(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】セチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物、及びその応用技術
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4425 20060101AFI20240201BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240201BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240201BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240201BHJP
A61L 27/28 20060101ALI20240201BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20240201BHJP
A61L 31/08 20060101ALI20240201BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20240201BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20240201BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20240201BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K31/4425
A61K9/14
A61K9/51
A61K47/24
A61L27/28
A61L27/54
A61L31/08
A61L31/16
A61L29/08
A61L29/16
A61P31/00
(21)【出願番号】P 2022125464
(22)【出願日】2022-08-05
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】308006254
【氏名又は名称】株式会社アモルファス
(74)【代理人】
【識別番号】100088029
【氏名又は名称】保科 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 廣
(72)【発明者】
【氏名】岸原 直雄
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸一郎
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0137109(KR,A)
【文献】特開2008-266157(JP,A)
【文献】Green Chem.,2016年,18,pp.3981-3989
【文献】J. AM. CHEM. SOC.,2003年,125,pp.7860-7865
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61L
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セチルピリジニウム塩化物水和物と、下記一般式(I)で示される特定のケイ素化合物とを
混合しミセルを形成し、その後、ナノ粒子の形態とする、ナノ粒子の形態の組成物を得る、ナノ粒子組成物の製法。
【化1】
[式(I)中、
Aは、結合又は低級アルキレンを示し;R
1,R
2及びR
3は、それぞれ、独立して、
O-R
5を示し;
R
5は、
(1) 低級アルキル、又は
(2) 低級アルカノイルを示し;
R
4は、
(1) 低級アルキル、
(2) 低級アルケニル、
(3) フェニル、
(4) 同一又は異なる1~2個のR
6で置換されてもよいアミノ、
(5) R
6―CONH、又は
(6) シアノを示し
R
6は、
(1) 同一又は異なる1~2個のR
7で置換されてもよい低級アルキル、
(2) 同一又は異なる1~2個のR
8で置換されてもよいアミノ、
(3) 同一又は異なる1~3個の低級アルコキシで置換されてもよいシリル低級アルキル、を示し
R
7は、
(1) 同一又は異なる1~2個の低級アルキルで置換されてもよいアミノ、
(2) ヒドロキシで置換されてもよいフェニル、
(3) カルバモイル、
(4) ベンジルで置換されてもよいイミダゾリル、
(5) カルボキシ、又は
(6) ベンジルオキシカルボニルで置換されてもよいグアニジノを示し;
R
8は、
(1) アミノ低級アルキル(ここに、アミノは同一又は異なる1~2個の低級アルキルで
置換されてもよい)、又は
(2) カルボキシを示す。]
【請求項2】
前記式(I)の化合物において、
Aが、結合又はC
1-6アルキレンを示し;
R
1、R
2及びR
3が、それぞれ、独立して、
O-R
5
を示し;
R
5が、
(1) C
1-6アルキル、又は
(2) C
1-6アルカノイルを示し;
R
4が、
(1) C
1-8アルキル、
(2) C
2-4アルケニル、
(3) フェニル、
(4) 1個のR
8で置換されてもよいアミノ、
(5) R
6―CONH、又は
(6) シアノを示し;
R
6が、
(1) 同一又は異なる1~2個のR
7で置換されてもよい低級アルキル、
(2) 同一又は異なる1~2個のR
8で置換されてもよいアミノ、
(3) 同一又は異なる1~3個の低級アルコキシで置換されてもよいシリルC
1-6
アルキルを示し;
R
7が、
(1) 同一又は異なる1~2個のC
1-6アルキルで置換されてもよいアミノ、
(2) ヒドロキシで置換されたフェニル、
(3) カルバモイル、
(4) ベンジルイミダゾリル、
(5) カルボキシ、又は
(6) グアニジノを示し;
R
8が、アミノーC
1-6アルキル(ここに、アミノは同一又は異なる1~2個のC
1-6アルキルで置換されてもよい)を示し;あるいは2個のR
8がこれらが結合する窒素と一緒になって、環構成ヘテロ原子として少なくとも1個の窒素を含有する飽和又は不飽和の3~12員の単環式又は二環式ヘテロ環を形成してもよい、化合物である、請求項1に記載の組成物の製法。
【請求項3】
前記式(I)の化合物において、
Aが、C
1-6アルキレンを示し;
R
1、R
2及びR
3が、それぞれ、独立して、O―R
5を示し;
R
5が、C
1-6アルキルを示し;
R
4が、R
6―CONHを示し;
R
6が、
(1) 同一又は異なる1~2個のR
7で置換されてもよいC
1-6アルキル、又は
(2) 同一又は異なる1~2個のR
8で置換されてもよいアミノを示し;
R
7が、
(1) 同一又は異なる2個のC
1-6アルキルで置換されてもよいアミノ、
(2) ヒドロキシで置換されたフェニル、
(3) カルバモイル、
(4) ベンジルイミダゾリル、
(5) カルボキシ、又は
(6) グアニジノを示し;
R
8が、アミノーC
1-6アルキル(ここに、アミノは同一又は異なる1~2個のC
1-6アルキルで置換されてもよい)を示す、化合物である、請求項1又は2のいずれかに記載の組成物の製法。
【請求項4】
前記ミセルを形成した後、透析をし、さらに、無菌ろ過することにより無菌化されたナノ粒子の形態の組成物を得る、請求項1に記載のナノ粒子組成物の製法。
【請求項5】
感染症の予防及び/又は治療のために用いる予防用具及び/又は医療用具に担持する、請求項1に記載の製法による組成物の利用方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製法により組成物を製造し、医療用材料又は医療器具に担持する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセチルピリジニウム塩化物水和物及びケイ素化合物を含む、感染症を予防及び/又は治療するため並びに新型コロナウイルス(SARS-Co-2)を含むエンベロープ型ウイルス全般に効果がある界面活性剤を含む、組成物に関する。本発明はまた、当該組成物を担持した医療材料及び医療用材料、及び当該医療用材料又は医療器具を用いた新規なドラックデリバリーシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
セチルピリジニウ塩化物水和物はピリジン環を有する四級アンモニウム化合物であり、ブドウ球菌を始めとしたグラム陽性に対する強い殺菌作用があり、その他の真菌に対しても殺菌作用を有する。その特性から歯磨剤や口内の殺菌を目的としてトローチとして、あるいは喉の殺菌を目的としたうがい薬などの医薬品に利用されている(ウキペディア)。
更にセチルピリジニウム塩化物水和物は新型コロナウイルス(SARS-Co-2)を含むエンベロープ型ウイルス全般に効果が知られている(非特許文献1)。
【0003】
2022年7月16日現在、新型コロナウイルス感染症は世界の感染者5億6千万人以上、死亡者6百万人以上に上り未だ解決の目途がつかず世界中を震撼させているパンデミックである。治療薬も数々開発されているが第一義的対応策はワクチン接種であり、予防策として補足的にマスクの着用、手洗い、密集・密接・密着を避けることが広く推奨されている。手洗いを除くこれらの行動様式はウイルスを含んだ飛沫の吸引による感染リスクを避けることと対応している。シミュレーションによって飛沫の拡散に関する湿度の影響やマスクの効果などが明らかにされ、飛沫感染は主要な感染経路と位置づけられている。
一方で、物質表面に付着したウイルスの感染可能な活性を有する時間は気温と湿度に大きく依存し、低温低湿度では1週間にもわたって感染力を保つという報告もあり、固体表面のウイルス不活性化は依然として重要な課題とされている(非特許文献2,3)。アルコールや界面活性剤は新型コロナウイルスを含むエンベロープ型ウイルスのエンベロープを破壊でき、その効果はウイルス表面のタンパク質が変異しても変わらないので変異ウイルスにも有効性が期待できる。界面活性剤による清拭は有効であるが、ドアノブや手すり、つり革などの公共の場で人の手が触れるものに対して頻繁に行うことは難しい。これらのものには抗ウイルスの効果の短時間での不活化とその持続性が求められている。
【0004】
また、人工関節感染の問題もある。一般に高齢者の増加に伴い、骨折患者数が増え、骨折に伴う手術も増加することが予想されている。近年、人工関節を用いた骨又は関節の外科手術は増加傾向にあり、2030年には米国で患者数が毎年400万人になるとの報告もある。しかし、人工関節を用いた外科的手術では、術後に人工関節感染(Prosthetic Joint Injection; PJI)が起こることがある。
人工関節感染は日本では約1%の患者に見られ、米国でも約1~2%の患者に見られる。
人工関節感染の発症患者の多くは複数回の手術が必要となるため患者さんへの負担が大きく、手術部位の切断が必要となることもあり、最悪の場合、死に至る症例もある。人工関節感染の診断や薬物投与による治療は一般に困難であるため、抗菌薬又は抗生物質を含有した縫合糸又はセメントを用いることもあるが、効果は明らかではなく、治療費は高額である。
【0005】
人工関節感染の他にも、体内カテーテルに由来するカテーテル関連血流感染、尿路及び胆道等の感染症等の術後感染も同様に問題になっている。
このような状況下、整形外科、外科及び泌尿器等の医療現場では、医療用材料又は医療用器具に由来する術後の感染症を予防するために、抗菌薬又は殺菌剤等を有する医療用材料であって、これらの薬剤の効果が持続するものが切望されており、薬効成分を、ケイ素化合物を用いて医療用材料又は医療用器具に担持させて、感染症等を治療又は予防する試みがある(特許文献1~4)。
しかしながら、当該文献に記載の組成物は、無菌濾過が可能なものはなく、また、薬効成分がセチルピリジニウム塩化物水和物にケイ素化合物を用いることにより医療用材料又は医療用器具に担持させ、持続的に抗菌及び/又は殺菌効果により感染症等を治療又は予防することについての記載は一切ない。なお、薬物とケイ素化合物を含む組成物を示す文献として非特許文献4がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】https://specchem-wako-jp.fujifilm.com/cpc/
【文献】C. Xie, H. Zao, K. Li, Z. Zhang, X. Lu, H. Pang, D. Wang, J. Chen, X. Zhng, D. Wu, Y. Gu, Y. Yuan, L. Zhang, and J. Lu, The evidence of indirect transmission of SARS- CoV-2 reported in Guangzhou, China BMC Public Health, 20. 2020, 1202.
【文献】S. H. Bae, H. Shin, H-Y. Koo, S. W. Lee, J. M. Yang, and D. K. Yon, Asymptomatic transmission of SARS-Co-2 on evacuation flight, Emerg. Infect, Dis., 26, 2020, 2705.
【文献】Journal of American Chemical Society, Vol. 125, No. 26, 2003, pp. 7860-7865
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2007-505697号公報
【文献】特開2008-266157号公報
【文献】特表2008-506493号公報
【文献】特表2012―533568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題の一つは、セチルピリジニウム塩化物水和物を、新型コロナウイルス感染症への対策としてマスクや手袋及びガーゼ、サージカルテープ等の衛生材料や各種予防用遮蔽版に担持させ、水に接触したウイルスによる感染を予防する効果を活用して新たなウイルス検知及び補足装置を提供すること。次の課題として、セチルピリジニウム塩化物水和物を、医療用材料又は医療器具に安定に担持させ、生体内に留置後、持続的に抗菌/又は殺菌効果を示す新規なドラッグデリバリーシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、セチルピリジニウム塩化物水和物を、特定のケイ素化合物に含ませたナノ粒子組成物を作成し、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の基本的な考えは、セチルピリジニウム塩化物水和物と、特定のケイ素化合物とを含み、ナノ粒子の形態である組成物にある。ナノ粒子の形態は、医療用器具などに対し高い付着性あるいは担持性を示し、しかもまた、医療用器具に求められる無菌ろ過を可能にする。
【0010】
本発明は、以下に例示する態様を含む。
項1.
【化1】
[式(I)中、
Aは、結合又は低級アルキレンを示し;R1,R2及びR3は、それぞれ、独立して、
(1) 低級アルキル、
(2) O-R5、又は
(3) フェニルを示し;
R5は、
(1) 低級アルキル、又は
(2) 低級アルカノイルを示し;
R4は、
(1) 低級アルキル、
(2) 低級アルケニル、
(3) フェニル、
(4) 同一又は異なる1~2個のR6で置換されてもよいアミノ、
(5) R5―CONH、又は
(6) シアノを示し;
R6は、
(1) 同一又は異なる1~2個のR7で置換されてもよい低級アルキル、
(2) 同一又は異なる1~2個のR8で置換されてもよいアミノ、
(3) 同一又は異なる1~3個の低級アルコキシで置換されてもよいシリル低級アルキルを示し
R7は、
(1) 同一又は異なる1~2個の低級アルキルで置換されてもよいアミノ、
(2) ヒドロキシで置換されてもよいフェニル、
(3) カルバモイル、
(4) ベンジルで置換されてもよいイミダゾリル、又は
(5) カルボキシを示し、
R8は、
(1) アミノ低級アルキル(ここに、アミノは同一又は異なる1~2個の低級アルキルで
置換されてもよい)、
2個のR8はこれらが結合する窒素と一緒になって単環式又は二環式ヘテロ環形成してもよい;で示される化合物又はその塩。
ここで、一般式(I)の化合物は、一般式(I)で示される、異なる2種類以上の化合物であってもよい。
【0011】
項2. 式(I)の化合物が、
Aが、結合又はC1-6アルキレンを示し;
R1、R2及びR3がそれぞれ、独立して、
(1) C1-6アルキル、
(2) O-R5、又は
(3) フエニルを示し;
R5が、
(1) C1-6アルキル、又は
(2) C1-6アルカノイルを示し、
R4が
(1) C1-8アルキル、
(2) C2-4アルケニル、
(3) フェニル、
(4) 1個のR6で置換されてもよいアミノ、
(5) R6―CONH、又は
(6) シアノを示し;
R6が、
(1) 同一又は異なる1~2個のR7で置換されてもよいC1-6アルキル、
(2) 同一又は異なる1~2個のR8で置換されてもよいアミノ、又は
(3) 同一又は異なる1~3個のC1-6アルコキシで置換されてもよいシリルーC-1-6アルキルを示し;
R7が、
(1) 同一又は異なる1~2個のC1-6アルキルで置換されてもよいアミノ、
(2) ヒドロキシで置換されたフェニル、
(3) カルバモイル、
(4) ベンジルイミダゾリル、又は
(5) カルボキシを示し;
R8が、アミノーC1-6アルキル(ここに、アミノは同一又は異なる1~2個のC1-6アルキルで置換されてもよい)を示し;あるいは2個のR8がこれらが結合する窒素と一緒になって、環構成ヘテロ原子として少なくとも1個の窒素を含有する飽和又は不飽和の3~12員の単簡式又は二環式ヘテロ環を形成してもよい、化合物である、項1に記載の組成物。
【0012】
項3.式(I)の化合物が、R4がR6ーCONHである化合物、項1又は2のいずれかに記載の組成物。
【0013】
項4.一般式(I)の化合物が
Aが、 C1-6 アルキレンを示し;
R1、R2及びR3が、それぞれ、独立して、O-R5を示し;
R5が、C1-6アルキルを示し;
R4が、R6ーCONHを示し;
R6が、
(1) 同一又は異なる1~2個のR7で置換されてもよいC1-6 アルキル、又は
(2) 同一又は異なる1~2個のR8で置換されてもよいアミノを示し;
R7が、
(1) 同一又は異なる2個のC1-6アルキルで置換されてもよいアミノ、
(2) ヒドロキシで置換されたフェニル、
(3) カルバモイル、
(4) ベンジルイミダゾリル、
(5) カルボキシキを示し;
R8が、アミノーC1-6アルキル(ここに、アミノは同一又は異なる1~2個のC1-6アルキルで置換されてもよい)を示す、化合物である、項1から3のいずれかに記載の組成物。
【0014】
項5. 組成物の粒子径が300nm以下である、項1及び4のいずれかに記載の組成物。
【0015】
項6. 感染症、例えば手術部位感染症、人工関節感染症、尿路感染症、尿路感染症、胆道感染症、血流感染症、肺炎、糖尿病足感染症、口腔内感染症又は皮膚感染症の予防/又は治療のための、項1から5のいずれかに記載の組成物。
【0016】
項7. 医療用材料、医療器具又は生体成分に担持するための、項1から6のいずれかに記載の組成物。
【0017】
項8. セチルピリジニウム塩化物水和物が抗菌又は殺菌効果を持続的に示しうる、項1から7のいずれかに記載の組成物。
【0018】
項9. 無菌ろ過が可能である、項1から8のいずれかに記載の組成物。
【0019】
項10. 項1から9のいずれかに記載の組成物を担持させた医療用材料又は医療用器具。
【0020】
項11. 項1から4のいずれかに記載の一般式(I)の化合物又はその塩であって、セチルピリジニウム塩化物水和物と混合して、医療材料、医療用器具又は生体成分に担持させることにより、抗菌薬又は殺菌剤の抗菌又は殺菌効果を持続的に発揮させることを可能とする化合物又はその塩。
【0021】
項12. 項1から9のいずれかに記載の組成物を医療材料又は医療器具に担持させて生体内に留置するか、或いは該組成物を生体成分に噴霧又は塗布することにより、感染症を予防及び/又は治療する方法。
【0022】
項13. 以下の工程を含む、項1から9のいずれかに記載の組成物の製造方法:
工程1: アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を用いてミセルを形成させる工程;
工程2: 工程1で得られたミセルに、セチルピリジニウム塩化物水和物を式(I)で表されるケイ素化合物又はその塩を添加する工程;
工程3: 透析により過剰の試薬を除去して組成物を得る工程;及び
工程4: 工程3で得られた組成物を無菌ろ過する工程。
【発明の効果】
【0023】
本発明において、セチルピリジニウム塩化物水和物をケイ素化合物と混合してナノ粒子を形成させることにより、組成物における薬物の効率的な封入及び除法化が可能となる。本発明の組成物は、無菌ろ過が可能な粒子径を有するナノ粒子の形態であり得る。本発明の組成物はまた、医療材料及び医療器具又は生体成分に担持させて、持続的にセチルピリジニウム塩化物水和物の有する薬効、例えば抗ウイルス活性、抗細菌活性及び細菌付着抑制効果又は細菌増殖抑制効果を発揮し得、これにより手術野及び/又は術後患部における感染症を予防及び/又は治療し得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は以下に例示する具体的態様を含み、また、当該具体的態様の任意の組み合わせも含む。
【0025】
本明細書における低級アルキルとしては、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(C1-8)を挙げることができる。より具体的には、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、1,2,2―トリメチルプロピル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル等が含まれる。好ましい低級アルキルはC1-6アルキルである。
【0026】
本明細書における低級アルキレンとしては、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状の二価の炭化水素基(C1-8アルキレン)を挙げることができる。より具体的には、例えばメチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、n-ペンチレン、エチルプロピレン、イソペンチレン、n-ヘキシレン、2-エチルブチレン、イソヘキシレン、3-メチルペンチレン、n-ヘプチレン、イソヘプチレン、n-オクチレン、イソオクチレン等が含まれる。好ましい低級アルキレンはC1-6のアルキレンであり、より好ましくはC1-3アルキレンである。
【0027】
本明細書における低級アルケニルとしては、二重結合を1~3個有する炭素数2~6の直鎖又は分岐状アルケニル基(C2-6アルケニル)を挙げることができ、トランス体((E体))及びシス体((Z体))の両者を含有する。より具体的には、例えばビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルー1-プロペニル、2-メチルー1-プロペニル、2-メチル―2-プロペニル、2-ブテニル、1-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル、1-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ブタジエニル、1,3-ペンタジエニル、2-ペンテンー4-イル、2-ヘキセニル、1-ヘキセニル、5-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、3,3-ジメチルー1-プロペニル、2-エチルー1-プロペニル、1,3,5-ヘキサトリエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル基等が含まれる。好ましい低級アルケニルはC2-4アルケニルである。
【0028】
本明細書における低級アルカノイルとしては、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状アルカノイル基(C1-6アルカノイル)を挙げることができる。より具体的には、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、tert-ブチルカルボニル、ヘキサノイル基等が含まれる。好ましい低級アルカノイルは、C1-4アルカノイルである。
【0029】
本明細書における低級アルコキシは、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ(低級アルキル―O-)基(C1-8アルコキシ)を挙げることができる。より具体的には、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、1-エチルプロピルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、1,2,2-トリメチルプロピルオキシ、3,3-ジメチルブチルオキシ、2-エチルブチルオキシ、イソヘキシルオキシ、3-メチルペンチルオキシ、n-ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、イソオクチルオキシ等が含まれる。好ましい低級アルコキシはC1-6アルコキシであり、より好ましくはC1-3アルコキシである。
【0030】
本明細書におけるヘテロ環としては、環構成原子として窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立して選択されるヘテロ原子を1~5個含有する飽和又は不飽和の3~12員の単環式又は多環式のヘテロ環を挙げることができる。「不飽和」の環とは、芳香環、又は環原子間結合が部分的に水素された環をいう。ヘテロ環として具体的には、例えば環構成ヘテロ原子として少なくとも1個の窒素を含有する飽和又は不飽和の3~12員の単環式又は二環式ヘテロ環が含まれる。より具体的には、例えばピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、テトラヒドロピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、テトラゾール、ジヒドロトリアジン、アゼチジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピラゾリン、ピペラジン、アゼパン、1,4-ジアゼパン、インドール、インドリン(ジヒドロインドリン)、イソインドール、イソインドリン(ジヒドロイソインドリン)、ベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、インダゾール(ジヒドロインダゾール)、インダゾリン、キノリン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、ベンゾトリアゾール、テトラゾロピリジン、テトラゾロピリダジン、イソキノリン、ジヒドロイソキノリン、ジヒドロトリアジン、イミダゾピリジン、ナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、ヘキサヒドロナフチリジン、シンノリン、キノキサリン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキノゾリン、ピラゾロピリジン、ヘキサヒドロピリミドピリジン(1,5,7-トリアザピシクロ[4.4.0]デカー5-エン)等が含まれる。好ましいヘテロ環は、環構成ヘテロ原子として少なくとも1個の窒素を含有する飽和又は不飽和の3~12員の二環式ヘテロ環である。
【0031】
本明細書における組成物は、セチルピリジニウム塩化物水和物及びケイ素化合物を含み得る。セチルピリジニウム塩化物水和物は、1種以上のケイ素化合物と化学的又は物理的に混合されていればよく、例えばケイ素化合物に内包又は封入されて、或いはケイ素化合物に化学的に結合して、液状、粒子状又はカプセル状のナノ粒子組成物を形成してもよい。セチルピリジニウム塩化物水和物は、一般式(I)のケイ素化合物とナノ粒子組成物を形成することにより、持続的なウイルス不活化作用及び抗菌又は殺菌活性を発揮しうる。
【0032】
本明細書におけるケイ素化合物は、式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)ともいう)であり、幾何異性体、立体異性体、光学異性体及び互変異生体が含まれる。各種異性体は、例えば一般的な光学分割法により分離精製してもよく、適当な光学活性な原料化合物より製造してもよい。
【0033】
セチルピリジニウム塩化物水和物及び化合物(I)は、それらの置換基の種類に応じて、酸付加塩又は塩基付加塩を形成してもよい。酸付加塩を形成する酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;及びグルコン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸等が挙げられる。塩基付加塩を形成する塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、、炭酸水素カルウム等の無機塩基:メチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N、N‘―ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピロジン、ピコリン、コリン等の有機塩基;及びアンモニウム塩が挙げられる。抗ウイルス及び抗菌又は殺菌剤及び化合物(I)の塩は、通常の造塩処理に付すことにより製造しうる。
【0034】
本明細書における組成物は感染症、例えばウイルス及び細菌、嫌気性菌又は薬剤耐性菌によって引き起こされる感染症の予防及び/又は治療のために使用しうる。ウイルスとしては新型コロナウイルス(COVID-19)、インフルエンザウイルスを含むエンベロープ型ウイルス、細菌、嫌気性菌又は薬剤耐性菌としては、グラム陽性菌、グラム陰性菌、ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌、メチシリン非感受性細菌、バンコマイシン非感受性細菌、ペニシリン非感受性細菌、クラリスロマイシン非感受性細菌、又はメトロニダゾール非感受性細菌を挙げることができ、より具体的には例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistantStaphylococcus aureus)、排出関連(Efflux-related) メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin- resistant Staphylococcus aureus)、バンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌 (Vancomycin- intermediate Staphylococcus aureus) 、ヘテロバンコマイシン低感受黄色ブドウ球菌(Hetero-vancomycin- intermediate Staphylococcus aureus)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 (Vancomycin-resistant Staphylococcus aureus )、バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-resistant Enterococci)、等が含まれる。感染症としては、以下に制限されるものではないが、手術部位感染(例えば手術創感染症)、人工関節感染症、尿路感染症、胆道閉鎖症、血流感染症(例えば敗血症)、肺炎(例えば院内感染性肺炎又は市中肺炎)、糖尿病足感染症、並びに蜂巣炎(cellulites)、腫れ物(boils)、膿瘍、麦粒腫(sty)及び膿痂疹等の皮膚感染症等が挙げられる。
【0035】
本明細書における組成物の担持は、医療用材料又は医療用器具に化学的又は物理的に付着又は結合させてもよく、手術部位、手術野又は術後患部の生体成分に塗付してもよい。組成物の担持は、組成物の溶液、例えば水溶液を医療用材料又は医療器具又は口腔内生体成分にコーティング又は噴霧することにより行ってもよい。
【0036】
本明細書における組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、液剤、注射剤、スプレー剤、エアゾール剤、ロージョン剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、テープ剤、バップ剤等の製剤とすることができる。薬学的に許容される担体としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース等の賦活剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラックス、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等が挙げられる。
【0037】
本明細書における医療用材料としは、チタン金属、セラミック、機能性樹脂、機能性プラスチック、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル及び綿類、絹、麻、不織布等を挙げることができる。
【0038】
本明細書における医療用器具は、体内に埋め込み及び/又は留置可能な人工医療機器であり、医療用材料から製造される。医療器具としては、例えばカテーテル、ペースメーカー、移植片、ステント、ワイヤ、ガイドワイヤ、整形外科用インプラント、医療用インプラント、身体インプラント、埋め込み可能な拡散ポンプ、注入口、心臓弁、人工関節、大動脈グラフト、血液酸素供給膜、血液酸素供給器管類、透析膜、薬物送達システム,体内プロテーゼ、気管内チューブ、大動脈バルーン、血管グラフト、血管管類、動脈管類、及び静脈管類を挙げることができる。
【0039】
本明細書における生体成分としては、皮膚、骨(例えば関節)、臓器(例えば尿路、胆道、肺)等を挙げることができ、好ましくは手術部位、手術野又は術後患部の生体成分である。
【0040】
本明細書における無菌ろ過は、細菌等が通過できない孔径(例えば0.2~0.45μm)のフィルター、好ましくは孔径0.22μmのフィルターを用いたろ過を指し、好ましくは限外ろ過である。本明細書における組成物は、無菌ろ過が可能な粒子径を有してもよい。組成物の平均粒子径は、例えば動的光散乱法によって測定することができ、例えば平均粒子径で300nm以下、好ましくは10~250nm、より好ましくは50~230nmである。
【0041】
[ケイ素化合物(I)の一般製法]
式(I)で表されるケイ素化合物は、市販されているものを用いてもよく、又は当分野の常法、例えば下記に示す製造法に従って新規に製造することができる。式(I)で表される化合物の製造方法は下記に示す製造方法に限定されるものではない。下記製造方法において、各原料化合物は反応を阻害しないのであれば、塩を形成してもよく、かかる塩としては、化合物(I)の塩として例示したものを用いてもよい。 原料化合物は具体的製法に記載しない場合、市販のものを用いてもよく、自体公知の方法又はそれに準ずる方法に従って製造したものを用いてもよい。下記製造方法における各反応において、生成物は反応液のまま又は粗生成物として次の反応に用いることもでき、常法に従って反応混合物から単離することもでき、あるいは通常の分離手段により容易に精製することもできる。通常の分離手段としては、例えば、抽出、濃縮、結晶化、ろ過、再結晶、蒸留、各種クロマトグラフィーが挙げられる。下記製造方法で得られる生成物は、r遊離化合物、その塩又は溶媒和物として単離し、精製してもよい。 下記製造方法において、アルキル化反応、加水分解反応、アミノ化反応、エステル化反応、アミド化反応、ウレア化反応、エーテル化反応、酸化反応、還元反応等を行う場合、これらの反応は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法に従って行うことができる。このような方法としては、例えば、オーガニック・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ(ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATION)第2版、アカデミックプレス社(ACADEMIC PRESS, INC.)1989年刊;コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォメーションズ(Comprehensive Organic Transformations)VCH Publishers Inc. ,1989年刊;ウッツ(P. G. M. Wuts) 及びグリーン(T. W. Greene)著「Greene`s ProtectiveGroups in Organic Synthesis」(第4判、2006年)等に記載の方法が挙げられる。
【0042】
[ケイ素化合物(I)の一般製法1(アミド化反応)]
【化2】
[式中、各記号は本明細書に記載のとおりである]
化合物(Ia)は、化合物(II)と化合物(III)とのアミド化により得ることができる。
アミド化は、当業者が通常用いる方法を採用することができる。
化合物(Ia)は、化合物(II)又はカルボキシ基におけるその反応性誘導体及び化合物(III)
又はアミノ基におけるその反応性誘導体を反応させることにより製造してもよい。
【0043】
化合物(11)のカルボキシル基における反応性誘導体としては、酸ハロゲン化物、酸アジ化物、酸無水物、活性化アミド、活性化エステル化物等が挙げられる。反応性誘導体の好適な例としては、酸塩化物、酸アジ化物 ; 例えばジアルキルリン酸、フェニルリン酸ジフェニルリン酸、ジベンジルリン酸、ハロゲン化リン酸等の置換されたリン酸、ジアルキル亜リン酸、亜硫酸、チオ硫酸、硫酸、例えばメタンスルホン酸等のスルホン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ピパリン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、2-エチル酪酸、トリクロロ酢酸等の脂肪族カルボン酸又は例えば安息香酸等の芳香族カルボン酸のような酸との混合酸無水物 ; 対称酸無水物 ; イミダゾール、4-置換イミダゾール、ジメチルピラゾ―ル、トリアゾールまたはテトラゾールとの活性化アミド ; 例えばシアノメチルエステル、メトキシメチルエステル、ジメチルイミノメチルエステル、ビニルエステル、プロパギルエステル、p-ニトロフェニルエステル、2,4-ジニトロフェニルエステル、トリクロロフェニルエステル、ペンタクロロフェニルエステル、メシルフェニルエステル等の活性化エステル ; 例えばN,N-ジメチルヒドロキシルアミン、1-ヒドロキシ-2-(1H)-ピリドン、N-ヒドロキシサクシイミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt等のN-ヒドロキシ化合物とのエステル等が挙げられる。これらの反応性誘導体は使用すべき化合物(II)の化学的性質に応じてそれらの中から任意に選択する事が出来る。
【0044】
上記反応において化合物(II)を遊離酸の形又はその塩の形で使用する場合には、縮合剤の存在下に反応を行うのが望ましい。縮合剤としては、この分野で公知の物を広く使用でき、例えば、DCC ; N-シクロヘキシル-N’-モルホリノエチルカルボジイミド ; N-シクロヘキシル-N’-(4-ジエチルアミノシクロヘキシル)カルボジイミド ; ジエチルカルボジイミド ; N-N’-ジエチルカルボジイミド ; N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド ; WSCまたはそのHCl塩 ; N-N’-カルボニルビス(2-メチルイミダゾール) ; ペンタメチレンケテン-N-シクロヘキシルイミン ; ジフェニルケテン-N-シクロヘキシルイミン ; エトキシアセチレン ; 1-アルコキシ-1-クロロエチレン; 亜リン酸トリアルキル ; ポリリン酸エチル ; ポリリン酸イソプロピル ; オキシ塩化リン(塩化ホスホリル) ; 三塩化リン ; ホスホリルアジ化ジフェニル ; 塩化チオニル; 塩化オキサリル ; 例えばクロロギ酸エチル、クロロギ酸イソプルピル等のハロギ酸低級アルキル ; トリフェニルホスフィン ; 2-エチル-7-ヒドロキシベンズイソオキサゾリウム塩 ; 2-エチル-5-(m-スルホフェニル)イソオキサゾリウムヒドロキシド分子内塩; ヘキサフロオロリン酸ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ; 1-(p-クロロベンゼンスルホニルオキシ)-6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール ; DMFと塩化チオニル、ホスゲン、クロロギ酸トリクロロメチル、オキシ塩化リン等との反応によって調整したいわゆるビルスマイヤー試験等が挙げられる。また、上記縮合剤の存在下、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt等の活性化エステルの共存下に反応を行うのがさらに望ましい。
【0045】
化合物(III)のアミノ基における好適な反応性誘導体としては、化合物(III)とアルデヒド、ケトン等のようなカルボニル化合物との反応によって生成するシッフ塩基型イミノ又はそのエナミン型互変異性体 ; 化合物(III)とビス(トリメチルシリル)アセトアミド、モノ(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)尿素等のようなシリル化合物との反応によって生成するシリル誘導体 ; 化合物(III)と三塩化リン又はホスゲン等との反応によって生成する反応性誘導体等が挙げられる。
【0046】
本反応は、通常、反応に悪影響を及ばさない慣用の溶媒中で行うことが出来る。溶媒としては、例えば、水 ; MeOH、EtOH、イソプロパノール、n-ブタノール、トリフルオロエタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒; アセトン、メチルエチルケトン、等のケトン系溶媒 ; THF、ジオキサン、Et2O、ジイソプロピルエーテル、ジグライム等のエーテル系溶媒 ; AcOMt、AcOEt等のエステル系溶媒 ; MeCN,DMF,DMSO等の非プロトン性溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-へブタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒 ; 塩化メチレン、塩化エチレン、DCM等のハロゲン化炭化水素系溶媒 ; 又は他の有機溶媒、或いはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0047】
本反応は、塩基の存在下で行っても良い。塩基としては、公知の無機塩基及び有機塩基を広く使用できる。無機塩基としては、例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属水酸化物(例えば、LiOH,NaOH,KOH等)、炭酸アルカリ金属(例えば、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Cs2CO3等)アルカリ金属低級アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等)、アルカリ金属水素化物(例えば、NaH、KH等)が挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリアルキルアミン( 例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン等)、ピリジン、キノリン、ピぺリジン、イミダゾール、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、N-メチルモルホリン、DBN、DABCO、DBU等が挙げられる。また、これらの塩基が液状である場合、溶媒として兼用する事ができる。これらの塩基は、1種単独で又は2種以上混合して使用してもよい。塩基の使用量は、化合物(II)1モルに対して、通常0.1~10モル、好ましくは0.1~3モルである。
【0048】
一般製法1における化合物(II)と化合物(III)との使用割合は、通常後者1モルに対し、前者を少なくとも1モル、好ましくは1~5モルである。 反応温度は特に限定されず、通常、冷却下、室温下及び加熱下のいずれでも反応が行われる。好ましくは、室温~100℃の温度条件下にて、例えば30分~30時間、好ましくは30分~5時間反応させるのがよい。なお、化合物(1a)がN-保護基を有する場合、N-保護基の脱離反応には、加水分解、水素化分解等の慣用の方法を適用できる。
【0049】
[ケイ素化合物(I)の一般製法2(ウレア化反応)]
【化3】
[式中、各記号は本明細書に記載のとおりである]
化合物(Ib)は、化合物(IV)と化合物(V)とのウレア化により得ることができる。ウレア化は、当業者が通常用いるウレア化を採用することができる。本反応は、通常、反応に悪影響を及ぼさない不活性溶媒中で行うことができる。不活性溶媒としては、一般製法1に記載のケトン溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒;又は他の有機溶媒、或いはこれらの混合溶媒、水等が挙げられる。
本反応は必要に応じて、塩基の存在下で行ってもよい。該塩基としては、一般製法1に記載の塩基を用いることができる。これらの塩基は、1種類単独で又は2種類以上混合して使用される。塩基の使用量は、化合物(IV)1モルに対して、通常0,1~10モル、好ましくは0.1~3モルである。
一般製法2における化合物(IV)と化合物(V)との使用割合は、通常後者1モルに対して、前者を少なくとも1モル、好ましくは1~5モル程度である。
反応温度は特に限定されず、通常、冷却化、室温下及び加熱下のいずれでも反応が行われる。好ましくは、室温~100℃の温度条件下にて、例えば30分~30時間、好ましくは30分~5時間反応させるのがよい。
【0050】
[薬物含有ケイ素ナノ粒子組成物の一般製法]
本発明の組成物は、例えば非特許文献1記載の方法に準じて、セチルピリジニウム塩化物水和物及びケイ素化合物(I)を混合することにより製造することができる。具体的には、本発明の組成物の製造方法は以下の工程を含む。
工程1.ミセルの形成
アニオン界面活性剤、例えばエアロゾルOT(AOT;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム)及び非イオン界面剤、例えば1-ブタノール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1.4-ブタンジール、1.6-ヘキサンジオール等のジオールを水に溶解し、激しく攪拌混合してミセルを形成させる。
工程2. 薬物―ミセルの形成
工程1で得られたミセルに、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した薬物(すなわち、抗菌薬又は殺菌剤)を添加して混合することにより、薬物―ミセルを形成させる。
工程3. 薬物―シリカーミセルの形成
工程2で得られた薬物-ミセルにケイ素化合物を添加して混合物を攪拌することにより、薬物-シリカーミセルを形成させる。ここで、ケイ素化合物は異なる1種以上のケイ素化合物を同時又は別々に添加してもよい。
工程4. 透析
工程3で薬物―シリカーミセルを形成させた後、界面活性剤、溶媒及び過剰の試薬を透析により除去し、薬物―シリカナノ粒子を得る。
工程5.無菌製剤化
工程4で得られた薬物―シリカナノ粒子を無菌ろ過フィルターでろ過し、無菌化された組成物を得る。
【0051】
上記のようにして得られた本発明の組成物は、医療用材料もしくは医療器具、又は手術野もしくは術後患部の生体成分にコーティング、具体的には浸漬法及び噴霧法等を用いて担持することができる。
【0052】
以下に参考例、製造例、実施例、実験例をあげて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本明細書において、以下の略語を用いることがある。
STR : 構造式
DBN : 1,5-ジアザビシクロ[4. 3. 0]ノナー5-エン
DABCO : 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DBU : 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]―7-ウンデセン
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
DCC:ジクロロヘキシルカルボジイミド
WSC:3-エチルー1-(3-メチルアミノプロピル)カルボジイミド
AcOMt:酢酸メチル
AcOEt: 酢酸エチル
MeCN: アセトニトリル
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
THF:テトラヒドロフラン
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
Et2O:ジエチルエーテル
Hexane:ん-ヘキサン
LiOH:水酸化リチウム
NaOH:水酸化ナトリウム
KOH:水酸化カリウム
NaH:水素化ナトリウム
KH:水素化カリウム
Li2CO3:炭酸リチウム
Na2CO3:炭酸ナトリウム
K2CO3:炭酸カリウム
Cs2CO3:炭酸セシウム
AOT:スルホコハク酸ジオクチルナトリウム
Z-Asp(OBzl)―OH: (S)―4―(ベンジルオキシ)―2-ベンジルオキシカルボニルアミノ)―4―オキソブタン酸
Z―Asp―obzl:(S)―4―(ベンジルオキシ)―2-ベンジルオキシカルボニルアミノ)―4―オキソブタン酸
Z-His(Bzl)―OH: (S)―3―(1―ベンジルー1H―イミダゾールー4―
イル)―2―(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸
Pd―C:パラジウム担持炭素
TLC:薄層クロマトグラフィー
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃から35℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
1HNR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)は室温におけるフーリエ変換型NMR
(Bruker AVANCE 300 (300MHz)、 Bruker AVANCE III 400 (400MHz)、及び
Bruker AVANCE III 500 (500MHz)の何れか)で測定した。
【0053】
[参考例] ケイ素化合物の中間体の製造
ケイ素化合物の中間体。合成した化合物の構造と化合物名を第1表に示す。
【0054】
参考例1:化合物(1)の合成
【化4】
Z-Asp(OBzl)-OH 836 mgとHOBt 16.3 mgをジクロロメタン 10 mlに溶解し、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 0.41 mlを加えしばらく撹拌した後、3-Aminopropyl-triethoxysilane 0.5 mlを加え、室温で撹拌した。 反応液をフロリジルカラム(溶出液:Hexane : CH2Cl2 = 1:1-0:1)で精製し、無色固体として化合物(1) 837 mgを得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.60 (m, 2 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.58 (m, 2 H), 2.72 (dd, J = 17.2 Hz, 6.4 Hz, 1 H), 3.14 (dd, J = 17.2 Hz, 4.2 Hz, 1 H), 3.22 (m, 2 H), 3.81 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 4.55 (m, 1 H), 5.06-5.17 (m, 4 H), 5.91 (d, J = 7.7 Hz, 1 H), 6.53 (m, 1 H), 7.28-7.45 (m, 10 H)。
【0055】
参考例2:化合物(2)の合成
【化5】
Z-Asp-obzl 836 mgとHOBt 16.3 mgをジクロロメタン 10 mlに溶解し、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 0.41 mlを加えしばらく撹拌した後、3-Aminopropyltriethoxysilane 0.5 mlを加え、室温で撹拌した。 反応液をフロリジルカラム(溶出液:Hexane : CH2Cl2 = 1:1-0:1)で精製し、無色固体として化合物(2) 649 mgを得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.60 (m, 2 H), 1.21 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.58 (m, 2 H), 2.69 (dd, J = 5.7 Hz, 4.1 Hz, 1 H), 2.91 (dd, J =5.7 Hz, 4.1 Hz, 1 H), 3.19 (m, 2 H), 3.81 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 4.61 (m, 1 H), 5.10 (s, 2H), 5.18 (dd, J =16.0 Hz, 12.3 Hz, 2 H), 5.78 (bs, 1 H), 6.08 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 7.28-7.38 (m, 10 H)。
【0056】
参考例3:化合物(3)の合成
【化6】
3-Aminopropyltriethoxysilane 281mgとN-CBZ-L-tyrosine 400mgとHOBt 9.7mgをジクロロメタン10mlに溶かし、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 197mgを加えて室温にて1時間攪拌した。
反応液をフロリジルカラムにて精製し(溶出液 : CH2Cl2 : EtOH = 20:1) 、31mgの無色固体として化合物(3)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.60-0.68 (m, 2 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.45-1.50 (m, 2 H), 2.85-3.25 (m, 4 H), 3.80 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 4.21-4.33 (m, 1 H), 5.09 (d, J =3.0 Hz, 2 H), 5.40 (br-s, 1 H), 5.79 (br-s, 1 H), 5.85 (br-s, 1 H), 6.74 (d, J = 8.5 Hz, 2 H), 7.03(br-d, 2 H ), 7.29-7.36 (m, 5 H)。
【0057】
参考例4:化合物(4)の合成
【化7】
1- Aminopropyltriethoxysilane 942mgとN-Carbobenzyloxy-L-glutamine 1193mgとHOBt 32.6mgをジクロロメタン10mlに溶かし、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 727mgを加えて室温にて1時間攪拌した。反応液をフロリジルカラムにて精製し(溶出液 : CH2Cl2 : EtOH = 20:1) 、700mgの白色固体として化合物(4)を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 0.60-0.68 (m, 2 H), 1.14 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.39-1.48 (m, 2 H), 1.62-1.75 (m, 1 H), 1.79-1.89 (m, 1 H), 2.00-2.15 (m, 3 H), 2.94-3.07 (m, 3 H), 3.73 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 3.86-3.95 (m, 1 H), 6.75 (s, 1 H), 7.25 (s, 1 H), 7.26-7.45 (m, 5 H), 7.85 (t, J = 5.4 Hz, 1 H)。
【0058】
参考例5:化合物(5)の合成
【化8】
2- Aminopropyltriethoxysilane 534mgとN,N'-Dicarbobenzyloxy-L-lysine 1000mgとHOBt 18.5mgをジクロロメタン10mlに溶かし、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 412mgを加えて室温にて1時間攪拌した。反応液をフロリジルカラムにて精製し(溶出液 : CH2Cl2 : EtOH = 20:1) 、570mgの白色固体として化合物(5)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.62 (br-t, J = 7.8 Hz, 2 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.32-1.42 (m, 2 H), 1.47-1.56 (m, 2 H), 1.58-1.69 (m, 2 H), 1.80-1.92 (m, 1 H), 3.10-3.30 (m, 4 H), 3.81 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 4.04-4.13 (m, 1 H), 4.85 (br-s, 1 H), 5.01-5.17 (m, 4 H), 5.48 (br-d, J = 6.4 Hz, 1 H), 6.23 (br-s, 1 H), 7.27-7.40 (m, 10 H)。
【0059】
参考例6:化合物(6)の合成
【化9】
3- Aminopropyltriethoxysilane 942mgとZ-His(Bzl)-OH 1695mgとHOBt 33mgをジクロロメタン10mlに溶かし、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 727mgを加えて室温にて1時間攪拌した。反応液をフロリジルカラムにて精製し(溶出液 : CH2Cl2) 、1520mgの白色固体として化合物(6)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.50 (br-t, J = 6.1 Hz, 2 H), 1.21 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.45-1.55 (m, 2 H), 2.86-2.94 (m, 1 H), 3.09-3.19 (m, 3 H), 3.80 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 4.44 (br-s, 1 H), 5.02 (s, 2H), 5.11 (d, J = 2.0 Hz, 2 H), 6.71 (br-s, 2 H), 6.93 (br-s, 1 H ), 7.10-7.15 (m, 2 H), 7.28-7.42 (m, 10 H)。
【0060】
参考例7:化合物(7)の合成
【化10】
4- Aminopropyltriethoxysilane 942mgとZ-His(Bzl)-OH 1045mgとHOBt 33mgをジクロロメタン10mlに溶かし、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 727mgを加えて室温にて1時間攪拌した。反応液をフロリジルカラムにて精製し(溶出液 : CH2Cl2) 、1100mgの白色固体として化合物(7)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.63 (br-t, J = 7.9 Hz, 2 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.58-1.67 (m, 2 H), 2.39 (t, J = 5.8 Hz, 2 H), 3.24 (dd, J = 12.8 Hz, 6.8 Hz, 2 H), 3.48 (dd, J = 12.0 Hz, 6.1 Hz, 2 H), 3.81 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 5.09 (s, 2H), 5.48 (br-s, 1 H), 5.85 (br-s, 1 H), 7.29-7.40 (m, 5 H)。
【0061】
参考例8:化合物(8)の合成
【化11】
5- Aminopropyltriethoxysilane 942mgと4-Benzyloxycarbonylamino-butyric acid 1111mgとHOBt 33mgをジクロロメタン10mlに溶かし、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 727mgを加えて室温にて1時間攪拌した。反応液をフロリジルカラムにて精製し(溶出液 : CH2Cl2) 、1600mgの白色固体として化合物(8)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.64 (br-t, J = 8.2 Hz, 2 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.57-1.73 (m, 5 H), 1.80-1.88 (m, 2 H), 2.17-2.23 (m, 4 H), 2.36 (t, J = 6.4 Hz, 1 H), 3.13-3.28 (m, 6 H), 3.81 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 5.09 (s, 2H), 5.14 (br-s, 1 H), 6.09 (br-s, 1 H), 7.30-7.42 (m, 5 H)。
【0062】
参考例9:化合物(9)の合成
【化12】
6- Aminopropyltriethoxysilane 471mgと4-(benzyloxy)-4-oxobutanoic acid 487mgとHOBt16mgをジクロロメタン10mlに溶かし、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 363mgを加えて室温にて3時間攪拌した。反応液をフロリジルカラムにて精製し(溶出液 : CH2Cl2) 、590mgの無色油状物として化合物(9)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.63 (t, J = 8.0 Hz, 2 H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.57-1.67 (m, 2 H), 2.47 (t, J = 6.9 Hz, 2 H), 2.73 (t, J = 6.9 Hz, 2 H), 3.24 (q, J = 6.9 Hz, 2 H), 3.82 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 5.13 (s, 2H), 5.87 (br-s, 1 H), 7.29-7.43 (m, 5 H)。
【0063】
【0064】
[製造例] ケイ素化合物を以下に記載する方法により製造した。合成した化合物の構造と
化合物名を第2表に示す。
【0065】
製造例1:化合物(10)の合成
【化13】
化合物(1)980 mgをエタノール 20 mlに溶解し、10% Pd-C(55% H2O含有) 218 mg を加え、室温で水素添加した。2時間後、TLCにて原料消失を確認し、セライト濾過後濃縮することにより無色アモルファスとして化合物(10)539 mgを得た。
1H NMR (CD3CD2OD, 400 MHz) δ 0.60 (m, 2 H), 1.20 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.61 (m, 2 H), 2.51 (dd, J = 16.8 Hz, 9.8 Hz, 1 H), 2.64 (dd, J = 16.8 Hz, 4.7 Hz, 1 H), 3.20 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 3.81 (q, J =
【0066】
製造例2:化合物(11)の合成
【化14】
化合物(2)645 mgをエタノール 15 mlに溶解し、10% Pd-C(55% H2O含有) 130 mg を加え、室温で水素添加した。2時間後、TLCにて原料消失を確認し、セライト濾過後濃縮することにより無色アモルファスとして化合物(11) 368 mgを得た。
1H NMR (CD3CD2OD, 400 MHz) δ 0.61 (m, 2 H), 1.20 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.61 (m, 2 H), 2.60 (dd, J = 16.4 Hz, 9.8 Hz, 1 H), 2.92 (dd, J = 16.4 Hz, 3.4 Hz, 1 H), 3.16 (m, 2 H), 3.73 (dd, J = 9.8 Hz, 3.4 Hz, 1H), 3.81 (q, J = 7.0 Hz, 6 H)。
【0067】
製造例3:化合物(12)の合成
【化15】
1,5,7-Triazabicyclo[4.4.0]dec-5-ene 1000mgをジクロロメタン20mlに溶解し、3-(Triethoxysilyl)propyl isocyanate 1.96mlを室温にて滴下した。1時間撹拌後、反応液をフロリジルカラム(溶出液:CH2Cl2)で精製し、無色油状物として化合物(12 )1580mgを得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.60-0.68 (m, 2 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.58-1.68 (m, 2 H), 1.79-1.96 (m, 4 H), 3.11-3.25 (m, 6H), 3.38 (t, J = 5.6 Hz, 2 H), 3.78-3.85 (m, 8H)。
【0068】
製造例4:化合物(13)の合成
【化16】
3-Aminopropyltriethoxysilane 942mgと3-(Diethylamino)propionic acid hydrochloride 773mgとHOBt 32.6mgをジクロロメタン 10mlに溶かし、1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethyl-carbodiimide 727mgを加えて室温にて3時間攪拌した。反応液をフロリジルカラム(溶出液:CH2Cl2)で精製し、880mgの無色オイルとして化合物(13)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.58-0.67 (m, 2 H), 1.05 (t, J = 7.2 Hz, 6 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.56-1.63 (m, 2 H), 2.34 (t, J = 5.8 Hz, 2 H), 2.55 (q, J = 7.2 Hz, 4 H), 2.66 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 3.18-3.25 (m, 2 H), 3.81 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 8.54 (br-s, 1H)。
【0069】
製造例5:化合物(14)の合成
【化17】
3-Diethylaminopropylamine 526mgをジクロロメタン10mlに溶かし、3-(Triethoxysilyl)propyl isocyanate 1mlを滴下して室温にて30分攪拌した。反応液を減圧濃縮し、1480mgの無色オイルとして化合物(14)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.60-0.68 (m, 2 H), 1.02 (t, J = 7.1 Hz, 6 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.57-1.70 (m, 4 H), 2.45-2.57 (m, 6 H), 3.13 (q, J = 7.0 Hz, 2 H), 3.24 (t, J = 6.2 Hz, 2 H), 3.81 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 4.75 (br-s, 1 H), 5.53 (br-s, 1H)。
【0070】
製造例6:化合物(15)の合成
【化18】
化合物(3)300 mgをエタノール10 mlに溶解し、10% Pd-C(55% H2O含有)30 mg を加え、室温で水素添加した。3時間反応させた後にTLCにて原料消失を確認した。反応液をセライト濾過してろ液を濃縮し、無色油状物として化合物(15) 168 mgを得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.60-0.68 (m, 2 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.50-1.64 (m, 2 H), 2.64 (dd, J =13.8 Hz, 9.0 Hz, 1 H), 3.14 (dd, J =13.8 Hz, 4.2 Hz, 1 H), 3.25 (td, J =13.4 Hz, 6.9 Hz, 2 H), 3.54 (dd, J = 9.0 Hz, 4.2 Hz, 2 H), 3.82 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 6.81 (d, J = 8.5 Hz, 2 H), 7.05 (d, J = 8.5 Hz, 2 H), 7.03(br-d, 2 H )
【0071】
製造例7:化合物(16)の合成
【化19】
化合物(4)700 mgをエタノール10 mlに溶解し、10% Pd-C(55% H2O含有) 77 mg を加え、室温で水素添加した。1時間反応させた後にTLCにて原料消失を確認した。反応液をセライト濾過してろ液を濃縮し、得られた粗生物をフロリジルカラム (溶出液 : CH2Cl2 : EtOH = 20:1)にて精製することにより310mgの白色固体として化合物(16)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.60-0.68 (m, 2 H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.45-1.87 (m, 6 H), 1.90-2.07 (m, 2 H), 2.37 (td, J = 6.8 Hz, 2.1 Hz, 2H), 3.19-3.30 (m, 2H), 3.44 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 3.82 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 5.53 (br-s, 1 H), 6.37 (br-s, 1 H), 7.42 (br-s, 1 H)
【0072】
製造例8:化合物(17)の合成
【化20】
化合物(5)550 mgをエタノール20 mlに溶解し、10% Pd-C(55% H2O含有) 95 mg を加え、室温で水素添加した。3時間反応させた後にTLCにて原料消失を確認した。反応液をセライト濾過してろ液を濃縮し、得られた粗生物をフロリジルカラム (溶出液 : CH2Cl2 : EtOH = 20:1)にて精製することにより161mgの無色油状物として化合物(17)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.63 (br-t, J = 8.2 Hz, 2 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.31-1.57 (m, 8 H), 1.57-1.68 (m, 3 H), 1.78-1.90 (m, 1 H), 2.70 (t, J = 6.8Hz, 2H), 3.25 (q, J = 6.9 Hz, 2 H), 3.31-3.37 (m, 1 H), 3.82 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 7.27 (br-s, 1 H)。
【0073】
製造例9:化合物(18)の合成
【化21】
化合物(6)1400mgをエタノール10 mlに溶解し、10% Pd-C(55% H2O含有) 128 mg を加え、室温で水素添加した。5時間反応させた後にTLCにて原料消失を確認した。反応液をセライト濾過してろ液を濃縮し、得られた粗生物をフロリジルカラム (溶出液 : CH2Cl2 : EtOH = 20:1)にて精製することにより470mgの無色油状物として化合物(18)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.58-0.68 (m, 2 H), 1.22 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.57 (tt, J = 7.8 Hz, 7.2 Hz, 2 H), 1.65-1.95 (m, 2 H), 2.74-2.82 (m, 1 H), 3.03 (dt, J = 4.5 Hz, 1.7 Hz, 1 H), 3.13-3.26 (m, 2 H), 3.56-3.61 (m, 1H), 3.81 (q, J = 7.0 H
【0074】
製造例10:化合物(19)の合成
【化22】
化合物(7)1100mgをエタノール20 mlに溶解し、10% Pd-C(55% H2O含有) 183 mg を加え、室温で水素添加した。2時間反応させた後にTLCにて原料消失を確認した。反応液をセライト濾過してろ液を濃縮し、得られた粗生物をフロリジルカラム (溶出液 : CH2Cl2 : EtOH = 20:1)にて精製することにより285mgの無色油状物として化合物(19)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.62-0.68 (m, 2 H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.47 (br-s, 2 H), 1.58-1.68 (m, 2 H), 2.31 (t, J = 6.0 Hz, 2 H), 3.00 (dd, J = 6.1 Hz, 5.9 Hz, 2 H), 3.26 (dd, J = 12.9 Hz, 7.0 Hz, 2 H), 3.82 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 7.28 (br-s, 1 H)。
z, 6 H), 5.04 (s, 2 H), 7.15 (d, J = 7.3 Hz, 2 H), 7.28-7.38 (m, 3 H), 7.44 (s, 1 H), 7.48 (br-t, J = 5.5 Hz, 1 H)。
【0075】
製造例11:化合物(20)の合成
【化23】
化合物(8)1600mgをエタノール25mlに溶解し、10% Pd-C(55% H2O含有) 193 mg を加え、室温で水素添加した。3時間反応させた後にTLCにて原料消失を確認した。反応液をセライト濾過してろ液を濃縮し、得られた粗生物をフロリジルカラム (溶出液 : CH2Cl2 : EtOH = 10:1)にて精製することにより870mgの無色油状物として化合物(20)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.60-0.68 (m, 2 H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.58-1.67 (m, 4 H), 1.77 (tt, J = 7.4 Hz, 6.9 Hz, 2 H), 2.23 (t, J = 7.3 Hz, 2 H), 2.36 (t, J = 6.3 Hz, 2 H), 2743 (t, J = 6.8 Hz, 2 H), 3.14-3.21 (m, 2 H), 3.82 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 5.05-5.34 (m, 2 H), 6.05 (br-s, 1 H)。
【0076】
製造例12:化合物(21)の合成
【化24】
化合物(9)590mgをエタノール20mlに溶解し、10% Pd-C(55% H2O含有) 153 mg を加え、室温で水素添加した。3時間反応させた後にTLCにて原料消失を確認した。反応液をセライト濾過して触媒を除去後、ろ液を濃縮することにより270mgの無色油状物として化合物(21)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.60-0.68 (m, 2 H), 1.23 (t, J = 7.0 Hz, 9 H), 1.58-1.67 (m, 4 H), 1.77 (tt, J = 7.4 Hz, 6.9 Hz, 2 H), 2.23 (t, J = 7.3 Hz, 2 H), 2.36 (t, J = 6.3 Hz, 2 H), 2743 (t, J = 6.8 Hz, 2 H), 3.14-3.21 (m, 2 H), 3.82 (q, J = 7.0 Hz, 6 H), 5.05-5.34 (m, 2 H), 6.05 (br-s, 1 H)。
【0077】
【実施例】
【0078】
実施例1:化合物(S1)と(S2)を用いたセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物の製造
【化25】
1-ブタノール(0.8ml)とスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(440mg)を純水20mlに溶かし、溶液Aを調製した。次にセチルピリジニウム塩化物水和物(37mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(1ml)に溶かして溶液Bを調製した。ナスフラスコ(容量50ml)中に溶液Aと溶液Bと化合物(S1)(0.2ml;東京化成工業製)を加え、室温にて1時間攪拌した。次に化合物(S2)(0.1ml;東京化成製)を加えてさらに1時間攪拌した。得られた混液を透析膜(Spectrum Laboratories社製Float-A-lyzer (登録商標)G2分画分子量(MWCO);20kD)を用いて48時間透析処理を行う。透析処理した溶液を0.22μmフィルター(テクノラボエスシィ社製シリンジフィルター(品番TLMC25022))により無菌ろ過した。
【0079】
実施例2:化合物(S3)を用いたセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物の製造
【化26】
サンプル管(容量30ml)中に実施例1記載の溶液A(5.2ml)と溶液B(0.25ml)と化合物(S3)(47.6μl;Sigma-Aldrich社製)を加え、室温にて2時間攪拌した。得られた混液を透析膜(Spectrum Laboratories社製Float-A-lyzer (登録商標)G2分画分子量(MWCO);20kD)を用いて48時間透析処理を行う。透析処理した溶液を0.22μmフィルター(テクノラボエスシィ社製シリンジフィルター(品番TLMC25022))により無菌ろ過した。
【0080】
実施例3~10
化合物(S1)に換えて以下のケイ素化合物(S4)~(S10)を用い、実施例1と同様の
手法にて、以下の実施例3から実施例9のセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素
ナノ粒子組成物を製造した。
【0081】
実施例3~10で用いたケイ素化合物は以下の表3のとおりである。
【表3】
【0082】
実施例11:化合物(S3)と(S2)を用いたセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物の製造
【化27】
サンプル管(容量30ml)中に実施例1記載の溶液A(5.2ml)と溶液B(0.25ml)と化合物(S3)(47.6μl;Sigma-Aldrich社製)を加え、室温にて1時間攪拌した。次に化合物(S2)(25μl;東京化成工業株式会社製)を加えてさらに1時間攪拌した。得られた混液を透析膜(Spectrum Laboratories社製Float-A-lyzer (登録商標)G2分画分子量(MWCO);20kD)を用いて48時間透析処理を行う。透析処理した溶液を0.22μmフィルター(テクノラボエスシィ社製シリンジフィルター(品番TLMC25022))により無菌ろ過した。
【0083】
実施例12:化合物(S3)と化合物(10)を用いたセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物の製造
【化28】
サンプル管(容量30mL)中に実施例1に記載の溶液A(5.2ml)と溶液B(0.25ml)と化合物(S1)50μLを加え、室温にて1時間撹拌した。次に実施例化合物(10)40mgを加えてさらに1時間撹拌した。得られた混液を透析膜(Spectrum Laboratories社製 Float-A-lyzer(登録商標)G2 MWCO : 20kD)を用いて48時間透析処理を行った。透析処理した溶液を0.22μmフィルター(Merck Millipore社製 Durapore、Millex共に登録商標)により無菌ろ過した。
【0084】
実施例13:化合物(S3)と化合物(11)を用いたセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物の製造
【化29】
サンプル管(容量30mL)中に製造例1に記載の溶液A(5.2ml)と溶液B(0.25ml)と化合物(S1)50μLを加え、室温にて1時間撹拌した。次に実施例化合物(11)40mgを加えてさらに1時間撹拌した。得られた混液を透析膜(Spectrum Laboratories社製 Float-A-lyzer(登録商標)G2 MWCO : 20kD)を用いて48時間透析処理を行った。透析処理した溶液を0.22μmフィルター(Merck Millipore社製 Durapore、Millex共に登録商標)により無菌ろ過した。
【0085】
実施例1~11で製造したセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物
における薬物濃度、薬物搭載率及び平均粒子径を測定した。結果を表4に示す。
【表4】
セチルピリジニウム塩化物濃度はHPLCで測定した。
(a) セチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物をMWCO 300Kの
限外ろ過膜(ポール社製)を用いて限外ろ過した。限外ろ液中のセチルピリジニウム塩化物
の濃度をHPLCで測定することで、未搭載セチルピリジニウム塩化物量を測定した。
搭載率を下記式により計算した。
【数1】
平均粒子径はゼータサイザーナノZS(マルバーン社製)を用い、動的光散乱法にて有効径として測定した。
【0086】
次に実験例(抗菌剤)から薬物含有シリカナノ粒子組成物の製造法を記載する。
【実験例】
【0087】
実験例1:レボフロキサシン含有ケイ素ナノ粒子組成物(LVF-NPs)の製造
1-ブタノール(0.8ml)とスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(440mg)を純水20mlに溶かし、溶液Aを調製した。次にレボフロキサシン(37.4mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(1ml)に溶かして溶液Bを調製した。ナスフラスコ(容量50ml)中に溶液Aと溶液Bとトリエトキシビニルシラン(0.2ml;東京化成工業製)を加え、室温にて1時間攪拌した。次に (3―アミノプロピル)トリエトオキシシラン(0.1ml;東京化成製)を加えてさらに1時間攪拌した。得られた混液を透析膜(Spectrum Laboratories社製Float-A-lyzer (登録商標)G2分画分子量(MWCO);20kD)を用いて48時間透析処理を行う。透析処理した溶液を0.22μmフィルター(テクノラボエスシィ社製シリンジフィルター(品番TLMC25022))により無菌ろ過し標記組成物を得る。
【0088】
実験例2:シプロフロキサシン含有シリカナノ粒子組成物(CPFX-NPs)の製造
1-ブタノール(0.8ml)とスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(440mg)を純水20mlに溶かし、溶液Aを調製した。次にシプロフロキサシン(34.3mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(1ml)に溶かして溶液Bを調製した。ナスフラスコ(容量50ml)中に溶液Aと溶液Bとトリエトキシビニルシラン(0.2ml;東京化成工業製)を加え、室温にて1時間攪拌した。次に (3―アミノプロピル)トリエトオキシシラン(0.1ml;東京化成製)を加えてさらに1時間攪拌した。得られた混液を透析膜(Spectrum Laboratories社製Float-A-lyzer (登録商標)G2分画分子量(MWCO);20kD)を用いて48時間透析処理を行う。透析処理した溶液を0.22μmフィルター(テクノラボエスシィ社製シリンジフィルター(品番TLMC25022))により無菌ろ過し標記組成物を得る。
【0089】
実験例3:クリナフロキサシン含有シリカナノ粒子組成物(CLFX-NPs)の製造
1-ブタノール(0.8ml)とスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(440mg)を純水20mlに溶かし、溶液Aを調製した。次にクリナフロキサシン(37.9mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(1ml)に溶かして溶液Bを調製した。ナスフラスコ(容量50ml)中に溶液Aと溶液Bとトリエトキシビニルシラン(0.2ml;東京化成工業製)を加え、室温にて1時間攪拌した。次に (3―アミノプロピル)トリエトオキシシラン(0.1ml;東京化成製)を加えてさらに1時間攪拌した。得られた混液を透析膜(Spectrum Laboratories社製Float-A-lyzer (登録商標)G2分画分子量(MWCO);20kD)を用いて48時間透析処理を行う。透析処理した溶液を0.22μmフィルター(テクノラボエスシィ社製シリンジフィルター(品番TLMC25022))により無菌ろ過し標記組成物を得る。
【効能の説明】
【0090】
[効能1]
実施例で製造されたセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物
実施例1の抗菌活性評価
試験目的:実施例1の下記試験菌株に対する抗菌活性を評価
試験菌株: S. aureus FDA 209P (MSSA), E. coli ATCC 8739,
S. aureus MU-3 (MRSA), P. aeruginosa ATCC 27853
試験方法: Clinical Laboratory Standards Instituteに準じた微量液体希釈法
(i)-80℃保存菌株をMHII agarに塗付し、35℃、16-20 hr培養する。
(ii)培養菌をMHIIBにMcFarland 0.5になるよう懸濁し、懸濁液を100倍希釈し菌数が約10
6 CFU/mLになるようMHIIBで調製する。
(iii)各化合物原液を次項に示すtop doseにMHIIBで調製後、MHIIBを用いて2倍希釈を繰り返し、化合物含有培地を調製する。
(iv)96well plateに(iii)の各化合物含有培地50 μLを分注し、(ii)の菌液50 μLを接種する。35℃、20-24 時間培養する。
判定方法:肉眼で菌の発育が認められない最少濃度をMinimum Inhibitory
【表5】
CPC ・・・・ セチルピリジニウム塩化物水和物
【0091】
[効能2]
コーティング素材の抗菌活性評価;
試験目的:各種素材にコーティングした実施例1で製造したセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物(ACPC- NPs)について、抗菌活性の有無を評価。
試験菌株: S. aureus FDA 209P (MSSA), E. coli ATCC 8739,
S. aureus MU-3 (MRSA), P. aeruginosa ATCC 27853
試験方法:
(i)-80℃保存菌株をMHII agarに塗付し、35℃、16-20 時間培養する。
(ii)培養菌をMHIIBにMcFarland 0.5になるように懸濁し、菌数が約104CFU/mlになるようMHIIBで適宜希釈する。
(iii)それを試験菌液として、MHII agar上に0.2mL滴下し、その上に試験片(50mm×50mm)を載せる。(試験片の自重で自然に菌液が広がる)シャーレに蓋をして35℃、20-24時間培養する。
判定方法:無加工試験片と比較して、明らかにコロニーの生育が阻害されている場合に、効果有りと判定する。
【表6】
【0092】
[効能3]
実験例1~3及び実施例1で製造したナノ粒子組成物塗布素材からの薬物溶出性を評価した。
試験条件
素材;チタン金属(5×5cm)
塗布薬物量; 100μg/25cm2 (4μg/cm2)
加工方法; 滴下後、風乾
試験容器; ガラスシャーレ
試験液; PBS pH7.4、20ml
振とう条件; 37℃、10rpm
サンプリングポイント; 1hr、2hr、4hr、8hr、24hr
評価したNPsサンプル;
【表7】
薬物溶出率,(%)
【表8】
【0093】
[効能4]
実施例1で製造したセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物(ACPC-NPs)の持続的抗菌活性について以下にしめす実験より評価した。
未処理のチタンプレート(1)と、セチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物をコーティングしたチタンプレート(2)を用い、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA(S.aureus MU3)の試験片上での発育を指標とした持続的抗菌活性を以下の試験方法に従って評価した。
試験方法:
(i) 試験片(1)(未処理のチタンプレート50mm×50mm)及び試験片(2)(実施例1のセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物をコーティングしたチタンプレート50mm×50mm)を1枚ずつ9cmシャーレに入れた後、PBS 20ml加え、37℃、55rpmで振盪する。
(ii) 1日ごとにPBSを新鮮なものと交換し、振盪開始後1,3,5,7,14,21,及び28日に各試験片を取り出し、表面をPBSで洗い流した後、自然乾燥したものを抗菌活性評価に用いる。
(iii) -80℃で保存したS.aureus MU-3菌株をミューラーヒントンII寒天培地(Mueller Hinton II agar ; MHIIA)に塗布し、35℃、16~20時間培養した後、培養菌をミューラーヒントンIIブロス(Muller Hinton II broth; MHIIB)にマクファーランド(McFarland)濁度0.5になるように懸濁し、菌数が約104CFU(colony forming unit)/ml.になるように適宜希釈する(試験菌液)。
(iv) 試験菌液をMHIIA上に0.2ml滴下し、その上に各試験片を載せ、蓋をして35℃、
20~24時間培養する。
(v) 試験片(1)の菌の発育を+++とし、試験片(2)の菌の発育が試験片(1)と比較して同程度の場合を+++、概ね試験片(1)の50%以下の場合を++、概ね数個~50個以下のコロニー数である場合を+、菌の発育を認めない場合をーとして評価し、―~++の場合を抗菌活性有りと判断する。
試験結果;
第9表に示すように、試験片(1)は試験開始初日から菌の発育が認められた。これに対し、試験片(2)では試験開始から14日目においても菌の発育は認められなかった。21日目には僅かな菌の発育が認められたものの、28日目においてもその発育は軽微なものであった。
本試験により、セチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物によるコーティグによって、チタンプレート表面上の持続的な抗菌活性が認められた。
【表9】
【0094】
[効能5]
実施例1で製造されたセチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物の抗ウイルス活性評価試験
*一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター 神戸試験センターにて実施
試験条件:
試験ウイルス: インフルエンザウイルスA
試験サンプル:(i)0.06%セチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物水溶液 (実施例1)
(ii)0.006%セチルピリジニウム塩化物水和物含有ケイ素ナノ粒子組成物水溶液 (実施例1の1/10濃度)
試験条件:ウイルス懸濁液:試験サンプル=1:9
作用温度 25℃
作用時間 15秒、5分
感染価測定法: プラーク測定法
試験結果
【表10】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は持続的な抗ウイルス効果及び抗菌又は殺菌効果を示す。セチルピリジニウム塩化物水和物及びケイ素化合物を含むナノ粒子組成物を提供する。本発明はまた、当該組成物を担持した医療用材料又は医療器具、整形外科医療又は医療器具を用いた、感染症を予防及び/又は治療するためのドラッグデバリーシステムに利用し得る。
【要約】 (修正有)
【課題】セチルピリジニウム塩化物水和物と、特定のケイ素化合物とを含む、ナノ粒子の形態である組成物を提供する。
【解決手段】特定のケイ素化合物は、
で示される(式中、Aは、結合又は低級アルキレンを示し;R
1、R
2、R
3は、独立して、低級アルキル、O-R
5、フェニルを示し;R
5は、低級アルキル等を示し、R
4は、低級アルキル、低級アルケニル、フェニル等を示す。)。そのようなケイ素化合物と、セチルピリジニウム塩化物水和物とを含み、ナノ粒子の形態である組成物である。この組成物は、医療用材料や医療器具に良好に付着あるいは担持しやすい。
【選択図】なし