(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】脱気装置、防水構造および駐車場
(51)【国際特許分類】
E04D 13/16 20060101AFI20240201BHJP
E04D 11/00 20060101ALI20240201BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E04D13/16 Y
E04D11/00 P
E04H6/42 A
E04H6/42 Z
(21)【出願番号】P 2022108596
(22)【出願日】2022-07-05
(62)【分割の表示】P 2018042323の分割
【原出願日】2018-03-08
【審査請求日】2022-07-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591037960
【氏名又は名称】シーカ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】坂本 洋
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-324258(JP,A)
【文献】特開2002-021288(JP,A)
【文献】特開2000-314212(JP,A)
【文献】実開昭57-089726(JP,U)
【文献】実開平06-028059(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/16
E04D 11/00
E04H 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面のコンクリート下地と、
前記下地の表面に設けられる防水層と、
前記防水層の上に設けられる脱気装置と、
前記脱気装置を囲んで設けられる車止めと、を備えた防水構造付きの駐車場であって、
前記防水層は開口を備え、
前記下地は前記開口に通じる下孔を備え、
前記脱気装置は、前記防水層の上に突出して設けられた脱気筒を備え、
前記脱気筒は、
前記開口を囲んで前記防水層の
上の表面に設けられた環状の台部と、
前記台部から、前記防水層から離れる方向に突出する筒部と、
を備える、
防水構造付きの駐車場。
【請求項2】
前記車止めは、前記脱気筒を覆うカバー状であり、
前記車止めは、天板部と、天板部から垂下する側板部とを備え、
前記側板部は、前記側板部の内面から外面に向かって下降する方向に伸びる通気孔を備える、
請求項1に記載の防水構造付きの駐車場。
【請求項3】
前記脱気筒は、前記台部から突出し、前記下孔に挿入される挿入筒部をさらに備え、
前記挿入筒部は、1または複数の通気孔を備え、
前記脱気筒は、前記筒部の上部開口を覆うカバー部をさらに備え、
前記筒部の外周面は、ネジ部と、通気溝とを備え、
前記カバー部は、前記上部開口を覆う天壁部と、前記天壁部の周縁から垂下する周壁部とを備え、
前記周壁部の内周面に、前記筒部のネジ部に螺合するネジ部を備え、
前記通気溝は、前記筒部の内部空間と、前記脱気筒の外の空間とを連通する、
請求項2に記載の防水構造付きの駐車場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱気装置、防水構造および駐車場に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、店舗などの施設の屋上に設けられる自走式駐車場には、ウレタン塗膜からなる防水層を用いた露出防水構造が採用されることが多い。この防水構造では、下地の水分管理が不十分となると、日射等の影響による温度上昇によって、下地に含まれる水分が水蒸気となって放出され、防水層の膨れを引き起こすことがある。防水層の膨れは美観の点で問題であるだけでなく、通行の障害にもなり得る。塗膜の膨れ箇所は、外力が加わることで破損し、防水層の防水性能に影響を及ぼす可能性がある。
駐車場は、主要な建築構造物の工事の後に施工されることが多い。主要な構造物に工期の遅れが生じると、下地となるコンクリートの養生日数の確保が問題となることがある。コンクリートの養生日数を十分に長くすれば、建築工事の工期の遅れにつながる。養生日数が短ければ、例えば下地の表面が乾燥した時点で防水施工をすることになるが、コンクリートの含有水分量が多くなるため、防水層に膨れが生じやすくなる懸念がある。
屋上防水などに用いられる絶縁工法(通気緩衝工法)で形成された防水構造は、通気緩衝シートからなる通気緩衝層を用いるため、下地から放出された水蒸気を、通気緩衝層を通して放出できる。しかし、この防水構造は、車両の走行による負荷がかかる駐車場に適用するには強度の点で十分とはいえないため、駐車場では採用されていない。
駐車場では、防水層の膨れを防ぐため、例えば、水蒸気を排出する脱気装置が用いられることがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記脱気装置は、車両の走行、および歩行者の通行の障害とならない場所に設置する必要があるため、脱気性能の確保に必要な設置場所を選ぶことが難しいことがあった。その場合には十分な脱気ができないため、防水層の膨れを防ぐのは難しかった。また、前記脱気装置は防水層上に突出して設けられるため、駐車場の美観の点で好ましくない場合があった。
【0005】
本発明の課題は、このような事情に鑑みてなされたもので、防水層の膨れを抑制でき、かつ車両の走行等に支障が生じず、しかも駐車場の美観を損なうことがない脱気装置、防水構造および駐車場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、駐車領域を有する駐車場に設けられる脱気装置であって、前記駐車領域の下地の表面に形成された防水層の上に突出して設けられた脱気筒と、前記脱気筒を囲んで設けられた車止めと、を備え、前記防水層に、前記脱気筒内の通気空間に臨む開口が形成され、前記下地に、前記開口に通じる下孔が形成されている、脱気装置を提供する。 前記車止めは、前記脱気筒を覆うカバー状に形成されていることが好ましい。
前記脱気筒は、前記開口を囲んで前記防水層の表面に接着された環状の台部と、前記台部から、前記防水層から離れる方向に延出する筒部と、を備えていることが好ましい。 前記脱気装置は、前記車止めに、外部に通じる通気孔が形成されていることが好ましい。
前記車止めは、天板部と、天板部から垂下する側板部とを備えていることが好ましい。
本発明の一態様は、駐車場の前記駐車領域の前記下地の表面に形成された前記防水層と、前記脱気装置とを備えている防水構造を提供する。
本発明の一態様は、前記駐車領域と、車両が走行する走行路とを有する駐車場であって、少なくとも前記駐車領域に、前記防水構造が設けられている駐車場を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、下地で発生した水蒸気を、下孔を経て脱気筒から放出することができる。そのため、防水層の膨れを抑制することができる。脱気筒は車止めに囲まれて設けられており、車止めは駐車区画に設けられているため、脱気装置は、車両の走行および歩行者の通行の障害とはならない。また、脱気筒は車止め内に設けられており、外からは見えにくいため、駐車場の美観は損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)第1実施形態の脱気装置を備えた防水構造を模式的に示す断面図である。(B)防水構造の拡大断面図である。
【
図2】
図1に示す脱気装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す脱気装置の使用形態を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す脱気装置の使用形態を示す側面図である。
【
図5】
図1に示す脱気装置を適用した駐車場の一例を示す平面図である。
【
図6】第2実施形態の脱気装置に使用可能な脱気筒を示す分解斜視図である。
【
図7】
図6に示す脱気筒の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
図1(A)は、第1実施形態の脱気装置10を備えた防水構造20を模式的に示す断面図である。
図1(B)は、防水構造20の拡大断面図である。
図2は、脱気装置10の内部構造を示す斜視図である。
図3は、脱気装置10の使用形態を示す斜視図である。
図4は、脱気装置10の使用形態を示す側面図である。なお、平面視とは、駐車場30の下地31の表面31a(
図1(A)参照)に垂直な方向から見ることをいう。下地31の表面31aに垂直な方向であって下地31から離れる方向(
図1(A)の上方)を上方といい、その反対方向を下方という。
【0010】
図1(A)、
図1(B)および
図2に示すように、防水構造20は、駐車場30に設けられている。防水構造20は、防水層1と、脱気装置10とを備えている。
駐車場30の下地31は、例えばコンクリートが打設されることによって形成される。
図1(A)および
図1(B)に示すように、駐車場30の駐車領域33の下地31には、下孔32が形成されている。下孔32は、表面31aに対して垂直に形成された有底の孔部である。下孔32は、例えば、深さ方向に直交する断面が円形である。下孔32は、深さ方向にわたって一定の内径を有するストレート形状であってよい。符号32aは下孔32の底である。下孔32は、回転工具に連結したドリル(図示略)によって下地31に形成することができる。
【0011】
防水層1は、下地31の表面31aに直接、形成されるか、または、プライマー層2を介して下地31の表面31aに形成される。プライマー層2は、下地31に対する防水層1の接着力を確保するためのもので、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂などからなるプライマーが使用できる。プライマーの塗布方法としては、ローラー、刷毛等による塗布;スプレーガンによる噴射などがある。プライマーの塗布量は、例えば0.15~0.2kg/m2である。
【0012】
防水層1の材料としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、メチルメタクリレート樹脂、ポリウレア樹脂などが使用でき、特にポリウレタン樹脂が好適である。
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートを含有する主剤と、イソシアネート基と反応性のある多官能活性水素化合物を含有する硬化剤とからなる、2液型ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0013】
主剤に含まれるイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物とポリオールとの反応によって得られるイソシアネート基末端プレポリマーが好ましい。ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えばジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(液状MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低分子量イソシアネート化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が使用できる。ポリエーテルポリオールの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の1種以上を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオールの具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、その他の低分子ポリオールの1種以上と、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、あるいはその他の低分子ジカルボン酸やオリゴマー酸の1種以上との縮合重合、およびカプロラクトン等を開環重合して得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。
【0016】
硬化剤としては、活性水素含有化合物が挙げられ、例えばポリアミン、ポリオール、および水から選ばれる少なくとも1つを用いることができるが、ポリアミンのみ、または、ポリアミンとポリオールとの混合物を用いることが好ましい。
前記ポリアミンとしては、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン等が挙げられる。具体的には、ジエチルトルエンジアミン、ジアルキル-4,4’-メチレンジアニリン、テトラアルキル-4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)、ビスメチルチオトルエンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、メタキシリレンジアミン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記ポリオールとしては、水酸基を2個以上持っていれば特に限定されないが、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール等の一般ポリオール;含燐ポリオール等の難燃性ポリオール等が挙げられる。これらポリオールは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
防水層1には、必要に応じて、可塑剤、硬化触媒、充填材、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色顔料等の添加剤を添加してもよい。
【0018】
防水層1の厚みは、例えば1.5mm以上とすることができる。これによって、防水層1に十分な厚みを与え、防水性能を高めることができる。防水層1の厚みは、施工の容易さ、施工コストを考慮すれば、3mm以下が好ましい。
防水層1は、例えば、高圧スプレーガンを備えた2液型衝突混合方式のスプレー塗装装置(2液衝突混合機)を用いて、材料樹脂を、プライマー層2に向けて吹き付けて塗布することにより形成することができる。防水層1の材料樹脂の塗布量は、例えば1.5kg/m2以上(好ましくは1.5~3kg/m2)とすることができる。
なお、防水層1は、1液型のポリウレタン材料によって形成してもよい。
【0019】
防水層1には、後述する脱気筒3内の通気空間S1に臨む開口1aが形成されている。開口1aは、例えば下孔32の開口と同じ内径を有する円形であり、平面視において下孔32の開口と重なる位置にある。そのため、脱気筒3の通気空間S1と、下孔32の内部空間とは、開口1aを介して連通している。
【0020】
脱気装置10は、脱気筒3と、車止め4と、を備えている。脱気筒3は、台部5と、筒部6とを備えている。台部5は、円環状の板状に形成されている。台部5は、平面視において開口1aを囲んでいる。台部5は、接着層7を介して防水層1に接着される。接着層7は、台部5の下面5aと防水層1の表面1bとの間に、開口1aを囲んで形成される。接着層7は、開口1aを囲んで形成されるため、表面1bの水が開口1aに入るのを防ぐことができる。台部5は、筒部6の下端から外方に延出するフランジ部である。
【0021】
なお、台部5の形状は円環状に限らず、矩形枠状など、他の形状であってもよい。また、脱気筒3は、台部5が接着層7によって防水層1に接着されることによって表面1bの水が開口1aに入るのを防ぐことができるが、浸水防止構造はこれに限定されない。例えば、接着層7を用いず、台部5の周縁部に設けたシーリング材によって台部5と表面1bとの隙間を塞ぐことで、開口1aへの水の浸入を防ぐこともできる。
【0022】
筒部6は、台部5の上面5bから上方に延出する円筒状に形成されている。筒部6の外径は台部5の外径より小さい。筒部6の中心軸方向は、例えば上下方向に一致する。筒部6は平面視において台部5と同心とされている。台部5の内部空間と筒部6の内部空間とを通気空間S1と総称する。
脱気筒3は、例えば、樹脂、金属などから構成される。
【0023】
脱気筒3は、台部5において広い面積で防水層1と接着されるため、脱気筒3の強度を高めるとともに、開口1a内への水の浸入を確実に防ぐことができる。筒部6は、台部5よりも外径が小さいため、脱気筒3の小型化に寄与している。
【0024】
図1(A)、
図1(B)および
図2に示すように、車止め4は、天板部8と、一対の側板部9,9と、一対の端板部11,11(
図2参照)を備えている。
図2に示すように、天板部8は、例えば平面視において矩形状、例えば長方形状に形成されている。天板部8は、例えば下地31の表面31aと平行である(
図1(A)参照)。
図1(A)に示すように、一対の側板部9,9は、それぞれ天板部8の一方および他方の側縁8a,8aから垂下する。一対の側板部9,9は、側縁8a,8aから下方に向かって拡幅方向(互いの距離が大きくなる方向)に傾斜している。
【0025】
側板部9,9のうち一方または両方には、通気孔12が形成されている。通気孔12は、側板部9を貫通して形成されており、車止め4の内部空間S2と外部とを連通させる。通気孔12は、側板部9の内面9aから外面9bに向かって下降する方向に形成されていることが望ましい。これによって、雨水、異物などが通気孔12を通して車止め4内に入るのを抑制できる。側板部9には、通気孔12を覆うフィルタ(図示略)が形成されていてもよい。これによって、雨水、異物などが通気孔12から車止め4内に入るのを妨げることができる。
【0026】
図2に示すように、一対の端板部11,11は、それぞれ天板部8の一方および他方の端縁8b,8bから垂下する。側板部9,9および端板部11,11の高さ寸法は、脱気筒3の高さ寸法より大である。天板部8と、側板部9,9と、端板部11,11とは、一体に形成されていることが望ましい。天板部8と、側板部9,9と、端板部11,11とによって囲まれた空間を内部空間S2という(
図1(A)参照)。
【0027】
車止め4は、天板部8と側板部9,9と端板部11,11とを有する構造であるため、十分な機械的強度を有する。また、車止め4は、脱気筒3を包囲して外から見えなくすることで、駐車場30の美観を良好にすることができる。
図1(A)に示すように、側板部9,9の下端および端板部11,11の下端は、接着層13によって防水層1の表面1bに接着される。
【0028】
車止め4の側板部9,9および端板部11,11は、平面視において脱気筒3を囲んでいる。車止め4は、脱気筒3を覆うカバー状に形成されており、内部空間S2に脱気筒3を収容している。そのため、脱気筒3は、車止め4によって隠されており、車止め4の外からはほとんど視認できない。車止め4は、例えば、樹脂、金属などから構成される。車止め4を構成する天板部8と、側板部9,9と、端板部11,11とは、非透明性の材料からなる。
【0029】
図3および
図4に示すように、車止め4は、長手方向を、進行方向Pに対して交差する方向に向けて設置される。進行方向Pとは、駐車領域33の駐車区画34における車両50(
図4参照)の進行方向である。車止め4は、平面視において進行方向Pに対して垂直に設置されることが好ましい。
図3では、1つの駐車区画34の端部近傍に一対の脱気装置10が設けられている。一対の脱気装置10は、車両の進行方向Pに対して直交する方向(駐車区画34の幅方向)に並んで設けられている。車止め4は、
図4に示す車両50のタイヤ51の移動を規制することによって、駐車区画34内での車両50の位置を定める機能を有する。例えば、
図4に示す車止め4は、車両50のタイヤ51が当接することで車両50が右方へ移動するのを規制できる。
【0030】
図5は、防水構造20が設けられる駐車場30の一例である自走式駐車場100を示す平面図である。
駐車場100は、駐車フロアを1つのみ有する構成であってもよいし、複数の駐車フロアを有する立体駐車場であってもよい。駐車場100は、施設や店舗の上層フロア(例えば屋上)に設けられた駐車場であってよい。上層フロアに設けられた駐車場には高い防水性能が求められるため、防水構造20は、この種の駐車場に適用された場合に、その特性を十分に発揮する。
【0031】
駐車場100は、車両110を導く進入路101(走行路)と、駐車フロア102と、車両110が退出する退出路103(走行路)とを有する。駐車フロア102は、例えば平面視略矩形状(長方形)とされ、中央部に平面視略矩形状(長方形)の第1駐車領域111が設けられ、その周囲に、車両が走行可能な環状の走行車路106(走行路)が確保されている。走行車路106の外側には、第1駐車領域111の外周縁の各辺に対向する位置に、第2~第5駐車領域112~115が確保されている。駐車領域111~115は、それぞれ、車両1台分の駐車区画116が複数配列されている。
【0032】
走行車路106は、第1駐車領域111を囲んで形成され、第1駐車領域111の外周縁形状に即した平面視略矩形(長方形)とされている。走行車路106は、2つの長辺のうち一方である第1直線部106aと、2つの短辺のうち一方であって第1直線部106aに隣接する第2直線部106bと、他方の長辺であって第2直線部106bに隣接する第3直線部106cと、他方の短辺であって第3直線部106cに隣接する第4直線部106dと、を有する。第1直線部106aは、2つの長辺のうち、進入路101および退出路103に近い側の長辺に相当する。走行車路106では、車両110は右回り(第1~第4直線部106a~106dの並び順)に走行可能である。
【0033】
第1直線部106aと第2直線部106bとの接続部となる曲折部を第1曲折部107aという。第2直線部106bと第3直線部106cとの接続部となる曲折部を第2曲折部107bという。第3直線部106cと第4直線部106dとの接続部となる曲折部を第3曲折部107cという。第4直線部106dと第1直線部106aとの接続部となる曲折部を第4曲折部107dという。進入路101は、第1曲折部107aに接続されている。退出路103は、第4曲折部107dに接続されている。
【0034】
車両110が駐車フロア102に入る際には、車両110は進入路101を通り、第1曲折部107aを経て第2直線部106bに進入し、走行車路106を右回りに走行して、駐車領域111~115のいずれかの駐車区画116に駐車する。車両110が駐車フロア102から退出する際には、車両110は駐車区画116から出て、走行車路106を右回りに走行し、第4曲折部107dを経て退出路103に入り、退出路103を通って駐車場100から退出する。
【0035】
駐車場100では、
図1(A)に示す防水構造20を、
図5に示す駐車領域111~115の駐車区画116に施工することができる。
【0036】
次に、防水構造20の作用について説明する。
図1(A)および
図1(B)に示すように、下地31の水分含有量が多い場合には、日射等の影響による温度上昇によって下地に含まれる水分が水蒸気となって放出される場合がある。下地31のうち下孔32の周辺部分から放出された水は下孔32に入る。下孔32に放出される水は液体でもよいし、気体(水蒸気)でもよい。下孔32内の水は水蒸気となって、通気空間S1を通って脱気筒3の上部開口から車止め4の内部空間S2に放出される。この水蒸気の一部は、通気孔12を通って車止め4の外部に放出される。
図1(A)に仮想線で示した放出領域35は、下地31のうち、発生した水分が下孔32内に放出される領域である。平面視における放出領域35の面積は、下孔32の深さに応じて増減する。
【0037】
図1(A)および
図1(B)に示すように、脱気装置10は、脱気筒3と、車止め4とを備えているため、下地31で発生した水蒸気を、下孔32を経て脱気筒3から放出することができる。そのため、防水層1の膨れを抑制することができる。脱気筒3は車止め4内に設けられており、車止め4は駐車区画34の端部近傍に設けられているため(
図2および
図3参照)、脱気装置10は、車両の走行および歩行者の通行の障害とはならない。脱気装置10では、脱気筒3は車止め4内に設けられており、外からは見えにくいため、駐車場30の美観は損なわれない。
【0038】
図4に示すように、脱気装置10は、駐車場30の駐車領域33(詳しくは駐車区画34)に設けられる。そのため、車止め4に近い位置の防水層1には、車両50のタイヤ51によって押圧力が加えられる。この際、防水層1と下地31との間にある水分の一部は、前記押圧力によって下孔32に向かって移動しやすくなる(
図1(A)参照)。
図1(A)に示す放出領域35にもタイヤ51によって押圧力が加えられるため、放出領域35から下孔32への水分の放出が促進される可能性がある。
【0039】
脱気装置10では、車止め4が、脱気筒3を覆うカバー状に形成されているため、雨水、異物などが脱気筒3に入るのを防ぐことができる。また、脱気筒3を外部から見えなくし、駐車場30の美観を良好にすることができる。
【0040】
防水構造20は、脱気装置10を有するため、下地31で発生した水蒸気を脱気筒3から放出することにより、防水層1の膨れを抑制することができる。また、脱気筒3は車止め4に設けられるため、車両の走行等に支障は生じず、かつ駐車場30の美観は損なわれない。
【0041】
防水構造20は、防水層1の表面1bに脱気装置10が設けられるため、その構成が簡略である。そのため、例えば、通気性の樹脂モルタル下地層(第1層)と、塗膜防水層(第2層)と、樹脂モルタル仕上層(第3層)とを備えた防水構造(上述の特許文献1を参照)と異なり、防水構造20を支持する構造体への荷重負担を少なくできる。また、防水構造20は、その構成が簡略であるため、防水層1の改修の際の容易性の点でも優れている。
【0042】
駐車場30では、脱気装置10が設けられるため、下地31で発生した水蒸気を脱気筒3から放出することにより、防水層1の膨れを抑制することができる。また、脱気筒3は車止め4に設けられるため、車両の走行等に支障は生じず、かつ駐車場30の美観は損なわれない。
【0043】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の脱気装置に使用可能な脱気筒63を示す分解斜視図である。
図7は、脱気筒63の使用状態を示す図である。
図8は、脱気筒63の断面図である。
図6~
図8に示すように、第2実施形態の脱気装置は、脱気筒3に代えて脱気筒63を用いること以外は
図1(A)等に示す脱気装置10と同様の構成である。脱気筒63は、本体部61と、カバー部62とを備える。本体部61は、挿入筒部64と、フランジ部65(台部)と、突出筒部66(筒部)とを備えている。
【0044】
挿入筒部64は、円筒状に形成され、下孔32に挿入される。挿入筒部64には、1または複数の通気孔64aが形成されている。通気孔64aは挿入筒部64を厚さ方向に貫通している。例えば、複数の通気孔64aは、挿入筒部64の長さ方向に位置を違えて形成されている。フランジ部65は、円環状の板状に形成されている。フランジ部65は平面視において防水層1の開口1aを囲んでいる。フランジ部65の周縁部と表面1bとの隙間はシーリング材71によって塞がれている。そのため、表面1bの水が開口1aに入るのを防ぐことができる。突出筒部66は、フランジ部65の上面65bから上方に延出する円筒状に形成されている。突出筒部66の外周面にはネジ部が形成されている。突出筒部66の外周面には、通気溝68が形成されている。通気溝68は、突出筒部66の全長にわたり、突出筒部66の軸方向に沿って形成されている。通気溝68の下端は、突出筒部66に螺着されたカバー部62の下端より低い位置に達しているため、通気溝68を通した脱気筒63の内部と外部との十分な通気を確保できる。挿入筒部64、フランジ部65および突出筒部66の内部空間を通気空間S3と総称する。
【0045】
カバー部62は、例えば袋ナットであり、天壁部69と、その周縁から垂下する周壁部70とを備える。周壁部70の内周面には、突出筒部66の外周面に螺合するネジ部が形成されている。カバー部62は、突出筒部66に螺着することによって、突出筒部66の上部開口を覆う。
【0046】
下地31のうち下孔32の周辺部分から放出された水(液体または気体)は下孔32に入る。下孔32内の水は水蒸気となって、挿入筒部64の下部開口から通気空間S3に入る。下孔32に入った水蒸気は通気孔64aを通して通気空間S3に入ることもできる。通気空間S3内の水蒸気は、脱気筒63の上部開口からカバー部62内に放出される。
【0047】
カバー部62内の水蒸気は、通気溝68を下方に向かって流れて脱気筒63の外(すなわち、
図1(A)に示す車止め4の内部空間S2)に放出される。水蒸気の一部は、通気孔12を通って車止め4の外部に放出される(
図1(A)参照)。
【0048】
第2実施形態の脱気装置は、第1実施形態の脱気装置10と同様に、下地31で発生した水蒸気を、下孔32を経て脱気筒63から放出することができるため、防水層1の膨れを抑制することができる。脱気筒63は車止め内に設けられているため、脱気装置は通行の障害とはならず、駐車場の美観を損なうこともない。
脱気筒63における水蒸気の流通路となる通気溝68は、カバー部62の周壁部70によって覆われている。そのため、雨水等により脱気筒63が水没した場合でも、水の表面張力により、通気溝68を通した脱気筒63内への水の流入は起こりにくくなる。
【0049】
上述の実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。例えば、
図1(A)に示す脱気装置10では、車止め4内にファン(図示略)を設けることができる。このファンによって、車止め4の内部空間S2の水蒸気の外部への排出を促すことができる。脱気装置10では、車止め4の天板部8の上面に光電池を設置し、この光電池から前記ファンに給電してもよい。
図1(A)に示す防水構造20は、駐車場30の床面のうち駐車領域33(
図3参照)以外の領域に形成してもよい。なお、下地に形成される下孔は有底でなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 防水層
1a 開口
1b 表面
3,63 脱気筒
4 車止め
5 台部
6 筒部
8 天板部
9 側板部
10 脱気装置
12 通気孔
20 防水構造
33,111~115 駐車領域
30,100 駐車場
31 下地
31a 表面
32 下孔
65 フランジ部(台部)
66 突出筒部(筒部)
S1,S3 通気空間