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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】透析条件情報共有システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240201BHJP
【FI】
G16H10/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023129900
(22)【出願日】2023-08-09
【審査請求日】2023-08-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年にウェブサイトで公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513260579
【氏名又は名称】株式会社トマーレ
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】弁理士法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間口 敬
(72)【発明者】
【氏名】大林 淳子
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸一
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/048192(WO,A1)
【文献】特開2005-027798(JP,A)
【文献】特開2020-107044(JP,A)
【文献】特開2018-175282(JP,A)
【文献】特開2020-061105(JP,A)
【文献】特開2007-004342(JP,A)
【文献】特開2017-063974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析治療を受ける患者に、その患者の透析条件情報を共有するための透析条件情報共有システムであって、
血液透析治療に関連して用いられる透析治療関連端末と、前記透析治療関連端末と通信可能に接続された情報処理装置と、患者が有するユーザ端末とを備え、
前記透析治療関連端末は、
患者を識別する患者識別情報を取得する手段、及び
取得した前記患者識別情報を前記情報処理装置に送信する手段、
前記情報処理装置は、
前記透析治療関連端末から受信した前記患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を、患者識別情報とその患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を対応付けて記憶する記憶部から取得する手段、
取得した前記透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を生成する手段、及び、
生成した前記コード情報を含む表示画面を前記透析治療関連端末に出力する手段、
前記ユーザ端末は、
前記透析治療関連端末に出力される前記表示画面に含まれる前記コード情報を読み取る手段
を備える透析条件情報共有システム。
【請求項2】
前記透析治療関連端末が、透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための体重計に接続された体重計接続端末、血液透析治療中の患者のベッドサイドに配置されるベッドサイド端末及び医療スタッフ用携帯端末のいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の透析条件情報共有システム。
【請求項3】
血液透析治療を受ける患者に、その患者の透析条件情報を共有するための情報処理装置であって、
患者を識別する患者識別情報を透析治療関連端末から取得する手段と、
取得した前記患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を、患者識別情報とその患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を対応付けて記憶する記憶部から取得する手段、
取得した前記透析条件情報を患者が有するユーザ端末において取得可能に形成されたコード情報を生成する手段、及び、
生成した前記コード情報を含む表示画面を前記透析治療関連端末に出力する手段、
を備える情報処理装置。
【請求項4】
前記透析治療関連端末が、透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための体重計に接続された体重計接続端末、血液透析治療中の患者のベッドサイドに配置されるベッドサイド端末及び医療スタッフ用携帯端末のいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
血液透析治療に関連して用いられる透析治療関連端末であって、
患者を識別する患者識別情報を取得する手段と、
取得した前記患者識別情報を、患者識別情報とその患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を対応付けて記憶する記憶部と接続可能であり、前記記憶部に記憶された透析条件情報を患者が有するユーザ端末において取得可能に形成されたコード情報を生成可能な情報処理装置に送信する手段、
前記情報処理装置から、送信した前記患者識別情報に対応する患者についての透析条件情報であって、前記記憶部に記憶された透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面を取得する手段、及び、
取得した前記表示画面を表示する手段
を備える透析治療関連端末。
【請求項6】
透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための体重計に接続された体重計接続端末、血液透析治療中の患者のベッドサイドに配置されるベッドサイド端末及び医療スタッフ用携帯端末のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の透析治療関連端末。
【請求項7】
血液透析治療を受ける患者に、その患者の透析条件情報を共有するための情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
患者を識別する患者識別情報を透析治療関連端末から取得する患者識別情報取得ステップと、
取得した前記患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を、患者識別情報とその患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を対応付けて記憶する記憶部から取得する透析条件情報取得ステップ、
取得した前記透析条件情報を患者が有するユーザ端末において取得可能に形成されたコード情報を生成するコード情報生成ステップ、及び、
生成した前記コード情報を含む表示画面を前記透析治療関連端末に出力するコード情報出力ステップ
を備える情報処理方法。
【請求項8】
前記透析治療関連端末が、透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための体重計に接続された体重計接続端末、血液透析治療中の患者のベッドサイドに配置されるベッドサイド端末及び医療スタッフ用携帯端末のいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項7に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析条件情報共有システムに関し、特に、災害時などの緊急時に備え、血液透析治療を受ける患者に、その患者の透析条件情報を共有するための透析条件情報共有システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析治療は、主として腎不全の患者に対して行われる血液浄化療法の一つであり、血液中に含まれる老廃物や水分を透析装置(ダイアライザ)にて除去した後、患者体内に血液を戻す治療法である。血液透析治療は、謂わば、血液中に溜まった老廃物や水分を尿として排出することの代わりであり、血液透析治療を受ける患者は、これを定期的に行う必要がある。血液透析治療が必要な患者が、適時に血液透析治療を受けることができないと、血液中に老廃物や水分が蓄積してしまい、場合によっては、尿毒症、心不全、肺水腫などを発症してしまう恐れがある。
【0003】
血液透析治療は、通常、かかりつけの医療機関において行われる。血液透析治療を受ける患者は、週3回程度、定期的に、かかりつけの医療機関へと通院し、血液透析治療を受けている。各患者の状態や、各患者に応じた透析条件等に関する情報は、かかりつけの医療機関において管理されている。
【0004】
一方、災害発生時や事故発生時等の緊急時には、必ずしもかかりつけの医療機関において血液透析治療を受けることができるとは限らない。特に、深刻な豪雨や地震などが発生した災害時には、かかりつけの医療機関へのアクセスが困難であるとか、かかりつけの医療機関における資材が不足しているなどの様々な事情から、かかりつけの医療機関において普段どおりの治療を受けることができない場合が十分に想定される。このような場合に備え、血液透析治療を受ける患者には、常日頃から最低限の透析条件、例えば、ドライウェイト、シャントの穿刺部位などを記憶又は透析カード等に記録しておくことが勧められている(例えば、非特許文献1~3)。
【0005】
しかしながら、ドライウェイト、シャントの穿刺部位などの専門的な事項を患者が忘れず記憶しておくことは容易ではない。一方、これらの事項を透析カードに記入することも大変な手間である。透析条件に関する情報は多岐に渡るし、しかも、透析条件は、通常、月1回程度の頻度で見直されるので、その度に、透析カードの見直しも行わなければならない。これに対し、例えば、非特許文献4に示されるように、医療機関のスタッフ向けに透析カードの発行を補助する装置が知られている。しかしながら、全ての患者について定期的に透析カードを発行するのは医療機関のスタッフに大変な負担を強いるものである。そして、透析カードには、紛失しやすく、また、肌身離さず持ち歩くのは面倒であるという欠点もあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】三愛記念病院 総看護部長 小手田紀子先生 執筆、聖隷佐倉市民病院 総看護部長 内田明子先生 監修、「~笑顔でいきいき~透析”新”ライフ より良い透析ライフのためのチェックリスト」、キッセイ薬品工業株式会社ウェブサイト、[online]、[令和5年7月4日検索]、インターネット、<URL:https://www.kissei.co.jp/dialysis/selfcheck/06.html>
【文献】「人工透析を受けられている皆さま ≪災害に備えましょう!≫」大阪府ウェブサイト、[online]、[令和5年7月4日検索]、インターネット、<URL:https://www.pref.osaka.lg.jp/chikikansen/touseki-saigai/index.html>
【文献】「災害時の透析患者に対する支援について」、神奈川県ウェブサイト、[online]、[令和5年7月4日検索]、インターネット、<URL:http://www.pref.kanagawa.jp/docs/nf5/cnt/f450291/>
【文献】「透析患者カード発行システム」、株式会社システムリンクウェブサイト、[online]、[令和5年7月4日検索]、インターネット、<URL:https://systemlink-1990.com/?page_id=1927>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような従来技術に鑑みて為されたものであり、ある一側面において、血液透析治療を受ける患者に、その患者の透析条件情報をより手軽且つ確実に共有するための透析条件情報共有システムを提供することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決しようと鋭意研究努力を重ねる過程において、近年では、透析クリニックなどの医療機関に血液透析治療を受けるために来院する患者のほとんどがスマートフォン等のモバイル端末を肌身離さず持ち歩いていることに気が付いた。スマートフォン等のモバイル端末に透析条件情報を記録させることができれば、従来行われているような紙媒体やカード媒体で透析条件情報が提供される場合と比較して、はるかに紛失しづらく、又、その管理、持ち運びに余計な手間が掛からないと思われた。
【0009】
しかし、どのようにすれば患者や医療スタッフに更なる負担を強いることなく患者に透析条件情報を提供することができるのか、より具体的には、患者が有するモバイル端末に透析条件情報を記録することができるのかについては課題が残った。そこで本発明者らは更なる鋭意研究努力を重ねた結果、患者が血液透析治療を受けるために来院した際に、自然と接する端末装置に透析条件情報を取得するためのコード情報を表示させ、これを患者にモバイル端末で読み取ってもらうことにより透析条件情報を共有すれば、医療スタッフの負担が軽減されるとともに、患者に対しても過度の負担を強いることなく透析条件情報を共有できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、ある一側面において、血液透析治療を受ける患者に、その患者の透析条件情報を共有するための透析条件情報共有システムであって、
血液透析治療に関連して用いられる透析治療関連端末と、前記透析治療関連端末と通信可能に接続された情報処理装置と、患者が有するユーザ端末とを備え、
前記透析治療関連端末は、
患者を識別する患者識別情報を取得する手段、及び
取得した前記患者識別情報を前記情報処理装置に送信する手段、
前記情報処理装置は、
前記透析治療関連端末から受信した前記患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を、患者識別情報とその患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を対応付けて記憶する記憶部から取得する手段、
取得した前記透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を生成する手段、及び、
生成した前記コード情報を含む表示画面を前記透析治療関連端末に出力する手段、
前記ユーザ端末は、
前記透析治療関連端末に出力される前記表示画面に含まれる前記コード情報を読み取る手段
を備える透析条件情報共有システムを提供することにより上記課題を解決するものである。
【0011】
また、本発明は、他の側面において、上記透析条件情報共有システムに用いられる情報処理装置をも提供するものであり。すなわち、本発明は、ある一側面において、
血液透析治療を受ける患者に、その患者の透析条件情報を共有するための情報処理装置であって、
患者を識別する患者識別情報を透析治療関連端末から取得する手段と、
取得した前記患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を、患者識別情報とその患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を対応付けて記憶する記憶部から取得する手段、
取得した前記透析条件情報を患者が有するユーザ端末において取得可能に形成されたコード情報を生成する手段、及び、
生成した前記コード情報を含む表示画面を前記透析治療関連端末に出力する手段、
を備える情報処理装置を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0012】
また、本発明は、ある一側面において、血液透析治療に関連して用いられる透析治療関連端末であって、
患者を識別する患者識別情報を取得する手段と、
取得した前記患者識別情報を、患者識別情報とその患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を対応付けて記憶する記憶部と接続可能であり、透析条件情報を患者が有するユーザ端末において取得可能に形成されたコード情報を生成可能な情報処理装置に送信する手段、
前記情報処理装置から、送信した前記患者識別情報に対応する患者についての透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面を取得する手段、及び、
取得した前記表示画面を表示する手段
を備える透析治療関連端末を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0013】
また、本発明は、ある一側面において、血液透析治療を受ける患者に、その患者の透析条件情報を共有するための情報処理方法であって、
患者を識別する患者識別情報を透析治療関連端末から取得する患者識別情報取得ステップと、
取得した前記患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を、患者識別情報とその患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を対応付けて記憶する記憶部から取得する透析条件情報取得ステップ、
取得した前記透析条件情報を患者が有するユーザ端末において取得可能に形成されたコード情報を生成するコード情報生成ステップ、及び、
生成した前記コード情報を含む表示画面を前記透析治療関連端末に出力するコード情報出力ステップ
を備える情報処理方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0014】
本発明の一側面に係る上記透析条件情報共有システム、情報処理装置、透析治療関連端末及び/又は情報処理方法によれば、血液透析治療を受ける患者は、自身が使用するユーザ端末を用いて、血液透析治療に関連して用いられる透析治療関連端末に表示される表示画面に含まれるコード情報を読み取ることにより、透析条件情報をユーザ端末に取得して、保存することができるので、透析条件情報を透析カードに自ら記載する場合と比べて、遥かに楽に、且つ、正確に、そして多岐にわたる透析条件情報を記録することができる。しかも、透析条件情報はユーザ端末、より具体的には、スマートフォン等のモバイル端末に保存されるので、紙媒体やカード媒体で提供される場合と比べて遥かに紛失しづらく、また、その管理に手間がかからないという利点が得られる。一方、医療スタッフにとっても、透析条件情報を記載した透析カードを患者ごとに発行する手間が省けるので大変便利である。このように本発明の一側面に係る上記情報処理装置及び透析治療関連端末は、医療スタッフ及び患者の双方に多大なメリットをもたらす画期的なものである。
【0015】
なお、「透析治療関連端末」とは、血液透析治療に関連して用いられる端末装置を意味する。透析治療関連端末には、例えば、血液透析治療を行う医療機関の受付用の端末;透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための体重計、血圧計、脈拍計、透析装置などに接続された端末装置;血液透析治療が行われるベッドサイドに備えられるベッドサイド端末、医療スタッフ用のスタッフ端末などが含まれ得るが、これらに限定されない。患者が血液透析治療を受ける過程において、自然と接する端末装置であるこれらの端末装置のいずれか1つ又は2つ以上に透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面が表示される場合には、患者は余分な負担を強いられることなく、透析条件情報を取得することができるので大変便利である。
【0016】
例えば、ある好適な一態様において、透析治療関連端末は、透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための体重計に接続された体重計接続端末であり得る。血液透析治療においては、日々の体重管理の確認、除水量の目安とするため、通常、透析前及び透析後に患者の体重を測定するので、体重計に接続された体重計接続端末は、血液透析治療に訪れた患者が、ほぼ確実に接する端末装置であるということができる。患者の透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面が、透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための体重計に接続された体重計接続端末の表示部に表示される場合には、血液透析治療に訪れた患者は、透析前体重及び/又は透析後体重を測定する際に、体重計接続端末の表示部に表示される表示画面に含まれるコード情報を自身のユーザ端末で読み取れば良いので、自然な流れで透析条件情報を取得することができる。特に、後述する実施例に示されるように、上記コード情報が、透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための手順、指示及び/又は測定結果とともに表示される場合には、患者は、透析条件情報を取得するための表示画面を余分に閲覧する必要なく、極めて自然に透析条件情報を取得することができる。
【0017】
また、ある好適な一態様において、透析治療関連端末は、血液透析治療が行われるベッドサイドに備えられるベッドサイド端末であり得る。医療機関における血液透析治療の所要時間は通常3~5時間程度であり、この間のほとんどの時間を、患者は血液透析治療用のベッドで過ごすことになる。したがって、患者のベッドサイドに備えらえるベッドサイド端末は、血液透析治療に訪れた患者が、ほぼ確実に、且つ、最も長い時間接する端末装置であるということができる。患者の透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面がベッドサイド端末の表示部に表示される場合には、血液透析治療に訪れた患者は、血液透析治療を受けている間に、適宜時間を見つけて、ベッドサイド端末の表示部に表示される表示画面に含まれるコード情報を自身のユーザ端末で読み取れば良いので、自然な流れで、且つ、時間の無駄なく、透析条件情報を取得することができる。
【0018】
また、ある好適な一態様において、透析治療関連端末は、医療スタッフが使用するスタッフ端末であり得る。血液透析治療を受ける透析室においては、多くの場合、看護師、准看護師などの医療スタッフが透析の準備、透析中の患者の状態の観察、ケアに当たっている。ある好適な一態様において、透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面が表示される端末装置は、医療スタッフが使用するスタッフ端末、より具体的には透析室の医療スタッフが使用するスタッフ端末であってもよい。透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面がスタッフ端末の表示部に表示される場合には、医療スタッフは、例えば、受付時、透析前、透析中、又は、透析後などの適宜のタイミングで、患者にコード情報を含む表示画面を示し、透析条件情報を取得してもらうことができるので、より確実に透析条件情報を共有することができる。例えば、患者に透析条件情報の取得を一任すると、透析条件情報の取得のし忘れが懸念される場合等には極めて便利である。
【0019】
なお、透析治療関連端末に表示される表示画面に含まれ得る「コード情報」は、当該コード情報に基づいて必要な透析条件情報を取得可能である限りにおいてどのような形態のコード情報であっても良いが、例えば、二次元コードであり得る。二次元コードは、スタック型の二次元コードでも、マトリックス型の二次元コードであってもよい。スタック型の二次元コードとしては、例えば、PDF417、Micro pdf417、Code49、Code16Kなどが挙げられるが、これらに限定されない。マトリックス型の二次元コードとしては、例えば、QR Code、Micro QR Code、Veri Code、DataMatrix Code、Maxi Code、Code1、Aztec Codeなどが挙げられるが、これらに限定されない。コード情報が、これらの形態にある場合には、カメラ機能を有する携帯電話、スマートフォン、タブレット等の端末装置を用いて、そのコード情報を読み取り可能である。
【0020】
なお、コード情報には、これを取得したユーザ端末において、当該コード情報に基づいて必要な透析条件情報を取得可能である限りにおいて、どのような種類の情報がコードされていても良い。例えば、透析条件情報が文字データとして直接コードされていてもよいし、透析条件情報を取得可能なURLがコードされていてもよい。また、これらの情報は適宜の手法で暗号化されていてもよく、例えば、患者ごと及び/又は医療機関ごとに設定される暗号化キーと関連付けて暗号化されていてもよい。透析条件情報が文字データとしてコードされている場合には、透析条件情報を取得可能なURLを都度生成する必要がなく、また、患者が利用するユーザ端末においてインターネットを利用できない環境であっても透析条件情報を共有可能であるという利点がある。
【0021】
一方、「透析条件情報」は、血液透析の条件設定に必要な情報を意味する。例えば、ドライウェイト;心胸比;所定の期間あたりの透析の回数;血液透析(HD)・血液濾過透析(HDF)・腹膜透析(PD)などの透析方法;透析時間;除水時間;除水速度;除水量;ダイアライザの種類;ブラッドアクセスの種類;穿刺部位;透析液の種類;透析液の流量;透析液の温度;補液の種類;補液の温度;補液時間;補液速度;補液量;シリンジポンプ速度;抗凝固剤の種類;抗凝固剤の投与量(ワンショット・持続量);穿刺針の種類(動脈用穿刺針・静脈用穿刺針);血圧;脈拍;酸素投与量;定期注射薬の種類等であり得るが、これらに限定されない。
【0022】
また、ある好適な一態様においては、上記透析条件情報に加えて、血液透析の実施を補助する情報(以下、「透析補助情報」ということもある。)を更に共有するような構成としても良い。透析補助情報の具体例としては、例えば、アレルギーの有無;感染症の有無;血液型;移送手段;保険の種類;介護・認定レベル;患者名、年齢、性別、生年月日等が含まれ得るが、これらに限定されない。血液透析の円滑な実施に必要であると思われる情報であれば、以上に説明した以外の如何なる情報を提供するようにしてもよい。
【0023】
本発明の一側面に係る上記透析条件情報共有システムは、患者が有するユーザ端末において、透析治療関連端末に出力された表示画面に含まれるコード情報を読み取ることにより以上のような透析条件情報等を取得することを特徴とするものである。換言すれば、本発明の一側面に係る上記透析条件情報共有システムが備えるユーザ端末は、透析治療関連端末に表示された表示画面に含まれるコード情報を読み取る手段を備えているということになる。
【0024】
ある好適な一態様において、本発明の一側面に係る上記透析条件情報共有システムが備えるユーザ端末は、さらに、読み取った前記コード情報に基づいて取得される透析条件情報を記憶する手段を備え得る。ここで透析条件情報はユーザ端末が備える記憶部に記憶されることが好ましい。取得される透析条件情報がユーザ端末の記憶部に記憶される場合には、患者は一度取得した透析条件情報をオフラインでも閲覧可能であるという利点がある。一度取得した透析条件情報をオフラインでも閲覧可能である場合、インターネットへのアクセスが限定的になる場合においても、ユーザ端末に記憶された透析条件情報を随時閲覧可能であるので、特に、災害時などに極めて有利である。
【0025】
一方、ある好適な一態様において、透析条件情報は、その取得日と関連付けられてユーザ端末に記憶されることが好ましい。上述したとおり、透析条件情報は、通常、月1回程度の頻度で見直されるため、血液透析治療を受ける患者は、透析条件情報が更新される度に、新しい透析条件情報を記録しなければならない。透析条件情報とその取得日が関連付けてユーザ端末に記憶される場合には、患者は、いつその透析条件情報を取得したかを確認することができるので、透析条件情報を適宜のタイミングで更新することができ、また、更新のし忘れを防止することができる。
【0026】
透析条件情報と、その取得日とを関連付けて記憶するための具体的な構成に特段の制限はない。例えば、上記情報処理装置により生成されるコード情報を、透析条件情報に加え、その取得日を取得可能なコード情報としてもよいし、また、ユーザ端末において、読み取ったコード情報に基づいて取得される透析条件情報と、その取得日とを関連付けて記憶する構成としてもよい。当業者であれば、適宜の構成を採用し、透析条件情報と、その取得日とを関連付けて記憶させることができる。
【0027】
また、本発明は、さらに他の一側面において、コンピュータを上述した透析条件情報共有システムが備える情報処理装置、透析治療関連端末、及び/又はユーザ端末のいずれかとして機能されるためのコンピュータプログラムを提供することにより上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、血液透析治療を受ける患者に、その患者の透析条件情報をより手軽且つ確実に共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】透析条件情報共有システム100の全体構成を示す概念図である。
図2】情報処理装置S1の記憶部に記憶されている情報の一例を示す図である。
図3】体重計接続端末T1の表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図4】体重計接続端末T1の表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図5】ユーザ端末T4の表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図6】ユーザ端末T4の表示部に表示される表示画面(コード情報読取画面)の一例を示す図である。
図7】ユーザ端末T4の表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図8】ベッドサイド端末T2の表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図9】スタッフ端末T3の表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が実施例のものに限られないことは言うまでもない。
【0031】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る透析条件情報共有システム100について説明する。
【0032】
図1は、第1の実施形態に係る透析条件情報共有システム100の全体構成を説明する概念図である。図1に示すように、本実施形態に係る透析条件情報共有システム100は、情報処理装置S1と体重計接続端末T1、ベッドサイド端末T2、及び医療スタッフMS1のスタッフ端末T3、及び、透析治療を受ける患者P1が有するユーザ端末T4を含む。情報処理装置S1と体重計接続端末T1、ベッドサイド端末T2、及びスタッフ端末T3は医療機関が管理する端末装置であり、ネットワークNを介して接続されている。一方、ユーザ端末T4は患者個人が所有する携帯端末であり、ネットワークNにはアクセス権限がない。
【0033】
<情報処理装置>
情報処理装置S1は、サーバ装置であり、透析治療関連端末(本例において、体重計接続端末T1、ベッドサイド端末T2、及びスタッフ端末T3)とネットワークNを介して通信可能に接続されている。情報処理装置S1は、透析治療関連端末から患者を識別する患者識別情報を取得して、当該患者識別情報に対応する患者についての透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を生成し、当該コード情報を含む表示画面を前記透析治療関連端末に出力する情報処理装置である。すなわち、情報処理装置S1は、透析治療関連端末から患者を識別する患者識別情報を取得する手段、取得した当該患者識別情報に対応する患者についての透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を生成する手段、生成した当該コード情報を含む表示画面を前記透析治療関連端末に出力する手段を備えている。
【0034】
情報処理装置S1は、機能概念的に、図示しない記憶部S11、通信部S12、制御部S13を備えている。
【0035】
本例において、記憶部S11には、患者識別情報と、患者識別情報に対応する患者の透析条件情報が対応づけて記憶されている。情報処理装置S1の記憶部S11に記憶されている情報の一例を図2に示す。図2に示すとおり、情報処理装置S1の記憶部S11には、患者を識別する患者識別情報として患者IDと、透析条件情報として、ドライウェイト、週の回数、治療方法、透析時間、ダイアライザ、透析液、透析液流量、抗凝固剤、ワンショット、持続量、血液量、ブラッドアクセスなどが記憶されている。なお、本例において、患者ID「0001」で特定される患者について記憶部S11に記憶されている透析条件情報は、ドライウェイト「60.0kg」、週の回数「3回」、治療方法「HD」、透析時間「4.2時間」、ダイアライザ「ABH-15P」、透析液「キンダリー透析剤4E」、透析液流量「500mL/min」、抗凝固剤「ヘパリンNa注250単位/ml」、ワンショット「4ml」、持続量「3ml/h」、血流量「160ml/min」、ブラッドアクセス「シャント(右)」である。
【0036】
また、本例において、情報処理装置S1の記憶部S11には、透析条件情報に加え、更に、血液透析治療を受ける各患者の血液透析に関する各種の情報、例えば、過去の透析前体重、透析後体重、血圧、脈拍、看護記録、薬剤の履歴情報等が患者を識別する患者識別情報と対応付けて記憶されている。体重計接続端末T1、ベッドサイド端末T2、スタッフ端末T3は、適宜、記憶部S11にアクセスして、これらの情報の読み取り、及び、書き込みを行うことができる。
【0037】
記憶部S11は、必要な情報を記憶することができる限りにおいて、基本的にどのようなものであっても良く、揮発性メモリであっても良いし、不揮発性メモリであっても良いが、不揮発性メモリであることが好ましい。記憶部S11は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、キャッシュメモリ、バッファメモリなどであり得るが、これらに限定されない。また、本例において、記憶部S11は情報処理装置S1が備える記憶部であるが、記憶部S11は必ずしも情報処理装置S1が備えている記憶部である必要はなく、情報処理装置S1が随時接続して、少なくともデータの読み取りが可能である限り、情報処理装置S1とは独立して存在する1つ又は2つ以上の記憶装置又はその一部であっても良い。また、情報処理装置S1が接続可能なサーバ装置が存在する場合には、その記憶部の一部又は全部を記憶部S11として使用しても良い。このようなサーバ装置及び/又は記憶装置には、例えば、データベース、ストレージ等が含まれる。
【0038】
一方、通信部S12は、例えば、LAN(Local Area Network)カード、ネットワークカード等を含んで構成される、適宜のネットワークを介して各種の情報の送信又は受信を行う手段である。本例において、通信部S12は、ネットワークNを介して、データを送信する送信部S12a、及び、データを受信する受信部S12bを機能概念的に含んでいる。例えば、情報処理装置S1は、送信部S12aを介して、体重計接続端末T1やベッドサイド端末T2、及びスタッフ端末T3へ透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面等のデータを送信する。また、受信部S12bを介して、体重計接続端末T1やベッドサイド端末T2、及びスタッフ端末T3から患者を識別する患者識別情報等のデータを受信する。
【0039】
制御部S13は、例えば、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Ramdom Access Memory)等を含んで構成されており、情報処理装置S1の各部を制御する制御手段である。制御部S13は、記憶部S11等に記憶されているプログラムを適宜読み出して各種の処理を実行する。例えば、情報処理装置S1は、取得した透析条件情報等に基づいて当該透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を生成し、生成したコード情報を含む表示画面を透析治療関連端末に出力する。
【0040】
なお、情報処理装置S1が、これら以外の構成を備えていても良いことは言うまでもない。例えば、ディスプレイ等の表示部、キーボード等の入力部等を備えていても良い。また、情報処理装置S1は、物理的に1つの情報処理装置であっても良いし、複数であっても良い。また、本例において、情報処理装置S1は医療機関が管理するものであるが、管理会社によって管理されるものであっても良い。
【0041】
<透析治療関連端末>
一方、第1の実施形態に係る透析条件情報共有システム100は、透析治療関連端末として、体重計接続端末T1、ベッドサイド端末T2、スタッフ端末T3を備えている。これらの透析治療関連端末は、いずれも血液透析治療に関連して用いられる端末装置であり、患者を識別する患者識別情報を取得する手段を備えている。透析治療関連端末は、取得した患者識別情報を上記情報処理装置S1に送信し、上記情報処理装置S1から、送信した患者識別情報に対応する患者についての透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面を受信する。受信した表示画面は透析治療関連端末の表示部に表示される。
【0042】
まず、体重計接続端末T1について説明する。体重計接続端末T1は、血液透析治療を受ける患者が、主として、透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための測定装置である体重計に接続される端末装置である。本例において、体重計接続端末T1は、機能概念的に、取得部T11、通信部T12、表示部T13、制御部T14、及び記憶部T15を備えている。
【0043】
取得部T11は、患者を識別する患者識別情報を取得するための手段であり、本例においてはICカードリーダである。取得部T11は、必ずしもICカードリーダである必要はなく、患者を識別する患者識別情報を取得することができる限りにおいて、基本的にどのようなものであっても良い。例えば、バーコードリーダー、カメラ、マイク、指紋認証機能を備えたタッチパネル等であってもよいが、これらに限定されない。例えば、表示部T13に表示された患者識別情報入力画面において、患者又は医療機関のスタッフが患者識別情報を入力することにより患者識別情報を取得するようにしても良い。
【0044】
なお、患者を識別する患者識別情報は、個々の患者を識別することができる情報であれば基本的にどのようなものであっても良いが、例えば、患者ID、患者名、患者名と生年月日、個々の患者に割り当てられた発信機ID、バイオメトリクス情報又はこれらの組み合わせ等であり得る。バイオメトリクス情報としては、例えば、患者の指紋、虹彩、声紋、顔等から得られるバイオメトリクス情報が含まれ得る。これらの患者識別情報は、例えば、患者が有する情報媒体から取得するようにすることができる。患者が有する情報媒体から患者識別情報を取得することにより、誤った患者識別情報が用いられ、異なる患者の透析条件情報を取得してしまうリスクが低減される。ちなみに、患者が有する情報媒体とは、例えば、ICカード、ICチップ、バーコード、二次元バーコード、ビーコン等であり得るが、これらに加えて、患者の指紋、虹彩、声紋、顔等も含まれ得る。
【0045】
通信部T12は、例えば、LANカード、ネットワークカード、シリアルポート等を含んで構成される、各種の情報の送信又は受信を行う手段であり、本例においては、ネットワークNを介して、情報処理装置S1へ患者識別情報等のデータを送信する送信部T12a、及び、情報処理装置S1から透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面等のデータを受信する受信部T12bを備え、また、RS-232C方式の接続を介して体重計から体重の測定値を受信する受信部T12cを機能概念的に含んでいる。
【0046】
表示部T13は、例えば、液晶モニター、有機ELディスプレイ等を含んで構成される、透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報などの各種の情報を含む表示画面を表示する手段である。なお、表示部T13に表示される各種情報及び表示画面は、表示部T13が表示可能な任意の形式で情報処理装置S1から出力され得る。体重計接続端末T1の表示部T13には、透析前体重及び/又は透析後体重を測定するための手順や指示などを含む表示画面が表示され、患者による体重の測定を含む患者の血液透析治療をサポートする。また、体重計接続端末T1の表示部T13に、測定した透析前体重及び/又は透析後体重とともに、例えば、前回の血液透析治療時の体重やドライウェイトなどを含む表示画面が表示される場合には、患者は自身の体重管理の状況を容易に把握することができ、また、除水量の目安を知ることができるので大変便利である。透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報は、このような表示画面のいずれに表示されてもよい。
【0047】
制御部T14は、例えば、一つ又は複数のCPU、MPU、GPU、ROM、RAM等を含んで構成されており、体重計接続端末T1の各部を制御する制御手段である。制御部T14は、記憶部T15等に記憶されているプログラム等を適宜読み出して各種の処理を実行する。例えば、取得部T11で取得した患者を識別する患者識別情報を情報処理装置S1に送信する処理や、情報処理装置S1から受信した透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面を表示部T13に表示する処理を実行する。
【0048】
記憶部T15については、基本的に記憶部S11について説明したと同様であるので、簡略のため説明を省略する。
【0049】
なお、体重計接続端末T1が、以上に説明した以外の構成を備えていても良い。また、体重計接続端末T1は医療機関が管理するものであっても良いし、管理会社によって管理されるものであっても良い。
【0050】
一方、ベッドサイド端末T2は、血液透析治療を受ける患者のベッドサイドに配置され、透析中、患者や医療スタッフがバイタルサインや透析の進行状況等を確認したり、患者がTVやインターネットを閲覧するために用いられる端末装置である。なお、ベッドサイド端末として機能するために必要な構成を除いてベッドサイド端末T2が備え得る基本的な構成は、既に体重計接続端末T1について述べたと同様であるので、以下、簡略のため説明を省略する。なお、図1において、T21、T22、T23、T24、T25は、それぞれベッドサイド端末T2が備える取得部(T21)、通信部(T22)、表示部(T23)、制御部(T24)、及び記憶部(T25)を意味する
【0051】
一方、スタッフ端末T3は、医療スタッフが、主として、治療履歴などの患者の情報を確認するための端末装置であり、典型的には、スマートフォンやタブレット等の携帯可能な端末装置、又は、ナースカート等の移動手段に載置された端末装置であり得る。なお、スタッフ端末T3が備える基本的な構成については、ベッドサイド端末T2について述べたと同様の理由により、以下、説明を省略する。
【0052】
以上に述べたとおり、第1の実施形態に係る透析条件情報共有システム100が備える透析治療関連端末は、体重計接続端末T1、ベッドサイド端末T2、スタッフ端末T3であるが、透析条件情報共有システムは、さらに他の透析治療関連端末を備えていてもよい。例えば、透析治療関連端末は、透析クリニックの受付や透析治療室の受付等に配置される受付用の端末であってもよい。透析治療に訪れた患者は、通常、初めに受付を行うので、受付用の端末に、患者の透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面が表示される場合には、血液透析治療に訪れた患者は自然な流れで透析条件情報を取得することができる。
【0053】
<ユーザ端末>
ユーザ端末T4は、患者が所有する患者個人の端末装置であり、具体的には、スマートフォン、携帯電話、タブレット、パーソナルコンピューター又は腕時計型のウェアラブルデバイス等であり得る。ユーザ端末T4は、上記透析治療関連端末に表示される表示画面に含まれる透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を読み取り、読み取ったコード情報に基づいて透析条件情報を生成し、生成した透析条件情報を記憶部T43に記憶する。すなわち、ユーザ端末T4は、上記透析治療関連端末に表示される表示画面に含まれる透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を読み取る手段、読み取った前記コード情報に基づいて透析条件情報を生成する手段、及び、生成した透析条件情報を記憶する手段を備えているということになる。
【0054】
ユーザ端末T4は、機能概念的に、図示しない、読取部T41、制御部T42、記憶部T43、表示部T44を備えている。
【0055】
読取部T41は、透析治療関連端末の表示される表示画面に含まれるコード情報を読み取るための手段であり、典型的には、カメラである。
【0056】
制御部T42は、ユーザ端末T4の各部を制御する制御手段であり、例えば、一つ又は複数のCPU、MPU、GPU、ROM、RAM等を含んで構成されている。制御部T42は、記憶部T43等に記憶されているプログラム等を適宜読み出して各種の処理を実行する。例えば、読取部T41が読み取ったコード情報に基づいて透析条件情報等を取得・生成する処理や、取得・生成した透析条件情報等を記憶部T43に記憶する処理、記憶部T43に記憶されている透析条件情報を読み出して表示部T44に表示する処理などの各種の処理を実行する。
【0057】
記憶部T43は、読取部T41が読み取ったコード情報に基づき取得・生成した透析条件情報等や各種処理に必要な情報が記憶される。その他の部分については、基本的に記憶部S11について説明したと同様であるので、簡略のため説明を省略する。
【0058】
表示部T44は、例えば、液晶モニター、有機ELディスプレイ等を含んで構成される。表示部T44は、読取部T41が読み取ったコード情報に基づき取得・生成された透析条件情報等の各種の情報を含む表示画面を表示する表示手段である。
【0059】
なお、ユーザ端末T4が、以上に説明した以外の構成を備えていても良いことは言うまでもない。ユーザ端末T4は、例えば、タッチパネル等の入力部等を備えていても良い。
【0060】
<基本動作1>
以下、本発明の一実施形態に係る透析条件情報共有システム100の基本動作を説明する。図1において、P1は患者ID「0001」で特定される患者であり、ICカードを所持している。当該ICカードには、患者P1を識別する患者識別情報として、患者P1の患者ID「0001」が記憶されている。患者P1は、ユーザ端末T4を携帯している。本例において、ユーザ端末T4は、カメラ機能を備えるスマートフォンであり、QRコード(登録商標)を読み取り可能なアプリケーションがインストールされている。
【0061】
前述したとおり、情報処理装置S1の記憶部S11には、患者識別情報と、その患者識別情報に対応する患者の透析条件情報が対応づけて記憶されている。記憶部S11に記憶されている情報の一例は図2に示したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0062】
患者P1は、血液透析治療を受けるために医療機関にやってきた患者である。患者P1は受け付けを済ませた後、治療用の衣服に着替え、シャントを設けた腕(右腕)を洗浄し、体重計接続端末T1に接続された体重計を用いて透析前体重を測定する。
【0063】
本例において、体重計接続端末T1には、患者を識別する患者識別情報を取得するための手段として、ICカードリーダが備えられており、体重計接続端末T1において体重測定用のアプリケーションを起動すると、体重計接続端末T1の表示部には図3に示す表示画面が表示されるので、患者P1は、図3に示す表示画面中の指示に従い、自身が所持するICカードを体重計接続端末T1が備えるICカードリーダにかざし、ICカードを読み取らせればよい。患者P1が自身が所持するICカードを体重計接続端末T1が備えるICカードリーダにかざすと、ICカードリーダはICカードから患者識別情報を読み取り、体重計接続端末T1は、ICカードから患者P1を識別する患者識別情報として患者ID「0001」を取得する。
【0064】
体重計接続端末T1は、患者P1を識別する患者識別情報として患者ID「0001」を取得すると、取得した当該患者識別情報を情報処理装置S1へ送信する。
【0065】
情報処理装置S1は、体重計接続端末T1から患者識別情報を受信すると、受信した当該患者識別情報に対応する患者、すなわち、患者ID「0001」に対応する患者である患者P1についての透析条件情報を記憶部S11から読み出し、読み出した透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を生成し、生成した前記コード情報を含む表示画面を体重計接続端末T1に送信する。なお、本例において、コード情報は、透析条件情報とその取得日(以下、まとめて「透析条件情報等」ということがある。)を文字データとして含むQRコード(登録商標)である。すなわち、本例において、情報処理装置S1は、透析条件情報とその取得日を文字データとして含むQRコード(登録商標)を生成する手段を備えているということになる。
【0066】
体重計接続端末T1は、情報処理装置S1から送信される前記コード情報を含む表示画面を取得すると、取得した前記コード情報を含む表示画面を表示部に表示する。このようにして体重計接続端末T1の表示部に表示される表示画面の一例を図4に示す。図4に示されるとおり、体重計接続端末T1に表示される表示画面には、患者P1の患者名、患者ID等の患者情報、及び、「体重を測定して下さい。」という透析前体重を測定するための指示とともに、透析条件情報等を取得するためのコード情報(本例では、QRコード(登録商標))が表示されている。
【0067】
患者P1は、ユーザ端末T4を用いて、図4に示す表示画面に含まれるコード情報を読み取ることにより、自身についての透析条件情報等を取得することができる。本例において、ユーザ端末T4には、カメラ機能を備え、さらに、QRコード(登録商標)を読み取り可能なアプリケーションがインストールされている。当該アプリケーションを起動したときに、患者P1のユーザ端末T4に表示される表示画面の一例を図5に示す。図5に示されるとおり、患者P1のユーザ端末T4に表示される表示画面には、患者P1が過去(2023年6月14日)に読み取った透析条件情報とその取得日とともに「カメラ起動(QR読取ボタン)」が表示されている。患者P1が「カメラ起動(QR読取ボタン)」をクリックすると、ユーザ端末T4のカメラが起動する(図6)。ユーザ端末T4のカメラを用いて、図4に示す表示画面に含まれるコード情報を読み取ると、当該コード情報に基づいて透析条件情報等が生成され、生成された透析条件情報等がユーザ端末T4の記憶部に記憶されるとともに、ユーザ端末T4の表示部には生成された透析条件情報等を含む表示画面が表示される。図7に、ユーザ端末T4の表示部に表示される透析条件情報等を含む表示画面と、そこに含まれる情報の一例を示す。
【0068】
図7に示されるとおり、ユーザ端末T4の表示部には、透析条件情報の取得日「2023年7月20日」とともに、患者P1についての透析条件情報として、ドライウェイト「60.0kg」、週の回数「3回」、治療方法「HD」、透析時間「4.2時間」、ダイアライザ「ABH-15P」、透析液「キンダリー透析剤4E」、透析液流量「500mL/min」、抗凝固剤「ヘパリンNa注250単位/ml」が表示されている。図5に示した透析条件情報、すなわち、「2023年6月14日」に取得した透析条件情報と比較して、少なくとも「ドライウェイト」と「透析時間」が更新されている。なお、当該画面を下にスクロールすると、更に他の透析条件情報を閲覧可能であることは言うまでもない。
【0069】
以上のとおり、本実施態様に係る透析条件情報共有システム100によれば、患者P1は非常に手軽に、且つ、正確に、自身の透析条件情報等をユーザ端末T4に記録することができる。また、ユーザ端末T4において所定の操作を行うことにより、透析条件情報等を含む上記表示画面をいつでも表示させることができるので、例えば、災害時等の緊急時においても自身の透析条件を容易に確認することができる。
【0070】
なお、以上に説明したとおり、本例においては、体重計を用いて透析前体重を測定する際に、体重計に接続された体重計接続端末T1の表示部に表示される表示画面に透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報が表示されているが、透析が終了した後の透析後体重を測定する際に、体重計接続端末T1の表示部に表示される表示画面に透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報が表示されるようにしてもよい。
【0071】
<基本動作2>
次に、患者P1がベッドサイド端末T2から透析条件情報等を取得する手順について説明する。
【0072】
血液透析治療を受ける過程において、透析前体重の測定を終えた患者P1は、通常、さらに血圧・脈拍等を測定した後、血液透析治療を受けるためのベッドへ移動し、血液透析治療を受ける準備を開始する。本例において、患者P1が血液透析治療を受けるベッドサイドには、透析中、患者P1又は医療スタッフがバイタルデータや透析の進行状況を確認したり、患者P1がTVやインターネットを楽しむためのベッドサイド端末T2が備えられており、このベッドサイド端末T2にも透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面が表示されるので、患者P1は、ベッドサイド端末T2から透析条件情報等を取得しても良い。
【0073】
本例において、ベッドサイド端末T2には、患者を識別する患者識別情報を取得するための手段として、ICカードリーダが備えられており、患者P1が、自身が所持するICカードをベッドサイド端末T2が備えるICカードリーダにかざすと、ICカードリーダはICカードから患者識別情報を読み取り、ベッドサイド端末T2は患者P1を識別する患者識別情報として患者ID「0001」を取得する。
【0074】
ベッドサイド端末T2は、患者P1を識別する患者識別情報として患者ID「0001」を取得すると、当該患者識別情報を情報処理装置S1へ送信する。
【0075】
情報処理装置S1はベッドサイド端末T2から患者識別情報を受信すると、体重計接続端末T1について述べたと同様にして、ベッドサイド端末T2に対し、受信した前記患者識別情報に対応する患者である患者P1についての透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面をベッドサイド端末T2に送信する。
【0076】
ベッドサイド端末T2は、情報処理装置S1から送信される前記コード情報を含む表示画面を取得すると、取得した前記コード情報を含む表示画面を表示部に表示する。ベッドサイド端末T2の表示部に表示される表示画面の一例を図8に示す。図8に示されるとおり、ベッドサイド端末T2に表示される表示画面には、患者P1の患者名、患者ID等の患者情報、及び、透析中の患者のバイタルデータ及び透析の進行状況に関する情報とともに、透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報(本例では、QRコード(登録商標))が表示されている。ユーザ端末T4により本画面から透析条件情報等を取得する手順は前述したとおりであるので説明を省略する。
【0077】
<基本動作3>
次に、患者P1がスタッフ端末T3から透析条件情報等を取得する手順について説明する。
【0078】
本例において、血液透析治療を実施する医療スタッフMS1は、透析室において透析の準備、透析中の患者のケア等にあたる看護師である。医療スタッフMS1は患者P1を担当しているので、患者P1の血液透析が順調に進んでいるかを確認するために定期的に患者P1のベッドサイドを訪れる。この際に、医療スタッフMS1が有するスタッフ端末T3を介して患者P1に透析条件情報を取得してもらうようにしても良い。
【0079】
スタッフ端末T3はICカードリーダ機能を備えるタブレット端末であり、患者P1が所持するICカードをスタッフ端末T3で読み取ることにより、端末T3はICカードから患者P1を識別する患者識別情報である患者ID「0001」を取得する。
【0080】
スタッフ端末T3は、患者P1を識別する患者識別情報として患者ID「0001」を取得すると、当該患者識別情報を情報処理装置S1へ送信する。情報処理装置S1はスタッフ端末T3から患者識別情報を受信すると、体重計接続端末T1について述べたと同様にして、スタッフ端末T3に対し、受信した前記患者識別情報に対応する患者である患者P1についての透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報を含む表示画面をスタッフ端末T3に送信する。
【0081】
スタッフ端末T3は、情報処理装置S1から送信される前記コード情報を含む表示画面を取得すると、取得した前記コード情報を含む表示画面を表示部に表示する。スタッフ端末T3の表示部に表示される表示画面の一例を図9に示す。図9に示されるとおり、本例において、スタッフ端末T3に表示される表示画面は、医療スタッフMS1が透析開始後に必要事項をチェックするための確認画面であり、ここには患者P1の患者名、患者ID等の患者情報、及び、患者P1の血液透析治療について確認すべき事項とともに、透析条件情報等を取得可能に形成されたコード情報(本例では、QRコード(登録商標))が表示されている。ユーザ端末T4により本画面から透析条件情報等を取得する手順は前述したとおりであるので説明を省略する。
【0082】
以上のとおり、スタッフ端末T3に透析条件情報等を取得するためのコード情報を含む表示画面を表示することにより、医療スタッフのスタッフ端末を介して患者P1に透析条件情報等を共有することが可能となる。基本動作1及び2で述べたように透析治療関連端末に透析条件情報等を取得するためのコード情報を含む表示画面を表示して、患者が自らコード情報を読み取り、透析条件情報等を取得するようにしてもよいが、透析条件情報等の取得を患者に一任してしまうと、患者によっては透析条件情報等の取得のし忘れが起こるおそれがある。スタッフ端末T3に透析条件情報等を取得するためのコード情報を含む表示画面を表示する上記構成によれば、医療スタッフを介して、患者に透析条件情報を共有することができるので、患者への透析条件情報の共有をより確実なものとし、また、管理しやすくなるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0083】
血液透析治療を受ける患者は、定期的に血液透析治療を受ける必要があり、通常、かかりつけの医療機関にて血液透析治療を受けている。一方、特に災害時等の緊急時には、かかりつけの医療機関にて血液透析治療を受けることが困難になり得るところ、かかりつけの医療機関以外の医療機関がその患者の透析条件を知るためには、患者の記憶やメモ等の限られた情報に異存せざるを得ず、適切な透析治療を迅速に実施することは困難であった。本発明の一側面に係る透析条件情報共有システムによれば、血液透析治療を受ける患者に透析条件情報をより手軽且つ確実に共有することができ、患者は自身の透析条件情報を容易に管理することができるので、以上のような不都合が解決され、特に災害時等の緊急時にかかりつけの医療機関へのアクセスが制限される場合であっても、適切な透析治療を迅速に実施することが可能となる。このように本発明の産業上の利用可能性には多大なものがある。
【符号の説明】
【0084】
100 透析条件情報共有システム
N ネットワーク
S1 情報処理装置
T1 体重計接続端末(透析治療関連端末)
T2 ベッドサイド端末(透析治療関連端末)
T3 医療スタッフMS1のスタッフ端末(透析治療関連端末)
T4 患者P1のユーザ端末
P1 患者
MS1 医療スタッフ

【要約】      (修正有)
【課題】血液透析治療を受ける患者が透析条件情報をより手軽且つ確実に共有できる。
【解決手段】透析治療関連端末T1と、透析治療関連端末と通信可能に接続された情報処理装置S1と、患者が有するユーザ端末T4と、を備える透析条件情報共有システム100において、透析治療関連端末は、患者を識別する患者識別情報を取得する手段及び取得した患者識別情報を情報処理装置に送信する手段を有し、情報処理装置は、透析治療関連端末から受信した患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を、患者識別情報とその患者識別情報に対応する患者の透析条件情報を対応付けて記憶する記憶部から取得する手段、取得した透析条件情報を取得可能に形成されたコード情報を生成する手段及び生成したコード情報を含む表示画面を透析治療関連端末に出力する手段を有し、ユーザ端末は、透析治療関連端末に出力される表示画面に含まれるコード情報を読み取る手段を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9