を連続して用いて海苔網の処理を行うこともできる。
【0027】
海苔網処理船1は、以上に説明したように構成しており、この海苔網処理船1を用いた海苔網処理方法では、処理槽7に薬液や肥料などの処理液を貯留しておき、船外機6を用いて航海しながら海面に張設されている海苔網を処理槽7の処理液に順次浸漬させることによって、海苔網の酸処理や施肥処理などを行う。
【0028】
そして、海苔網処理船1を用いた海苔網処理方法では、予め貯留槽8に処理液を貯留しておくことができ、海上で貯留槽8から処理槽7に処理液を供給することができ、また、海上で処理槽7から貯留槽8に処理液を回収することができる。
【0029】
また、海苔網処理船1では、波等の影響で処理槽7の処理液の濃度が低下しても、直ちに貯留槽8から処理液を処理槽7に供給することができる。
【0030】
さらに、海苔網処理船1では、循環機構9によって処理液を処理槽7と貯留槽8との間で循環させることで、処理液に混入した海苔や塵や不純物などを除去して、処理液を良好な状態に保持することができる。
【0031】
以上に説明したように、上記海苔網処理船1を用いて海苔網を処理液で処理するための海苔網処理方法は、海苔網処理船1に、海苔網を処理液に浸漬させるための処理槽7と、処理液を貯留するための貯留槽8と、処理液を処理槽7と貯留槽8との間で循環させるための循環流路とを設け、処理液を処理槽7と貯留槽8との間で循環させながら海苔網を処理槽7の処理液で処理する構成となっている。
【0032】
そのため、上記構成の海苔網処理方法では、処理槽7の処理液を良好な状態に保持することができ、処理の効果を向上させることができる。
【0033】
また、上記海苔網処理方法は、循環流路に異物を除去するための異物除去手段を設けて、処理槽7と貯留槽8との間で循環する処理液に含有された異物を除去しながら海苔網を処理槽7の処理液で処理する構成となっている。
【0034】
そのため、上記構成の海苔網処理方法では、海苔網の処理中に処理液に含有された異物を除去することができるので、処理槽の処理液を一層良好な状態に保持することができ、処理の効果を向上させることができる。
【0035】
また、上記海苔網処理方法は、貯留槽8に貯留した処理液を処理槽7に供給し、処理液を処理槽7と貯留槽8との間で循環させながら海苔網を処理槽7の処理液で処理し、その後、処理槽7の処理液を貯留槽8に回収する構成となっている。
【0036】
そのため、上記構成の海苔網処理方法では、海上での専用船舶を用いた処理液の供給や回収といった作業を省くことができるので、処理に要する労力や時間を減縮することができ、また、余剰の処理液が不法に海洋に投棄されてしまうのを防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 海苔網処理船 2 船体
3 処理体 4,5 作業スペース
6 船外機 7 処理槽
8 貯留槽 9 循環機構
10 流出口 11 流入口
12 パイプ 13 ポンプ
14 ストレーナー 15 連通孔
16 多孔板
【要約】
【課題】処理液を良好な状態に保持して、処理液による海苔網の処理の効果を向上させること。
【解決手段】本発明では、海苔網処理船(1)を用いて海苔網を処理液で処理するための海苔網処理方法において、海苔網処理船(1)に、海苔網を処理液に浸漬させるための処理槽(7)と、処理液を貯留するための貯留槽(8)と、処理液を処理槽(7)と貯留槽(8)との間で循環させるための循環流路とを設け、処理液を処理槽(7)と貯留槽(8)との間で循環させながら海苔網を処理槽(7)の処理液で処理することにした。また、前記循環流路に異物を除去するための異物除去手段を設けて、処理槽(7)と貯留槽(8)との間で循環する処理液に含有された異物を除去しながら海苔網を処理槽(7)の処理液で処理することにした。
【選択図】
図2