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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】巻回体用化粧箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/72 20060101AFI20240201BHJP
   B65D 25/52 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B65D5/72 A BRQ
B65D25/52 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019224425
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021091464
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 利香
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-022326(JP,U)
【文献】特開2012-240708(JP,A)
【文献】特開2017-165444(JP,A)
【文献】特開平11-059668(JP,A)
【文献】特開2020-203697(JP,A)
【文献】特開2002-080037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/72
B65D 25/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧箱に、巻芯に樹脂シートが巻かれた巻回体を収納し、この巻回体から引き出された樹脂シートを切断部材で切断可能な巻回体用化粧箱であって、
化粧箱は、巻回体を搭載可能な底板と、この底板の前部に接続されて巻回体の樹脂シートと接触可能な正面板と、底板の後部に接続されて正面板に対向可能な背面板と、この背面板に接続されて底板に対向可能な天井蓋板と、この天井蓋板に接続されて正面板に対向可能な重ね胴板と、底板の側部、正面板の側部、及び背面板の側部が区画する開口を閉塞可能な複数の側板とを含み、底板に樹脂シート用の切断部材を取り付けてその刃を正面板の下部から露出させ、
化粧箱の正面板の天井蓋板と接触可能な上部の両側に中心点を定め、この中心点を中心にして円弧を描くことにより、隣接する側板方向に向かうにしたがい徐々に下降する皺伸ばし部を滑らかな円弧のフィレットに湾曲形成するとともに、この皺伸ばし部の半径を1mm以上12mm以下とし、皺伸ばし部に巻回体から引き出された樹脂シートの側部を接触させることにより、樹脂シートの側部の皺を伸ばすようにしたことを特徴とする巻回体用化粧箱。
【請求項2】
切断部材を生分解性樹脂により板に形成し、この切断部材の両側部のうち、少なくとも一側部の長手方向に複数の刃を形成し、切断部材を底板の前部長手方向に接着剤あるいは超音波接着により接合した請求項1記載の巻回体用化粧箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯に包装用の樹脂シートが巻かれた巻回体用化粧箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の乾燥や酸化を防いだり、食品の香りが他の食品に移るのを防止する場合には、巻芯に食品包装用の薄いラップフィルムが巻回されたラップロールが使用されるが、このラップロールは、専用の化粧箱に収納して用いられるのが一般的である(特許文献1、2参照)。
【0003】
この種の化粧箱は、図示しないが、ラップロールを搭載する底板と、この底板に接続されてラップロールのラップフィルムと接する正面板と、底板に接続されて正面板に対向する背面板と、この背面板に接続されて底板に対向する天井蓋板と、この天井蓋板に接続されて正面板に対向する重ね胴板と、底板の側部、正面板の側部、及び背面板の側部が区画する開口を閉じる一対の側板とを備え、底板に、ラップフィルム用の切断刃が取り付けられている。
【0004】
正面板は、基本的には細長い長方形に形成されるが、薄いラップフィルムを切断刃に確実に接触させて切断したい場合には、上部の両側が高く形成されるとともに、上部の両側以外がやや低く形成され、この高低により、ラップフィルムが切断刃に対してセンタリングして位置合わせされる。また、切断刃は、金属あるいは樹脂により直線的に形成され、金属製の場合には、化粧箱の底板にカシメ接合されるとともに、樹脂製の場合には、化粧箱の底板に接着剤や超音波接着により接合される。ラップロールは、太巻き原反から巻芯に所定の長さのラップフィルムが巻き替えられることにより製造される。
【0005】
上記構成において、食品の乾燥や酸化等を防ぐ場合には、先ず、化粧箱の天井蓋板を開け、化粧箱内のラップロールからラップフィルムを必要な長さ分引き出し、この引き出されたラップフィルムにより、食品を被覆して包装する。こうして食品を包装したら、化粧箱の天井蓋板を閉じ、化粧箱の切断刃により、引き出されたラップフィルムをその幅方向の側部から切断すれば、食品の乾燥や酸化等を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2018/163592号公報
【文献】特開2005‐247403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における化粧箱は、以上のように構成されているが、ラップフィルムをその幅方向の側部から切断する場合に、ラップフィルムの側部に皺に伴う不規則な重なりがあると、ラップフィルムの切断に強い力を要するという問題がある。この問題を解消する方法としては、(1)ラップフィルムに強い力を作用させる方法、(2)巻芯にラップフィルムを巻き取る際、ラップフィルムの幅方向に皺が生じないよう巻き取る方法があげられる。
【0008】
しかしながら、(1)の方法の場合、ラップフィルムに強い力を加えて切断しようとすると、切断刃が樹脂製のとき、接着剤や超音波接着により単に接合されるに止まるので、切断刃が化粧箱の底板から脱落してしまうという大きな問題が新たに生じることとなる。また、(2)の方法の場合、太巻き原反のラップフィルムの厚さ精度や巻き取りテンション等に配慮する必要があるので、巻芯にラップフィルムを皺なく巻き取るのは現実的にはきわめて困難である。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたもので、切断時における樹脂シートの皺を伸ばして重なりを抑制し、樹脂シートや切断部材に作用する力を軽減することのできる巻回体用化粧箱を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては上記課題を解決するため、化粧箱に、巻芯に樹脂シートが巻かれた巻回体を収納し、この巻回体から引き出された樹脂シートを切断部材で切断可能なものであって、
化粧箱は、巻回体を搭載可能な底板と、この底板の前部に接続されて巻回体の樹脂シートと接触可能な正面板と、底板の後部に接続されて正面板に対向可能な背面板と、この背面板に接続されて底板に対向可能な天井蓋板と、この天井蓋板に接続されて正面板に対向可能な重ね胴板と、底板の側部、正面板の側部、及び背面板の側部が区画する開口を閉塞可能な複数の側板とを含み、底板に樹脂シート用の切断部材を取り付けてその刃を正面板の下部から露出させ、
化粧箱の正面板の天井蓋板と接触可能な上部の両側に中心点を定め、この中心点を中心にして円弧を描くことにより、隣接する側板方向に向かうにしたがい徐々に下降する皺伸ばし部を滑らかな円弧のフィレットに湾曲形成するとともに、この皺伸ばし部の半径を1mm以上12mm以下とし、皺伸ばし部に巻回体から引き出された樹脂シートの側部を接触させることにより、樹脂シートの側部の皺を伸ばすようにしたことを特徴としている。
【0011】
なお、正面板の両側部に、皺伸ばし部に隣接する第一のフラップをそれぞれ接続するとともに、背面板の両側部に、第一のフラップに重なる第二のフラップをそれぞれ接続し、これら複数の第一、第二のフラップの少なくともいずれかに、略連続した接着剤用の小穴を形成し、底板の両側部には、第一、第二のフラップの少なくともいずれかに接着される側板をそれぞれ接続することができる。
また、切断部材を生分解性樹脂により板に形成し、この切断部材の両側部のうち、少なくとも一側部の長手方向に複数の刃を形成し、切断部材を底板の前部長手方向に接着剤あるいは超音波接着により接合することができる。
【0012】
また、重ね胴板は、天井蓋板に接続されて正面板に重なる胴片と、この胴片に略連続した複数の小穴を介し接続される開封剥離片とに分割され、正面板と開封剥離片のいずれかに、これらを接着する複数の接着部が形成されており、開封剥離片には、複数の接着部のうち、少なくとも一部の接着部の周縁に部分的に沿う切り欠きが形成されるようにすることもできる。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における樹脂シートには、ポリ塩化ビニル製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリ塩化ビニリデン製等の樹脂シートの他、薄い樹脂フィルムが含まれる。また、切断刃は、樹脂製が主ではあるが、カシメられる金属製でも良い。さらに、巻回体用化粧箱は、使用の態様に応じ、上下前後左右が変更され、家庭用、業務用を特に問うものではない。
【0014】
本発明によれば、化粧箱の天井蓋板を開けて巻回体から樹脂シートを引き出す際、樹脂シートの幅方向の側部は、化粧箱の皺伸ばし部に案内されて隣接する側板の方向に引っ張られる。この引っ張りにより、樹脂シートの皺が伸ばされ、皺に伴う重なりの発生が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、皺伸ばし部に巻回体から引き出された樹脂シートを接触させることにより、樹脂シートの皺を伸ばすので、切断時における樹脂シートの皺を伸ばして重なりを抑制し、樹脂シートや切断部材に作用する力を軽減することができるという効果がある。また、皺伸ばし部を、化粧箱の隣接する側板方向に向かうにしたがい徐々に下降する滑らかな段差無しの円弧のフィレットに形成することができるので、皺伸ばし部に樹脂シートの側部が引っ掛かり、樹脂シートの側部が破れることが少ない。
また、皺伸ばし部の半径が1mm以上12mm以下の範囲なので、皺伸ばし部と樹脂シートとの接触領域が狭くなるのを防止し、好適な皺伸ばし効果が期待できる。また、皺伸ばし部に樹脂シートが過剰に接触して皺が寄るのを防ぐことができる。さらに、正面板の上部両側に、滑らかな段差無しの円弧の皺伸ばし部をそれぞれ形成するので、化粧箱を握る手が左右どちらであろうと、切断時の樹脂シートの皺を伸ばして重なりを抑制することができ、切断作業の便宜を図ることが可能となる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、切断部材が生分解性樹脂製でも、皺伸ばし部の皺伸ばし効果により、切断部材が化粧箱の底板から脱落するのを防止することができる。また、切断部材が生分解性樹脂製の場合、金属製よりも安全性が向上し、しかも、微生物の働きにより、切断部材が最終的に水と二酸化炭素にまで分解されるので、分別・廃棄が安全で簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る巻回体用化粧箱の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
図2】本発明に係る巻回体用化粧箱の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
図3】本発明に係る巻回体用化粧箱の実施形態における化粧箱を模式的に示す展開図である。
図4】本発明に係る巻回体用化粧箱の実施形態における化粧箱の複数枚のフラップと開放した側板との関係を模式的に示す斜視説明図である。
図5】本発明に係る巻回体用化粧箱の実施形態における皺伸ばし部を模式的に示す要部拡大説明図である。
図6】本発明に係る巻回体用化粧箱の実施形態におけるラップフィルムの切断作業を模式的に示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における巻回体用化粧箱は、図1ないし図6に示すように、化粧箱1のラップロール20から引き出されたラップフィルム22を切断刃3で切断する専用の包装箱であり、化粧箱1の正面板5の天井蓋板9と接触する上部の両側に、側板17方向に向かうにしたがい下降する皺伸ばし部30をそれぞれ形成し、この一対の皺伸ばし部30の少なくともいずれかにラップロール20から引き出されたラップフィルム22を接触させることにより、ラップフィルム22の皺を伸ばして不規則な重なりの発生を防止するようにしている。
【0019】
化粧箱1は、図1ないし図4図6に示すように、ラップロール20を回転可能に搭載する底板2と、この底板2の前端部に接続されてラップロール20のラップフィルム22と摺接する正面板5と、底板2の後端部に接続されて正面板5の内面にラップロール20を介して対向する背面板8と、この背面板8の上端部に揺動可能に接続されて底板2にラップロール20を介して対向する天井蓋板9と、この天井蓋板9に揺動可能に接続されて正面板5の表面に対向可能な重ね胴板10と、底板2の両側部、正面板5の両側部、及び背面板8の両側部が区画する開口側部をそれぞれ閉塞可能な一対の側板17とを備えて一体形成され、製造時に正面板5の表面に重ね胴板10が接着された未完成の状態で図示しない製函機に平坦に折り畳んでセットされる。
【0020】
化粧箱1の底板2、正面板5、背面板8、天井蓋板9、及び重ね胴板10は、ラップロール20に対応する細長い長方形にそれぞれ形成され、底板2の前端部と正面板5の下端部との間、底板2の後端部と背面板8の下端部との間、この背面板8の上端部と天井蓋板9の後端部との間、及び天井蓋板9の前端部と重ね胴板10の後端部との間には、化粧箱1の組立を容易にする屈曲用の折線がそれぞれ形成される。
【0021】
底板2は、図2図4図6に示すように、前部の左右長手方向に切断刃3が取り付けられ、この切断刃3の鋸刃4が正面板5の下端部から視認可能に露出する。切断刃3は、例えば金属や生分解性樹脂により細長い長方形の薄板に形成され、両側のうち、少なくとも一側部の長手方向に複数の鋸刃4が連続して形成されるとともに、各鋸刃4が小さな三角形に形成されており、金属製の場合には底板2の表面前部にカシメ接合され、生分解性樹脂の場合には底板2の表面前部に接着剤や超音波接着により接合される。
【0022】
切断刃3の材料が生分解性樹脂の場合、生分解性樹脂として、例えばバイオポリエステル、バクテリアセルロース、脂肪酸ポリエステル等があげられる。切断刃3の具体的な材料としては、例えば三菱樹脂株式会社製のエコロージュ(登録商標)、ユニチカ株式会社製のテラマック〔製品名〕、旭化成株式会社製のビオクリア〔製品名〕等があげられる。
【0023】
切断刃3の一側部は、底板2の表面前端部と正面板5の下端部との接続部分付近、換言すれば、境界の折線付近に位置し、複数の鋸刃4が底板2の表面前端部から前方に僅かに食み出ており、この僅かに食み出た複数の鋸刃4がラップロール20から引き出されたラップフィルム22を幅方向(図2の奥方向)の側部23から切断するよう機能する(図6参照)。
【0024】
正面板5は、上部である横長の上端部がラップロール20のラップフィルム22と摺接可能とされ、短辺の両側部に、皺伸ばし部30に隣接する矩形あるいは台形の内フラップ6がそれぞれ折線を介し屈曲可能に接続されており、各内フラップ6の表面が側板17の内面に対向して接着される。この内フラップ6の表面には、ホットメルト接着剤の接着を容易にする複数本のミシン目7が間隔をおき並べて形成され、各ミシン目7が底板2や天井蓋板9の左右方向に連続して伸長される。
【0025】
背面板8の短辺の両側部には、化粧箱1の開口側部を被覆可能な内フラップ6Aがそれぞれ折線を介し屈曲可能に接続され、各内フラップ6Aが矩形あるいは一部切り欠かれた台形等に形成されており、各内フラップ6Aが折り畳まれて対向する正面板5の内フラップ6の裏面に接着される。内フラップ6Aの表面には、ホットメルト接着剤の接着を容易にする複数本のミシン目7が間隔をおき並べて形成され、各ミシン目7が底板2や天井蓋板9の左右方向に連続して伸長される。
【0026】
正面板5と背面板8の内フラップ6・6Aは、同じ大きさや長さでも良いが、必要に応じて変更される。例えば、正面板5の内フラップ6が短く形成されるとともに、背面板8の内フラップ6Aが長く形成されたり、逆に正面板5の内フラップ6が長く形成され、背面板8の内フラップ6Aが短く形成される。
【0027】
天井蓋板9は、底板2と同じ大きさ・長さに形成され、正面板5の上端部に接触支持されることにより、底板2の内面に対向してラップロール20を収納する空間を区画形成する。この天井蓋板9の短辺の両側部には、底板2に側板17が接続されない場合、ラップロール20のラップフィルム22の引き出しに支障を来さないことを条件として、側板17がそれぞれ折線を介し屈曲可能に接続される。
【0028】
重ね胴板10は、天井蓋板9の前端部に接続されて正面板5の表面に重なる細長い胴片11と、この胴片11の前端部に横長のミシン目12を介して接続される細長い開封剥離片13とに分割され、この開封剥離片13の裏面長手方向に、正面板5の表面に接着剤により接着される複数の接着部14が所定の間隔をおき並べて形成されており、各接着部14が略円形あるいは矩形に区画形成されて所定の接着剤が塗布される。
【0029】
ミシン目12の両端部には、必要に応じ、胴片11と開封剥離片13との分離を容易にする略三角形の切り欠き15がそれぞれ形成される。また、開封剥離片13の少なくとも長手方向には、複数の接着部14のうち、少なくとも一部の接着部14の周縁に部分的に沿う切り欠き16が所定の間隔をおきそれぞれ形成され、この複数の切り欠き16を利用した押圧操作により、開封剥離片13の複数の接着部14間等が部分的に浮き上がり、正面板5の表面から開封剥離片13が徐々に、かつ簡単に剥離される。
【0030】
このような重ね胴板10は、正面板5から開封剥離片13が複数の切り欠き15を介して剥離され、この開封剥離片13が胴片11からミシン目12に沿って除去されることにより、胴片11が揺動可能となって天井蓋板9の開放を可能とする。天井蓋板9が開放可能になると、化粧箱1内に収納されたラップロール20を自由に取り扱うことができ、ラップロール20のラップフィルム22を所定の長さ分引き出すことができる。
【0031】
各側板17は、化粧箱1の開口側部に対応する大きさの矩形に形成され、底板2の短辺の側部に折線を介し屈曲可能に接続されており、化粧箱1の組立時(製函時)に皺伸ばし部30に隣接する。各側板17の先端部には、天井蓋板9の裏面側部に重なる先細りの舌フラップ18が折線を介し屈曲可能に接続され、これら側板17と舌フラップ18とが化粧箱1の組立時にL字形に屈曲される。
【0032】
以上の構成を有する化粧箱1は、紙器用板紙であるコートボール紙の打ち抜きにより形成され、底板2、正面板5、各内フラップ6、背面板8、各内フラップ6A、天井蓋板9、重ね胴板10、各側板17、及び各舌フラップ18の視認可能な全表面(外面)に、製品価値を高める所定の意匠が必要に応じて印刷される。
【0033】
ラップロール20は、図2に示すように、化粧箱1の底板2よりもやや短い巻芯21を備え、この巻芯21の外周面に透明帯形のラップフィルム22が20m~50m程度、あるいは50m~110m程度巻回されており、化粧箱1内に自由回転可能に収納される。巻芯21は、所定の紙により、円筒形に形成され、巻かれたラップフィルム22の両側部23から露出する。
【0034】
ラップフィルム22は、例えば耐熱性、耐水性、粘着性等に優れるポリ塩化ビニル(PVC)、柔軟剤、安定剤等により柔軟な薄膜に成形され、ラップロール20から化粧箱1の正面板5の上端部や皺伸ばし部30を跨いで所定の長さ分引き出された後、化粧箱1の切断刃3により左右いずれかの側部23から切断され、食品の包装に利用される。
【0035】
化粧箱1とラップロール20の長さの関係であるが、一般的には、化粧箱1の長さが231mm以上235mm以下の場合には、ラップロール20のラップフィルム幅が22cmとされ、化粧箱1の長さが311mm以上318mm以下の場合には、ラップロール20のラップフィルム幅が30cmとされる。また、化粧箱1の長さが463mm以上466mm以下の場合には、ラップロール20のラップフィルム幅が45cmとされる。
【0036】
一対の皺伸ばし部30は、図3図5に示すように、化粧箱1の正面板5の上端部両側にそれぞれ打ち抜き形成されて内フラップ6や組立時の側板17に隣接し、ラップロール20から引き出されたラップフィルム22の両側部23と摺接することにより、ラップフィルム22の側部23を外側に案内して少なくとも側部23の皺を伸ばし、不規則な重なりを防止するよう機能する。各皺伸ばし部30は、正面板5の上部側方付近に中心点cpを定め、この中心点cpを中心にして円弧を描くことにより、隣接する内フラップ6や組立時の側板17方向に向かうにしたがい徐々に下降する滑らかなフィレットに湾曲形成される。
【0037】
皺伸ばし部30の半径rは、図5に示すように、ラップフィルム22の側部23の皺を適切に伸ばす観点から、化粧箱1の高さ(正面板5の高さ)に拘わらず、1mm以上13mm以下、好ましくは1mm以上12mm以下、より好ましくは8mm以上10mm以下の範囲とされる。これは、皺伸ばし部30の半径rが1mm未満の場合には、実験結果から、皺伸ばし部30とラップフィルム22との摺接領域が狭くなり、十分な皺伸ばし効果が期待できないからである。これに対し、皺伸ばし部30の半径rが13mmを越える場合には、実験結果から、皺伸ばし部30にラップフィルム22が過剰に摺接して皺が寄るからである。
【0038】
上記構成において、化粧箱1からラップフィルム22を引き出して食品の乾燥や酸化を防ぐ場合には図6に示すように、化粧箱1の中央部付近を握持して底板2の切断刃3を上に向け、化粧箱1の天井蓋板9を開けてラップロール20からラップフィルム22を必要な長さ分引き出し、化粧箱1の天井蓋板9を閉じた後、化粧箱1を外側に傾けながら引き出したラップフィルム22により食品を被覆・包装する。
【0039】
この際、ラップフィルム22は、両側部23が皺伸ばし部30の湾曲辺に案内されて外側の側板17方向に引っ張られながら引き出される。係る引っ張りにより、ラップフィルム側部23の皺が伸ばされるとともに、この皺に伴う不規則な重なりの発生が有効に防止され、ラップフィルム22が直線的な切断刃3に面として対向し、ラップフィルム22の切断が実に容易となる。
【0040】
ラップフィルム22により食品を被覆・包装したら、底板2の切断刃3に面として対向するラップフィルム22を圧接して側部23から切断すれば、包装作業が迅速に完了し、食品の乾燥や酸化を防ぐことができる。
【0041】
上記構成によれば、化粧箱1の皺伸ばし部30がラップフィルム側部23の皺を伸ばして重なりを解消するので、直線的な切断刃3によるラップフィルム22の切断に要する力を軽減することができる。したがって、例え切断刃3が樹脂製で単に底板2に接合されていても、切断刃3が化粧箱1の底板2から脱落するのを有効に防止することができる。また、巻芯21にラップフィルム22を皺なく巻き取る必要がなく、ラップフィルム22の巻回状態を特に変更する必要がないので、既存の巻替設備を何ら変更する必要がない。
【0042】
また、皺伸ばし部30が凹凸や段差のない滑らかな円弧なので、ラップフィルム側部23が損傷して包装作業に支障を来すのを防止することができる。さらに、切断刃3が生分解性樹脂製の場合、金属製よりも安全性が向上し、使い終わった後の分別・廃棄も安全、簡単となる。
【0043】
なお、上記実施形態の切断刃3の両側部長手方向には、複数の鋸刃4をそれぞれ連続して形成しても良い。また、上記実施形態では化粧箱1の正面板5の上部両側に皺伸ばし部30をそれぞれ形成したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、必要に応じ、正面板5の上部一側のみに皺伸ばし部30を形成しても良い。また、内フラップ6・6Aの表面に複数本のミシン目7を水平に並べて形成しても良いし、傾けて並べて形成しても良い。
【0044】
また、開封剥離片13の裏面長手方向に複数の接着部14を所定の間隔をおき並べて形成しても良いが、正面板5の表面に複数の接着部14を所定の間隔をおき並べて形成することもできる。さらに、開封剥離片13の少なくとも表面長手方向に、全ての接着部14の周縁に部分的に沿う切り欠き16を所定の間隔をおき形成することもできる。
【実施例
【0045】
以下、本発明に係る巻回体用化粧箱の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
図3に示すポリマラップ(登録商標)〔信越ポリマー株式会社製:製品名〕用の化粧箱を用意し、この化粧箱を握持して底板の切断刃を上に向け、化粧箱の天井蓋板を開けてラップロールからラップフィルムを引き出し、ラップフィルム側部の皺や重なりを目視により確認してその結果を表1にまとめた。
【0046】
化粧箱は、コートボール紙により打ち抜き形成し、高さ(正面板の高さ)を48mmとした。この化粧箱の正面板の上端部両側には、隣接する側板方向に向かうにしたがい下降する皺伸ばし部をそれぞれ打ち抜き形成した。各皺伸ばし部は、正面板の上部側方付近に中心点を定め、この中心点を中心にして円弧を描くことにより、滑らかなフィレットに湾曲形成した。皺伸ばし部の半径は1mmに調整した。また、ラップフィルムは、幅22cm×長さ100mのポリ塩化ビニル製のタイプである。
【0047】
〔実施例2〕
基本的には、実施例1と同様であるが、皺伸ばし部を打ち抜き形成する際、皺伸ばし部の半径を4.8mmに調整した。
〔実施例3〕
基本的には、実施例1と同様であるが、皺伸ばし部を打ち抜き形成する際、皺伸ばし部の半径を5mmに変更した。
【0048】
〔実施例4〕
基本的には、実施例1と同様であるが、皺伸ばし部を打ち抜き形成する際、皺伸ばし部の半径を8mmに変更した。
〔実施例5〕
基本的には、実施例1と同様であるが、皺伸ばし部を打ち抜き形成する際、皺伸ばし部の半径を10mmに変更した。
【0049】
〔比較例1〕
ポリマラップ(登録商標)〔信越ポリマー株式会社製:製品名〕用の化粧箱を用意し、この化粧箱を握持して底板の切断刃を上に向け、化粧箱の天井蓋板を開けてラップロールからラップフィルムを引き出し、ラップフィルム側部の皺や重なりを目視により確認してその結果を表1に記載した。
【0050】
化粧箱は、コートボール紙により打ち抜き形成し、高さ(正面板の高さ)を48mmとした。しかしながら、化粧箱の正面板の上端部両側には、実施例と異なり、皺伸ばし部を打ち抜き形成しなかった。また、ラップフィルムは、幅22cm×長さ100mのポリ塩化ビニル製のタイプである。
【0051】
〔比較例2〕
図3に示すポリマラップ(登録商標)〔信越ポリマー株式会社製:製品名〕用の化粧箱を用意し、この化粧箱を握持して底板の切断刃を上に向け、化粧箱の天井蓋板を開けてラップロールからラップフィルムを引き出し、ラップフィルム側部の皺や重なりを目視により確認してその結果を表1に記載した。
【0052】
化粧箱は、コートボール紙により打ち抜き形成し、高さ(正面板の高さ)を48mmとした。化粧箱の正面板の上端部両側には、隣接する側板方向に向かうにしたがい下降する皺伸ばし部をそれぞれ打ち抜き形成した。各皺伸ばし部は、正面板の上部側方付近に中心点を定め、この中心点を中心にして円弧を描くことにより、フィレットに湾曲形成した。皺伸ばし部の半径は25mmに拡大した。また、ラップフィルムは、幅22cm×長さ100mのポリ塩化ビニル製のタイプである。
〔比較例3〕
基本的には、比較例2と同様であるが、皺伸ばし部を打ち抜き形成する際、皺伸ばし部の半径を40mmに拡大した。
【0053】
【表1】
【0054】
〔結 果〕
実施例1、2、3の場合、化粧箱の皺伸ばし部がラップフィルム側部の皺をある程度伸ばしたので、ラップフィルムの切断に必要な力を従来より軽減することができ、実用上十分な効果を得られるのが判明した。また、実施例4、5の場合、皺伸ばし部とラップフィルムの摺接領域が拡大し、皺伸ばし部がラップフィルム側部の皺を適切に伸ばし、皺が解消した。この皺の解消により、ラップフィルムの切断に要する力を大幅に軽減することができた。
【0055】
これに対し、比較例1の場合、化粧箱の正面板に皺伸ばし部を打ち抜き形成せず、従来の化粧箱をそのまま使用したので、ラップフィルム側部に発生した皺を全く伸ばすことができず、結果として、ラップフィルムの切断に強い力を加えざるを得なかった。また、比較例2、3の場合、皺伸ばし部を打ち抜き形成したものの、皺伸ばし部の半径が1mm以上13mm以下の範囲ではないので、皺伸ばし部によりラップフィルム側部の皺を伸ばすことができず、ラップフィルムの切断に必要な力を従来よりも軽減できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る巻回体用化粧箱は、食材、家庭用品、厨房用品、ホテル用品等の分野で使用される。
【符号の説明】
【0057】
1 化粧箱
2 底板
3 切断刃(切断部材)
4 鋸刃(刃)
5 正面板
6 内フラップ
6A 内フラップ
7 ミシン目
8 背面板
9 天井蓋板
10 重ね胴板
11 胴片
13 開封剥離片
14 接着部
17 側板
20 ラップロール(巻回体)
21 巻芯
22 ラップフィルム(樹脂シート)
23 側部
30 皺伸ばし部
cp 中心点
r 半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6