(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】仮設足場の幅木固定構造及びその幅木固定方法
(51)【国際特許分類】
E04G 7/28 20060101AFI20240201BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20240201BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E04G7/28 301B
E04G5/00 301A
F16B2/10 B
(21)【出願番号】P 2019214438
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼宮 一雅
(72)【発明者】
【氏名】星野 克之
(72)【発明者】
【氏名】磯部 凌吾
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第6528294(JP,B1)
【文献】実開平05-042504(JP,U)
【文献】特開2011-032687(JP,A)
【文献】特開昭62-137356(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0122078(KR,A)
【文献】欧州特許出願公開第01249563(EP,A1)
【文献】特開2016-196776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/28
E04G 5/00
E04G 7/34
F16B 2/00-2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数本の支柱と、作業者が乗るために前記複数本の支柱に沿って配置された作業足場板とを含んで構築されている仮設足場の前記複数本の支柱のうち、少なくとも1本の支柱に配設され
る幅木固定具により、前記支柱と前記作業足場板との間に配置される幅木と、この幅木と前記作業足場板との間のすき間を塞ぐためのすき間塞ぎ部材の幅木重ね部
とを、前記幅木の厚さ方向に重ね合わせて固定するための
仮設足場の幅木固定構造であって、
前記幅木固定具は、前記支柱に取り付けられた取付体と、この取付体に配置されている押圧部材と、を含んで構成され、
前記押圧部材には、前記作業足場板側へ突出した箇所において、前記幅木の前記厚さ方向に重ね合わせられて配置されている前記幅木と前記幅木重ね部とを、前記支柱との間で前記支柱側へ押圧して固定するための押圧部が設けられ、
前記幅木の前記厚さ方向についての前記取付体から前記押圧部までの距離が調整可能となっており、
前記幅木の上方と前記幅木重ね部の上方とを越える部分を有している前記押圧部材に設けられている前記押圧部は、前記幅木の上端と比べて低い位置となっている前記幅木重ね部の上端を越えて下側へ延出する長さを有していることを特徴とする
仮設足場の幅木固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の
仮設足場の幅木固定構造において、前記押圧部材は前記取付体に結合されて配置され、この取付体は、前記支柱の外周にこの支柱を中心に回動可能となって取り付けられ、前記支柱を中心とする前記取付体の回動により、前記幅木の前記厚さ方向についての前記取付体から前記押圧部までの前記距離が調整されることを特徴とする
仮設足場の幅木固定構造。
【請求項3】
請求項2に記載の
仮設足場の幅木固定構造において、前記押圧部材は、前記取付体に結合されたベース部と、このベース部から前記幅木の上方と前記幅木重ね部の上方とを越えて前記作業足場板側へ延出しているアーム部と、このアーム部の先端から下方へ延出している前記押圧部と、を有するものとなっていることを特徴とする
仮設足場の幅木固定構造。
【請求項4】
請求項3に記載の
仮設足場の幅木固定構造において、前記取付体に結合されている前記ベース部は下方へ延びており、このベース部の下端から前記アーム部は水平方向に延びていることを特徴とする
仮設足場の幅木固定構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の
仮設足場の幅木固定構造において、前記押圧部材は、棒材の折り曲げ品であることを特徴とする
仮設足場の幅木固定構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の
仮設足場の幅木固定構造において、前記押圧部の下端は、前記幅木と前記幅木重ね部とのうちの前記作業足場板側となっている一方に前記作業足場板側へ突出して設けられている凸部を越える位置まで達していることを特徴とする
仮設足場の幅木固定構造。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の
仮設足場の幅木固定構造において、前記押圧部の下端には、前記幅木と前記幅木重ね部とのうちの前記作業足場板側となっている一方に前記作業足場板側へ突出して設けられている凸部の下面を下から受けるための受け部が設けられていることを特徴とする
仮設足場の幅木固定構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の
仮設足場の幅木固定構造において、前記押圧部は、前記作業足場板の長さ方向に直列状態で配置されている2個の前記幅木における前記幅木の厚さ方向に重ね合わせられている端部同士を前記支柱側へ押圧して固定するものとなっていることを特徴とする
仮設足場の幅木固定構造。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の
仮設足場の幅木固定構造において、前記押圧部は、前記作業足場板の長さ方向に直列状態で配置されている2個の前記すき間塞ぎ部材の前記幅木重ね部における前記幅木の厚さ方向に重ね合わせられている端部同士を前記支柱側へ押圧して固定するものとなっていることを特徴とする
仮設足場の幅木固定構造。
【請求項10】
並設される複数本の支柱と、作業者が乗るために前記複数本の支柱に沿って配置される作業足場板とを含んで構築される仮設足場の前記複数本の支柱のうち、少なくとも1本の支柱に幅木固定具を取り付け、この幅木固定具により、前記支柱と前記作業足場板の間に配置される幅木と、この幅木と前記作業足場板との間のすき間を塞ぐためのすき間塞ぎ部材の幅木重ね部と、を、前記幅木の厚さ方向に重ね合わせて固定するための仮設足場の幅木固定方法であって、
前記幅木固定具は、取付体と、この取付体に配置されていて、押圧部を備えている押圧部材と、を含んで構成され、
前記取付体を前記支柱に取り付けることにより、前記押圧部材の前記押圧部を、前記幅木の上方と前記幅木重ね部の上方とを越えて前記作業足場板側へ突出した位置に配置するための第1作業工程と、
前記第1作業工程の後に実施され、前記幅木の前記厚さ方向についての前記取付体から前記押圧部までの距離を調整するための第2作業工程と、
前記第2作業工程を実施することにより、前記押圧部を、前記支柱と前記押圧部との間で前記幅木の前記厚さ方向に重ね合わせられている前記幅木と前記幅木重ね部とのうちの一方の前記作業足場板側
の面に当接させることにより、これらの幅木と幅木重ね部を前記支柱側へ押圧して固定するための第3作業工程と、
を含んでいることを特徴とする仮設足場の幅木固定方法。
【請求項11】
請求項10に記載の仮設足場の幅木固定方法において、前記押圧部材は前記取付体に結合されて配置され、この取付体は、前記支柱の外周にこの支柱を中心に回動可能となって取り付けられ、前記幅木の前記厚さ方向についての前記取付体から前記押圧部までの距離を調整するための前記第2作業工程は、前記支柱を中心とする前記取付体の回動により実施されることを特徴とする仮設足場の幅木固定方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の仮設足場の幅木固定方法において、前記幅木と前記幅木重ね部は、これらのうちの一方が前記作業足場板側となって前記幅木の前記厚さ方向に重ね合わせられ、前記一方には前記作業足場板側へ突出した凸部が設けられ、前記第3作業工程は、前記押圧部の先端に設けられている受け部により、前記凸部の下面を下から受けるための作業工程ともなっていることを特徴とする仮設足場の幅木固定方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれかに記載の仮設足場の幅木固定方法において、前記取付体を取り付ける前記支柱の周辺部において、2個の前記幅木の長さ方向の端部同士がこれらの幅木の前記厚さ方向に重ね合わせられているとともに、2個の前記すき間塞ぎ部材の前記幅木重ね部の長さ方向の端部同士も前記幅木の前記厚さ方向に重ね合わせられており、前記第3作業工程は、前記2個の幅木の長さ方向のそれぞれの前記端部と、前記2個のすき間塞ぎ部材の幅木重ね部の長さ方向のそれぞれの前記端部とを、前記押圧部により前記支柱側へ押圧して固定するための作業工程となっていることを特徴とする仮設足場の幅木固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱や、作業足場板、幅木等により構築される仮設足場に幅木を幅木固定具により固定するための仮設足場の幅木固定構造及びその幅木固定方法に係り、特に、仮設足場に幅木と作業足場板との間のすき間を塞ぐためのすき間塞ぎ部材を配置する場合に、このすき間塞ぎ部材を幅木と共に幅木固定具により固定するための仮設足場の幅木固定構造及び幅木固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築作業現場や土木作業現場等の各種作業現場では、支柱や、作業足場板、幅木等により仮設足場が構築され、幅木は、並設されている複数本の支柱と、作業者が乗るためにこれらの支柱に沿って配置された作業足場板との間に配置される部材であって、作業足場板の上から工具や作業者等が落下することを防止するための部材であり、下記の特許文献1には、このような幅木を仮設足場に固定するために、支柱に配設された幅木固定具が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幅木と作業足場板との間にすき間が生ずる場合には、このようなすき間を塞ぐためのすき間塞ぎ部材を仮設足場に配置することが求められ、このすき間塞ぎ部材に、幅木の厚さ方向に幅木と重ね合わせられる幅木重ね部を設ける場合には、これらの幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部とを有効に固定しなければならない。
【0005】
本発明の目的は、幅木の厚さ方向に重ね合わせられる幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部とを有効に押圧して固定できるようになる仮設足場の幅木固定具及びその幅木固定方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る仮設足場の幅木固定具は、並設された複数本の支柱と、作業者が乗るために前記複数本の支柱に沿って配置された作業足場板とを含んで構築されている仮設足場の前記複数本の支柱のうち、少なくとも1本の支柱に配設されて、前記支柱と前記作業足場板との間に配置される幅木と、この幅木と前記作業足場板との間のすき間を塞ぐためのすき間塞ぎ部材の幅木重ね部と、を、前記幅木の厚さ方向に重ね合わせて固定するための仮設足場の幅木固定具であって、前記支柱に取り付けられた取付体と、この取付体に配置され、押圧部が前記取付体から前記作業足場板側へ突出した箇所に設けられている押圧部材と、を含んで構成され、前記幅木の前記厚さ方向についての前記取付体から前記押圧部までの距離が調整可能となっているとともに、前記支柱と前記押圧部との間に前記幅木の前記厚さ方向に重ね合わせられて配置されている前記幅木と前記幅木重ね部とが、前記押圧部により前記支柱側へ押圧されて固定されることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明に係る仮設足場の幅木固定具は、支柱に取り付けられた取付体と、この取付体に配置され、押圧部が取付体から作業足場板側へ突出した箇所に設けられている押圧部材と、を含んで構成されたものとなっており、また、取付体から押圧部までの距離は、幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部幅との重ね合わせ方向となっている幅木の厚さ方向に調整可能となっているため、幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部との重ね合わせ寸法がどのような寸法となっていても、上記調整を行うことにより、幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部とを押圧部材の押圧部により支柱側へ押圧して固定することができる。
【0008】
以上の本発明に係る仮設足場の幅木固定具において、取付体から押圧部までの距離を、幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部幅との重ね合わせ方向となっている幅木の厚さ方向に調整可能とするためには、例えば、押圧部を有する押圧部材を取付体にスライド可能に配置し、押圧部材を取付体に対してスライドさせることにより、幅木の厚さ方向についての取付体から押圧部までの距離を調整できるようにしてもよく、あるいは、押圧部材を取付体に結合して配置するとともに、この取付体を、支柱の外周にこの支柱を中心に回動可能に取り付け、支柱を中心とする取付体の回動により、幅木の厚さ方向についての取付体から押圧部までの距離を調整できるようにしてもよい。
【0009】
これらのうち、後者によると、押圧部材を取付体に結合して配置すればよく、また、幅木の厚さ方向についての取付体から押圧部までの距離を調整するためには、取付体を支柱を中心に回動させればよいため、幅木固定具の構造を簡単化できるとともに、幅木の厚さ方向についての取付体から押圧部までの距離を調整するための作業を容易に実施できるようになる。
【0010】
また、このように押圧部材を取付体に結合して配置し、この取付体を、支柱の外周にこの支柱を中心に回動可能に取り付け、支柱を中心とする取付体の回動により、幅木の厚さ方向についての取付体から押圧部まで距離を調整できるようにするためには、押圧部材を、例えば、取付体に結合されたベース部と、このベース部から幅木の上方とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部の上方とを越えて作業足場板側へ延出するアーム部と、このアーム部の先端から下方へ延出している前記押圧部と、を有するものとすればよい。
【0011】
また、このように押圧部材を、取付体に結合されたベース部と、このベース部から幅木の上方とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部の上方とを越えて作業足場板側へ延出するアーム部と、このアーム部の先端から下方へ延出している前記押圧部と、を有するものとする場合には、この押圧部材は、棒材の折り曲げ品としてもよく、あるいは、板金のプレス品としてもよい。
【0012】
押圧部材を棒材の折り曲げ品とした場合には、この押圧部材を、棒材の折り曲げ加工により容易かつ安価に製造することができる。
【0013】
また、幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部とを幅木の厚さ方向に重ね合わせる場合において、これらのうち、作業足場板側となる一方に、作業足場板側へ突出した凸部が設けられている場合には、前記押圧部の先端に、この凸部の下面を下から受けるための受け部を設けてもよい。
【0014】
これによると、幅木の厚さ方向に重ね合わせられている幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部とのうち、作業足場板側となる一方の重量を、押圧部の先端に設けられた受け部によって支持できることができる。
【0015】
また、幅木と幅木重ね部のうち、板状となっている他方に、幅木の厚さ方向に凹凸となった凹部と凸部とが上下方向に並設され、これらの凹部と凸部のうち、作業足場板側へ突出している凸部に、板状となっている前記一方の前記凸部を嵌合させることにより、幅木と幅木重ね部とを幅木の厚さ方向に重ね合わせてもよい。
【0016】
これによると、幅木と幅木重ね部の両方の重量を、押圧部の先端に設けられた受け部によって支持できることになる。
【0017】
以上の本発明に係る仮設足場の幅木固定具において、幅木の厚さ方向に重ね合わせられて押圧部材の押圧部により支柱側に押圧されて固定されるものは、幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部だけでもよく、あるいは、幅木固定具の取付体が取り付けられる支柱の周辺部において、2個の幅木の長さ方向の端部同士がこれらの幅木の厚さ方向に重ね合わせられ、2個のすき間塞ぎ部材の幅木重ね部の長さ方向の端部同士も、幅木固定具の取付体が取り付けられる支柱の周辺部において、幅木の厚さ方向に重ね合わせられる場合には、2個の幅木の長さ方向のそれぞれの前記端部と、2個のすき間塞ぎ部材の幅木重ね部の長さ方向のそれぞれの前記端部とを、押圧部材の押圧部により支柱側へ押圧して固定するようにしてもよい。
【0018】
これらのうち、後者のように、2個の幅木の長さ方向のそれぞれの前記端部と、2個のすき間塞ぎ部材の幅木重ね部の長さ方向のそれぞれの前記端部とを、押圧部材の押圧部により支柱側へ押圧して固定するようにすると、これらの端部に関する幅木の厚さ方向の重ね合わせ寸法は大きくなるが、前述したように取付体から押圧部までの距離は、幅木の厚さ方向に調整可能となっているため、本発明に係る仮設足場の幅木固定具によると、このように大きくなる寸法にも有効に対処できるようになる。
【0019】
本発明に係る仮設足場の幅木固定方法は、並設される複数本の支柱と、作業者が乗るために前記複数本の支柱に沿って配置される作業足場板とを含んで構築される仮設足場の前記複数本の支柱のうち、少なくとも1本の支柱に幅木固定具を取り付け、この幅木固定具により、前記支柱と前記作業足場板の間に配置される幅木と、この幅木と前記作業足場板との間のすき間を塞ぐためのすき間塞ぎ部材の幅木重ね部と、を、前記幅木の厚さ方向に重ね合わせて固定するための仮設足場の幅木固定方法であって、前記幅木固定具は、取付体と、この取付体に配置されていて、押圧部を備えている押圧部材と、を含んで構成され、前記取付体を前記支柱に取り付けることにより、前記押圧部材の前記押圧部を、前記取付体から前記幅木の上方と前記幅木重ね部の上方とを越えて前記作業足場板側へ突出した位置に配置するための第1作業工程と、この第1作業工程の後に実施され、前記幅木の前記厚さ方向についての前記取付体から前記押圧部までの距離を調整するための第2作業工程と、この第2作業工程を実施することにより、前記押圧部を、前記支柱と前記押圧部との間で前記幅木の前記厚さ方向に重ね合わせられている前記幅木と前記幅木重ね部とのうちの一方の前記作業足場板側に面に当接させることにより、これらの幅木と幅木重ね部を前記支柱側へ押圧して固定するための第3作業工程と、を含んでいることを特徴とするものである。
【0020】
この仮設足場の幅木固定方法によると、第2作業工程において、幅木の厚さ方向についての取付体から押圧部までの距離を調整するための作業が実施されるため、幅木の厚さ方向が重ね合わせ方向となっている幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部との重ね合わせ寸法がどのような寸法となっていても、上記調整作業により、幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部とを押圧部材の押圧部により支柱側へ押圧して仮設足場に有効に固定することができる。
【0021】
この仮設足場の幅木固定方法においても、第2作業工程で幅木の厚さ方向についての取付体から押圧部までの距離を調整することは、例えば、押圧部を有する押圧部材を取付体にスライド可能に配置し、押圧部材を取付体に対してスライドさせることにより、押圧部材に設けられている押圧部についての取付体からの距離を幅木の厚さ方向に調整することでもよく、あるいは、押圧部材を取付体に結合して配置するとともに、この取付体を、支柱の外周にこの支柱を中心に回動可能に取り付け、支柱を中心とする取付体の回動により、押圧部材に設けられている押圧部についての取付体からの距離を幅木の厚さ方向に調整することでもよい。
【0022】
これらのうち、後者によると、押圧部材を取付体に結合して配置すればよく、また、幅木の厚さ方向についての取付体から押圧部までの距離を調整するためには、取付体を支柱を中心に回動させればよいため、押圧部材に設けられている押圧部についての取付体からの距離を幅木の厚さ方向に調整するための作業を容易に実施することができるようになる。
【0023】
また、以上の本発明に係る仮設足場の幅木固定方法において、幅木の厚さ方向に重ね合わせられている幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部とのうち、作業足場板側となっている一方に、作業足場板側へ突出した凸部が設けられている場合には、第3作業工程において、前記押圧部の先端に設けられた受け部により、前記凸部の下面を下から受けるようにしてもよい。
【0024】
これによると、幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部を支柱側へ押圧して固定するための第3作業工程を、幅木の厚さ方向に重ね合わせられている幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部とのうち、作業足場板側となっている一方の重量を、押圧部の先端に設けられた受け部によって支持するための作業工程にもできるようになる。
【0025】
また、この仮設足場の幅木固定方法においても、第3作業工程により、押圧部材の押圧部により支柱側に押圧されて固定されるものは、幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部だけでもよく、あるいは、幅木固定具の取付体が取り付けられる支柱の周辺部において、2個の幅木の長さ方向の端部同士がこれらの幅木の厚さ方向に重ね合わせられ、2個のすき間塞ぎ部材の幅木重ね部の長さ方向の端部同士も、幅木固定具の取付体が取り付けられる支柱の周辺部において、幅木の厚さ方向に重ね合わせられている場合には、第3作業工程を、2個の幅木の長さ方向のそれぞれの前記端部と、2個のすき間塞ぎ部材の幅木重ね部の長さ方向のそれぞれの前記端部とを、押圧部材の押圧部により支柱側へ押圧して固定する作業工程としてもよい。
【0026】
なお、以上説明した本発明に係る仮設足場の幅木固定具及びその幅木固定方法において、幅木等とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部等とを重ね合わせるとは、必ずしも全体的に接触させることでなく、一部等にすき間が設けられる状態をも含むものである。
【0027】
また、以上説明した本発明に係る仮設足場の幅木固定具及びその幅木固定方法は、支柱と作業足場板と幅木とすき間塞ぎ部材とが用いられて構築され、任意の用途のために用いられる仮設足場に適用することができ、このため、本発明に係る仮設足場は、例えば、建築作業のための仮設足場でもよく、解体作業のための仮設足場でもよく、塗装作業のための仮設足場でもよく、さらには、土木作業等のための仮設足場でもよい。
【0028】
また、幅木固定具の取付体が取り付けられる支柱は、横架部材や手摺り部材等の水平部材により連結される以前ではそれぞれが独立している複数本の支柱を用いる仮設足場については、これらの支柱のうちの少なくとも1本の支柱でもよく、あるいは、建枠を用いて構築される仮設足場については、この建枠の一部を構成する部材となっている支柱でもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、幅木の厚さ方向に重ね合わせられる幅木とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部とを有効に固定できるようになるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るすき間塞ぎ部材と幅木固定具が用いられて構築されている仮設足場の要部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、すき間塞ぎ部材の全体を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、すき間塞ぎ部材を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【
図5】
図5は、すき間塞ぎ部材の拡大した左側面図である。
【
図6】
図6は、
図1及び
図2で示されている幅木とすき間塞ぎ部材を固定するための幅木固定具を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、幅木固定具の取付体が支柱を中心に回動可能となっていることを示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示されている幅木の厚さ方向に重ね合わせられている幅木の長さ方向の端部とすき間塞ぎ部材の幅木重ね部の長さ方向の端部との関係において、幅木固定具の取付体を支柱を中心に回動させる以前を実線で示し、回動させた後を二点鎖線で示した平面図である。
【
図10】
図10は、押圧部材の押圧部の先端に受け部が設けられている別実施形態に係る幅木固定具を示す
図7と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るすき間塞ぎ部材10と幅木固定具18が用いられた仮設足場1の要部が示されている。この仮設足場1は、左右方向と前後方向にそれぞれ並設されている複数本の支柱2と、前後方向に並設されている2本の支柱2の間に水平に架け渡された横架部材3と、左右方向が長さ方向となっている2個の作業足場板4と、左右方向が長さ方向となっている2個の幅木5とを含んで構築されており、2個の作業足場板4は、左右方向に並設されている複数本の支柱2に沿って配置されているとともに、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置され、また、2個の幅木5は、支柱2と作業足場板4との間において、作業足場板4に沿って配設され、長さ方向が作業足場板4の長さ方向となっているこれらの幅木5は、これらの幅木5の長さ方向の端部同士が、作業足場板4の幅方向である幅木5の厚さ方向に重ね合わせられて、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置されている。
【0032】
それぞれの作業足場板4は、作業者が乗って歩行や作業等を行うための本体6と、作業足場板4の長さ方向の両端において、本体6から作業足場板4の長さ方向に突出した状態で設けられているフック部材7とを有するものとなっており、作業足場板4の長さ方向のそれぞれの端部において、作業足場板4の幅方向に2個ずつ設けられているフック部材7が横架部材3に上から係止されることにより、作業足場板4は仮設足場1に設置されている。
【0033】
図2は、
図1の左側面図であり、この
図2に示されているように、作業足場板4と幅木5との間には、すき間Sが存在する。2本の横架部材3の間において、作業足場板4の長さ方向に延びて形成されているこのすき間Sを塞ぐために、すき間塞ぎ部材10が仮設足場1に配置されている。このすき間塞ぎ部材10は、
図1に示されているように、幅木5と同様に、長さ方向が作業足場板4の長さ方向となっているものであって、複数のすき間塞ぎ部材10が、後述するように、これらのすき間塞ぎ部材10の長さ方向の端部同士が幅木5の厚さ方向に重ね合わせられて、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置されている。
【0034】
図3には、すき間塞ぎ部材10の全体の斜視図が示され、
図4(A)(B)(C)は、すき間塞ぎ部材10の平面図、正面図、底面図である。また、
図5には、すき間塞ぎ部材10の拡大した左側面図が示され、
図7には、
図2の一部拡大図が示されている。これらの
図3~
図5、
図7から分かるように、すき間塞ぎ部材10は、作業足場板4の長さ方向と直交する方向となっている幅木5の厚さ方向のうち、作業足場板4側において、幅木5と重ね合わせられる幅木重ね部11と、鉛直の立ち上がり状態となっているこの幅木重ね部11の下端部11Cから作業足場板4側へ下り傾斜で延出している覆い部12とを有するものとなっている。また、
図3に示されているように、幅木重ね部11の長さ寸法は、L1であり、覆い部12の長さ寸法は、L1よりも短い寸法となっているL2である。このため、すき間塞ぎ部材10の全体形状は、覆い部12の長さ方向の両端部に、L1とL2の差の半分の長さ寸法L3となっている切欠部13が2個形成された形状となっている。
【0035】
覆い部12の長さ寸法L2は、作業足場板4の本体6の長さ寸法と同じ又は略同じである。なお、仮設足場1に用いられるそれぞれの作業足場板4において、作業足場板4の長さ方向の両端に設けられているフック部材7の形状や、高さ寸法、配置位置が異なっている場合であって、
図1に示されているように、フック部材7が、本体6に結合状態となっている基部7Aと、この基部7Aにおける作業足場板4の長さ方向外側に設けられ、横架部材3に上から係止されるフック部7Bとからなり、基部7Aの上面の高さ位置が本体6の上面の高さ位置と同じ又はこの高さ位置よりも低くなっていて、フック部7Bの上端の高さ位置が本体6の上面の高さ位置よりも高くなっている場合には、覆い部12の長さ寸法L2を、作業足場板4の本体6の長さ寸法と、作業足場板4の長さ方向の両端に設けられているフック部材7の基部7Aの長さ寸法との合計値と同じ又は略同じにしてもよい。
【0036】
図1や
図2、
図7で示されているように板材の折り曲げ状の形状で形成されている幅木5は、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形品又は引き抜き成形品、あるいは、板金のプレス成形品であり、この幅木5には、
図7に示されているように、作業足場板4から見て幅木5の厚さ方向に凹凸となった凸部5Aと凹部5Bが、それぞれ複数個ずつ上下方向に交互に並設されているとともに、縦断面形状が幅木5の厚さ方向となっている横向きに台形状又は略台形状となっているこれらの凸部5Aと凹部5Bは、幅木5の全長に渡って連続して形成されている。幅木5と同様に、板材の折り曲げ状の形状で形成されているすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11にも、作業足場板4から見て幅木5の厚さ方向に凹凸となった凸部11Aと凹部11Bが形成され、これらの凸部11Aと凹部11Bは、それぞれ1個ずつ上下方向に形成されているとともに、凸部11Aと凹部11Bも、縦断面形状が幅木5の厚さ方向となっている横向きに台形状又は略台形状となっている。
【0037】
そして、幅木重ね部11の凸部11Aと凹部11Bは、幅木5の凸部5Aと凹部5Bに対応する形状及び寸法となっており、このため、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11を、作業足場板4の長さ方向と直交する方向となっている幅木5の厚さ方向のうち、作業足場板4側にして、幅木重ね部11の凸部11A、凹部11Bと幅木5の凸部5A、凹部5Bとを嵌合させて、幅木重ね部11を幅木5と良好に重ね合わせることができるようになっている。
【0038】
図7に示されているように、すき間塞ぎ部材10の覆い部12は、幅木5側の第1下り傾斜部14と、作業足場板4側の第2下り傾斜部15とからなり、
図5に示されているように、第1下り傾斜部14における幅木5側の端部が、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の下端部11Cに接続されているとともに、第2下り傾斜部15における幅木5側の端部が、第1下り傾斜部14における作業足場板4側の端部に接続されている。また、作業足場板4の本体6の上面と同じになっている水平面16に対する第1下り傾斜部14の傾斜角度は、αであり、水平面16に対する第2下り傾斜部15の傾斜角度は、αよりも小さい角度のβであり、したがって、第1下り傾斜部14の傾斜角度αは、第2下り傾斜部15の傾斜角度βよりも大きくなっている。
【0039】
また、
図5に示されているように、第2下り傾斜部15の作業足場板4側の端部となっている覆い部12の作業足場板4側の端部12Aは、上下寸法が大きい厚肉部となっており、この端部12Aの下面12Bは水平面となっているため、
図1に示されているように、すき間塞ぎ部材10が仮設足場1の所定箇所に設置されたときに、この端部12Aの下面12Bを作業足場板4の本体6の上面に良好に面接触させることができるようになっている。
【0040】
また、
図3に示されているように、第1下り傾斜部14についての作業足場板4の長さ方向と直交する幅方向における幅寸法は、W1であり、第2下り傾斜部15についての作業足場板4の長さ方向と直交する幅方向における幅寸法は、W1よりも大きい寸法のW2となっている。
【0041】
さらに、
図3に示されているように、覆い部12のうち、第2下り傾斜部15の上面には、滑り止め部17が形成されており、この滑り止め部17は、
図5に拡大されて示されているように、縦断面形状が三角形状又は略三角形状となっている微小の複数個の凸条部17Aと、縦断面形状が逆三角形状又は略逆三角形状となっている微小の複数個の凹条部17Bとが、作業足場板4の幅方向となっている第2下り傾斜部15の幅方向に交互に形成されたものとなっており、これらの凸条部17Aと凹条部17Bは、作業足場板4の長さ方向となっている第2下り傾斜部15の全長、これを言い換えると、第2下り傾斜部15が設けられている覆い部12の全長に渡って形成されているため、滑り止め部17は、覆い部12の全長に渡って連続したものとなっている。また、このような滑り止め部17は、覆い部12の幅方向に間隔を開けて複数個、本実施形態では3個設けられている。
【0042】
図1で説明したように、支柱2と作業足場板4との間において作業足場板4に沿って配設される2個の幅木5は、長さ方向の端部同士がこれらの幅木5の厚さ方向に重ねられて、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置され、また、幅木重ね部11が、幅木5の厚さ方向のうちの作業足場板4側において、幅木5に重ね合わせられる2個のすき間塞ぎ部材10は、幅木重ね部11の長さ方向の端部同士が幅木5の厚さ方向に重ねられて、作業足場板4の長さ方向に直列状態で配置される。そして、このように幅木5と、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11とを幅木5の厚さ方向に重ね合わせた状態で固定するために用いられる本実施形態に係る幅木固定具18が、
図1に示されているように、作業足場板4の長さ方向となっている左右方向に並設されている複数本の支柱2のうちの1本の支柱2に取り付けられ、幅木固定具18が取り付けられているこの1本の支柱2は、2個の幅木5の長さ方向の端部同士が重ね合わせられていて、2個のすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の長さ方向の端部同士も重ね合わせられている箇所の近傍に配置されている支柱2である。
【0043】
幅木固定具18は、
図6に示されているように、支柱2に取り付けられる取付体となっているクランプ19と、このクランプ19を構成する部材であって、中心軸20を中心に開閉自在となっている2個の挟着部材21,22のうち、一方の挟着部材21に溶接部23で結合された押圧部材24とからなるものである。
【0044】
棒材の折り曲げ品となっているこの押圧部材24は、溶接部23で挟着部材21に結合されて下方向に延びているベース部24Aと、このベース部24Aの下端から水平方向に延びているアーム部24Bと、このアーム部24Bの端部から下方向に延びている押圧部24Cとからなるクランク形状のものである。また、挟着部材21には、ボルト部材25の基端部がピン26で回動可能に連結されており、中心軸20を中心に開いた2個の挟着部材21,22の間に支柱2を挿入した後に、中心軸20を中心に2個の挟着部材21,22部材を閉じて、ボルト部材25を挟着部材22に設けられている凹部22Aに挿入し、ボルト部材25に螺合されているナット27を回転操作して締め付けることにより、クランプ19は、2個の挟着部材21,22による挟着作用により、幅木固定具18の取付体となって支柱2の外周に取り付けられる。このため、ナット27を緩めることにより、
図8に示されているように、支柱2を中心にクランプ19及び押圧部材24を回動させることができ、この回動を行うと、後述するように、幅木5と、この幅木5に重ね合わせられているすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11とに対して、幅木5の厚さ方向についてのクランプ19から押圧部材24の押圧部24Cまでの距離を調整、変更することができる。このため、2個の幅木5の長さ方向の端部同士を重ね、さらに、2個のすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の端部同士を重ねても、
図7に示されているように、幅木5とすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11とを、押圧部材24の押圧部24Cにより支柱2側に押圧して固定することができる。
【0045】
なお、
図3に示されているように、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の長さ方向の両端部には、長孔による孔28が形成され、また、
図1に示されているように、幅木5の長さ方向の両端部にも、長孔による孔29が形成されている。これらの孔28,29がすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11と幅木5とに設けられている理由は、作業者が通る作業者用通路を複数個の作業足場板4により形成し、これらの作業足場板4のうち、2個の作業足場板4を平面視で直角に配置することにより作業者用通路のコーナー部を形成する場合においては、これらの作業足場板4に沿って配置されるそれぞれ2個ずつの幅木5及びすき間塞ぎ部材10も、平面視で直角に配置されるため、コーナー部に立設されている支柱に結合された幅木固定具に設けられているピン部材を、これらの幅木5及びすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11に設けられた孔28,29に貫通させることにより、これらの幅木5及びすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11を、コーナー部に立設されている支柱に結合された上記幅木固定具により固定できるようにするためである。
【0046】
以上説明した本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10は、アルミ製又はアルミ合金製である。すなわち、このすき間塞ぎ部材10は、アルミ又はアルミ合金の押し出し成形品又は引き抜き成形品に、前述した切欠部13を形成する切除加工や、孔28を設ける孔開け加工等を行うことにより製造されている。
【0047】
本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10が、
図1で示されている仮設足場1に設置されるときには、この
図1に示されているように、すき間塞ぎ部材10の長さ方向の両端部の位置を作業足場板4の長さ方向の両端部の位置と一致又は略一致させる。これにより、すき間塞ぎ部材10の覆い部12は、
図2及び
図7で示されているように、作業足場板4と幅木5との間のすき間Sと、作業足場板4の本体6のうちの一部とを覆うことになり、このため、覆い部12により覆われるすき間Sの長さ方向の範囲内において、工具等の物体がすき間Sから落下することは防止される。また、覆い部12の長さ寸法L2は、作業足場板4の本体6の長さ寸法と同じ又は略同じになっていて、この長さ寸法L2は、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の長さ寸法L1よりも短いため、この覆い部12が、作業足場板4の長さ方向の両端に設けられているフック部材7の上面を覆うことはなく、これらのフック部材7を露出させることができる。
【0048】
このため、仮設足場1に設置される作業足場板4として、フック部材7の形状や、高さ寸法、配置位置が異なっている各種の作業足場板が用いられても、これらの作業足場板のフック部材はすき間塞ぎ部材10の下面、一層具体的には覆い部12の下面と干渉することはない。このため、本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10によると、作業足場板4と幅木5との間のすき間Sを塞ぐことを、作業足場板4のフック部材7の形状や、高さ寸法、配置位置の相違に影響されることなく行えることになり、フック部材の形状や、高さ寸法、配置位置が異なっている各種の作業足場板を仮設足場1に用いることができる。
【0049】
なお、本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10の覆い部12の長さ寸法L2は、上述したように、作業足場板4の本体6の長さ寸法と同じ又は略同じになっているが、フック部材7の形状や、高さ寸法、配置位置が異なっているそれぞれの作業足場板において、前述したように、作業足場板4の長さ方向の両端に設けられているフック部材7が、本体6に結合状態となっている基部7Aと、この基部7Aにおける作業足場板4の長さ方向外側に設けられ、横架部材3に上から係止されるフック部7Bとからなる場合であって、基部7Aの上面の高さ位置が本体6の上面の高さ位置と同じ又はこの高さ位置よりも低くなっていて、フック部7Bの上端の高さ位置が本体6の上面の高さ位置よりも高くなっている場合においては、覆い部12の長さ寸法L2を、作業足場板4の本体6の長さ寸法とフック部材7の基部7Aの長さ寸法との合計値と同じ又は略同じにしてもよい。これによると、覆い部12によってフック部材7の基部7Aの上面も覆うことができるため、覆い部12によって覆うことができるすき間Sについての作業足場板4の長さ方向の長さを一層大きくすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10において、覆い部12は、幅木5と重ね合わせられる幅木重ね部11の下端部11Cから作業足場板4側へ延びている。このため、フック部材の高さ寸法が異なる各種の作業足場板のうちに、幅木5に近い箇所に配置される作業足場板があっても、この作業足場板と幅木5との間のすき間Sを覆い部12により覆うことができる。また、覆い部12は、第1下り傾斜部14と第2下り傾斜部15とからなり、この第2下り傾斜部15の幅寸法W2は、
図3で説明したように、第1下り傾斜部14の幅寸法W1よりも大きいため、フック部材の高さ寸法が異なる各種の作業足場板のうちに、幅木5から離れた箇所に配置される作業足場板があっても、この作業足場板と幅木5との間のすき間Sを覆い部12により覆うことができる。
【0051】
また、本実施形態に係るすき間塞ぎ部材10の覆い部12は、幅木5側から作業足場板4側に向かって下り傾斜しているため、覆い部12の上に工具等の物体が落下した場合には、この物体は作業足場板4側へ転動や滑動して移動することになるため、この物体の除去を容易に行える。
【0052】
また、覆い部12は、前述したように、幅木5側の第1下り傾斜部14と、作業足場板4側の第2下り傾斜部15とからなり、第1下り傾斜部の傾斜角度αは、第2下り傾斜角度の傾斜角度βよりも大きいため、第1下り傾斜部14の上に落下した工具等の物体を一層確実に作業足場板4側へ移動させることができる。
【0053】
さらに、第2下り傾斜部15の傾斜角度βは、第1下り傾斜部14の傾斜角度αよりも小さいため、この第2下り傾斜部15と作業足場板4の本体6の上面とがなす角度を小さくすることができ、これにより、作業者は第2下り傾斜部15の上面に乗って歩行等することができる。
【0054】
また、この第2下り傾斜部15の上面には滑り止め部17が形成されているため、この滑り止め部17により、第2下り傾斜部15の上面に乗った作業者の滑りを防止又は抑制できるようになる。また、この滑り止め部17は、第2下り傾斜部15の上面において、覆い部12の幅方向に間隔をあけて複数個設けられているため、第2下り傾斜部15の上面に乗った作業者が、この第2下り傾斜部15の下り傾斜方向に滑ることを有効に防止又は抑制できるようになる。
【0055】
さらに、それぞれの滑り止め部17は、作業足場板4の長さ方向に延びるそれぞれ複数個の凸条部17Aと凹条部17Bが、作業足場板の長さ方向と直交する幅方向に交互に並設されることにより形成されたものになっているとともに、それぞれの凸条部17Aと凹条部17Bは、覆い部12についての作業足場板4の長さ方向の全長に渡って連続して形成されているため、作業者が第2下り傾斜部15における作業足場板4の長さ方向のどの位置の上面に乗っても、作業者の滑りを防止又は抑制できる。
【0056】
前述したように複数本の支柱2のうち、1本の支柱2には、幅木固定具18の取付体となっているクランプ19が取り付けられ、
図9は、この支柱2と幅木固定具18の周辺箇所を示す平面図である。この平面図では、
図1、
図2及び
図7に示されているそれぞれ2個となっている幅木5とすき間塞ぎ部材10との位置関係にしたがい、左右方向に2個配置されている幅木5の長さ方向の端部のうち、左側に配置されている幅木5の右側の端部5Cと、右側に配置されている幅木5の左側の端部5Dとが、これらの幅木5の厚さ方向に重ね合わせられているとともに、左右方向に2個配置されているすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の長さ方向の端部のうち、左側に配置されているすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の右側の端部11Dと、右側に配置されているすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の左側の端部11Eとが、これらの幅木5の厚さ方向に重ね合わせられており、また、右側に配置されている幅木5の左側の端部5Dと、左側に配置されているすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の右側の端部11Dとが、幅木5の厚さ方向に重ね合わせられており、これらの端部5C,5D,11D,11Eのうち、端部11Eが最も作業足場板4に近い側に配置されている。
【0057】
このような端部5C,5D,11D,11Eの位置関係は、
図7にも示されている。
【0058】
なお、
図7で説明したように、板状となっている幅木5には、作業足場板4から見て幅木5の厚さ方向に凹凸となった凸部5Aと凹部5Bが形成されているとともに、幅木5と同様に、板状となっているすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11にも、作業足場板4から見て幅木5の厚さ方向に凹凸となった凸部11Aと凹部11Bが形成されており、幅木5の長さ方向の両端部まで形成されている凸部5Aと、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の長さ方向の両端部まで形成されている凸部11Aは、共に縦断面形状が作業足場板4側へ横向きの台形状又は略台形状となっている。このため、本実施形態では、上述した左右2個の幅木5の端部5C,5D同士についての幅木5の厚さ方向への重ね合わせは、
図7から示されているように、台形状又は略台形状の先端にすき間を設けて行われ、また、上述した左右2個のすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の端部11D,11E同士についての幅木5の厚さ方向への重ね合わせも、台形状又は略台形状の先端にすき間を設けて行われている。
【0059】
しかし、凸部5A,11Dを上述の台形状又は略台形状としないこと等により、左右2個の幅木5の端部5C,5D同士についての重ね合わせや、左右2個のすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の端部11D,11E同士についての重ね合わせを、幅木5の厚さ方向のすき間をなくして行ってもよい。
【0060】
図8で示されている幅木固定具18のクランプ19を支柱2に取り付ける際には、ナット27を締め付ける以前において、クランプ19を支柱に沿って上下に移動させるとともに、クランプ19から延びている押圧部材24のアーム部24Bを、
図9の実線で示されているように、左右2個の幅木5の端部5C,5Dの上方と左右2個のすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の端部11D,11Eの上方とを越えさせて作業足場板4側へ突出させ、これにより、このアーム部24Bの先端に設けられている押圧部24Cを、上述した端部5C,5D,11D,11Eと同じ又は略同じ高さ位置において、作業足場板4側の箇所に配置する作業を行い、次いで、ナットを軽く締め付けることにより、クランプ19を支柱2を中心に回動可能とする。
【0061】
この後に、
図9の二点鎖線で示されているように、クランプ19を支柱2を中心に回動させることにより、幅木5の厚さ方向についてのクランプ19から押圧部材24の押圧部24Cまでの距離を変更、調整し、これにより、押圧部24Cを、上述した端部5C,5D,11D,11Eのうち、最も作業足場板4に近い側に配置されている端部11Eの作業足場板4側に面11Fに強く当接させ、この後に、ナット27の締め付けを行うことにより、クランプ19を支柱2に強固に取り付けるとともに、押圧部24Cにより端部5C,5D,11D,11Eを支柱2側に押圧して、これらの端部5C,5D,11D,11Eを押圧部24Cと支柱2との間で固定する。これにより、幅木固定具18が取り付けられている支柱2において、左右2個の幅木5と左右2個のすき間塞ぎ部材10は、端部5C,5D,11D,11Eにおいて、幅木固定具18により固定されることになる。
【0062】
以上の本実施形態に係る幅木固定具18によると、支柱2と作業足場板4との間に幅木5を配置し、幅木5と作業足場板4との間のすき間Sを塞ぐためのすき間塞ぎ部材10を仮設足場1に配置して、幅木5と、すき間塞ぎ部材10に設けられている幅木重ね部11とを幅木5の厚さ方向に重ね合わせても、これらの幅木5とすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11とを、支柱2に取り付けた幅木固定具18により有効に押圧して固定することができる。
【0063】
また、幅木固定具18のうち、支柱2に取り付けられる取付体となっているクランプ19は、ナット27を締め付ける以前は、支柱2の外周にこの支柱2を中心に回動可能となって配置されているため、作業者がこのクランプ19の回動操作を行うことにより、幅木5の厚さ方向についてのクランプ19から押圧部材24の押圧部24Cまでの距離を任意に変更、調整することができるため、幅木5の長さ方向の端部とすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の長さ方向の端部とについての幅木5の厚さ方向への重ね合わせ寸法が、どのような寸法であっても、これらの端部を、押圧部材24の押圧部24Cと支柱2との間で確実に押圧して固定することができる。
【0064】
また、本実施形態では、前述したように幅木固定具18が配置される支柱2の周辺部において、左右2個の幅木5の長さ方向の端部5C,5D同士が幅木5の厚さ方向に重ね合わせられているとともに、左右2個のすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の長さ方向の端部11D,11E同士も幅木5の厚さ方向に重ね合わせられ、これにより、これらの端部5C,5D,11D,11Eによる幅木5の重ね合わせ寸法が大きい寸法となっているが、幅木固定具18にクランプ19を支柱2を中心に回動させることにより、幅木5の厚さ方向についてのクランプ19から押圧部材24の押圧部24Cまでの距離を大きく変更、調整できるため、これらの端部5C,5D,11D,11Eを、押圧部材24の押圧部24Cと支柱2との間で確実に押圧して固定することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、幅木5の厚さ方向についてのクランプ19から押圧部材24の押圧部24Cまでの距離を変更、調整することは、押圧部24Cを備えた押圧部材24がベース部24Aで結合されているクランプ19を支柱2を中心に回動させるだけで実施でき、このため、上記距離の変更、調整作業を、クランプ19を支柱2を中心に回動させるという簡単な作業により容易に行え、また、クランプ19に、押圧部24Cを備えた押圧部材24のベース部24Aを結合するという構造だけで、クランプ19を支柱2を中心に回動させることにより、幅木5の厚さ方向についてのクランプ19から押圧部材24の押圧部24Cまでの距離を変更、調整できるため、幅木固定具18を簡単な構造で製造することができる。
【0066】
図10には、押圧部材24に設けられている押圧部24Cの先端である下端に受け部24Dを形成した別実施形態に係る幅木固定具18’が示されている。この受け部24Dは、上述した端部5C,5D,11D,11Eのうち、最も作業足場板4に近い側に配置されている端部11Eの作業足場板4側の面11Fの下面11Gを下から受けるために、押圧部材24に設けられた部分となっている。受け部24Dは、前述したようにクランプ19を支柱2を中心に回動させて、押圧部材24の押圧部24Cを端部11Eの作業足場板4側の面11Fに当接させ、この押圧部24Cにより端部5C,5D,11D,11Eを支柱2側に押圧したときに、面11Fの下面11Gに当たって端部11Eを下から受けることになる。
【0067】
そして、面11Fは、すき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11に作業足場板4側へ突出して形成されている前述の凸部11Aにおける作業足場板4側の面であり、この面11Fの下面11Gを受け部24Dが下から受けるため、この実施形態の幅木固定具18’によると、端部11Eを有するすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の重量を、端部11Eにおいて、受け部24Dにより支持できることになる。
【0068】
また、左右2個のすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11に形成されている凸部11A同士は、
図7で示したように嵌合し、また、左右2個の幅木5に形成されている凸部5A同士も、
図7で示したように嵌合し、また、左右2個のすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の2個の凸部11Aのうち、支柱2側の凸部11Aには、左右2個の幅木5の2個の凸部5Aのうち、作業足場板4側の凸部5Aが嵌合しているため、端部11Dを有するすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11の重量も、端部11Dにおいて、受け部24Dで支持できるとともに、端部5C,5Dを有する左右2個の幅木5の重量も、端部5C,5Dにおいて、受け部24Dで支持できることになる。
【0069】
このため、
図10に示されているように、左右2個の幅木5の下端部5Eが前述した横架部材3に当接していなくても、これらの幅木5を直立又は略直立状態にして支柱2とすき間塞ぎ部材10との間に配置することができる。
【0070】
なお、以上説明した実施形態におけるすき間塞ぎ部材10の覆い部12には、すき間塞ぎ部材10の長さ方向の両側において、作業足場板4のフック部材7を露出させるための切欠部13が形成されていたが、前述した実施形態に係る幅木固定具18,18’は、このような切欠部が設けられていないすき間塞ぎ部材にも用いることができる。
【0071】
また、上述した実施形態では、幅木5とすき間塞ぎ部材10の幅木重ね部11とのうち、幅木5が支柱2側で、幅木重ね部11が作業足場板4側となって、これらが幅木5に厚さ方向に重ね合わせられていたが、この重ね合わせを逆としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、建築作業現場や土木作業現場等の作業現場で構築される仮設足場において、支柱と作業足場板との間に配置される幅木と、幅木と作業足場板との間のすき間を塞ぐためのすき間塞ぎ部材とを固定するために利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 仮設足場
2 支柱
4 作業足場板
5 幅木
5A 幅木の凸部
5B 幅木の凹部
5C,5D 幅木の長さ方向の端部
10 すき間塞ぎ部材
11 幅木重ね部
11A 幅木重ね部の凸部
11D,11E 幅木重ね部の長さ方向の端部
11F 端部の作業足場板側の面
11G 下面
18,18’ 幅木固定具
19 取付体であるクランプ
24 押圧部材
24A ベース部
24B アーム部
24C 押圧部
24D 受け部
S すき間