(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】吐出システムを動作させるための方法および吐出システム
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20240201BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240201BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240201BHJP
B05C 17/01 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05C5/00 A
B05C17/01
(21)【出願番号】P 2021530051
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019082355
(87)【国際公開番号】W WO2020120112
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-26
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100,9494 Schaan,Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】マーティン クーン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヘーフェレ
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0075427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00-21/00
B05D1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出装置(10)およびカートリッジデバイス(40)を備える吐出システム(1)
における、挿入される前記カートリッジデバイス(40)が前記吐出装置(10)での使用に適しているかどうかを検出し、前記吐出装置(10)および/または前記カートリッジデバイス(40)の損傷および/または誤作動を防ぐための方法であって、前記吐出装置(10)は、前記カートリッジデバイス(40)を受容するための少なくとも1つの受容空間(11)、
前記カートリッジデバイス(40)を押出するための押出ピストン(25,26)を備えた少なくとも1つの押出デバイス(24)、制御デバイス(33)、
前記押出ピストン(25,26)を変移させる駆動デバイス(30)、および電源(31)を備え、
前記方法は、
前記カートリッジデバイスを前記少なくとも1つの受容空間に挿入するステップ(S1)と、
前記カートリッジデバイス(40)の信号発生器(62)から少なくとも1つの第1の信号を発するステップ(S2)と、
前記吐出装置(10)の少なくとも1つのセンサ(61)によって、前記カートリッジデバイス(40)の前記少なくとも1つの信号を受信するステップ(S3)と、
前記センサ(61)から前記制御デバイス(33)に第2の信号を伝送するステップ(S4)と、
前記第2の信号が前記制御デバイス(33)に格納された値に一致する場合、もしくは前記制御デバイス(33)に格納されたアルゴリズムが前記第2の信号が正当であることを確認した場合、前記駆動デバイス(30)を
、前記押出ピストン(25,26)を変移させず非作動とする第1の動作モードから
前記押出ピストン(25,26)を第1の速度で変移させ通常作動させる第2の動作モード(S8)に移行させるステップ(S6)、または、
さもなければ、前記駆動デバイスを
、前記押出ピストン(25,26)を変移させないか、あるいは前記第1の速度に対し減速された第2の速度で変移させる第3の動作モードに移行させるステップ(S9)と
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記駆動デバイス(30)の前記第1の動作モードは、前記電源(31)から前記駆動デバイス(30)に電流が供給されない非アクティブ化モードである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記駆動デバイス(30)の第3の動作モードが、前記駆動デバイス(30)の前記第1の動作モードに一致する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記駆動デバイス(30)が、前記電源(31)と前記駆動デバイス(30)との間のエネルギー経路を遮断することによって前記第1の動作モードに留まる、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記駆動デバイス(30)の前記第3の動作モードにおいて、前記押出デバイス(24)が、前記駆動デバイス(30)の前記第2の動作モードにおける第1の方向(V)での前記押出デバイス(24)の送り出し運動の速度よりも遅い第1の速度で前記第1の方向(V)への前記送り出し運動を受ける、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記カートリッジデバイス(40)の前記信号発生器(62)から少なくとも1つの第3の信号を発し、前記第3の信号は、前記第3の信号が前記制御デバイス(33)に格納されたしきい値より大きい場合(S5)、前記駆動デバイス(30)を第1の動作モードにする(S7)、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記駆動デバイス(30)の前記第3の動作モードにおいて警告信号発生器(70)によって警告信号を発する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第3の信号が前記制御デバイス(33)に格納されたしきい値を超えた場合に、警告信号発生器(70)によって警告信号を発する、ことを特徴とする請求項
6または7に記載の方法。
【請求項9】
吐出装置(10)およびカートリッジデバイス(40)を備え、前記吐出装置(10)が、前記カートリッジデバイス(40)を受容するための少なくとも1つの受容空間(11)、少なくとも1つの押出デバイス(24)、制御デバイス(33)、駆動デバイス(30)および電源(31)を備える、請求項
6~8のいずれか1項に記載の方法を実施するための吐出システム(1)。
【請求項10】
前記カートリッジデバイス(40)に関連付けられた信号発生器(62)、および前記吐出装置(10)に関連付けられた少なくとも1つのセンサ(61)を備えるワイヤレス伝送デバイス(60)が提供される、ことを特徴とする請求項9に記載の吐出システム。
【請求項11】
前記ワイヤレス伝送デバイス(60)が、光伝送デバイスまたは無線伝送デバイスであり、具体的には、RFID伝送デバイスとして、Bluetooth(登録商標)伝送デバイスとして、NFC伝送デバイスとして、WiFi(登録商標)伝送デバイスとして、QR伝送デバイスとして、DMC伝送デバイスとして、W(無線)LAN伝送デバイスとして、ZigBee(登録商標)伝送デバイスとして、Wibree伝送デバイスとして、WiMAX(登録商標)伝送デバイスとして、IrDA(登録商標)伝送デバイスとして、または光指向性無線によって動作する伝送デバイスとして構成されている、ことを特徴とする請求項10に記載の吐出システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのセンサ(61)が、さらなる伝送デバイス(65)によって前記制御デバイス(33)に接続され、前記さらなる伝送デバイス(65)が有線のものであるか、またはワイヤレスのものである、ことを特徴とする請求項10または11に記載の吐出システム。
【請求項13】
前記さらなる伝送デバイス(65)が、RFID伝送デバイスとして、Bluetooth(登録商標)伝送デバイスとして、NFC伝送デバイスとして、WiFi(登録商標)伝送デバイスとして、QR伝送デバイスとして、DMC伝送デバイスとして、W(無線)LAN伝送デバイスとして、Zigbee(登録商標)伝送デバイスとして、Wibree伝送デバイスとして、WiMAX(登録商標)伝送デバイスとして、IrDA(登録商標)伝送デバイスとして、または光指向性無線にとって動作する伝送デバイスとして構成されている、ことを特徴とする請求項12に記載の吐出システム。
【請求項14】
出力デバイス(70)が前記吐出装置(10)のハウジング(12)上に設けられている、ことを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の吐出システム。
【請求項15】
前記吐出装置(10)が、前記第1の信号、前記第2の信号、および/または前記第3の信号を少なくとも一時的に格納するように構成された少なくとも1つの可読記憶デバイス(72)を有する、ことを特徴とする請求項9~14のいずれか1項に記載の吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出装置(ディスペンサー)およびカートリッジデバイスを備える、請求項1の前文に記載の吐出システムを動作させるための方法に関する。本発明はまた、請求項9の主文に記載のこの種の方法を実施するための吐出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
吐出装置(ディスペンサー)は、例えば、カートリッジデバイスからシリコーンまたは他の液体または粘性の建設材料を吐出するために、建設業界で使用される。2つ以上のチャンバを有するカートリッジデバイスを受容するように構成された吐出装置も知られている。この種のカートリッジデバイスには、例えば、二成分モルタル組成物が入っており、硬化性樹脂成分はカートリッジデバイスの一方のチャンバまたはカートリッジに配置され、硬化性成分は、反応を阻害するように、最初のチャンバまたはカートリッジとは別に配置された、カートリッジデバイスのさらなるチャンバまたはカートリッジに配置される。この種の二成分モルタル組成物が入ったカートリッジデバイスは、具体的にはレンガ、コンクリートまたは天然石で作られる構造物を、例えば、鉱物物質中の金属元素で化学的に固着するためのモルタル注入に使用される。実施に際しては、固着させる手段を取り付けるために適宜必要となるボアホールがまず鉱物基材に穿設され、その後、硬化性樹脂成分が二成分モルタル組成物のうちの硬化性成分と混合されてこのボアホールに導入され、その上で、固定される対象の固着させる手段が挿入され位置調整された後、モルタル組成物が硬化される。
【0003】
この種の吐出装置の一般的な構造は、プッシュロッド上に配置され、カートリッジの出力開口部の方向に移動する押出ピストンを有する。プッシュロッドは送り機構によって駆動される。
【0004】
エラーフリーの動作を保証するためには、それぞれの場合に使用されるカートリッジデバイスが吐出装置に適合している必要がある。適合しないカートリッジデバイスと吐出装置の組み合わせを使用すると、カートリッジデバイスおよび吐出装置の両方に損傷を与え得る。さらに、適合しない組み合わせを使用した場合、適用された硬化組成物が、硬化後に所望の程度まで所望の機械的特性を有さない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、吐出システムを動作させるための方法、およびこの種の方法を実行するための吐出システムを提供することであり、それによって、挿入されたカートリッジデバイスおよび/または吐出装置の使用による損傷および/または誤作動が、構造的に単純かつ安全な方法で確実に防ぎ得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、吐出装置(ディスペンサー)およびカートリッジデバイスを備える吐出システムを動作させるための方法によって解決され、吐出装置は、カートリッジデバイスを受容するための少なくとも1つの受容空間、少なくとも1つの押出デバイス、制御デバイス、駆動デバイス、および電源を備えており、方法は、
カートリッジデバイスを少なくとも1つの受容空間に挿入するステップと、
カートリッジデバイスの信号発生器から少なくとも1つの第1の信号を発するステップと、
吐出装置の少なくとも1つのセンサによってカートリッジの少なくとも1つの信号を受信するステップと、
センサから制御デバイスに第2の信号を伝送するステップと、
第2の信号が制御デバイスに格納された値に一致する場合、もしくは制御デバイスに格納されたアルゴリズムが第2の信号が正当であることを確認した場合、駆動デバイスを第1の動作モードから第2の動作モードに移行させるステップと、
さもなければ、駆動デバイスを第3の動作モードに移行させるステップと
を含む。
【0007】
本発明による方法により、適合性のある吐出システムであるかどうか、および挿入されたカートリッジデバイスが吐出装置での使用に適しているかどうかを容易に検出することが可能である。適合性のある組み合わせが検出された場合、駆動デバイスは第2の動作モードで正常動作または通常動作に移行され、適合性のない組み合わせが検出された場合、駆動デバイスは第3の動作モードに移行される。これにより、カートリッジデバイスと吐出装置の両方に対する損傷のリスクを、簡単、確実、かつ安全な方法で低減または防止され得る。さらに、必要に応じて、例えば、カートリッジデバイスの受容空間への誤った挿入が検出された場合、カートリッジデバイスおよび/または吐出装置の機能に対するユーザの誤った運用の影響を低減または防止され得る。さらに、カートリッジデバイスと吐出装置との間の情報交換の結果として、それぞれの場合に使用されるカートリッジデバイスに対してプロセスを最適化することが可能である。
【0008】
好ましい本発明の態様において、駆動デバイスの第1の動作モードは、電源から駆動デバイスに電流が供給されないか、または駆動機構の結合が解放される非作動モードである。そうすることで、吐出システムの基本状態において、駆動デバイスからの分離の結果として、駆動デバイスの潜在的に望ましくない作動が確実に防止される。
【0009】
駆動デバイスの第3の動作モードが駆動デバイスの第1の動作モードに一致し、第3の動作モードの駆動デバイスが具体的には、好ましくは駆動デバイスが電源から切り離された非作動モードにある場合、吐出システムへの損傷を特に確実に防止され得る。
【0010】
好ましい態様において、駆動デバイスは、電源と駆動デバイスとの間のエネルギー経路を遮断することによって、容易に第1の動作モードに留まる。
【0011】
カートリッジデバイスおよび吐出装置の両方への損傷のリスクを可能な限り低く保つために、駆動デバイスの第3の動作モードにおいて、駆動デバイスが、駆動デバイスの第2の動作モードにおける第1の方向への押出デバイスの送り出し運動の速度よりも遅い第1の速度での第1の方向への送り出し運動を受けることが可能である。
【0012】
少なくとも1つの第3の信号がカートリッジデバイスの信号発生器から発せられることができ、この第3の信号は、駆動デバイスを第1の動作モードに設定する、すなわち、第3の信号が制御デバイスに格納されているしきい値を超えるか、もしくは所定の範囲外にある場合に、駆動デバイスは第1の動作モードに留まるか、もしくは第1の動作モードに配置される。その結果、例えば、カートリッジデバイスの有効期限またはカートリッジデバイスに格納された変質しやすい化学物質の品質保持期限を超えた場合、もしくはカートリッジデバイスに記録されている温度が許容温度範囲にない場合に、ユーザ要求の発生時の吐出ピストンの変移を容易に防止され得る。こうすることによって、例えば、カートリッジデバイス内の材料が、適用され硬化された後に所望の機械的特性を最大限に有することを確保することが可能である。
【0013】
有利な態様において、警告信号が、駆動デバイスの第3の動作モードにおいて警告信号発生器によって発せられる。これにより、例えば、吐出装置と適合性のないカートリッジデバイスが存在する場合、例えば、音響的、視覚的、または触覚的な方法で、ユーザに通知し得る。
【0014】
また、あるいはこれに加えて、この種の警告信号は、第3の信号が制御デバイスに格納されたしきい値を超えた場合に、警告信号発生器によって発せられ得る。
【0015】
また、前述の詳細な方法を実施するための吐出システムが提案され、このシステムは、吐出装置およびカートリッジデバイスを備えており、吐出装置は、カートリッジデバイスを受容するための少なくとも1つの受容空間、カートリッジデバイスに力を加えるための少なくとも1つの押出デバイス、制御デバイス、駆動デバイスおよび電源を含む。
【0016】
本発明による吐出システムによって、カートリッジデバイスが吐出装置での使用に適しているかどうかを容易に検出することが可能である。これにより、カートリッジデバイスと吐出装置の両方に対する損傷のリスクを、簡単、確実、かつ安全な方法で低減または防止され得る。さらに、必要に応じて、カートリッジデバイスおよび/または吐出装置の機能に対するユーザの誤った運用を低減または防止され得る。
【0017】
カートリッジデバイスは、1つのチャンバまたはカートリッジを有するように、または2つ以上のチャンバまたはカートリッジを有するように構成構成され得、具体的にはカートリッジデバイスが複数のカートリッジを有する場合に各カートリッジに異なる材料が収容される。本発明の態様において、吐出装置の受容空間は、カートリッジデバイスの特定の円筒形カートリッジを受容するように構成されている。例えば、カートリッジデバイスが、二成分モルタル組成物を含むことが可能であり、硬化性樹脂成分がカートリッジデバイスの一方のカートリッジに入れられ、硬化性成分が同じカートリッジデバイスのさらなるチャンバに入れられ、さらなるチャンバは、反応しないように最初のカートリッジとは別に配置される。
【0018】
カートリッジデバイスと吐出装置との信号伝送を構造的に単純な方法で実装するために、カートリッジデバイスに関連する信号発生器と吐出装置に関連する少なくとも1つのセンサとを備えるワイヤレス伝送デバイスを提供され得る。伝送デバイスによってカートリッジデバイスから吐出装置へ信号伝達することが可能であり、その結果、それぞれの場合に使用されるカートリッジデバイスに対して吐出のプロセスが最適化され得る。
【0019】
有利な態様において、ワイヤレス伝送デバイスは、光伝送デバイスまたは無線伝送デバイスである。本実施例において、伝送デバイスは、異なる動作原理および/または規格に基づき得る。伝送デバイスの動作原理は、例えば、超短波、短波または中波による無線周波数範囲での信号伝送、または赤外線もしくは光周波数範囲での信号伝送に基づき得る。具体的には、伝送デバイスは、RFID伝送デバイスとして、Bluetooth(登録商標)伝送デバイスとして、NFC伝送デバイスとして、WiFi(登録商標)伝送デバイスとして、QR伝送デバイスとして、またはDMC伝送デバイスとして、構成構成されている。伝送デバイスは、W(無線)LAN伝送デバイス、ZigBee(登録商標)伝送デバイス、Wibree伝送デバイス、WiMAX(登録商標)伝送デバイス、IrDA(登録商標)伝送デバイス、または光指向性無線によって動作する伝送デバイスとしても構成され得る。
【0020】
実装が容易な本発明の構成においては、カートリッジデバイスによって発せられ、少なくとも1つのセンサによって受信された信号は、有線のものであるかまたはワイヤレスのものであるさらなる伝送デバイスを介して制御デバイスに接続された少なくとも1つのセンサによって制御デバイスに伝送される。
【0021】
さらなる伝送デバイスは、基本的に、伝送デバイスに相当するように構成され得、例えば、RFID伝送デバイスとして、Bluetooth(登録商標)伝送デバイスとして、NFC伝送デバイスとして、WiFi(登録商標)伝送デバイスとして、QR伝送デバイスとして、またはDMC伝送デバイスとして構成され得る。伝送デバイスは、W(無線)LAN伝送デバイス、ZigBee(登録商標)伝送デバイス、Wibree伝送デバイス、WiMAX(登録商標)伝送デバイス、IrDA(登録商標)伝送デバイス、または光指向性無線によって動作する伝送デバイスとしても構成され得る。
【0022】
構造的に単純な方法でユーザとのインタラクションを達成できるようにするために、1つの好ましい態様において、出力デバイスが、吐出装置のハウジングに設けられるか、または配置される。出力デバイスは、例えば、光信号、音響信号、および/または触覚信号を出力するように構成された警告デバイスとして構成され得る。本態様において、出力デバイスは、例えば、好ましくはディスプレイの形態で、吐出装置に配置されたディスプレイデバイスを備えてもよい。代替的に、または追加的に、出力デバイスは、例えば、移動無線デバイスまたはスマートフォンなどの別個のディスプレイデバイスにワイヤレス接続するように構成された伝送デバイスの一部とし得る。
【0023】
有利な態様において、吐出装置は、第1の信号、第2の信号、および/または第3の信号を少なくとも一時的に格納するように構成された少なくとも1つの読み出し可能な記憶デバイスを有する。記憶デバイスは、好ましくは、記憶デバイスに格納されたデータを評価され得るように、出力デバイスを介して読み出しできる。
【0024】
吐出システムの吐出装置は、具体的には、用途に応じて、主電源またはバッテリー給電とし得る。
【0025】
さらなる利点は、以下の図の説明の中に見出され得る。本発明の一実施例が図に示される。図、詳細な説明および特許請求の範囲は、多数の特徴が組み合わされて含まれる。当業者は、特徴を適宜個別に検討し、それらを組み合わせて意味のあるさらなる組み合わせをも起し得る。
【0026】
図において、同一および同等の構成要素には、同一の符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】吐出システムの吐出装置の単純化された三次元図である。
【
図2】
図1に記載の吐出システムの吐出装置の単純化された側面図である。
【
図3】カートリッジデバイスが、
図1および
図2に記載の吐出装置とインタラクションするように構成された、吐出システムのカートリッジデバイスの三次元図である。
【
図4】
図1~
図3に記載の吐出システムを動作させるための、本発明による方法の一実施例の単純化されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による吐出システム1の好ましい実施例が
図1および
図2に示され、吐出システム1の吐出装置(ディスペンサー)10が
図1に示され、吐出システム1のカートリッジデバイス40が
図2に示される。
【0029】
吐出装置(ディスペンサー)10は、基本的に、単一成分、本実施例においては、特に多成分組成物を吐出するように構成され得る、さらに、組成物は、例えば、建設業界における充填、接着、シーリングまたは類似の用途のために提供され得る。これらの組成物および他の組成物は、カートリッジデバイスの1つまたは複数のカートリッジに入っている。
【0030】
本実施例において、吐出装置10は、カートリッジ41およびカートリッジ42として構成された2つの容器を有する、
図3に示されるカートリッジデバイス40と協働するように構成されている。カートリッジデバイス40は、吐出装置10のハウジング12の受容空間11内に配置され得、例えば、二成分モルタル組成物を入れることができる。本実施例において、硬化性樹脂成分は、カートリッジデバイス40の一方のチャンバまたはカートリッジ41に入れることができ、硬化性成分は、反応を避けるために、最初のチャンバまたはカートリッジとは別に配置されたカートリッジデバイス40の他方のチャンバまたはカートリッジ42に配置され得る。硬化性樹脂成分と硬化性成分を混合して生成された組成物は、具体的にはレンガ、コンクリートまたは天然石で作られた構造物を、例えば、鉱物物質中の金属元素で化学的に固定するための注入モルタルとして使用される。本実施例において、固着させる手段を固定するために、適宜必要となるボアホールがまず鉱物基質に穿設され、その後、硬化性樹脂成分が二成分モルタル組成物のうちの硬化性成分と混合されこのボアホールに導入され、その上で、固定される対象の固着される手段が挿入され位置調整された後、モルタル組成物が硬化される。
【0031】
本実施例において、吐出装置10のハウジング12は、実質的に軸方向Aに沿って延在し、機能部14および操作部16を有する。機能部14は、実質的に、受容空間11と、機能部14の処理側遠位端18において、カートリッジ41、42の吐出開口部が延びる処理ヘッド19とを備える。カートリッジ41、42から出力された組成物は、具体的にはカートリッジデバイス40の混合領域49で混合され、機能部14の処理側遠位端18において、処理されることになる対象の場所に出力される。
【0032】
ハンドル21に加えて、ハウジング12の操作部16は、ハンドル21の領域に配置され、例えば、いわゆるMOSFETスイッチとして構成され得る作動スイッチ22を備える。カートリッジ41、42から押し出すために、押出デバイス24が提供され、本実施例において、2つの押出ピストン25、26を有するように構成され、これらは、本実施例においてプッシュロッド29を介して堅固に相互接続される。各押出ピストン25、26は、それぞれ、関連するカートリッジ41または42に面するその端部にスタンプ部材27または28を備える。
【0033】
さらに、ここに概略的にのみ示され、特に電気モーター30として構成された駆動デバイスが提供され、このデバイスによって、押出ピストン25、26を軸方向Aに変移させ得る。代替的に、押出ピストン25、26は、圧縮空気または油圧駆動デバイスによっても動作させ得る。
【0034】
カートリッジ41、42内の組成物を吐出開口部を介してカートリッジ41、42から搬送するために、押出ピストン25、26はともに、電気モーター30によって送り出し方向Vに駆動され得るプッシュロッド29によって遠位端18の方向に移動され得る。
【0035】
本実施例において、電気モーター30は、
図2に概略的にのみ示され、蓄電器31として構成された電源によってエネルギーが供給される。あるいは、吐出装置10はまた、外部電源により作動されてもよく、電源に結合することができるプラグを設けることが可能である。吐出装置10は、作動スイッチ22によってユーザの要求にしたがって電気モーター30を動作させるように構成された制御デバイス33をも備える。
【0036】
電気モーター30は、制御デバイス33によって様々な動作モードに移行され得、第1の動作モードは、電流が蓄電器31から電気モーター30に供給されず、作動スイッチ22の作動がプッシュロッド29の変移を引き起こさない非作動モードに対応する。第2の動作モードは、電気モーター30の正常動作または通常動作に対応し、ユーザが作動スイッチ22を作動させることによって、押出ピストン25および26が第1の速度で送り出し方向Vに変移する。電気モーター30は、特に、制御デバイス33によって第3の動作モードにされ得、このモードにおいて、ユーザが作動スイッチ22を作動させることによよって、押出ピストン25および26が第1の速度に対して減速された第2の速度で送り出し方向Vに変移する。
【0037】
本実施例において、カートリッジデバイス40のカートリッジ41、42はそれぞれ、第1の端壁45または46および対抗する第2の端壁47または48をそれぞれ備える実質的に円筒形の本体43または44を有する。出力開口部は、第1の端壁45または46それぞれに設けられ、これらの開口部は、混合領域49を介して相互接続される。例えば、注ぎ口の形状の出力デバイスは混合領域49に接続され得る。第2の端壁47または48は、それぞれ、関連する押出ピストン25または26のスタンプ部材27または28と協働するように構成されており、関連する組成物が出力開口部を通ってカートリッジ41および42に搬送され、混合領域49で混合され、出力デバイスを介して吐出されるように、押出ピストン25または26が第1の端壁45または46の方向に送り出し方向Vに変移されると、関連するカートリッジ41または42の本体43または44の容積が減少する。
【0038】
吐出システム1は、吐出装置10に設けられた少なくとも1つのセンサ61、およびカートリッジデバイス40上に配置された信号発生器62を有する伝送デバイス60をも有する。伝送デバイス60はワイヤレスのものであり、様々な伝送原理によって動作し得る。具体的には、伝送デバイスは、RFID伝送デバイスであるが、代替的に、例えば、Bluetooth(登録商標)伝送デバイス、NFC伝送デバイス、WiFi(登録商標)伝送デバイス、QR伝送デバイス、DMC伝送デバイス、W(無線)LAN伝送デバイス、ZigBee(登録商標)伝送デバイス、Wibree伝送デバイス、WiMAX(登録商標)伝送デバイス、IrDA(登録商標)伝送デバイス、または光指向性無線によって動作する伝送デバイスとして構成されてもよい。
【0039】
本実施例において、信号発生器62は、カートリッジデバイス40の混合領域49の端面50に配置され、一方、センサ61は、吐出装置10のハウジング12上に配置されており、これにより、カートリッジデバイス40が所定の方法で受容空間11に配置されたときに、カートリッジデバイス40の信号発生器62がセンサ61と協働し、信号が信号発生器62からセンサ61に伝送され得る。このために、センサ61は、例えば、受容空間11の遠位端領域を画定するハウジング12の壁面領域に配置される。
【0040】
センサ61は、さらなる伝送デバイス65によって制御デバイス33に結合され、さらなる伝送デバイス65はワイヤレスであるものかまたは有線であるものとすることが可能である。さらなる伝送デバイス65は、伝送デバイス60と同一の伝送メカニズムに基づいて構成され得る。
【0041】
図4は、吐出システム1を動作させるための本発明による方法の実施例を示し、この方法によって、例えば、吐出装置10およびカートリッジデバイス40からなる適合性のあるシステムであるかどうかを判定することが可能である。その結果、吐出装置10およびカートリッジデバイス40の両方への損傷が確実に防止され得る。例えば、誤った運用の結果としての損傷のリスクも、軽減または防止され得る。
【0042】
方法は、開始Sから開始する。ステップS1において、カートリッジデバイス40が、受容空間11に挿入される。ステップS2において、カートリッジデバイス40の信号発生器62が、具体的には、タイプ、サイズ、形状などに関してカートリッジデバイス40を識別する第1の信号を発する。さらに、本実施例において、カートリッジデバイス40は、例えば、カートリッジデバイス40の品質保持期限、処理のための周囲領域の許容温度範囲などを含む第3の信号をさらに発する。カートリッジデバイス40によって発せられた信号は、ステップS3において、カートリッジデバイス40が所定の方法で受容空間11内に配置されたとき、吐出装置10のセンサ61によって受信される。
【0043】
続いて、ステップS4において、第1の信号および第3の信号に一致しているか、または第1の信号および第3の信号から生成される第2の信号が、センサ61から制御デバイス33に伝送される。照会ステップS5において、第3の信号に相関する第2の信号が、例えば、温度センサによって測定された現在の周囲温度と比較され、現在の周囲温度がカートリッジデバイス40の許容温度範囲内にある場合、方法は照会ステップS6に進む。代替的に、または追加的に、照会ステップS5は、現在の日付がカートリッジデバイス40の許容される品質保持期限より前であるかどうかを比較し得る。その結果が肯定の場合、方法は照会ステップS6に進む。
【0044】
照会ステップS5において照会結果が否定である場合、ステップS7において、電気モーター30は、制御デバイス33によって第1の動作モードになる、すなわち、電気モーター30は、すでに第1の動作モードにあった場合はその動作モードに留まり、電気モーター30がそれまで別の動作モードにあった場合、第1の動作モードに移行する。電気モーター30の第1の動作モードにおいて、作動スイッチ22が作動しても、プッシュロッド29は変移しない、したがって、押出ピストン25および26は変移しない。
【0045】
照会ステップS5において肯定の照会結果が得られた後に、照会ステップS6において、第1の信号に相関する第2の信号が、例えば参照テーブルの形式で制御デバイス33に格納された値と比較されるか、もしくは、正当であることを制御デバイス33に格納されたアルゴリズムによって確認される。比較または確認の結果が肯定である場合、ステップS8において、電気モーター30が、制御デバイス33によって第2の動作モードに移行し、一方、照会ステップS6での照会結果が否定である場合、電気モーター30は、ステップS9において、第3の動作モードに移行する。代替的に、電気モーター30は、ステップS9において、第1の動作モードにも移行し得る。電気モーター30の第2の動作モードにおいて、作動スイッチ22を動作させることによって生じるユーザ要求により、プッシュロッド29が変移し、したがって、押出ピストン25、26が変位する。
【0046】
ステップS7、S8およびS9に続く照会ステップS10において、設定される対象の関連するフレームワーク条件が所定の範囲で変更されたかどうかに関して照会が行われる。照会結果が肯定の場合、方法はステップS1において再開される。照会結果が否定の場合、方法はステップEで停止される。
【0047】
吐出システム1を動作させるための方法によって、例えば、吐出装置10と適合性のないカートリッジデバイス40を使用した結果として発生する可能性のある、吐出装置10およびカートリッジデバイス40の両方への損傷が、容易に防止され得る。さらに、カートリッジデバイス40から吐出装置10に対応するデータを伝送することにより、望ましくない処理結果につながり得る、適宜設定可能な許容できないフレームワーク条件でカートリッジデバイス40が使用されることを容易に防ぐことが可能である。カートリッジデバイス40が所定の範囲で受容空間11内に配置されている場合にのみ信号発生器62とセンサ61との間の信号伝送が行われるように、信号発生器62およびセンサ61が構成され配置されるときに、カートリッジデバイス40が受容空間内に誤って配置されることによって引き起こされるカートリッジデバイス40および/または吐出装置10への損傷が発生することを防止する。
【0048】
吐出装置10は、具体的には、例えば、ステップS7において、電気モーター30が制御デバイス33によって第1の動作モードにあるとき、および/または、ステップS9において、第3の動作モードに移行するときに、光学的、音響的および/または触覚的方法で警告信号を出力するように構成された出力デバイス70を備える。制御デバイス33は、第1の信号、第2の信号および/または第3の信号を少なくとも一時的に格納するように構成され、出力デバイスを介して読み出しされ得る記憶デバイス72をも有し得る。その結果、吐出システム1の利用情報が、容易に評価され得る。
【符号の説明】
【0049】
1 吐出システム
10 吐出装置(ディスペンサー)
11 受容空間
12 ハウジング
14 機能部
16 操作部
18 遠位端
19 処理ヘッド
21 ハンドル
22 作動スイッチ
24 押出デバイス
25 押出ピストン
26 押出ピストン
27 スタンプ部材
28 スタンプ部材
29 プッシュロッド
30 駆動デバイス、電気モーター
31 電源、蓄電器
33 制御デバイス
40 カートリッジデバイス
41 第1のカートリッジ
42 第2のカートリッジ
43 本体
44 本体
45 第1の端壁
46 第1の端壁
47 第2の端壁
48 第2の端壁
49 混合領域
50 端面
60 伝送デバイス
61 センサ
62 信号発生器
65 さらなる伝送デバイス
70 出力デバイス
72 記憶デバイス
A 軸方向
V 送り出し方向