IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越ポリマー株式会社の特許一覧

特許7429566放熱構造体およびそれを備えるバッテリー
<>
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図1
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図2
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図3
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図4
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図5
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図6
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図7
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図8
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図9
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図10
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図11
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図12
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図13
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図14
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図15
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図16
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図17
  • 特許-放熱構造体およびそれを備えるバッテリー 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】放熱構造体およびそれを備えるバッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/659 20140101AFI20240201BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240201BHJP
   C09K 5/06 20060101ALI20240201BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/62 20140101ALI20240201BHJP
【FI】
H01M10/659
H01L23/36 D
C09K5/06 J
H01M10/613
H01M10/653
H01M10/6554
H01M10/6556
H01M10/6567
H01M10/625
H01M10/62
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020038400
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140961
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樫本 明
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073010(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/659
H01L 23/36
C09K 5/06
H01M 10/613
H01M 10/653
H01M 10/6554
H01M 10/6556
H01M 10/6567
H01M 10/625
H01M 10/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源と冷却部材との間にあって前記熱源から前記冷却部材に熱を伝導させて前記熱源からの放熱を可能とする放熱構造体であって、
ゴム状弾性体から構成されるクッション部材に、相転移によって蓄熱を行う蓄熱材をマイクロカプセル内に封入してなる蓄熱カプセルを含有し、
前記クッション部材を備える複数の放熱部材が連結して構成され、
前記クッション部材は、その長さ方向に中空部を有する筒形状の長尺の部材である放熱構造体。
【請求項2】
前記放熱部材は、金属、炭素若しくはセラミックスの少なくとも1つを含む熱伝導シートをさらに備え、
前記クッション部材は、前記熱伝導シートに比べて前記熱源の表面形状に合わせて変形容易であり、
前記熱伝導シートは、前記熱源からの熱を伝えるためのシートであって、前記クッション部材の筒外周に備えられる請求項に記載の放熱構造体。
【請求項3】
前記熱伝導シートは、前記蓄熱カプセルを含有している請求項に記載の放熱構造体。
【請求項4】
前記熱伝導シートは、スパイラル状に巻回しながら進行する形状で前記クッション部材の筒外周に備えられる請求項またはに記載の放熱構造体。
【請求項5】
前記熱伝導シートは、前記クッション部材の長さ方向に沿う第1隙間であって前記熱伝導シートの厚さ分の前記第1隙間を有する状態で前記クッション部材の筒外周を覆うよう備えられ、
前記第1隙間は、複数の前記放熱部材を連結する方向以外の方向に形成される請求項またはに記載の放熱構造体。
【請求項6】
前記クッション部材は、前記熱伝導シートの前記第1隙間の位置に、前記中空部につながる第2隙間を有する請求項に記載の放熱構造体。
【請求項7】
複数の前記放熱部材は、その長さ方向と直交する方向にて糸で連結されている請求項2からのいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項8】
複数の前記放熱部材は、枠体の開口部を橋渡しする状態で、前記枠体に固定されている請求項2からのいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項9】
前記枠体は、その厚さが、前記熱源からの押圧により変形した前記放熱部材の厚さより薄くなるよう形成される請求項に記載の放熱構造体。
【請求項10】
前記熱伝導シートの表面に、当該表面に接触する前記熱源から当該表面への熱伝導性を高めるための熱伝導性オイルを有する請求項からのいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項11】
前記熱伝導性オイルは、シリコーンオイルと、前記シリコーンオイルより熱伝導性が高く、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーとを含む請求項10に記載の放熱構造体。
【請求項12】
冷却部材を流す構造を持つ筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、前記バッテリーセルと前記筐体との間に、請求項1から11のいずれか1項に記載の放熱構造体を備えるバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造体およびそれを備えるバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
【0003】
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは冷却ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム(AlN)、立方晶窒化ホウ素(cBN)等から構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、冷却ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車が普及してきている。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置等が必要となる。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が重要である。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
【0005】
バッテリーの速やかな放熱を実現するには、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属製の筐体に水冷パイプを配置し、当該筐体にバッテリーセルを多数配置し、バッテリーセルと筐体の底面との間に密着性のゴムシートを挟んだ構造が採用されている。このような構造のバッテリーでは、バッテリーセルは、ゴムシートを通じて筐体に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-243999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述のような従来のバッテリーにおいて、ゴムシートは、アルミニウムやグラファイトと比べて熱伝導性が低いため、バッテリーセルから筐体に効率よく熱を移動させることが難しい。また、ゴムシートに代えてグラファイト等のスペーサを挟む方法も考えられるが、複数のバッテリーセルの下面が平らではなく段差を有することから、バッテリーセルとスペーサとの間に隙間が生じ、伝熱効率が低下する。かかる一例にもみられるように、バッテリーセルは種々の形態(段差等の凹凸あるいは非平滑な表面状態を含む)をとり得ることから、バッテリーセルの種々の形態に順応可能であって高い蓄熱効果によってバッテリーセルのピーク温度を下げることの要望が高まっている。また、バッテリーセルの容器の材質をより弾性変形しやすくすることが要望されており、バッテリーセルを除去したときに元の形状に近い形状に戻る放熱構造体が望まれている。これは、バッテリーセルのみならず、回路基板、電子部品あるいは電子機器本体のような他の熱源にも通じる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱源の種々の形態に順応可能であって、弾性変形性に富み、蓄熱効果を通じて熱源の放熱を高めることのできる放熱構造体、および当該放熱構造体を備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱構造体は、熱源と冷却部材との間にあって前記熱源から前記冷却部材に熱を伝導させて前記熱源からの放熱を可能とする放熱構造体であって、ゴム状弾性体から構成されるクッション部材に、相転移によって蓄熱を行う蓄熱材をマイクロカプセル内に封入してなる蓄熱カプセルを含有する。
(2)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記クッション部材を備える複数の放熱部材が連結して構成され、前記クッション部材は、その長さ方向に中空部を有する筒形状の長尺の部材である。
(3)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記放熱部材は、金属、炭素若しくはセラミックスの少なくとも1つを含む熱伝導シートをさらに備え、前記クッション部材は、前記熱伝導シートに比べて前記熱源の表面形状に合わせて変形容易であり、前記熱伝導シートは、前記熱源からの熱を伝えるためのシートであって、前記クッション部材の筒外周に備えられる。
(4)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記熱伝導シートは、前記蓄熱カプセルを含有している。
(5)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記熱伝導シートは、スパイラル状に巻回しながら進行する形状で前記クッション部材の筒外周に備えられる。
(6)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記熱伝導シートは、前記クッション部材の長さ方向に沿う第1隙間であって前記熱伝導シートの厚さ分の前記第1隙間を有する状態で前記クッション部材の筒外周を覆うよう備えられ、前記第1隙間は、複数の前記放熱部材を連結する方向以外の方向に形成される。
(7)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記クッション部材は、前記熱伝導シートの前記第1隙間の位置に、前記中空部につながる第2隙間を有する。
(8)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、複数の前記放熱部材は、その長さ方向と直交する方向にて糸で連結されている。
(9)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、複数の前記放熱部材は、枠体の開口部を橋渡しする状態で、前記枠体に固定されている。
(10)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記枠体は、その厚さが、前記熱源からの押圧により変形した前記放熱部材の厚さより薄くなるよう形成される。
(11)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記熱伝導シートの表面に、当該表面に接触する前記熱源から当該表面への熱伝導性を高めるための熱伝導性オイルを有する。
(12)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、前記熱伝導性オイルは、シリコーンオイルと、前記シリコーンオイルより熱伝導性が高く、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーとを含む。
(13)一実施形態に係るバッテリーは、冷却部材を流す構造を持つ筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、前記バッテリーセルと前記筐体との間に、上述のいずれか1項に記載の放熱構造体を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱源の種々の形態に順応可能であって、弾性変形性に富み、蓄熱効果を通じて熱源の放熱を高めることのできる放熱構造体、および当該放熱構造体を備えるバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る放熱構造体をバッテリーセルの直下に配置する状態の斜視図(1A)および当該(1A)におけるA-A線断面図(1B)をそれぞれ示す。
図2図2は、第1実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図を示す。
図3図3は、第1実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの変形例1の縦断面図を示す。
図4図4は、第2実施形態に係る放熱構造体の斜視図(4A)、当該放熱構造体を構成する放熱部材の縦断面図(4B)、および当該断面図中の領域Bの拡大図(4C)をそれぞれ示す。
図5図5は、第2実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(5A)およびバッテリーセルによって放熱構造体を圧縮した場合の放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(5B)をそれぞれ示す。
図6図6は、第3実施形態に係る放熱構造体の平面図(6A)、当該(6A)におけるC-C線断面図(6B)、および当該断面図中の領域Dの拡大図(6C)をそれぞれ示す。
図7図7は、第3実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(7A)および当該(7A)中のバッテリーセルによって放熱構造体を圧縮する前後の放熱構造体の形態変化の断面図(7B)をそれぞれ示す。
図8図8は、第3実施形態に係る放熱構造体の製造方法の一部を説明するための図を示す。
図9図9は、第4実施形態に係る放熱構造体の平面図を示す。
図10図10は、図9に示す放熱構造体を矢印E方向から見た側面図(10A)、当該図9に示す放熱構造体を矢印F方向から見た側面図(10B)、および当該側面図(10B)中の領域Gの拡大図(10C)をそれぞれ示す。
図11図11は、第5実施形態に係る放熱構造体の平面図を示す。
図12図12は、図11の放熱構造体の一部の斜視図(12A)および図11の領域Hの拡大図であって放熱構造体を圧縮する前後の形態の変化(12B)をそれぞれ示す。
図13図13は、第5実施形態に係る放熱構造体の変形例2を、図12(12B)と同様の視野にて示す。
図14図14は、第5実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図を示す。
図15図15は、図14の領域Iの拡大図を示す。
図16図16は、第5実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの変形例3を、図15と同様の視野にて示す。
図17図17は、第6実施形態に係る放熱構造体の平面図を示す。
図18図18は、第3実施形態および第4実施形態に係る放熱構造体の変形例4およびその製造方法を説明するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る放熱構造体をバッテリーセルの直下に配置する状態の斜視図(1A)および当該(1A)におけるA-A線断面図(1B)をそれぞれ示す。図2は、第1実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図を示す。
【0014】
(1)バッテリーの概略構成
バッテリー40は、図2に示すように、冷却部材45を流す構造を持つ筐体41内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセル50を備えた構造を有する。放熱構造体1は、好ましくは、バッテリーセル50の冷却部材45に近い側の端部(下端部)と冷却部材45に近い側の筐体41の一部(底部42)との間に備えられている。図2では、放熱構造体1は、11個のバッテリーセル50を載置しているが、放熱構造体1に載置するバッテリーセル50の個数は11個に限定されない。なお、本願では、「断面」あるいは「縦断面」とは、バッテリー40の筐体41の内部44における上方開口面から底部42へと垂直に切断する方向の断面を意味する。
【0015】
この実施形態において、バッテリー40は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル(単に、セルと称しても良い。)50を備える。バッテリー40は、一方に開口する有底型の筐体41を備える。筐体41は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル50は、筐体41の内部44に配置される。バッテリーセル50の上方には、電極51,52(図1参照)が突出して設けられている。複数のバッテリーセル50は、好ましくは、筐体41内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体41の底部42には、冷却部材45の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ43が備えられている。冷却部材は、冷却媒体あるいは冷却剤と称しても良い。バッテリーセル50は、底部42との間に、放熱構造体1を挟むようにして筐体41内に配置されている。このような構造のバッテリー40では、バッテリーセル50は、放熱構造体1を通じて筐体41に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。なお、冷却部材45は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却部材45は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。
【0016】
(2)放熱構造体の概略構成
第1実施形態に係る放熱構造体1は、バッテリーセル50と冷却部材45との間にあって、バッテリーセル50から冷却部材45に熱を伝導させてバッテリーセル50からの放熱を可能とする構造体である。放熱構造体1は、ゴム状弾性体から構成されるクッション部材11に、相転移によって蓄熱を行う蓄熱材をマイクロカプセル内に封入してなる蓄熱カプセル3を含有する構造体である(図1(1B)参照)。
【0017】
(3)クッション部材
クッション部材11の重要な機能は変形容易性と回復力である。変形容易性は、バッテリーセル50の形状に追従するために必要な特性であり、特にリチウムイオンバッテリーなどの半固形物、液体的性状も持つ内容物などを変形しやすいパッケージに収めてあるようなバッテリーセル50の場合には、設計寸法的にも不定形または寸法精度があげられない場合が多い。このため、クッション部材11の変形容易性や追従力を保持するための回復力の保持は重要である。
【0018】
クッション部材11は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。クッション部材11は、バッテリーセル50からの放熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されることが好ましい。この実施形態では、クッション部材11は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。クッション部材11は、その熱伝導性を高めるために、上述のようなゴム中に、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。クッション部材11は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「クッション部材」は、柔軟性に富み、熱源の表面に密着可能に弾性変形可能な部材を意味し、かかる意味では「ゴム状弾性体」と読み替えることもできる。クッション部材11は、樹脂やゴム等から形成されたスポンジあるいはソリッド(スポンジのような多孔質ではない構造のもの)で構成することも可能である。
【0019】
(4)蓄熱カプセル
蓄熱カプセル3は、蓄熱物質を含む芯物質の周囲に、被膜(カプセル)が形成されたものである。蓄熱カプセル3は、被膜からの蓄熱物質の漏出を防ぐために、芯物質にエラストマーを含有することが好ましい。なお、この実施形態においては、蓄熱物質、エラストマー、およびその他の添加剤等を併せて「芯物質」とも称する。また、蓄熱カプセル3は、好ましくは、直径50~200μmであり、より好ましくは、直径150μmである。この実施形態において、蓄熱カプセル3は、芯物質が70重量%、被膜が30重量%となるよう構成されることが好ましい。また、この実施形態において、蓄熱カプセル3は、芯物質が77体積%、被膜が23体積%となるよう構成されることが好ましい。蓄熱カプセル3のクッション部材11に対する質量含有率は、好ましくは30~70質量%、より好ましくは40~60質量%、さらにより好ましくは46~53質量%である。他の実施形態でも同様である。
【0020】
(4-1)蓄熱物質
この施形態において、蓄熱物質は、例えば、パラフィン化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル化合物、脂肪族エーテル類、脂肪族ケトン類、脂肪族アルコール等の潜熱蓄熱物質が好ましく、化学的および物理的に安定な化合物であり、且つ高い蓄熱容量を有する脂肪酸エステル化合物がより好ましい。脂肪酸エステル化合物としては、例えば、炭素数8~30の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ステアリン酸ビニル、セバシン酸ジメチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸プロピルが挙げられる。蓄熱物質の融点が外気温度よりも低い場合、常時、蓄熱物質は相転移した後の状態(液体の状態)となるため、バッテリーセル50からの熱を受けても蓄熱を行わない。一方、蓄熱物質の融点があまりに高い場合、バッテリーセル50の温度が融点温度付近に上昇するまで相転移による吸熱を行わない。これらの点から、蓄熱物質の融点および凝固点は、20~100℃の範囲にあることが好ましく、35℃~60℃の範囲にあることがより好ましい。
【0021】
(4-2)エラストマー
この実施形態において、エラストマーは、例えば、共役ジエンゴム(ただし、水添共役ジエン(共)重合体を除く)、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム、水添共役ジエン(共)重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等であることが好ましい。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。エラストマーは、ゴム弾性を有し、蓄熱物質を良好に包接するバインダー成分として働くため、被膜からの蓄熱物質の漏出を防ぐことができる。特に、熱可塑性エラストマーは、製造時において成型加工を繰り返し行うことが可能であるため好ましく、蓄熱物質のブリード(染出し)防止および長期耐久性の観点から、水添共役ジエン(共)重合体がより好ましい。
【0022】
(4-3)被膜
この実施形態において、被膜は、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(AS樹脂)等、バッテリーセル50からの放熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い硬質樹脂から構成されることが好ましい。なお、これらのポリマーは、蓄熱用途に求められる効果を維持しうる範囲で、機能付与の目的で他のモノマーが含まれていても良いし、これらのポリマーが架橋されていても良い。
【0023】
(4-4)その他の添加剤
蓄熱カプセル3は、その他の添加剤として、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを含有していても良い。フィラーの含有量は、加工時の充填性を維持するという観点から、芯物質がエラストマーの融点以上において流動性を維持できる含有量であることが好ましい。具体的には、芯物質100質量%に対して、0.01~50質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましい。なお、このような添加剤は、放熱構造体1あるいはバッテリー40にとって必須の構成ではなく、好適に備えることのできる追加的な構成である。これは、第2実施形態以降でも同様である。
【0024】
このように、放熱構造体1は、バッテリーセル50と冷却部材45との間に配置され、蓄熱カプセル3を含有するクッション部材11から構成されるため、バッテリーセル50からの熱を蓄熱カプセル3に蓄えることができる。このため、放熱構造体1は、バッテリーセル50を好適に冷却しながら、外部に対する放熱を抑制あるいは遅延させることができるため、バッテリーセル50、ひいてはバッテリー40の急激な温度上昇を抑制することができる。また、放熱構造体1は、クッション部材11を備えるため、バッテリーセル50で圧縮された状態においてはバッテリーセル50の表面に追従して上下左右方向に潰れ、且つ、バッテリーセル50を除いた状態においてはクッション部材11の弾性力により元の形状に戻ることができる。よって、放熱構造体1は、バッテリーセル50の種々の形態に順応可能であって、弾性変形性に富み、且つ、蓄熱効果を通じてバッテリーセル50の放熱を高めることができる。
【0025】
(第1実施形態の変形例1)
図3は、第1実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの変形例1の縦断面図を示す。
【0026】
変形例1に係るバッテリー40aは、図3に示すように、放熱構造体1を、バッテリーセル50と底部42との間に加え、隣り合うバッテリーセル50同士の間、および、バッテリーセル50と筐体41の側面との間に挟むようにして配置されている。なお、放熱構造体1の配置以外の構成については、第1実施形態と共通するので、説明を省略する。このような構造のバッテリー40aにおいても、第1実施形態に係るバッテリー40と同様に、バッテリーセル50は、放熱構造体1を通じて筐体41に伝熱し、水冷によって効率的に除熱される。特に、バッテリー40aは、バッテリーセル50を囲むように、バッテリーセル50の側面および底面に放熱構造体1が配置されるため、より高い放熱効率を実現することができる。なお、変形例1において、バッテリー40aは、図3に示すように、隣り合うバッテリーセル50同士の間、および、バッテリーセル50と筐体41の側面との間の全ての箇所に放熱構造体1が配置されているが、本発明はこれに限定されない。バッテリー40aは、隣り合うバッテリーセル50同士の間、および、バッテリーセル50と筐体41の側面のうち少なくとも1の箇所に、放熱構造体1が配置されていれば良い。
【0027】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0028】
図4は、第2実施形態に係る放熱構造体の斜視図(4A)、当該放熱構造体を構成する放熱部材の縦断面図(4B)、および当該断面図中の領域Bの拡大図(4C)をそれぞれ示す。図5は、第2実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(5A)およびバッテリーセルによって放熱構造体を圧縮した場合の放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(5B)をそれぞれ示す。
【0029】
第2実施形態に係る放熱構造体1aは、第1実施形態に係る放熱構造体1と異なり、複数の放熱部材5が連結されて構成されている。より具体的には、放熱構造体1aは、好ましくは、バッテリーセル50と冷却部材45との間に配置される熱伝導シート4の上に、クッション部材11を備える複数の放熱部材5が配置されることにより、複数の放熱部材5が熱伝導シート4により連結されて構成されている(図4(4A)、図5参照)。なお、第2実施形態に係るバッテリー40bにおいて、放熱構造体1a以外の構成は、第1実施形態と共通するので、詳細な説明を省略する。
【0030】
(熱伝導シート)
熱伝導シート4は、好ましくは炭素を含むシートであり、さらに好ましくは炭素フィラーと樹脂とを含むシートである。樹脂を合成繊維とすることもでき、その場合には、好適に、アラミド繊維を用いることもできる。本願でいう「炭素」は、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、膨張黒鉛、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも含むように広義に解釈される。熱伝導シート4は、この実施形態では、樹脂に、グラファイト繊維やカーボン粒子を配合分散した材料を硬化させた薄いシートとすることができる。熱伝導シート4は、メッシュ状に編んだカーボンファイバーであっても良く、さらには混紡してあっても混編みしてあっても良い。なお、グラファイト繊維、カーボン粒子あるいはカーボンファイバーといった各種フィラーも、すべて、炭素フィラーの概念に含まれる。
【0031】
熱伝導シート4に樹脂を含む場合には、当該樹脂が熱伝導シート4の全質量に対して50質量%を超えていても、あるいは50質量%以下であっても良い。すなわち、熱伝導シート4は、熱伝導に大きな支障が無い限り、樹脂を主材とするか否かを問わない。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、熱源の一例であるバッテリーセル50からの熱を伝導する際に溶融しない程度の高融点を備える樹脂が好ましく、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)等を好適に挙げることができる。樹脂は、熱伝導シート4の成形前の状態において、炭素フィラーの隙間に、例えば粒子状あるいは繊維状に分散している。熱伝導シート4は、炭素フィラー、樹脂の他、熱伝導をより高めるためのフィラーとして、AlNあるいはダイヤモンドを分散していても良い。また、樹脂に代えて、樹脂よりも柔軟なエラストマーを用いても良い。熱伝導シート4は、また、上述のような炭素に代えて若しくは炭素と共に、金属および/またはセラミックスを含むシートとすることができる。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金などの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。また、セラミックスとしては、Al、AlN、cBN、hBNなどの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。
【0032】
熱伝導シート4は、導電性に優れるか否かは問わない。熱伝導シート4の熱伝導率は、好ましくは10W/mK以上である。この実施形態では、熱伝導シート4は、好ましくは、グラファイト、アルミニウム、アルミニウム合金、銅あるいはステンレススチールの帯状の板であり、熱伝導性と導電性に優れる材料から成る。熱伝導シート4は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.02~3mmが好ましく、0.03~0.5mmがより好ましい。ただし、熱伝導シート4の熱伝導率は、その厚さが増加するほど低下するため、シートの強度、可撓性および熱伝導性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0033】
(放熱部材)
放熱部材5は、クッション部材11aを備える部材である。クッション部材11aは、その長さ方向に中空部12を有する筒形状の長尺の部材である(図4参照)。放熱部材5は、クッション部材11aに蓄熱カプセル3を含有する(図4(4C)参照)。クッション部材11aは、複数のバッテリーセル50の下端部が平坦でない場合でも、熱伝導シート4と当該下端部との接触を良好にする。さらに、中空部12は、クッション部材11aの変形を容易にし、加えて放熱構造体1aの軽量化に寄与し、また、熱伝導シート4とバッテリーセル50の下端部との接触を高める機能を有する。クッション部材11aは、バッテリーセル50と底部42との間にあってクッション性を発揮させる機能の他に、熱伝導シート4に加わる荷重によって熱伝導シート4が破損等しないようにする保護部材としての機能も有する。この実施形態では、クッション部材11aは、熱伝導シート4に比べて低熱伝導性の部材である。なお、この実施形態では、中空部12は、断面円形状に形成されているが、中空部12の断面形状は円に限定されず、例えば、多角形、楕円形、半円形、頂点が丸みを帯びた略多角形等であっても良い。また、中空部12は、例えば、断面円形状が上下または左右に2つに分割された2の断面半円形状の中空部等、複数の中空部から構成されていても良い。
【0034】
放熱構造体1aは、図4(4A)に示すように、熱伝導シート4上に、複数の放熱部材5が、その長さ方向に直交する方向に並んで配置されている。すなわち、放熱構造体1aは、熱伝導シート4上に、バッテリーセル50の長手方向(図5の奥行方向)に平行に、複数の放熱部材5が配置されている。なお、ここでは、熱伝導シート4上に19個の放熱部材5が配置されているが(図5参照)、熱伝導シート4に配置される放熱部材5の個数は19個に限定されない。
【0035】
放熱構造体1aを構成する複数の放熱部材5は、バッテリーセル50を載置していない状態では略円筒形状を有しているが、バッテリーセル50を載置するとその重さで圧縮され扁平の形態になる。図5に示すように、バッテリー40bに備えられる放熱構造体1aは、バッテリーセル50の下端部と接触し、当該下端部と筐体41の底部42との間で、上下方向に圧縮された状態となる。この状態において、図5(5B)に示すように、放熱部材5が変形するため、バッテリーセル50の下端部と熱伝導シート4との接触が良好になる。バッテリー40bの充電若しくは放電時に発する熱は、バッテリーセル50の下端部から放熱部材5、熱伝導シート4、筐体41の底部42、冷却部材45へと伝わる。このようにして、バッテリーセル50の効果的な除熱が実現する。なお、放熱構造体1aは、放熱部材5を冷却部材45側(底部42側と称しても良い)に、熱伝導シート4をバッテリーセル50側にそれぞれ向けて筐体41内に配置されても良い。
【0036】
このように構成された放熱構造体1aは、クッション部材11aに起因して、バッテリーセル50の種々の形態に順応可能であって、高い弾性変形性を有することができる。また、放熱構造体1aは、クッション部材11aに含有される蓄熱カプセル3に、バッテリーセル50からの熱を蓄えることができるため、バッテリーセル50を好適に冷却しながら、外部に対する放熱を抑制あるいは遅延させることができる。よって、放熱構造体1aは、バッテリー40bの急激な温度上昇を抑制することができ、蓄熱効果を通じてバッテリーセル50の放熱を高めることができる。また、放熱構造体1aは、中空部12に起因してより軽量となる。
【0037】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。先の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0038】
図6は、第3実施形態に係る放熱構造体の平面図(6A)、当該(6A)におけるC-C線断面図(6B)、および当該断面図中の領域Dの拡大図(6C)をそれぞれ示す。図7は、第3実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(7A)および当該(7A)中のバッテリーセルによって放熱構造体を圧縮する前後の放熱構造体の形態変化の断面図(7B)をそれぞれ示す。
【0039】
第3実施形態に係る放熱構造体1bは、第2実施形態に係る放熱構造体1aと異なり、複数の放熱部材5aが、その長さ方向と直交する方向にて糸15で連結されている。また、放熱部材5aは、第2実施形態に係る放熱部材5と異なり、クッション部材11aに加え、熱伝導シート10をさらに備える。なお、第3実施形態に係るバッテリー40cにおいて、放熱構造体1b以外の構成は、先述の実施形態と共通するので、詳細な説明を省略する。
【0040】
放熱部材5aは、クッション部材11aの筒外周に熱伝導シート10を備える部材である。熱伝導シート10は、スパイラル状に巻回しながら進行する形状で、クッション部材11aに備えられる帯状のシートである。放熱部材5aは、第2実施形態と同様に、クッション部材11aに蓄熱カプセル3を含有する。また、熱伝導シート10の表面には、好ましくは、当該表面に接触するバッテリーセル50から当該表面への熱伝導性を高めるための熱伝導性オイルを有する。なお、第3実施形態において、クッション部材11aは、第2実施形態のクッション部材11aと同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。また、第3実施形態において、熱伝導シート10は、その形状以外の構成について、第2実施形態の熱伝導シート4と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0041】
(糸)
糸15は、バッテリーセル50からの放熱による温度上昇に耐え得る糸であることが好ましい。より具体的には、糸15は、120℃程度の高温に耐え得る糸であって、天然繊維、合成繊維、カーボン繊維、金属繊維等の繊維からなる撚糸で構成されることが好ましい。糸15は、放熱部材5a同士を自由に動かないように規制する連結部材の一例である。糸15は、放熱部材5aの本数に対応する数の輪を備えている。放熱部材5aは、当該輪の中に挿入されている。複数の輪の連結部分には、輪の拡がりを規制する規制部17が設けられている(図6(6C)参照)。規制部17は、糸15の結び目、あるいは糸15とは別体の樹脂、金属、セラミックスあるいは木材等から成る部材でも良い。放熱構造体1bは、放熱部材5aがバッテリーセル50により圧縮され扁平した形態となっても、放熱部材5aの変形に追従して糸15が撓むため、バッテリーセル50の表面に追従・密着することができる。また、放熱構造体1bは、複数の放熱部材5aの間に規制部17を備えることにより、バッテリーセル50の表面への追従・密着性をより高めることができる。なお、糸15は、必ずしも、規制部17を有していなくても良い。
【0042】
(熱伝導性オイル)
熱伝導性オイルは、好ましくは、シリコーンオイルと、シリコーンオイルより熱伝導性が高く、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーとを含む。熱伝導シート10は、微視的に、隙間(孔あるいは凹部)を有する。通常、当該隙間には空気が存在し、熱伝導性に悪影響を及ぼす可能性が有る。熱伝導性オイルは、その隙間を埋めて、空気に代わって存在することになり、熱伝導シート10の熱伝導性を向上させる機能を有する。
【0043】
熱伝導性オイルは、熱伝導シート10の表面、少なくともバッテリーセル50と熱伝導シート10とが接触する面に備えられている。本願において、熱伝導性オイルの「オイル」は、非水溶性の常温(20~25℃の範囲の任意の温度)で液状若しくは半固形状の可燃物質をいう。「オイル」という文言に代え、「グリース」あるいは「ワックス」を用いることもできる。熱伝導性オイルは、バッテリーセル50から熱伝導シート10に熱を伝える際に熱伝導の障害にならない性質のオイルである。熱伝導性オイルには、炭化水素系のオイル、シリコーンオイルを用いることができる。熱伝導性オイルは、好ましくは、シリコーンオイルと、シリコーンオイルより熱伝導性が高く、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーとを含む。
【0044】
シリコーンオイルは、好ましくは、シロキサン結合が2000以下の直鎖構造の分子から成る。シリコーンオイルは、ストレートシリコーンオイルと、変性シリコーンオイルとに大別される。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルを例示できる。変性シリコーンオイルとしては、反応性シリコーンオイル、非反応性シリコーンオイルを例示できる。反応性シリコーンオイルは、例えば、アミノ変性タイプ、エポキシ変性タイプ、カルボキシ変性タイプ、カルビノール変性タイプ、メタクリル変性タイプ、メルカプト変性タイプ、フェノール変性タイプ等の各種シリコーンオイルを含む。非反応性シリコーンオイルは、ポリエーテル変性タイプ、メチルスチリル変性タイプ、アルキル変性タイプ、高級脂肪酸エステル変性タイプ、親水性特殊変性タイプ、高級脂肪酸含有タイプ、フッ素変性タイプ等の各種シリコーンオイルを含む。シリコーンオイルは、耐熱性、耐寒性、粘度安定性、熱伝導性に優れたオイルであるため、熱伝導シート10の表面に塗布して、バッテリーセル50と熱伝導シート10との間に介在させる熱伝導性オイルとして特に好適である。
【0045】
熱伝導性オイルは、好ましくは、油分以外に、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーを含む。金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、ベリリウム、タングステンなどを例示できる。セラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、キュービック窒化ホウ素、ヘキサゴナル窒化ホウ素などを例示できる。炭素としては、ダイヤモンド、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブなどを例示できる。
【0046】
熱伝導性オイルは、バッテリーセル50と熱伝導シート10との間に介在する他、熱伝導シート10と筐体41との間に介在する方が好ましい。熱伝導性オイルは、熱伝導シート10の全面に塗布されていても、熱伝導シート10の一部分に塗布されていても良い。熱伝導性オイルを熱伝導シート10に存在させる方法は、特に制約はなく、スプレーを用いた噴霧、刷毛等を用いた塗布、熱伝導性オイル中への熱伝導シート10の浸漬など、如何なる方法によるものでも良い。なお、熱伝導性オイルは、放熱構造体1bあるいはバッテリー40cにとって必須の構成ではなく、好適に備えることのできる追加的な構成である。これは、第4実施形態以降でも同様である。
【0047】
放熱部材5a間の距離L1は、放熱部材5aがバッテリーセル50からの押圧を受けて潰れる際に、狭くなる。放熱部材5aがほとんど潰れない場合には、熱伝導シート10とバッテリーセル50および底部42との密着性が低くなる可能性がある。かかるリスクを低減するのに適切な放熱部材5aの上下方向、すなわちバッテリーセル50の底から底部42の面に向かう垂線方向に圧縮されたときの厚みは、少なくとも、放熱部材5aの管径(=円換算直径:D)の80%である。ここで、「円換算直径」とは、放熱部材5aをその長さ方向と垂直に切断したときの管断面の面積と同じ面積の真円の直径を意味する。放熱部材5aが真円の断面をもった円筒の場合には、その直径は円換算直径と同一である。放熱部材5aは、上記の圧縮を受けると、バッテリーセル50および底部42と接する面を平面とし、放熱部材5a間の距離L1の方向を略円弧断面とするように変形するとみなすことができる(図6(6C)を参照)。放熱部材5aが円換算直径Dの80%に相当する0.8Dの厚さに潰れた場合、放熱部材5aがどの程度、距離L1の方向に拡がるかを計算する。図6(6C)に示すように、潰れた放熱部材5aにおいて、その左右方向に存在する半円弧の長さの総長は、0.8πDである。また、底部42に接する平面の長さは、放熱部材5aの管円周から、上記の半円弧の長さの総長を差し引いた長さの半分であるから、(πD-0.8πD)/2=0.314Dである。平面の左右方向に拡張した円弧部分の長さは、0.4D×2=0.8Dである。したがって、潰れた放熱部材5aが元の放熱部材5aから距離L1の方向に拡がった距離は、0.314D+0.8D-D=0.114Dとなる。距離L1を十分に大きくすれば、放熱部材5aは隣の放熱部材5aと接触しない。逆に、距離L1が小さすぎると、放熱部材5aが上下方向に圧縮されても、隣の放熱部材5aに接触して、それ以上に潰れなくなる可能性がある。距離L1を放熱部材5aの円換算直径Dの11.4%以上にすれば、放熱部材5aが円換算直径Dの80%の厚さに圧縮されて変形する際に、放熱部材5a同士が接触して、当該変形の障害となることを防止できる。なお、この実施形態では、距離L1を0.6Dとしている。
【0048】
図8は、第3実施形態に係る放熱構造体の製造方法の一部を説明するための図を示す。図8では、見やすさを優先して、熱伝導シート10同士に隙間を描いているが、隙間は無くても良い。
【0049】
まず、蓄熱カプセル3が含有されたクッション部材11aを成形する。次に、帯状の熱伝導シート10をクッション部材11aの外側面にスパイラル状に巻く。このとき、クッション部材11aが完全には硬化していない未硬化状態で、熱伝導シート10をクッション部材11aの外側面に巻き、その後、加温によりクッション部材11aを完全に硬化させる。そして、帯状の熱伝導シート10のクッション部材11aの両端からはみ出した部分があればカットする。最後に、熱伝導シート10の表面に、熱伝導性オイルを塗布する。放熱部材5aをこのように製造することにより、熱伝導シート10の微視的な隙間に未硬化状態のクッション部材11aが入り込んだ状態で硬化されるため、接着剤等を使用しなくともクッション部材11aと熱伝導シート10とを強固に固定することができる。
【0050】
こうして出来上がった放熱部材5aは、クッション部材11aの外側面よりも熱伝導シート10の厚さ分だけ突出した形態を有する。ただし、熱伝導シート10とクッション部材11aとは、面一であっても良い。また、熱伝導性オイルは、熱伝導シート10のうち少なくともバッテリーセル50と接触する面に塗布されれば良い。熱伝導シート20のクッション部材11aの両端からはみ出した部分をカットする工程および熱伝導性オイルを塗布する工程は、上述のタイミングで行うことに限定されず、少なくともクッション部材11aに熱伝導シート10を巻いた後であれば、いつ行ってもよい。また、熱伝導シート10は、クッション部材11aを完全に硬化させた状態で、その外側面に巻いてもよい。この場合、クッション部材11aの外側面が粘着性を有していなければ、接着剤等を使用して熱伝導シート10をクッション部材11aに固定してもよい。
【0051】
放熱構造体1bは、上述の製造方法により製造された複数の放熱部材5aを、放熱部材5aの長さ方向と直交する方向に並べた状態で、糸15で連結することにより製造される。より具体的には、放熱構造体1bは、複数の放熱部材5aを並べた状態で、糸15を用いて手縫いで縫い付けることにより連結される。このとき、複数の放熱部材5aは、放熱部材5a間の距離L1を0.114D以上として並べられることが好ましい(図6(6C)参照)。また、複数の放熱部材5aの間に、規制部17が形成されるように縫い付けることが好ましい。
【0052】
このように、放熱構造体1bは、複数の放熱部材5aが簾状に連結されるため、バッテリーセル50で圧縮された状態においてはバッテリーセル50の表面に追従して放熱部材5aが上下左右方向に潰れ、且つ、バッテリーセル50を除いた状態においては放熱部材5aの弾性力により元の形状に戻ることができる(図7参照)。また、放熱構造体1bは、複数の放熱部材5aが簾状に連結されることにより位置決めされるため、各バッテリーセル50に放熱部材5aを確実に接触するようにできる。このため、放熱構造体1bは、例えば、自動車の振動等により放熱部材5aが偏在する事態を抑制でき、かつ多数のバッテリーセル50各々における放熱性の均一化を高めることができる。また、放熱構造体1bは、各放熱部材5aがクッション部材11aの外側面に熱伝導シート10をスパイラル状に巻いた構造を有しているため、クッション部材11aの変形を過度に拘束しない。
【0053】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。先の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
図9は、第4実施形態に係る放熱構造体の平面図を示す。図10は、図9に示す放熱構造体を矢印E方向から見た側面図(10A)、当該図9に示す放熱構造体を矢印F方向から見た側面図(10B)、および当該側面図(10B)中の領域Gの拡大図(10C)をそれぞれ示す。
【0055】
第4実施形態に係る放熱構造体1cは、複数の放熱部材5aと、放熱部材5a同士を連結する糸15と、複数の放熱部材5aを糸25にて固定する枠体30と、を備える。なお、第4実施形態に係る放熱構造体1cにおいて、放熱部材5aおよび糸15は、第3実施形態と同様のため、詳細な説明を省略する。なお、第4実施形態に係るバッテリー40dにおいて、放熱構造体1c以外の構成は、先述の実施形態と共通するので、図示および詳細な説明を省略する。
【0056】
(枠体)
枠体30は、好ましくは、矩形の薄いシートであって、中央に、好ましくは矩形の開口部31を有する。枠体30は、バッテリーセル50からの放熱により変形しない材料であれば、熱硬化性樹脂若しくは熱可塑性樹脂に代表される樹脂、金属、セラミックスあるいは木材で構成されていても良い。開口部31は、バッテリーセル50によって放熱部材5aを底部42に向けて押圧可能な領域である。開口部31は、バッテリーセル50を挿通可能なほどに十分な大きさを有しているのが好ましい。しかし、開口部31は、バッテリーセル50を挿通不可な大きさであっても良い。複数の放熱部材5aは、枠体30の開口部31を橋渡しする状態で、枠体30に固定されている。より具体的には、複数の放熱部材5aは、その長さ方向の両端部を枠体30の対向辺上に載せた状態で、放熱部材5aの中空部12に糸25を到達するように縫って固定されている。
【0057】
糸25は、その材料に特に制約はないが、バッテリーセル50からの放熱による温度上昇に耐え得る糸であることが好ましい。糸25は、好ましくは、ミシン等を用いて複数の放熱部材5aを上述の対向辺上に縫い付ける。糸25の縫い方は、特に限定されず、手縫い、本縫い、千鳥縫い、単環縫い、二重環縫い、縁かがり縫い、扁平縫い、安全縫い、オーバーロック等の如何なる縫い方でも良い。また、JIS L 0120の規定する表示記号によれば、好適な縫い方として、「101」、「209」、「301」、「304」、「401」、「406」、「407」、「410」、「501」、「502」、「503」、「504」、「505」、「509」、「512」、「514」、「602」および「605」の各種縫い目を構成する縫い方を例示できる。
【0058】
放熱構造体1cは、枠体30に複数の放熱部材5aを固定することにより、放熱構造体1cにおける複数の放熱部材5aの位置決めを可能とし、かつ複数の放熱部材5aを連結する役割を担う。高い伝熱効率を実現するためには、多数のバッテリーセル50各々の温度が均一となるように、多数のバッテリーセル50各々から均一に放熱させることが望ましい。そのためには、各バッテリーセル50に接触する放熱部材5aの数が均一となるように、複数の放熱部材5aを配置することが好ましい。放熱構造体1cは、枠体30により複数の放熱部材5aが位置決めされるため、各バッテリーセル50に放熱部材5aを確実に接触するようにできる。したがって、放熱構造体1cは、多数のバッテリーセル50各々における放熱性の均一化を高めることができ、高い伝熱効率を実現できる。なお、放熱部材5aの長さ方向の一端のみを枠体30の一辺に固定しても良い。
【0059】
枠体30は、好ましくは、その厚さTが、バッテリーセル50からの押圧により変形した放熱部材5aの厚さ(0.8D)より薄くなるよう形成される(図10(10C)参照)。このように放熱構造体1cを構成することにより、バッテリーセル50からの押圧により放熱部材5aが上下方向に圧縮されても、バッテリーセル50が枠体30に接触してそれ以上に潰れなくなる虞を抑制でき、放熱部材5aが円換算直径Dの80%の厚さに圧縮されて変形する際に、当該変形の障害となることを防止できる。なお、放熱部材5aの長さ方向両端は枠体30の上に載って固定されているので、当該両端は、筐体41の底部42に接触しない。しかし、放熱部材5aの上記両端の間の領域は、底部42に接するので、十分な放熱効果を得ることができる。また、放熱部材5aの底部42側の面は、枠体30の底部42側の面と同じ高さか、若しくは底部42側に若干突出させているのが好ましい。枠体30を底部12に接触させやすいからである。
【0060】
放熱構造体1cは、複数の放熱部材5aの長さ方向(図9のY方向)の両端部を枠体30に糸25で縫い付けて、固定されている。放熱構造体1cをバッテリーセル50と冷却部材45との間に挟むと、放熱部材5aの中位領域(糸25によって枠体30に固定されている両端部の中間に位置する領域)は、バッテリーセル50等の加重を受ける。この結果、当該中位領域は、上記両端部の固定側から開口部31に向かって沈み込み、当該固定側の反対側のシート面と同一若しくはそれ以上に突出する。したがって、放熱部材5aは、複数のバッテリーセル50の下端部が平坦でない場合であっても、バッテリーセル50と冷却部材45との両方に接触できる。なお、放熱構造体1cは、放熱部材5aの中位領域がバッテリーセル50からの押圧を受けて潰れるため、当該中位領域にバッテリーセル50を接触させるように、配置することが好ましい。放熱部材5aは枠体30により位置決めされているので、バッテリーセル50からの押圧を受けて潰れた際にも放熱部材5a間の距離L1のばらつきが小さくなり、多数のバッテリーセル50各々における放熱性の均一化を高めることができる。なお、複数の放熱部材5aは、放熱部材5a間の距離L1が等間隔となるよう配置されることに限定されない。放熱構造体1cは、複数のバッテリーセル50のうち温度の高いバッテリーセル50の位置に放熱部材5aを密集させるように、放熱部材5a間の距離L1を変化させて配置しても良い。すなわち、放熱構造体1cは、温度の高いバッテリーセル50に接触する放熱部材5aの数がその他のバッテリーセル50に接触する放熱部材5aの数より多くなるように、当該温度の高いバッテリーセル50に接触する放熱部材5a間の距離L1を小さくしても良い。このように構成することにより、バッテリー40dは、多数のバッテリーセル50各々における放熱性の均一化をさらに高めることができる。
【0061】
このように、放熱構造体1cは、複数の放熱部材5aが簾状に連結されるため、バッテリーセル50で圧縮された状態においてはバッテリーセル50の表面に追従して放熱部材5aが上下左右方向に潰れ、且つ、バッテリーセル50を除いた状態においては放熱部材5aの弾性力により元の形状に戻ることができる。また、放熱構造体1cは、複数の放熱部材5aが簾状に連結され、かつ枠体30により位置決めされる。これにより、各バッテリーセル50に放熱部材5aを確実に接触するようにできる。このため、放熱構造体1cは、例えば、自動車の振動等により放熱部材5aが偏在する事態を抑制でき、かつ多数のバッテリーセル50各々における放熱性の均一化を高めることができる。また、放熱構造体1cは枠体30を備えるため、作業者は枠体30を持ってバッテリー40dに放熱構造体1cを取り付けることができ、作業性が向上する。
【0062】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。先の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0063】
図11は、第5実施形態に係る放熱構造体の平面図を示す。図12は、図11の放熱構造体の一部の斜視図(12A)および図11の領域Hの拡大図であって放熱構造体を圧縮する前後の形態の変化(12B)をそれぞれ示す。
【0064】
第5実施形態に係る放熱構造体1dは、複数の放熱部材5bが間をあけて連結されている。放熱部材5bは、クッション部材11aの筒外周に熱伝導シート10aを備える略円筒形状の部材である。ただし、放熱部材5bは、その長さ方向の端面形状を、楕円形状、三角以上の多角形状とする筒状部材であっても良い。放熱部材5bは、先述の実施形態と同様に、クッション部材11aに蓄熱カプセル3を含有する。なお、第5実施形態において、クッション部材11aは、先述の実施形態のクッション部材11aと同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0065】
熱伝導シート10aは、クッション部材11aの長さ方向に沿う第1隙間100であって熱伝導シート10aの厚さ分の第1隙間100を有する状態で、クッション部材11aの筒外周を覆っている(図12(12A)参照)。第1隙間100は、複数の放熱部材5bを連結する方向(図11では左右方向)以外の方向に形成されている。より好ましくは、第1隙間100は、熱伝導シート10aにおいて、放熱部材5b同士の連結方向と略直角方向(図11では、上下方向)に形成されている。第1隙間100は、放熱部材5bの外側面(筒外周)において放熱部材5bの長さ方向に沿って形成されている。第1隙間100は、「切れ目」と称しても良く、クッション部材11aの外側面を完全に被覆しない部分である。この実施形態では、第1隙間100は、クッション部材11aの外側面の一部を露出する長尺状の窓である。第1隙間100は、放熱部材5bの外から圧縮力が与えられた際に、熱伝導シート10aの変形を容易にして、割れるのを抑制する機能を有する。熱伝導シート10aの表面には、好ましくは、当該表面に接触するバッテリーセル50から当該表面への熱伝導性を高めるための熱伝導性オイルを有する。クッション部材11aは、熱伝導シート10aに比べてバッテリーセル50の表面形状に合わせて変形容易であって中空部12を有する。図11では、放熱構造体1dは、18本の放熱部材5bを備えているが、2本以上であれば放熱部材5bの数を問わない。また、熱伝導シート10aは、その形状以外の構成について、先述の実施形態の熱伝導シート10と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0066】
複数の放熱部材5bは、第3実施形態の放熱部材5aと同様に、放熱部材5bの長さ方向の1か所若しくは2か所以上を、放熱部材5bの長さ方向と直交する方向にて糸15で連結されている。糸15は、第3実施形態の糸15と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0067】
(第5実施形態の変形例2)
図13は、第5実施形態に係る放熱構造体の変形例2を、図12(12B)と同様の視野にて示す。
【0068】
変形例2に係る放熱構造体1eは、複数の放熱部材5cを連結して成る。放熱部材5cは、第1隙間100を備える筒状の熱伝導シート10aの内部にクッション部材11bを備える。クッション部材11bは、熱伝導シート10aの第1隙間100の位置に、中空部12につながる第2隙間110を有する。第2隙間110は、クッション部材11bの厚さ分を切れ込む開口部である。この結果、中空部12は、第2隙間110および第1隙間100を経て外界に通じている。このように、放熱構造体1eにおいて、クッション部材11bは、熱伝導シート10aと同様に、外側面の一部を開口した筒形状を有する。このため、クッション部材11bの変形容易性はより高まる。なお、第2隙間110は、第1隙間100と連通していない開口部でも良い。
【0069】
第5実施形態に係るバッテリーについて説明する。
【0070】
図14は、第5実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図を示す。図15は、図14の領域Iの拡大図を示す。なお、図15では、放熱構造体1d,1eのうち放熱構造体1dを例に挙げて示す。また、図15では、一部の放熱部材5bを拡大して示す。
【0071】
第5実施形態に係るバッテリー40eは、先述の実施形態と同様に、冷却部材45を流す構造を持つ筐体41内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセル50を備え、バッテリーセル50と筐体41との間に、放熱構造体1d,1eを備える。熱伝導シート10aにおける第1隙間100の両側がバッテリーセル50若しくは筐体41(具体的には、この実施形態では底部42)のいずれかに接触するように、放熱構造体1d,1eは、バッテリーセル50と筐体41との間に備えられている。
【0072】
放熱構造体1d,1eは、放熱部材5b,5cの第1隙間100をバッテリーセル50側に向けて、バッテリーセル50と底部42との間に挟持された状態で筐体41内に備えられる。このため、バッテリーセル50からの熱は、熱伝導シート10aの第1隙間100から両側の周に沿って底部42へと伝わる(図中のJ1およびJ2のルートを参照)。したがって、第1隙間100の片側部分だけをバッテリーセル50に接触させる位置に第1隙間100を形成している場合と比べて、熱の伝達ルートを増大させることができ、もって、バッテリーセル50からの放熱性をより高めることができる。
【0073】
(第5実施形態の変形例3)
図16は、第5実施形態に係る放熱構造体を備えるバッテリーの変形例3を、図15と同様の視野にて示す。なお、図16では、放熱構造体1d,1eのうち放熱構造体1dを例に挙げて示す。また、図16では、一部の放熱部材5bを拡大して示す。
【0074】
変形例3に係るバッテリー40fにおいて、放熱構造体1d,1eは、放熱部材5b,5cの第1隙間100が底部42側を向くように、配置されている。このような配置形式であっても、バッテリーセル50からの熱は、第1隙間100の両側の周を伝って底部42へと伝わる(図中のJ1およびJ2のルートを参照)。よって、第5実施形態に係るバッテリー40eと同様、バッテリーセル50からの放熱性をより高めることができる。
【0075】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。先の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0076】
図17は、第6実施形態に係る放熱構造体の平面図を示す。
【0077】
第6実施形態に係る放熱構造体1fは、複数の放熱部材5bと、放熱部材5b同士を連結する糸25と、複数の放熱部材5bを糸25にて固定する枠体30と、を備える。なお、第6実施形態に係る放熱構造体1fにおいて、放熱部材5bは、第5実施形態と同様のため、詳細な説明を省略する。また、枠体30および糸25は、第4実施形態と同様のため、詳細な説明を省略する。なお、第6実施形態に係るバッテリー40gにおいて、放熱構造体1f以外の構成は、先述の実施形態と共通するので、図示および詳細な説明を省略する。
【0078】
複数の放熱部材5bは、枠体30の開口部31を橋渡しする状態で、枠体30に固定されている。より具体的には、複数の放熱部材5bは、その長さ方向の両端部を枠体30の対向辺上に載せた状態で糸25により固定されている。また、複数の放熱部材5bは、その長さ方向の両端部に加え、放熱部材5の中位領域(糸25によって枠体30に固定されている両端部の中間に位置する領域)においても、放熱部材5bの中空部12に糸25を到達するように縫って連結させている。
【0079】
枠体30は、第4実施形態と同様に、好ましくは、その厚さTが、バッテリーセル50からの押圧により変形した放熱部材5bの厚さ(0.8D)より薄くなるよう形成される。このように放熱構造体1fを構成することにより、第4実施形態に係る放熱構造体1cと同様、バッテリーセル50からの押圧により放熱部材5bが上下方向に圧縮されても、バッテリーセル50が枠体30に接触してそれ以上に潰れなくなる虞を抑制でき、放熱部材5bが円換算直径Dの80%の厚さに圧縮されて変形する際に、当該変形の障害となることを防止できる。
【0080】
このように放熱構造体1fを構成することにより、第4実施形態に係る放熱構造体1cと同様、多数のバッテリーセル50各々における放熱性の均一化を高めることができ、高い伝熱効率を実現できる。また、放熱構造体1fは枠体30を備えるため、作業者は枠体30を持ってバッテリー40gに放熱構造体1fを取り付けることができ、作業性が向上する。なお、放熱部材5bの長さ方向の一端のみを枠体30の一辺に固定しても良い。
【0081】
(各実施形態の作用・効果)
以上説明したように、放熱構造体1,1a,1b,1c,1d,1e,1f(放熱構造体1,1a,1b,1c,1d,1e,1fを総称する場合には、「放熱構造体1等」とも称する)は、バッテリーセル50と冷却部材45との間にあってバッテリーセル50から冷却部材45に熱を伝導させてバッテリーセル50からの放熱を可能とする放熱構造体であって、ゴム状弾性体から構成されるクッション部材11,11a,11b(クッション部材を総称する場合には、「クッション部材11等」とも称する)に、相転移によって蓄熱を行う蓄熱材をマイクロカプセル内に封入してなる蓄熱カプセル3を含有する。
【0082】
放熱構造体1等をこのように構成することによって、バッテリーセル50からの熱を蓄熱カプセル3に蓄えることができる。よって、放熱構造体1等は、バッテリーセル50を好適に冷却しながら、外部に対する放熱を抑制あるいは遅延させることができるため、バッテリー40,40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g(バッテリーを総称する場合には、「バッテリー40等」とも称する)の急激な温度上昇を抑制することができる。また、放熱構造体1等は、クッション部材11等で構成されるため、バッテリーセル50で圧縮された状態においてはバッテリーセル50の表面に追従して上下左右方向に潰れ、且つ、バッテリーセル50を除いた状態においてはクッション部材11等の弾性力により元の形状に戻ることができる。よって、放熱構造体1等は、バッテリーセル50の種々の形態に順応可能であって、弾性変形性に富み、且つ、蓄熱効果を通じてバッテリーセル50の放熱を高めることができる。
【0083】
また、放熱構造体1a,1b,1c,1d,1e,1f(放熱構造体1a,1b,1c,1d,1e,1fを総称する場合には、「放熱構造体1a等」とも称する)は、クッション部材11a,11bを備える複数の放熱部材5,5a,5b,5cが連結して構成され、クッション部材11a,11bは、その長さ方向に中空部12を有する筒形状の長尺の部材である。このため、放熱構造体1a等は、クッション部材11a,11bに起因して、バッテリーセル50の種々の形態に順応可能であって、高い弾性変形性を有することができる。また、放熱構造体1a等は、クッション部材11a,11bに含有される蓄熱カプセル3に、バッテリーセル50からの熱を蓄えることができるため、バッテリーセル50を好適に冷却しながら、外部に対する放熱を抑制あるいは遅延させることができ、蓄熱効果を通じてバッテリーセル50の放熱を高めることができる。また、放熱構造体1a等は、中空部12に起因してより軽量となる。
【0084】
また、放熱構造体1b,1c,1d,1e,1fを構成する放熱部材5a,5b,5cは、金属、炭素若しくはセラミックスの少なくとも1つを含む熱伝導シート10,10aをさらに備える。クッション部材11a,11bは、熱伝導シート10,10aに比べてバッテリーセル50の表面形状に合わせて変形容易である。熱伝導シート10,10aは、バッテリーセル50からの熱を伝えるためのシートであって、クッション部材11a,11bの筒外周に備えられる。このため、放熱構造体1b,1c,1d,1e,1fは、熱伝導シート10,10aがクッション部材11a,11bの筒外周に備えられるため、バッテリーセル50の種々の形態により順応し易く、高い放熱効率を実現することができる。
【0085】
また、放熱構造体1b,1cを構成する熱伝導シート10は、スパイラル状に巻回しながら進行する形状でクッション部材11aの筒外周に備えられるため、クッション部材11aの変形を過度に拘束する事態を抑制できる。
【0086】
また、放熱構造体1d,1e,1fを構成する熱伝導シート10aは、クッション部材11a,11bの長さ方向に沿う第1隙間100であって熱伝導シート10aの厚さ分の第1隙間100を有する状態でクッション部材11a,11bの筒外周を覆うよう備えられる。また、第1隙間100は、複数の放熱部材5bを連結する方向以外の方向に形成される。このため、放熱構造体1d,1e,1fは、第1隙間100により、放熱部材5bの外から圧縮力が与えられた際に、熱伝導シート10aが容易に変形され、割れるのを抑制することができる。
【0087】
また、放熱構造体1eを構成するクッション部材11bは、熱伝導シート10aの第1隙間100の位置に、中空部12につながる第2隙間110を有するため、クッション部材11bの変形容易性はより高まり、放熱部材5cの外から圧縮力が与えられた際に、熱伝導シート10aが割れるのを抑制することができる。
【0088】
また、放熱構造体1b,1c,1d,1e,1fを構成する複数の放熱部材5a,5b,5cは、その長さ方向と直交する方向にて糸15,25で連結されているため、複数の放熱部材5a,5b,5cが簾状に連結されるため、例えば、自動車の振動等により放熱部材5a,5b,5cが偏在する事態を抑制でき、施工性が高くなる。
【0089】
また、放熱構造体1c,1fを構成する複数の放熱部材5a,5bは、枠体30の開口部31を橋渡しする状態で、枠体30に固定されているため、作業者は枠体30を持ってバッテリー40d,40gに放熱構造体1c,1fを取り付けることができ、作業性が向上する。
【0090】
また、放熱構造体1c,1fを構成する枠体30は、その厚さTが、バッテリーセル50からの押圧により変形した放熱部材5a,5bの厚さより薄くなるよう形成されるため、バッテリーセル50からの押圧により放熱部材5a,5bが上下方向に圧縮されても、バッテリーセル50が枠体30に接触してそれ以上に潰れなくなる虞を抑制できる。
【0091】
また、熱伝導シート10,10aの表面に、当該表面に接触するバッテリーセル50から当該表面への熱伝導性を高めるための熱伝導性オイルを有する。熱伝導シート10,10aは、微視的に、隙間(孔あるいは凹部)を有する。通常、当該隙間には空気が存在し、熱伝導性に悪影響を及ぼす可能性が有る。熱伝導性オイルは、その隙間を埋めて、空気に代わって存在することになり、熱伝導シート10,10aの熱伝導性を向上させる機能を有する。
【0092】
また、熱伝導性オイルは、シリコーンオイルと、シリコーンオイルより熱伝導性が高く、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性フィラーとを含む。シリコーンオイルは、耐熱性、耐寒性、粘度安定性、熱伝導性に優れたオイルであるため、熱伝導シート10,10aの表面に塗布して、バッテリーセル50と熱伝導シート10,10aとの間に介在させる熱伝導性オイルとして特に好適である。また、熱伝導性オイルは、熱伝導性フィラーを含むため、熱伝導シート10,10aの熱伝導性を高めることができる。
【0093】
バッテリー40等は、冷却部材45を流す構造を持つ筐体41内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセル50を備えたバッテリーであって、バッテリーセル50と筐体41との間に、上述の放熱構造体1等を備える。バッテリー40等をこのように構成することによって、バッテリーセル50からの熱を蓄熱カプセル3に蓄えることができるため、バッテリーセル50を好適に冷却しながら、外部に対する放熱を抑制あるいは遅延させることができ、バッテリー40等の急激な温度上昇を抑制することができる。また、バッテリー40等は、クッション部材11等に起因して、バッテリーセル50で圧縮された状態においてはバッテリーセル50の表面に追従して上下左右方向に潰れ、且つ、バッテリーセル50を除いた状態においてはクッション部材11等の弾性力により元の形状に戻ることができる。よって、バッテリー40等は、バッテリーセル50の種々の形態に順応可能であって、弾性変形性に富み、且つ、蓄熱効果を通じてバッテリーセル50の放熱を高めることができる。
【0094】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0095】
図18は、第3実施形態および第4実施形態に係る放熱構造体の変形例4およびその製造方法を説明するための図を示す。
【0096】
変形例4に係る放熱構造体は、第3実施形態および第4実施形態に係る放熱構造体1b,1cと異なる放熱部材5dを備える。変形例4に係る放熱構造体に備えられる放熱部材5dは、クッション部材11aを、筒状クッション部材とせずに、熱伝導シート10の裏側に備えられる帯状のクッション部材であって熱伝導シート10と共にスパイラル状に巻回されているスパイラル状のクッション部材とする。なお、放熱部材5d以外の構成は、放熱構造体1b,1cと同様のため、詳細な説明を省略する。
【0097】
上述のスパイラル状のクッション部材11a(「スパイラル状クッション部材11a」または単に「クッション部材11a」ともいう)を備える放熱構造体の製造方法の一例は、次の通りである。
【0098】
まず、略同等の幅を持つ熱伝導シート10およびクッション部材11aの二層からなる積層体を製造する。次に、熱伝導シート10の表面に、熱伝導性オイルを塗布する。そして、熱伝導性オイルが塗布された積層体をスパイラル状(コイル状と称しても良い)に、一方向に進行するように巻回する。こうして、積層体をスパイラル状に巻回した細長い形状の放熱部材5dが完成する。なお、熱伝導性オイルは、積層体を製造する前に熱伝導シート10上に塗布しても良いし、最後に熱伝導シート10上に塗布しても良い。また、積層体は、好ましくは、クッション部材11aが完全には硬化していない未硬化状態で、熱伝導シート10をクッション部材11aに積層し、その後、加温によりクッション部材11aを完全に硬化させて形成される。
【0099】
放熱構造体は、上述の製造方法により製造された複数の放熱部材5dを、熱伝導シート10の巻回しながら進行する方向(放熱部材5dの長さ方向)と直交する方向に並べた状態で、糸15で連結することにより製造される。また、第4実施形態に係る放熱構造体1cのように枠体30を備える場合は、糸15で連結された複数の放熱部材5dを、枠体30に糸25で縫い付けることにより製造される。
【0100】
放熱部材5dは、その長さ方向に中空部12aを備えているが、第3実施形態および第4実施形態に係る放熱部材5aが備える中空部12と異なり、放熱部材5dの外側面方向にも貫通している。放熱部材5dは、スパイラル状であるため、上述の放熱部材5aに比べて、放熱部材5dの長さ方向に伸縮容易である。
【0101】
また、例えば、熱源は、バッテリーセル50のみならず、回路基板や電子機器本体などの熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。同様に、冷却部材45は、冷却用の水のみならず、有機溶剤、液体窒素、冷却用の気体であっても良い。また、放熱構造体1等は、バッテリー40等以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
【0102】
また、熱伝導シート4,10,10aは、クッション部材11,11a,11bと同様に、蓄熱カプセル3を含有していても良い。
【0103】
また、第2実施形態において、放熱構造体1aは、熱伝導シート4上に複数の放熱部材5が配置されていたが、本発明はこれに限定されない。放熱構造体1aは、例えば、クッション部材11または第1実施形態に係る放熱構造体1(クッション部材11に蓄熱カプセル3を含有した部材)上に複数の放熱部材5が配置されていても良い。
【0104】
また、第2実施形態において、放熱構造体1aは、熱伝導シート4を備えず、複数の放熱部材5を糸15,25で連結した構成であっても良い。
【0105】
また、第3実施形態および第5実施形態において、放熱構造体1b,1d,1eは、複数の放熱部材5a,5b,5cが糸15で連結されることに限定されず、例えば、第6実施形態に係る放熱構造体1fと同様に、複数の放熱部材5a,5b,5cが、中空部12に糸25を到達するように、例えば、ミシン等で縫って連結されていても良い。また、放熱構造体1b,1d,1eは、複数の放熱部材5a,5b,5cが2本の糸15で連結されていたが、本発明はこれに限定されず、少なくとも1本の糸15で連結されていれば良い。
【0106】
また、第6実施形態において、放熱構造体1fは、放熱部材5bの中位領域を、中空部12に糸25を到達するようにミシン等で縫って連結されていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、第4実施形態と同様に、糸15により手縫いで連結されていても良い。また、この場合、放熱構造体1fは、糸15が形成する複数の輪の連結部分に、規制部17が設けられていても良い。また、放熱構造体1fは、放熱部材5bの中位領域を1本の糸25で連結されていたが、本発明はこれに限定されず、当該中位領域を糸25で連結しなくても良いし、2本以上の糸25で連結されていても良い。
【0107】
また、第4実施形態および第6実施形態において、放熱構造体1c,1fは、糸25を備えなくても良い。さらに、第4実施形態に係る放熱構造体1cは、糸15も備えなくても良い。この場合、放熱構造体1c,1fを構成する複数の放熱部材5a,5bの長さ方向の両端部が枠体30に接着あるいは嵌め込み等の手法で固定されていることが好ましい。この場合、枠体30は、放熱構造体1c,1fにおける複数の放熱部材5a,5bの位置決めを行い、かつ複数の放熱部材5a,5bを連結する役割を担う。
【0108】
また、第5実施形態および第6実施形態に係る放熱構造体1d,1fにおいて、放熱部材5bは、第1隙間100を備えていなくても良い。
【0109】
また、枠30は、その形状に特に制約はなく、複数の放熱部材5a,5bの長さ方向の少なくとも一端部を固定可能な形状であれば、例えば、平面視にて楕円、円、三角若しくは五角以上の多角形の外形であっても良い。第4実施形態および第6実施形態では、放熱部材5a,5bは、枠30の底部42側の面を放熱部材5a,5bの底部42側の面と同じ位置になるように枠30に固定されている。しかし、枠30のバッテリーセル50側の面を放熱部材5a,5bのバッテリーセル50側の面と同じ位置にするように、枠30と放熱部材5a,5bとを固定しても良い。さらに、放熱部材5a,5bの高さ方向(バッテリーセル50から底部42に向かう方向)の中位置に枠30を固定しても良い。
【0110】
また、第2~第6実施形態においては、バッテリーセル50を縦にしてその下端に放熱構造体1a等を接触せしめている状況について説明したが、バッテリーセル50の配置形態は、これに限定されない。例えば、バッテリーセル50の側面を放熱構造体1a等の各放熱部材5,5a,5b,5cに接触させるように、バッテリーセル50を配置しても良い。バッテリーセル50は、充電および放電の際に温度上昇する。バッテリーセル50の容器自体が柔軟性に富む材料にて形成されていると、バッテリーセル50の特に側面が膨らむ可能性がある。そのような場合でも、放熱構造体1a等を構成している各放熱部材5,5a,5b,5cがバッテリーセル50の外面の形状に合わせて変形できるので、充放電時にも放熱性を高く維持できる。
【0111】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、第4実施形態に係る放熱構造体1cを、第1実施形態に係る放熱構造体1に代えて配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明に係る放熱構造体は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品などの各種電子機器にも利用することができる。また、本発明に係るバッテリーは、自動車用のバッテリー以外に、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーにも利用できる。
【符号の説明】
【0113】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f・・・放熱構造体、3・・・蓄熱カプセル、4,10,10a・・・熱伝導シート、5,5a,5b,5c,5d・・・放熱部材、11,11a,11b・・・クッション部材、12,12a・・・中空部、15,25・・・糸、30・・・枠体、31・・・開口部、40,40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g・・・バッテリー、41・・・筐体、50・・・バッテリーセル(熱源の一例)、100・・・第1隙間、110・・・第2隙間、T・・・枠体の厚さ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18