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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】駆動装置、レンズ鏡筒、及び、撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240201BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20240201BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/08 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020046117
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148856
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】地引 陽之助
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205496(JP,A)
【文献】特開2015-004777(JP,A)
【文献】特開2012-252288(JP,A)
【文献】特開2013-015699(JP,A)
【文献】特開2009-036907(JP,A)
【文献】特開2008-261943(JP,A)
【文献】特開平11-295578(JP,A)
【文献】特開2011-027938(JP,A)
【文献】特開2005-315935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/08
H02K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持する保持部材を光軸方向に駆動するための駆動装置であって、
モータと、
前記モータにより回転されるスクリューと、
前記保持部材に接続され、前記スクリューに取り付けられる取付ユニットと、を備え、
前記取付ユニットは、
前記スクリューの螺条に係合可能な突条が形成され、かつ、前記スクリューを挟んで配置された挟持部をそれぞれ有する、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジと、
前記第1のキャリッジ及び前記第2のキャリッジを前記スクリューの軸線に沿って互いに異なる方向に軸線方向に付勢する付勢部材と、
前記付勢部材による軸線方向付勢力を、前記第1のキャリッジ及び前記第2のキャリッジの前記挟持部を前記スクリューを挟んだ状態で近接する方向に付勢する横方向付勢力に変換する変換機構と、
を含む、ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第1のキャリッジ及び前記第2のキャリッジは、それぞれ、軸部材に対して回動可能に取り付けられた回動部を有し、
前記変換機構は、
前記第1のキャリッジ及び前記第2のキャリッジの前記回動部の互いに対向する当接面に前記軸部材を中心とした周方向に傾斜するように形成され、かつ、互いに当接する傾斜面を含んで構成される、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1のキャリッジ及び前記第2のキャリッジは略同形状の部材により構成される、
請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1のキャリッジ及び前記第2のキャリッジのそれぞれにおいて、
前記突条の前記付勢部材の前記軸線に沿って付勢される方向の面の、前記スクリューの軸線の垂直方向に対する角度が、
前記突条の前記軸線に沿って付勢される方向と反対方向の面の、前記スクリューの軸線の垂直方向に対する角度よりも大きい、
請求項1~3の何れか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
光学素子と、
前記光学素子を保持する保持部材と、
前記保持部材を駆動する請求項1~4の何れか1項に記載の駆動装置と、
を備える、ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
カメラ本体と、
請求項5に記載のレンズ鏡筒と、
を備える、ことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、レンズ鏡筒、及び、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カメラなどの撮像装置に取り付けられるレンズ鏡筒として、ズーミングやフォーカシングのためにレンズを保持するレンズ保持部材を、ガイド筒やポール等により光軸方向に移動可能に支持し、駆動装置により光軸方向に移動する構成が広く知られている。このようなレンズ鏡筒の駆動装置としては、光軸方向に延びるようにリードスクリューを設け、モータによりリードスクリューを回転させ、このリードスクリューの回転を光軸方向の移動に変換する構成が知られている。このような機構には、光学性能の点から高精度の位置決めが求められるとともに、外部からレンズ鏡筒に衝撃が加わった際に、破損しないことが求められる。
【0003】
このような機構として、例えば、特許文献1には、捩りコイルばねの中間部に外方に向かって延びるバネ端部3aを形成しておき、本歯ラック1に掛止されるバネ端部3aと対向歯ラック2に掛止されるバネ端部3bにより対向歯ラック2を送りねじの方向に付勢し、バネ端部3aと保持部材に掛止されるバネ端部3cにより本歯ラック1を送りねじの方向に付勢し、ラック3に外挿されるコイル部3eにより本歯ラック1と対向歯ラック2が互いに軸方向に離れる方向に付勢する構成が開示されている(例えば、要約書参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-205496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1に記載された発明では、中間部に外方に向かって延びるバネ端部を有する特殊な形状のばねを使用し、また、本歯ラックに中間部に形成されたバネ端部が掛止するための部位を形成しなければならず、構成部品の構成が複雑になってしまい汎用性が低い。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、部品の構成が複雑にならない、光学素子を保持する保持部材を光軸方向に駆動するための駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による駆動装置は、光学素子を保持する保持部材を光軸方向に駆動するための駆動装置であって、モータと、モータにより回転されるスクリューと、保持部材に接続され、スクリューに取り付けられる取付ユニットと、を備え、取付ユニットは、スクリューの螺条に係合可能な突条が形成され、かつ、スクリューを挟んで配置された挟持部をそれぞれ有する、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジと、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジをスクリューの軸線に沿って互いに異なる方向に軸線方向に付勢する付勢部材と、付勢部材による軸線方向付勢力を、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの挟持部をスクリューを挟んだ状態で近接する方向に付勢する横方向付勢力に変換する変換機構と、を含む、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成の本発明によれば、軸方向付勢力が変換機構により、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの挟持部を、スクリューを挟んだ状態で近接する方向に付勢する横方向付勢力に変換されるため、第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの突条が、軸方向に異なる方向にスクリューの螺条に当接し、取付ユニットをガタつきなくスクリューに取り付けることができる。また、取付ユニットが付勢部材による付勢力によりスクリューに取り付けられているため、衝撃時に付勢力を上回るような力が作用すると、取付ユニットがスクリューから容易に離脱する。このため、落下時などにおける取付ユニットの破損を防止できる。さらに、付勢部材による軸方向付勢力を、変換機構により第1のキャリッジ及び第2のキャリッジの挟持部を付勢する横方向付勢力に変換する構成であるため、付勢部材は軸方向に付勢する構成であればよく、付勢部材の構成が複雑にならない。
【0009】
本発明によるレンズ鏡筒は、光学素子と、光学素子を保持する保持部材と、保持部材を駆動する上記の駆動装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0010】
本発明による撮像装置は、カメラ本体と、上記のレンズ鏡筒と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構成部品の構成が複雑ではない、光学素子を保持する保持部材を光軸方向に駆動するための駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態によるカメラの構成を示す、光軸に沿った構成概略図である。
図2図1に示すカメラの駆動装置の取付ユニット及びスクリューの一部を示す斜視図である。
図3図1に示すカメラの駆動装置の取付ユニット及びスクリューの一部を示す側面図である。
図4図1に示すカメラの駆動装置の取付ユニット及びスクリューの一部を示す上面図である。
図5図1に示すカメラの駆動装置の駆動ユニットの上面図である。
図6図1に示すカメラの駆動装置の駆動ユニットの第2のキャリッジを示す斜視図である。
図7図1に示すカメラの駆動装置の取付ユニットをスクリューに取り付けた状態を示す水平方向拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態による、駆動装置、レンズ鏡筒、及び、撮像装置を、図面を参照しながら、詳細に説明する。以下の説明では、本発明を、撮像装置としてカメラに適用した場合の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態によるカメラの構成を示す、光軸に沿った構成概略図である。図1に示すように、カメラ1は、カメラ本体2と、レンズ鏡筒4とを備える。
カメラ本体2は、制御部2Aと、制御部2Aに通信可能に接続された撮像素子2Bを有する装置である。撮像素子2Bは、例えば、CMOSやCCDなどであり、光を検知し、検知した光に応じた信号を制御部2Aに出力する。制御部2Aは、メモリ、CPU、及び、記録装置を有し、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより実践される。制御部2Aは、撮像素子2Bから受信した信号を、イメージデータとしてメモリや記録装置に記録する。
【0015】
レンズ鏡筒4は、カメラ本体2に固定され、円筒状の鏡筒本体4Aと、鏡筒本体4A内に設けられた複数のレンズ群(図1では、フォーカシング用レンズ群6Aのみを示す)と、を有する。
レンズ鏡筒4は、鏡筒本体4Aの被写体側(図1の左側)から光が入射し、入射した光は複数のレンズ群を通り結像側を抜けてカメラ本体2に入射される。レンズ鏡筒4は、使用者のズーミング操作に応じて複数のレンズ群の一部又は全部が光軸方向に移動して望遠状態と広角状態との間で切り替えることができる。本実施形態ではズーミングの可能なズームレンズを例に説明するがこれに限定されず、ズーミングを行わない単焦点レンズであってもよい。
【0016】
また、複数のレンズ群には、フォーカシング用レンズ群(光学素子)6Aが含まれる。レンズ鏡筒4は、さらに、レンズ鏡筒4内に配置されたレンズ保持部材6、ガイドポール8、及び、駆動装置10を有する。
【0017】
フォーカシング用レンズ群6Aは、レンズ保持部材6に保持されている。ガイドポール8は、鏡筒本体4A内に光軸方向に延びるように設けられている。レンズ保持部材6には、光軸方向に延びる貫通孔が形成されており、この貫通孔をガイドポール8が挿通している。このような構成により、レンズ保持部材6はガイドポール8により光軸方向に移動可能に保持されている。本発明に係るレンズ鏡筒4は、必ずしもガイドポール8を備えていなくてもよいが、ガイドポール8を備えていない場合と比較して、レンズ保持部材6がガイドポール8と後述するスクリュー14とによってより一定の姿勢を保ったまま光軸方向に移動することが可能となる。
【0018】
駆動装置10は、レンズ保持部材6を光軸方向に移動させるための装置であり、モータ12と、モータ12により回転されるスクリュー14と、スクリュー14にレンズ保持部材6を取り付けるための取付ユニット16と、を有する。スクリュー14は、円柱状のスクリュー本体の外周面に螺旋状の螺条14Aが形成されて構成されている。モータ12はカメラ本体2の制御部2Aと通信可能に接続されている。後に詳述するように取付ユニット16は、挟持部24C、26Cを有する第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26を備え、これら挟持部24C、26Cに形成された突条24H、26Hがスクリュー14の隣接する螺条14Aの間に入り込むように、挟持部24C、26Cによりスクリュー14を挟みこんでいる。これにより、モータ12によりスクリュー14が回転されることにより、突条24H、26Hに螺条14Aから光軸方向の駆動力が作用し、レンズ保持部材6を光軸方向に移動させることができる。
【0019】
モータ12の駆動は制御部2Aにより制御される。カメラ本体2の制御部2Aが、例えば、光学測距計などにより被写体までの距離を測定し、この測定した距離に基づいて撮像素子2B上で光線が結像するようなフォーカシング用レンズ群6Aの位置を算出する。そして、制御部2Aがモータ12を駆動してフォーカシング用レンズ群6Aの位置を移動させることによりフォーカシングを行うことができる。
なお、上記説明したフォーカシング動作は、いわゆるオートフォーカスの場合であり、使用者が手動でフォーカシングを行うことも可能である。この場合、駆動装置10のモータ12は使用せず、省略することも可能である。
【0020】
以下、取付ユニット16の構成を詳細に説明する。
図2図4は、図1に示すカメラの駆動装置の取付ユニット及びスクリューの一部を示し、図2は斜視図、図3は側面図、図4は上面図である。また、図5は、図1に示すカメラの駆動装置の駆動ユニットの上面図である。なお、図5では、駆動ユニットの基部20を省略して示している。
図2図5に示すように、取付ユニット16は、基部20と、基部20に取り付けられた軸部材22と、軸部材22に回動可能に設けられた第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26と、軸部材22に取り付けられた圧縮ばね(付勢部材)28と、を有する。
【0021】
基部20は、矩形状の底板20Aと、底板20Aの光軸方向両縁に立設された一対の側壁20Bと、底板20Aの横方向一方の縁に立設された横壁20Cと、を有する。一対の側壁20Bには、それぞれ円形の取付穴20Dが形成されている。なお、本実施形態では横壁20Cが底板20Aの横方向一方の縁に設けられている構成を例に説明するがこれに限定されるものではなく、横壁20Cの底板20Aの横方向の両方の縁にもうけられていてもよい。
【0022】
軸部材22は、円柱状の部材である。軸部材22は、両端部がそれぞれ基部20の一対の側壁20Bの取付穴20Dに嵌め込まれることにより、基部20の側壁20Bの間を光軸方向に延びるように取り付けられている。
【0023】
第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26は、同形状の部材である。図6は、図1に示すカメラの駆動装置の駆動ユニットの第2のキャリッジを示す斜視図である。なお、第1のキャリッジ24は第2のキャリッジ26と同形状であるため、図6には第1のキャリッジの符号も合わせて記載する。本実施形態でいう同形状とは、完全な同形状のみならず、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の主要な構成である、回動部24A、26A、腕部24B、26B、及び挟持部24C、26Cの形状が実質的に等しければよく、例えば、他の部位が付加されている場合なども含む。
【0024】
図6に示すように、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26は、それぞれ回動部24A、26Aと、回動部24A、26Aから半径方向に延びる腕部24B、26Bと、腕部24B、26Bの外方端部から屈曲して鉛直方向に延びる挟持部24C、26Cと、を備える。
【0025】
回動部24A、26Aは円筒状であり、中心に円柱状の貫通孔24F、26Fを有する。貫通孔24F、26Fの内径は、軸部材22の外径と略等しくなっている。各キャリッジ24、26の回動部24A、26Aの一方の端面(組立状態において、他方のキャリッジ26、24の回動部26A、24Aと対向する側の面)には傾斜部24G、26Gが形成されている。各キャリッジ24、26の傾斜部24G、26Gの他方のキャリッジ26、24の回動部26A、24Aと対向する側の面は、周方向に傾斜するような傾斜面として形成されている。この傾斜面は、被写体側から見て時計回りの方向に向かって、被写体側に一定に進出するように傾斜している。すなわち、傾斜面は螺旋状になっている。
【0026】
挟持部24C、26Cは、矩形の板状に形成されている。第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の挟持部24C、26Cのスクリュー14を挟んで対向する面には、突条部24D、26Dが形成されている。突条部24D、26Dは、複数の突条24H、26Hが、軸部材22の軸線(以下、「軸線」という)の方向に並列されて構成されている。各突条24H、26Hは、軸線の垂直方向に対して傾斜するように伸びている。隣接する突条24H、26Hの間隔は一定になっている。なお、各突条24H、26Hの傾斜角度はスクリュー14に形成された螺条14Aの傾斜角度に対応するように形成されており、隣接する突条24H、26Hの間隔もスクリュー14に形成された螺条の間隔に対応している。
【0027】
第1のキャリッジ24の突条24Hの結像側の面24Jの軸線の垂直方向に対する角度β(図5)は、第1のキャリッジ24の突条24Hの被写体側の面24Iの軸線の垂直方向に対する角度α(図5)よりも大きくなっている。また、第2のキャリッジ26の突条26Hの被写体側の面26Jの軸線の垂直方向に対する角度βは、第2のキャリッジ26の突条26Hの結像側の面26Iの軸線の垂直方向に対する角度αよりも大きくなっている。なお、第1のキャリッジ24の突条24Hの結像側の面24Jの軸線の垂直方向に対する角度β、及び、第2のキャリッジ26の突条26Hの被写体側の面26Jの軸線の垂直方向に対する角度βは、スクリュー14の螺条14Aの表面の角度に対応している。
【0028】
ばね部材28、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26は、軸部材22がばね部材28を挿通し、さらに第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の回動部24A、26Aの貫通孔24F、26Fを挿通することにより、基部20に取り付けられている。これにより、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26は、軸線周りに回動可能になっている。取付状態において、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の回動部24A、26Aの傾斜部24G、26Gの対向面が互いに当接している。第2のキャリッジ26の回動部26Aの結像側の端面は基部20の結像側の側壁20Bに当接している。また、第1のキャリッジ24の回動部24Aの被写体側の面と、基部20の被写体側の側壁20Bとの間には、ばね部材28が圧縮状態で介装されている。
【0029】
ばね部材28により第1のキャリッジ24の回動部24Aは、第2のキャリッジ26の回動部26Aに向かって(図5に矢印Aで示す方向に)付勢される。また、第2のキャリッジ26の回動部26Aは、側壁20Bから反力を受けるため、第1のキャリッジ24の回動部24Aに向かって(図5に矢印Aで示す方向に)付勢される。すなわち、第1のキャリッジ24の回動部24Aと第2のキャリッジ26の回動部26Aとが互いに向かって軸線方向に付勢され、回動部24A及び回動部26Aの螺旋状の傾斜部24G及び傾斜部26Gの対向面が互いに当接する。
【0030】
そして、このように傾斜部24G及び傾斜部26Gの対向面が互いに当接した状態で、回動部24A及び回動部26Aが互いに向かって軸線方向に付勢されることにより、この軸線方向付勢力(矢印Aで示す方向の力)が傾斜部24G及び傾斜部26Gの螺旋形状の対向面により、回転力(矢印Bで示す方向の力)に変換される。第1のキャリッジ24の回動部24A及び第2のキャリッジ26の回動部26Aの傾斜面は、図6に示す矢印方向に向かって高くなるように傾斜している。このため、回動部24A及び回動部26Aに互いに近接する方向に軸線方向付勢力が作用すると、この矢印の方向に第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26が回動する。これにより、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の挟持部24C、26Cには、回動部24A、26Aを中心として、挟持部24C、26Cが互いに近接する方向(図5の矢印Bで示す方向)に回転するような付勢力が作用する。すなわち、本実施形態では、回動部24A、26Aの対向する当接面に形成され、軸線方向を中心とした周方向に傾斜する傾斜面が、軸線方向付勢力を挟持部24C、26Cが互いに近接する方向に付勢する横方向(回転方向)の付勢力に変換する変換機構として機能する。
【0031】
図7は、図1に示すカメラの駆動装置の取付ユニットをスクリューに取り付けた状態を示す水平方向拡大図である。
図7に示すように、取付ユニット16は、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の挟持部24C、26Cでスクリュー14を水平方向に対向する側から挟み込むことにより、スクリュー14に取り付けられている。具体的には、上記の通り、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の挟持部24C、26Cに互いに近接する方向(図7で矢印Bで示す方向)に付勢力が作用することにより、挟持部24C、26Cに形成された突条部24D、26Dが、スクリュー14の隣接する螺条14Aの間に入り込む。さらに、挟持部24C、26Cに軸線方向に近接するような(矢印Aで示す方向の)付勢力が作用することにより、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26が移動し、第1のキャリッジ24の挟持部24Cの突条24Hの結像側の面24Jが、スクリュー14の螺条14Aの被写体の面14Cに当接するとともに、第2のキャリッジ26の挟持部26Cの突条26Hの被写体側の面26Jが、スクリュー14の螺条14Aの結像側の面14Bに当接する。これにより、取付ユニット16をガタつきなくスクリュー14に取り付けることができる。
【0032】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、ばね部材28による軸方向付勢力を、回動部24A、26Aに形成された傾斜面からなる変換機構により第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の挟持部24C、26Cを互いに近接する方向に付勢する付勢力に変換している。このため、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の挟持部24A、26Aを、スクリュー14を挟んだ状態で近接する方向に付勢する横方向付勢力に変換されるため、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の突条24H、26Hが、軸方向に異なる方向にスクリュー14の螺条14Aに当接し、取付ユニット16をガタつきなくスクリュー14に取り付けることができる。また、取付ユニット16がばね部材28による付勢力によりスクリュー14に取り付けられているため、衝撃時に付勢力を上回るような力が作用すると、取付ユニット16がスクリュー14から容易に離脱する。このため、落下時などにおける取付ユニット16の破損を防止できる。さらに、ばね部材28による軸方向付勢力を、回動部24A、26Aに形成された傾斜面により第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の挟持部24C、26Cを付勢する横方向付勢力に変換する構成であるため、ばね部材28は軸方向に付勢する構成であればよく、ばね部材28の構成が複雑にならない。
【0033】
また、本実施形態では、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の回動部24A、26Aの互いに対向する当接面に軸部材22を中心とした周方向に傾斜するように形成され、かつ、互いに当接する傾斜面により、ばね部材28による軸方向付勢力を挟持部24C、26Cを互いに近接する方向付勢する付勢力に変換している。このように、非常に簡単な構成により、ばね部材28による軸方向付勢力を挟持部24C、26Cを互いに近接する方向付勢する付勢力に変換することができるため、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26の構成が複雑化することがない。
【0034】
また、本実施形態では、第1のキャリッジ24及び第2のキャリッジ26は略同形状の部材により構成されているため、設計の手間や成形のために必要な金型等の設備を削減することができる。
【0035】
また、本実施形態では、第1のキャリッジ24の突条24Hの結像側の面24Jの軸線の垂直方向に対する角度βは、第1のキャリッジ24の突条24Hの被写体側の面24Iの軸線の垂直方向に対する角度αよりも大きくなっている。これにより、第1のキャリッジ24の突条24Hの結像側の面24Jがスクリュー14の螺条14Aの被写体側の面14Cに当接した状態で、螺条14Cの結像側の面14Bと第1のキャリッジ24の突条24Hの被写体側の面24Iとの間に隙間が生じる。また、第2のキャリッジ26の突条26Hの被写体側の面26Jの軸線の垂直方向に対する角度βは、第2のキャリッジ26の突条26Hの結像側の面26Iの軸線の垂直方向に対する角度αよりも大きくなっている。これにより、第2のキャリッジ26の突条26Hの被写体側の面26Jがスクリュー14の螺条14Aの結像側の面14Bに当接した状態で、螺条14Cの被写体側の面14Cと第2のキャリッジ26の突条26Hの結像側の面26Iとの間に隙間が生じる。このような構成により、第1のキャリッジ24の突条24H及び第2のキャリッジ26の突条26Hを、軸方向に互いに異なる方向からスクリュー14の螺条14Aに確実に当接させることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、本発明の駆動装置をフォーカシング用レンズ群6Aを駆動させるために適用した場合について説明したが、本発明は、これに限らず、他のレンズ群をズーミングのために駆動する場合や、フィルタ等を光軸方向に駆動する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 カメラ
2 カメラ本体
2A 制御部
2B 撮像素子
4 レンズ鏡筒
4A 鏡筒本体
6 レンズ保持部材
6A フォーカシング用レンズ群
8 ガイドポール
10 駆動装置
12 モータ
14 スクリュー
14A 螺条
16 取付ユニット
20 基部
20A 底板
20B 側壁
20C 横壁
20D 取付穴
22 軸部材
24 第1のキャリッジ
24A 回動部
24B 腕部
24C 挟持部
24D 突条部
24F 貫通孔
24G 傾斜部
24H 突条
26 第2のキャリッジ
26A 回動部
26B 腕部
26C 挟持部
26D 突条部
26F 貫通孔
26G 傾斜部
26H 突条
28 ばね部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7