(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20240201BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20240201BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240201BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20240201BHJP
F24F 110/70 20180101ALN20240201BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F3/044
F24F11/46
F24F11/72
F24F110:70
(21)【出願番号】P 2019224710
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-055448(JP,A)
【文献】特開平03-217745(JP,A)
【文献】特許第2636514(JP,B2)
【文献】特開平04-309731(JP,A)
【文献】特開平07-103526(JP,A)
【文献】特開2010-266102(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108507051(CN,A)
【文献】特開平04-116329(JP,A)
【文献】特開2008-075973(JP,A)
【文献】特開2014-173784(JP,A)
【文献】特開平04-257650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0137126(US,A1)
【文献】特開平10-078254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 3/044
F24F 11/46
F24F 11/72
F24F 110/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエリアの夫々から取り込んだ還気を排気として排出しながら、取り込んだ外気を空調装置で温調処理して当該温調処理後の給気を前記複数のエリアへ分配供給する空調システムであって、
前記複数のエリアの夫々から取り込んだ還気の一部を排気として排出する部分排気手段を備えると共に、前記空調装置が、外気と共に前記部分排気手段で排気されなかった残部の還気を取り込んで温調処理するものとして構成され、
前記複数のエリアの夫々の空気汚染度を個別空気汚染度として検知する個別空気汚染度検知手段と、
前記複数のエリアの夫々への給気風量を個別給気風量として調整可能な個別給気風量調整手段と、
前記部分排気手段による排気風量を調整可能な排気風量調整手段と、
運転を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段が、
前記個別空気汚染度検知手段で検知された前記複数のエリアの夫々の個別空気汚染度の最大値が所定の管理基準値以下
の範囲内においてできるだけ高い状態に推移するように前記排気風量調整手段を制御する排気風量制御と、
前記個別空気汚染度検知手段で検知された前記複数のエリアの夫々の個別空気汚染度のばらつきを縮小させるように前記個別給気風量調整手段を制御する個別給気風量制御と、を実行する空調システム。
【請求項2】
前記制御手段が、前記管理基準値に対する前記複数のエリアの夫々の個別空気汚染度の平均値の差分が所定の設定差分以上である場合に前記個別給気風量制御を実行する請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御手段が、前記個別給気風量制御において、前記複数のエリアのうちの個別空気汚染度が最大である特定エリアへの個別給気風量を増加させる請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記複数のエリアの夫々の室温を個別室温として検知する個別室温検知手段と、
前記複数のエリアの夫々へ供給される給気を個別に温調する個別温調手段と、を備え、
前記制御手段が、前記個別室温検知手段で検知された前記複数のエリアの夫々の個別室温が所定の目標室温に維持されるように前記個別温調手段の出力を制御する個別室温制御を実行する請求項1~3の何れか1項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のエリアの夫々から取り込んだ還気を排気として排出しながら、取り込んだ外気を空調装置で温調処理して当該温調処理後の給気を前記複数のエリアへ分配供給する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の居室の夫々から取り込んだ還気を排気として排出しながら、取り込んだ外気を空調装置で温調処理し当該温調処理後の給気を複数の居室へ分配供給する空調システムとして、各居室の空気汚染度の指標となる二酸化炭素濃度が所定の管理基準値以下に収まるように各居室への給気風量を個別に調整するものが知られている(例えば特許文献1,2を参照。)。上記特許文献1,2の空調システムは、各居室から取り込んだ還気の全量を排気として排出すると共に、各居室へ供給する給気の全量を外気で賄うものとして構成されている。そして、二酸化炭素濃度が十分に低い居室に対して、外気からなる給気の風量が低下されることで、当該居室への無駄な外気導入が低減して、省エネルギー性が向上される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許2658597号公報
【文献】特許2636514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、居室への給気風量を低下させると、当該居室の熱負荷を十分に除去できなくなって、室温を所望の目標室温に維持できずに快適性が損なわれる場合がある。また、各居室の二酸化炭素濃度を管理基準値以下に収めるための給気風量の制御を各居室において各別に実行するという煩雑な構成を採用する必要がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、複数のエリアの夫々から取り込んだ還気を排気として排出しながら、取り込んだ外気を空調装置で温調処理して当該温調処理後の給気を前記複数のエリアへ分配供給する空調システムにおいて、合理的な構成を採用しつつ省エネルギー性の向上と各エリアの快適性の確保とを実現できる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、複数のエリアの夫々から取り込んだ還気を排気として排出しながら、取り込んだ外気を空調装置で温調処理して当該温調処理後の給気を前記複数のエリアへ分配供給する空調システムであって、
前記複数のエリアの夫々から取り込んだ還気の一部を排気として排出する部分排気手段を備えると共に、前記空調装置が、外気と共に前記部分排気手段で排気されなかった残部の還気を取り込んで温調処理するものとして構成され、
前記複数のエリアの夫々の空気汚染度を個別空気汚染度として検知する個別空気汚染度検知手段と、
前記複数のエリアの夫々への給気風量を個別給気風量として調整可能な個別給気風量調整手段と、
前記部分排気手段による排気風量を調整可能な排気風量調整手段と、
運転を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段が、
前記個別空気汚染度検知手段で検知された前記複数のエリアの夫々の個別空気汚染度の最大値が所定の管理基準値以下の範囲内においてできるだけ高い状態に推移するように前記排気風量調整手段を制御する排気風量制御と、
前記個別空気汚染度検知手段で検知された前記複数のエリアの夫々の個別空気汚染度のばらつきを縮小させるように前記個別給気風量調整手段を制御する個別給気風量制御と、
を実行する点にある。
【0007】
本構成によれば、上記部分排気手段を備えることで、複数のエリアの夫々から取り込んだ還気の一部が上記部分排気手段により排気として排出されながら、外気と共に上記部分排気手段で排気されなかった残部の還気が空調装置で温調処理されて当該温調処理後の給気が複数のエリアへ分配供給されることになる。即ち、複数のエリアと空調装置との間で循環される還気及び給気に対して、快適性に影響を与える居室への給気風量を変更することなく、上記部分排気手段による排気風量に相当する外気を空調装置から供給される給気に取り込みながら、その排気風量を上記排気風量調整手段により調整することができる。そして、このような構成において、上記個別空気汚染度の最大値に着目して上記排気風量調整手段を制御対象とするというような簡略且つ合理的な構成を採用した上記排気風量制御を実行する。このことで、上記個別空気汚染度の最大値が管理基準値以下に収まるように上記部分排気手段による排気風量を調整する形態で、全てのエリアの空気汚染度を管理基準値以下に収めることができる。
【0008】
更に、複数のエリアの夫々の個別空気汚染度のばらつきを縮小させるように上記個別給気風量調整手段を制御して上記複数のエリアの夫々への個別給気風量を調整するというような簡略で合理的な構成を採用した上記個別給気風量制御を実行する。このような個別給気風量制御を実行して複数のエリアの夫々の個別空気汚染度のばらつきが縮小すると、当該複数のエリアの夫々の個別空気汚染度が何れも管理基準値以下の範囲内においてできるだけ高い状態に推移するように、上記排気風量制御にて排気風量及びそれに相当する外気の取込量が減少される。このことで、居室への無駄な外気導入を低減して省エネルギー性を向上することができる。
【0009】
従って、本発明により、複数のエリアの夫々から取り込んだ還気を排気として排出しながら、取り込んだ外気を空調装置で温調処理して当該温調処理後の給気を前記複数のエリアへ分配供給するにあたり、合理的な構成を採用しつつ省エネルギー性の向上と各エリアの快適性の確保とを実現できる空調システムを提供することができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記制御手段が、前記管理基準値に対する前記複数のエリアの夫々の個別空気汚染度の平均値の差分が所定の設定差分以上である場合に前記個別給気風量制御を実行する点にある。
【0011】
本構成によれば、管理基準値に対する複数のエリアの夫々の個別空気汚染度の平均値の差分が所定の設定差分以上である場合に上記個別給気風量制御を実行するので、当該差分が小さいことで十分な省エネルギー性の向上が見込めない場合において無駄に複数のエリアの夫々への個別給気風量を変更することを回避して、当該個別給気風量の変更による快適性の悪化を抑制することができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記制御手段が、前記個別給気風量制御において、前記複数のエリアのうちの個別空気汚染度が最大である特定エリアへの個別給気風量を増加させる点にある。
【0013】
本構成によれば、上記個別給気風量制御において、複数のエリアのうちの個別空気汚染度が最大である特定エリアへの個別給気風量を増加させることで、複数のエリアの夫々の個別空気汚染度のばらつきを縮小させることができる。このことで、複数のエリアの夫々において個別給気風量を低下させることなく、熱負荷を除去可能な程度に維持して、快適性を確保することができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記複数のエリアの夫々の室温を個別室温として検知する個別室温検知手段と、
前記複数のエリアの夫々へ供給される給気を個別に温調する個別温調手段と、を備え、
前記制御手段が、前記個別室温検知手段で検知された前記複数のエリアの夫々の個別室温が所定の目標室温に維持されるように前記個別温調手段の出力を制御する個別室温制御を実行する点にある。
【0015】
本構成によれば、上記個別室温制御を実行して、複数のエリアの夫々へ供給される給気を個別に温調する個別温調手段の出力を制御する形態で、上記個別給気風量制御で調整される複数のエリアの夫々への個別給気風量を変更することなく、複数のエリアの夫々の個別室温を目標室温に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】個別給気風量制御の実行可否を判定するフロー図
【
図5】個別給気風量制御及び排気風量制御による各居室での二酸化炭素濃度の変化状態を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態の空調システム(以下、「本空調システム」と呼ぶ。)100は、複数の居室R1,R2,R3(エリアの一例)の夫々から取り込んだ還気RAを排気EAとして屋外へ排出しながら、屋外から取り込んだ外気OAを空調装置1で温調処理し、当該温調処理後の給気SAを各居室R1,R2,R3へ分配供給するシステムとして構成されている。
更に、本空調システム100には、各居室R1,R2,R3から取り込んだ還気RAの一部を排気EAとして屋外へ排出する排気ファン5(部分排気手段の一例)が設けられている。そして、空調装置1が、外気OAと共に排気ファン5で排気されなかった残部の還気RAを取り込んで温調処理するものとして構成されている。
尚、本実施形態において、説明を簡単にするために居室の数を3とするが、居室の数については適宜変更可能である。
【0018】
即ち、各居室R1,R2,R3には給気SAを供給するための個別給気風路11が接続されており、これらの個別給気風路11は、空調装置1の二次側(吐出側)に接続された給気風路10に対して分岐して形成されている。そして、空調装置1の二次側から吐出された給気SAは、給気風路10及び各個別給気風路11を通じて各居室R1,R2,R3に供給される。
【0019】
一方、各居室R1,R2,R3には、還気RAを取り込むための個別還気風路21が接続されており、これら個別還気風路21は、排気ファン5の一次側(吸込側)に接続された還気風路20に対して分岐して形成されている。更に、排気ファン5の一次側と空調装置1の一次側(吸込側)とを接続する還気取込路31が設けられている。よって、各居室R1,R2,R3から各個別還気風路21に取り込まれた還気RAは、還気風路20を通じて排気ファン5の一次側と空調装置1の一次側とに分配供給される。また、この排気ファン5に対しては、当該排気ファン5の送風量(排気EAの風量)を調整可能なインバータ5a(排気風量調整手段の一例)が設けられている。
このような構成により、各居室R1,R2,R3と空調装置1との間で循環される還気RA及び給気SAに対して、各居室R1,R2,R3の快適性に影響を与える給気風量(給気SAの吹出風量)を変更することなく、排気ファン5による排気風量(排気EAの排出風量)に相当する外気OAを空調装置1から供給される給気SAに取り込みながら、インバータ5aにより、排気ファン5による排気風量を調整できるようになる。
【0020】
空調装置1には、屋外から取り込んだ外気OAと還気取込路31から取り込んだ還気RAとを合流後に冷却処理(温調処理の一例)して冷風である給気SAを生成する熱交換器等の冷却処理部3と、冷却処理部3で生成された給気SAを給気風路10に吐出する給気ファン2とが設けられている。尚、この給気ファン2には、送風量を可変とするためのインバータ2aが設けられている。更に、給気ファン2の二次側に接続された給気風路10には、当該給気ファン2の二次側圧力(給気風路10の内圧)を給気圧力として検知する給気圧力センサ35が設けられている。
【0021】
各個別給気風路11には、各居室R1,R2,R3へ供給される給気SAを個別に温調する個別温調手段として、各居室R1,R2,R3へ供給される給気SAを加熱可能な再熱器(レヒーティングコイル)12が設けられている。
また、各個別給気風路11には、各居室R1,R2,R3への給気SAの風量を個別給気風量として調整可能な風量調整弁13(個別給気風量調整手段の一例)が設けられている。
また、各個別還気風路21には、上記給気側の風量調整弁13と連動して開度調整されて、各居室R1,R2,R3からの還気RAの風量を個別還気風量として調整可能な風量調整弁23が設けられている。
尚、風量調整弁13,23については、リニアな風量コントロールが可能なVAV方式の可変風量制御装置や、段階的(例えば2段階)の風量コントロールが可能なCAV方式の定風量制御装置等を利用することができる。
【0022】
各居室R1,R2,R3には、各居室R1,R2,R3の空気汚染度を示す二酸化炭素濃度を個別二酸化炭素濃度(個別空気汚染度の一例)として検知する二酸化炭素濃度センサ40(個別空気汚染度検知手段の一例)と、各居室R1,R2,R3の室温を個別室温として検知する室温センサ41(個別室温検知手段の一例)とが設けられている。
【0023】
本空調システム100には、運転を制御するための制御装置50(制御手段の一例)が設けられており、この制御装置50は、後述する給気圧力制御、排気風量制御、個別給気風量制御、及び個別室温制御を実行するように構成されている。以下、これらの制御の詳細について順に説明を加える。
尚、下記の説明において、nを1~3の整数として、居室R1,R2,R3は居室R(n)と表し、それら各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q1,Q2,Q3をQ(n)と表す場合がある。
【0024】
〔給気圧力制御〕
制御装置50が実行する給気圧力制御は、給気圧力センサ35で検知された給気圧力が所望の設定給気圧力に維持されるようにインバータ2aを制御して給気ファン2の送風量を調整するものとして構成されている。
このような給気圧力制御が実行されることにより、例えば風量調整弁13により各居室R(n)への個別給気風量を変化させた場合でも、その変化に伴う給気圧力の変動を抑制するように、給気ファン2の送風量を上記個別給気風量の合計に相当する風量に追従させて変化させることができる。
【0025】
〔排気風量制御〕
制御装置50が実行する排気風量制御は、
図2に示すように、二酸化炭素濃度センサ40で検知された各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)の最大値Qmaxが所定の管理基準値Qm以下に収まるようにインバータ5aを制御して排気ファン5の排気風量を調整するものとして構成されている。
【0026】
即ち、排気風量制御では、各居室R(n)に設けられた二酸化炭素濃度センサ40で検知された各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)が取得され(ステップ#11)、それら取得された各個別二酸化炭素濃度Q(n)のうちの最大値がQmaxとされ、管理基準値Qmに対する最大値Qmaxの差分がΔQmaxとされる(ステップ#12)。
【0027】
そして、上記最大値Qmaxが予め定められた管理基準値Qmよりも大きい場合(ステップ#13のyes)には、インバータ5aが制御されて、排気ファン5の排気風量が増加される(ステップ#14)。すると、各居室R(n)へ供給される給気SAに取り込まれる外気OAは、排気ファン5による排気風量の増加に連動して増加するので、各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)は全体的に低下することになる。
そして、上記最大値Qmaxが管理基準値Qm以下となるまで(ステップ#13のno)、排気ファン5による排気風量が増加(ステップ#14)されることで、全ての個別二酸化炭素濃度Q(n)が管理基準値Qm以下に収められることになる。
【0028】
また、上記最大値Qmaxが上記管理基準値Qm以下に収まった場合(ステップ#13のno)において、上記管理基準値Qmに対する最大値Qmaxの差分ΔQmaxが所定の設定差分Aを超える場合(ステップ#15のyes)には、インバータ5aが制御されて、排気ファン5の排気風量が減少される(ステップ#16)。すると、各居室R(n)へ供給される給気SAに取り込まれる外気OAは、排気ファン5による排気風量の減少に連動して減少することになる。このことで、全ての個別二酸化炭素濃度Q(n)が増加して上記差分ΔQmaxが縮小されることで、管理基準値Qm以下の範囲内においてできるだけ高い状態に推移するようになる。そして、排気ファン5による排気風量の減少に伴って、無駄な外気OAの導入が低減されて、省エネルギー性が向上されることになる。
【0029】
〔個別給気風量制御〕
制御装置50は、
図3に示すように、上記管理基準値に対する各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)の平均値Qaの差分ΔQaが所定の設定差分B以上である場合に前記個別給気風量制御を実行する。
即ち、各居室R(n)に設けられた二酸化炭素濃度センサ40で検知された各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)が取得され(ステップ#21)、それら取得された各個別二酸化炭素濃度Q(n)の平均値Qaが求められ、上記管理基準値Qmに対する上記平均値Qaの差分ΔQaが求められる(ステップ#22、
図5(a)参照。)。
そして、この差分ΔQaが予め設定された設定差分B以上である場合(ステップ#23のyes)に、後述する個別給気風量制御が実行される(ステップ#24)。このことで、上記差分ΔQaが小さいことで十分な省エネルギー性の向上が見込めない場合において、無駄に各居室R(n)への個別給気風量を変更することが回避されて(ステップ#23のno)、当該個別給気風量の変更による快適性の悪化が抑制される。
【0030】
制御装置50が実行する個別給気風量制御は、
図4に示すように、二酸化炭素濃度センサ40で検知された各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)の標準偏差等のばらつきを縮小させるように風量調整弁13を制御して、各居室R(n)への個別給気風量を調整するものとして構成されている。
【0031】
即ち、個別給気風量制御では、各居室R(n)に設けられた二酸化炭素濃度センサ40で検知された各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)が取得され(ステップ#31)、それら取得された各個別二酸化炭素濃度Q(n)を参照して、各居室R(n)のうちの個別二酸化炭素濃度Q(n)が最大である特定居室が特定される(ステップ#32)。尚、本実施形態では、個別給気風量制御の実行前において、各居室R1、R2,R3の個別二酸化炭素濃度Q1、Q2,Q3が
図5(a)に示すような状態であると仮定して、上記個別二酸化炭素濃度Q2が最大となる居室R2が上記特定居室とされている。
【0032】
次に、特定された特定居室に接続された個別給気風路11の風量調整弁13(
図1を参照。)の開度を増加させる形態で、当該特定居室への個別給気風量が一定量増加される(ステップ#33)。すると、
図5(b)に示すように、他の居室R1,R2の個別二酸化炭素濃度Q1,Q2は変化せずに、特定居室R2への外気OAを含む給気SAの供給量が増加することに伴って、当該特定居室R2の個別二酸化炭素濃度Q2が低下する。結果、各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)のばらつきが縮小されることになる。
【0033】
そして、
図5(b)に示すように、上記個別給気風量制御が実行されて特定居室R2の個別二酸化炭素濃度Q2が低下されることで、上述した排気風量制御(
図2参照)において、管理基準値Qmに対する個別二酸化炭素濃度Q(n)の最大値Qmaxの差分ΔQmaxが所定の設定差分Aを超えた場合(
図2のステップ#15のyes)には、排気ファン5の排気風量が減少される(
図2のステップ#16)。このことで、
図5(c)に示すように、全ての個別二酸化炭素濃度Q(n)が増加し、無駄な外気OAの導入が低減されて省エネルギー性が向上されることになる。
【0034】
〔個別室温制御〕
制御装置50が実行する個別室温制御は、室温センサ41で検知された各居室R(n)の個別室温が所定の目標室温に維持されるように各居室R(n)の再熱器12の加熱出力を制御するものとして構成されている。このような個別室温制御を実行することにより、上述した個別給気風量制御で調整される各居室R(n)の個別給気風量の変更を伴うことなく、各居室R(n)の個別室温が目標室温に維持されることになる。
【0035】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0036】
(1)上記実施形態では、
図3に示すように、管理基準値Qmに対する各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)の平均値Qaの差分ΔQaが設定差分B以上である場合にのみ個別給気風量制御を実行したが、上記個別給気風量制御の実行タイミングについては適宜変更することができる。
【0037】
(2)上記実施形態では、
図4に示すように、個別給気風量制御において、個別二酸化炭素濃度Q(n)が最大である特定居室R2への個別給気風量を増加させることで、各居室R(n)の個別二酸化炭素濃度Q(n)のばらつきを縮小させたが、例えば個別二酸化炭素濃度が大きい特定居室において本空調システムとは別の換気装置を一次的に作動させるなど、別の方法で当該ばらつきを縮小させても構わない。
【0038】
(3)上記実施形態では、各居室R1,R2,R3において、二酸化炭素濃度センサ40で実際に検知された二酸化炭素濃度を空気汚染度の指標として利用したが、例えば、居室への在室者数や空調負荷等から推定された二酸化炭素濃度等を空気汚染度の指標として利用しても構わない。
【符号の説明】
【0039】
1 空調装置
5 排気ファン(部分排気手段)
5a インバータ(排気風量調整手段)
12 再熱器(個別温調手段)
13 風量調整弁(個別給気風量調整手段)
40 二酸化炭素濃度センサ(個別空気汚染度検知手段)
41 室温センサ(個別室温検知手段)
50 制御装置(制御手段)
100 空調システム
R1,R2,R3 居室(エリア)
EA 排気
OA 外気
RA 還気
SA 給気