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  • 特許-断熱パネルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】断熱パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F16L59/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019168690
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021046886
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000244084
【氏名又は名称】明星工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一弘
(72)【発明者】
【氏名】山城 博隆
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/141189(WO,A1)
【文献】特開2019-099690(JP,A)
【文献】特開2017-128664(JP,A)
【文献】特開2012-177463(JP,A)
【文献】特開平01-199095(JP,A)
【文献】特開2012-131684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0002356(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101671156(CN,A)
【文献】特開2008-145832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
E04B 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸原料と石灰原料と水を加えて混合して成るケイ酸カルシウム水和物を含む原料スラリーを製造し、
その原料スラリーをオートクレーブ処理により加熱、加圧してゾノライト結晶の生成及び成長をさせ、
ゾノライト結晶が十分成長している状態でシリカエアロゲルを混入させると共に、
質量割合が、前記シリカエアロゲル100に対して、0よりも大で110よりも小の炭化ケイ素粉粒体を混入させ、
前記シリカエアロゲルは、0wt%よりも多く且つ40wt%以下含有させ、
前記断熱材全体を100%として、その中に、セルロースナノファイバーを、0wt%よりも多く4wt%以下含有させ、
その後、成型、乾燥工程を経て製品化する断熱パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸カルシウム保温材を主材とする断熱材を、圧縮成形してある断熱パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記断熱パネルは、比較的高温域での断熱に使用され、断熱パネルのJIS規格として、密度:155kg/m3以下、曲げ強さ:20N/cm2以上、圧縮強さ:30N/cm2以上、線収縮率:2.0%以下(at1000±15℃)はっ水度:98%以上(WP品)、といった物性を備え、熱伝導率も例えば0.0497W/mK(at 70℃)前後と言った断熱性の良いパネルに成型してあるものがあった(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-205680号公報
【文献】特開昭61-215245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、JIS規格の物性を確保しながら上述した従来の断熱パネルよりもさらに熱伝導率の低い断熱パネルを提供することが望まれている。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、従来よりも熱伝導の低い断熱パネルの製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、ケイ酸原料と石灰原料と水を加えて混合して成るケイ酸カルシウム水和物を含む原料スラリーを製造し、その原料スラリーをオートクレーブ処理により加熱、加圧してゾノライト結晶の生成及び成長をさせ、ゾノライト結晶が十分成長している状態でシリカエアロゲルを混入させると共に、質量割合が、前記シリカエアロゲル100に対して、0よりも大で110よりも小の炭化ケイ素粉粒体を混入させ、前記シリカエアロゲルは、0wt%よりも多く且つ40wt%以下含有させ、前記断熱材全体を100%として、その中に、セルロースナノファイバーを、0wt%よりも多く4wt%以下含有させ、その後、成型、乾燥工程を経て製品化するところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、ケイ酸カルシウム保温材にシリカエアロゲルを混入させることにより、熱伝導率が図1のグラフに示すように、約30%以上低減させることができる。
【0008】
【0009】
シリカエアロゲルが半透明であるために、赤外線を通しやすく、高温域での熱伝導率が大きくなり、これに対して、特に、シリカエアロゲル100に対して、0よりも大で110よりも小の赤外線吸収性の良い炭化ケイ素粉粒体を混入させることにより、高温域での熱伝導率を低減させることができる。
【0010】
【0011】
断熱材にシリカエアロゲルを混入させることにより、熱伝導率は低下するものの、機械的強度が低下する虞がある。そのため、断熱材にセルロースナノファイバーを添加することにより、図2のグラフに示すように、曲げ強度などの機械的強度を向上させることができる。
しかし、図3のグラフに示すように、4wt%を超えると反りが3mmを超え、施工上問題が生じる可能性が高くなる。従って、断熱材全体を100%として、セルロースナノファイバーを、その中に、0wt%よりも多く4wt%以下含有させることで、良好な製品を成型できながら、熱伝導率の低減を可能にできる。
【0012】
【0013】
シリカエアロゲルの混入量は入れる程に、熱伝導率は低下するが、図4のグラフに示すように、50wt%では、曲げ強度がJIS基準とほぼ同じで品質上問題ありと考えられ、結果的には、0wt%よりも多く且つ40wt%以下が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】シリカエアロゲル添加量に対する熱伝導率の変化を示すグラフである。
図2】CNF添加量に対する曲げ強度の変化を示すグラフである。
図3】CNF添加量に対する反り量の変化を示すグラフである。
図4】シリカエアロゲル添加量に対する曲げ強度の変化を示すグラフである。
図5】SiCの質量割合に対する熱伝導率の変化を示すグラフである。
図6】製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0016】
ケイ酸原料(珪石(SiO2))と石灰原料(CaO)と水とから混合して成るケイ酸カルシウム保温材が従来製品として存在し、熱伝導率も例えば0.0497W/mK(at 70℃)前後である。
本発明は、そのケイ酸カルシウム保温材を主剤とする断熱材に、更に熱伝導率の低い断熱材を得るべくシリカエアロゲルを0wt%よりも多く且つ40wt%以下含有させ、質量割合が、前記シリカエアロゲル100に対して、0よりも大で110よりも小の炭化ケイ素粉粒体を混入させ、更に、前記断熱材全体を100%として、その中に、幅15~20nmのセルロースナノファイバー(CNF)を、0wt%よりも多く4wt%以下含有させて断熱パネルを形成してある。
【0017】
シリカエアロゲルの粒径について調べるべく、粒子サイズの違いによる熱伝導率を調べて、表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
上記表1からは、粒子サイズ0.01~1.2mmのものが、熱伝導率が0.0198W/mKと最も低いが、結局、0.01~4.0mmのシリカエアロゲル粉粒体を使用できることが分かる。
【0020】
次に、シリカエアロゲル粉粒体に、平均粒子サイズ約2μm(分布は1~5μm)の炭化ケイ素粉粒体(SiC)を添加する場合について、その添加割合を調べるべく、シリカエアロゲル粉粒体100質量部に対する炭化ケイ素粉粒体の添加割合を変化させた場合の熱伝導率の変化を調べ、図5のグラフに示した。
【0021】
図5より、シリカエアロゲル粉粒体100質量部に対して、炭化ケイ素粉粒体を約20質量部添加するのが、熱伝導率において最も低下することが分かった。
炭化ケイ素粉粒体(SiC)は、常温域での熱伝導率の低減と、高温域での熱伝導率の低減を目的とし、また、高温域での熱伝導率に関しては、シリカエアロゲルが半透明で、赤外線を通しやすく高温域の熱伝導率が大きくなることから、赤外線吸収剤である炭化ケイ素(SiC)を加えることで、高温域での熱伝導率を低減させられる。
つまり、炭化ケイ素(SiC)を入れない場合は、特に高温域で熱伝導率が増加する。
【0022】
断熱材全体を100%として、その中に、0wt%よりも多く4wt%以下含有させるセルロースナノファイバーは、最小単位が幅3~4nmのシングルセルロースナノファイバーが数本の束となって細胞壁中で観察される基本単位で、セルロースナノファイバー束(幅15~20nm)となっているもので、鋼鉄の1/5の軽さでその7~8倍の強度があり、結晶弾性率は140GPaで、熱による伸び縮みが小さい。
【0023】
また、シリカエアロゲルは疎水性のために、ケイ酸カルシウム保温材の原料とする水を含んだゲル固形分とは本来混ざりにくく、そのために、セルロースナノファイバー(CNF)を入れることで、シリカエアロゲルの配合を増加させた場合でも、適度にゲル固形物にシリカエアロゲルを分散させることが出来る。
そして、そのセルロースナノファイバー(CNF)は、断熱材の曲げ強度などの機械的強度を向上させるために添加するもので、0wt%よりも多く4wt%以下含有させることにより、強度は向上するが、4wt%を超えるとパネル製品上反りが発生しやすくなり、製品上問題がある。
【0024】
[製造方法1]
図6に示すように、珪石(SiO2)、珪藻土、シリコンダスト、シリカヒュームなどのケイ酸原料と、生石灰、消石灰、等の石灰原料とを、CaO/SiO2モル比で1.05の配合物に対し、質量比で10~20倍の水を加え、混合して成るケイ酸カルシウム水和物を含む原料スラリーを製造する。
そして、その原料スラリーを、ゲル化槽で5~6時間、温度205℃、圧力16.4kg/cm2で反応させてゾノライト結晶の生成及び成長させ、ゾノライト結晶が十分成長している状態でシリカエアロゲル、熱遮蔽剤として炭化ケイ素粉粒体(SiC)、を投入して、場合により、補強繊維としてガラス繊維、パルプ等を投入し、また、界面活性剤、セルロースナノファイバー(CNF)を入れ、その後、成型(加圧脱水)、乾燥工程を経て、製品の断熱パネルになる。
つまりこの場合、オートクレーブ処理で、スラリー中のゾノライトの1次結晶が生成され、この一次結晶が3次元的に絡み合って二次粒子となる。
そして、スラリー内でゾノライトの二次粒子が分散している状態で、バインダーとしてのセルロースナノファイバー(CNF)を添加し、濾水成型する事で、原料どうしが凝集するものと考えられる。
【0025】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
〈1〉 前記熱遮蔽剤は、先の実施形態で説明した炭化ケイ素粉粒体(SiC)に限るものではなく、例えば、酸化アルミニウム、ジルコニア、酸化鉄、酸化チタンなどでも良い。
【0026】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6