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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20240201BHJP
   E04B 1/34 20060101ALI20240201BHJP
   E04H 3/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E04B1/30 G
E04B1/34 A
E04H3/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019237861
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021105309
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (公開の事由1)学校法人武庫川学院が、2019年5月1日に、武庫川女子大学 経営学部 経営学科の施設・設備のウェブページにて、発明を公開した。(公開の事由2)一般社団法人日本鉄鋼連盟 建築鋼構造研究ネットワーク 関西地区サブネットワークが、2019年9月26日に開催した令和元年度日本鉄鋼連盟関西地区「建築学科フィールド・スタディー」にて、発明を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】堀 良平
(72)【発明者】
【氏名】前田 達彦
(72)【発明者】
【氏名】濱田 明俊
(72)【発明者】
【氏名】前田 龍紀
(72)【発明者】
【氏名】三木 僚子
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸洋
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-336140(JP,A)
【文献】特開平04-250264(JP,A)
【文献】特開2010-275834(JP,A)
【文献】特開2018-040226(JP,A)
【文献】特開昭53-012115(JP,A)
【文献】特開平09-041683(JP,A)
【文献】特開2003-119886(JP,A)
【文献】特開2009-209605(JP,A)
【文献】特開平11-169472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0086874(US,A1)
【文献】国際公開第92/017665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
E04B 5/00-5/48
E04H 3/00-4/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部は複数層で1架構の外部フレームで構成され、内部は1層で1架構の内部フレームで構成された建物であって、
前記外部フレームの梁が存在する第1フロアどうしの間の第2フロアが前記内部フレームの内部柱から外方に張り出す状態で設けられており、
前記第2フロアを上階側の前記第1フロアから吊り支持する吊り支持部が設けられており、
前記吊り支持部を囲う枠体が平面視で前記第2フロアの外側縁部に沿って扁平な矩形形状に形成されている建物。
【請求項2】
複数層の前記第1フロアを上下に貫通する内側吹き抜け空間と、
上下一対の前記第1フロア間において前記第2フロアの外側縁部と前記外部フレームとの間に形成された外側吹き抜け空間と、を備え、
前記吊り支持部が前記第2フロアの外側縁部を吊り支持するように配置されており、
前記内側吹き抜け空間には、前記第2フロアを飛ばして上下の前記第1フロアの間を往来するためのエスカレータや階段が設けらている請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記第2フロアの梁成が前記第1フロアの梁成よりも小さく設定されている請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
記枠体の両側面に防火シャッタのレール部が設けられている請求項1~3の何れか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記第2フロアの上下スペース用の空調機器が上下の第1フロアの床内部に設置されている請求項1~4の何れか1項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周部は複数層で1架構の外部フレームで構成され、内部は1層で1架構の内部フレームで構成された建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物として、外周部は複数層で1架構の鉄筋コンクリート造の外部フレームで構成することで地震力の過半を負担し、内部は1層で1架構の鉄骨造の内部フレームで構成することで耐震要素を最小化したものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。このような建物では、外部フレームの梁が存在する第1フロアと、当該第1フロアどうしの間の第2フロアが設けられる。よって、第1フロアに外部フレームの鉄筋コンクリート造の梁が集約されているので、第2フロアでは、大きな梁形の突出部を極力設けない軽快な空間が実現されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許3120105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の建物において、第1フロアの外側端部は外部フレームにおける鉄筋コンクリート造の梁に接続されて支持されており、一方、第2フロアの外側端部は外部フレームにおける上下の鉄筋コンクリート造の梁間に設けられた鉄骨造の柱梁架構に接続されて支持されている。よって、第1フロアにはその上階側の第2フロアを支持するための複数の柱形が存在することになるため、第1フロア上のスペースにて柱が略存在しない大きな室内空間を実現するのは困難であった。
また、外部フレームの内側に第1フロア上のスペースと第2フロア上のスペースとを繋ぐ吹き抜け空間を設けた場合、第1フロア上のスペースに配置される上階側の第2フロアを支持するための複数の柱は、上記吹き抜け空間に対する視認性やアクセスの容易性を阻害する要因となる。よって、上記吹き抜け空間を介した上下階の利用者間のコミュニケーションの促進を十分に図ることができない場合があった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、外周部は複数層で1架構の外部フレームで構成され、内部は1層で1架構の内部フレームで構成された建物において、外部フレームの梁が存在する第1フロア上に柱が略存在しない大きな室内空間を実現可能すると共に、建物内部に吹き抜け空間を設けた場合にその吹き抜け空間を介した上下階の利用者間のコミュニケーションを促進することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、外周部は複数層で1架構の外部フレームで構成され、内部は1層で1架構の内部フレームで構成された建物であって、
前記外部フレームの梁が存在する第1フロアどうしの間の第2フロアが前記内部フレームの内部柱から外方に張り出す状態で設けられており、
前記第2フロアを上階側の前記第1フロアから吊り支持する吊り支持部が設けられており、
前記吊り支持部を囲う枠体が平面視で前記第2フロアの外側縁部に沿って扁平な矩形形状に形成されている点にある。
【0007】
本構成によれば、外部フレームの梁が存在する第1フロアどうしの間において内部フレームの内部柱から外方に張り出す状態で設けられた第2フロアが、外側端部が外部フレームの梁に接続されて支持されている上階側の第1フロアから上記吊り支持部により吊り支持される。このことで、当該吊り支持部により吊り支持された第2フロアの下階側の第1フロアでは、当該第2フロアを支持するための柱を省略又は簡素化することができるので、当該第1フロア上において柱が略存在しない大きな室内空間を構築することができる。
また、外部フレームの内側に第1フロア上のスペースと第2フロア上のスペースとを繋ぐ吹き抜け空間を設けた場合には、第1フロア上において、その上階側の第2フロアを支持するための柱を省略又は簡素化することができるので、吹き抜け空間に対する視認性やアクセスの容易性を確保することができる。
従って、本発明により、外周部は複数層で1架構の外部フレームで構成され、内部は1層で1架構の内部フレームで構成された建物において、外部フレームの梁が存在する第1フロア上に柱が略存在しない大きな室内空間を実現可能とすると共に、建物内部に吹き抜け空間を設けた場合にその吹き抜け空間を介した上下階の利用者間のコミュニケーションを促進することができる技術を提供することができる。
更に、本構成によれば、第2フロアを上階側の第1フロアから吊り支持する吊り支持部を囲う枠体が平面視で第2フロアの外側縁部に沿って扁平な矩形形状に形成されているので、第2フロア上のスペースにおいて当該枠体の突出幅を軽減して極力広い空間を実現することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、複数層の前記第1フロアを上下に貫通する内側吹き抜け空間と、
上下一対の前記第1フロア間において前記第2フロアの外側縁部と前記外部フレームとの間に形成された外側吹き抜け空間と、を備え、
前記吊り支持部が前記第2フロアの外側縁部を吊り支持するように配置されており、
前記内側吹き抜け空間には、前記第2フロアを飛ばして上下の前記第1フロアの間を往来するためのエスカレータや階段が設けられている点にある。
【0009】
本構成によれば、建物内部には複数層の第1フロアを上下に貫通する比較的大きな内側吹き抜け空間を、例えば内部フレームを構成する複数の内部柱で囲われた空間として形成することができる。そして、この内側吹き抜け空間により、複数層の第1フロア上のスペース間における利用者の移動やコミュニケーションを促進することができる。
一方、第2フロアの外側縁部が吊り支持部により上階側の第1フロアから吊り支持されているので、当該第2フロアの外側縁部を、外部フレームに対して分離して内側に離間した箇所に位置させる形態で、上下一対の前記第1フロア間において第2フロアの外側縁部と外部フレームとの間に外側吹き抜け空間を形成することができる。そして、下階側の第1フロア上のスペースでは、その上階側の第2フロアを支持するための柱を省略又は簡素化して外側吹き抜け空間に対する視認性やアクセスの容易性を確保することができるので、当該外側吹き抜け空間を介した第1フロア上のスペースと第2フロア上のスペースとの間における利用者のコミュニケーション等を促進することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記第2フロアの梁成が前記第1フロアの梁成よりも小さく設定されている点にある。
【0011】
本構成によれば、第2フロアが吊り支持部により上階側の第1フロアから吊り支持されているので、当該第2フロアの梁成を第1フロアの梁成よりも小さく設定することができる。このことで、当該第2フロアの下階側のスペースでは、大きな梁形の突出部が一層抑制された軽快な空間を実現することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記枠体の両側面に防火シャッタのレール部が設けられている点にある。
【0013】
本構成によれば、吊り支持部を囲う枠体の両側面に防火シャッタのレール部を配置する形態で、当該枠体を防火区画形成用の壁として有効利用することができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記第2フロアの上下スペース用の空調機器が上下の第1フロアの床内部に設置されている点にある。
【0015】
本構成によれば、第1フロアの床内部に空調機器を設置し、その空調機器により、第1フロア上のスペースと第2フロア上のスペースの空調を行うことができる。このことで、第2フロアの床内部には、当該空調機器を設置する必要がないので、その厚みを極力抑えて、その上下スペースの高さを稼ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の建物の外部構造を表す立面図
図2】本実施形態の建物の内部構造を示す断面図
図3】外側吹き抜け空間周辺の内部構造を示す拡大断面図
図4】外側吹き抜け空間周辺の内部構造を示す拡大平面図
図5】第1フロア側から見た外側吹き抜け空間周辺の状態を示す図
図6】第2フロア側から見た外側吹き抜け空間周辺の状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る建物の実施形態について図面に基づいて説明する。
本実施形態の建物(以下「本建物」と呼ぶ。)は、外周部はRC(鉄筋コンクリート)造の外部フレーム1(図1参照)で構成することで地震力の過半を負担し、内部はS(鉄骨)造の内部フレーム2(図2参照)で構成することで耐震要素を最小化した建物として構成されている。
【0018】
更に、外部フレーム1は2階層(複数層の一例)で1架構の構造を有し、一方、内部フレーム2は1階層で1架構の構造を有する。
即ち、外部フレーム1は、内部フレーム2の外周部に沿って配置された複数の鉄筋コンクリート柱1Bに対して2階層分のピッチで鉄筋コンクリート梁1Aが設けられた形態の構造物として構築されている。
一方、内部フレーム2は、平面視での略中央部に配置された複数の内部鉄骨柱2B(内部柱の一例)から、各階層のフロア11,12を支持する鉄骨梁11a,12aが外方にも張り出された形態の構造物として構築されている。
【0019】
このような構成により、図2に示すように、内部フレーム2に構築される各階層のフロア11,12としては、外方に外部フレーム1の鉄筋コンクリート梁1Aが存在する第1フロア11と、外方に外部フレーム1の鉄筋コンクリート梁1Aが存在しない第2フロア12とが、交互に配置されることになる。例えば、本建物では、1階、3階、5階、7階のフロアが、外方に外部フレーム1の鉄筋コンクリート梁1Aが存在する第1フロア11であり、その他の2階、4階、6階、8階のフロアが、外方に外部フレーム1の鉄筋コンクリート梁1Aが存在しない第2フロア12となる。
【0020】
即ち、外部フレーム1では、第1フロア11の外方側に、当該フロア11の端部が接続される鉄筋コンクリート梁1Aが集約されており、一方、第2フロア12の外方側には、例えば当該フロア12の端部を接続可能な程度の非常に小型な接続用鉄骨梁1Cだけが設けられているため、その内側においては軽快な空間が実現されている。
【0021】
図2に示すように、内部フレーム2の平面視での略中央部には、各階層に構成されたフロア11,12を上下に貫通する内側吹き抜け空間22が、内部フレーム2を構成する複数の内部鉄骨柱2Bで囲われた空間として形成されている。そして、図3に示すように、各階層のフロア11,12及びそれを支持する鉄骨梁11a,12aは、これら複数の内部鉄骨柱2Bから外方に張り出す状態で設けられている。
【0022】
内側吹き抜け空間22により、複数層の第1フロア11上の室内空間11S間における利用者の移動やコミュニケーションが促進されており、例えば、内側吹き抜け空間22には、上下の第1フロア11の間を往来するためのエスカレータ25や階段26等が設けられている。尚、第1フロア11及び第2フロア12を含む各階への往来するための階段やエレベータ等についても、図示は省略するが例えば図2の奥行方向の手前側又は奥側等に配置されている。
【0023】
そして、各階層のフロア11,12上の室内空間11S,12Sと内吹き抜け空間22との境界部には、視界を遮る壁等が設けられていないため、各階層の室内空間11S,12Sは内吹き抜け空間22でつながる大空間となる。そのため、各空間11S,12S,22に居る利用者間において内吹き抜け空間22を通じて「見る-見られる」関係が日常的につくりだされることになり、自然と交流が生まれるレイアウトが実現されている。
【0024】
図3及び図4にも示すように、上述した第2フロア12のうちの一部の特定第2フロア12Aにおいては、当該特定第2フロア12Aを上階側の第1フロア11から吊り支持する吊り支持部30が設けられている。具体的に、特定第2フロア12Aの外側縁部12bが外部フレーム1よりも内側に離間した箇所に位置しており、吊り支持部30はその特定第2フロア12Aの外側縁部12bを吊り支持するように配置されている。
一方、上記特定第2フロア12A以外の第2フロア12については、外側端部が外部フレーム1における上下の鉄筋コンクリート梁1A間に設けられた接続用鉄骨梁1Cまで延出して接続されている。
【0025】
例えば、本建物では、図2において、4階の右側の第2フロア12と、6階の左側の第2フロア12と、8階の右側の第2フロア12とが、上記特定第2フロア12Aとしてその外側縁部12bが、上階側の第1フロア11から垂下する状態で当該外側縁部12bに沿って配置された複数の吊り支持部30により吊り支持されている。このような構成により、吊り支持部30により吊り支持された特定第2フロア12Aの下階側の第1フロア11では、当該特定第2フロア12Aを支持するための柱が不要となるので、その第1フロア11上には柱形が存在しない大きな室内空間11Sが構築されている。
尚、本実施形態では、特定第2フロア12Aを吊り支持部30のみで吊り支持することにより、その下階側の第1フロア11上において、当該特定第2フロア12Aを支持するための柱を一切設けない構成を採用しているが、第1フロア11上に若干の柱を設けて、当該柱と上記吊り支持部30の両方で特定第2フロア12Aを支持するように構成しても構わない。このような場合であっても、上記第1フロア11上において特定第2フロア12A支持用の柱を簡素化することができる。
【0026】
図3に示すように、特定第2フロア12Aの外側縁部12bが、吊り支持部30により吊り支持された上で、外部フレーム1よりも内側に離間した箇所に位置している。このことから、この特定第2フロア12Aを上下に挟む上下一対の第1フロア11間において、特定第2フロア12Aの外側縁部12bと外部フレーム1との間には、外側吹き抜け空間21が形成されている。この外側吹き抜け空間21に通じる下階側の第1フロア11上の室内空間11Sでは、図5及び図6にも示すように、外側吹き抜け空間21に対する視認性やアクセスの容易性を阻害する要因となる柱形が存在しない。よって、外側吹き抜け空間21を介した特定第2フロア12A上の室内空間12Sとその下階側の第1フロア11上の室内空間11Sとの間における利用者間のコミュニケーション等が促進されることになる。
【0027】
そして、特定第2フロア12Aの上下夫々の室内空間11S,12Sと外吹き抜け空間21との境界部には、視界を遮る壁等が設けられていないため、特定第2フロア12Aの上下夫々の室内空間11S,12Sは外吹き抜け空間21でつながる大空間となる。
そのため、各空間11S,12S,21に居る利用者間において外吹き抜け空間21を通じて「見る-見られる」関係が日常的につくりだされることになり、自然と交流が生まれるレイアウトが実現されている。
【0028】
本建物は、上述のような外部フレーム1のデザイン(図1参照)と、上述のような第1フロア11及び第2フロア上の室内空間11S,12Sの状態(図3参照)において、学校校舎として好適に適用可能である。例えば、特定第2フロア12Aを含む第2フロア12上の室内空間12Sについては、研究室などのような比較的小さな部屋を複数設けることができる。一方、特定第2フロア12Aの下階側を含む第1フロア11上の室内空間11Sについては、柱が少ないことから演習室や講義室などの比較的大きな部屋を設けることができる。
【0029】
図3に示すように、内部鉄骨柱2Bから外方に延出して第1フロア11を支持する鉄骨梁11aの梁成と、内部鉄骨柱2Bから外方に延出して第2フロア12を支持する鉄骨梁12aの梁成とを比較すると、第2フロア12を支持する鉄骨梁12aの梁成が第1フロア11を支持する鉄骨梁11aの梁成よりも小さく設定されている。即ち、特定第2フロア12Aが吊り支持部30により上階側の第1フロア11から吊り支持されていることから、この特定第2フロア12Aを含む第2フロア12を支持する鉄骨梁12aの梁成については、第1フロア11を支持する鉄骨梁11aの梁成よりも小さく設定することができる。そして、このように構成すれば、特に特定第2フロア12Aの下階側の第1フロア11上の室内空間11Sを、大きな梁形の突出部が一層抑制された軽快な空間として構築することができる。
【0030】
更に、第1フロア11を支持する鉄骨梁11aの梁成が比較的大きいことから、その第1フロア11の床内部には比較的大きなフロア内空間11b(床内部の一例)が形成される。そこで、このフロア内空間11bには、その第1フロア11の上下の室内空間11S,12S用の空調機器50が設けられている。そして、第1フロア11上の室内空間11Sは、その床下側の第1フロア11のフロア内空間11bに設けられた空調機器50により空調される。一方、第2フロア12上の室内空間12Sは、その天井裏側の第1フロア11のフロア内空間11bに設けられた空調機器50により空調される。即ち、空調装置50は、それが設置された第1フロア11の上下の室内空間11S,12Sに対して空調空気を供給するように構成されている。また、室内空間11S,12Sに対する空調空気等の吹き出し箇所については、図示は省略するが、外吹き抜け空間21や内吹き抜け空間22に対する境界部にエアバリアを形成するように配置することで、空調効率の悪化を抑制することができる。
このように第1フロア11のフロア内空間11bに設置した空調機器50により、その第1フロア11の上下の室内空間11S,12Sの空調を行うので、第2フロア12の内部には空調機器50の設置が不要となる。このことので、第2フロア12の厚みが極力抑えられて、その上下の室内空間11S,12Sの高さが稼がれている。
【0031】
図3及び図4に示すように、吊り支持部30は、平面視で特定第2フロア12Aの外側縁部12bに沿って扁平な矩形形状に形成された枠体31により囲われている。この枠体31の両側面には、防火シャッタ35のレール部36が設けられている。即ち、特定第2フロア12A上の室内空間12Sにおいて、平面視で扁平な矩形形状の枠体31の突出幅が軽減されており、極力広い空間が実現されている。更に、枠体31については防火区画形成用の壁として有効利用されており、その両側面には、火災時において閉鎖されて特定第2フロア12Aと外側吹き抜け空間21とを区画するための防火シャッタ35のレール部36が配置されている。
【0032】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0033】
(1)上記実施形態では、建物内部に外側吹き抜け空間21や内側吹き抜け空間22を設けたが、これら吹き抜け空間21,22の形成箇所や形状等については適宜変更可能であり、また、これら吹き抜け空間21,22のうち一方又は両方を省略しても構わない。
【0034】
(2)上記実施系形態では、特定第2フロア12Aの外側縁部12bを上階側の第1フロア11から吊り支持部30により吊り支持するように構成したが、外側縁部12bではなく、特定第2フロア12Aの外側縁部12bよりも中央側を吊り支持部30により吊り支持するように構成しても構わない。
【0035】
(3)上記実施形態では、第2フロア12を支持する鉄骨梁12aの梁成を、第1フロア11を支持する鉄骨梁11aの梁成よりも小さく設定したが、これら鉄骨梁11a,12aの梁成については適宜変更可能であり、例えば、鉄骨梁11a,12aの梁成を同等のもとする、又は鉄骨梁12aの梁成を鉄骨梁11aの梁成よりも大きくすることもできる。
【0036】
(4)上記実施形態では、第1フロア11のフロア内空間11bに設置した空調機器50により、その第1フロア11の上下の室内空間11S,12Sの空調を行うように構成したが、第1フロア上の室内空間用の空調機器はその第1フロア内空間に設置し、第2フロア上の室内空間用の空調機器はその第2フロア内空間に設置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 外部フレーム
2 内部フレーム
2B 内部鉄骨柱(内部柱)
11 第1フロア
11S 室内空間
11a 鉄骨梁
11b フロア内空間
12 第2フロア
12A 特定第2フロア
12S 室内空間
12a 鉄骨梁
12b 外側縁部
21 外側吹き抜け空間
22 内側吹き抜け空間
30 吊り支持部
31 枠体
35 防火シャッタ
36 レール部
50 空調機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6