(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】穿刺ロボット
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20240201BHJP
A61B 34/35 20160101ALI20240201BHJP
【FI】
A61M5/20 550
A61B34/35
(21)【出願番号】P 2019159638
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】517161119
【氏名又は名称】蓮見 賢一郎
(73)【特許権者】
【識別番号】517161120
【氏名又は名称】岩田 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 浩康
(72)【発明者】
【氏名】津村 遼介
(72)【発明者】
【氏名】柿間 薫
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-107298(JP,A)
【文献】特開2014-118(JP,A)
【文献】特開2012-223372(JP,A)
【文献】特開2000-116664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0223759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61B 34/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺針を用いて穿刺を行う穿刺ロボットであって、
所定方向に延びる第1基体と、
前記第1基体に連結されて、前記穿刺針の基端を保持し、前記穿刺針を所定方向に沿って振動させると共に、前記所定方向のまわりに回転させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、
前記第1基体に連結される第2基体と、
前記穿刺針の基端を保持する駆動軸と、
前記第2基体に取り付けられて、前記駆動軸を振動させると共に前記駆動軸の回転を許容する第1駆動部と、
前記第2基体に取り付けられて、前記駆動軸を回転させると共に前記駆動軸の振動を許容する第2駆動部と、を有
し、
前記第1駆動部は、前記第2基体に固定されて、前記振動のための振動力を生じさせる第1アクチュエータと、前記第1アクチュエータ及び前記駆動軸に連結されて、前記振動力を前記駆動軸に伝達する第1伝達部と、を有し、
前記第2駆動部は、前記第2基体に固定されて、前記回転のための回転力を生じさせる第2アクチュエータと、前記第2アクチュエータ及び前記駆動軸に連結されて、前記回転力を前記駆動軸に伝達する第2伝達部と、を有し、
前記第1伝達部は、
前記第1アクチュエータに接触する入力端と、前記駆動軸を挿通させる第1貫通孔を有する出力端と、を含む梁部と、
前記貫通孔に挿通された前記駆動軸を、前記出力端に対して前記所定方向に拘束すると共に、前記所定方向のまわりの回転を許す拘束部と、を含む、
穿刺ロボット。
【請求項2】
前記第2伝達部は、
前記第2アクチュエータに接続される回転伝達部と、
前記回転伝達部に接続されると共に、前記駆動軸を挿通させる第2貫通孔を有し、前記第2貫通孔に挿通された前記駆動軸を、前記所定方向のまわりに拘束すると共に、前記所定方向に沿った振動を許す回転駆動部と、を含む、請求項
1に記載の穿刺ロボット。
【請求項3】
前記駆動軸は、前記第1駆動部と連結される第1連結部と、前記第2駆動部と連結される第2連結部と、前記穿刺針が連結される針連結部と、を含み、
前記第2連結部は、前記第1連結部と前記針連結部との間に設けられる、請求項1
又は請求項2に記載の穿刺ロボット。
【請求項4】
前記穿刺針に接続されて、前記穿刺針に薬剤を提供する薬剤注入機構をさらに備え、
前記薬剤注入機構は、
前記薬剤を収容したシリンジを複数取り付けるシリンジ取り付け部を含むレボルバと、
前記シリンジに挿入されたプランジャを押圧する第3アクチュエータと、を有し、
前記レボルバ及び前記第3アクチュエータは、相対的に移動する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の穿刺ロボット。
【請求項5】
前記レボルバ及び前記第3アクチュエータの相対的な移動は、回転である、請求項
4に記載の穿刺ロボット。
【請求項6】
前記薬剤注入機構が固定される第3基体をさらに備え、
前記第3アクチュエータは、前記第3基体に固定され、
前記レボルバは、前記第3アクチュエータに対して回転する、請求項
4又は
5に記載の穿刺ロボット。
【請求項7】
前記駆動軸の先端に対して着脱可能に取り付けられて、前記穿刺針を保持する保持機構をさらに備える、請求項1~
6のいずれか一項に記載の穿刺ロボット。
【請求項8】
前記第1基体は、前記穿刺針と交差するように設けられたテーブルを含み、
前記穿刺針が挿通される貫通孔を有し、前記テーブルに配置されるガイドプレートと、
前記ガイドプレートを前記テーブルに対して着脱可能に保持する拘束機構と、をさらに備える、請求項1~
7のいずれか一項に記載の穿刺ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
患者への負担軽減の観点から、低侵襲な治療が検討されている。穿刺は、細い針を用いて患者の体内への薬物投与を行うものであり、低侵襲な方法として注目されている。この穿刺は、従来、熟練の技量を有する医師等により行われる。
【0003】
近年、穿刺が適用されるケースが拡大しつつあり、例えば身体の深部に存在する患部に対して穿刺を用いた治療が行われることがある。しかし、細い穿刺針を深部に存在する患部に確実に到達させるには、高度の技量を要する。そこで、ロボットによる穿刺が検討されている。例えば、特許文献1~4は、ロボットを用いて行われる穿刺に関する技術を開示する。
【0004】
特許文献1は、画像案内医療処置に関する技術を開示する。この処置では、リアルタイムに取得された医療画像を利用する。特許文献2、3は、穿刺支援装置を開示する。この装置は、超音波断層画像を利用して穿刺針の位置を確認しながら、穿刺を行う。特許文献4は、コンピュータ断層画像の取得時に用いられる注射装置を開示する。この装置は、薬液を保持したシリンジを複数備えている。そして、シリンジのそれぞれに、薬液を供給するためのアクチュエータが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2005-510289号公報
【文献】特開2015-154826号公報
【文献】特開2016-123794号公報
【文献】米国特許出願公開第2003/0171670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者の負担軽減に鑑みれば、より細い穿刺針を用いて、より短時間で施術を完了させることが望まれる。しかし、穿刺針が細くなるほど、挿入途中の穿刺針の動きが不安定になりやすい。その結果、X線画像やコンピュータ断層画像を得て、穿刺針の位置を確認しながら挿入を行うことになり、施術時間が増加してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、穿刺による負担を軽減可能な穿刺ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、穿刺針を用いて穿刺を行う穿刺ロボットであって、所定方向に延びる第1基体と、第1基体に連結されて、穿刺針の基端を保持し、穿刺針を所定方向に沿って振動させると共に、所定方向のまわりに回転させる駆動機構と、を備え、駆動機構は、第1基体に連結される第2基体と、穿刺針の基端を保持する駆動軸と、第2基体に取り付けられて、駆動軸を振動させると共に駆動軸の回転を許容する第1駆動部と、第2基体に取り付けられて、駆動軸を回転させると共に駆動軸の振動を許容する第2駆動部と、を有する。
【0009】
この穿刺ロボットは、穿刺針を回転及び/又は振動させる駆動機構を有する。そして、駆動機構は、第2基体に対して第1駆動部及び第2駆動部が取り付けられる。この構造によれば、それぞれの駆動機構は、第2基体によって支持されるので、それぞれの駆動機構の動作に際し、一方の駆動部が他方の駆動部に及ぼす影響を抑制し得る。そうすると、それぞれの駆動部における不要な負荷の増大が抑制されるので、挿入途中の穿刺針の動きをより安定化させることが可能となる。その結果、穿刺針をより短時間で患部に到達させやすくなるので、穿刺による負担を軽減することができる。
【0010】
一形態において、第1駆動部は、第2基体に固定されて、振動のための振動力を生じさせる第1アクチュエータと、第1アクチュエータ及び駆動軸に連結されて、振動力を駆動軸に伝達する第1伝達部と、を有し、第2駆動部は、第2基体に固定されて、回転のための回転力を生じさせる第2アクチュエータと、第2アクチュエータ及び駆動軸に連結されて、回転力を駆動軸に伝達する第2伝達部と、を有してもよい。この構造によれば、それぞれの駆動部が駆動軸に対して振動及び回転を同時に付与することができる。従って、挿入途中の穿刺針の動きがさらに安定化する。その結果、穿刺針をさらに短時間で患部に到達させやすくなるので、穿刺による負担をさらに軽減することができる。
【0011】
一形態において、第1伝達部は、第1アクチュエータに接触する入力端と、駆動軸を挿通させる第1貫通孔を有する出力端と、を含む梁部と、貫通孔に挿通された駆動軸を、出力端に対して所定方向に拘束すると共に、所定方向のまわりの回転を許す拘束部と、を含んでもよい。この構造によれば、駆動軸の回転を許容し、且つ、駆動軸に振動を付与する動作を簡易な構成で実現することができる。
【0012】
一形態において、第2伝達部は、第2アクチュエータに接続される回転伝達部と、回転伝達部に接続されると共に、駆動軸を挿通させる第2貫通孔を有し、第2貫通孔に挿通された駆動軸を、所定方向のまわりに拘束すると共に、所定方向に沿った振動を許す回転駆動部と、を含んでもよい。この構造によれば、駆動軸の振動を許容し、且つ、駆動軸に回転を付与する動作を簡易な構成で実現することができる。
【0013】
一形態において、駆動軸は、第1駆動部と連結される第1連結部と、第2駆動部と連結される第2連結部と、穿刺針が連結される針連結部と、を含み、第2連結部は、第1連結部と針連結部との間に設けられてもよい。この構成によれば、駆動軸を良好な状態で振動及び/又は回転させることができる。
【0014】
一形態において、穿刺ロボットは、穿刺針に接続されて、穿刺針に薬剤を提供する薬剤注入機構をさらに備え、薬剤注入機構は、薬剤を収容したシリンジを複数取り付けるシリンジ取り付け部を含むレボルバと、シリンジに挿入されたプランジャを押圧する第3アクチュエータと、を有し、レボルバ及びアクチュエータは、相対的に移動してもよい。この構成によれば、穿刺針に対して複数のシリンジが接続される。その結果、穿刺針とシリンジとの接続を解除して、新たなシリンジを接続するといった交換作業を不要とすることが可能になる。従って、施術時間をさらに短縮することができる。
【0015】
一形態において、レボルバ及び第3アクチュエータの相対的な移動は、回転であってもよい。この構成によれば、薬剤注入機構を小型化することができる。
【0016】
一形態において、穿刺ロボットは、薬剤注入機構が固定される第3基体をさらに備え、第3アクチュエータは、第3基体に固定され、レボルバは、第3アクチュエータに対して回転してもよい。この構成によれば、アクチュエータによって押圧されるレボルバの選択時に、レボルバが回転する。この回転によって、シリンジ内の薬液を撹拌することができる。
【0017】
一形態において、穿刺ロボットは、駆動軸の先端に対して着脱可能に取り付けられて、穿刺針を保持する保持機構をさらに備えてもよい。この構成によれば、穿刺針と駆動軸との連結を速やかに解除することができる。
【0018】
一形態において、第1基体は、穿刺針と交差するように設けられたテーブルを含み、穿刺針が挿通される貫通孔を有し、テーブルに配置されるガイドプレートと、ガイドプレートをテーブルに対して着脱可能に保持する拘束機構と、をさらに備えてもよい。この構成によれば、穿刺針と駆動機構との連結を速やかに解除することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、穿刺による負担を軽減可能な穿刺ロボットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、穿刺システムの適用例を示す図である。
【
図2】
図2は、穿刺装置及び薬剤注入装置を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、穿刺装置の振動ユニットの断面を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、穿刺装置の回転ユニットを示す斜視図である。
【
図6】
図6の(a)部は回転ユニットのギヤを示す平面図であり、
図6の(b)部はシャフトを示す斜視図である。
【
図8】
図8の(a)部は穿刺針着脱機構における連結状態を示す平面図であり、
図8の(b)部は穿刺針着脱機構における解除状態を示す平面図である。
【
図10】
図10の(a)部は、穿刺針ガイドにおける固定状態を示す平面図であり、
図10の(b)部は穿刺針ガイドにおける解除状態を示す平面図である。
【
図12】
図12の(a)部、(b)部及び(c)部は、回転ユニットのギヤの変形例を示す平面図である。
【
図13】
図13の(a)部及び(b)部は、薬剤注入装置の変形例を示す図である。
【
図14】
図14の(a)部、(b)部、(c)部及び(d)部は、薬剤注入装置の別の変形例を示す図である。
【
図15】
図15は、変形例に係る穿刺針固定具を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、変形例に係る穿刺針固定具の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
近年、生体組織診断、ラジオ焼灼術及び薬剤注入などの穿刺治療の実績は、コンピュータ断層撮像法(CT:Computed Tomography)、核磁気共鳴画像法(MRI:Magnetic Resonance Imaging)、X線透視撮影法(X-ray Fluoroscopy)、超音波画像法などの原理を利用する医用画像診断装置を用いることで向上しつつある。しかし、現在行われている医用画像診断装置を利用する穿刺治療は、いくつかの課題を有する。
【0023】
第1の課題は、施術に際し、一定の技量が必要となる点である。穿刺治療には、細い穿刺針を用いる。その結果、患者に対する侵襲性が低く、患者に与える負担を抑制できる。しかし、細い穿刺針は非常にたわみやすい。このたわみに起因して、患者の体内に存在する目標への正確な穿刺が困難になる。従って、施術に際しては、熟練の技術を要する。第2の課題は、撮影室と操作室との往復による施術時間の増加である。医用画像診断装置を利用した施術では、撮像と針先位置の確認とを繰り返す。この繰り返しによって施術完了までに相当の時間を要する。
【0024】
そこで、熟練の技術を要することなく行い得る高精度な自動穿刺と、遠隔操作による施術時間の短縮と、を実施可能な穿刺システムが望まれている。
【0025】
上記の事情に鑑み、本願発明者らは、鋭意検討を重ねることにより、振動及び回転を穿刺針に付与することによる直線的な穿刺動作と、不測の事態が発生した際には速やかにロボットと穿刺針を切り離せる分離動作と、施術に必要となる複数種類の薬剤を選択的に注入できる注入動作と、を行い得る穿刺システムを開発するに至った。
【0026】
この穿刺システムは、
図1に示す施術環境に適用できる。患者201は撮像室202に入室し、操作者203は操作室204に入室する。撮像室202には、例えば、コンピュータ断層画像撮像装置206、ベッド207及び穿刺システム1の主要部(穿刺支援ロボットシステム2)が配置されている。操作室204は、壁208によって撮像室202から隔てられている。操作室204にも穿刺システム1の操作端末3が配置されている。つまり、穿刺システム1は、互いに隔てられた部屋に跨って配置される。操作者203は、穿刺システム1を操作及び/または監視しながら、施術を行う。施術中に要する処置は、操作室204に配置された穿刺システム1の操作端末3によって行う。その結果、施術の開始から終了にわたって、操作者203は、基本的に撮像室202に立ち入る必要がない。
【0027】
<穿刺支援ロボットシステム>
穿刺支援ロボットシステム2は、穿刺ロボット4と、ロボット制御装置6と、を有する。穿刺ロボット4は、複数の関節を有する多自由度のアーム型ロボットである。この穿刺ロボット4は、ロボット制御装置6によって制御される。ロボット制御装置6は、穿刺プランニング装置7から提供された情報に基づいて、穿刺ロボット4に制御信号を提供する。
【0028】
<ロボット制御装置>
ロボット制御装置6は、穿刺プランニング装置7から提供された情報に基づいて、穿刺ロボット4を動作させる。また、ロボット制御装置6は、穿刺ロボット4に設けられた種々のセンサの情報に基づいて、穿刺針8の状態を得る。ロボット制御装置6は、例えば、コンピュータであり、当該コンピュータが所定のプログラムを実行することにより、上記の機能が実現される。
<穿刺プランニング装置>
穿刺プランニング装置7は、穿刺支援ロボットシステム2の動作条件を決めるコンピュータシステムである。穿刺プランニング装置7は、撮像室202に配置されてもよいし、撮像室202の外(例えば操作室204)に配置されてもよい。穿刺プランニング装置7は、患者の断層撮影画像などの画像情報を利用して、穿刺パスと、穿刺制御量と、を算出する。ここで「穿刺パス」とは、体表上の穿刺開始位置と穿刺目標とを結んだ線であり、穿刺針8を通過させる軌跡をいう。また、「穿刺パスプランニング」とは、穿刺針8のたわみ(穿刺目標に針先が到達した際の誤差)が最も小さくなる穿刺パスを設定することをいう。さらに、「穿刺制御」とは、穿刺針8のたわみを低減するための穿刺針8の動き制御をいう。また、「穿刺制御プランニング」とは、穿刺制御において、通過する組織に応じて、たわみを最小化する最適な制御パラメータを設定することをいう。
【0029】
穿刺パスに沿って穿刺針8を刺し込むことにより、目標とのずれが最小化される。すでに述べたように、穿刺針8は、極めて細く(例えば直径0.53ミリメートル)であり、たわみやすい。さらに、穿刺針8は、軸線方向に沿った力を正確に加えたとしても、その先端の形状によりたわんでしまう。このようなたわみを抑制するために、穿刺針8に対して軸線方向に沿った振動あるいは軸線まわりに交互に回動する回転振動を与える。これらの穿刺針8の動作により、先端形状に起因する力の不均一などが解消される。従って、穿刺パスからの穿刺針8のずれをさらに抑制することができる。
【0030】
穿刺プランニング装置7は、当該穿刺パス及び穿刺制御量を穿刺支援ロボットシステム2に提供する。穿刺プランニング装置7から穿刺支援ロボットシステム2への情報提供の態様は、特に限定されない。穿刺プランニング装置7は、穿刺支援ロボットシステム2に対して有線または無線により接続され、穿刺プランニング装置7から穿刺支援ロボットシステム2へ情報が伝達されてもよい。また、穿刺プランニング装置7が生成した情報は、メモリーカードといった情報記録媒体に記録され、当該媒体の情報を穿刺支援ロボットシステム2に読み込ませることにより伝達されてもよい。
【0031】
穿刺プランニング装置7は1台以上のコンピュータを有する。穿刺プランニング装置7が複数台のコンピュータを有する場合には、後述する穿刺プランニング装置7の各機能要素は分散処理により実現されてもよい。穿刺プランニング装置7を構成する個々のコンピュータの種類は限定されない。例えば、据置型または携帯型のパーソナルコンピュータであってもよい。また、ワークステーションを用いてもよいし、高機能携帯電話機(スマートフォン)や携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末を用いてもよい。あるいは、様々な種類のコンピュータを組み合わせて穿刺プランニング装置7を構築してもよい。穿刺プランニング装置7が複数台のコンピュータによって構成される場合には、これらのコンピュータはインターネットやイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続される。
【0032】
<ロボット>
穿刺ロボット4は、ロボットフレーム9と、ロボットアーム11(第3基体)と、穿刺装置12と、薬剤注入装置13(薬剤注入機構)と、を有する。
【0033】
なお、以下の説明において説明の便宜のためXYZ軸を定義する。Z軸は、穿刺針8の延在方向であるとする。つまり、Z軸は穿刺針8が往復振動する方向であるともいえるし、穿刺針8の回転軸線であるともいえる。X軸及びY軸は当該Z軸に直交する軸線である。これらXYZ軸は、穿刺装置12及び薬剤注入装置13に対して定義される座標系であるとする。従って、ロボットアーム11によって穿刺装置12及び薬剤注入装置13が移動すると、当該座標系も穿刺装置12及び薬剤注入装置13の移動に伴うものとする。つまり、座標系は、穿刺ロボット4が配置された空間に対して定義された絶対的な座標系ではない。
【0034】
ロボットフレーム9は、穿刺ロボット4の架台であり、ベッド207及び患者201を跨ぐように配置される。ロボットフレーム9は、ローラーを備えており、患者201の体長方向に移動可能である。
【0035】
ロボットアーム11は、穿刺装置12及び薬剤注入装置13を所望の位置に配置する。つまり、ロボットアーム11は、第1の端部がロボットフレーム9に固定され、第2の端部に穿刺装置12及び薬剤注入装置13が配置されている。より詳細には、第2の端部には、薬剤注入装置13が固定されている。ロボットアーム11は、アクチュエータ、モータ、振動素子といった駆動ユニットを有する。さらに、ロボットアーム11は、穿刺装置12の位置及び姿勢を得るためのいくつかの角度センサを有してもよい。
【0036】
<穿刺装置>
図2に示すように、穿刺装置12は、穿刺針8の動作を制御する。この穿刺針8の動作は、穿刺針8が単位時間あたりに穿刺パスに沿って移動する距離を示す移動速度(穿刺速度)と、穿刺針8の軸線方向に沿った振動の周波数(穿刺周波数:第1周波数)と、軸線のまわりの回転速度(第2周波数)と、を含む。なお、穿刺装置12は、動作対象として、穿刺速度及び穿刺周波数を選択し、回転速度を選択しなくてもよい。また、穿刺装置12は、動作対象として、穿刺速度及び回転速度を選択し、振動周波数を選択しなくてもよい。この「選択しない」とは、例えば、回転速度または動作周波数を一定値に保持するものとしてよい。この構成によれば、穿刺装置12は、穿刺針8へ振動と回転とを同時あるいは選択的に付与する。その結果、穿刺装置12は、穿刺針8のたわみを低減し、直線的な穿刺を実現し得る。
【0037】
図3に示すように、穿刺装置12は、直線駆動機構16と、振動回転駆動機構17(駆動機構)と、安全着脱機構51と、を有する。シャフト14は、その下端に安全着脱機構51を介して穿刺針8を保持する。直線駆動機構16は、振動回転駆動機構17を介してシャフト14をその軸線の方向に沿って直線状に移動させる。この直線駆動機構16による穿刺針8の移動により、穿刺針8は、患者201に刺し込まれる。振動回転駆動機構17は、シャフト14を介して、穿刺針8に振動及び回転を付与する。安全着脱機構51は、必要に応じて直線駆動機構16及び振動回転駆動機構17から穿刺針8を切り離す。
【0038】
<直線駆動機構>
直線駆動機構16は、主要な構成要素として、メインベース19(第1基体)と、リニアモータ21と、テーブル22と、を有する。
【0039】
メインベース19は、直線駆動機構16、ひいては穿刺装置12の基礎となる部材である。メインベース19は、Z軸方向(所定方向)に延びる矩形板状の部材である。メインベース19の裏面には薬剤注入装置13が固定されている(
図2参照)。メインベース19の主面にはリニアモータ21及びテーブル22、さらには、振動回転駆動機構17及び安全着脱機構51が配置されている。
【0040】
リニアモータ21は、Z軸方向に沿った直線移動のための駆動源である。リニアモータ21は、ガイド部23とモータ部24と、を有する。ガイド部23は、テーブル22をZ軸方向に沿って案内する。モータ部24は、テーブル22をZ軸方向に沿って移動させる駆動力を発生させる。
【0041】
テーブル22は、モータ部24から駆動力を受けて、ガイド部23によってZ軸方向に沿って往復移動する。テーブル22には、振動回転駆動機構17と安全着脱機構51の一部とが設けられる。従って、テーブル22が移動すると、振動回転駆動機構17と安全着脱機構51の一部とがテーブル22の移動に伴う。その結果、テーブル22が負のZ軸方向(下向き)に移動すると、穿刺針8は患者201の体内に刺し込まれる。その逆に、テーブル22が正のZ軸方向(上向き)に移動すると、穿刺針8は患者201の体内から引き抜かれる。
【0042】
<振動回転駆動機構>
振動回転駆動機構17は、主要な構成要素として、シャフト14(駆動軸)と、サブベース26(第2基体)と、振動ユニット27(第1駆動部)と、回転ユニット28(第2駆動部)と、を有する。
【0043】
<シャフト>
シャフト14は、Z軸方向に延びる棒状部材であり、その下端には後述する穿刺針固定具48を介して穿刺針8が取り付けられている。シャフト14は、振動回転駆動機構17に連結されて、振動回転駆動機構17から提供される駆動力(振動力及び回転力)を穿刺針8に伝達する。さらに、シャフト14は、振動回転駆動機構17を介して直線駆動機構16に連結されて、直線駆動機構16から提供される駆動力を穿刺針8に伝達する。
【0044】
サブベース26は、振動ユニット27と回転ユニット28と、を支持する。具体的には、サブベース26は、テーブル22に連結されるとともに、振動ユニット27と回転ユニット28とが固定されている。この構成によれば、テーブル22が移動するとサブベース26が移動する。そして、サブベース26上の振動ユニット27及び回転ユニット28も移動する。また、振動ユニット27は、回転ユニット28とは異なる位置に固定されている。換言すると、振動ユニット27と回転ユニット28とは、互いに並列にサブベース26に固定されている。つまり、振動回転駆動機構17は、サブベース26に振動ユニット27が固定されて、さらに振動ユニット27に対して回転ユニット28が固定されるといった直列接続構造ではない。
【0045】
<振動ユニット>
図4に示す振動ユニット27は、シャフト14に対してZ軸方向に沿った振動を提供する。換言すると、振動ユニット27は、穿刺針8の軸線方向(Z軸方向)に沿った振動を提供する。振動ユニット27は、シャフト14の上端側に取り付けられている。換言すると、振動ユニット27は、サブベース26の主面上に配置されている。
【0046】
振動ユニット27は、主要な構成要素として、ピエゾモータ29(第1アクチュエータ)と、振動伝達部31(第1伝達部)と、を有する。ピエゾモータ29は、振動のための力を発生させ、振動伝達部31は当該力をシャフト14に伝達する。
【0047】
ピエゾモータ29は、与えられる電圧に応じて変形するピエゾ素子を含み、当該ピエゾ素子の変形によって振動のための力が発生する。つまり、振動の態様は、ピエゾモータ29に与えられる電圧によって制御する。例えば、ピエゾモータ29に与えられる電圧の周波数によって、穿刺周波数を制御する。
【0048】
ピエゾモータ29は、略直方体形状を呈するが、その外形形状には特に制限はない。ピエゾモータ29は、サブベース26の主面に固定される。また、ピエゾモータ29の出力面29aは、振動伝達部31に連結される。つまり、ピエゾモータ29は、サブベース26を基礎として振動を生じさせる。
【0049】
振動伝達部31は、Z軸方向においてシャフト14を拘束する。つまり、振動伝達部31は、Z軸方向に沿った振動をシャフト14に提供する。一方、振動伝達部31は、Z軸のまわりにおけるシャフト14の回転を許す。
【0050】
振動伝達部31は、主要な構成要素として、振動梁32(梁部)と、拘束部35と、を有する。
【0051】
振動梁32は、Y軸方向に延びる板状の部材である。振動梁32の基端32c(入力端)は、ピエゾモータ29に連結されている。振動梁32の先端32b(出力端)には、上ベアリング33、下ベアリング34、上拘束円盤36及び下拘束円盤37が配置される。さらに、振動梁32の先端側には、貫通孔32a(第1貫通孔)が設けられる。この貫通孔32aには、シャフト14の連結部14r(第1連結部)が挿通される。貫通孔32aの内径は、シャフト14の外径よりも大きい。つまり、貫通孔32aの内周面と、シャフト14の外周面との間には、隙間が設けられる。
【0052】
拘束部35は、上ベアリング33と、下ベアリング34と、上拘束円盤36と、下拘束円盤37と、を有する。
【0053】
上ベアリング33は、いわゆるスラストベアリングであり、回転軸線(Z軸方向)に沿う荷重を受ける。上ベアリング33の下ハウジングは、振動梁32の主面に接触し、上ベアリング33の上ハウジングは、上拘束円盤36に接触する。つまり、上ベアリング33は、振動梁32と上拘束円盤36との間に挟み込まれる。
【0054】
上拘束円盤36は、上ベアリング33の上に配置される。そして、上拘束円盤36は、シャフト14に対して固定されている。具体的には、上拘束円盤36は、シャフト14に対してZ軸方向に相対的に移動しない。また、上拘束円盤36は、シャフト14に対してZ軸のまわりに回転することもない。例えば、上拘束円盤36は、貫通孔36aを有する円環形状を呈し、貫通孔36aにはシャフト14の上端側が挿通される。貫通孔36aの内径は、シャフト14の外径と略同じであるか、わずかに大きい。そして、上拘束円盤36は、外周面から貫通孔36aの内周面に向けて延びる貫通したねじ穴36bを有する。このねじ穴36bにボルト36Aがねじ込まれる。ボルト36Aの先端がシャフト14の外周面に押し当てられることにより、上拘束円盤36がシャフト14に固定される。この構成によれば、シャフト14の荷重は、上拘束円盤36に加わり、さらに上拘束円盤36は、上ベアリング33を負のZ軸方向(下方向)に押圧する。つまり、シャフト14は、上拘束円盤36を支持点として吊り下げられているともいえる。
【0055】
下ベアリング34も、いわゆるスラストベアリングである。下ベアリング34の上ハウジングは、振動梁32の裏面に接触し、下ベアリング34の下ハウジングは、下拘束円盤37に接触する。つまり、下ベアリング34は、振動梁32と下拘束円盤37との間に挟み込まれる。
【0056】
下拘束円盤37は、下ベアリング34の下に配置される。そして、下拘束円盤37は、シャフト14に対して固定されている。具体的には、下拘束円盤37は、シャフト14に対してZ軸方向に相対的に移動しない。また、下拘束円盤37は、シャフト14に対してZ軸のまわりに回転することもない。下拘束円盤37は、その単体の構成は、上拘束円盤36と同じである。下拘束円盤37も、貫通孔37aと、ねじ穴37bと、を有する。そして、ねじ穴37bにはボルト37cがねじ込まれる。この構造により、下拘束円盤37は、シャフト14に固定される。
【0057】
この構成によれば、ピエゾモータ29の出力面29aが変形し、振動梁32を正及び負のZ軸方向に振動させる。振動梁32が正のZ軸方向(上方向)に移動すると、上ベアリング33、下ベアリング34、上拘束円盤36及び下拘束円盤37も上方向に移動する。上拘束円盤36及び下拘束円盤37には、シャフト14が固定されているので、上拘束円盤36及び下拘束円盤37の移動に伴ってシャフト14も上方向へ移動する。同様に、振動梁32が負のZ軸方向(下方向)に移動すると、上ベアリング33、下ベアリング34、上拘束円盤36及び下拘束円盤37も下方向に移動する。従って、上拘束円盤36及び下拘束円盤37の移動に伴ってシャフト14も下方向へ移動する。これら正のZ軸方向への移動と、負のZ軸方向への移動と、が繰り返されることにより、穿刺針8には、Z軸方向に沿った往復振動が提供される。
【0058】
一方、上拘束円盤36は、ボルト34cによってシャフト14に固定されているので、シャフト14がZ軸のまわりに回転すると、上拘束円盤36も当該回転に伴う。上拘束円盤36と振動梁32との間には、上ベアリング33が挟み込まれているので、上拘束円盤36の回転は、上ベアリング33によって縁が切られ、振動梁32に伝わらない。つまり、上拘束円盤36の回転は、上ベアリング33が有するころの回転に変換される。従って、上拘束円盤36に接するベアリングケースは、上拘束円盤36と共に回転するが、振動梁32に接する別のベアリングケースは、回転しない。
【0059】
下ベアリング34においても、同様の作用が生じる。つまり、シャフト14がZ軸のまわりに回転すると、下拘束円盤37も回転する。しかし、下拘束円盤37の回転は、下ベアリング34の作用により、振動梁32に伝わることはない。
【0060】
<回転ユニット>
図5に示すように、回転ユニット28は、シャフト14に対してトルクを提供する。換言すると、回転ユニット28は、Z軸まわりの穿刺針8の回転を提供する。回転ユニット28は、サブベース26の裏面側に配置されて、シャフト14の上端と下端との間に連結されている。換言すると、回転ユニット28は、振動ユニット27よりも下方(患者201側)に配置されている。
【0061】
回転ユニット28は、主要な構成要素として、モータ38(第2アクチュエータ)と、トルク伝達部39(第2伝達部)と、を有する。モータ38は、回転のためのトルクを発生させ、トルク伝達部39は当該トルクをシャフト14に伝達する。
【0062】
モータ38は、アダプタ41を介してサブベース26の裏面に固定されている。モータ38は、例えば、ステッピングモータを採用してよい。モータ38の出力軸は、Z軸と並行であり、出力軸はサブベース26の裏面に対面する。そして、出力軸には、トルク伝達部39が連結される。モータ38は、ロボット制御装置6から送信される制御信号に応じて、回転方向及び回転速度が制御される。例えば、ロボット制御装置6は、出力軸を時計方向に180度回転させたのちに、半時計方向に180度回転させる。
【0063】
トルク伝達部39は、複数(4個)のギヤ42、43、44、46を含む。ギヤ42、43、44は、ギヤユニット45を構成する。ギヤ42は、出力軸に固定される。ギヤ43は、ギヤ42にかみ合わされる。ギヤ44は、ギヤ43にかみ合わされる。ギヤ43、44は、サブベース26の裏面から突出するギヤシャフトに刺し込まれている。ギヤ46は、ギヤ44にかみ合わされる。ギヤ46は、アキシャルベアリング47(
図4参照)を介してサブベース26の裏面に取り付けられている。アキシャルベアリング47を介しているので、ギヤ46は、サブベース26に対して回転することができる。
【0064】
図6の(a)部に示すように、ギヤ46(回転駆動部)は、孔46a(第2貫通孔)を有する。この孔46aは、シャフト14(
図6の(b)部参照)の断面形状に応じた形状を有する。具体的には、シャフト14は、孔46aに配置される軸部14a(第2連結部)を有する。この軸部14aの断面形状は、例えば、略三角形である。なお、
図6の(b)部に示す軸部14aは、正三角形の頂部に面取りが設けられている。そして、孔46aの形状も、軸部14aの断面形状に応じた略三角形である。ただし、孔46aの開口面積は、軸部14aの断面積よりも大きい。つまり、軸部14aとギヤ46との間には、隙間が設けられる。
【0065】
なお、回転駆動部は、回転体部に接続されると共に、駆動軸を挿通させる第2貫通孔を有し、第2貫通孔に挿通された駆動軸を、所定方向のまわりに拘束すると共に、所定方向に沿った振動を許すものであればよい。例えば、回転駆動部は、ギヤ46に代えて、プーリや、磁石のような非接触駆動部を採用してもよい。
【0066】
このような構成によれば、ギヤ46が回転すると、孔46aの内面の一部が軸部14aに押圧される。つまり、軸部14aは、ギヤ46に対してZ軸方向のまわりに拘束されている。この押圧個所は、全部で3か所である。この押圧個所において、ギヤ46が軸部14aを押圧することにより、トルクが伝達される。一方、軸部14aとギヤ46との間には隙間が設けられているので、Z軸方向において、軸部14aはギヤ46に対して縁が切られている。つまり、軸部14aは、Z軸方向においてギヤ46に拘束されていない。その結果、軸部14aがZ軸方向に移動しても、その移動に伴ってギヤ46が移動することはない。つまり、振動ユニット27によって、シャフト14がZ軸方向に振動しても、その振動は軸部14aとギヤ46の孔46aとの間で伝達されない。従って、回転ユニット28の動作に、振動ユニット27が直接的に影響することはない。
【0067】
上述した穿刺装置12に関する説明をまとめると以下のとおりである。
【0068】
穿刺装置12は、軸方向の振動と軸周りの回転を両立し、穿刺するための機構である。穿刺装置12において、穿刺針8を保持するシャフト(シャフト14)は、多角形部分(例えば三角形、軸部14a)を有する。シャフトは、振動を伝達するための部材である振動梁32を介して振動アクチュエータ(ピエゾモータ29)に接続される。シャフトは、振動梁32に対して回転可能であって、振動アクチュエータの振動が振動梁32を介して提供される。振動アクチュエータは、ベース部材(メインベース19)に固定される。ベース部材は、直動アクチュエータ(リニアモータ21)の移動部(テーブル22)に連結されている。回転を伝達するための部材(ギヤ89)は、中央にシャフトの多角形部分(軸部14a)にはめあう形状の孔46aを有する。シャフト(シャフト14)の多角形部(軸部14a)と、ギヤ46の孔46aは、シャフトが軸方向に自在に運動できるよう微小な隙間を有する。部材(ギヤ46)は、他の回転伝達体(ギヤ42、43、44)を介して回転アクチュエータ(モータ38)に接続される。回転アクチュエータ(モータ38)は、ベース部材(メインベース19)に固定される。
【0069】
上記の穿刺装置12は、軸方向の振動と軸まわりの回転とを両立する振動回転両立機構である。振動回転両立機構は、ベース部材(メインベース19)と、穿刺針8を保持するシャフト(シャフト14)と、振動を伝達するための振動梁32と、回転を伝達するギヤ42、43、44、46と、振動アクチュエータ(ピエゾモータ29)と、回転アクチュエータ(モータ38)と、を有する。シャフト14に設けられた多角形部分(軸部14a)は、ギヤ46に設けられた孔46aにかみ合う。この構成により、回転アクチュエータからギヤ46に伝達された回転がシャフト14へ提供される。回転を伝達するためには、シャフト14が正逆各方向に回転する際に、ギヤ46に衝突する箇所が少なくとも一箇所ずつあればよい。
【0070】
シャフト14の軸部14aにおける断面形状は、孔46aの形状に対して相似図形でなくてもよい。上記、多角形部分(軸部14a)と軸部14aにかみ合う孔46aの間には、シャフト14がZ軸方向に自在にすべることができる微小な隙間が存在する。この隙間によって、シャフト14の振動がギヤ46に阻害されることがない。さらに、スラスト型の上ベアリング33及び下ベアリング34を用いてシャフト14と振動アクチュエータ(ピエゾモータ29)を接続する。この接続により、シャフト14の回転を阻害することなく振動を伝達する。
【0071】
なお、振動と回転を両立する構成として、振動アクチュエータと回転アクチュエータを直列に接続する構成もあり得る。そして、振動アクチュエータは、回転アクチュエータごと振動させる。この構成では、振動させる物体の重量が増大し、高速での振動が不可能となる。
【0072】
また、本実施形態の穿刺装置12の構成は、要するに、以下のとおりである。
【0073】
穿刺装置12は、穿刺針8を装着するための穿刺針固定具48(針固定部)と、穿刺針固定具48に穿刺針8の軸方向の振動及び針の軸を回転軸とする回転を付加するための振動回転駆動機構17(振動回転両立機構)と、振動回転駆動機構17をZ軸方向に駆動する直線駆動機構16(駆動部)と、穿刺針8が直進可能であるように穿刺針8に対して垂直な面上での自由度を制限するための穿刺針ガイド49と、穿刺針8を電気的もしくは物理的に可能な安全着脱機構51と、を有する。
【0074】
振動回転駆動機構17(振動回転両立機構)は、サブベース26(ベース部材)と、サブベース26に対して相対的に移動しないよう固定されたピエゾモータ29(振動アクチュエータ)と、サブベース26に対して相対的に運動するようにピエゾモータ29に固定された振動梁32と、振動梁32に対しZ軸方向には相対的に並進運動しないがZ軸のまわりに回転可能に接続されたシャフト14と、サブベース26に対して相対的に運動しないよう固定されたモータ38(回転アクチュエータ)と、モータ38からシャフト14へ回転を伝達するギヤ46と、を有する。
【0075】
シャフト14は、その軸線のまわりにおいて非円形の断面形状を有する軸部14aを有する。
【0076】
<安全着脱機構>
図3に示すように穿刺針8は、シャフト14の先端に取り付けられた穿刺針固定具48を介してシャフト14に連結されている。この穿刺針固定具48は、穿刺針8をZ軸方向に沿って拘束するとともに、Z軸のまわりの回転も拘束する。従って、穿刺針8は、シャフト14の振動及び回転に伴って、振動及び回転することが可能になる。また、上記の穿刺針固定具48によれば、穿刺針8は、その基端が穿刺針固定具48に保持され、先端は自由端とされる。そこで、穿刺ロボット4では、穿刺針8の先端近傍、より詳細には患者201の皮膚上に配置される穿刺針ガイド49によって、穿刺針8を拘束する。この拘束とは、Z軸方向と直交する方向(X軸方向及びY軸方向)への拘束である。この穿刺針ガイド49によれば、患者201の皮膚に対して穿刺針8を所望の角度(例えば垂直)に維持することができる。穿刺針ガイド49は、メインベース19の下端部に取り付けられている。従って、メインベース19に対してサブベース26が負のZ軸方向に移動したとき、穿刺針8は当該移動に伴うが、穿刺針ガイド49は、サブベース26の移動に伴わない。その結果、穿刺針8は、施術中において、支持され続ける。
【0077】
ところで、穿刺中に患者201が不意に動いた場合や様態が急変した場合など、穿刺ロボット4から穿刺針8を切り離す必要が生じることがありえる。そして、切り離した後に、穿刺ロボット4を患者201から退避させて、患者201の安全を確保する。このような観点から、穿刺ロボット4は、穿刺針8を速やかに切り離すための、安全着脱機構51(保持機構)と、ガイド着脱機構52(拘束機構)と、を有する。
【0078】
<穿刺針固定具>
図7に示すように、穿刺針固定具48は、第1アダプタ53と、第2アダプタ54と、を有する。第1アダプタ53及び第2アダプタ54は、ともに円筒形状を呈する。第1アダプタ53及び第2アダプタ54は、それらの軸線が穿刺針8の軸線と重複するように配置されている。
【0079】
第1アダプタ53は、ケース56と、ケース56に配置された安全着脱機構51と、を有する。ケース56は、円筒状の形状を呈し、上端側にはシャフト14の下端が固定され、下端側には第2アダプタ54が着脱可能に連結される。なお、
図7では、第1アダプタ53の内部構成を図示するために、第1アダプタ53の上端側に固定されるシャフト14のフランジ14f(針連結部)(
図3参照)の図示を省略している。ケース56の外周面には、一対の平面部57が設けられている。平面部57は、第1アダプタ53の軸線を挟んで対向する位置に設けられている。当該平面部57にはケース56の内部と挿通する貫通孔58が設けられ、安全着脱機構51の一部が当該貫通孔58から突出する。
【0080】
貫通孔58は、ケース56の下端側に設けられている。貫通孔58は、Z軸方向に延びる第1部分58aと、当該第1部分58aの中腹から円周方向に延びる第2部分58bと、を含む。第1部分58aには、第2アダプタ54の一部が差し込まれると共に、当該第2アダプタ54と係合する安全着脱機構51の一部(爪61e)も配置される。第2部分58bには、安全着脱機構51の別の一部(解除用ボタン61c)が差し込まれる。
【0081】
図8の(a)部に示すように、安全着脱機構51は、一対のリンク機構59を有する。リンク機構59は、レバー61と、リニアモータ62と、を有する。レバー61は、平面視して略L字状を呈し、第1辺部61aと第2辺部61bと、を有する。第1辺部61aは、ケース56の内部から貫通孔58を介してケース56の外部へ延びる。第1辺部61aは、直線形状であってもよいし、円弧状であってもよい。第1辺部61aの先端は、貫通孔58から突出し、解除用ボタン61cとしての機能を奏する。
【0082】
第2辺部61bは、ケース56内に配置されている。この第2辺部61bは、直線形状であってもよいし、平面視して一か所または複数個所の折り曲げ部を有していてもよい。そして、第1辺部61aと連続する端部と先端との間に、回動部61dを有する。回動部61dには、ねじりばねが設けられている。このねじりばねは、第1辺部61aの解除用ボタン61cが外側へ突出する向きのトルクT1を生じさせる。
【0083】
さらに、レバー61は、第2辺部61bに設けられた爪61eを有する。爪61eは、回動部61dと第1辺部61aが突出する端部との間に設けられる。この爪61eは、Z軸方向と交差する方向に突出し、貫通孔58の内部に配置される。貫通孔58の第1部分58aに挿し込まれる第2アダプタ54には、係合孔64aが設けられている。爪61eは、この係合孔64aに挿入される。この爪61e及び係合孔64aによって、第1アダプタ53に第2アダプタ54が連結される。
【0084】
リニアモータ62は、出力軸62aがその軸線方向に往復移動する。出力軸62aの先端は、レバー61の第2辺部61bにおける先端近傍に当接する。なお、出力軸62aは、突出させた状態において、レバー61を押圧していればよく、縮めた状態では、出力軸62aの先端はレバー61に触れていてもよいし、触れていなくてもよい。出力軸62aがレバー61を押圧すると(
図8の(b)部参照)、ねじりばねのトルクとは逆向きのトルクT2を生じる。レバー61がトルクT2によって回転すると、爪61eがケース56側に退避するので、爪61eと係合孔64aとの係合が解除される。従って、第1アダプタ53と第2アダプタ54との連結が解除される。
【0085】
第2アダプタ54は、穿刺針8を第1アダプタ53に連結する。第2アダプタ54は、略円筒形状を有する。第2アダプタ54の上端は、第1アダプタ53の下端に着脱可能に連結される。具体的には、第2アダプタ54の上端には、一対の連結突起部64が設けられている。連結突起部64は、Z軸方向に延びる。そして、連結突起部64は、第1アダプタ53の貫通孔58に挿入される。さらに連結突起部64には、矩形状の係合孔64aが設けられている。上述したように、この係合孔64aには、安全着脱機構51の爪61eが差し込まれる。
【0086】
図5に示すように、第2アダプタ54の下端は、穿刺針8を有する針ユニット66を着脱可能に保持する。針ユニット66は、穿刺針8と針アダプタ67とを有する。第2アダプタ54の下端には、当該針アダプタ67を着脱可能に保持する溝54aが設けられている。針アダプタ67は、Z軸方向に交差する方向から溝54aに挿し込まれている。
【0087】
穿刺針固定具48は、第1アダプタ53に第2アダプタ54が連結された第1の状態と、第1アダプタ53から第2アダプタ54が切り離された第2の状態と、を有する。この状態の切り替えは、リニアモータ62に提供する電気信号によって制御する。
【0088】
まず、第1の状態である連結状態(
図8の(a)部参照)では、リニアモータ62の出力軸62aを縮める状態とする。そうすると、レバー61は、ねじりばねのトルクT1によって、爪61eがケース56の貫通孔58に配置される。爪61eは、第2アダプタ54の係合孔64aにかみ合わされる。
【0089】
連結状態から第2の状態である解除状態(
図8の(b)部参照)に切り替えるためには、リニアモータ62の出力軸62aを伸ばした状態とする。そうすると、レバー61は、ねじりばねのトルクT1に抗して回動部61dのまわりに回転する(トルクT2の向きを参照)。その結果、爪部6eがケース56内に収納される。その結果、第1アダプタ53と第2アダプタ54との連結状態が解除される。なお、連結状態の解除は、解除用ボタン61cを手動で押し込むことによっても実現される。
【0090】
<穿刺針ガイド>
図9に示すように、穿刺針ガイド49は、針先ガイド68と、ガイドベース69と、ガイド着脱機構52と、を有する。針先ガイド68には、穿刺針8が挿通されて、穿刺針8を案内する。針先ガイド68は、着脱機構52によってガイドベース69上に着脱可能に保持される。
【0091】
針先ガイド68は、ガイドプレート72と、ガイドシリンダ73と、を有する。ガイドプレート72は、Z軸方向から平面視して、略正方形状を呈する。ガイドプレート72の裏面には、ガイドシリンダ73が固定されている。例えば、ガイドシリンダ73は、その中心軸線がガイドプレート72の中心軸線と重複してもよい。ガイドプレート72及びガイドシリンダ73には、穿刺針8を挿通させるガイド孔68aが設けられる。ガイド孔68aは、Z軸方向と交差する方向への穿刺針8の動きを拘束する。従って、ガイド孔68aの内径は、穿刺針8の外径よりも僅かに大きい。
【0092】
ガイドベース69は、針先ガイド68をメインベース19に取り付ける。ガイドベース69は、平面視して矩形形状を呈する板状部品である。そして、ガイドベース69は、2軸ステージ70を介してメインベース19に対して固定される。ガイドベース69は、針先ガイド68のための溝部69aを有する。この溝部69aには、針先ガイド68のガイドシリンダ73が配置される。従って、溝部69aの幅は、ガイドシリンダ73の外径よりも大きい。一方、ガイドベース69の主面には、ガイドプレート72の裏面が接触する。従って、溝部69aの幅は、ガイドプレート72の一辺の長さよりも短い。
【0093】
着脱機構52は、ガイドプレート72の端面を着脱可能に保持する。具体的には、着脱機構52は、ガイドプレート72の互いに対向する端面72a、72bを挟む。着脱機構52は、支持フレーム74と、可動レバー76と、リニアモータ77と、を有する。
【0094】
支持フレーム74は、Z軸方向から平面視して、略L字形状を呈する。支持フレーム74は、ガイドベース69に固定されており、ガイドベース69に対して移動及び回転しない。支持フレーム74の辺74aは、Y軸方向に延びる。換言すると、辺74aは、溝部69aの延びる方向(Y軸方向)に対して平行である。辺74aには、ガイドプレート72の端面72aが当接する。支持フレーム74の別の辺74bは、X軸方向に延びる。辺74bには、ガイドプレート72の端面72cが当接する。
【0095】
可動レバー76は、ガイドプレート72の端面72bを押圧する。可動レバー76は、回動部76aを有し、当該回動部76aによってガイドベース69に対して回転可能に連結される。具体的には、回動部76aは、可動レバー76の基端に設けられており、可動レバー76はこの回動部76aを回転軸線として回転する。そして、回動部76aには、ねじりバネ78(
図10参照)が設けられる。リニアモータ77は、出力軸62aがその軸線方向に沿って往復移動するリニアモータである。リニアモータ77は、ガイドベース69の主面に取り付けられている。
【0096】
図10の(a)部に示すように、出力軸77aの先端は、ねじりバネ78の端部を押圧する。例えば、出力軸77aを延ばしたとき、出力軸77aの先端は、ねじりバネ78の端部を押圧する。そうすると、この押圧により復元力が生じ、当該復元力は、可動レバー76をガイドプレート72に押圧させるトルクを生じさせる。つまり、針先ガイド68をガイドベース69に固定する場合には、リニアモータ77の出力軸77aを延ばす。
【0097】
図10の(b)部に示すように、出力軸77aを縮めたとき、出力軸77aの先端は、ねじりバネ78の端部から離間する。そうすると、押圧により生じていた復元力が消失する。従って、可動レバー76をガイドプレート72に押圧させる力も消失する。このとき、可動レバー76は、回動部76aのまわりに自由に回転できる。つまり、針先ガイド68をガイドベース69から取り外す場合には、リニアモータ77の出力軸77aを縮める。
【0098】
上述した安全着脱機構51に関する説明をまとめると以下のとおりである。
【0099】
穿刺針8は、穿刺針固定具48によってシャフト14に固定され、穿刺針ガイド49によって直動以外の自由度を制限されている。しかし、穿刺中、患者201が不意に動いた場合又は患者201の容態が急変した場合、穿刺針8を穿刺ロボット4から切り離した後に穿刺ロボット4のみを退避させることによって、患者201の安全を確保する必要がある。そこで以下のような着脱機構を提案した。
【0100】
穿刺針固定具48は、穿刺針8を保持する第2アダプタ54を第1アダプタ53に固定するためのレバー61が少なくとも1個(実施形態では2個)設けられている。レバー61はケース56に対して回転可能に固定されている。リニアモータ62(例えば超音波リニアアクチュエータ)は、ケース56に対し、相対的に運動しないように固定される。リニアモータ62の駆動部分は、駆動時にレバー61に衝突する。この衝突により、レバー61が回転する。レバー61の回転によって、第1アダプタ53と第2アダプタ54との連結状態が解除される。
【0101】
穿刺針ガイド49は、穿刺針8の移動を直動方向のみに制限するための針先ガイド68を有する。穿刺針ガイド49は、針先ガイド68のガイドプレート72に対し少なくとも2箇所接触する形状をした支持フレーム74を有する。支持フレーム74は、ガイドベース69に対し、相対的に運動しないように固定される。また、可動レバー76はガイドベース69に対して回転可能に固定される。可動レバー76は、ねじりバネ78によって針先ガイド68を支持フレーム74に押し付ける方向に向かう力を受ける。ねじりバネ78のもう一方は、可動レバー76に対して相対的に移動できないよう固定されたリニアモータ77の出力軸77aに押圧されている。リニアモータ77の駆動によって、ねじりバネ78が解放され針先ガイド68の固定が解除される。
【0102】
安全着脱機構51は電気信号を用いて遠隔的かつ自動的に針を取り外し、患者201の安全を確保する。なお、実用の際の着脱の手間等を考え、手動で物理的に取り外してもよい。第1アダプタ53と第2アダプタ54との連結を解除することによって、直動方向に自由に穿刺針8が動作できるようになる。針先ガイド68の離脱によって、直動以外の平面方向に自由に穿刺針8が動作できるようになる。これらは同時に行われてもよいし、医師の判断で片方のみが行われてもよい。
【0103】
また、本実施形態の安全着脱機構51の構成は、要するに、以下のとおりである。
【0104】
安全着脱機構は、針固定部が装着され、電気的操作または物理的操作によって針固定具を取りはずすことができる針固定具離脱機構と、針ガイドが装着され、電気的操作または物理的操作によって針ガイドを取りはずすことができる針ガイド離脱機構と、を有する。
【0105】
穿刺針固定具48は、ケース56と、ケース56に対して回転可能に固定された、針固定具を固定するためのレバー61と、ケース56に対して相対的に運動しないように固定され、駆動部がレバー61に衝突した際にレバー61が回転するように配置されたリニアモータ21と、を有する。
【0106】
穿刺針ガイド49は、ガイドベース69と、ガイドベース69に対し相対的に運動しないように固定され、針ガイドの少なくとも2箇所が接触する形状を有する支持フレーム74と、ガイドベース69に対し回転可能に固定され、回転時に針ガイドの少なくとも一箇所に接触するように配置された可動レバー76と、リニアモータ21と、片方の先端を可動レバー76に固定し、もう片方の端面をリニアモータ21の駆動部に押し付けられるように配置されたねじりバネ78と、を有する。
【0107】
<薬剤注入装置>
ところで、穿刺針8を用いた施術では、多品種の薬剤を用いることがある。この場合には、穿刺針8に提供する薬剤を必要に応じて変更する必要がある。このような観点から、穿刺ロボット4は、穿刺針8に提供する薬剤を容易に変更できる薬剤注入装置13を有する。
【0108】
図11に示すように、薬剤注入装置13は、主要な構成要素として、レボルバ79と、装置本体81と、回転機構82と、押出機構83と、を有する。レボルバ79には、薬剤を収容したシリンジ84が取り付けられる。このレボルバ79は、装置本体81に対して軸線のまわりに回転に装置本体81に連結される。薬剤注入装置13は、レボルバ79を回転機構82によって回転させることにより、穿刺針8に提供すべき薬剤を収容するシリンジ84をシリンジレバー86に対応する位置へ移動させる。そして、薬剤注入装置13は、押出機構83によってプランジャ87を押圧することにより、薬剤を穿刺針8に提供する。
【0109】
この構成によれば、薬剤注入装置13は、提供すべき薬剤の選択及び穿刺針8への薬剤の提供を、回転機構82及び押出機構83により実現する。つまり、薬剤注入装置13は、少なくとも2個のアクチュエータを用いて、アクチュエータの数よりも多い数のシリンジ84から薬剤を穿刺針8に提供する。
【0110】
以下、薬剤注入装置13についてさらに詳細に説明する。
【0111】
レボルバ79は、複数のシリンジ84を保持すると共に装置本体81に対して回転する。レボルバ79は、円筒形状を呈する。レボルバ79は、前端と後端とを有する。レボルバ79の後端には、装置本体81が連結される。レボルバ79の円周面には、複数のシリンジ装着部88が設けられる。シリンジ装着部88は、レボルバ79の軸線方向に延びる溝部と、溝部に配置されたシリンジ84を固定する固定部と、を有する。つまり、シリンジ84の軸線は、レボルバ79の中心軸線から直径方向に所定距離だけ離間する。さらに、シリンジ84は、レボルバ79の中心軸線のまわりに等間隔(例えば45度ごと)に配置される。この間隔によれば、レボルバ79は、8本のシリンジ84を保持する。なお、レボルバ79が保持するシリンジ84の数は、8本に限定されない。8本以上であってもよいし、8本以下であってもよい。シリンジ84は、チューブと薬剤切替機構を介して、穿刺針8に接続されている。
【0112】
レボルバ79は、前端に設けられた開口79hを有する。この開口79hには、装置本体81の前端が露出する。レボルバ79は、開口79hのまわりに固定されたギヤ89を有する。ギヤ89は、装置本体81に対するレボルバ79の回転のためのものである。ギヤ89の軸線は、レボルバ79の軸線と重複するように、レボルバ79の内部に配置される。
【0113】
装置本体81は、ハウジング91と、内部フレーム92と、を有する。ハウジング91は、円筒形状を呈する。ハウジング91は、前端と後端とを有する。ハウジング91の前端には、レボルバ79の後端が配置される。ハウジング91の後端は、ロボットアーム11に固定される。内部フレーム92は、ハウジング91の内部に配置されて、押出機構83及び回転機構82の基礎となる。内部フレーム92は、ハウジング91に対して固定されているので、ハウジング91に対して移動及び回転することはない。さらに内部フレーム92の前端は、レボルバ79の前端に設けられた開口79hから露出する。露出した前端には、アダプタ93を介して前述の穿刺装置12が固定される。具体的には、内部フレーム92にはアダプタ93を介して穿刺装置12のメインベース19が固定される。
【0114】
内部フレーム92の前部には、回転機構82が設けられる。回転機構82は、主要な構成要素として、軸部92aと、ベアリング94と、ギヤ89と、ピニオン96と、モータ97と、を有する。軸部92aは、レボルバ79の回転軸線に沿って延びる円筒状の部分である。軸部92aは、内部フレーム92の一部である。レボルバ79は、この軸部92aのまわりに回転する。具体的には、レボルバ79のギヤフランジ98と、軸部92aとの間には、ベアリング94が設けられている。つまり、ベアリング94の内周面は、軸部92aに固定され、ベアリング94の外周面はギヤフランジ98に固定される。また、レボルバ79の後端とハウジング91の前端との間は、ころがり支持機構99が設けられる。ころがり支持機構99は、レボルバ79の後端をハウジング91の前端によって回転可能に支持する。ころがり支持機構99は、レボルバ79の後端に設けられたレボルバ溝と、ハウジング91の前端に設けられたハウジング溝と、レボルバ溝及びハウジング溝の間に配置された複数の転動体と、を有する。これらの構成によって、レボルバ79は、装置本体81に対して円滑に回転できる。
【0115】
ピニオン96は、回転軸線から直径方向に離間して配置される。具体的には、ピニオン96は、ギヤ89の外周近傍において、ギヤ89に噛み合う位置に設けられる。ギヤ89及びピニオン96は、共に平歯車であり、レボルバ79に設けられたギヤ89は、装置本体81に設けられたピニオン96より大径である。ピニオン96は、モータ97の出力軸97aに連結されている。モータ97は、内部フレーム92に対して固定されている。
【0116】
回転機構82によれば、モータ97を駆動すると、その出力軸97aが回転する。出力軸97aの回転に伴ってピニオン96が回転し、ピニオン96に噛み合うギヤ89が回転する。ギヤ89の回転によって、レボルバ79が回転する。つまり、モータ97の回転数を制御することより、レボルバ79の回転位置を制御することができる。なお、モータ97は、ロボット制御装置6によって制御されてもよい。
【0117】
内部フレーム92の主面には、押出機構83が固定される。押出機構83は、リニアモータ101(第3アクチュエータ)と、シリンジレバー86と、を有する。リニアモータ101は、レボルバ79の回転軸線に沿った駆動力を発生させる。リニアモータ101は、ロボット制御装置6によって制御されてもよい。リニアモータ101のテーブルには、シリンジレバー86が固定される。従って、シリンジレバー86は、レボルバ79の回転軸線に沿って往復移動する。
【0118】
シリンジレバー86は、L字形状の部品である。シリンジレバー86の固定辺86aは、リニアモータ101のテーブルに固定される。シリンジレバー86の押圧辺86bは、固定辺86aから起立し、ハウジング91の外部にまで突出する。レボルバ79の回転軸線の方向から薬剤注入装置13を見たとき、押圧辺86bの先端は、レボルバ79の外周面よりも突出する。ハウジング91には、押圧辺86bのための長穴91hが設けられており、この長穴91hを介して押圧辺86bが突出する。そして、長穴91hは、レボルバ79の回転軸線に沿って延びており、この長穴91hの長手方向の距離だけ、シリンジレバー86は、往復移動することが可能である。
【0119】
上述した薬剤注入装置13に関する説明をまとめると以下のとおりである。
【0120】
薬剤注入装置13は、押出のためのアクチュエータ及び選択のためのアクチュエータによって薬剤を切り替えて注入する。多種の薬剤を選択的に注入する施術の際には、穿刺中に複数の薬剤を切り替える必要がある。そこで、薬剤注入装置13は、押出及び選択の2個のアクチュエータによって薬剤の切替と注入とを実現する。
【0121】
押出機構83は、移動部分に設置された薬液押出用のシリンジレバー86を有する。押出機構83の本体部分は、回転軸部材(装置本体81)に固定される。シリンジ84は外装部材(レボルバ79)の周囲に円状に配置される。外装部材は、ベアリング94を介して、装置本体81に対して相対的に回転できるように固定される。回転機構82は回転軸部材に固定され、ギヤ89を介してハウジング91に接続される。
【0122】
薬剤注入装置13は、シリンジ84が3本以上備えられていてもよい。薬剤注入装置13の優位性は、少なくとも2個であり、かつシリンジ84の本数よりも少ないアクチュエータによってシリンジ84を選択及び注入できる点である。薬剤注入装置13は、押出機構83と、回転機構82と、各部品を固定するための構造部材(レボルバ79及びハウジング91)と、シリンジ84を固定するためのシリンジ装着部88と、を有する。回転機構82の動作によって、所望のシリンジ84をシリンジレバー86の前方へ移動させ、その後、押出機構83を動作させることで、当該シリンジ84に収容された薬剤の注入が可能となる。薬剤注入装置13は、押し出し用のアクチュエータ及び選択用のアクチュエータによって、多数のシリンジ84から所望のシリンジ84を選択し、選択したシリンジ84に収容された薬剤を患者201に提供することが可能となる。
【0123】
また、本実施形態の薬剤注入装置13の構成は、要するに、以下のとおりである。
【0124】
薬剤注入装置13は、3本以上のシリンジ84を装着するための複数のシリンジ装着部88と、シリンジ84のうち任意の一本が保持する薬剤を提供するための押出機構83と、シリンジ84のそれぞれに接続されるチューブと、を有する。
【0125】
押出切替機構である薬剤注入装置13は、少なくとも2個、かつ、シリンジ84の本数よりも少ない個数で、薬液の押出に使用される少なくとも1個の押出機構83と、切替のために使用される少なくとも1個の回転機構82と、を有する。
【0126】
薬剤注入装置13は、押出のためのリニアモータ101において、押出のためのリニアモータ101のテーブルに固定され、シリンジ84のプランジャ87を押し込むために使用されるシリンジレバー86を有する。例えば、薬剤注入装置13は、図示しないシリンジレバー86の位置を得るセンサ、シリンジレバー86に作用する圧力、薬剤の流出量を得るセンサを備えており、これらのセンサから得たデータを利用して、リニアモータ101の押し込み量を制御してもよい。シリンジ装着部88は、シリンジ84を円状に装着できるように配置される。切替のためのモータ97は、シリンジ84を固定するレボルバ79を回転させることにより、シリンジ84を切り替えて、押出のためのリニアモータ101の駆動によってシリンジ84のプランジャ87を押し込む。
【0127】
以下、穿刺ロボット4の作用効果について簡単に説明する。
【0128】
振動ユニット27は、サブベース26に固定されて、振動のための振動力を生じさせるピエゾモータ29と、ピエゾモータ29及びシャフト14に連結されて、振動力をシャフト14に伝達する振動伝達部31と、を有する。回転ユニット28は、サブベース26に固定されて、回転のための回転力を生じさせるモータ38と、モータ38及びシャフト14に連結されて、回転力をシャフト14に伝達するトルク伝達部39と、を有する。この構造によれば、振動ユニット27及びトルク伝達部39がシャフト14に対して振動及び回転を同時に付与することができる。従って、挿入途中の穿刺針8の動きがさらに安定化する。その結果、穿刺針8をさらに短時間で患部に到達させやすくなるので、穿刺による負担をさらに軽減することができる。
【0129】
振動伝達部31は、ピエゾモータ29に接触する基端32cと、シャフト14を挿通させる貫通孔32aを有する先端32bと、を含む振動梁32と、貫通孔32aに挿通されたシャフト14を、先端32bに対して所定方向に拘束すると共に、所定方向のまわりの回転を許す拘束部35と、を含む。この構造によれば、シャフト14の回転を許容し、且つ、シャフト14に振動を付与する動作を簡易な構成で実現することができる。
【0130】
トルク伝達部39は、モータ38に接続されるギヤユニット45(回転伝達部)と、ギヤユニット45に接続されると共に、シャフト14を挿通させる孔46aを有し、孔46aに挿通されたシャフト14を、所定方向のまわりに拘束すると共に、所定方向に沿った振動を許すギヤ46と、を含む。この構造によれば、シャフト14の振動を許容し、且つ、シャフト14に回転を付与する動作を簡易な構成で実現することができる。
【0131】
シャフト14は、振動ユニット27と連結される連結部14rと、回転ユニット28と連結される軸部14aと、穿刺針8が連結されるフランジ14fと、を含む。軸部14aは、連結部14rとフランジ14fとの間に設けられる。この構成によれば、シャフト14を良好な状態で振動及び/又は回転させることができる。
【0132】
穿刺ロボット4は、穿刺針8に接続されて、穿刺針8に薬剤を提供する薬剤注入装置13をさらに備える。薬剤注入装置13は、薬剤を収容したシリンジ84を複数取り付けたレボルバ79と、シリンジ84に挿入されたプランジャ87を押圧するシリンジレバー86と、を有する。レボルバ79及びシリンジレバー86は、相対的に移動する。この構成によれば、穿刺針8に対して複数のシリンジ84が接続される。その結果、穿刺針8とシリンジ84との接続を解除して、新たなシリンジ84を接続するといった交換作業を不要とすることが可能になる。従って、施術時間をさらに短縮することができる。
【0133】
レボルバ79及びシリンジレバー86の相対的な移動は、回転である。この構成によれば、薬剤注入装置13を小型化することができる。
【0134】
穿刺ロボット4は、薬剤注入装置13が固定されるロボットアーム11をさらに備える。リニアモータ101は、ロボットアーム11に固定される。レボルバ79はシリンジレバー86に対して回転する。この構成によれば、リニアモータ101によって押圧されるレボルバ79の選択時に、レボルバ79が回転する。この回転によって、シリンジ84内の薬液を撹拌することができる。
【0135】
穿刺ロボット4は、シャフト14の先端に対して着脱可能に取り付けられて、穿刺針8を保持する安全着脱機構51をさらに備える。この構成によれば、穿刺針8とシャフト14との連結を速やかに解除することができる。
【0136】
メインベース19は、穿刺針8と交差するように設けられたテーブルを含む。そして、穿刺ロボット4は、穿刺針8が挿通されるガイド孔68aを有し、テーブルに配置されるガイドプレート72と、ガイドプレート72をテーブルに対して着脱可能に保持するガイド着脱機構52と、をさらに備える。この構成によれば、穿刺針8と駆動機構30との連結を速やかに解除することができる。
【0137】
<変形例>
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。
【0138】
回転ユニット28において、シャフト14の軸部14aの形状と、ギヤ46の孔46aの形状とは、
図6に示すような形状(略三角形)に限定されない。例えば、ギヤ46は、シャフト14をその軸線のまわりにおいて、正逆各方向に回転させたときに、各方向に少なくとも一箇所のシャフト14の軸部14aと衝突する形状の孔46aを有していればよい。
【0139】
例えば、
図12の(a)部に示すように、シャフト14Aの軸部14bの断面形状は、矩形(正方形)であり、ギヤ46Aの孔46bの形状も矩形(正方形)であってもよい。また、
図12の(b)部に示すようにシャフト14Bの軸部14cの断面形状は、楕円であり、ギヤ46Bの孔46cの形状は矩形(正方形)であってもよい。さらに、
図12の(c)部に示すようにシャフト14Cの軸部14dの断面形状は、楕円であり、ギヤ46Cの孔46dの形状も楕円であってもよい。
【0140】
薬剤注入装置13は、装置本体81が固定側となり、装置本体81に対してレボルバ79が回転した。換言すると、シリンジレバー86に対してシリンジ84が回転することにより、薬剤の選択が行われた。
【0141】
例えば、
図13の(a)部及び(b)部に示すように、変形例1に係る薬剤注入装置13Aは、レボルバ79Aが固定側であり、装置本体81Aが回転側としてもよい。換言すると、シリンジ84Aに対してシリンジレバー86Aが回転することにより、薬剤の選択してもよい。
【0142】
つまり、薬剤注入装置13A(押出切替機構)は、押出機構83A(押出のためのアクチュエータ)において、押出機構83Aのリニアモータ101A(駆動部)に固定され、シリンジ84Aを押し込むために使用されるシリンジレバー86Aを有する。シリンジ装着部88A(シリンジ取り付け部)は、シリンジ84Aを円状に装着できるように配置される。回転機構82A(切替のためのアクチュエータ)は、押出機構83Aを回転させることで、シリンジ84Aを切り替えて、押出機構83Aの駆動によってシリンジ84Aから薬剤を供給する。
【0143】
また、例えば、
図14の(a)部及び(b)部に示すように、変形例2に係る薬剤注入装置13Bは、レボルバ79Bと、装置本体81Bと、を有する構成としてもよい。レボルバ79Bは、複数のシリンジ84Bを直線状に並べて保持する。そして、装置本体81Bは、レボルバ79Bに対して直線状に移動する。つまり、シリンジレバー86Bは、シリンジ84Bが並べられた方向に往復移動する。
【0144】
つまり、薬剤注入装置13B(押出切替機構)は、押出機構83B(押出のためのアクチュエータ)において、押出機構83Bのリニアモータ101B(駆動部)に固定され、シリンジ84Bを押し込むシリンジレバー86Bを有する。シリンジ装着部88Bは、シリンジ84Bを直線状に装着できるように配置される。並進機構82B(切替のためのアクチュエータ)は、押出機構83Bを並進移動させることでシリンジ84Bを切り替えて、押出機構83Bの駆動によってシリンジ84Bから薬剤を供給する。
【0145】
また、例えば、
図14の(c)部及び(d)部に示すように、変形例3に係る薬剤注入装置13Cは、レボルバ79Cと、装置本体81Cと、を有する構成としてもよい。レボルバ79Cは、複数のシリンジ84Cを直線状に並べて保持する。そして、レボルバ79Cは、装置本体81Cに対して直線状に移動する。つまり、シリンジ84Cは、シリンジ84Cが並べられた方向に往復移動する。
【0146】
つまり、薬剤注入装置13C(押出切替機構)は、押出機構83C(押出のためのアクチュエータ)において、押出機構83C(押出のためのアクチュエータ)のリニアモータ101C(駆動部)に固定され、シリンジ84Cを押し込むシリンジレバー86Cを有する。シリンジ装着部88Cは、シリンジ84Cを直線状に装着できるように配置され、並進機構82Cによってレボルバ79Cを並進移動させることで、シリンジ84Cを切り替えて、押出機構83Cの駆動によってシリンジ84Cから薬剤を供給する。
【0147】
<穿刺針固定具の変形例>
図15は、穿刺針固定具48Aの変形例を示す。穿刺針固定具48Aは、把持具310と、駆動ユニット320と、を有する。把持具310は、一対のアーム311を有し、当該アーム311によって穿刺針8を把持する。駆動ユニット320は、アーム311の位置を把持位置と解除位置とに相互に切り替える。把持位置から解除位置への切り替えは、駆動ユニット320が収容するアクチュエータによって行うこともできるし、手動によって行うこともできる。
【0148】
図16の(a)部及び
図16の(b)部に示すように、アーム311は、側面視してL字状の本体部312と、本体部312に設けられた連結部313と、を有する。本体部312の先端312aは、X方向に延び、他方のアーム311の本体部312の先端312aと対面する。この先端312a同士の間に穿刺針8が挟み込まれる。穿刺針8を把持する部分は、溝が形成されている。溝の断面形状は、穿刺針8の被把持部の形状に応じて適宜選択してよい。本体部312の基部312bは、Z方向に延びる。基部312bには、連結部313が設けられている。連結部313は、駆動ユニット320のケース321の内部に配置されており、本体部312を駆動する力を受ける。連結部313は、本体部312を駆動するためのソレノイド接続部313aと、操作爪313bとを有する。
【0149】
駆動ユニット320は、ケース321に収容された一対の駆動機構を有する。一つの駆動機構は、一つのアーム311に対応する。駆動機構は、リニアモータであるソレノイド331と、ばねユニット332と、を有する。
【0150】
ソレノイド331の駆動軸331aの一端は、ソレノイド接続部313aの上端に連結されている。駆動軸331aの基端は、ソレノイド331に連結されている。そして、圧縮ばねユニット332の圧縮ばね332sは、ソレノイド331とソレノイド接続部313aに挟まれている。その結果、圧縮ばね332sは、ソレノイド331からソレノイド接続部313aを離間させる向きの力を発生する。
【0151】
なお、圧縮ばねユニット332は、種々の構成を採用してよい。
図15に示すように、圧縮ばねユニット332は、駆動軸331aに連結されたアダプタ332aと、ケース321に対して固定されるばね支持部332bと、当該アダプタ332aとばね支持部332bとの間に配置される一対の圧縮ばね332sと、を有していてもよい。また、
図16に示すように、圧縮ばねユニット332は、駆動軸331aに配置されて、ソレノイド接続部313aとソレノイド331との間に挟み込まれた圧縮ばね332sにより構成されてもよい。
【0152】
圧縮ばね332sの力は、アーム311が穿刺針8を把持する方向と一致する。つまり、アーム311は、圧縮ばね332sの復元力によって、把持状態を維持する。具体的には、ソレノイド331が動作していない(力を発生させていない)とき、駆動軸331aは、圧縮ばね332sの復元力によって正のX方向に移動した状態である(
図16の(a)部参照)。一方、ソレノイド331が動作しているとき(力を発生させているとき)、駆動軸331aは縮まる。換言すると、ソレノイド331とソレノイド接続部313aとの間の距離が短くなる。その結果、ソレノイド接続部313aは負のX方向に移動するので、アーム311同士が互いに離間する。つまり、解除状態となる(
図16の(b)部参照)。
【0153】
また、駆動軸331aは、ケース321の底面から突出した操作爪313bを有する。この操作爪313bを操作する(操作爪313bの間隔を広げる)ことによって、把持状態から解除状態に移行することもできる。つまり、ソレノイド331とソレノイド接続部313aとの間の距離が短くなった状態を、操作爪313bの移動によって実現する。
【0154】
変形例の穿刺針固定具48Aは、針固定部に別途部品を取り付ける必要がないので、部品点数を削減することができる。また、変形例の穿刺針固定具48Aは、穿刺針8を取り外す方向に制限がない。換言すると、連結状態を解除した状態として、穿刺針8を水平方向(Y方向)に移動させて取り外すこともできるし、垂直方向(穿刺針8が延びる方向:Z方向)に移動させて取り外すこともできる。
【符号の説明】
【0155】
1…穿刺システム、4…穿刺ロボット、8…穿刺針、11…ロボットアーム、12…穿刺装置、13…薬剤注入装置、14…シャフト、16…直線駆動機構、17…振動回転駆動機構、19…メインベース、26…サブベース、27…振動ユニット、28…回転ユニット、30…駆動機構。