(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】生体情報取得用衣服
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20240201BHJP
A61B 5/273 20210101ALI20240201BHJP
【FI】
A61B5/256 210
A61B5/273
(21)【出願番号】P 2020012406
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】松雪 遼
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛房
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534502(JP,A)
【文献】特開2019-058346(JP,A)
【文献】登録実用新案第3178230(JP,U)
【文献】国際公開第2016/093194(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が設けられた衣服生地と、
前記衣服生地の表面側に配置されて前記衣服生地の表面側において被覆シートに覆われ、着用者の生体情報を取得する生体電極と、
前記衣服生地の表面側に
接着され、前記生体情報を受信可能な受信装置を接続可能なコネクタと、
前記被覆シートに覆われ、
前記コネクタの少なくとも一部に重なるよう前記衣服生地の表面側に配置され、前記生体電極と前記コネクタとを導通する生体情報伝送部と、
前記コネクタと前記生体情報伝送部との重なる方向において前記生体情報伝送部と前記被覆シートとにより挟まれ、前記コネクタに重なるように配置された押さえ部材と、
を備え、
前記生体電極は、前記衣服生地の裏面側において前記開口部から露出し、前記着用者の身体に接する接触部を含み、
前
記接触部の少なくとも一部は、前記衣服生地の裏面側から身体側に突出している、
生体情報取得用衣服。
【請求項2】
前記生体電極の前記接触部における前記身体側と反対の面に、クッション材が配置されている、
請求項1に記載の生体情報取得用衣服。
【請求項3】
前記被覆シートは、圧着シートである、
請求項1または2に記載の生体情報取得用衣服。
【請求項4】
前記被覆シートは、絶縁性を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の生体情報取得用衣服。
【請求項5】
前記コネクタは、前記衣服生地の表面側において、少なくとも一部が前記生体情報伝送部に覆われている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の生体情報取得用衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報取得用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体からの生体信号(例えば、電気信号)を検出するための電極等を備えた衣服が提案されている。例えば、特許文献1には、衣服生地の裏面側に電極が配置された生体信号取得用衣服が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の生体信号取得用衣服は、生体信号の検出には優れているものの、さらに着用時の快適さが求められている。具体的には、衣服生地の裏面側に絶縁性シートが設けられており、絶縁性シートと肌が接触する部分に汗だまりが発生して不快感をもたらすため、着用時の不快感を軽減するという要望がある。
【0005】
そこで、本発明は、着用時の不快感を軽減した生体情報取得用衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生体情報取得用衣服は、
開口部が設けられた衣服生地と、
前記衣服生地の表面側に配置され、着用者の生体情報を取得する生体電極と、
を備え、
前記生体電極は、前記衣服生地の裏面側において前記開口部から露出し、前記着用者の身体に接する接触部を含み、
前期接触部の少なくとも一部は、前記衣服生地の裏面側から身体側に突出している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、不快感を軽減した生体情報取得用衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る生体電極を装着した生体情報取得用衣服の正面図である。
【
図3】
図1の生体情報取得用衣服の生体電極の周辺を拡大した図である。
【
図4】
図1の生体情報取得用衣服に設けられた電極のA-A方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の態様に係る生体情報取得用衣服は、
開口部が設けられた衣服生地と、
前記衣服を構成する衣服生地の表面側に配置され、着用者の生体情報を取得する生体電極と、
を備え、
前記生体電極は、前記衣服生地の裏面側において前記開口部から露出し、前記着用者の身体に接する接触部を含み、
前期接触部の少なくとも一部は、前記衣服生地の裏面側から身体側に突出している。
【0010】
この構成によると、着用したときの不快感を低減することができる。また、生体電極が皮膚に密着しやすいため、生体情報の検出率を高めることができる。
【0011】
第2の態様に係る生体情報取得用衣服は、
前記生体電極の前記接触部における前記身体側と反対の面に、クッション材が配置されていてもよい。
【0012】
この構成によると、着用者が激しい体動を行った場合にも、生体電極と皮膚とが離間しにくく、さらに生体情報の検出率を高めることができる。
【0013】
第3の態様に係る生体情報取得用衣服は、
前記生体電極は、前記衣服生地の表面側において被覆シートに覆われていてもよい。
【0014】
この構成によると、生体電極と、ノイズ源となる他の衣服や物品等との接触を防止でき、ノイズを低減することができる。
【0015】
第4の態様に係る生体情報取得用衣服は、
前記被覆シートは、圧着シートであってもよい。
【0016】
この構成によると、衣服生地に生体電極を確実に固定でき、生体電極の変形を防止することができるため、ノイズを低減することができる。
【0017】
第5の態様に係る生体情報取得用衣服は、
前記被覆シートは、絶縁性を有していてもよい。
【0018】
この構成によると、被覆シートにより絶縁されるため、ノイズを低減することができる。
【0019】
第6の態様に係る生体情報取得用衣服は、
さらに、
前記衣服生地の表面側に配置され、前記生体情報を受信可能な受信装置を前記衣服に接続可能なコネクタと、
前記生体電極と前記コネクタとを導通する生体情報伝送部と、
を備えてもよい。
【0020】
この構成によると、生体電極により取得した生体情報を受信装置に送信することができる。
【0021】
第7の態様に係る生体情報取得用衣服は、
前記コネクタは、前記衣服生地の表面側において、少なくとも一部が前記生体情報伝送部に覆われていてもよい。
【0022】
この構成によると、コネクタが剥がれることを防止することができる。
【0023】
第8の態様に係る生体情報取得用衣服は、
前記生体情報伝送部は、前記被覆シートに覆われ、
さらに、
前記生体情報伝送部と前記被覆シートとにより挟まれ、前記コネクタに重なるように配置された押さえ部材、
を備えてもよい。
【0024】
この構成によると、さらにコネクタの剥がれを防止するとともに、コネクタと生体情報伝送部との接続を強化することができる。
【0025】
以下、実施の形態に係る生体情報取得用衣服について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において、実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る生体電極3を装着した生体情報取得用衣服1の表面側の正面図である。
図2は、
図1の生体情報取得用衣服1の身体側の正面図である。
図3は、
図1の生体情報取得用衣服1の生体電極3の周辺を拡大した図である。
図4は、
図1の生体情報取得用衣服1に設けられた電極13のA-A方向から見た断面図である。
図5は、
図4の電極13の構成を示す分解断面図である。
【0027】
[全体構成]
実施の形態1に係る生体情報取得用衣服1は、
図1および
図2に示すように、2つの開口部21aが設けられた衣服である。生体情報取得用衣服1は、衣服を構成する衣服生地21の表面側に配置される電極13(3、4)を備える。開口部21aから身体側に露出した生体電極3が着用者の身体(肌)に接することにより、着用者の生体情報を取得する。以下の説明において、生体情報取得用衣服1を単に衣服1と称することもある。なお、衣服1の身体側とは、着用したときに着用者の身体に接する面(裏面)をいい、衣服1の表面側とは、着用したときに外側となる面(表面)をいう。
【0028】
衣服1は、後述するコネクタ5(
図3参照)に受信装置6を取り外し可能に接続することができる。生体情報は、生体電極3により取得され、コネクタ5を介して受信装置6で受信され、受信装置6から外部の機器に送信することができる。
【0029】
以下に、生体情報取得用衣服1の構成要素について説明する。
【0030】
<電極>
電極13は、衣服1を着用した着用者の生体情報を取得する生体電極3と、生体電極3とコネクタ5とを導通する生体情報伝送部4とを含む。本実施の形態では、生体電極3と生体情報伝送部4とが一体的に形成されているが、生体電極3と生体情報伝送部4とは、別部材で構成されていてもよい。
【0031】
電極13は、衣服1を構成する衣服生地21の表面側に配置される。衣服生地21には開口部21aが設けられており、生体電極3は、衣服生地の身体側において、開口部21aから露出している。
【0032】
本実施の形態では、衣服生地21の表面側において、2つの電極13(生体電極3)がそれぞれ開口部21aを覆うように配置されている。このように電極13を配置することで、衣服生地21の身体側において、生体電極3がそれぞれ開口部21aから露出する。
【0033】
電極13と衣服生地21とは、
図4に示すように、例えば、接着層22aにより接着することができる。接着層22aとしては、例えば、ホットメルト接着剤等を用いることができる。
【0034】
<生体電極>
生体電極3は、衣服生地21の身体側において開口部21aから露出し、着用者の身体に接する接触部3aを含む。接触部3aが着用者の身体に接することで、着用者の生体情報を取得する。生体電極3は、衣服生地21の表面側に配置されているため、生体電極3の接触部3a以外の部分が着用者の身体に接するのを防止してノイズを低減することができる。また、身体に直接接するのが接触部3aと衣服生地21とであるため、吸水性の低い被覆シート等による汗だまりの発生、不快感等を低減することができる。
【0035】
また、
図4に示すように、生体電極3の接触部3aは、衣服生地21の裏面側から身体側に突出するよう配置されていてもよい。身体側からの突出は1mm~10mm程度であるとよい。接触部3aが身体側に突出することにより、生体電極3の身体への密着性が増し、激しい体動等による生体電極と身体との離間を防止することができる。また、動作の大きいスポーツまたは作業等を行う場合においても、より正確なデータの取得を行うことができる。接触部3aは、少なくとも一部が身体側に突出していればよい。
【0036】
本実施の形態では、生体電極3の接触部3aは、身体側に凸状の立体形状を有する。凸状の立体形状としては、複数の平面からなる多面体形状、または、球面または湾曲面等からなる曲面形状が挙げられる。または、多面体形状と曲面形状との複合形状であってもよい。さらに、一方向に凸状の形状に限定されず、一部に凹状の形状が含まれていてもよい。このような形状にすると、生体電極3が身体側に付勢されて、さらに生体電極3と身体とが離間しにくくなる。
【0037】
生体電極3は、弾性を有していてもよい。生体電極3が弾性を有することにより、着用者の違和感を低減し、立体形状がゆがんだ場合にも弾性的に回復できる。
【0038】
また、生体電極3の厚みは、0.01mm~5mm程度であるとよい。
【0039】
本実施の形態では、身体の中心線の両側に一対の生体電極3が配置されている。
図1および
図2に示すように、例えば、みぞおちの両側を覆う領域に左右対称に一対の生体電極3が配置されているが、生体電極3の数および配置位置はこれらに限定されず、生体電極3が1つ以上配置されていればよい。生体電極3を配置する位置は、取得しようとする生体情報、または対象とする生体組織等に応じて適宜決定することができる。
【0040】
生体電極3の配置位置は、例えば、胸部、背部、または腹部等が挙げられる。取得する生体情報は、例えば、脈波、脈拍、呼吸、温度、湿度、体動(例えば、加速度)等が挙げられる。本実施の形態のように、みぞおちの両側の領域に左右対称に配置される場合、心拍数等を検出することもできる。
【0041】
生体電極3は、取得する生体情報に対応して適宜構成されてもよい。また、生体電極3の数に応じて、生体情報伝送部4、およびコネクタ5の数を調整してもよい。
【0042】
生体電極3の素材は、生体信号を取得できるものであればよく、特に限定されない。例えば、導電性繊維で構成することができる。導電性繊維としては、例えば、繊維に導電性金属めっきを施した導電性金属めっき繊維、または繊維に導電性高分子を含浸したもの等を用いることができる。導電性繊維としては、例えば、銀、アルミニウム、金、銅等が挙げられ、導電性の観点から銀を使用するのが好ましい。繊維としては、特に限定されないが、耐久性の観点から、ポリエステル繊維またはナイロン繊維等を用いることができる。また、導電性繊維を不織布、織物、および編物等の繊維集合体にして生体電極3として使用してもよい。生体電極3を構成する繊維集合体は、特に限定されないが、例えば、単位面積当たりの重さ(目付)が100g/m2~500g/m2であるとよい。また、生体電極3として、導電性高分子で構成されたフィルムやシート等を用いてもよい。
【0043】
<生体情報伝送部>
衣服生地21の表面側に、生体情報伝送部4が配置されることが好ましい。生体情報伝送部4を身体側に配置した場合は、身体との接触をカバーするための被覆シートが必要となり、汗だまり等の不快感の原因となるからである。本発明では生体電極3が表面側に配置されているため、生体情報伝送部4も表面側に配置することが容易である。
【0044】
生体情報伝送部4は、生体電極3と導通し、生体電極3が取得した生体信号を伝送する。生体情報伝送部4は、生体電極3が取得した生体信号を伝送できればよく、その素材は特に限定されない。例えば、生体電極3と同様に、導電性繊維で構成することができる。本実施の形態では、生体電極3と生体情報伝送部4とは、一体的な電極13を構成している。すなわち、生体電極3の一部が延長されて、生体情報伝送部4が形成されている。具体的には、生体電極3から延長された周辺部および突出部が、生体情報伝送部4を構成している。
【0045】
なお、生体電極3と生体情報伝送部4は、一体ではなく、別々に構成されていてもよい。生体電極3と生体情報伝送部4とが別々に構成されている場合、導電性繊維糸で縫うことで生体電極3と生体情報伝送部4とを接合させてもよい。または、生体電極3と生体情報伝送部4とを導電性接着剤で接着させてもよい。
【0046】
<コネクタ>
衣服生地21の表面側にコネクタ5が配置されてもよい。コネクタ5として、例えば、導電性金属からなるスナップボタン、またはマグネットホック等を用いることができる。コネクタ5には、後述する生体情報を受信可能な受信装置6を接続可能である。コネクタ5は、生体情報伝送部4により、生体電極3と導通される。
【0047】
コネクタ5は、
図3に示すように、衣服生地21の表面側において、少なくとも一部が生体情報伝送部4に覆われていてもよい。
図4に示すように、導電性金属であるコネクタ5と衣服生地21とは、接着層22aにより接着されている。コネクタ5を生体情報伝送部4により覆うことにより、衣服生地21とコネクタ5との剥離を防止することができる。
【0048】
<被覆シート>
生体電極3は、衣服生地21の表面側において、被覆シート20に覆われていてもよい。本実施の形態において、生体電極3と生体情報伝送部4とは一体的に形成されて電極13を構成されており、電極13(生体電極3および生体情報伝送部4)が被覆シート20で覆われていることが好ましい。電極13が被覆シート20で覆われていることにより、生体情報以外のノイズを低減することができる。
【0049】
被覆シート20としては、例えば、圧着シートを用いることができる。または、被覆シート20として、絶縁性を有するシートを用いてもよい。絶縁性を有するシートとして、例えば、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリウレタンシート等を用いることができる。
【0050】
被覆シート20に透湿性の低い素材を用いることもできる。これにより、生体電極3付近の乾燥を防ぐことができる。生体電極と皮膚との間が適度に加湿されていると導電性が高まり、生体情報の検出率が高くなる。被覆シート20全体に透湿性の低い素材を用いてもよいし、被覆シート20の一部、例えば接触部3a領域のみに透湿性の低い素材を用いてもよい。接触部3a領域のみを透湿性の低い素材とし、それ以外の部分を透湿性のある素材とすることで、蒸れによる不快感を低減することができる。これにより着心地と検出率を両立することができる。
【0051】
<押さえ部材>
コネクタ5に重なるように、押さえ部材23が配置されていてもよい。具体的には、
図4に示すように、生体情報伝送部4と被覆シート20とにより挟まれ、コネクタ5に重なるように、押さえ部材23が配置される。コネクタ5を押さえ部材23により押さえることで、衣服生地21からのコネクタ5の剥離を防止することができる。
【0052】
<クッション材>
図3に示すように、生体電極3の接触部3aにおける身体側と反対の面に、クッション材10が配置されてもよい。すなわち、電極13(生体電極3)と被覆シート20との間に、クッション材10が配置されていてもよい。クッション材10は、立体形状を有していてもよい。クッション材10は、生体電極3を突出させ、かつ柔軟性を付与することができる。このようにクッション材10が配置されていると、生体電極3が着用者の動きに追従しやすくなり、生体電極3と身体との密着性を高めることができる。
【0053】
クッション材10と生体電極3とは、
図4に示すように、例えば、接着層22bにより接着することができる。接着層22bとしては、例えば、ホットメルト接着剤等を用いることができる。
【0054】
クッション材10は、クッション性を有する素材で形成されていれば、その素材は特に限定されない。例えば、樹脂発泡体、または繊維集合体等のクッション材を用いることができる。樹脂発泡体としては、例えば、ポリウレタンフォーム等を用いることができる。クッション材10は、着用感の観点から、繊維集合体で構成されていてもよい。繊維集合体としては特に限定されず、編物、織物、および不織布のいずれであってもよい。柔軟性の観点から、繊維集合体は、編物、特にダブルラッセルを用いてもよい。また、耐久性の観点から、繊維集合体は、例えば、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維で構成されていてもよい。
【0055】
クッション材10は、例えば、生体電極3に柔軟性を付与しやすいという観点から、厚みが0.1mm~10mmの範囲であってもよい。さらに、0.5mm~5mmの範囲であってもよい。クッション材また、単位面積当たりの重さ(目付)が10g/m2~500g/m2であってもよい。さらに、50g/m2~400g/m2であってもよい。
【0056】
クッション材10の大きさは、生体電極3の大きさに合わせて適宜調整することができる。クッション材10の縦長さおよび横長さは、例えば、それぞれ生体電極3の接触部3aの縦長さおよび横長さの0.5倍~1.0倍であるとよい。すなわち、クッション材10の縦長さおよび横長さは、衣服生地21に設けられた開口部21aの縦長さおよび横長さの0.5倍~1.0倍であるとよい。
【0057】
<受信装置>
受信装置6は、衣服生地21の表面側に配置され、コネクタ5を介して生体情報を受信することができる。受信装置6は、例えば、無線等によって生体情報を外部機器等に送信する小型の携帯端末装置であってもよい。受信装置6は、取り外し可能にコネクタ5に接続される。これにより、衣服1の洗濯時に取り外すことができる。
【0058】
<衣服生地>
衣服生地21には、
図1および
図2に示すように、2つの開口部21aが設けられている。開口部21aの、身体の中心線に平行な長さは、10mm以上かつ100mm以下であってもよい。また、身体の中心線に垂直な長さは、30mm以上かつ150mm以下であってもよい。衣服生地21にこのような大きさの開口部21aを設けることにより、生体電極3の接触部3aが身体に接するために要する面積を確保することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、開口部21aが矩形状に形成されているが、開口部21aの形状はこれに限らず、多角形、円形、楕円形等の任意の形状に形成することができる。
【0060】
生体情報取得用衣服1を構成する衣服生地21は、編物であってもよく、または、織物であってもよい。生体電極3を身体に密着させやすいという観点から、衣服生地21は、伸縮性生地であってもよい。例えば、衣服生地21は、横方向および/または縦方向の伸び率が、50%以上400%以下であってもよい。さらに、100%以上300%以下であってもよい。
【0061】
本明細書において、伸び率は、JIS L1096 8.16.1(B法)に基づいて、15Nの荷重下で測定したものである。このような伸縮性生地は、弾性繊維(糸)と非弾性繊維(糸)とで構成することができる。弾性繊維としては、例えば、ポリウレタン弾性繊維、ポリエーテル・エステル弾性繊維、ポリアミド弾性繊維、またはポリオレフィン弾性繊維等が挙げられ、伸縮性の観点から、ポリウレタン弾性繊維を用いることが好ましい。非弾性繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、またはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系合成繊維、またはナイロン等のポリアミド系合成繊維等を使用することができる。
【0062】
図5に示すように、衣服生地21の表面側に、生体電極3および生体情報伝送部4を含む平板状の電極13と、コネクタ5と、クッション材10と、押さえ部材23と、被覆シート20と、が重ねて配置されている。これらを身体側に凸状の金型を用いてプレス加工することにより、生体情報取得用衣服1を製造することができる。
【0063】
または、単体でプレス加工することにより、予め立体形状を有する生体電極3を用いることもできる。
【0064】
[効果]
本実施の形態の生体情報取得用衣服1によると、衣服生地21の裏面側において開口部21aから生体電極3が露出するため、着用者の身体に接触するのは衣服生地21および生体電極3の接触部3aである。このため、吸水性の低い被覆シート20等は身体に接触せず、汗だまりの発生または不快感を低減することができる。
【0065】
また、生体電極3の接触部3aの少なくとも一部が、衣服生地21の裏面側から身体側に突出している。突出していることにより、生体電極3が身体側に付勢されて、生体電極3と身体とが離間しにくくなる。さらに、生体電極3の身体側と反対の面にクッション材10を配置することで、生体電極3と身体との密着性を向上させることができる。
【0066】
また、生体電極3は、衣服生地21の表面側において被覆シート20に覆われていてもよい。生体電極3を被覆シートで被うことにより、ノイズを低減することができる。また、被覆シート20が圧着シートであると、生体情報取得用衣服1の製造が容易になる。さらに、被覆シート20が絶縁性を有する場合、さらにノイズを低減する効果が期待できる。
【0067】
また、衣服1が、衣服生地21の表面側に配置され、生体情報を受信可能な受信装置6を接続可能なコネクタ5と、生体電極3と、を導通する生体情報伝送部4を備えることにより、生体情報を例えば外部の機器に送信することができる。
【0068】
また、コネクタ5は衣服生地21の表面側において、少なくとも一部が生体情報伝送部4に覆われていることにより、衣服生地21からコネクタ5が剥離するのを防止することができる。さらに、生体情報伝送部4と被覆シート20とより挟まれた押さえ部材23を有することにより、衣服生地21とコネクタ5との接着をより強固にすることができる。
【0069】
なお、本発明においては、前述した様々な実施の形態および/または実施例のうちの任意の実施の形態および/または実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態および/または実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る生体情報取得用衣服によれば、衣服生地の身体側において、開口部から露出した生体電極が身体と接触するため、吸水性の低い被覆シート等が身体に接触することによる汗だまりの発生や不快感を防止することができる。このため、本発明に係る生体情報取得用衣服は、発汗しやすいスポーツまたは作業等の際に着用する生体情報取得用衣服として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 生体情報取得用衣服
3 生体電極
3a 接触部
4 生体情報伝送部
5 コネクタ
6 受信装置
10 クッション材
20 被覆シート
21 衣服生地
21a 開口部