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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】衝撃吸収装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/02 20060101AFI20240201BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240201BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240201BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B60R21/02
F16F7/00 D
F16F7/00 J
F16F15/02 B
F16F15/08 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020101045
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021194952
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 征幸
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-221923(JP,A)
【文献】特開2019-172037(JP,A)
【文献】特開2006-151197(JP,A)
【文献】特開2009-257525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/02
F16F 7/00,15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を構成する被取付対象に取り付けられ、作動時に衝撃を緩和させる衝撃吸収装置であって、
前記被取付対象に対して固定されたベース部と、
前記ベース部の側に退避した収納状態と、前記ベース部から突出した突出状態とを可逆的に切り替え可能に前記ベース部に取り付けられた可撓性を有する衝撃吸収部と、
前記衝撃吸収部を駆動し、前記収納状態と前記突出状態とを可逆的に切り替える駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記衝撃吸収部を作動させる際に該衝撃吸収部を少なくとも前記収納状態から前記突出状態に切り替え、
前記衝撃吸収部は、前記ベース部の設置面に対して第1方向に延伸し且つ該第1方向に直交する方向に間隔をおいて設定された複数の第1回動軸にそれぞれ回動自在に取り付けられた、複数列の衝撃吸収メンバーを含む、
衝撃吸収装置。
【請求項2】
前記複数列の衝撃吸収メンバーの各々は、
前記収納状態において前記設置面に沿った倒伏姿勢に維持され、
前記収納状態から前記突出状態に切り替えられる際には、前記第1回動軸を中心とした所定の起動方向に回動駆動されることで前記設置面から起立した起立姿勢に前記倒伏姿勢から切り替えられ、
前記突出状態から前記収納状態に切り替えられる際には、前記第1回動軸を中心とした前記起動方向とは反対の倒伏方向に回動駆動されることで前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に切り替えられる、
請求項1に記載の衝撃吸収装置。
【請求項3】
前記衝撃吸収メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられた際、前記第1回動軸周りの前記起動方向への回動を規制する規制部を備える、
請求項2に記載の衝撃吸収装置。
【請求項4】
前記衝撃吸収部は、前記衝撃吸収メンバーを起立させる、可撓性を有する複数の補助メ
ンバーであって、前記第1回動軸に交差する第2回動軸周りに回動自在に前記設置面に取り付けられた複数の補助メンバーを更に含み、
前記複数の補助メンバーの各々は、
前記収納状態において、起立させる対象となる前記衝撃吸収メンバーの一部が前記補助メンバーの少なくとも一部に上方から覆い被さるように前記設置面に沿った前記倒伏姿勢に維持され、
前記収納状態から前記突出状態に切り替えられる際には、前記第2回動軸を中心とした所定の起動方向に回動駆動されることで前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられると共に、
前記突出状態から前記収納状態に切り替えられる際には、前記第2回動軸を中心とした前記起動方向とは反対の前記倒伏方向に回動駆動されることで前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に切り替えられ、
前記補助メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられる際に、起立させる対象となる前記衝撃吸収メンバーを押し上げることで、該衝撃吸収メンバーを前記第1回動軸の前記起動方向へと回動させる、
請求項3に記載の衝撃吸収装置。
【請求項5】
前記補助メンバーは、前記起立姿勢に切り替えられた際に、起立させる対象となる前記衝撃吸収メンバーと当接する第1当接部を有し、該衝撃吸収メンバーが前記倒伏方向に回動することを規制する、
請求項4に記載の衝撃吸収装置。
【請求項6】
前記補助メンバーは、前記起立姿勢に切り替えられた際に、起立させる対象となる前記衝撃吸収メンバーに隣接する他列の前記衝撃吸収メンバーと当接する第2当接部を有する、
請求項5に記載の衝撃吸収装置。
【請求項7】
前記第1回動軸と前記第2回動軸とがなす角度が鋭角であり、
前記衝撃吸収メンバーは、前記補助メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられるまでの過程で、該補助メンバーの前記第2当接部と干渉することを抑制する溝部を有する、
請求項6に記載の衝撃吸収装置。
【請求項8】
前記複数の補助メンバーの少なくとも一部は、起立対象の前記衝撃吸収メンバーと、該衝撃吸収メンバーに隣接する他列の前記衝撃吸収メンバーの間に配置された中間補助メンバーであり、
前記中間補助メンバーが前記起立姿勢の状態で、前記起立対象の前記衝撃吸収メンバーと該中間補助メンバーの前記第1当接部が当接し、且つ、前記他列の前記衝撃吸収メンバーと該中間補助メンバーの前記第2当接部が当接する、
請求項6または請求項7に記載の衝撃吸収装置。
【請求項9】
前記衝撃吸収部は、前記補助メンバーに連結されると共に少なくとも一部に可撓性を有し、前記駆動部によって駆動される一又は複数の駆動力伝達メンバーを更に含み、
前記駆動部が前記衝撃吸収部を作動させる際に、前記駆動力伝達メンバーが駆動されることで前記補助メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられると共に、該補助メンバーに付随して前記衝撃吸収メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられる、
請求項4から請求項8の何れか一項に記載の衝撃吸収装置。
【請求項10】
前記衝撃吸収部は、単一の前記駆動力伝達メンバーを含み、該駆動力伝達メンバーに前
記複数の補助メンバーが連結されている、
請求項9に記載の衝撃吸収装置。
【請求項11】
前記駆動力伝達メンバーは、板状部を有し、該板状部が前記設置面と平行な状態を維持しつつ前記駆動部に駆動される、
請求項9または請求項10に記載の衝撃吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に使用される衝撃吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に使用され、事故等によって生じる衝撃を吸収する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両のバンパーに生じる衝撃を吸収することでバンパーに衝突した歩行者等を保護するエネルギー吸収装置が記載されている。このエネルギー吸収装置では、ベースに接続され衝撃を吸収する複数のフィンの間に間隙が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第10046723号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衝撃吸収装置では、衝撃を吸収する部材が撓むことが可能な領域を形成する必要がある。例えば、特許文献1に記載されたエネルギー吸収装置では、複数のフィンの間に間隙が当該領域に相当する。衝撃吸収装置は、当該領域を形成すると全体として嵩張った構造となるため、車両においては取り付けられる位置が限られてしまい、配置位置の自由度が低下してしまう。
【0005】
本開示では、上記した問題に鑑み、配置位置の自由度を向上可能な衝撃吸収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示では、収納状態と突出状態とを可逆的に切り替え可能な衝撃吸収部を設けた。
【0007】
具体的には、本開示は、車両を構成する被取付対象に取り付けられ、作動時に衝撃を緩和させる衝撃吸収装置であって、前記被取付対象に対して固定されたベース部と、前記ベース部の側に退避した収納状態と、前記ベース部から突出した突出状態とを可逆的に切り替え可能に前記ベース部に取り付けられた可撓性を有する衝撃吸収部と、前記衝撃吸収部を駆動し、前記収納状態と前記突出状態とを可逆的に切り替える駆動部と、を備え、前記駆動部は、前記衝撃吸収部を作動させる際に該衝撃吸収部を少なくとも前記収納状態から前記突出状態に切り替える。
【0008】
上記衝撃吸収装置は、衝撃吸収部が収納状態と突出状態に切り替え可能であるので、非作動時では衝撃吸収部が収納状態を維持することで嵩張ることを防ぐことができ、以て、配置の自由度が向上する。また、衝撃吸収装置は、衝撃吸収部が可撓性を有しているため、作動後も元の形状に戻ることができ、更に、突出状態と収納状態に切り替え可能であるので繰り返し使用可能である。
【0009】
上記衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収部は、ベース部の設置面に対して第1方向に延伸し且つ該第1方向に直交する方向に間隔をおいて設定された複数の第1回動軸にそれぞれ回動自在に取り付けられた、複数列の衝撃吸収メンバーを含み、前記複数列の衝撃吸収メンバーの各々は、前記収納状態において前記設置面に沿った倒伏姿勢に維持され、前記収納状態から前記突出状態に切り替えられる際には、前記第1回動軸を中心とした所定
の起動方向に回動駆動されることで前記設置面から起立した起立姿勢に前記倒伏姿勢から切り替えられ、前記突出状態から前記収納状態に切り替えられる際には、前記第1回動軸を中心とした前記起動方向とは反対の前記倒伏方向に回動駆動されることで前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に切り替えられてもよい。このような構成の衝撃吸収装置によれば、収納状態では衝撃吸収メンバーを倒伏姿勢とし、突出状態では衝撃吸収メンバーを起立姿勢とすることで収納状態において衝撃吸収メンバーが嵩張るのを防ぐことができる。
【0010】
上記衝撃吸収装置は、前記衝撃吸収メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられた際、前記第1回動軸周りの前記起動方向への回動を規制する規制部を備えていてもよい。これにより、衝撃吸収装置は、衝撃吸収メンバーを起立姿勢に確実に切り替えることができる。
【0011】
上記衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収部は、前記衝撃吸収メンバーを起立させる、可撓性を有する複数の補助メンバーであって、前記第1回動軸に交差する第2回動軸周りに回動自在に設置面に取り付けられた複数の補助メンバーを更に含み、前記複数の補助メンバーの各々は、前記収納状態において、起立させる対象となる前記衝撃吸収メンバーの一部が前記補助メンバーの少なくとも一部に上方から覆い被さるように前記設置面に沿った倒伏姿勢に維持され、前記収納状態から前記突出状態に切り替えられる際には、前記第2回動軸を中心とした所定の起動方向に回動駆動されることで前記倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられると共に、前記突出状態から前記収納状態に切り替えられる際には、前記第2回動軸を中心とした前記起動方向とは反対の前記倒伏方向に回動駆動されることで前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に切り替えられ、前記補助メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられる際に、起立させる対象となる前記衝撃吸収メンバーを押し上げることで、該衝撃吸収メンバーを前記第1回動軸の起動方向へと回動させてもよい。このような構成の衝撃吸収部によれば、収納状態では補助メンバーを倒伏姿勢とし、突出状態では補助メンバーを起立姿勢とすることで収納状態において補助メンバーが嵩張るのを防ぐことができる。
【0012】
上記衝撃吸収装置において、前記補助メンバーは、前記起立姿勢に切り替えられた際に、起立させる対象となる前記衝撃吸収メンバーと当接する第1当接部を有し、該衝撃吸収メンバーが前記倒伏方向に回動することを規制してもよい。このような構成の衝撃吸収装置によれば、起立姿勢の衝撃吸収メンバーに力がかかった場合に衝撃吸収メンバーを起立姿勢に維持できる。
【0013】
上記衝撃吸収装置において、前記補助メンバーは、前記起立姿勢に切り替えられた際に、起立させる対象となる前記衝撃吸収メンバーに隣接する他列の前記衝撃吸収メンバーと当接する第2当接部を有していてもよい。このような構成の衝撃吸収装置によれば、起立姿勢の衝撃吸収メンバーに力がかかった場合であっても衝撃吸収メンバーを起立姿勢に維持できる。
【0014】
上記衝撃吸収装置において、前記第1回動軸と前記第2回動軸とがなす角度が鋭角であり、前記衝撃吸収メンバーは、前記補助メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられるまでの過程で、該補助メンバーの第2当接部と干渉することを抑制する溝部を有していてもよい。このような構成の衝撃吸収装置によれば、補助メンバーによって衝撃吸収メンバーを倒伏姿勢から起立姿勢に確実に切り替えることができる。
【0015】
上記衝撃吸収装置において、前記複数の補助メンバーの少なくとも一部は、起立対象の前記衝撃吸収メンバーと、該衝撃吸収メンバーに隣接する他列の前記衝撃吸収メンバーの間に配置された中間補助メンバーであり、前記中間補助メンバーが前記起立姿勢の状態で、前記起立対象の前記衝撃吸収メンバーと該中間補助メンバーの前記第1当接部が当接し
、且つ、前記他列の前記衝撃吸収メンバーと該中間補助メンバーの前記第2当接部が当接してもよい。このような構成の衝撃吸収装置によれば、起立姿勢の衝撃吸収メンバーに力がかかった場合であっても衝撃吸収メンバーを起立姿勢に維持できる。
【0016】
上記衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収部は、前記補助メンバーに連結されると共に少なくとも一部に可撓性を有し、前記駆動部によって駆動される一又は複数の駆動力伝達メンバーを更に含み、前記駆動部が前記衝撃吸収部を作動させる際に、前記駆動力伝達メンバーが駆動されることで前記補助メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられると共に、該補助メンバーに付随して前記衝撃吸収メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられてもよい。このように、駆動力伝達メンバーは複数又は1つのみ設けてもよい。
【0017】
上記衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収部は、単一の前記駆動力伝達メンバーを含み、該駆動力伝達メンバーに前記複数の補助メンバーが連結されていてもよい。このように、駆動力伝達メンバーは1つのみ設けてもよい。
【0018】
上記衝撃吸収装置において、前記駆動力伝達メンバーは、板状部を有し、該板状部が前記設置面と平行な状態を維持しつつ前記駆動部に駆動されてもよい。このような構成の衝撃吸収装置によれば、駆動力伝達メンバーの板状部で乗員の体の一部を受け止めることができ、乗員を適切に保護できる。
【0019】
また、上記衝撃吸収装置において、前記衝撃吸収部を複数備え、前記ベース部の設置面には複数の孔が形成されており、前記複数の衝撃吸収部の各々は、前記複数の孔の各々に設置されており、前記収納状態において、前記衝撃吸収部は、前記孔の内部に格納されており、前記突出状態において、前記衝撃吸収部は、前記孔から突出しており、前記駆動部は、前記衝撃吸収部の内部に流体を供給することによって該衝撃吸収部を膨張させて前記孔から突出した前記突出状態に切り替えてもよい。なお、流体は、圧縮空気や水等の所定の液体であってもよい。
【0020】
上記衝撃吸収装置において、前記設置面は、車室の内装を形成する内装ライニングであり、複数の前記衝撃吸収部の各々は、前記孔から前記車両に搭乗する乗員に向かって突出するように配置されていてもよい。このような構成の衝撃吸収装置は、車室内に配置することができため、配置の自由度を向上できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の技術によれば、衝撃吸収装置の配置位置の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その1)である。
図1B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その2)である。
図2A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その1)である。
図2B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その2)である。
図3A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その3)である。
図3B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その4)である。
図4A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その3)である。
図4B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その4)である。
図5A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その5)である。
図5B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その6)である。
図6A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その5)である。
図6B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その6)である。
図7】実施形態1に係る衝撃吸収装置のブロック図である。
図8】実施形態1に係る衝撃吸収装置の制御部が実行する処理に関するフローチャートである。
図9】実施形態2に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その1)である。
図10】実施形態2に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る衝撃吸収装置について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、請求項によってのみ限定される。
【0024】
<実施形態1>
実施形態1に係る衝撃吸収装置について説明する。本実施形態に係る衝撃吸収装置は、自動車等の車両に搭載され、当該車両に搭乗している乗員を保護する装置として例示される。衝撃吸収装置は、車両を構成する被取付対象に取り付けられ、作動時に乗員を保護する。なお、車両を構成する被取付対象としては、例えば、ピラーや天井等の車体を構成する構造物や、ダッシュボーやハンドル等の車体を構成する構造物に固定されるものが挙げられる。衝撃吸収装置は、このような被取付対象に取り付けられることによって車両に対して固定される。
【0025】
次に、図1A図2Bに基づいて、本実施形態に係る衝撃吸収装置10について詳細に説明する。図1A図1Bは、本実施形態に係る衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す斜視図である。図2A図2Bは、本実施形態に係る衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す平面図である。衝撃吸収装置10は、車両の被取付対象に取り付けられるベース部11と、ベース部11の表面(「設置面」の一例)側に取り付けられた衝撃吸収部12を備える。ベース部11は、長方形の板状形状を有し、表面側に衝撃吸収部12が配置されており、裏面側が被取付対象に取り付けられている。以降では、図1A図2Bに示すように、ベース部11の長辺に沿った方向をX軸とし、ベース部11の短辺に沿った方向をY軸とし、X軸およびY軸のいずれにも直交する方向(ベース部の表面および裏面に直交する方向)をZ軸とする。衝撃吸収装置10は、Z軸方向に位置する保護対象である乗員を保護するための装置である。なお、X軸に沿った方向を行列の「行」とし、Y軸に沿った方向を行列の「列」とする。
【0026】
衝撃吸収部12は、全体的に可撓性を有しており、車両に事故等が生じて乗員に慣性力が生じて当該乗員が衝突した場合に変形することで、当該乗員に対してかかる力(荷重)を吸収する。これにより、衝撃吸収部12は、乗員を保護する。衝撃吸収部12は、乗員が搭乗する車室側に突出可能に構成されている。より具体的には、衝撃吸収部12は、車室からベース部11の側に退避した収納状態と、ベース部11から車室の側に突出した突出状態とを可逆的に切り替え可能に構成されている。図1A図2Bに示す状態では、衝撃吸収部12は収納状態である。
【0027】
衝撃吸収部12は、衝撃吸収メンバー20と、フィン21(「補助メンバー」の一例)と、天板部22(「駆動力伝達メンバー」の一例)とを含んでいる。なお、図1Aおよび図2Aでは、説明のために天板部22の図示は省略している。
【0028】
衝撃吸収メンバー20は、ゴム等で形成され、可撓性を有している。衝撃吸収メンバー20は、X軸方向に沿った方向が長手方向となる形状(X軸方向に一体になって延在する形状)を有し、Y軸方向に3列で3個配置されている。衝撃吸収メンバー20は、ベース部11の表面に対してX軸に沿った方向(「第1方向」の一例)に延伸する回動軸20A(「第1回動軸」の一例)に対して回動自在となるようにベース部11の表面側に取り付けられている。図1Aおよび図2Aにおいて、回動軸20Aを一点鎖線で表している。3個の衝撃吸収メンバー20の各回動軸20Aは、各衝撃吸収メンバー20が互いに干渉することなく動作可能なようにY軸に沿った方向(「第2方向」の一例)に間隔をおいて設定されている。なお、以降では、3個が3列に配置された衝撃吸収メンバーを複数列の衝撃吸収メンバー20と称する場合がある。このように、衝撃吸収部12は、複数列の衝撃吸収メンバー20を含む。
【0029】
複数列の衝撃吸収メンバー20の各々は、図1Aに示すように、収納状態においてベース部11の表面に沿った倒伏姿勢に維持されている。複数列の衝撃吸収メンバー20の各々は、収納状態から突出状態に切り替えられる際には、回動軸20Aを中心とした起動方向に回動駆動されることでベース部11の表面から起立した起立姿勢に倒伏姿勢から切り替えられる。衝撃吸収メンバー20の起動方向は、X軸の正の方向に向かって見た場合に右回りである。また、複数列の衝撃吸収メンバー20の各々は突出状態から収納状態に切り替えられる際には、回動軸20Aを中心とした起動方向とは反対の倒伏方向に回動駆動されることで起立姿勢から倒伏姿勢に切り替えられる。衝撃吸収メンバー20の倒伏方向は、X軸の正の方向に向かって見た場合に左回りである。このように、複数列の衝撃吸収メンバー20の各々は、収納状態と突出状態とに可逆的に切り替え可能に構成されている。
【0030】
フィン21は、ゴム等で形成され、可撓性を有している。フィン21は、駆動部からの動力を衝撃吸収メンバー20に伝えることで衝撃吸収メンバー20を起立させる。本実施形態では、1個の衝撃吸収メンバー20に対して4個のフィン21が配置されている。すなわち、フィン21は、X軸に沿った方向に4行、Y軸に沿った方向に3列の合計12個配置されている。複数のフィン21は、回動軸20Aに交差する回動軸21A(「第2回動軸」の一例)周りにベース部11の表面に取り付けられている。図2Aにおいて、1行2列目のフィン21の回動軸21Aを一点鎖線で表している。なお、各フィン21の回動軸21Aは、互いに平行である。複数のフィン21は、回動軸21A周りに回動自在である。
【0031】
複数のフィン21の各々は、収納状態において、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20の一部がフィン21の少なくとも一部に上方から覆い被さるようにベース部11の表面に沿った倒伏姿勢に維持されている。なお、複数のフィン21の各々は、同じ列に配置されている衝撃吸収メンバー20を起立させる。複数のフィン21の各々は、収納状態から突出状態に切り替えられる際には、回動軸21Aを中心とした起動方向に回動駆動されることで倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられる。フィン21の起動方向は、Y軸の正の方向に向かって見た場合に左回りである。また、複数のフィン21の各々は、突出状態から収納状態に切り替えられる際には、回動軸21Aを中心とした起動方向とは反対の倒伏方向に回動駆動されることで起立姿勢から倒伏姿勢に切り替えられる。フィン21の倒伏方向は、Y軸の正の方向に向かって見た場合に右回りである。フィン21が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられる際に、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20を押し上げることで、衝撃吸収メンバー20を回動軸20Aの起動方向へと回動させることができ
る。なお、衝撃吸収メンバー20の回動軸20Aとフィン21の回動軸21Aとがなす角度は、直角ではなく、鋭角であることが好ましい。
【0032】
図1B及び図2Bに示す天板部22は、ゴム等で形成され、可撓性を有している。天板部22は、駆動部によって駆動されることで当該駆動部からの動力を各フィン21に伝えるために設けられている。天板部22は、同じ列のフィン21同士、すなわち、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20が同じである各フィン21に連結される連結部22A~22Cを有する。各連結部22A~22Cは、X軸に沿った方向が長手方向となる形状を有している。連結部22Aは、第1列目の各フィン21に連結される。連結部22Bは、第2列目の各フィン21に連結される。連結部22Cは、第3列目の各フィン21に連結される。これにより、天板部22は、全てのフィン21に連結される。
【0033】
また、天板部22は、各連結部22A~22Cを接続して一体的とする一対の接続部22Dを有する。各接続部22Dは、X軸に沿った方向の両端部で各連結部22A~22Cを接続する。これによって、天板部22は、駆動部の動力を全てのフィン21に伝えることができる。このように、本実施形態においては、衝撃吸収部12は、連結部22A、22B、22Cと接続部22Dが一体的に形成された単一の天板部22を含んでいる。
【0034】
衝撃吸収装置10の駆動部が衝撃吸収部12を作動させる際に、天板部22が駆動されることで各フィン21が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられると共に、各フィン21に付随して衝撃吸収メンバー20が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられる。これによって、本実施径形態に係る衝撃吸収装置10は、駆動部によって、衝撃吸収部12を作動させる際に衝撃吸収部12を収納状態から突出状態に切り替えることができる。
【0035】
次に、図3A図6Bに基づいて、本実施形態に係る衝撃吸収装置10の動作について説明する。図3A図4Bは、衝撃吸収部12が収納状態から突出状態に切り替わっている途中の状態を示している。図3Aおよび図3Bは、衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す斜視図であり、図4Aおよび図4Bは、衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す平面図である。また、図5A図6Bは、衝撃吸収部12が収納状態から突出状態への切り替えが完了した状態を示している。図5Aおよび図5Bは、衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す斜視図であり、図6Aおよび図6Bは、衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す平面図である。なお、図3A図4A図5A、および図6Aでは、説明のために天板部22の図示は省略している。
【0036】
図3B図4Bに示すように、天板部22が収納状態からX軸の負の方向に移動している。この天板部22の移動動作は、駆動部によって天板部22がX軸の負の方向に駆動されることにより生じる。例えば、駆動部にはソレノイドやモータや電磁石等が用いられており、駆動部は紐やロッドを介して天板部22のX軸の負側の接続部22Dに接続されている。駆動部がこの紐やロッドをX軸の負の方向に引っ張ることによって天板部22がXに負の方向に移動する。また、天板部22の移動によって各フィン21が起動方向に回
動駆動される。フィン21の起動方向への回動駆動によって、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20を押し上げることで、衝撃吸収メンバー20を回動軸20Aの起動方向へ回動する。図5A図6Bに示すように、衝撃吸収メンバー20およびフィン21が起立姿勢になることによって、衝撃吸収部12が突出状態に切り替えられる。
【0037】
また、図5Aに示すように、本実施形態に係る衝撃吸収装置10は、衝撃吸収メンバー20が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられた際、回動軸20A周りの起動方向への回動を規制する規制部13を備える。本実施形態では、1個の衝撃吸収メンバー20は、5本の回動軸心(不図示)を有しており、規制部13は、その回動軸心の配置位置毎に設けられている。規制部13は、起立姿勢の衝撃吸収メンバー20が更に起動方向へ回動するの
を阻害する。
【0038】
また、図6Aに示すように、フィン21は、起立姿勢に切り替えられた際に、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20と当接する当接部21B(「第1当接部」の一例)を有する。図6Aでは、1行2列目のフィン21の当接部21Bに符号が付されているが、全てのフィン21が当接部21Bを有している。当接部21Bは、起立姿勢である衝撃吸収メンバー20が倒伏方向に回動することを規制する。
【0039】
また、図4Aおよび図6Aに示すように、フィン21は、起立姿勢に切り替えられた際に、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20に隣接する他列の衝撃吸収メンバー20と当接する当接部21C(「第2当接部」の一例)を有する。図6Aでは、1行2列目のフィン21の当接部21Cに符号が付されているが、少なくとも2列目と3列目のフィン21が当接部21Cを有している。
【0040】
また、図4Aおよび図6Aに示すように、衝撃吸収メンバー20は、フィン21が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられるまでの過程で、フィン21の当接部21Cと干渉することを抑制する溝部20Bを有する。溝部20Bは、各当接部21Cに対応して衝撃吸収メンバーの側面に形成されている。溝部20Bは、フィン21の移動時の当接部21Cの移動軌跡に沿って形成されている。これにより、フィン21の当接部21Cによって当該フィン21が起立させる対象の衝撃吸収メンバー20に隣接する他列の衝撃吸収メンバー20が当該当接部21Cによって回動阻害されるのを防ぐことができる。
【0041】
また、図6Aに示すように、2列目、3列目のフィン21は、起立対象の衝撃吸収メンバー20と、当該衝撃吸収メンバー20に隣接する他列の衝撃吸収メンバー20の間に配置された中間フィン210(「中間補助メンバー」の一例)である。中間フィン210が起立姿勢の状態で、起立対象の衝撃吸収メンバー20と当該中間フィン210の当接部21Bが当接し、且つ、他列の衝撃吸収メンバー20と中間フィン210の当接部21Cが当接する。これによって、中間フィン210は、起立姿勢において、起立対象の衝撃吸収メンバー20と当該衝撃吸収メンバー20に隣接する他列の衝撃吸収メンバー20とを支えることができる。
【0042】
また、図2B図4B図6Bに示すように、天板部22は、略平坦に形成された板状部22Eを有する。板状部22Eは、天板部22の表面側であって乗員に対向して配置される部位である。天板部22は、板状部22Eがベース部11と平行な状態を維持しつつ駆動部に駆動される。板状部22Eは、乗員の体を受け止める面として機能する。板状部22Eを有することによって、乗員が負傷する可能性を低減することができる。なお、天板部22は、乗員が負傷する可能性を低減するために少なくとも板状部22Eが可撓性を有していればよい。
【0043】
このように、本実施形態に係る衝撃吸収装置10は、衝撃吸収部12が収納状態と突出状態に切り替え可能であるので、非作動時では衝撃吸収部12が収納状態を維持することで、嵩張ることを防ぎ、車室等に配置することができる。このため、本実施形態に係る衝撃吸収装置10は、配置の自由度が向上する。また、衝撃吸収装置10は、衝撃吸収部12が可撓性を有しているため、天板部22が乗員を受け止めた後ももとの形状に戻ることができ、更に、突出状態と収納状態に切り替え可能であるので繰り返し使用可能である。なお、衝撃吸収装置10において、駆動部が衝撃吸収部12を作動させる際に衝撃吸収部12を収納状態から突出状態に切り替え、衝撃吸収部12を突出状態から収納状態に切り替える駆動は乗員により手動で行われてもよい。また、これとは別に、駆動部が衝撃吸収部12を突出状態から収納状態に切り替える駆動を行ってもよい。例えば、駆動部は、天板部22をX軸の正方向に付勢する弾性部材を含んで構成されており、突出状態から収納
状態に切り替える際には天板部22に取り付けられた不図示の紐の伸張状態を解除することで、天板部22をX軸の正方向に移動させ、衝撃吸収部12を収納状態に切り替えてもよい。
【0044】
次に、図7および図8に基づいて、衝撃吸収装置10の駆動制御について説明する。例えば、衝撃吸収装置10は、車両の急減速又は乗員に慣性力が作用して乗員が動いたことを示す信号がセンサ等によって検出されて場合に、衝撃吸収メンバー20が収納状態から突出状態に切り替えられるように駆動される。図は、衝撃吸収装置10が配置された車両100を含むブロック図である。本実施形態において、衝撃吸収装置10は車両内に複数台搭載されている。例えば、衝撃吸収装置10は、車両100の最大搭乗人数分だけ配置され、各乗員一人に対して1台ずつ配置されていてもよい。図7には4台の衝撃吸収装置10が示されており、そのうちの1台の衝撃吸収装置10について代表的にその機能部を示している。衝撃吸収装置10は、制御部101を有する。制御部101は、例えば、マイクロコンピュータによって構成されており、記憶手段(ROM(Read Only Memory)等であり不図示)に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)(不図
示)によって実行させることで各処理を実行する。
【0045】
更に、図7には、車両100に搭載されたセンサ103、位置情報取得部104、走行制御部105、走行駆動部106も示されている。先ず、これらの車両100に関連する構成について説明する。車両100は、その周囲をセンシングしながら自律走行として適切な方法で道路上を走行する自動運転が可能である。なお、車両100は、搭乗者による手動運転も勿論可能である。センサ103は、車両100の自律走行に必要な情報を取得するために車両100の周囲のセンシングを行う手段であり、典型的にはステレオカメラ、レーザスキャナ、LIDAR、各種レーダなどを含んで構成される。センサ103が取得した情報は、走行制御部105に送信され、車両100の周囲に存在する障害物や歩行者や走行レーンの認識等のために走行制御部105によって利用される。本実施形態では、センサ103は、監視を行うための可視光カメラや赤外線カメラを含んでもよい。また、位置情報取得部104は、車両100の現在位置を取得する手段であり、典型的にはGPS受信器などを含んで構成される。位置情報取得部104が取得した情報も走行制御部105に送信され、例えば、車両100の現在位置を利用して車両100が目的地に到達するためのルートの算出や、当該目的地への到達に要する所要時間の算出等の所定処理に利用される。
【0046】
走行制御部105は、センサ103や位置情報取得部104から取得した情報に基づいて、車両100の制御を行うコンピュータである。走行制御部105は、例えば、マイクロコンピュータによって構成されており、記憶手段(ROM(Read Only Memory)等であり不図示)に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)(不図示)に
よって実行させることで上記した各種処理を行うための機能が実現される。
【0047】
走行制御部105による各種処理の具体例として、車両100の走行計画の生成処理、センサ103が取得したデータに基づいた、自律走行に必要な車両100の周囲の所定データの検出処理、走行計画、所定データ、位置情報取得部104が取得した車両100の位置情報に基づいた、自律的な走行を制御するための制御指令の生成処理等が例示できる。走行計画の生成処理とは、出発地から目的地に到達するための走行経路を決定する処理である。また、所定データの検出処理は、例えば、車線の数や位置、車両100の周囲に存在する他の車両の数や位置、車両100の周囲に存在する障害物(例えば歩行者、自転車、構造物、建築物など)の数や位置、道路の構造、道路標識などを検出する処理である。また、上記制御指令は、後述の走行駆動部106へ送信される。車両100を自律走行させるための制御指令の生成方法については、公知の方法を採用することができる。
【0048】
走行駆動部106は、走行制御部105が生成した制御指令に基づいて、車両100を走行させる手段である。走行駆動部106は、例えば、車輪を駆動するためのモータ、エンジンやインバータ、ブレーキ、ステアリング機構等を含んで構成され、制御指令に従ってモータやブレーキ等が駆動されることで、車両100の自律走行が実現される。
【0049】
次いで、図8に基づいて、駆動制御の詳細について説明する。図8は、制御部101が行う処理に関するフローチャートである。なお、この処理は、制御部101により所定の間隔で繰り返し実行される。先ず、S101では、制御部101は、各種情報を取得する。各種情報は、走行制御部105から送信される。
【0050】
次に、S102では、制御部101は、駆動制御が必要であるか否かを判定する。制御部101は、S101で取得した各種情報に、車両100が急減速されたことを示す情報が含まれていると判定すると、駆動制御が必要であると判定する。
【0051】
制御部101は、S102で駆動制御が必要であると判定すると、S103の処理を実行する。S103では、制御部101は駆動制御を実行する。例えば、駆動部102は、ソレノイドやモータや電磁石等を含んで構成され、天板部22を駆動する。これによって、本実施形態に係る衝撃吸収装置10は衝撃吸収部12を収納状態から突出状態に切り替えることができる。
【0052】
<実施形態2>
次に、図9及び図10に基づいて、実施形態2に係る衝撃吸収装置50について説明する。本実施形態に係る衝撃吸収装置50も上述の実施形態1に係る衝撃吸収装置10と同様に車両に搭乗している乗員を保護する装置として例示される。図9及び図10は、本実施形態に係る衝撃吸収装置50の外観斜視図である。本実施形態に係る衝撃吸収装置50は、上記実施形態1に係る衝撃吸収装置10と同様に、車両を構成する被取付対象に取り付けられ、作動時に乗員を保護する装置である。衝撃吸収装置50は、被取付対象に対して固定されたベース部51を備える。本実施形態において、ベース部51は、車室の内装を形成する内装ライニングの一部を構成する。また、衝撃吸収装置50は、車室からベース部51の側に退避した収納状態と、ベース部51から車室の側に突出した突出状態とを可逆的に切り替え可能にベース部51に取り付けられた可撓性を有する衝撃吸収部52を複数(本例では、16個)備える。ベース部51の設置面51Aには複数の孔53が形成されており、複数の衝撃吸収部52の各々は、複数の孔53の各々に設置されている。図中、衝撃吸収部52に影をつけた状態で図示している。本実施形態において、設置面51Aは、車室の内装を形成する内装ライニングであり、衝撃吸収部52は、孔53から車両に搭乗する乗員に向かって突出するように配置されている。例えば、衝撃吸収部52は、設置面51Aの下に広範囲に配置された可撓性のあるシリコンゴムとすることができる。
【0053】
図9に示す状態では、衝撃吸収部52は、収納状態である。収納状態において、衝撃吸収部52は、孔53の内部に格納されている。本実施形態において、衝撃吸収部52は、例えば、圧縮ガスなどの流体が内部に流入することで展開する袋体である。このため、駆動部は、衝撃吸収部52に圧縮ガスや所定の液体を流入させることによって衝撃吸収部52を突出状態に切り替える。駆動部には、車両のエンジンやバッテリーなどの駆動源によって稼働するコンプレッサやポンプなどが挙げられる。例えば、駆動部がコンプレッサの場合には、コンプレッサは、車両の駆動源がオン状態である場合には所定圧を加圧ボトルに一定量蓄積しておき、衝撃吸収部52に繰り返し圧縮ガスを供給可能なようにしておく。
【0054】
図10に示す状態では、衝撃吸収部52は、突出状態である。突出状態において、衝撃吸収部52は、孔53から突出している。駆動部は、衝撃吸収部の内部に流体を供給する
ことによって衝撃吸収部52を膨張させて孔53から突出した突出状態に切り替える。なお、本実施形態における駆動部は、上記実施形態と同様に、図7に示す制御部101によって制御されても勿論よい。また、駆動部は、衝撃吸収部52を突出状態から収納状態に切り替える駆動を行ってもよい。この場合、例えば、駆動部は、衝撃吸収部52から圧縮ガスや液体を抜く動作を行う。
【0055】
本実施形態に係る衝撃吸収装置50によれば、衝撃吸収部52が収納状態と突出状態とに可逆的に切り替え可能であるので、車室に配置することができる。このため、本実施形態に係る衝撃吸収装置50は、配置の自由度が向上する。
【0056】
また、本実施形態では、突出状態の衝撃吸収部52が円筒形状を有しており、衝撃吸収部52内に流体が充填されているので、衝撃吸収部52に乗員が衝突しても乗員に対する影響を低減することができる。このため、本実施形態に係る衝撃吸収装置50は、乗員を保護することができる。
【0057】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した種々の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。
【0058】
また、実施形態1において、天板部22は、連結部22A、22B、22Cが接続部22Dで互いに接続されることによって一体的に形成されているが、連結部22A、22B、22Cが互いに接続されておらず連結部22A、22B、22Cの各々が駆動部によって駆動されていてもよい。この場合、衝撃吸収装置10は、複数の駆動力伝達メンバーを備えることになる。なお、駆動力伝達メンバーを設けずに、駆動部がフィン21を駆動してもよい。
【0059】
また、実施形態1および2に係る衝撃吸収装置は、車輌が衝突に至らない場合でも、車両の急制動による乗員と車両の構物との衝突を回避するために作動させることができる。このため、実施形態1および2に係る衝撃吸収装置は、車両の急制動の度に作動可能である。なお、実施形態1および2に係る衝撃吸収装置のいずれも車両のあらゆる部位に取り付けて使用することができる。例えば、これらの衝撃吸収装置は、車内であれば、運転
席に座った乗員を保護するためにステアリングコラムシャフトをカバーするダッシュボードロアパネル、後席に座った乗員を保護するために前席のシートバックの背面、あるいはシートに着座した乗員のサブマリン現象防止のためシートバックの内部等に取り付けられる。また、これらの衝撃吸収装置は、車両と道路上の障害物や他の車両との衝突時に当該車両の乗員を保護するために、車両の車外に取り付けて使用することもできる。
【0060】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0061】
10、50 衝撃吸収装置
11、51 ベース部
12、52 衝撃吸収部
13 規制部
20 衝撃吸収メンバー
20A、21A 回動軸
20B 溝
21 フィン
21B、21C 当接部
51A 設置面
53 孔
100 車両
101 制御部
102 駆動部
103 センサ
104 位置情報取得部
105 走行制御部
106 走行駆動部
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10