(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】故障リスクを算出する計量装置およびその点検内容提案方法
(51)【国際特許分類】
G01G 23/01 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
G01G23/01 Z
(21)【出願番号】P 2022553393
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2020037535
(87)【国際公開番号】W WO2022070403
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】岡部 応和
(72)【発明者】
【氏名】長根 吉一
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040810(JP,A)
【文献】特開2013-124922(JP,A)
【文献】特開2011-179960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0004876(US,A1)
【文献】特開2007-139768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
前記故障リスクレベル算出部は、数式(1)から前記故障リスクレベルRを算出することを特徴とする請求項1に記載の計量装置。但し、Nは前記検出回数、Kは前記重み付け係数、rは衝撃レベル、nは衝撃レベルの最大値、Tは現在日時、tは前記所定期間。
【数1】
【請求項7】
前記故障リスクレベル修正部は、数式(2)および数式(3)から前記重み付け係数(K)を調整することを特徴とする請求項3に記載の計量装置。但し、Cは前記重み付け係数Kの調整量,Bは前記繰り返し性の変化率
【数2】
【数3】
【請求項9】
さらに、被計量物の重さの計量値に関する繰り返し性の変化に応じて前記重み付け係数の大きさを調整する故障リスクレベル修正部を備えることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量センサにより被計量物の重さを測る計量装置に係り、特に、装置に加わる衝撃荷重の評価が可能な計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の計量装置として、特許文献1と特許文献2の計量装置がある。特許文献1の計量装置は、計量センサからの荷重信号のうち、過大な荷重信号とそれが現れた日時を装置に記憶するので、衝撃荷重の履歴を見ることができる。特許文献2の計量装置は、出願人のものであって、計量センサが衝撃荷重を受けた際の装置内部構造の変位を加速度に数値変換し、該加速度を基に衝撃度を算出するので、衝撃荷重を数値化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6151132号
【文献】特許第5839975号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の計量装置は、衝撃荷重の履歴が見られるに留まるものであった。特許文献2の計量装置は、衝撃荷重が数値化されることによって計量センサが受けた衝撃度がユーザに伝わりやすくなったが、衝撃荷重による故障リスクはどれほどのものであるのか、また、衝撃荷重があった後に何かしたほうがよいのか、ユーザに提案できるには至っていなかった。
【0005】
本発明は、従来技術の問題点に基づいて為されたものであり、衝撃荷重の数値化技術を応用して、衝撃荷重による故障リスクの定量化や、衝撃に応じた点検内容を提案することのできる計量装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の計量装置は、計量センサと、被計量物の荷重を前記計量センサに伝達する荷重伝達部の加速度から衝撃荷重を数値化する衝撃荷重数値化部と、前記衝撃荷重の数値によって衝撃レベルを算出し、現在から過去の所定期間の前記衝撃レベルの検出回数と前記衝撃レベルに応じた重み付け係数から故障リスクレベルを算出する故障リスクレベル算出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記態様において、前記故障リスクレベルの大きさに応じた点検をユーザに提案する点検提案部を備えるのも好ましい。
【0008】
上記態様において、さらに、前記計量値に関する繰り返し性の変化に応じて前記重み付け係数の大きさを調整する故障リスクレベル修正部を備えるのも好ましい。
【0009】
上記態様において、さらに、前記提案の実行後は、様子見期間を経過したかどうか判定し、前記様子見期間中は前記点検提案部による提案を示さないようにする故障リスクレベル様子見部を備えるのも好ましい。
【0010】
上記態様において、さらに、現在日時が日常点検および定期点検の日時であるか判定し、前記日常点検日時であり前記定期点検日時ではない場合に、前記点検提案部による提案を示すようにする日常・定期点検調整部を備えるのも好ましい。
【0011】
上記態様において、前記故障リスクレベル算出部は、数式(1)から前記故障リスクレベルRを算出するのも好ましい。
【0012】
上記態様において、前記故障リスクレベル修正部は、数式(2)および数式(3)から前記重み付け係数(K)を調整するのも好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明のある態様の点検内容提案方法は、被計量物の荷重を計量センサに伝達する荷重伝達部の加速度から衝撃荷重を数値化するステップと、前記衝撃荷重の数値によって衝撃レベルを算出し、現在から過去の所定期間の前記衝撃レベルの検出回数と前記衝撃レベルに応じた重み付け係数から故障リスクレベルを算出するステップと、前記故障リスクレベルの大きさに応じた点検内容をユーザに提案するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、衝撃荷重による故障リスクの定量化と、リスクに応じた点検内容を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る計量装置のブロック図である。
【
図3】第一の実施形態に係る点検内容提案方法のフロー図である。
【
図6】故障リスクレベルと点検内容の対応テーブルの一例である。
【
図7】
図6に倣った場合の故障リスクレベルに応じた提案のためのフロー図である。
【
図8】故障リスクレベルに応じた提案の表示例である。
【
図9】故障リスクレベルに応じた提案の表示例である。
【
図10】本発明の第二の実施形態に係る計量装置の構成ブロック図である。
【
図11】第二の実施形態に係る点検内容提案方法のフロー図である。
【
図14】第二の実施形態における繰り返し性と重み付け係数の変化を表す図である。
【
図15】本発明の第三の実施形態に係る計量装置の構成ブロック図である。
【
図16】第三の実施形態に係る点検内容提案方法のフロー図である。
【
図17】本発明の第四の実施形態に係る計量装置の構成ブロック図である。
【
図18】第四の実施形態に係る点検内容提案方法のフロー図である。
【発明を実施するための実施の形態】
【0016】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
<第一の実施形態>
(装置構成)
図1は第一の実施形態に係る計量装置1のブロック図である。計量装置1は、計量センサ19と、メモリ20と、表示部21と、出力部22と、演算処理部23を備える。
【0018】
計量センサ19は、一例として、電磁平衡式のセンサである。
図2は、後述する衝撃荷重数値化の説明のために詳述する、計量装置1の装置構成の一例である。
図2は計量装置1の縦断面図である。計量装置1は、副桿2らと、固定部3と、可動部6によるロバーバル機構を備える。計量センサ19は、固定部3に設けられたヨーク内に配置された電磁石とその上方のコイルにより電磁力を発生させる。コイルが巻き付けられたボビンはビーム(荷重伝達部)14に固定され、ビーム14は固定部に接続されたサポートベアリングを支点として回動する。ビーム14はテンションベアリングを介して可動部6に接続されており、可動部6に伴って変位する。
【0019】
計量皿16は可動部6に連結されている。計量皿16に被計量物が載置されると、その荷重は可動部6に伝えられ、ロバーバル機構に案内されながらビーム14に伝えられ、ビーム14が皿上荷重に対応して変位する。係る変位は赤外線LEDとフォトダイオードからなる変位検出センサ18により検出され、計量センサ19は、変位検出センサ18の出力電圧から上記変位を解消する方向(荷重が加わる前の元の平衡状態となる方向)に電磁力が発生するようにコイルに電流を供給する。
【0020】
メモリ20は、メモリーカードまたはHDD等の記憶媒体である。メモリ20には、演算処理部23の演算のための各種プログラムが格納されており、演算処理部23が算出した計量値およびその取得日時が記録される。本形態のメモリ20には、さらに、後述する衝撃検出データと、重み付け係数Kに関するデータと、故障リスクレベルRに関するデータと、点検内容に関する情報が記憶されている。
【0021】
表示部21は、演算処理部23に接続されており、計量装置1の本体ケース(図示略)の前側面に設けられている。表示部21は、タッチパネル式の液晶画面であり、表示部21に表示されたキーから各種操作が行える。表示部21には、後述する「故障リスクレベル」とそれに対応する「点検内容」が表示される。
【0022】
出力部22は、RS232Cコネクタおよび/またはUSBコネクタであり、計量装置1の本体ケースの左右側面または後側面に設けられている。計量装置1が得た故障リスクレベルやそれに対応する点検内容は、出力部12を介して、外部装置,例えばパーソナルコンピュータ、USBメモリ、プリンターへ出力することが可能である。
【0023】
演算処理部23は、例えばCPU,ROM,RAM等を集積回路に実装したマイクロコントローラである。演算処理部23は、計量センサ19がコイルに流した電流値を重さに変換することにより、被計量物の計量値を算出する。さらに本形態では、演算処理部23は、衝撃荷重数値化部231と、故障リスクレベル算出部232と、点検提案部233を備える。これらの機能については、次に記載する点検内容提案方法において詳しく説明する。
【0024】
(点検内容提案方法)
図3は、第一の実施形態に係る計量装置を用いた点検内容提案方法のフロー図である。
【0025】
計量装置1が計量を開始すると、ステップS101に移行して、衝撃荷重数値化部231が衝撃荷重を数値化する。衝撃荷重数値化部231は、変位検出センサ18の出力電圧を数値化し、該電圧データをこれに対応する「変位量データ」とし、該変位量データを二階微分して、「加速度データ」を算出する。そして、この加速度こそが計量センサ19が受けた衝撃に相当するとして、該加速度データを「衝撃荷重」として検出する。なお、加速度データの算出は、
図2に示した構成のように、被計量物を計量皿に載置すると、質量×重力加速度を荷重として受けて変位する構成があれば同様に算出可能であるため、計量センサ19は電磁平衡式に限るものではなく、ロードセル式、静電容量式等であってもよい。
【0026】
ステップS102に移行すると、故障リスクレベル算出部232が機能する。故障リスクレベル算出部232は、ステップS101の衝撃荷重の大きさ(数値)によって、衝撃レベルを算出する(複数段階にレベル分けする)。この例では、衝撃レベルを「0,1,2,3,4」に分けするものとする。衝撃レベルは、例えば被計量物が静的に載せられた時の値を参考にレベル0の範囲を決定し、それ以上をレベル1と設定する。衝撃レベルが「0」の場合は、ステップS101に戻り、計量を継続する。一方、衝撃レベル「1」以上を検出した場合は、ステップS103に移行し、衝撃レベルの大きさとその発生日時を、衝撃検出データとして、メモリ20に記録する。
【0027】
次に、ステップS104に移行して、故障リスクレベル算出部232は、現在から過去の所定期間の衝撃検出データを合算し、計量装置1の故障リスクレベルRを、数式(1)から算出する。
【0028】
【数1】
ここで、Kは重み付け係数、Nは衝撃検出データの検出回数、rは衝撃レベル、nは衝撃レベルの最大値、Tは現在日時、tは前記所定期間である。
図4は重み付け係数Kの定義テーブルの一例である。
図4に例示されるように、重み付け係数Kの値は衝撃レベルの大きさに比例して設定され、かつ、衝撃レベルごとに、規定の検出回数によって故障リスクレベルRのカウントが「+1」上がるように定義づけられている。なお、
図4は一例であり、Kの値やカウントアップの定義は、計量装置の分解能やひょう量により好適に設定されてよい。
【0029】
故障リスクレベルRの算出例を示す。例えば、現在から過去の2週間の衝撃検出データが
図5の表のようになったと仮定し、
図4の定義を使用して故障リスクレベルRを算出する場合、N1~N4を衝撃レベルごとの衝撃検出回数、K1~K4を衝撃レベルごとの重み付け係数とすると、
R=(N1×K1)+(N2×K2)+(N3×K3)+(N4×K4)=(20×0.05)+(10×0.12)+(7×0.24)+(5×0.5)=6.4
四捨五入して、故障リスクレベルR=6となる。
【0030】
次に、ステップS105に移行して、点検提案部233が機能する。点検提案部233は、故障リスクレベルRの大きさによって、リスクレベルに応じた点検内容をユーザに提案する。
図6は故障リスクレベルと点検内容の対応テーブルの例である。
図6に例示されるように、故障リスクレベルRには判定が付けられ、判定ごとに、ユーザへ促す点検内容が異なって設定されている。
図6の例では、故障リスクレベルRは「1~3」「4~6」「7~8」「9~10」のカテゴリに分けられ、各カテゴリに対してそれぞれ「安全」「注意1」「注意2」「危険」の判定が付けられている。
図6の例では、「安全」の場合は提案事項無し、「注意1」の場合はキャリブレーションを提案、「注意2」の場合はキャリブレーションに加えて繰り返し性確認を提案、「危険」の場合は定期点検と同程度の点検(キャリブレーション,繰り返し性確認,直線性確認,および偏置誤差確認)を提案するように設定されている。なお、
図6は一例であり、リスクレベルのカテゴライズや点検内容は、計量装置の分解能、ひょう量、使用環境により好適に設定されてよい。
【0031】
図7は、(
図6の設定に倣った場合の、
図3のステップS105における)故障リスクレベルRに応じた提案のためのフローチャート例である。点検提案部233は、まずステップS1001で、故障リスクレベルRの値が「1~3(安全)」か判定する。「YES」の場合は、提案は行われない。「NO」の場合はステップS1002に移行して、故障リスクレベルRの値が「4~6(注意1)」か判定する。「YES」の場合は、キャリブレーションをするよう提案する。「NO」の場合はステップS1003に移行して、故障リスクレベルRの値が「7~8(注意2)」か判定する。「YES」の場合は、キャリブレーションをするよう提案し、さらに繰り返し性確認をするよう提案する。「NO」の場合はステップS1004に移行して、故障リスクレベルRの値が「9~10(危険)」か判定する。「YES」の場合は、キャリブレーション、繰り返し性確認、さらに、直線性確認および偏置誤差確認を行うよう提案する。点検提案部233は、提案した内容をユーザが実行した場合は、実施項目,実施した日時,およびその結果をメモリ20に保存する。
【0032】
図8および
図9は、故障リスクレベルRに応じた提案の表示例である。
図8は、
図7のフローで故障リスクレベルRが「6」とされた場合のものである。表示部21には、故障リスクレベルRの数値「6」と、その点検内容「キャリブレーション」「繰り返し性」の確認のための実行ボタンが表示される。
図9は、
図7のフローで故障リスクレベルRが「10」とされた場合のものである。表示部21には、故障リスクレベルRの数値「10」と、その点検内容「キャリブレーション」「繰り返し性」「直線性」「偏置誤差」の確認のための実行ボタンが表示される。なお、故障リスクレベルRは、例えば「安全」は緑、「注意1」は黄色、「注意2」はオレンジ、「危険」は赤など、視覚的にも訴える態様で表示されるのも好ましい。
【0033】
以上、本形態の計量装置1を用いれば、衝撃荷重の数値化を基にして、その衝撃レベルの大きさと頻度に応じて故障リスクレベルRが算出され、定量化されてユーザに開示される。そして、故障リスクレベルRに応じて、計量精度を確保するために行うべき点検内容が、計量装置1によって提案される。このため、ユーザは、現在の計量装置の使い方による故障リスクがどの程度であるか知れるのと同時に、何を行ったらよいのか示され、そのための点検を実行するよう誘導されることとなる。
【0034】
<第二の実施形態>
(装置構成)
図10は第二の実施形態に係る計量装置1の構成ブロック図である。第一の実施形態と同様の構成は同一の符号を用いて説明を割愛する。本形態の計量装置1は、計量センサ19と、メモリ20と、表示部21と、出力部22と、演算処理部23を備え、さらに演算処理部23は、故障リスクレベル修正部234を備える。
【0035】
計量値に関する「繰り返し性(標準偏差)」は、計量精度のバロメーターであるため、繰り返し性が悪化すると装置の故障リスクも高くなる。
【0036】
故障リスクレベル修正部234は、演算処理部23に定期的に計量値の繰り返し性を算出させ、算出日時とともにメモリ20に記憶させる。そして、「繰り返し性」の変化に応じて、故障リスクレベルRの算出に影響を与える「重み付け係数K」の値を調整する。
【0037】
故障リスクレベル修正部234は、数式2を用いて、重み付け係数Kを調整する。
【0038】
【数2】
ここで、Cは重み付け係数の調整量であり、繰り返し性の変化率Bを用いて数式3で求められる。
【0039】
【数3】
繰り返し性の変化率Bは、
B=(今回の繰り返し性測定値‐前回の繰り返し性測定値)/前回の繰り返し性測定値
で求めることができる。
【0040】
(点検内容提案方法)
図11は、第二の実施形態に係る点検内容提案方法のフロー図である。
【0041】
ステップS201~S205は、第一の実施形態のステップS101~S105と同様である。即ち、ステップS201で衝撃荷重数値化部231が衝撃荷重を数値化し、ステップS202で故障リスクレベル算出部232が衝撃レベルを算出し、ステップ203で衝撃検出データを蓄積する。そして、所定期間が経過すると、ステップS204に移行して、故障リスクレベル算出部232が故障リスクレベルRを算出し、ステップS205で、点検提案部233がリスクレベルに応じた点検内容をユーザに提案する。
【0042】
本形態では、ステップS205での提案に従ってユーザが繰り返し性の点検を実行すると、ステップS206に移行する。ステップS206では、故障リスクレベル修正部234が機能して、メモリ20から前回の繰り返し性の測定値を読み出して、ステップS205でユーザが実行した今回の繰り返し性の測定値を比較する。故障リスクレベル修正部234は、繰り返し性が悪化していた場合、ステップS207に移行して、メモリ20に記憶されている重み付け係数Kを大きくする修正を行う。一方、繰り返し性が改善していた場合は、ステップS208に移行して、重み付け係数Kを小さくする修正を行う。
【0043】
重み付け係数Kの修正例を示す。例えば、前回測定した繰り返し性はσ=1.2であったのに対し、今回測定した繰り返し性はσ=1.5となっていたとする。繰り返し性は前回と比較して0.3大きくなり、悪化している。この場合、繰り返し性の変化率Bは、
B=(今回の繰り返し性測定値‐前回の繰り返し性測定値)/前回の繰り返し性測定値=(1.5-1.2)/1.2=0.25
となる。現在の重み付け係数Kは
図4の通りであった場合、故障リスクレベル修正部234は、メモリ20から各衝撃レベルの重み付け係数K1~K4を読み出し、数式3を用いて、調整量C1~C4を
図12の通り算出する。続いて、数式2を用いて、重み付け係数K1~K4を
図13の通り修正する。そして、次回の衝撃検出からは、修正された重み付け係数K1´~K4´を用いて、故障リスクレベルRを算出する。
【0044】
図14は、第二の実施形態における繰り返し性と重み付け係数の変化を表す図である。横軸は繰り返し性の測定回数、縦軸は左側が繰り返し性(σ),右側が重み付け係数(K)である。このように、本形態の計量装置1を用いれば、故障リスクレベルRに影響を与える要素となる重み付け係数Kが、繰り返し性の傾向に合わせて軌道修正される。このため、繰り返し性が悪化すれば、故障リスクレベルRのカウントアップが早くなり、ユーザに対する点検提案も早く提示されることとなる。逆に、繰り返し性が改善すれば、故障リスクレベルRのカウントアップが遅くなり、提案が装置の実態と合うように調整される。なお、繰り返し性は、計量値のものに限らず、ゼロ点等から算出されたものが使用されてもよい。
【0045】
<第三の実施形態>
(装置構成)
第三の実施形態は、第一および第二の実施形態のいずれにも適用できる。第一の実施形態に適用する例で説明する。第三の実施形態は、提案した点検内容の実行後(性能確認後)に、「様子見期間」を設ける。
【0046】
図15は第三の実施形態に係る計量装置1の構成ブロック図である。本形態の計量装置1は、計量センサ19と、メモリ20と、表示部21と、出力部22と、演算処理部23を備え、さらに演算処理部23は、故障リスクレベル様子見部235を備える。故障リスクレベル様子見部235の機能は次で詳述する。
【0047】
(点検内容提案方法)
図16は、第三の実施形態に係る点検内容提案方法のフロー図である。本系形態に係るステップS301~S305は、第一の実施形態のステップS101~S105と同様である。即ち、ステップS301で衝撃荷重数値化部231が衝撃荷重を数値化し、ステップS302で故障リスクレベル算出部232が衝撃レベルを算出し、ステップ303で衝撃検出データを蓄積し、ステップS304で故障リスクレベル算出部232が故障リスクレベルRを算出し、ステップS305に移行して、点検提案部233がリスクレベルに応じた点検内容をユーザに提案する。
【0048】
本形態では、最初のフローのステップS305での提案(性能確認)を実行後、次のフローからは、ステップS306に移行する。ステップS306では、故障リスクレベル様子見部235が機能して、様子見期間を経過したかどうかを判定する。なお、様子見期間はユーザが任意に設定してよいものとし、一例として一週間ほど様子を見るとよい。
【0049】
故障リスクレベル様子見部235は、様子見期間中(NO)であれば、ステップS307に移行して、故障リスクレベルRの算出は続けつつも、この期間は点検提案を示さないようにして様子を見る。一方、様子見期間を経過(YES)していれば、ステップS308に移行して、様子見期間前の故障リスクレベルRと比較して、現在の故障リスクレベルRが下がったか判定する。レベルが下がっていた場合(YES)は、ステップS301に戻り故障リスクのモニタリングを続ける。レベルが上がっていた場合(NO)は、ステップS305に戻り、もう一度、現在の故障リスクレベルRに相当する点検を実行するよう、ユーザを促す。
【0050】
このように、本形態の計量装置1を用いれば、性能確認を実行した後に「様子見期間」を設けることで、性能確認の成果を故障リスクレベルRのカウントに反映させることができる。
【0051】
<第四の実施形態>
(装置構成)
第四の実施形態は、第一から第三の実施形態のいずれにも適用できる。第一の実施形態に適用する例で説明する。第四の実施形態は、天秤が一般的に備えている「日常点検」と「定期点検」の機能に、故障リスクレベルに応じた提案を絡める。
【0052】
図17は第四の実施形態に係る計量装置1の構成ブロック図である。本形態の計量装置1は、計量センサ19と、メモリ20と、表示部21と、出力部22と、演算処理部23を備え、さらに演算処理部23は、日常・定期点検調整部236を備える。日常・定期点検調整部236の機能は次で詳述する。
【0053】
(点検内容提案方法)
図18は、第四の実施形態に係る点検内容提案方法のフロー図である。本形態に係るステップS401~S404は、第一の実施形態のステップS101~S104と同様である。即ち、ステップS401で衝撃荷重数値化部231が衝撃荷重を数値化し、ステップS402で故障リスクレベル算出部232が衝撃レベルを算出し、ステップ403で衝撃検出データを蓄積し、ステップS404で故障リスクレベル算出部232が故障リスクレベルRを算出する。
【0054】
本形態では、次に、ステップS404-1に移行して、日常・定期点検調整部236が、現在日時が日常点検で設定されている日常点検を実施する日時であるかを判定する。日常点検日時で無ければ(NO)、提案は行われない。日常点検日時であれば(YES)、ステップS404-2に移行して、現在日時が定期点検で設定されている定期点検を実施する日時であるかを判定する。定期点検日時で無ければ(NO)、ステップS405に移行して、
図7の故障リスクレベルに応じた提案のフローに移行する。定期点検日時であれば(YES)、定期点検の項目を実施するようユーザに促す。
【0055】
このように、本形態の計量装置1を用いれば、日常点検のタイミングで現在の故障リスクレベルをユーザに通知し、リスクレベルに応じた点検内容を提案するよう構成されているので、天秤が一般的に備えている「日常点検」と「定期点検」の機能と故障リスクレベルによる提案がうまく融合される。ユーザは日々の点検において、現在の故障リスクと、その改善のために何を行ったらよいのかが示され、そのための点検を実行するよう誘導されることとなる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態および変形例を述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。なお、「故障リスク」の表現は一例であって、天秤の「故障状態」または「取扱状況」などの表現が使用されても、それらは本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 計量装置
14 ビーム(荷重伝達部)
19 計量センサ
20 メモリ
21 表示部
22 出力部
23 演算処理部
231 衝撃荷重数値化部
232 故障リスクレベル算出部
233 点検提案部
234 故障リスクレベル修正部
235 故障リスクレベル様子見部
236 日常・定期点検調整部