(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】熱利用システム
(51)【国際特許分類】
F24T 10/20 20180101AFI20240201BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240201BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20240201BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20240201BHJP
【FI】
F24T10/20
C02F1/42 A
C02F1/50 520B
C02F1/50 550H
C02F1/50 560E
C02F1/68 540G
(21)【出願番号】P 2020007694
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-02-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】山東 丈夫
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-118645(JP,A)
【文献】特開平05-007864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24T 10/20
C02F 1/42
C02F 1/50
C02F 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水の熱を利用
し、かつ、前記地下水を飲料水とする熱利用システムであって、
前記地下水を、分離膜を用いて処理する前処理手段と、
前記前処理手段の後段に設けられ、かつ、前記前処理手段によって処理された前記地下水を用いて
建物または施設との間で熱交換を行う熱交換器と、
を備え、
前記熱交換器は、前記分離膜によって処理された前記地下水から熱を回収し、回収した熱を用いて
前記建物または施設を暖めるか、または、
前記熱交換器は、前記分離膜によって処理された前記地下水に熱交換の対象物の熱を奪わせ、
前記建物または施設を冷却する、熱利用システム
(ただし、前記前処理手段によって処理された前記地下水が、前記熱交換器を一度通った後に再び前記熱交換器に戻る場合を除く。)。
【請求項2】
前記分離膜が、逆浸透膜又は限外ろ過膜である、請求項1に記載の熱利用システム。
【請求項3】
前記前処理手段によって処理された前記地下水を貯留する処理水槽をさらに備える、請求項1又は2に記載の熱利用システム。
【請求項4】
前記処理水槽に貯留された処理水を
前記飲料水とする、請求項3に記載の熱利用システム。
【請求項5】
前記前処理手段によって処理された前記地下水を、薬剤を用いて処理する後処理手段をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱利用システム。
【請求項6】
前記前処理手段によって処理された前記地下水の硬度を調整するミネライザをさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地下水の熱を利用するシステムが知られている(例えば、特許文献1、2)。
特許文献1に開示の地下水の利用システムは、地下水の汲み上げ供給手段と熱交換器と逆浸透膜浄化装置と浄水受けタンクを備える。特許文献1に開示の地下水の利用システムは、第1流路系統と第2流路系統をさらに備え、これらの流路系統の切り換えが可能である。第1流路系統では、熱交換器を通過した後の地下水が逆浸透膜浄化装置に供給され、逆浸透膜の透過水が浄水受けタンクに貯留される。第2流路系統では、地下水がそのまま直接的に逆浸透膜浄化装置に供給され、逆浸透膜の透過水が浄水受けタンクに貯留される。
【0003】
特許文献2に開示の地中熱利用システムは、揚水井と軟水化装置と外気処理用ヒートポンプと地下水利用水冷式ヒートポンプと脱気装置と注入井を備える。特許文献2に開示の地中熱利用システムは、Na型イオン交換樹脂を充填した軟水化装置で地下水から鉄、マンガンを除去した後、外気処理用ヒートポンプ、地下水利用水冷式ヒートポンプに地下水を熱源として供給する。これらのヒートポンプの熱源として供給された地下水は、脱気装置で後処理され、注入井に還流されて、地中に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-46677号公報
【文献】特開2012-233636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2は、逆浸透膜等の分離膜に供給される水の温度と分離膜の透過水の量との関係の一例を示すグラフである。
図2のグラフでは分離膜に供給される水の温度を横軸にプロットし、15℃における透過水の量に対する透過水の量の比を縦軸にプロットしている。
図2に示すように、分離膜に供給される水の温度が高いほど透過水の量は多くなり、分離膜に供給される水の温度が低いほど、透過水の量は少なくなる。
したがって、分離膜による水処理の最中に分離膜に供給される水の温度が仮に変動した場合には、透過水の量も同様に変動すると考えられる。
【0006】
図3は、従来の熱利用システムの概略模式図である。
図3に示す熱利用システム101は、原水槽111と熱交換器117と膜分離装置115と薬剤添加手段118とミネライザ119と処理水槽120を地下水側(原水槽111側)からこの順で備える。また、膜分離装置115は、分離膜モジュール116、116’、116’’を備える。
熱利用システム101では、図示略の井戸から地下水が流路121を流れ、原水槽111に供給される。原水槽111内の地下水は、ポンプ112によって送液されて流路122を流れ、プレフィルター113を通過した後、熱交換器117に通水される。熱交換器117では、熱交換の対象物と地下水との間で熱交換が行われ、地下水の熱が利用される。その後、地下水は流路122を流れ、膜分離装置115に供給され、透過水と濃縮水とに分離される。透過水は流路123を流れ、透過水中の塩素等の成分濃度、pH値、硬度等が、薬剤添加手段118、ミネライザ119によって必要に応じて調整され、処理水槽120に貯留される。
【0007】
このように処理システム101にあっては、熱交換器117を通過して熱交換が行われた後の地下水が膜分離装置115に供給される。しかし、熱交換器117を通過した後の地下水の温度は、熱交換器117の稼働率等の影響を受けて変動しやすい。そのため、
図2に示す水の温度と透過水の量との関係によれば、熱利用システム101では膜分離装置115の透過水の量が変動してしまう。
したがって、熱利用システム101にあっては、膜分離装置115に供給される水の温度や透過水の量が変動しやすいことから、処理水槽120における透過水中の塩素や有機物等の成分濃度、pH値、硬度等の水質が安定しない。加えて、薬剤添加手段118、ミネライザ119を用いて、透過水の水質を制御しようとしても、制御のための操作の負荷がきわめて大きく、水質の制御が困難である。さらに、熱利用システム101において冬季に地下水から熱を回収して利用する場合には、熱交換器を通過した後の水温が低下するため、膜分離装置115の透過水の量が減少するため、水を安定的に利用することができない。
【0008】
特許文献1に記載の第1流路系統を経由した逆浸透膜の透過水にあっては、熱交換器を通過した後の地下水が逆浸透膜浄化装置に供給される。そのため、
図3に示す熱利用システム101と同様の理由から、逆浸透膜浄化装置に供給される水の温度や逆浸透膜の透過水の量が熱交換器における熱交換に起因して変動しやすい。したがって、透過水の水質が安定せず、水質の制御が困難である。
特許文献2に開示の地中熱利用システムの軟水化装置では、Na型イオン交換樹脂を充填した塔内に地下水を通水し、地下水中のCa,Mg,Fe,Mnイオンを除去している。しかし、Na型イオン交換樹脂を用いる軟水化装置では、クリプトスポリジウム等の原虫や、細菌、溶存有機物等を除去できず、地下水の前処理としては不十分であり、地下水を水資源として利用できない。
本発明は、地下水を水資源として利用可能であり、地下水を分離膜で処理して得られる透過水の水質が安定し、透過水の水質の制御が容易である、熱利用システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記の態様を有する。
[1] 地下水の熱を利用する熱利用システムであって、前記地下水を、分離膜を用いて処理する前処理手段と、前記前処理手段の後段に設けられ、かつ、前記前処理手段によって処理された前記地下水を用いて熱交換を行う熱交換器と、を備える、熱利用システム。
[2] 前記分離膜が、逆浸透膜又は限外ろ過膜である、[1]の熱利用システム。
[3] 前記前処理手段によって処理された前記地下水を貯留する処理水槽をさらに備える、[1]又は[2]の熱利用システム。
[4] 前記処理水槽に貯留された処理水を飲料水とする、[3]の熱利用システム。
[5] 前記前処理手段によって処理された前記地下水を、薬剤を用いて処理する後処理手段をさらに備える、[1]~[4]のいずれかの熱利用システム。
[6] 前記前処理手段によって処理された前記地下水の硬度を調整するミネライザをさらに備える、[1]~[5]のいずれかの熱利用システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地下水を水資源として利用可能であり、地下水を分離膜で処理して得られる透過水の水質が安定し、透過水の水質の制御が容易である、熱利用システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る熱利用システムの概略模式図である。
【
図2】分離膜に供給される水の温度と透過水の量との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の逆浸透膜の運転方法について、実施形態例を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態例に限定されない。
図1は、本発明の一実施形態に係る熱利用システム1の概略模式図である。熱利用システム1は、地下水の熱を利用するシステムである。熱利用システム1は、原水槽11と膜分離装置15と熱交換器17と薬剤添加手段18とミネライザ19と処理水槽20を地下水側(原水槽11側)からこの順で備える。
【0013】
原水槽11は、地下水を原水として貯留する槽である。原水槽11には原水流路21と地下水流路22が接続されている。
原水流路21は、図示略の井戸から地下水を原水槽11に供給するための流路である。原水流路21には図示略の揚水装置が設けられている。図示略の揚水装置は、図示略の井戸等から地下水を汲み上げ、原水流路21を介して原水槽11に地下水を供給する。
地下水流路22は、原水槽11内の地下水を膜分離装置15に供給するための流路である。地下水流路22には、ポンプ12、プレフィルター13が地下水側からこの順に設けられている。そのため、原水槽11内の地下水は、ポンプ12、プレフィルター13の順に地下水流路22を通過する。
このように、地下水流路22は、揚水された地下水を熱交換器17に供給する前に膜分離装置15に供給できる。そのため、地下水流路22は、熱交換器をまったく介在させずに、地下水の温度を維持したまま、地下水を膜分離装置15に供給できる。
【0014】
ポンプ12は、地下水を加圧して膜分離装置15に供給するためのものである。ポンプ12によって地下水を加圧して膜分離装置15に供給することで、分離膜を用いる地下水の前処理が可能となる。
プレフィルター13は、膜分離装置15の地下水側に設けられており、葉や砂利等のサイズの大きな不純物を除去し、膜分離装置15の分離膜を閉塞や損傷等から保護している。
【0015】
膜分離装置15は、地下水を、分離膜を用いて処理する前処理手段の一例である。
膜分離装置15は、分離膜モジュール16、16’、16’’を備える。そして、分離膜モジュール16、16’、16’’は、分離膜をそれぞれ内部に有する。分離膜としては、処理水槽20の処理水を飲料水として好適に利用しやすいことから、逆浸透膜又は限外ろ過膜が好ましい。
膜分離装置15は、分離膜モジュール16、16’、16’’の分離膜に地下水を透過させて、透過水と濃縮水とに分離する装置である。分離膜モジュール16、16’、16’’のそれぞれには、分岐した地下水流路22のそれぞれの端部が接続されている。そのため、分離膜モジュール16、16’、16’’の分離膜の一次側には地下水流路22の地下水が供給される。
【0016】
熱利用システム1においては、熱交換器17の前段に膜分離装置15が設けられており、膜分離装置15の前段には熱交換器が設けられていない。そのため、揚水された地下水の温度をそのまま維持して膜分離装置15に地下水を供給できる。通常、地下水の温度は変動が少ない。よって、熱利用システム1においては、膜分離装置15に供給される地下水の温度の変動が少なく、膜分離装置15の透過水の流量の変動が従来のシステムと比較して非常に少なくなる。
【0017】
さらに、分離膜モジュール16、16’、16’’には、透過水流路23の分岐したそれぞれの端部と、濃縮水流路24がそれぞれ接続されている。
透過水流路23は、膜分離装置15の透過水を処理水槽20に供給して貯留するための流路である。透過水流路23には、膜分離装置15によって処理された地下水、すなわち透過水が流れる。透過水流路23には、熱交換器17、薬剤添加手段18、ミネライザ19がこの順に設けられている。そのため、膜分離装置15によって処理された地下水は、熱交換器17、薬剤添加手段18、ミネライザ19の順に透過水流路23を通過する。
濃縮水流路24は、分離膜モジュール16、16’、16’’の濃縮水を集め、処理システム1の外部に排出するための流路である。濃縮水流路24には膜分離装置15の濃縮水が流れる。
他の実施形態においては、処理水の回収率を上げるために、一部の濃縮水を地下水流路に戻したのち、再び分離膜モジュールで処理を行うことができるように濃縮水流路を構成してもよい。また、濃縮水を出さずに全量を透過水として処理してもよい。
【0018】
熱交換器17は、膜分離装置15の後段に設けられている。加えて、熱交換器17は、膜分離装置15によって処理された地下水を用いて熱交換を行う。具体的には、熱交換器17は、膜分離装置15によって処理された地下水と熱交換の対象物との間で熱交換を行う。熱交換の対象物は特に限定されないが、一般住宅、病院、工場、学校、オフィスビル、農業施設、畜産施設、水族館、植物園、ショッピングモール、介護施設等の種々の建物、施設等が挙げられる。ただし、熱交換の対象物は、これらの例示に限定されない。
例えば、熱交換器17を建物の暖房、建物内の水の加温、融雪等の用途に使用する場合、熱交換器17は、膜分離装置15によって処理された地下水から熱を回収し、回収した熱を用いて建物等の熱交換の対象物を暖める。
例えば、熱交換器17を建物の冷房、建物内の水の冷却、冷媒の冷却等の用途に使用する場合、熱交換器17は、膜分離装置15によって処理された地下水に建物内等の熱を奪わせて、建物等の熱交換の対象物を冷却する。
【0019】
薬剤添加手段18は、前処理手段によって処理された後の地下水を、薬剤を用いて処理する後処理手段の一例である。例えば、薬剤添加手段18は、熱交換器17によって熱交換が行われた後の地下水と薬剤とを混合することで、塩素濃度、pH、遊離炭酸濃度、硫酸イオン濃度、アンモニア性窒素濃度等を調整する態様のものが挙げられる。
薬剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム等の殺菌剤;水酸化ナトリウム、塩酸、硫酸等のpH調整剤が挙げられる。ただし、薬剤はこれらの例示に限定されない。薬剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態では、薬剤添加手段は熱交換器の前(一次側)にあるが、他の実施形態においては、薬剤添加手段は、熱交換器の後(二次側)にあってもよく、熱交換器の前後の両方(一次側及び二次側の両方)にあってもよい。
【0020】
ミネライザ19は、前処理手段によって処理された後の地下水の硬度を調整する。ミネライザ19としては、例えば、カルシウム及びマグネシウムの少なくとも一方と、膜分離装置15によって処理された後の地下水とを混合することで、地下水の硬度を調整する態様のものが挙げられる。ミネライザによる硬度の調整は、通水する地下水のpHや遊離炭酸濃度、通水速度に依存して実施してもよい。
【0021】
処理水槽20は、膜分離装置15によって処理された地下水を処理水として貯留する槽である。処理水槽20内の処理水は、建物の飲料水として利用可能である。この場合、熱利用システム1は、処理水槽20に貯留された処理水を飲料水とすることになる。
処理水槽20内の処理水は、他にも、例えば、入浴用の水源、動植物用の水源、トイレ用の水源、散水用の水源等の雑用水としても利用可能であり、透過水の利用目的及び用途は、これらの例示に制限されない。
【0022】
(作用効果)
以上説明した熱利用システム1においては、熱交換器17が膜分離装置15の後段に設けられている。そのため、膜分離装置15の分離膜に供給される地下水の温度は、熱交換器17における熱交換の影響を受けず、変動しにくい。したがって、膜分離装置15の分離膜の透過水の量も変動しにくくなる。その結果、膜分離装置15の分離膜の透過水の量が変動しにくくなり、処理水槽20における透過水中の塩素やアンモニア性窒素、有機物等の成分濃度、pH値、硬度等の水質が安定する。
さらに熱利用システム1によれば、分離膜の透過水の水質、水量が安定することから、ミネラルの添加、塩素等の薬剤による水質の制御も容易となる。
また、熱利用システム1は、分離膜を用いて地下水を処理する膜分離装置15を備える。そのため熱利用システム1によれば、地下水からクリプトスポリジウム等の原虫や、細菌、溶存有機物等を除去でき、地下水に対して充分な前処理を施すことができ、地下水を水資源として充分に利用可能となる。
したがって、熱利用システム1によれば、地下水を水資源として利用可能であり、地下水を分離膜で処理して得られる透過水の水質が安定し、透過水の水質の制御が容易となる。
【0023】
以上説明した熱利用システム1は、処理水槽20をさらに備えるため、処理水槽20内の処理水を種々の利用目的及び用途に応じて利用でき、例えば、処理水を飲料水としても利用できる。
以上説明した熱利用システム1は、薬剤添加手段18、ミネライザ19をさらに備える。熱利用システム1にあっては、分離膜の透過水の流量が変動しにくく、水質も安定することから、ミネラルの添加、塩素等の薬剤による水質の制御も容易である。したがって、熱利用システム1によれば、薬剤添加手段18、ミネライザ19を用いて、透過水の水質を制御する際の負荷が低減される。
【0024】
(使用方法)
熱利用システム1は、例えば、井戸水、伏流水等の任意の地下水に対して適用可能である。以下は、熱利用システム1の使用方法の一例である。まず、図示略の井戸等から地下水を原水槽11に供給し、ポンプ12によって地下水を送液して、プレフィルター13を経由させ、膜分離装置15の分離膜モジュール16、16’、16’’に供給する。次いで、膜分離装置15の後段に設けられた熱交換器17によって、膜分離装置15の透過水、すなわち、膜分離装置15によって処理された地下水を用いて熱交換の対象物との間で熱交換を行う。その後、必要に応じて薬剤添加手段18、ミネライザ19を用いて熱交換後の透過水の水質を調整する。
【0025】
熱利用システム1においては、膜分離装置15の後段に熱交換器17が設けられている。そのため、熱利用システム1を暖房に利用する際でも、膜分離装置15に供給される地下水の温度が低下せず、その透過水の量も低下しない。したがって、膜分離装置15の透過水の水量が低下しない。
このように、熱利用システム1によれば、暖房利用時において地下水から熱を回収する場合であっても、透過水の水量が低下しない。したがって、熱利用システム1によれば、従来の熱利用システム101、特許文献1に開示の第1流路系統等と比較して、暖房利用時において地下水を処理して効率的に透過水を得ることができ、水資源として有効に利用できるという効果も得られる。
以上説明したように、熱利用システム1によれば、地下水を水資源として利用可能であり、地下水を分離膜で処理して得られる透過水の水質が安定し、透過水の水質の制御が容易である、熱利用システムを提供できる。
【符号の説明】
【0026】
1 熱利用システム
11 原水槽
12 ポンプ
13 プレフィルター
15 膜分離装置
16、16’、16’’ 分離膜モジュール
17 熱交換器
18 薬剤添加手段
19 ミネライザ
20 処理水槽
21 原水流路
22 地下水流路
23 透過水流路
24 濃縮水流路