(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/00 20060101AFI20240201BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20240201BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B01D39/00 B
B01D46/00 302
F01N3/022 C
(21)【出願番号】P 2020039949
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大野 一茂
(72)【発明者】
【氏名】北村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻本 尚司
(72)【発明者】
【氏名】柳原 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 惇哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 涼太
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-224517(JP,A)
【文献】特開2004-262670(JP,A)
【文献】特開2010-256025(JP,A)
【文献】特開2009-036705(JP,A)
【文献】特開2010-032511(JP,A)
【文献】特開2005-037222(JP,A)
【文献】特開昭63-054976(JP,A)
【文献】特開2002-028915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-39/20
B01D 46/00
F01N 3/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面を有する筒状のハニカムセグメントを組み合わせてなるハニカム構造体の製造方法であって、
複数の前記ハニカムセグメントを、その端面の位置を揃えつつ接着剤を介して積み重ねることにより、複数の前記ハニカムセグメントが結束された組立体を作製する組立工程と、
ロボットアームによって動作する塗布具を前記組立体の端面に沿って移動させることにより、前記組立体の端面における前記接着剤の付着状態を調整する調整工程とを備え、
前記調整工程において、
前記組立体の端面を撮像した画像に基づいて、予め設定された評価項目に適した塗布経路を、探索アルゴリズムを用いて生成し、生成された前記塗布経路に沿って前記塗布具を移動させ
、
前記評価項目は、
その前記塗布経路に沿って前記塗布具を移動させた場合における、前記組立体の端面を区分けしたブロック間の塗布量の差に基づく評価項目、
その前記塗布経路に沿って前記塗布具を移動させた場合における、前記組立体の端面を区分けしたブロック毎の塗布量のバラツキに基づく評価項目、及び
その前記塗布経路に沿って前記塗布具を移動させた場合における、前記組立体の端面を区分けした全ブロックにおける塗布量が過剰なブロックの比率に基づく評価項目の少なくとも一つを含むハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
探索アルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムである請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両等の内燃機関から排出される排ガスに含まれる微粒子を捕集するフィルタとして、炭化ケイ素等のセラミック製の多孔質材からなるハニカム構造体が開示されている。上記ハニカム構造体の製造方法として、複数のハニカムセグメントを、接着剤を介して結束させる方法が知られている。
【0003】
ハニカムセグメントは、一方側の端面が開放されるとともに他方側の端面が封止された第1セルと、第1セルに隣接して設けられ、一方側の端面が封止されるとともに他方側の端面が開放された第2セルと、第1セル及び第2セルを区画する多孔質の壁部とを備える角柱状の部品である。まず、端面にマスクを施した複数のハニカムセグメントを、接着剤を介して積み重ねることにより組立体を作製する。その後、乾燥等の接着剤を固化させる固化処理、マスクの除去、及び組立体を所定形状に加工する処理等の仕上げ処理を行うことによりハニカム構造体が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記製造方法においては、複数のハニカムセグメントを積み重ねて組立体を作製した際に、組立体の端面に接着剤が不足して部分的に凹んだ不足部分が生じる場合がある。また、接着剤の粘度や積層圧力によって、組立体の端面に接着剤がはみ出した過剰部分が生じる場合がある。
【0006】
そのため、組立体の作製後には、組立体の端面における接着剤の付着状態が均一になるように、過剰部分については接着剤を除去し、不足部分については接着剤を追加塗布する調整作業を行う必要がある。端面の接着剤の付着状態は、組立体毎に異なることから、上記調整作業は、熟練の作業者の目視による確認及び手作業によって行われており、ハニカム構造体の製造効率を低下させる原因になっていた。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハニカム構造体の製造効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するハニカム構造体の製造方法は、端面を有する筒状のハニカムセグメントを組み合わせてなるハニカム構造体の製造方法であって、複数の上記ハニカムセグメントを、その端面の位置を揃えつつ接着剤を介して積み重ねることにより、複数の上記ハニカムセグメントが結束された組立体を作製する組立工程と、ロボットアームによって動作する塗布具を上記組立体の端面に沿って移動させることにより、上記組立体の端面における上記接着剤の付着状態を調整する調整工程とを備え、上記調整工程において、上記組立体の端面を撮像した画像に基づいて、予め設定された評価項目に適した塗布経路を、探索アルゴリズムを用いて生成し、生成された上記塗布経路に沿って上記塗布具を移動させる。
【0009】
上記構成によれば、調整工程に供された組立体の端面の画像に基づいて、評価項目に基づく任意の塗布状態を実現するための塗布経路を作成し、その塗布経路に沿って塗布具を移動させる動作をロボットアームに実行させることにより調整工程を自動化している。これにより、調整工程に要する人的コストを削減できる。また、調整工程に供された組立体の端面の塗布状態に基づいて塗布経路を生成することにより、過剰な塗布動作及び塗布不足の発生を抑制することができ、これにより、任意の塗布状態とするための塗布動作を効率的に実施できる。このように、調整工程が効率化される結果、ハニカム構造体の製造効率が向上する。
【0010】
本発明のハニカム構造体の製造方法について、探索アルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムであることが好ましい。
上記構成によれば、より効率的な塗布経路を生成できる。
【0011】
本発明のハニカム構造体の製造方法について、上記評価項目は、その上記塗布経路に沿って上記塗布具を移動させた場合における、上記組立体の端面を区分けしたブロック間の塗布量の差に基づく評価項目を含むことが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、調整工程後、接着剤が不足して部分的に凹んだ不足部分及び接着剤がはみ出した過剰部分の残存が生じ難い塗布経路を生成できる。
本発明のハニカム構造体の製造方法について、上記評価項目は、その上記塗布経路に沿って上記塗布具を移動させた場合における、上記組立体の端面を区分けしたブロック毎の塗布量のバラツキに基づく評価項目を含むことが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、調整工程後、接着剤が不足して部分的に凹んだ不足部分及び接着剤がはみ出した過剰部分の残存がさらに生じ難い塗布経路を生成できる。
本発明のハニカム構造体の製造方法について、上記評価項目は、その上記塗布経路に沿って上記塗布具を移動させた場合における、上記組立体の端面を区分けした全ブロックにおける塗布量が過剰なブロックの比率に基づく評価項目を含むことが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、調整工程後、ブロック毎に接着剤が過剰になることを防ぐことが可能な塗布経路を生成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハニカム構造体の製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図10】組立体の端面におけるブロックの区分けの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法の一実施形態について説明する。
まず、
図1及び
図2を参照して、ハニカム構造体の製造方法に用いるハニカムセグメント10について説明する。
【0018】
ハニカムセグメント10は、四角筒状の部材であり、軸方向に延びる複数の第1セル11及び複数の第2セル12と、第1セル及び第2セルを区画する多孔質の壁部13とを備えている。第1セル11は、一方側の端面が開放されるとともに他方側の端面が封止材14により封止されている。第2セル12は、第1セルに隣接して設けられ、一方側の端面が封止材14により封止されるとともに他方側の端面が開放されている。ハニカムセグメント10の壁部13及び封止材14は、例えば、炭化ケイ素等のセラミックにより構成されている。
【0019】
ハニカムセグメント10の両端面には、取り外し可能なシート材からなり、第1セル11及び第2セル12の各開口を覆うマスキング材15が貼り付けられている。マスキング材15としては、例えば、基材フィルム上に粘着剤が塗布されたものが用いられる。
【0020】
次に、ハニカム構造体の製造方法について説明する。
まず、組立工程として、複数のハニカムセグメント10から
図3に示す組立体20を作製する。
図3では、ハニカムセグメント10の端面の詳細な図示を省略している。組立工程では、ハニカムセグメント10の側面に接着剤を塗布し、複数のハニカムセグメント10を端面の位置を揃えつつ積み重ねる工程を繰り返す。これにより、接着剤からなる接着層を介して複数のハニカムセグメント10が結束された組立体20が得られる。
【0021】
接着剤としては、ペースト状の接着剤が用いられる。接着剤の種類は特に限定されるものではなく、無機バインダーや有機バインダー等のハニカム構造体の製造に適用される公知の接着剤を用いることができる。無機バインダーとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾルが挙げられる。有機バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の親水性有機高分子が挙げられる。接着剤は、1種のみからなるものであってもよいし、2種以上を併用したものであってもよい。また、接着剤は、無機繊維や無機粒子等の添加剤を含有するものであってもよい。
【0022】
組立工程の後、調整工程として、組立体20の端面における接着剤の付着状態を調整する。調整工程の詳細については後述する。
調整工程の後、仕上げ工程として、組立体20の接着剤層を固化させる固化処理、及び組立体20の外形を多角筒状や円筒状等の任意の形状に整形する整形処理を行う。仕上げ工程を行うことにより、
図4に示すようなハニカム構造体21が得られる。
図4では、端面の詳細な図示を省略している。また、
図4では、円筒状のハニカム構造体21を図示しているが、ハニカム構造体21の形状は、円筒状に限定されるものではなく、多角筒状や楕円筒状等の公知のハニカム構造体に採用される形状のいずれであってもよい。
【0023】
固化処理の方法は、加熱処理等の接着剤の種類に応じた方法が適宜、選択される。加熱処理としては、例えば、50~150℃、1時間の条件で加熱する方法が挙げられる。整形処理としては、例えば、ダイヤモンドカッター等を用いて組立体20の外周の不要部分を切削した後、組立体20の外周にシール材を塗布して外形を整える処理が挙げられる。
【0024】
得られたハニカム構造体21は、例えば、車両等の内燃機関から排出される排ガスに含まれる微粒子を捕集するフィルタとして用いられる。
次に、調整工程の詳細について説明する。
【0025】
図5及び
図6に、調整工程に供された組立体20の端面20aの状態の一例を示す。
図5では、接着剤が不足して部分的に凹んだ不足部分A1を破線で示すとともに、接着剤がはみ出した過剰部分A2をドットで示している。
図6では、接着層を符号16で示している。
【0026】
調整工程では、過剰部分A2の接着剤を用いて不足部分A1を埋めつつ、過剰部分A2の接着剤を取り除くことにより、組立体20の端面20aにおける接着剤の付着状態を均一に近づける操作が行われる。
【0027】
まず、調整工程を実行する塗布装置30について説明する。
図7に示すように、塗布装置30は、組立体20の端面20aを撮像する撮像部31と、先端に箆状の塗布具32aが取り付けられたロボットアーム32と、コントローラ33とを備えている。
【0028】
撮像部31は、特に限定されるものではなく、光学系カメラや電子系カメラ等の公知のカメラを用いることができる。
ロボットアーム32は、先端に取り付けられた塗布具32aを、組立体20の端面20aがなす平面上の任意の方向に直線移動可能に構成されている。
【0029】
図8に示すように、コントローラ33は、各種演算処理を行うCPU41、基本プログラムを記憶するROM42、及び各種情報を記憶するRAM43を含むコンピュータである。コントローラ33は、情報記憶を行う固定ディスク44、画像等の各種情報の表示を行うディスプレイ45、及びユーザからの入力を受け付けるキーボードやマウス等の入力部46を有している。また、コントローラ33は、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコントローラ33が読み取り可能な記録媒体48から情報の読み取りを行う読取装置47、及び塗布装置30の他の構成との間で信号を送受信する通信部49を有している。
【0030】
コントローラ33には、事前に読取装置47を介して記録媒体48からプログラム50が読み出され、固定ディスク44に記憶される。そして、CPU41によりRAM43及び固定ディスク44を利用しつつプログラム50に従って演算処理が実行される。
【0031】
図7に示すように、コントローラ33は、機能構成として、経路生成部33a及び駆動制御部33bを備えている。コントローラ33を構成する各要素は、ソフトウェアを用いて実現してもよいし、その一部又は全部の要素について、単数又は複数のハードウェアを用いて実現してもよい。
【0032】
経路生成部33aは、撮像部31により撮像された組立体20の端面20aの画像に基づいて、探索アルゴリズムを用いて、予め設定された評価項目に適した塗布具32aの塗布経路を探索して生成する。駆動制御部33bは、経路生成部33aにより生成された塗布経路に沿って塗布具32aが移動するようにロボットアーム32の動作を制御する。
【0033】
図9に示すように、生成する塗布経路は、塗布具32aを直線的に移動させる塗布動作を複数回、行わせるための経路である。したがって、塗布経路は、複数の塗布動作の回数と同数の直線的な小経路Rの組み合わせとなる。以下では、塗布動作の回数を20とした場合、即ち、塗布経路を構成する小経路Rの数が20である場合について説明する。
【0034】
また、評価項目は、組立体20の端面20a上において、その塗布経路に沿って塗布具32aを移動させた場合に、接着剤の付着状態を効率的に均一な状態に近づけることができるか否かの判断基準である。本実施形態では、評価項目として第1~第3の評価項目を設定し、これらを総合した結果をもって判断を行っている。
【0035】
第1の評価項目は、ブロック毎の塗布量の最大と最小の差である。上記差が大きいほど、塗布斑が過度に大きいことを意味する。ここで上記差とは、ブロック間における塗布量の差に基づく評価項目であり、ブロック毎の塗布量を数値化したときの数値の最大と最小の差のことをいう。
【0036】
第2の評価項目は、組立体20の端面20aを区分けしたブロック毎の塗布量のバラツキの大きさである。上記バラツキが大きいほど、不足部分A1もしくは過剰部分A2が残っていることを意味する。ここでバラツキとは、ブロック毎の塗布量を数値化したときの全ブロックにおける数値の標準偏差のことをいう。
【0037】
第3の評価項目は、組立体20の端面20aを区分けした全ブロックにおける塗布量が過剰なブロックの比率である。上記比率が大きいほど、過剰に塗布された部分があることを意味する。塗布量が過剰なブロックとは、ブロック毎の塗布量を数値化した際の数値が基準値に対して大きすぎることである。
【0038】
図10に、組立体20の端面20aを区分けしたブロックの一例を示す。
図10では、組立体20の端面20aを9個のブロックB1~B9に区分けしている。ブロックを区分けする方法は特に限定されるものではないが、ブロックの境界線と、ハニカムセグメント10間の境界線とが重ならないように設定することが好ましい。
【0039】
塗布経路を生成する探索アルゴリズムとしては、例えば、遺伝的アルゴリズムやシミュレーテッドアニーリング法等のメタヒューリスティクスアルゴリズム、ランダムサーチ、グリッドサーチ、局所探索法が挙げられる。これらの中でも、遺伝的アルゴリズムを用いることが好ましい。
【0040】
図11に示すフローチャートを参照して、遺伝的アルゴリズムを用いた塗布経路の生成について説明する。
(ステップS101)
ステップS101では、塗布経路を個体とする初期集団を生成する。初期集団の個体数は、例えば、50~200である。
【0041】
図12に示すように、個体は、20個の遺伝子G
1~G
20により構成される。遺伝子G
n(nは、1~20の整数)は、塗布経路のn番目の小経路を特定する情報であり、組立体20の端面20a上におけるn番目の小経路の始点座標S
n及び終点座標E
nにより構成されている。始点座標S
n及び終点座標E
nは、ランダムに決定される。
【0042】
(ステップS102)
ステップS102では、初期集団を構成する各個体又は後述する新たな世代の集団(以下、まとめて現世代の集団と記載する。)を構成する各個体の適応度を評価する。まず、撮像部31により撮像された組立体20の端面20aの画像における接着剤の塗布状態を初期状態として、シミュレーションにより、評価対象の個体にて特定される塗布経路に沿って塗布具32aを仮想的に移動させる。そのシミュレーション結果から、各評価項目の値を取得し、その値に基づいて適応度を評価する。なお、塗布具32aの形状等の塗布具32aに関する情報は、予めコントローラ33に入力されている。
【0043】
上記評価項目は、端面20aを区分けしたブロック毎の塗布量の最大と最小の差、ブロック毎の塗布量のバラツキ、及び全ブロックにおける塗布量が過剰なブロックの比率である。上記最大と最小の差が小さいほど高い評価が与えられる。上記バラツキが小さいほど高い評価が与えられる。上記塗布量が過剰なブロックの比率が小さいほど高い評価が与えられる。
【0044】
(ステップS103)
ステップS103では、処理を終了するための終了判定を行う。終了判定では、第1終了条件又は第2終了条件を満たすか否かを判定する。第1終了条件は、与えられた集団を構成する個体の中に、上記評価項目を総合した結果が予め設定された基準を満たす個体が存在することである。第2終了条件は、世代数が予め設定された上限値に達することである。世代数の上限値は、例えば、50~200である。
【0045】
第1終了条件及び第2終了条件の少なくとも一方の終了条件が満たされた場合(YES)、現世代の集団を構成する個体の中で適応度が最大の個体を選択して処理を終了する(ステップ107)。その結果、選択された個体にて特定される塗布経路が最適な塗布経路として出力される。一方、第1終了条件及び第2終了条件のいずれも満たされない場合(NO)、続くステップS104を実行する。
【0046】
(ステップS104)
ステップS104では、現世代の集団の中から次世代の親となる個体を複数、選択する。このとき、現世代の集団を構成する個体の中で適応度が高い個体ほど選ばれやすくするような選択方法を用いて選択する。選択方法としては、例えば、ルーレット選択、ランキング選択、トーナメント選択等の公知の方法を用いることができる。選択する個体数は、現世代の個体数と同数である。
【0047】
(ステップS105)
ステップS105では、選択された個体の間で遺伝子を組み替える交叉を行う。選択された個体から2個体1組のペアを設定し、各ペアにおいて遺伝子を入れ替える交叉処理を実行することにより、遺伝子が組み換えられた新たな世代の個体を2固体、生成する。交叉処理の手法としては、例えば、一点交叉法、多点交叉法、一様交叉法等の公知の方法を用いることができる。また、ステップS105における個体の生成数は、現世代の個体数と同数である。
【0048】
(ステップS106)
ステップS106では、ステップS105にて得られた新たな世代の集団を構成する個体に対して、予め設定された一定確率で遺伝子をランダムに入れ替える突然変異を行う。突然変異の手法は特に限定されるものではなく、公知の手法を用いることができる。
【0049】
ステップS106の後は、ステップS102へと戻り、新たな世代の集団を構成する各個体の適応度を評価する。そして、ステップS103の終了条件が満たされるまで、ステップS102~S106を繰り返し実行する。
【0050】
上記のように構成された塗布装置30により実行される調整工程では、まず、撮像部31にて、組立体20の一方側の端面20aを撮像して、同端面20aの画像を取得する。次いで、コントローラ33にて、取得した端面20aの画像に基づいて塗布経路を生成するとともに、生成された塗布経路に沿って塗布具32aが移動するようにロボットアーム32を動作させる。また、組立体20の反対側の端面20aについても同様の調整工程を行う。
【0051】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ハニカム構造体の製造方法では、組立工程として、複数の筒状のハニカムセグメントを、その端面の位置を揃えつつ接着剤を介して積み重ねることにより、複数のハニカムセグメントが結束された組立体を作製している。組立工程の後、調整工程として、ロボットアームによって動作する塗布具を、組立体の端面に沿って移動させることにより、組立体の端面における接着剤の付着状態を調整している。調整工程では、組立体の端面を撮像した画像に基づいて、予め設定された評価項目に適した塗布経路を、探索アルゴリズムを用いて生成し、生成された塗布経路に沿って塗布具を移動させている。
【0052】
上記構成によれば、調整工程に供された組立体の端面の画像に基づいて、評価項目に基づく塗布状態を実現するための塗布経路を作成し、その塗布経路に沿って塗布具を移動させる動作をロボットアームに実行させることにより調整工程を自動化している。これにより、調整工程に要する人的コストを削減できる。また、調整工程に供された組立体の端面の塗布状態に基づいて塗布経路を生成することにより、過剰な塗布動作及び塗布不足の発生を抑制することができ、これにより、任意の塗布状態とするための塗布動作を効率的に実施できる。このように、調整工程が効率化される結果、ハニカム構造体の製造効率が向上する。
【0053】
(2)探索アルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムである。
上記構成によれば、効率的な塗布経路を生成できる。
(3)塗布経路の生成に用いる評価項目は、その塗布経路に沿って塗布具を移動させた場合における、組立体の端面を区分けしたブロック間の塗布量の差に基づく評価項目を含む。
【0054】
上記構成によれば、調整工程後、接着剤が不足して部分的に凹んだ不足部分及び接着剤がはみ出した過剰部分の残存が生じ難い塗布経路を生成できる。
(4)塗布経路の生成に用いる評価項目は、その塗布経路に沿って塗布具を移動させた場合における、組立体の端面を区分けしたブロック間の塗布量のバラツキに基づく評価項目を含む。
【0055】
上記構成によれば、調整工程後、接着剤が不足して部分的に凹んだ不足部分及び接着剤がはみ出した過剰部分の残存がさらに生じ難い塗布経路を生成できる。
(5)塗布経路の生成に用いる評価項目は、その塗布経路に沿って塗布具を移動させた場合における、組立体の端面を区分けした全ブロックにおける塗布量が過剰なブロックの比率に基づく評価項目を含む。
【0056】
上記構成によれば、調整工程後、ブロック毎に接着剤が過剰になることを防ぐことが可能な塗布経路を生成できる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・ハニカムセグメントの外周形状及び内部のセル構造は、特に限定されるものではない。例えば、断面六角形状や断面八角形状のハニカムセグメントであってもよい。
・ハニカム組立体における各ハニカムセグメントの配置は、上記実施形態の配置に限定されるものではなく、製造するハニカム構造体の形状に応じて適宜、変更できる。
【0058】
・上記ハニカム構造体の製造方法において、仕上げ工程は、必須の工程ではなく、省略することもできる。例えば、接着剤として、自然硬化する接着剤を用いた場合には、接着剤を固化させるための特別な固化処理を行う必要はない。また、製造するハニカム構造体の形状が四角筒状等の組立体の段階で形成可能な形状である場合には、組立体の外形を整形する整形処理を省略できる。
【0059】
・探索アルゴリズムによる塗布経路の生成に用いる評価項目を変更してもよい。例えば、第1~第3の評価項目のうちのいずれか一つ又は二つの評価項目を削除してもよいし、その他の評価項目を追加してもよい。
【0060】
・遺伝的アルゴリズムにおける選択、交叉、突然変異等の各工程の手法は、上記実施形態の手法に限定されるものではなく、公知の遺伝的アルゴリズムの手法を適用することができる。例えば、現世代の個体から一つの個体(例えば、適応度が最大の個体)を選択して、選択した個体をそのままコピーしたものを新たな世代の集団を構成する個体としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…ハニカムセグメント、20…組立体、20a…端面、21…ハニカム構造体、30…塗布装置、31…撮像部、32…ロボットアーム、32a…塗布具、33…コントローラ。