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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】凝集塊生成の判定方法及び燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/30 20060101AFI20240201BHJP
   F23G 5/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F23G5/30 Q
F23G5/30 M
F23G5/30 P
F23G5/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020094631
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021188829
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤木 瞭
(72)【発明者】
【氏名】青木 七海
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-226756(JP,A)
【文献】特開2001-017859(JP,A)
【文献】特開2012-013252(JP,A)
【文献】特開2011-027281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00 - 5/50
G01N 25/00 - 25/72
G01N 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス燃料を燃焼する燃焼炉における凝集塊の生成を判定する凝集塊生成の判定方法であって、
前記バイオマス燃料を加熱して、燃料を完全燃焼して燃料灰とし、
前記燃料灰を固着成分と非固着成分とに分離し、
前記固着成分の質量及び前記非固着成分の質量を測定し、前記凝集塊の生成を判定する、
凝集塊生成の判定方法。
【請求項2】
前記固着成分と前記非固着成分との総質量と前記固着成分の質量とを比較して固着率を算出し、
前記固着率に基づいて前記凝集塊の生成を判定する請求項1に記載の凝集塊生成の判定方法。
【請求項3】
前記バイオマス燃料を800℃以上で加熱して燃料灰とする、請求項1又は請求項2に記載の凝集塊生成の判定方法。
【請求項4】
前記バイオマス燃料が開口可能な容器内で加熱される請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の凝集塊生成の判定方法。
【請求項5】
前記容器内から前記非固着成分を除去することによって、前記燃料灰を前記固着成分と前記非固着成分とを分離する請求項4に記載の凝集塊生成の判定方法。
【請求項6】
前記容器の開口部を下方に向けることで、前記非固着成分を除去する請求項4又は請求項5に記載の凝集塊生成の判定方法。
【請求項7】
流動層ボイラを備え、
前記流動層ボイラに、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の凝集塊生成の判定方法よって判定されたバイオマス燃料が供給される燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集塊生成の判定方法及び燃焼システムに関し、特に循環流動層ボイラを備えた燃焼システムに好適な凝集塊生成の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料確保のため、建設廃材系木質材料や木質系材料以外のバイオマス燃料や、廃タイヤや廃プラスチック等の廃棄物燃料を用いた発電需要が高まっている。このような発電機構に関する技術としては、燃焼対象物を燃焼すると共に飽和蒸気を生成する燃焼炉を備え、当該燃焼炉で生じる飽和蒸気を燃焼炉で生成した燃焼ガスで過熱してタービン駆動による発電に利用する、ボイラを用いた技術が挙げられる。このような技術の一例としては、石炭やバイオマス等の燃料を、800℃~1000℃程度の循環材(流動媒体)と流動化ガスとを含む流動層によって燃焼して飽和蒸気を生成する燃焼炉を備えた循環流動層ボイラ(以下、「CFBボイラ」と称することがある)が用いられている。
【0003】
一方、今後、石油資源やバイオマス燃料自体の枯渇により、低品位なバイオマス燃料等を用いる事態が多いに予測される。しかし、低品位なバイオマス燃料や廃棄物燃料には、例えば、Na、K等のアルカリ成分などの不純物が多く含まれている。また、一般に、循環材に用いられる珪砂にはシリカ(SiO2)が含まれており、燃料にアルカリ成分が含まれていると、燃料の燃焼中に、シリカとアルカリ成分の反応によって複合酸化物が生成されることが知られている。このため、燃料に多くのアルカリ成分などの不純物が含まれていると、複合酸化物存在に起因して凝集塊が発生し、循環材の流動不良が生じたり、燃焼炉内部に付着物が生じる原因になるおそれがある。
【0004】
前記複合酸化物に対する対策としては、例えば、流動層の粘度や試料片の硬度等に基づいて凝集物の生成を事前に予測する技術や、廃棄物の流動燃焼条件を制御して、凝集ガス成分の発生を抑制する技術が開発されている(例えば、下記特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-79418号公報
【文献】特開2012-13253号公報
【文献】特開2002-349819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の複合酸化物は800℃程度の融点を有する低溶融物質であり、当該低融点物質が燃焼炉中で溶融して循環材同士を接着又は循環材をコーティングすることで凝集塊が生成する。このような凝集塊の生成を抑制するためには、燃料投入前に、事前に燃料中のアルカリ濃度を測定し、アルカリ濃度が高い燃料に対してはアルカリ濃度の低い燃料を混合するなど燃焼炉に投入される燃料のアルカリ濃度を制御する手段などが考えられる。
【0007】
一方、燃料中のアルカリ濃度を測定するための手段としては、例えば、酸溶解法やICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES)等などが利用されている。しかし、これら分析法は燃料灰の必要量が多く、電気炉など大型の設備が必要であり、さらに燃料灰の生成に一週間以上の期間を要するなど、場所的、時間的、コスト的制限が大きい。
このため、特別な設備を有しない作業現場においてはバイオマス燃料中のアルカリ濃度を測定することが難しく、またその頻度を高めることも容易ではないため、より簡便に実施できる凝集塊生成の判定方法の開発が求められていた。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決すべく、簡便に実施可能な凝集塊生成の判定方法、及び当該判定方法により判定されたバイオマス燃料が供給される燃焼システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1> バイオマス燃料を燃焼する燃焼炉における凝集塊の生成を判定する凝集塊生成の判定方法であって、
前記バイオマス燃料を加熱して燃料灰とし、
前記燃料灰を固着成分と非固着成分とに分離し、
前記固着成分の質量及び前記非固着成分の質量を測定し、前記凝集塊の生成を判定する、
凝集塊生成の判定方法。
<2> 前記固着成分と非固着成分との総質量と前記固着成分の質量とを比較して固着率を算出し、
前記固着率に基づいて前記凝集塊の生成を判定する前記<1>に記載の凝集塊生成の判定方法。
<3> 前記バイオマス燃料を800℃以上で加熱して燃料灰とする、前記<1>又は<2>に記載の凝集塊生成の判定方法。
<4> 前記バイオマス燃料が開口可能な容器内で加熱される前記<1>~前記<3>のいずれかに記載の凝集塊生成の判定方法。
<5> 前記容器内から前記非固着成分を除去することによって、前記燃料灰を前記固着成分と前記非固着成分とを分離する前記<4>に記載の凝集塊生成の判定方法。
<6> 前記容器の開口部を下方に向けることで、前記非固着成分を除去する前記<4>又は前記<5>に記載の凝集塊生成の判定方法。
<7> 流動層ボイラを備え、
前記流動層ボイラに、前記<1>~前記<6>のいずれかに記載の凝集塊生成の判定方法よって判定されたバイオマス燃料が供給される燃焼システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便に実施可能な凝集塊生成の判定方法、及び当該判定方法により判定されたバイオマス燃料が供給される燃焼システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の判定方法の一例を示すフローチャートである。
図2】坩堝の反転による非固着成分の除去を説明するための概略図である。
図3】本実施形態の燃焼システムを示す概略図である。
図4】実施例における各サンプルにおけるアルカリ濃度と固着率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0013】
《凝集塊生成の判定方法》
本実施形態の凝集塊生成の判定方法は、バイオマス燃料を燃焼する燃焼炉における凝集塊の生成を判定する凝集塊生成の判定方法であって、バイオマス燃料を加熱して燃料灰とし(以下、「灰化工程」と称することがある。)、燃料灰を固着成分と非固着成分とに分離し(以下、「分離工程」と称することがある。)、固着成分の質量及び非固着成分の質量を測定し、凝集塊の生成を判定する(以下、「判定工程」と称することがある。)。
【0014】
本実施形態の判定方法によれば、バイオマス燃料を加熱して生成した燃料灰を、固着成分と非固着成分とに分離し、これらの質量に基づいて、当該バイオマス燃料をCFBボイラの燃焼炉などにおいて燃焼させた際における凝集塊の生成程度を判定することができる。本実施形態の判定方法は、酸溶解法やICP発光分光分析法など従前のアルカリ濃度測定法に比して、凝集塊の生成程度の判定率が同程度以上であるにも拘わらず、判定に必要な燃料灰の量が少ない。このため、本実施形態の判定方法は、燃料灰を生成するために用いられる電気炉のスケールダウンが可能であると共に燃料灰の生成のための時間を含め分析期間を例えば1日以内に短縮することができる。したがって、本実施形態の判定方法は従前のアルカリ濃度測定法を用いた方法に比して、実施場所の制限が少なく、判定に要する時間及びコストにも優れる。また、本実施形態の判定方法は、固着成分の質量及び非固着成分の質量を測定し、当該測定値を用いて凝集塊の生成を判定することができるため、簡便に凝集塊の生成程度を判定することができる。さらに、本実施形態の判定方法は、高度な測定手段などを用いる必要がないため、誰しもが容易に実施でき、また測定者間の測定誤差も小さい。
【0015】
(灰化工程)
灰化工程は、バイオマス燃料を加熱して燃料灰とする工程である。ここで、「灰」とは燃料を完全燃焼させた後の残分であり、具体的には、バイオマス燃料を燃焼させた後に残る無機質が燃料灰となる。また、バイオマス燃料が加熱されると、バイオマス燃料中のNa、K等のアルカリ成分とシリカ(SiO2)とが反応し低融点物質が生成する。当該低融点物質は、加熱により溶融し重力方向下方に移動し、容器等の壁面に固着した固着成分となる。一方、燃料灰中の低融点物質以外の成分は灰そのものであるため容器等に固着されず容易に除去可能な非固着成分となる。すなわち、燃料灰は固着成分と非固着成分とで構成されており、本実施形態の判定方法はこれら固着成分及び非固着成分の質量に基づいて凝集塊の生成程度を判定する。
【0016】
本実施形態の判定方法は、バイオマス燃料を用いる。バイオマス燃料とは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、木くずや間伐材の木質材料や、可燃性ごみなどの木質系材料以外の材料が挙げられる。木質材料は部位によってアルカリ濃度が異なり、例えば、葉、皮、根などには比較的NaやKなどのアルカリ濃度が高いものが多い。バイオマス燃料としては、例えば、木くずなど木質材料はペレット状に成形されたものを用いてもよいし、間伐材などを粉砕したチップ状のものを用いてもよい。ペレット状の燃料は、一般に種々の材料が混合されていることが多く、供給元によっては、チップ状の燃料に比して性状が安定していない場合もあるため、特に本実施形態の判定方法の対象として適している。
【0017】
本実施形態の判定方法は、固体粒子など他の素材を用いることなくバイオマス燃料のみを試料として用いて簡便に凝集塊の生成程度を判定できる。なお、本実施形態の判定方法はバイオマス燃料を主成分とする試料を用いることが好ましいが、必要に応じて試料にバイオマス燃料以外の他の材料(例えば、廃棄物燃料、循環材など)が含まれていてもよい。
【0018】
灰化工程においてバイオマス燃料の加熱は、特に限定されるものではないが、通常電気炉等の炉内にて、坩堝等の耐熱容器に載置されて加熱される。また、容器のサイズ、形状等は特に限定されるものではない。但し、後述するように簡便に固着成分と非固着成分とを分離する観点から、バイオマス燃料を開口可能な容器内で加熱することが好ましい。開口可能な容器としては、坩堝のように上側に開口部を有する容器や、蓋材などを有し閉塞可能であって蓋材などを開閉又は脱着することで開口可能な容器などが挙げられる。
【0019】
灰化工程における加熱条件は特に限定されるものではないが、固着成分の融点と燃焼炉の運転温度との観点から、バイオマス燃料を800℃以上で加熱して燃料灰とすることが好ましい。当該加熱温度としてさらに好ましくは800~1000℃である。また、加熱時間についても特に限定はないが、燃料灰を十分に生成させる観点から、バイオマス燃料の加熱時間が2~4時間程度であることが好ましい。灰化工程における加熱においては、例えば、JIS-M8812(石炭類及びコークス類-工業分析方法(特に6.1~6.4.1項を参照))に規定される方法に準拠して、815℃で恒量となるまで燃料を燃焼させてもよい。
【0020】
上述のように、本実施形態の判定方法は、酸溶解法やICP発光分光分析法など従前のアルカリ濃度測定法に比して、判定に必要な燃料灰の量が少ない。例えば、従前の酸溶解法等においては、凡そ0.5g程度の燃料灰が必要であったため100g程度のバイオマス燃料を用いることが必要であったが、本実施形態の判定方法においては、例えば、0.05g以下の燃料灰でも十分に判定が可能である。このため、灰分0.5%とした場合、例えば、バイオマス燃料の使用量としては、10g程度用いることができる。当該バイオマス燃料の使用量としては特に限定はないが、バイオマス燃料が多すぎると灰化するための時間を要し、また、バイオマス燃料が少なすぎると判定精度が低下するため、バイオマス燃料の使用量は10~75gが好ましい。
【0021】
灰化工程においては、バイオマス燃料の灰化をさせるための加熱に先立ち、バイオマス燃料中の水分を除去するために予備加熱を行ってもよい。予備加熱温度は特に限定されるものではないが、例えば、550~650℃程度で行うことができる。また、灰化工程は、バイオマス燃料の灰化後、分離工程前に燃料灰を冷却してもよい。当該冷却は、急冷による固着成分の破壊を抑制するため、例えば、室温下で行うことが好ましい。
【0022】
(分離工程)
分離工程は、燃料灰を固着成分と非固着成分とに分離する工程である。固着成分と非固着成分との分離は、判定工程において固着成分及び非固着成分の質量を測定できれば特に限定はないが、例えば、容器内から非固着成分を除去することによって、燃料灰を固着成分と固着成分とを分離することができる。
【0023】
非固着成分の除去手段は、特に限定はなく、例えば、吸引等の手段によっても実施可能であるが、固着成分が破壊されないように極力外力を与えることなく非固着成分のみを除去することが好ましい。固着成分に外力が加わるのを抑制しつつ非固着成分を除去する方法としては、例えば、容器の開口部を下方に向けることで、非固着成分を除去する方法を挙げることができる。すなわち、容器の開口部を重力方向下方に向けて非固着成分を落下させることで、固着成分の破壊を抑制しつつ簡便に容器内の非固着成分のみを容器内から除去することができる。なお、容器の開口部を下方に向ける際には、勢いをつけず、容器を上下反転させて開口部を重力方向下方に向け、容器に固着していない非固着成分を容器から落下させることが好ましい。
【0024】
(判定工程)
判定工程は、固着成分の質量及び非固着成分の質量を測定し、前記凝集塊の生成を判定する工程である。固着成分及び非固着成分の質量の測定方法は特に限定はなく既知の方法を用いることができる。例えば、分離工程において、容器の開口部を下方に向け非固着成分を除去する場合、容器から落下した非固着成分の質量を測定すると共に、容器から剥がした固着成分の質量を測定してもよいし、灰化後非固着成分除去前の容器の質量(固着成分及び非固着成分の質量を含む)を測定し、非固着成分の除去後に、非固着成分除去前の容器の質量から非固着成分の質量と予め測定しておいた容器の質量とを除することで、固着成分の質量を算出してもよい。
【0025】
判定工程においては、測定した固着成分の質量及び非固着成分の質量に応じて、凝集塊の生成程度を判定する。当該生成程度の判定基準は固着成分の質量及び非固着成分の質量を用いたものであれば特に限定はなく、例えば、固着成分の質量及び非固着成分の質量との差に基づいて凝集塊の生成を判定してもよいし、下記のように固着成分の質量と非固着成分の質量とを比較して固着率を算出し、当該固着率に基づいて凝集塊の生成を判定してもよい。固着率を利用する場合、具体的には下記のように固着成分と非固着成分との総質量と前記固着成分の質量とを比較して固着率を算出し、前記固着率に基づいて前記凝集塊の生成を判定することができる。
【0026】
固着率=固着成分の質量÷(固着成分と非固着成分との総質量)
【0027】
固着率や固着成分の質量及び非固着成分の質量との差に基づいて凝集塊の生成を判定する際、固有の閾値を設定して、凝集塊の生成程度を判断することができる。燃料灰中の固着成分量はバイオマス燃料中のアルカリ濃度に比例して変動するため、前記閾値の設定は、例えば、予め測定した固着率と凝集塊の生成程度との直接の関係を示すデータに基づいて決定してもよいし、固着率とバイオマス燃料中のアルカリ濃度との関係を示すデータに基づいて決定してもよい。固着率の閾値は一点である必要はなく、例えば、複数の閾値を設定してもよく、バイオマス燃料中のアルカリ濃度や凝集塊の生成程度を段階的に判定してもよい。
【0028】
以下、図1を用いて本実施形態の判定方法の流れについて説明する。図1は、本実施形態の判定方法の一例を示すフローチャートである。図1において、ステップS1~S3が灰化工程、ステップS4が分離工程、ステップS5~S6が判定工程に該当する。
【0029】
本実施形態の判定方法は、まず、空焼きした坩堝内にペレット状のバイオマス燃料を投入し、当該坩堝を600℃に設定された電気炉内に載置し予備加熱処理を施す(ステップS1)。当該予備加熱処理においてバイオマス燃料内の水分が除去される。なお、例えば、坩堝内には灰化後の灰量が約0.05gとなるように10gのバイオマス燃料が投入される(灰分0.5%)。
【0030】
ついで、坩堝内から蒸気の発生がなくなったことを確認した後、電気炉内の温度を815℃に設定し灰化処理に移行する(ステップS2)。当該灰化処理は約2~4時間とし、バイオマス燃料が完全に燃焼して燃料灰となるまで行われる。
【0031】
バイオマス燃料の灰化処理後、電気炉内から坩堝を取り出し室温にて冷却処理を行う(ステップS3)。バイオマス燃料中にアルカリ成分が含まれていると燃料の燃焼中に低溶融成分が生成するため、燃料灰中には一定量の固着成分が生成する。冷却処理時間は特に限定はないが、坩堝を取り扱い容易な程度な温度にまで、例えば、坩堝の温度が50℃程度以下になるまで行われる。
【0032】
冷却処理後、坩堝を上下反転し、非固着成分を落下させて非固着成分を固着成分と分離する(分離処理:ステップS4)。坩堝の反転は、勢いをつけず、坩堝を回転することにより行うことができる。
【0033】
坩堝の反転による非固着成分の除去について図を用いて説明する。図2は、坩堝の反転による非固着成分の除去を説明するための概略図である。図2(A)に示すように冷却処理後の坩堝内側には燃料灰が生成されている。ついで、図2(B)に示すように、坩堝を上下反転させて坩堝の開口部を重力方向下側に向けると、図2(C)に示すように、坩堝内で溶融固着していない非固着成分が坩堝から落下する。ここで、バイオマス燃料の燃焼(灰化処理)において生成した低溶融成分は、加熱中、溶融状態となり坩堝の壁面側に移動し固着成分となる。冷却処理後の坩堝内においては、非固着成分と固着成分とは層状に分離しており、特に固着成分は坩堝の壁面側に集中して生成している。このため、坩堝を上下反転させることで、非固着成分のみを坩堝から落下させることができるため、容易に固着成分と非固着成分とを分離させることができる。
【0034】
分離処理後、坩堝から落下した非固着成分の質量(x)を測定し記録する。さらに、坩堝内に固着した固着成分を剥がして採集し、固着成分の質量(y)を測定し、固着成分の質量(y)と燃料灰の質量(即ち、非固着成分と固着成分との総量(x+y))とから固着率(x/(x+y))を算出する(測定・算出処理:ステップS5)。
【0035】
ステップS5で得られた固着率と閾値とを比較し、試料として用いたバイオマス燃料を用いた場合の凝集塊の生成程度を判定する(判定処理:ステップS6)。当該判定処理は、例えば、固着率が所定の閾値以上であると判断した場合、燃料の燃焼中に許容量以上の凝集塊が生成するリスクがあると判定する。許容量以上の凝集塊が発生すると判定されたバイオマス燃料に対しては、例えば、低アルカリ濃度のバイオマス燃料を混合し、アルカリ濃度を低下させた燃料として用いることができる。
【0036】
《燃焼システム》
本実施形態の判定方法によって事前に凝集塊の生成程度が判定されたバイオマス燃料は燃焼システムに用いることができる。当該燃焼システムとしては、例えば、流動層ボイラを備えた燃焼システムに用いることができる。また、当該燃焼システムは、バイオマス燃料を専焼するシステムであることが好適である。これら燃焼システムに投入されるバイオマス燃料は、本実施形態の判定方法によって凝集塊の生成するリスクが許容量以上であると判定された場合には、低アルカリ濃度のバイオマス燃料などを混合しアルカリ濃度を低下させた後に用いることが好ましい。一方、凝集塊の生成するリスクが許容量以下であると判定された場合には、判定に用いられたバイオマス燃料をそのまま用いてもよい。
【0037】
本実施形態の判定方法によって事前に凝集塊の生成程度が判定されたバイオマス燃料を使用可能な燃焼システムの一例について図を用いて説明する。図3は、本実施形態の燃焼システムを示す概略図である。以下においては、燃焼炉として循環流動層ボイラ(CFB)を備えた燃焼システムを例に説明する。
【0038】
図3に示すように、燃焼システム100は、バイオマス燃料が供給され、炉内にてバイオマス燃料を専焼する燃焼炉120と、バイオマス燃料を燃焼した燃焼ガスから循環材を分離するサイクロン125と、燃焼ガスの熱を回収する熱回収部130と、を備えている。さらに、燃焼システム100は、燃焼炉120と熱回収部130との下流に、熱回収部130から排出された燃焼ガス中の有害物質を除去するバグフィルター140を備えている。また、燃焼炉120には、炉内にバイオマス燃料を供給する燃料供給器122が備えられている。
【0039】
燃焼炉120は、縦長の筒状に構成され、燃料供給器122から供給されるバイオマス燃料を炉内にて燃焼する。燃焼炉120は、バイオマス燃料を流動層120Aで流動させながら燃焼する流動層炉である。また、燃焼炉120は、後述するようにサイクロン125によって所定粒径以上の固形分を含む循環材が燃焼炉120に戻される循環流動層炉である。燃焼炉120内の温度は特に限定されないが、燃焼ガスの温度を800~1000℃程度となるように設定することができる。
【0040】
燃料供給器122から燃焼炉120に供給されたバイオマス燃料が燃焼されると、燃焼ガスが生成される。上述のように、燃焼ガスには、燃焼によって生じる灰や循環材などの固体粒子が含まれており、燃焼炉120にて生成した燃焼ガスは、これらを含んだままサイクロン125に送られる。
【0041】
サイクロン125は、燃焼炉120から排出される所定の粒径以上の固形分を含む循環材を、燃焼ガスから分離して燃焼炉120に戻す固気分離装置である。サイクロン125は、燃焼ガスから循環材を分離して燃焼炉120内に戻すと共に、これら固形分が分離された燃焼ガスを後段の熱回収部130に送る。サイクロン125による固形分の選別粒径は、特に限定されない。
【0042】
サイクロン125から排出された燃焼ガスは、熱回収部130に送られる。熱回収部130内には、図示を省略する燃焼ガスの流路となる煙道や、過熱器、節炭器、ガスエアヒータなどが設置されており、煙道を通過する燃焼ガスから熱を回収できるように構成されている。同様に、過熱器や節炭器には図示を省略する蒸気管が設置されている。蒸気管内には、燃焼炉120の熱によって生成された飽和蒸気が流通しており、燃焼ガスと過熱器等との熱交換により飽和蒸気が過熱される。熱回収部130から排出された燃焼ガスは、熱回収部130の下流に設置されたバグフィルター140へと排出される。また、熱回収部130により過熱された飽和蒸気は、例えば、発電タービンの駆動などに用いることができる。バグフィルター140は、燃焼ガスを燃焼システム100外に排出する前に、燃焼ガス中の溶融塩や固体粒子などを集塵して浄化する装置である。
【0043】
バグフィルター140から排出された燃焼ガスは、排ガスとして必要に応じて下流側装置に送られたのち、設備外に排出される。
【0044】
本実施形態の燃焼システムは、本実施形態の判定方法において凝集塊の生成が許容量以下であると判定されたバイオマス燃料が投入されるため、流動層120Aの流動性が良好である。また、凝集塊の固着や各設備の閉塞の発生が抑制されており、燃焼効率に優れる。
【0045】
上述の発明の実施形態を通じて説明された実施の態様は、用途に応じて適宜組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができる。また、本発明は上述の実施形態の記載に限定されるものではない。
【実施例
【0046】
以下、実施例を用いて本発明について具体的に説明する。但し、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
【0047】
まず、開口部を有する坩堝(容量15.4ml)を空焼きした坩堝の重さ(質量)を測定した。次いで、ペレット状のバイオマス燃料を投入し、当該坩堝を電気炉内に載置し予備加熱処理を施した。予備加熱処理は600℃で行いバイオマス燃料内の水分を除去した。バイオマス燃料はアルカリ濃度(Na)の異なるサンプル1~5を準備し、各々灰化後の灰量が約0.05gとなるように10g(灰分0.5%)。なお、各サンプルのアルカリ濃度(Na)の分析は酸溶解法により行った。サンプル1として高ナトリウム濃度のバイオマス燃料を用い、サンプル2~4としては低ナトリウム濃度の燃料を用いた。
【0048】
ついで、坩堝内から蒸気の発生がなくなったことを確認した後、電気炉内の温度を815℃に設定し灰化処理を行った。当該灰化処理は約4時間とし、バイオマス燃料が完全に燃焼して燃料灰となったことを確認した。バイオマス燃料の灰化処理後、電気炉内から坩堝を取り出し室温下で15~30分間放置し坩堝を冷却した。
【0049】
冷却後、坩堝を上下反転し、非固着成分を落下させて非固着成分を固着成分と分離した。坩堝の反転は、勢いをつけず、坩堝を回転することにより行った。
【0050】
分離処理後、坩堝から落下した非固着成分の質量(x)を測定し記録した。さらに、坩堝内に固着した固着成分を剥がして採集し、固着成分の質量(y)を測定した。ついで、固着成分の質量(y)と燃料灰の質量(非固着成分と固着成分との総量(x+y)とから固着率(x/(x+y))を算出した。各サンプルのアルカリ濃度と固着率との関係を図4に示す。図4は、実施例における各サンプルにおけるアルカリ濃度と固着率との関係を示すグラフである。図4に示すようにサンプルの固着率と酸溶解法によるアルカリ濃度(Na)とは高い精度で相関関係を有していることが分かる。このため、実施例の判定方法によれば、酸溶解法によるアルカリ濃度を用いた凝集塊発生のリスク予測結果と同等の結果が得られることが分かる。
【0051】
以上から、本実施形態の判定方法によれば、酸溶解法によるアルカリ濃度を分析した場合と同等の精度で、バイオマス燃料中のアルカリ成分に起因する凝集塊の発生程度を判定できることが分かった。
【符号の説明】
【0052】
100…燃焼システム、120…燃焼炉、122…燃料供給器、130…熱回収部、140…バグフィルター、125…サイクロン
図1
図2
図3
図4