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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】多層ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240201BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20240201BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B7/02
C08G73/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019200860
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021074894
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隼平
(72)【発明者】
【氏名】細貝 誠二
(72)【発明者】
【氏名】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】秋山 貴善
(72)【発明者】
【氏名】大橋 卓史
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061727(WO,A1)
【文献】特開平11-166162(JP,A)
【文献】特開2018-150544(JP,A)
【文献】特開2011-063647(JP,A)
【文献】特開2008-001876(JP,A)
【文献】特開2007-090630(JP,A)
【文献】特開2004-189981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210854(US,A1)
【文献】特開2019-210342(JP,A)
【文献】特許第7131385(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0056213(US,A1)
【文献】特開2019-119113(JP,A)
【文献】特開2019-104233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08G73/00-73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非熱可塑性ポリイミド樹脂層の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有する多層ポリイミドフィルムであって、
前記非熱可塑性ポリイミド樹脂層が、酸二無水物とジアミンの反応物であり、
前記酸二無水物、一般式(1)の化合物を70モル%以上100モル%以下含み、かつ前記ジアミンが、一般式(2)の化合物を含まないか、または、前記ジアミン、一般式(2)の化合物を70モル%以上100モル%以下含み、かつ前記酸二無水物が、一般式(1)の化合物を含まず、
前記熱可塑性ポリイミド樹脂層が、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン及び2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種のジアミンと、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び4,4’-オキシジフタル酸二無水物から選ばれる少なくとも1種の酸二無水物の反応物であり、
吸水率が1.2%以下、誘電正接が0.005以下であることを特徴とする多層ポリイミドフィルム。
【化1】
【化2】
【化3】
前記一般式(1)及び(2)中、Xは前記一般式(3)中から選ばれる2価の有機基であり前記一般式(2)中、Yはエステル基であり、前記一般式(2)及び(3)中、RH、メチル基、エチル基又はトリフルオロメチル基であり、nは1~4の整数である。)
【請求項2】
前記非熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成するジアミンが、炭素数36の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、及び2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の多層ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記非熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成する酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の多層ポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリイミドフィルムは、機械強度、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れているため、電子基板材料用途で多く利用されている。例えば、ポリイミドフィルムを基板材料とし、少なくとも片面に銅箔を積層したフレキシブル銅張積層板(以下、FCCLともいう)や、さらに回路を作成したフレキシブルプリント基板(以下、FPCともいう)などが製造され、各種電子機器に使用されている。
【0002】
近年の電子機器の高速信号伝送に伴う回路を伝達する電気信号の高周波化において、基板材料であるポリイミドの低誘電率、低誘電正接化の要求が高まっている。高周波化の傾向は進んでおり、今後は、例えば5GHz以上、さらには10GHz以上といった領域においても誘電率、誘電正接の低い材料が求められると考えられる。さらに、電子回路における信号の伝播速度は基板材料の誘電率が増加すると低下する。また誘電率と誘電正接が増加すれば信号の伝送損失も増大する。したがって、基板材料であるポリイミドの低誘電率化、低誘電正接化、さらには、FPCとした状態での伝送損失が小さいことなどが、電子機器の高性能化にとって重要となる。
【0003】
高周波化に適応可能な回路基板に用いられるフィルムとして、ポリイミド樹脂に誘電率が低い樹脂粉末を混合した絶縁樹脂層がよく知られている。例えば、特許文献1にはポリイミドにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉を含有させた基板材料としての多層ポリイミドフィルムが開示されている。
【0004】
また、誘電率や誘電正接は、樹脂の吸水率が大きくなると大きくなる傾向にあるため、ポリイミド樹脂のように吸水率の大きい樹脂を用いたフィルムはそもそも高周波対応回路基板用のフィルムとしては不向きであり、特許文献2では、アミド基、イミド基などの吸水性の高い官能基を含まない樹脂を使用することによって、伝送速度が速く、伝送損失の小さい樹脂基板を提供することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-144476号公報
【文献】特開2012-221968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリイミド樹脂へのフッ素樹脂の配合では、フッ素樹脂の均一分散化が難しい場合があり、フィルムの場所により特性がばらつきやすという課題がる。
【0007】
誘電率や誘電正接を小さくすることを目的として、ポリイミドフィルムの吸水率を下げるには、ポリイミド重合体中のイミド基の濃度を低くすることになり、結果としてポリイミドフィルムをFPCに使用するために必要な基本特性である特性が損なわれるという問題がある。具体的には、線膨張係数が大きくなったり、フィルムの透明性が損なわれるという課題が生じる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、FPCに求められる基本的な特性を損なうことなく、吸水率や誘電正接が小さく、それらの特性が均一に発現される、高周波回路基板に用いることが可能なポリイミドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の新規な非熱可塑性ポリイミド樹脂層の少なくとも一方の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有する多層ポリイミドフィルムにより上記課題を解決しうる。
【0010】
1).非熱可塑性ポリイミド樹脂層の少なくとも一方の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有する多層ポリイミドフィルムであって、
前記非熱可塑性ポリイミド樹脂層が、酸二無水物とジアミンの反応物であり、前記酸二無水物中、一般式(1)の繰り返し単位を、30モル%以上含み、および/または、前記ジアミン中、一般式(2)の繰り返し単位を、30モル%以上含み、
吸水率が1.2%以下、誘電正接が0.005以下であることを特徴とする多層ポリイミドフィルム。(但し、一般式(1)及び(2)中、Xは一般式(3)中から選ばれる2価の有機基、一般式(2)中、Yはエステル基である。一般式(2)及び(3)中、R1はH、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、nは1~4の整数である。)
【化1】
【化2】
【化3】
【0011】
2).前記非熱可塑性ポリイミドフィルムは、前記ジアミンとして炭素数36の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むことを特徴とする1)記載の多層ポリイミドフィルム。
【0012】
3).前記非熱可塑性ポリイミドフィルムは、前記酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる酸二無水物を含むことを特徴とする1)または2)のいずれかに記載の多層ポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0013】
本件発明の多層ポリイミドフィルムは、吸水率や誘電正接が小さく、FPCに求められる基本的な特性にも優れており、高周波回路基板にも用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0015】
本発明の多層ポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド樹脂層の少なくとも一方の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有する多層ポリイミドフィルムであって、
前記非熱可塑性ポリイミド樹脂層が、酸二無水物とジアミンの反応物であり、前記酸二無水物中、一般式(1)の繰り返し単位を、30モル%以上含み、および/または、前記ジアミン中、一般式(2)の繰り返し単位を、30モル%以上含み、
吸水率が1.2%以下、誘電正接が0.005以下であることを特徴とする多層ポリイミドフィルムである。(但し、一般式(1)及び(2)中、Xは一般式(3)中から選ばれる2価の有機基、一般式(2)中、Yはエステル基である。一般式(2)及び(3)中、R1はH、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、nは1~4の整数である。)
【化4】
【化5】
【化6】
【0016】
(非熱可塑性ポリイミド樹脂層)
本発明では、特定のモノマーを使用することによって、誘電率や誘電正接が小さくなり、伝送速度や伝送損失の大きい回路基板として使用することができる非熱可塑性ポリイミド樹脂層を製造できる。
【0017】
本発明の非熱可塑性ポリイミド樹脂層の製造方法の一例について詳述する。本発明に用いられるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸(以下、ポリアミド酸ともいう)は、少なくとも一種のジアミンと少なくとも1種の酸二無水物を有機溶媒中で実質的に略等モルになるように混合、反応することにより得られる。
【0018】
また、本発明の非熱可塑性ポリイミド樹脂層は、酸二無水物中、一般式(1)の繰り返し単位を、30モル%以上含み、および/または、前記ジアミン中、一般式(2)の繰り返し単位を、30モル%以上含む。(但し、一般式(1)及び(2)中、Xは一般式(3)中から選ばれる2価の有機基、一般式(2)中、Yはエステル基である。一般式(2)及び(3)中、R1はH、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、nは1~4の整数である。)
【化7】
【化8】
【化9】
前記一般式(1)の酸二無水物を30モル%以上含むかまたは、前記ジアミン中、一般式(2)の繰り返し単位を、30モル%以上含むことで、低吸水性かつ低誘電正接のポリイミドを提供することができる。
【0019】
一般式(1)以外に用いることのできる酸二無水物については、特に限定されるものではないが、具体的には、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、3,4’-オキシフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン酸二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物等などが挙げられる。その中でも、ピロメリット酸二無水物や3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。
【0020】
一般式(1)以外に用いることのできる酸二無水物は、一般式(2)のジアミンを用いる場合には、0モル%~100モル%であることが好ましく、30モル%~100モル%であることがより好ましく、50モル%~100モル%であることが更に好ましい。
【0021】
一般式(1)以外に用いることのできる酸二無水物は、一般式(2)のジアミンを用いない場合には、0モル%~70モル%であることが好ましく、0モル%~50モル%であることがより好ましく、0モル%~30モル%であることが更に好ましい。
【0022】
前記一般式(2)のYであらわされるエステル基は、一般式(4)で示される結合であることが合成の容易性という点で好ましい。
【化10】
【0023】
一般式(2)以外に用いることにできるジアミンについては特に限定されるものではないが、炭素数36の脂肪族ジアミン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジアミノ-1,1'-ビフェニル、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ヒドロキシビフェニル、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0024】
上記ジアミンのなかで、炭素数36の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種のジアミンを含むことが好ましい。
【0025】
一般式(2)以外に用いることのできるジアミンは、一般式(1)の酸二無水物を用いる場合には、0モル%~100モル%であることが好ましく、30モル%~100モル%であることがより好ましく、50モル%~100モル%であることが更に好ましい。
【0026】
一般式(2)以外に用いることのできるジアミンは、一般式(1)の酸二無水物を用いない場合には、0モル%~70モル%であることが好ましく、0モル%~50モル%であることがより好ましく、0モル%~30モル%であることが更に好ましい。
【0027】
炭素数36の脂肪族ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(‐COOH)が、1級のアミノメチル基(‐CH2‐NH2)又はアミノ基(‐NH2)に置換されてなるジアミンを意味する。
ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含有する。本実施の形態では、ダイマー酸は分子蒸留によってダイマー酸含有量を90質量%以上にまで高めたものを使用することが好ましい。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本実施の形態では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。
【0028】
ダイマー酸型ジアミンの特徴として、ダイマー酸の骨格に由来する特性を付与することができる。すなわち、ダイマー酸型ジアミンは、分子量約560~620の巨大分子の脂肪族であるので、分子のモル体積を大きくし、ポリイミドの極性基を相対的に減らすことができる。このようなダイマー酸型ジアミンの特徴は、ポリイミドの耐熱性の低下を抑制しつつ、誘電特性を向上させることに寄与すると考えられる。また、2つの自由に動く炭素数7~9の疎水鎖と、炭素数18に近い長さを持つ2つの鎖状の脂肪族アミノ基とを有するので、ポリイミドに柔軟性を与えるのみならず、ポリイミドを非対象的な化学構造や非平面的な化学構造とすることができるので、ポリイミドの低誘電率化を図ることができると考えられる。
ダイマー酸型ジアミンは、市販品が入手可能であり、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、コグニスジャパン社製のバーサミン551(商品名)、同バーサミン552(商品名)等が挙げられる。
【0029】
一般式(2)以外のジアミンの中でも、炭素数36の脂肪族ジアミン含有量としては、全ジアミン成分100モル%に対して、5~15モル%が好ましく、5~10モル%がより好ましい。
【0030】
非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸は、上記ジアミンと酸二無水物を有機溶媒中で実質的に略等モルになるように混合、反応することにより得られる。使用する有機溶媒は、ポリアミック酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、アミド系溶媒すなわちN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。ポリアミック酸の固形分濃度は特に限定されず、5重量%~35重量%の範囲内であればポリイミドとした際に十分な機械強度を有するポリアミック酸が得られる。
【0031】
原料であるジアミンと酸二無水物の添加順序についても特に限定されないが、原料の化学構造だけでなく、添加順序を制御することによっても、得られるポリイミドの特性を制御することが可能である。
【0032】
上記ポリアミック酸には、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いても良いが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミ
ナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0033】
また、得られる非熱可塑性ポリイミド樹脂層全体としての特性を損なわない範囲で、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂を混合しても良い。これら樹脂の添加方法としては、溶剤に可溶のものであれば上記ポリアミック酸に添加する方法が挙げられる。ポリイミドも可溶性のものであるなら、ポリイミド溶液に添加しても良い。溶剤に不溶のものであれば、上記ポリアミック酸を先にイミド化した後、溶融混練で複合化する方法が挙げられる。但し、ポリイミドと混合する樹脂は可溶性のものを用いることが望ましい。
【0034】
(非熱可塑性ポリイミド樹脂層の製造方法)
本発明の非熱可塑性ポリイミド樹脂層を得るには、以下の工程
i)有機溶剤中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させてポリア
ミック酸溶液を得る工程、
ii)上記ポリアミック酸溶液を含む製膜ドープを支持体上に流延する工程、
iii)支持体上で加熱した後、支持体からゲルフィルムを引き剥がす工程、
iv)更に加熱して、残ったアミック酸をイミド化し、かつ乾燥させる工程、
を含むことが好ましい。
【0035】
ii)以降の工程においては、熱イミド化法と化学イミド化法に大別される。熱イミド化法は、脱水閉環剤等を使用せず、ポリアミック酸溶液を製膜ドープとして支持体に流涎、加熱だけでイミド化を進める方法である。一方の化学イミド化法は、ポリアミック酸溶液に、イミド化促進剤として脱水閉環剤及び触媒の少なくともいずれか一方を添加したものを製膜ドープとして使用し、イミド化を促進する方法である。熱イミド化法と化学イミド化法のどちらの方法を用いても構わないが、化学イミド化法の方が生産性に優れる。
【0036】
脱水閉環剤としては、無水酢酸に代表される酸無水物が好適に用いられ得る。触媒としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミン等の三級アミンが好適に用いられ得る。
【0037】
iii)以降の工程で、製膜ドープを流延する支持体としては、ガラス板、アルミ箔、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラム等が好適に用いられ得る。最終的に得られるフィルムの厚み、生産速度に応じて加熱条件を設定し、部分的にイミド化及び乾燥の少なくともいずれかを行った後、支持体から剥離してポリアミック酸フィルム(以下、ゲルフィルム、またはゲル膜ともいう)を得る。
【0038】
iv)以降の工程で、前記ゲルフィルムの端部を固定して硬化時の収縮を回避して乾燥し、水、残留溶媒、フィルム中に残存するイミド化促進剤を除去し、そして残ったアミック酸を完全にイミド化して、ポリイミドを含有するフィルムが得られる。ゲルフィルムの端部は固定するだけでなく、搬送方向もしくは搬送方向に対して垂直方向に延伸することが好ましい。
【0039】
このようにして得られるポリイミドフィルムは、誘電率や誘電正接が小さいので高周波対応回路基板として好適に用いることができる。
【0040】
(多層ポリイミドフィルム)
本発明においては、上述の少なとも一層の非熱可塑性ポリイミド樹脂層をコアフィルムとして、別のポリイミド樹脂層を設けた2層以上のポリイミド樹脂層を有する多層ポリイミドフィルムであってもよく、熱可塑性ポリイミド樹脂層をさらに有することが好ましい。
【0041】
(熱可塑性ポリイミドフィルム)
熱可塑性ポリイミドフィルムに使用されるジアミンと酸二無水物は、非熱可塑性ポリイミド樹脂層に使用されるそれらと同じものが挙げられるが、熱可塑性ポリイミドフィルムとするためには、屈曲性を有するジアミンと酸二無水物とを反応させることが好ましい。
【0042】
屈曲性を有するジアミンの例として、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。またこれらのジアミンと好適に組合せられる酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物などが挙げられる。
【0043】
(多層ポリイミドフィルムの製造方法)
本発明において多層ポリイミドフィルムを製造する方法としては、上記ii)工程において複数の流路を有する共押出しダイを使用して複層の樹脂層を同時に形成しても良いし、上記i)~iv)工程まで進めてポリイミド樹脂層を一旦回収した後、その上に塗工などで新たに樹脂層を形成しても良い。例えば、上述のコアとなるポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドフィルムを有する多層ポリイミドフィルムを得る場合には、コアとなるポリイミドの前駆体および熱可塑性ポリイミドの前駆体を共押出しダイを使用して支持体上に流延し、iii)以降の工程を実施して得ることができる。
【0044】
イミド化には非常に高い温度が必要となるため、ポリイミド以外の樹脂層を設ける場合は、熱分解を抑えるために後者の手段を採った方が好ましい。なお、塗工により熱可塑性ポリイミドフィルムを設ける場合は、熱可塑性ポリイミドの前駆体を塗布し、その後イミド化を行ってもよいし、熱可塑性ポリイミド溶液を塗布・乾燥してもよい。
【0045】
また、熱可塑性ポリイミドフィルムは、上述の工程において、ポリアミック酸溶液を支持体に流延する代わりに、ポリイミド溶液を流延し、冷却することにより得てもよい。
【0046】
本発明の多層ポリイミドフィルムの厚みは、25μm以上であることを特徴とする。多層ポリイミドフィルムの厚みが25μmより薄いと、伝送損失が大きくなり、高周波回路基板用には適さない。一方、伝送損失を小さくするという観点では、多層ポリイミドフィルムの厚みの上限は特にはないが、多層ポリイミドフィルムの製造のしやすさ、生産性などを考慮すると、50μm以下であることが好ましい。
【0047】
(フレキシブル金属箔積層体)
このようにして得られる多層ポリイミドフィルムは、多層ポリイミドフィルムの少なとも片面に金属箔を設けてフレキシブル金属箔積層体とすることができる。多層ポリイミドフィルム上に金属箔を形成する手段としては、
a)上述のようにして多層ポリイミドフィルムを得た後、加熱加圧により金属箔を貼り合せてフレキシブル金属箔積層体を得る手段、
b)金属箔上に、ポリアミック酸を含有する有機溶剤溶液をキャストし、加熱により溶剤除去、イミド化を行ってフレキシブル金属箔積層体を得る手段、
c)金属箔上に、非熱可塑性ポリイミドを含有する溶融液をキャストし、冷却することによりフレキシブル金属箔積層体を得る手段、が挙げられる。
これらのうち、非熱可塑性ポリイミドに溶融性を持たせると、得られるフレキシブル金属箔積層体の半田耐熱性や加熱収縮率などが悪化する可能性があるため、a)もしくはb)の手段を用いることが好ましい。非熱可塑性ポリイミドが溶剤可溶性のものであるなら、ポリアミック酸を含有する有機溶剤溶液の代わりに非熱可塑性ポリイミドを含有する有機溶剤溶液を用いても良い。a)ならびにb)の詳細について、以下説明する。
【0048】
a)の手段では、得られた多層ポリイミドフィルムに、金属箔を加熱加圧(ラミネート)により貼り合せることにより、本発明のフレキシブル金属箔積層体が得られる。金属箔を貼り合せる手段、条件については、従来公知のものを適宜選択すればよい。
【0049】
b)の手段では、金属箔上にポリアミック酸を含有する有機溶剤溶液をキャストする手段については特に限定されず、ダイコーターやコンマコーター(登録商標)、リバースコーター、ナイフコーターなどの従来公知の手段を使用できる。溶剤除去、イミド化を行うための加熱手段についても従来公知の手段を利用可能であり、例えば熱風炉、遠赤外線炉が挙げられる。
【0050】
a)の手段と同様に、化学イミド化法によって加熱時間を短縮し、生産性を向上させることが出来る。しかし、イミド化の過程で脱水閉環剤である酸無水物から酸が生成するため、金属箔の種類によっては酸化が進行してしまう場合がある。脱水閉環剤の添加については、金属箔の種類や加熱条件に応じて適宜選択することが好ましい。
【0051】
非熱可塑性ポリイミドフィルムに、他のポリイミド層を複層設ける場合、もしくはポリイミド以外の樹脂層も設ける場合は、上記キャスト、加熱工程を複数回繰り返すか、共押出しや連続キャストによりキャスト層を複層形成して一度に加熱する手段が好適に用いられ得る。
【0052】
b)の手段では、イミド化が完了すると同時に、本発明のフレキシブル金属箔積層体が得られる。樹脂層の両面に金属箔層を設ける場合、加熱加圧により反対側の樹脂層面に金属箔を貼り合わせれば良い。
【0053】
(金属箔)
本発明において用いることができる金属箔としては特に限定されるものではないが、電子機器・電気機器用途に本発明のフレキシブル金属張積層板を用いる場合には、例えば、銅または銅合金、ステンレス鋼またはその合金、ニッケルまたはニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる箔を挙げることができる。一般的なフレキシブル積層板では、圧延銅箔、電解銅箔といった銅箔が多用されるが、本発明においても好ましく用いることができる。なお、これらの金属箔の表面には、防錆層や耐熱層あるいは接着層が塗布されていてもよい。また、上記金属箔の厚みについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて、十分な機能が発揮できる厚みであればよい。
【0054】
(フレキシブルプリント基板)
本発明に係るフレキシブル金属張積層体の金属層をエッチングして得られるフレキシブルプリント基板は、速い伝送速度、小さい伝送損失の高周波回路基板となる。
【実施例
【0055】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、合成例、実施例及び比較例におけるポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、吸水率、フィルムの厚みの評価方法は次の通りである。
【0056】
(誘電率、誘電正接の測定)
測定装置として、空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置((株)関東電子応用開発製)を用い、ポリイミドフィルムの誘電率および誘電正接を下記条件化で測定した。
測定周波数:10GHz
測定条件:温度22℃~24℃、湿度45%~55%
測定試料:前記測定条件下で、24時間放置した試料を使用した。
【0057】
(吸水率の測定)
50℃で30分乾燥したポリイミドフィルムを22~24℃の水に24時間浸漬した後、フィルム表面の水分を拭き取り、水浸漬前後の質量増加分から吸水率(%)を算出した。
【0058】
(フィルムの厚みの測定)
接触式厚み計Mitsutoyo社製LASER HOLOGAGEを使用してフィルムの厚みを測定した。
【0059】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
ODA:4,4'-ジアミノジフェニルエーテル
m‐TB:2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル
BAPP:2,2‐ビス(4‐アミノフェノキシフェニル)プロパン
TPE‐R:1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPT:ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート
PDA:パラフェニレンジアミン
DDA:ダイマー酸型ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074、炭素数;36、アミン価;205mgKOH/g、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’ ‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TMHQ:パラフェニレンビス(トリメリテート無水物)
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
【0060】
(非熱可塑性ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の合成)
(合成例1)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF330.39g、TPE-R 13.30g、m-TB 7.25gを加え、攪拌しながらTMHQ 15.66g及びPMDA8.20gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。その後、PDA 3.69gを加えた後、攪拌しながらPMDA 8.45gを徐々に添加し、PMDAが溶解したことを確認後、30分間攪した。最後に、0.75gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0061】
(合成例2)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF331.20g、TPE-R 6.10g、m-TB 6.65g、BAPP 8.57gを加え、攪拌しながらBPDA 19.35gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。その後、BAPT 10.91gを加えた後、攪拌しながらPMDA 7.74gを徐々に添加し、PMDAが溶解したことを確認後、30分間攪した。最後に、0.68gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0062】
(合成例3)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF340.00g、ODA 11.96g、BAPT 8.92gを加え、攪拌しながらTMHQ 37.94gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。最後に、1.17gのTMHQを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0063】
(合成例4)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMAc 340.00g、ODA 9.79g、BAPT 8.52g、DDA 4.34gを加え、攪拌しながらTMHQ 36.23gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。最後に、1.12gのTMHQを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0064】
(合成例5)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF340.00g、ODA24.30gを加え、攪拌しながらTMHQ34.63gを徐々に添加した。TMHQが溶解したことを目視で確認後30分間攪拌を行った。最後に、1.25gのTMHQを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0065】
(合成例6)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF340.00g、BAPT32.53gを加え、攪拌しながらBPDA26.65gを徐々に添加した。BPDAが溶解したことを目視で確認後30分間攪拌を行った。最後に、0.82gのBPDAを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0066】
(合成例7)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF327.90g、ODA28.72gを加え、攪拌しながら、PMDA30.34gを徐々に添加した。PMDAが溶解したことを目視で確認後30分間攪拌を行った。最後に、0.94gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0067】
(合成例8)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF340.00g、ODA24.30gを加え、攪拌しながらBPDA34.63gを徐々に添加した。BPDAが溶解したことを目視で確認後30分間攪拌を行った。最後に、1.07gのBPDAを粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0068】
(合成例9)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF329.40g、TPE-R7.34g、m-TB8.00g、BAPP10.31gを加え、攪拌しながらBPDA11.09g及びPMDA9.04gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。その後、PDA4.08gを加えた後、攪拌しながらPMDA9.32gを徐々に添加し、PMDAが溶解したことを確認後、30分間攪した。最後に、0.82gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が2000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0069】
(熱可塑性ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の合成)
(合成例10)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF 323.04g、BAPP 43.61gを加え、攪拌しながらBPDA 4.69g、PMDA 19.00gを徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。最後に、0.70gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が1000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0070】
(合成例11)
室温、窒素雰囲気下で、2000mlのセパラブルフラスコにDMF 299.82g、TPE-R 32.18gを加え、攪拌しながらBPDA 34.13g、を徐々に添加し、溶解したことを目視で確認後、30分間攪拌を行った。最後に、1.69gのBAPPを固形分濃度5.0%となるようにDMFに溶解した溶液を調整し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加して、23℃での粘度が1000ポイズに達した時点で添加、撹拌をやめ、ポリイミド前駆体を得た。
【0071】
(実施例1)
合成例1で得られた非熱可塑性ポリイミド前駆体(60g)に、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比2.48/0.75/4.27)からなる硬化剤を30.0g添加して0℃以下の温度で攪拌・脱泡し、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延塗布した。この樹脂膜を110℃×130秒で加熱した後、アルミ箔から自己支持性のゲル膜を引き剥がして金属製の固定枠に固定し、250℃×15秒、350℃×79秒で乾燥・イミド化させて厚み17μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。
合成例10で得られた熱可塑性ポリイミド前駆体を固形分濃度10重量%になるまで希釈した後、上記で得られたポリイミドフィルムの片面に最終片面厚みが4μmとなるようにコンマコーターで流延塗布し、120℃で120秒乾燥した。もう片面も同様に最終厚みが4μmとなうように熱可塑性ポリイミド前駆体を塗布した後、120℃で120秒乾燥した。続いて、350℃で20秒間加熱処理を行って、総厚み25μmポリイミド積層体を得た。得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0072】
(実施例2~実施例6)
合成例1で得られた非熱可塑性ポリイミド前駆体を合成例2~4に変更する以外は、実施例1と同様にして実施した。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。また、得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0073】
(実施例7)
合成例10で得られた熱可塑性ポリイミド前駆体を合成例11に変更する以外は、実施例1と同様にして実施した。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。また、得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0074】
(実施例8)
合成例1で得られた非熱可塑性ポリイミド前駆体を合成例2に変更する以外は、実施例5と同様にして実施した。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。また、得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0075】
(比較例1~3)
合成例1で得られた非熱可塑性ポリイミド前駆体を合成例7~9に変更する以外は、実施例1と同様にして実施した。得られたポリイミドフィルムの誘電率、誘電正接、並びに吸水率を表1に示す。また、得られたポリイミド積層体の誘電率、誘電正接を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】