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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】上糸検出装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 51/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
D05B51/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019218867
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021087563
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 涼介
(72)【発明者】
【氏名】根本 越男
(72)【発明者】
【氏名】河野 渉
(72)【発明者】
【氏名】中山 元
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-101183(JP,A)
【文献】特開2017-124032(JP,A)
【文献】特開2006-262978(JP,A)
【文献】特開2016-073626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンケースが配置される釜を備えるミシンに適用される上糸検出装置であって、
前記釜の一方側に配置された反射部材と、
前記釜の他方側に配置され、上糸が通過する前記ボビンケースの表面に検出光を照射して、前記ボビンケースの表面で反射した後に前記反射部材で反射した前記検出光の反射光を検出する光センサと、を備え、
前記ボビンケースの表面は、前記検出光が照射される平坦部を含み、
前記検出光の光軸は、前記平坦部に対して傾斜
前記反射部材は、前記検出光を前記平坦部に向かって反射し、
前記光センサは、前記平坦部で反射した前記検出光を検出し、
前記反射部材は、平坦な反射面を有し、
前記検出光の光軸と前記平坦部とがなす角度と、前記平坦部の法線と平行な基準線と前記反射面とがなす角度とは、同一である、
上糸検出装置。
【請求項2】
ボビンケースが配置される釜を備えるミシンに適用される上糸検出装置であって、
前記釜の一方側に配置された反射部材と、
前記釜の他方側に配置され、上糸が通過する前記ボビンケースの表面に検出光を照射して、前記ボビンケースの表面で反射した後に前記反射部材で反射した前記検出光の反射光を検出する光センサと、を備え、
前記ボビンケースの表面は、前記検出光が照射される平坦部を含み、
前記検出光の光軸は、前記平坦部に対して傾斜
前記検出光は、レーザ光を含む、
上糸検出装置。
【請求項3】
ボビンケースが配置される釜を備えるミシンに適用される上糸検出装置であって、
前記釜の一方側に配置された反射部材と、
前記釜の他方側に配置され、上糸が通過する前記ボビンケースの表面に検出光を照射して、前記ボビンケースの表面で反射した後に前記反射部材で反射した前記検出光の反射光を検出する光センサと、を備え、
前記ボビンケースの表面は、前記検出光が照射される平坦部を含み、
前記検出光の光軸は、前記平坦部に対して傾斜
前記検出光は、複数の波長のレーザ光を含む、
上糸検出装置。
【請求項4】
前記検出光の光軸と前記平坦部とがなす角度は、5[°]以上50[°]以下である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の上糸検出装置。
【請求項5】
前記検出光の光軸と前記平坦部とがなす角度は、5[°]以上12[°]以下である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の上糸検出装置。
【請求項6】
前記反射部材は、入射した前記検出光を再帰反射する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の上糸検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、上糸検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンは、ミシン針と、内釜及び外釜を含む釜とを備える。ミシン針は、上下運動する。内釜は、ボビンケースに収容されたボビンを保持する。外釜は、ミシン針の上下運動に伴って回転運動する。上糸は、ミシン針の針孔に通される。下糸は、ボビンに巻かれる。生地を貫通したミシン針が上昇するときに、上糸のループが形成される。上糸のループは、回転運動する外釜の剣先に掛けられる。剣先に掛けられた上糸のループは、外釜の回転運動に伴って拡がり、ボビンケースの表面を通過する。上糸のループが剣先から外れると、上糸が生地に引き寄せられ、下糸と絡み合う。上糸と下糸とが絡み合うことにより、生地に縫目が形成される。
【0003】
ミシンの縫製において、目飛び、二度掛け、及び糸切れのような縫製の不具合が発生する可能性がある。縫製の不具合が発生する原因として、ミシン針の上下運動と外釜の回転運動との不一致、又は上糸に作用する張力の異常等が挙げられる。特許文献1に開示されているように、ボビンケースの表面を通過する上糸を検出することにより、縫製の不具合を検出することが検討されている。
【0004】
また、特許文献2に記載の目飛び及び糸切れ検出装置においては、検査光の光路が釜の端面において釜の回転軸に対して垂直方向に横断するように、釜の一方側に発光部が配置され、釜の他方側に受光部が配置される。この検出装置は、検査光の光路を上糸が横切った際の透過光の光量に基づいて、上糸の通過の有無を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-197786号公報
【文献】特開2016-101183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、光電検出器は、中釜の回転軸線に対して約45[°]の角度で配置される。そのため、上糸が光電検出器の検出エリアを通過する時間は短い。したがって、ミシンを高速で駆動した場合、ボビンケースの表面を通過する上糸の検出精度が不足する可能性がある。
【0007】
特許文献2に記載の検出装置においては、釜の揺動が問題となる。釜は、厳密には上糸の張力又はモータの駆動等に起因して、ミシンの駆動中に回転軸方向にクリアランスの分だけ揺動する。この検出装置では、検査光の光路が釜の端面に一致するように発光部及び受光部が配置されているため、釜の揺動によって検査光が釜で遮られてしまう可能性がある。したがって、検査光が釜で遮られた場合の受光量の変化を判定手段側で補正するか、あるいは釜が揺動しても検査光が遮られないように検査光の光路を釜から遠ざけておくといった追加措置を講じる必要がある。しかしながら、かかる追加措置を講じた場合でも、細番手の糸では透過光の受光量の変化が生じにくくなり、上糸の通過の有無の検出を安定して実行することが困難となる可能性がある。
【0008】
本開示は、ボビンケースの表面を通過する上糸を精度良く検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に従えば、ボビンケースが配置される釜を備えるミシンに適用される上糸検出装置であって、前記釜の一方側に配置された反射部材と、前記釜の他方側に配置され、上糸が通過する前記ボビンケースの表面に検出光を照射して、前記ボビンケースの表面で反射した後に前記反射部材で反射した前記検出光の反射光を検出する光センサと、を備え、前記ボビンケースの表面は、前記検出光が照射される平坦部を含み、前記検出光の光軸は、前記平坦部に対して傾斜する、上糸検出装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ボビンケースの表面を通過する上糸を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係るミシンの一部を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係るミシンの動作を模式的に示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係るミシンの動作を模式的に示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係るミシンの動作を模式的に示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係るミシンの動作を模式的に示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係るミシンの動作を模式的に示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係るミシンの動作を模式的に示す図である。
図8図8は、第1実施形態に係る上糸検出装置を模式的に示す図である。
図9図9は、第1実施形態に係る平坦部における検出光と上糸との位置関係を示す概略図である。
図10図10は、図9の一部を拡大した図である。
図11図11は、第1実施形態に係る内釜が回転軸の一方側に揺動した際の検出光の状態を模式的に示す図である。
図12図12は、第1実施形態に係る内釜が回転軸の他方側に揺動した際の検出光の状態を模式的に示す図である。
図13図13は、第2実施形態に係る上糸検出装置を模式的に示す図である。
図14図14は、第2実施形態に係る上糸検出装置の動作を模式的に示す図である。
図15図15は、第2実施形態に係る上糸検出装置の動作を模式的に示す図である。
図16図16は、第3実施形態に係る上糸検出装置を模式的に示す図である。
図17図17は、第4実施形態に係る上糸検出装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0013】
実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、ミシンの中心を基準とした相対位置又は方向を示す。
【0014】
[第1実施形態]
<ミシンの概要>
図1は、本実施形態に係るミシン1の一部を模式的に示す図である。ミシン1は、上糸2と下糸3とにより生地Cに縫目を形成する。図1に示すように、ミシン1は、針孔4aを有するミシン針4と、生地Cを押える押さえ5と、ボビンケース7が配置される釜6と、ボビンケース7の表面を通過する上糸2を検出する上糸検出装置11Aとを備える。
【0015】
上糸2は、ミシン針4の針孔4aに通される。下糸3は、ボビン(不図示)に巻かれる。ボビンは、ボビンケース7に収容される。
【0016】
ミシン針4は、駆動装置(不図示)が発生する動力により上下運動する。ミシン針4は、針孔4aに上糸2が通された状態で、生地Cを貫通する状態及び生地Cの上方に配置される状態の一方から他方に変化するように上下運動する。
【0017】
押さえ5は、ミシン針4の直下の針落位置の周囲において、生地Cを上方から押える。生地Cは、針板(不図示)に支持される。押さえ5は、針板との間で生地Cを挟むように生地Cを押える。押さえ5は、板状部材である。押さえ5は、ミシン針4が通過可能な開口5aを有する。
【0018】
釜6は、生地Cの下方に配置される。釜6は、内釜6A及び外釜6Bを含む。内釜6Aは、ボビンケース7に収容されたボビンを保持する。下糸3は、ボビンケース7から供給される。外釜6Bは、内釜6Aの周囲に配置される。外釜6Bは、ミシン針4の上下運動に伴って回転運動する。外釜6Bは、回転軸Fを中心に回転運動する。回転軸Fは、左右方向に延伸する。釜6は、回転軸Fとミシン針4の移動方向とが実質的に直交する垂直釜である。ミシン針4が、上下運動を1回したとき、外釜6Bは、回転運動を2回する。ボビンは、ボビンの中心軸とボビンケース7の中心軸とが一致するように、ボビンケース7に収容される。ボビンケース7は、ボビンケースの中心軸と回転軸Fとが一致するように、内釜6Aに収容される。外釜6Bは、剣先8を有する。外釜6Bの回転により、上糸2は、剣先8に掛けられる。
【0019】
上糸検出装置11Aは、ミシン1に適用される。上糸検出装置11Aは、縫目の形成において、ボビンケース7の表面を通過する上糸2を光学的に検出する。上糸検出装置11Aは、釜6の一方側(後方側)に配置される反射部材12と、釜6の他方側(前方側)に配置される光センサ13とを備える。光センサ13は、ボビンケース7の表面に検出光L1を照射して、ボビンケース7の表面を通過する上糸2を検出する。ボビンケース7の表面は、光センサ13からの検出光L1が照射される平坦部15を含む。平坦部15の外形は、前後方向に長い長方形状である。
【0020】
<ミシンの動作>
図2から図7のそれぞれは、本実施形態に係るミシン1の動作を模式的に示す図である。なお、図2から図7のそれぞれにおいて、上糸検出装置11Aの図示は省略する。
【0021】
図2に示すように、生地Cの上方に配置されているミシン針4が下方に移動すると、ミシン針4は、上糸2とともに生地Cを貫通する。上糸2とともに生地Cを貫通したミシン針4は、下死点に到達する。下死点に到達したミシン針4が上昇するときに、上糸2のループ9が形成される。外釜6Bは、ミシン針4の上下運動に伴って回転運動する。上糸2のループ9は、回転運動する外釜6Bの剣先8に掛けられる。
【0022】
図3に示すように、剣先8に掛けられた上糸2のループ9は、外釜6Bの回転運動に伴って、ボビンケース7の下方まで拡がる。
【0023】
図4に示すように、外釜6Bが更に回転運動すると、ボビンケース7の下方まで拡がった上糸2のループ9は、ボビンケース7から供給された下糸3に掛けられる。
【0024】
図5に示すように、外釜6Bが更に回転運動すると、下糸3に掛けられた上糸2のループ9は、ボビンケース7をくぐるように移動する。上糸2の少なくとも一部は、ボビンケース7の表面を通過する。上糸2は、ボビンケース7の表面において、前後方向に移動する。上糸2は、ボビンケース7の表面の前端部7aから後端部7bに向かって、ボビンケース7の表面を通過する。
【0025】
図6に示すように、外釜6Bが更に回転運動すると、ボビンケース7をくぐるように移動した上糸2のループ9は、剣先8から外れる。上糸2のループ9が剣先8から外れると、上糸2は、ミシン針4の上方への移動により、生地Cに引き寄せられ、ボビンケース7から供給された下糸3と絡み合う。
【0026】
図7に示すように、上糸2とボビンケース7から供給された下糸3とが絡み合うことにより、生地Cに縫目が形成される。
【0027】
図2から図7を参照して説明したミシン1の動作が実施されることにより、生地Cに1つの縫目が形成される。図2から図7を参照して説明したミシン1の動作が繰り返されることにより、生地Cに複数の縫目が形成される。
【0028】
<上糸検出装置>
上述のように、縫目の形成において、上糸2は、外釜6Bの回転運動により、ボビンケース7の表面を通過する。上糸検出装置11Aは、ボビンケース7の表面を通過する上糸2を検出する。ボビンケース7の表面における上糸2の通過の有無が検出されることにより、目飛び、二度掛け、及び糸切れのような縫製の不具合の有無が検出される。なお、縫製の不具合が発生する原因として、ミシン針4の上下運動と外釜6Bの回転運動との不一致、又は上糸2に作用する張力の異常等が挙げられる。上糸検出装置11Aは、1つの縫目の形成において、ボビンケース7の表面を通過する上糸2を検出することにより、縫製の不具合を検出する。
【0029】
図8は、本実施形態に係る上糸検出装置11Aを模式的に示す図である。図8に示すように、上糸検出装置11Aは、釜6の一方側(後方側)に配置される反射部材12と、釜6の他方側(前方側)に配置される光センサ13と、判断部14を含むセンサアンプ部21と、制御装置22とを備える。上糸2が通過するボビンケース7の表面は、平坦部15を含む。
【0030】
光センサ13は、検出光L1を射出する射出部と、反射部材12で反射した検出光L1の反射光L2を検出する光検出部とを有する。光センサ13の射出部から射出される検出光L1は、レーザ光を含む。射出部は、レーザ光源を含む。なお、射出部は、発光ダイオードのような発光素子を含んでもよい。光検出部は、フォトダイオードのような受光素子を含む。
【0031】
反射部材12は、光センサ13の射出部からの検出光L1を反射する。反射部材12は、平坦な反射面12rを有する反射板12Aを含む。反射板12Aの反射面12rは、検出光L1を反射する。反射部材12の材料として、メタアクリル樹脂又はアクリル樹脂が例示される。
【0032】
光センサ13は、上糸2が通過するボビンケース7の表面に検出光L1を照射して、ボビンケース7の表面で反射した後に反射板12Aで反射した検出光L1の反射光L2を検出する。光センサ13の射出部は、ボビンケース7の表面の平坦部15に検出光L1を照射する。光センサ13の光検出部は、平坦部15で反射した後に反射板12Aで反射した検出光L1の反射光L2を検出する。
【0033】
平坦部15は、光センサ13の射出部からの検出光L1を反射する。平坦部15は、平坦面を含む。平坦部15は、緩やかな湾曲面を含んでもよい。平坦部15の周囲のボビンケース7の表面は、平坦面でもよいし、湾曲面でもよい。
【0034】
上糸2は、ボビンケース7の表面の前端部7aから後端部7bに向かって、ボビンケース7の表面を通過する。上糸2の少なくとも一部は、平坦部15を通過する。平坦部15の外形は、前後方向に長い長方形状である。ボビンケース7の表面における上糸2の移動方向及び平坦部15の長手方向のそれぞれは、前後方向である。すなわち、ボビンケース7の表面における上糸2の移動方向と平坦部15の長手方向とは一致する。
【0035】
反射板12Aは、ボビンケース7の一方側(後方側)に配置される。光センサ13は、ボビンケース7の他方側(前方側)に配置される。上糸2は、ボビンケース7の表面の前端部7aから後端部7bに向かって、ボビンケース7の表面を通過する。ボビンケース7の一方側は、上糸2がボビンケース7の表面から退去する後端部7b側を含む。ボビンケース7の他方側は、上糸2がボビンケース7の表面に進入する前端部7a側を含む。
【0036】
反射板12Aは、ボビンケース7(釜6)から後方に離れた位置に配置される。光センサ13は、ボビンケース7(釜6)から前方に離れた位置に配置される。前後方向において、ボビンケース7は、反射板12Aと光センサ13との間に配置される。反射板12Aは、ボビンケース7の一方側において、反射面12rと平坦部15の法線とが平行になるように配置される。光センサ13は、ボビンケース7の他方側において、光センサ13の少なくとも一部と反射板12Aとが対向するように配置される。
【0037】
光センサ13の射出部は、ボビンケース7の平坦部15に検出光L1が照射されるように、検出光L1を射出する。光センサ13の射出部から射出される検出光L1の光軸は、平坦部15に対して傾斜する。検出光L1の光軸は、検出光L1の光路を意味する。
【0038】
検出光L1の光軸とボビンケース7の平坦部15とがなす角度θは、5[°]以上50[°]以下である。検出光L1の光軸とボビンケース7の平坦部15とがなす角度θは、5[°]以上12[°]以下であることが好ましい。
【0039】
センサアンプ部21は、光センサ13の光検出部からの検出信号を受信する。光検出部は、検出した反射光L2の光強度に基づいて、検出信号を出力する。
【0040】
センサアンプ部21は、判断部14を有する。判断部14は、光検出部からの検出信号に基づいて、ボビンケース7の表面を上糸2が通過したか否かを判断する。すなわち、判断部14は、光検出部からの検出信号に基づいて、ボビンケース7の表面における上糸2の通過の有無を判断する。
【0041】
制御装置22は、判断部14による上糸2の通過の有無の判断に基づいて、ミシン1を制御する。制御装置22は、コンピュータシステムを含む。制御装置22は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)を含む。
【0042】
なお、制御装置22が、上糸2の通過の有無を判断する判断部14の機能を有してもよい。
【0043】
<上糸検出装置の動作>
ボビンケース7の表面を上糸2が通過しない場合、射出部から平坦部15に照射された検出光L1は、平坦部15で反射した後に、反射板12Aの反射面12rに入射し、反射面12rで反射する。反射面12rで反射した検出光L1の反射光L2の少なくとも一部は、光センサ13に回帰し、光検出部に検出される。
【0044】
ボビンケース7の表面を上糸2が通過する場合、射出部から射出された検出光L1の少なくとも一部は、上糸2によって吸収又は散乱される。射出部から射出された検出光L1の少なくとも一部は、平坦部15で反射した後に、反射板12Aの反射面12rに入射し、反射面12rで反射する。反射面12rで反射した検出光L1の反射光L2の少なくとも一部は、光センサ13に回帰し、光検出部に検出される。
【0045】
光検出部は、反射板12Aからの反射光L2の光強度を検出し、検出信号をセンサアンプ部21に出力する。センサアンプ部21の判断部14は、光検出部からの検出信号に基づいて、ボビンケース7の表面における上糸2の通過の有無を判断する。ボビンケース7の表面を上糸2が通過する場合、射出部から射出された検出光L1の少なくとも一部は、上糸2によって吸収又は散乱される。そのため、ボビンケース7の表面を上糸2が通過するときに光検出部で検出される反射光L2の光強度は、ボビンケース7の表面を上糸2が通過しないときに光検出部で検出される反射光L2の光強度よりも弱い。したがって、判断部14は、光検出部からの検出信号に基づいて、ボビンケース7の表面における上糸2の通過の有無を判断することができる。
【0046】
判断部14は、予め定められている光強度に係る閾値と、光検出信号によって検出された光強度とを比較する。1つの縫目の形成において、反射光L2の光強度が閾値以下であると判定した場合、判断部14は、ボビンケース7の表面を上糸2が通過したと判断する。1つの縫目の形成において、反射光L2の光強度が閾値以下でないと判定した場合、判断部14は、ボビンケース7の表面を上糸2が通過していないと判断する。
【0047】
ボビンケース7の表面を上糸2が通過していないと判断された場合、制御装置22は、ミシン針4の駆動装置を減速又は停止させる。なお、ボビンケース7の表面を上糸2が通過していないと判断した場合、制御装置22は、ディスプレイ又はスピーカを含む報知装置を作動して、縫製の不具合が発生した可能性があることを報知してもよい。
【0048】
<角度>
次に、検出光L1の光軸とボビンケース7の平坦部15とがなす角度θについて説明する。制御装置22における一般的な最短入力時間は、2.5[μs]以上50[μs]以下である。一方、光センサ13に搭載される光検出部の一般的な応答時間は、80[μs]程度である。したがって、センサアンプ部21が判断部14を有する場合であっても、制御装置22が判断部14の機能を有する場合であっても、上糸検出装置11Aにおける上糸2の検出に要する時間は、光センサ13の応答時間に依存する。
【0049】
また、生地Cの縫製において、ミシン1の一般的な回転数は、1000[rpm]以上3000[rpm]以下である。ミシン1の回転数が高いほど、目飛び、二度掛け、及び糸切れのような縫製の不具合が発生する可能性が高くなる。したがって、縫製の不具合が発生した場合、ミシン1の回転数を減少させる必要がある。ミシン1の回転数が1000[rpm]である場合、1回転に要する時間は約0.06[s]である。ミシン1の回転数が3000[rpm]である場合、1回転に要する時間は約0.02[s]である。また、ミシン1の回転数が1000[rpm]である揚合、上糸2の移動速度は約14000[mm/s]である。ミシン1の回転数が3000[rpm]である場合、上糸2の移動速度は約42000[mm/s]である。
【0050】
上糸2の検出エリアの寸法Rは、光センサ13の応答時間と上糸2の移動速度との積によって算出される。上糸2の検出エリアとは、平坦部15における検出光L1の照射エリアをいう。光センサ13の応答時間が80[μs]であり、ミシン1の回転数が1000[rpm]である場合、上糸2の検出エリアの寸法Rは、約1.12[mm]である。光センサ13の応答時間が80[μs]であり、ミシン1の回転数が3000[rpm]である場合、上糸2の検出エリアの寸法Rは、約3.36[mm]である。
【0051】
以上のような条件により、検出光L1の光軸とボビンケース7の平坦部15とがなす角度θは、一定の範囲内で設定されることが好適である。
【0052】
図9は、本実施形態に係る平坦部15における検出光L1と上糸2との位置関係を示す概略図である。図10は、図9の一部を拡大した図である。図9及び図10に示す例において、検出光L1の直径D及び上糸2の半径rが規定される。平坦部15における検出光L1の反射位置pと検出光L1の外縁とは、距離xだけ離れている。平坦部15において上糸2と検出光L1との接点fの垂下点と検出光L1の外縁とは、距離bだけ離れている。上糸2と検出光L1との接点f平坦部15とは、距離cだけ離れている。
【0053】
図9及び図10に示す例では、上糸2の検出エリアの寸法Rは、[R=2x-2b]で表される。距離xの導出には、[x=D/2sinθ]の関係式を用いることができる。距離bの導出には、[b=c/tanθ]及び[c=r+rcosθ]の2の関係式を用いることができる。
【0054】
上糸2の半径rを0.065[mm]とし、検出光L1の直径Dを1[mm]とする。上糸2の検出エリアの寸法Rの上限値は、平坦部15の長手方向の寸法である。既存のミシン1において形成される平坦部15の長手方向の寸法は、約9[mm]である。したがって、上糸2の検出エリアの寸法Rの上限値は、9[mm]である。検出エリアの寸法Rの上限値を9[mm]とした場合、上述の式より、角度θは、約5[°]である。
【0055】
検出エリアの寸法Rの下限値は、ミシン1の回転数が1000[rpm]である場合、約1.12[mm]であり、ミシン1の回転数が3000[rpm]である場合、約3.36[mm]である。検出エリアの寸法Rが、1.12[mm]の場合、角度θは、約50[°]である。検出エリアの寸法Rが、3.36[mm]の場合、角度θは、約12[°]である。
【0056】
したがって、ミシン1の回転数が1000[rpm]である場合、角度θが5[°]以上50[°]以下であることが好ましい。ミシン1の回転数が3000[rpm]である場合、角度θが5[°]以上12[°]以下であることが好ましい。
【0057】
<効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、光センサ13の射出部から射出された検出光L1は、ボビンケース7の表面に照射される。ボビンケース7の表面で反射した検出光L1は、反射板12Aに照射される。反射板12Aで反射した検出光L1の反射光L2は、光センサ13の光検出部に検出される。また、検出光L1の光軸は、ボビンケース7の平坦部15に対して傾斜する。これにより、上糸2が光センサ13の検出エリアを通過する時間が十分に確保される。したがって、糸の種類に寄らず、ミシン1の高速駆動時においても上糸2の通過の有無を精度良く検出することができる。
【0058】
図11は、本実施形態に係る内釜6Aが回転軸Fの一方側に揺動した際の検出光L1の状態を模式的に示す図である。図12は、本実施形態に係る内釜6Aが回転軸Fの他方側に揺動した際の検出光L1の状態を模式的に示す図である。
【0059】
ミシン1の駆動において、上糸2の張力又はモ一タの駆動等に起因して、釜6が回転軸Fと平行な左右方向にクリアランス分だけ揺動する可能性がある。本実施形態においては、検出光L1の光軸が、ボビンケース7の平坦部15に対して傾斜する。そのため、釜6の揺動によってボビンケース7が光センサ13側に変位した場合、図11に示すように、平坦部15における検出光L1の反射位置が光センサ13側に僅かに変位する可能性がある。しかし、検出光L1の光路が釜6又はボビンケース7によって遮られることはない。同様に、釜6の揺動によってボビンケース7が光センサ13の反対側に変位した場合、図12に示すように、平坦部15における検出光L1の反射位置が反射部材12側に僅かに変位する可能性がある。しかし、検出光L1の光路が釜6又はボビンケース7によって遮られることはない。したがって、釜6の揺動の影響を受けずに上糸2の検出を安定的に実行することが可能となる。
【0060】
本実施形態においては、検出光L1の光軸とボビンケースの平坦部15とがなす角度θは、5[°]以上50[°]以下である。この場合、ミシン1の一般的な回転数である1000[rpm]以上3000[rpm]以下の場合において、ボビンケース7の表面における上糸2の通過の有無を精度良く検出できる。
【0061】
本実施形態において、検出光L1の光軸とボビンケース7の平坦部15とがなす角度θは、5[°]以上12[°]以下でもよい。この場合、ミシン1の回転数が高い3000[rpm]程度の場合において、ボビンケース7の表面における上糸2の通過の有無を精度良く検出できる。
【0062】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0063】
図13は、本実施形態に係る上糸検出装置11Bを模式的に示す図である。図13に示すように、上糸検出装置11Bは、釜6の一方側(後方側)に配置される反射部材12と、釜6の他方側(前方側)に配置され、検出光L1を射出する光センサ13と、センサアンプ部21と、判断部14を含む制御装置22とを備える。上糸2が通過するボビンケース7の表面は、平坦部15を含む。
【0064】
本実施形態において、反射部材12は、検出光L1を平坦部15に向かって反射する。光センサ13の光検出部は、平坦部15で反射した検出光L1である反射光L2を検出する。
【0065】
本実施形態において、反射部材12は、入射した検出光L1を再帰反射する再帰反射板12Bを含む。再帰反射とは、入射光を入射光の光路に沿うように反射することをいう。再帰反射板12Bとは、再帰反射板12Bに入射した検出光L1の光路に沿うように検出光L1を反射する光学部材をいう。図13に示すように、再帰反射板12Bは、再帰反射板12Bに入射する検出光L1の光路と、再帰反射板12Bで反射した検出光L1の反射光L2の光路とが一致するように、検出光L1を反射する。
【0066】
光センサ13の射出部から射出された検出光L1は、平坦部15に照射される。平坦部15で反射した検出光L1は、再帰反射板12Bに入射する。再帰反射板12Bは、検出光L1を反射する。再帰反射板12Bで反射した検出光L1の反射光L2は、平坦部15に照射される。平坦部15で反射した反射光L2は、光センサ13の光検出部に検出される。
【0067】
図14は、本実施形態に係る上糸検出装置11Bの動作を模式的に示す図である。図14に示すように、光センサ13の射出部から平坦部15を経由して再帰反射板12Bに向かう検出光L1の光路(光軸)と、再帰反射板12Bから平坦部15を経由して光センサ13の光検出部に向かう反射光L2の光路(光軸)とは、実質的に一致する。そのため、ボビンケース7の表面を通過する上糸2は、検出光L1の光路及び反射光L2の光路のそれぞれを通過する。すなわち、上糸検出装置11Bは、検出光L1及び反射光L2の両方を使って、上糸2を検出することができる。上糸2を検出するタイミングが複数(少なくとも2回)存在するので、上糸検出装置11Bによる上糸2の検出精度が向上する。
【0068】
図15は、本実施形態に係る上糸検出装置11Bの動作を模式的に示す図である。図15に示すように、例えばミシン1の振動に起因して、平坦部15の向きが変動する可能性がある。図15(A)は、平坦部15が前方に向かって右方に傾斜した状態を示す。図15(B)は、平坦部15が後方に向かって右方に傾斜した状態を示す。なお、平坦部15の向きは、図15(A)及び図15(B)に示す状態に限定されない。
【0069】
検出光L1が再帰反射板12Bで再帰反射されることにより、図15に示すように、平坦部15の向きが変動しても、反射光L2は、光センサ13の光検出部に入射することができる。そのため、上糸検出装置11Bによる上糸2の検出精度が向上する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、反射部材12は、反射光L2を平坦部15照射する。光センサ13の光検出部は、平坦部15からの反射光L2を検出する。ボビンケース7の表面を通過する上糸2は、検出光L1の光路及び反射光L2の光路のそれぞれを通過する。上糸検出装置11Bは、検出光L1及び反射光L2の両方を使って上糸2を検出するので、上糸2の検出精度が向上する。
【0071】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0072】
図16は、本実施形態に係る上糸検出装置11Cを模式的に示す図である。図16に示すように、上糸検出装置11Cは、釜6の一方側(後方側)に配置される反射部材12と、釜6の他方側(前方側)に配置され、検出光L1を射出する光センサ13と、判断部14を含むセンサアンプ部21と、制御装置22とを備える。上糸2が通過するボビンケース7の表面は、平坦部15を含む。
【0073】
反射部材12は、反射光L2を平坦部15に照射する。光センサ13の光検出部は、平坦部15からの反射光L2を検出する。
【0074】
本実施形態において、反射部材12は、コーナキューブリフレクタ12Cを含む。コーナキューブリフレクタ12Cは、入射した検出光L1を再帰反射することができる。図16に示すように、コーナキューブリフレクタ12Cは、コーナキューブリフレクタ12Cに入射する検出光L1の光路と、コーナキューブリフレクタ12Cで反射した検出光L1の反射光L2の光路とが一致するように、検出光L1を反射することができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態においても、ボビンケース7の表面を通過する上糸2は、検出光L1の光路及び反射光L2の光路のそれぞれを通過する。そのため、上糸2の検出精度が向上する。
【0076】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0077】
図17は、本実施形態に係る上糸検出装置11Dを模式的に示す図である。図17に示すように、上糸検出装置11Dは、釜6の一方側(後方側)に配置される反射部材12と、釜6の他方側(前方側)に配置され、検出光L1を射出する光センサ13と、判断部14を含むセンサアンプ部21と、制御装置22とを備える。上糸2が通過するボビンケース7の表面は、平坦部15を含む。
【0078】
反射部材12は、反射光L2を平坦部15に照射する。光センサ13の光検出部は、平坦部15からの反射光L2を検出する。
【0079】
本実施形態において、反射部材12は、上述の第1実施形態で説明したような、平坦な反射面12rを有する反射板12Aを含む。
【0080】
本実施形態においては、検出光L1の光軸と平坦部15とがなす角度θと、平坦部15の法線と平行な基準線と反射面12rとがなす角度γとは、同一である。
【0081】
角度θと一致するように角度γが調整されることにより、反射板12Aは、検出光L1を再帰反射することができる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態においても、ボビンケース7の表面を通過する上糸2は、検出光L1の光路及び反射光L2の光路のそれぞれを通過する。そのため、上糸2の検出精度が向上する。
【0083】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、検出光L1は、複数の波長のレーザ光でもよい。すなわち、射出部は、異波長重畳レーザ光源を含んでもよい。検出光L1が複数の波長のレーザ光を含むことにより、上糸2の特性(太さ、色、透過率)が変化しても、ボビンケース7の表面を通過する上糸2は精度良く検出される。例えば、第1波長のレーザ光を吸収し難いが第2波長のレーザ光を吸収し易い上糸2が使用される場合、第2波長のレーザ光が上糸2に照射されることにより、上糸2は精度良く検出される。
【0084】
上述の実施形態において、反射部材12が釜6の他方側に配置され、光センサ13が釜6の一方側に配置されていてもよい。また、光センサ13の位置又は姿勢を調整可能なアクチュエータが設けられ、検出光L1の光軸と平坦部15とがなす角度θが変更されてもよい。
【0085】
上述の実施形態において、釜6は、垂直釜であることとした。釜6は、水平釜でもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…ミシン、2…上糸、3…下糸、4…ミシン針、4a…針孔、5…押さえ、5a…開口、6…釜、6A…内釜、6B…外釜、7…ボビンケース、7a…前端部、7b…後端部、8…剣先、9…ループ、11A…上糸検出装置、11B…上糸検出装置、11C…上糸検出装置、11D…上糸検出装置、12…反射部材、12A…反射板、12B…再帰反射板、12C…コーナキューブリフレクタ、12r…反射面、13…光センサ、14…判断部、15…平坦部、21…センサアンプ部、22…制御装置、b…距離、C…生地、c…距離、D…直径、F…回転軸、f…接点、L1…検出光、L2…反射光、p…反射位置、R…寸法、r…半径、x…距離、θ…角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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