(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】継手
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/12 C
(21)【出願番号】P 2020203061
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 文弥
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-053595(JP,U)
【文献】特開2017-095930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
F16L 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状に形成され、屈曲部を中心に湾曲されると共に軸方向の一端と他端とが水回り器具からの排水を流す管材に接続される本体管部と、
前記本体管部に前記軸方向に沿って形成され、平面視で前記屈曲部の少なくとも一部と重なる位置に設けられた清掃口と、
前記清掃口を上方から閉鎖する閉塞部材と、
を備え、
前記閉塞部材は、平面視で前記軸方向に沿う形状とされている
と共に透明部を有し、前記透明部に遮光部材が貼りつけられている、
継手。
【請求項2】
前記閉塞部材は、前記本体管部の流路の一部を形成する、
請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記本体管部及び前記閉塞部材に設けられた固定部と、
前記固定部に上方から捻じ込まれて前記閉塞部材を前記本体管部に固定する固定部材と、
を備えた請求項1又は請求項2に記載の継手。
【請求項4】
前記固定部は、平面視で前記閉塞部材における前記軸方向と交わる方向の両側に設けられ、それぞれの前記固定部は、前記本体管部の軸方向において異なる位置に配置されている、請求項3に記載の継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、一端が横引き管に接続され、前記他端が竪管に接続された本体幹部を備えた継手構造が記載されている。この継手における本体管部には屈曲部が形成され、平面視で屈曲部と重なる位置に、清掃口が設けられている。これにより、接続した配管の内部を洗浄し易くし、配管の設置スペースのコンパクト化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、本体管部の清掃口を閉塞部材で閉塞している。この閉塞部材を形成する蓋は、平面視で円形に形成され、蓋には雌螺子が形成されている。この雌螺子が本体管部の雄螺子に捩じ込まれることにより、本体管部が閉塞されている。
【0005】
ここで、本体管部の清掃口は、洗浄ノズルを挿入するために支障が生じない程度の大きさを確保する必要がある。清掃口は、横引き管に沿う略長方形状とされている一方、蓋は円形状とされている。このため、洗浄口の大きさを大きく確保しようとした場合、その洗浄口を覆う蓋の直径も大きくする必要がある。この場合、例えば複数の本体管部を本体管部の軸方向と交わる方向に並べて配置する場合、この方向における設置スペースのコンパクトが難しい。
【0006】
本発明は上記事実を考慮して、本体管部の軸方向と交わる方向において、設置スペースをコンパクト化できる継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様の継手は、管状に形成され、屈曲部を中心に湾曲されると共に軸方向の一端と他端とが水回り器具からの排水を流す管材に接続される本体管部と、前記本体管部に前記軸方向に沿って形成され、平面視で前記屈曲部の少なくとも一部と重なる位置に設けられた清掃口と、前記清掃口を上方から閉鎖する閉塞部材と、を備え、前記閉塞部材は、平面視で前記軸方向に沿う形状とされている。
【0008】
第一態様の継手では、清掃口が、本体管部における屈曲部の少なくとも一部と重なる位置に設けられている。このため、本体管部の一端及び他端に接続される管材の双方を清掃し易い。
【0009】
また、清掃口及び清掃口を上方から閉塞する閉塞部材は、平面視で本体管部の軸方向に沿う形状とされている。このため、閉塞部材は、清掃口の大きさに関わらず、軸方向の大きさを調整することで、清掃口を閉鎖することができる。これにより、本体管部の軸方向と交わる方向において、継手の設置スペースをコンパクト化できる。
【0010】
第二態様の継手は、前記閉塞部材は、前記本体管部の流路の一部を形成する。
【0011】
第二態様の継手では、閉塞部材が本体管部の流路の一部を形成している。このため、流路を形成するための中子部材が必要ない。これにより、継手の部品点数を削減できる。
【0012】
第三態様の継手は、前記本体管部及び前記閉塞部材に設けられた固定部と、前記固定部に上方から捻じ込まれて前記閉塞部材を前記本体管部に固定する固定部材と、を備えている。
【0013】
第三態様の継手は、上方から下向きに固定部材を捩じ込むことで、清掃口を上方から閉鎖する閉塞部材が本体管部へ固定される。このため、上方からの作業によって閉塞部材を本体管部へ固定することができる。これにより、閉塞部材の側方へ作業空間を確保する必要がない。このため、本体管部の軸方向と交わる方向に継手を並べて配置した場合でも、閉塞部材の取り付け及び取り外し作業が容易である。
【0014】
第四態様の継手は、前記固定部は、平面視で前記閉塞部材における前記軸方向と交わる方向の両側に設けられ、それぞれの前記固定部は、前記本体管部の軸方向において異なる位置に配置されている。
【0015】
第四態様の継手では、固定部が、平面視で閉塞部材の両側に設けられている。そして、この固定部は、本体管部の軸方向において異なる位置に配置されている。このため、本体管部の軸方向と交わる方向に継手を並べて配置した場合でも、固定部同士が干渉し難い。これにより、本体管部の軸方向と交わる方向において、継手の設置スペースをコンパクト化できる。
【0016】
第五態様の継手は、前記閉塞部材は透明部を有し、前記透明部に遮光部材が貼りつけられている。
【0017】
第五態様の継手では、閉塞部材が、透明部を有している。このため、継手の外部から閉塞部材の内部が視認可能とされている。また、透明部には遮光部材が貼りつけられている。
【0018】
これにより、排水経路内の排水状況を点検する際には、遮光部材を剥がすことで点検できる。このため閉塞部材を取り外す作業が不要となり、点検作業が容易になる。さらに、遮光部材を貼り付けることで、配管経路内へ光が侵入することを抑制できるため、配管経路における藻などの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る継手によると、継手の本体管部の軸方向と交わる方向において、設置スペースをコンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る清掃口付き継手が用いられたサイホン排水システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る清掃口付き継手の本体管部、蓋及び遮光部材を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る清掃口付き継手の本体管部に形成された清掃口を蓋で閉鎖した状態を示す断面斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る清掃口付き継手の本体管部を示す上面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る清掃口付き継手の本体管部における固定部を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る清掃口付き継手をスラブに固定している状態を示す上面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る清掃口付き継手を並べてスラブに固定している状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る継手及び配管接続方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0023】
図1には、本実施形態に係る清掃口付き継手50(以下、継手50と称す)が用いられたサイホン排水システム10の全体構成が概略図で示されている。本実施形態に係るサイホン排水システム10は、サイホン力を利用して水回り器具20からの排水を効率よく排出する排水システムである。
【0024】
<サイホン排水システム>
サイホン排水システム10は、複数階で構成された集合住宅に用いられ、
図1に示すように、排水を下方へ流す排水竪管12を備えている。この排水竪管12は、集合住宅の上下方向(鉛直方向)に延設され、集合住宅の各階のスラブ14を貫いている。
【0025】
なお、排水竪管12は、建物内部において、スラブ14を貫通して複数階に亘って形成されたパイプスペースの中に配置されている。又は、排水竪管12は、建物の内外を仕切る外壁16の外側、例えば、メーターボックス等の中に配置してもよい。本実施形態のサイホン排水システム10は、集合住宅に好適に用いられるが、集合住宅以外の戸建て住宅、事務所ビル、商業ビル、工場等の各種の建物に用いることができる。
【0026】
集合住宅の各階の各戸には、水回り器具20が設けられている。この水回り器具20は、一例としてキッチンのシンクであり、排水方向下流側にディスポーザー22、及び排水トラップ24が接続されている。排水トラップ24の排水方向下流側には、L字状に曲げられたL字配管部材26が配置されている。L字配管部材26は、排水トラップ24に接続されて鉛直方向に延びる鉛直部26A、スラブ14の上に水平方向に配置されて水平方向に延びる水平部26B、及び鉛直部26Aと水平部26Bとを繋ぐ湾曲部26Cを含んで構成されている。なお、水回り器具20は、浴槽、洗面器、洗濯機等の他の排水系統としてもよい。
【0027】
L字配管部材26の排水方向下流側には、スラブ14の上に配置されて水平方向、言いかえれば鉛直方向に対して直角方向に延びる横引き管部材28が配置されている。L字配管部材26と横引き管部材28とは、継手30を介して接続されている。
【0028】
横引き管部材28の排水方向下流側の端部には、継手32を介して後述する継手50の第1接続部60が接続されている。継手50の下流側には、上下方向に延びる竪管部材36が配置されている。この竪管部材36の上流側の端部には、継手50の第2接続部62が接続されている。なお、継手50の下端部はスラブ14に形成された貫通孔14Aに挿入され、継手50と竪管部材36が、貫通孔14Aを貫通して配置されている。
【0029】
竪管部材36の排水方向下流側の端部は、排水竪管12の中間部に取付けられた合流継手40に継手42を介して接続されている。
【0030】
本実施形態において、スラブ14の上に水平に配置されている配管部分、具体的にはL字配管部材26の水平部26B、横引き管部材28、がサイホン排水管44の横引き管46とされ、竪管部材36がサイホン排水管44の竪管48とされている。なお、排水性能を確保する観点から、横引き管46には、継手30から継手32に向かって下向きに傾斜する水勾配を設けてもよい。本実施形態における「水平」とは、水勾配程度の傾斜を含むものとする。
【0031】
<継手>
図2に示すように、本発明の継手の一例である継手50は、本体管部52、閉塞部材としての蓋58を含んで構成されている。本実施形態の本体管部52及び蓋58は、合成樹脂で形成されている。
【0032】
(本体管部)
本体管部52は、一例として不透明な合成樹脂で形成され、
図3に示すように、略L字状に湾曲された継手本体である。本体管部52は、横引き管46の軸方向に沿って延在する筒状の第1接続部60と、竪管48の軸方向に沿って延在する筒状の第2接続部62と、を備えている。なお、本体管部52は透明な(光透過性を有する)合成樹脂で形成してもよい。
【0033】
また、本体管部52は、第1接続部60の下流側の端部と第2接続部62の上流側の端部とを繋ぐ壁部52A、52B、52D及び屈曲部52Cを備えている。屈曲部52Cの両側に配置された第1接続部60と第2接続部62とは、互いに直交する方向に延在している。
【0034】
第1接続部60には、継手32が接続される。第2接続部62は、本体管部52の径よりも大径に形成されており、この第2接続部62には、竪管48の上流側の端部が挿入可能となっている。
【0035】
このように、本実施形態のサイホン排水管44の清掃口付き継手50は、横引き管46と竪管48とを連結しており、略水平方向(横方向)に延在する配管を鉛直下方側へ落とし込む曲げ管として機能している。
【0036】
図2に示すように、屈曲部52Cは、湾曲した筒体を半割した形状とされており、排水流路の内周面を形成している。屈曲部52Cの上端面には、本体管部52の中心線CLからみて、両側に段差部52CAが形成されている。この段差部52CAに、蓋58における屈曲部58Cが載置される。
【0037】
壁部52Aは、屈曲部52Cにおけるそれぞれの段差部52CAの外側から上方向へ立ち上げられた壁部であり、平面視において本体管部52の軸方向に沿って配置されている。
【0038】
壁部52Bは、2つの壁部52Aの一端(第2接続部62側の端部)を連結する壁部であり、平面視で円弧状に形成されている。また、壁部52Bは、
図3に示すように、第2接続部62から上方向へ立ち上げられている。なお、第2接続部62の上端部には、蓋58における屈曲部58C(壁部58Bと一体化した部分)が載置されるフランジ62CAが形成されている。フランジ62CAは、第2接続部62の径方向内側へ突出した部分である。
【0039】
壁部52Dは、
図2に示すように、2つの壁部52Aの他端(第1接続部60側の端部)を連結する壁部であり、平面視で直線状に形成されている。第1接続部60は、この壁部52D及び屈曲部52Cの端部に接続されている。
【0040】
なお、本体管部52は、第1接続部60から第2接続部62にかけて筒状に形成されている。このうち、屈曲部52Cの上方には清掃口Eが形成されており、流路が閉塞されていないが、本発明においては、このように開放された清掃口Eを備えた形態を含んで「筒状」と称すものとする。
【0041】
(本体管部の清掃口)
壁部52A、52B、52Dによって囲まれる領域は、本体管部52における清掃口Eを形成している。清掃口Eは、平面視で、屈曲部52Cを覆うように形成された開口部である。また、清掃口Eは、本体管部52の軸方向に沿う形状とされ、略長方形状とされている。
【0042】
清掃口Eからは、第1接続部60及び第2接続部62の内部にアプローチ可能とされている。つまり、清掃口Eから本体管部52の内部へ挿入した洗浄ノズル等の洗浄用具を、第1接続部60を経由して横引き管46(
図3等参照)の内部へ到達させることができる。同様に、洗浄用具を、第2接続部62を経由して竪管48(
図3等参照)の内部へ到達させることができる。
【0043】
(本体管部の蓋固定フランジ)
図4に示すように、本体管部52における壁部52A、52Bには、本発明における固定部の一例としての蓋固定フランジ54A、54B(以下、フランジ54A、54Bと称す)が形成されている。フランジ54Aは、2つの壁部52Aのそれぞれにおける上端部に形成され、平面視において中心線CLで示される本体管部52の軸方向と交わる方向へ突出したフランジである。
【0044】
また、フランジ54Aは、平面視で本体管部52の軸方向と交わる方向の両側に設けられている。それぞれのフランジ54Aは、本体管部52の軸方向において、異なる位置(位置P1、P2)に配置されている。
【0045】
一方、フランジ54Bは、壁部52Bにおける上端部に形成され、平面視で本体管部52の軸方向へ突出したフランジである。
【0046】
これらのフランジ54A、54Bには、上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。これらの貫通孔の内周面には、それぞれ雌ねじ部H1が形成されている。
【0047】
(本体管部の固定部)
図5に示すように、本体管部52における屈曲部52Cの下方には、固定部56が屈曲部52Cと一定的に形成されている。固定部56は、複数の継手50の位置を位置決めする位置決め部材であり、
図4に示すように、平面視で本体管部52の軸方向と交わる方向の両側にそれぞれ設けられた固定部56A、56Bを備えている。
【0048】
また、固定部56は、固定部56A、56Bを連結する連結部56Cを備えている。なお、
図3に示すように、連結部56Cが、屈曲部52Cと一体的に形成されている。
【0049】
図5に示すように、固定部56Aは、板部56AAと、固定脚56ABと、貫通孔56ACと、位置決め脚ADと、を備えている。板部56AAは、スラブ14に平行に配置される板状の部材である。固定脚56ABは、板部56AAから下方に突出し、スラブ14と接して配置される。貫通孔56ACは、板部56AA及び固定脚56ABを上下方向に貫通する孔であり、ビスを挿通可能な直径とされ、ビス頭が挿通できない直径とされている。位置決め脚ADは、板部56AAから下方に突出し、スラブ14と接触する部分である。
【0050】
一方、固定部56Bは、板部56BAと、溝部56BBと、位置決め孔56BDと、を備えている。板部56BAは、スラブ14に平行に配置される板状の部材であり、スラブ14に接して配置される。溝部56BBは、板部56BAに形成された略U字状の開口部である。位置決め孔56BDは、板部56BAに形成された貫通孔である。
【0051】
ここで、本体管部52と異なる本体管部52を、平面視で本体管部52の軸方向と交わる方向に並べて配置した場合に、一方の本体管部52(
図5では右側)における固定部56の板部56AAが、他方の本体管部52(
図5では左側)における固定部56の板部56BAの上に重ねて配置される。すなわち、これらが重ね合わされた状態で、板部56AAが上板部となり、板部56BAが下板部となる。
【0052】
また、一方の本体管部52における固定部56Aの固定脚56ABが、他方の本体管部52における固定部56Bの溝部56BBに係合される。
【0053】
さらに、一方の本体管部52における固定部56Aの位置決め脚ADが、他方の本体管部52(
図5では左側)における固定部56Bの位置決め孔56BDに挿入される。
【0054】
この状態で、一方の本体管部52における固定部56Aの貫通孔56ACにビス(コンクリートビス)を挿通して、このビスをスラブに捩じ込むことにより、一方の本体管部52における固定部56Aと、他方の本体管部52における固定部56Bと、がスラブ14に固定される。
【0055】
ここで、固定部56Aにおける固定脚56ABの下端と、固定部56Bにおける板部56BAの下面と、は同じ高さにある。したがって、複数並べられた継手50のうち、端部に位置する継手50において、固定脚56ABが係合しない板部56BA、及び板部56BAに係合しない固定脚56ABを、ビスにより直接スラブに固定できる。
【0056】
(蓋)
蓋58は、光透過性を有する合成樹脂で形成され、
図2に示すように、本体管部52の清掃口Eを、上方から閉鎖する閉塞部材である。蓋58は、壁部58A、58B、58D、屈曲部58C及び係止部58Eを備えている。
【0057】
図3に示すように、屈曲部58Cは、湾曲した筒体を半割した形状とされており、排水流路の内周面を形成している。
図2に示すように、屈曲部58Cの下端面58CAは、本体管部52における屈曲部52Cの段差部52CAに載置される。このように、本体管部52における屈曲部52Cと、蓋58における屈曲部58Cとで、円形の平断面とされた排水流路が形成される。なお、屈曲部52Cの段差部52CAと、屈曲部58Cの下端面58CAと、の間には、止水性を考慮して、パッキン等を配置してもよい。
【0058】
壁部58Aは、屈曲部58Cの下端面5CAから上方向へ立ち上げられた壁部であり、平面視において屈曲部52Cの軸方向(かつ、蓋58が本体管部52に組付けられた状態では、本体管部52の軸方向)に沿って配置されている。
【0059】
壁部58Bは、2つの壁部58Aの一端(本体管部52における第2接続部62側の端部)を連結する壁部であり、平面視で円弧状に形成されている。また、壁部58Bの下端部(屈曲部58Cと一体化した部分)は、
図3に示すように、本体管部52におけるフランジ62CAに載置され、フランジ62CAから上方向へ立ち上げられている。
【0060】
壁部58Dは、
図2に示すように、2つの壁部58Aの他端(本体管部52における第1接続部60側の端部)を連結する壁部であり、平面視で直線状に形成されている。
【0061】
以上の構成により、壁部58A、58B、58Dによって囲まれる領域の下端部には、屈曲部58Cが形成され、この屈曲部58Cが、本体管部52における屈曲部52Cを覆うように配置されることにより、本体管部52における清掃口Eを閉鎖している。また、屈曲部58Cは、本体管部52の軸方向に沿う形状とされ、略長方形状とされている。
【0062】
(蓋の係止部及びフランジ)
係止部58Eは、壁部58A、58B、58Dの上端部の全体に亘って形成されている。係止部58Eは、壁部58A、58B、58Dの外側へ跳ね出した跳ね出し部58EAと、跳ね出し部58EAの先端から下方へ折り返された折り返し部58EBと、を備えている。
【0063】
蓋58を本体管部52に組付けた状態では、蓋58における折り返し部58EBと、壁部58A、58B、58Dのそれぞれと、の間に、本体管部52における壁部58A、58B、58Dが挟まれた状態で配置される。
【0064】
また、蓋58を本体管部52に組付けた状態では、蓋58における跳ね出し部58EAと、本体管部52における壁部58A、58B、58Dの上端面と、の間に、パッキンSが挟まれた状態で配置される。パッキンSは、ゴム又はシリコン製のガスケット(平パッキン)である。なお、パッキンSは、Оリングとしてもよい。
【0065】
跳ね出し部58EAは、平面視で蓋58の略外形を形成している。跳ね出し部58EA及び蓋58は、平面視で屈曲部58Cより大きく形成され、本体管部52の軸方向に沿う形状とされ、略長方形状とされている。また、蓋58は、平面視で、本体管部52における屈曲部52Cと相似形状とされている。
【0066】
蓋58における折り返し部58EBには、本発明における固定部の一例としてのフランジ59A、59Bが形成されている。フランジ59A、59Bは、平面視において本体管部におけるフランジ54A、54Bと重なる位置に形成されている。また、これらのフランジ59A、59Bには、上下方向に貫通する貫通孔H2が形成されている。
【0067】
蓋58を本体管部52に組付けた状態では、フランジ59A、59Bの貫通孔H2は、それぞれフランジ54A、54Bの貫通孔と連通される。そして、本体管部52の雌ねじ部H1にボルトBを捩じ込むことで、蓋58が本体管部52に固定される。
【0068】
(遮光部材)
蓋58には、遮光部材70を貼り付けることができる。この遮光部材70は、例えば遮光性が高い又は光の透過率が低い素材(ゴム、樹脂等)を用いて形成された粘着テープであり、平面視で蓋58を覆うように、跳ね出し部58EAに貼り付けられる。なお、この遮光部材70は適宜省略することができる。
【0069】
<配管接続方法>
図1に示すように、継手50に、サイホン排水管44の横引き管46及び竪管48を接続する手順について説明する。
【0070】
まず、
図3に示すように、継手50における本体管部52の軸方向における一端に形成された第2接続部62に、竪管48の上端部を接続する。
【0071】
次に、
図5に示すように、本体管部52の下端部、すなわち第2接続部62と、屈曲部52C及び壁部52Bの下端部と、をスラブ14に形成された貫通孔14Aに挿入する。次に、
図3に示すように、横引き管46が接続された継手32を、第1接続部60に固定する。
【0072】
なお、
図3には本体管部52に蓋58が組付けられた状態が図示されており、
図5には本体管部52に蓋58が組付けられた状態が図示されている。本体管部52に蓋58を被せるタイミングは任意であるが、竪管48及び本体管部52の内部に粉塵などが入ることを抑制する観点から、本体管部52に竪管48を接続する前に、本体管部52に蓋58を組付けておくことが好ましい。
【0073】
次に、
図6に示すように、継手50(又は本体管部52)を所定の位置に配置して、固定部56をスラブ14に固定する。継手50を1つだけスラブ14に固定する場合は、固定部56Aにおける貫通孔56AC及び固定部56Bにおける位置決め孔56BDにそれぞれビスを挿通して、このビスをスラブ14に捩じ込む。
【0074】
なお、複数の継手50を、本体管部52の軸方向と交わる方向に並べて配置し、それぞれの継手50をスラブ14に固定する場合は、固定部56Aにおける貫通孔56ACだけにビスを挿通して、このビスをスラブ14に捩じ込む。
【0075】
また、複数の継手50を並べて配置する場合は、
図7に示すように、一方の本体管部52(後から施工する継手であり、
図7では上側)における固定部56Aの板部56AAを、他方の本体管部52(
図7では下側)における固定部56Bの板部56BAの上に重ねて配置する。
【0076】
この状態で、一方の本体管部52における固定部56の貫通孔56ACにビス(コンクリートビス)を挿通して、このビスをスラブに捩じ込むことにより、一方の本体管部52における固定部56Aと、他方の本体管部52における固定部56Bと、がスラブ14に固定される。
【0077】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る継手50では、
図2に示すように、清掃口Eが、本体管部52における屈曲部52Cを覆って配置されている。このため、本体管部52の一端及び他端に接続される管材(
図3に示す竪管48及び横引き管46)の双方を清掃し易い。
【0078】
(蓋の形状による効果)
清掃口E及び清掃口Eを上方から閉塞する閉塞部材としての蓋58は、平面視で本体管部52の軸方向(中心線CLで示される方向)に沿う形状とされている。このため、蓋58は、清掃口Eの大きさに関わらず、軸方向の大きさを調整することで、清掃口Eを閉鎖することができる。すなわち、本体管部52の軸方向と交わる方向の大きさを大きくする必要がない。これにより、本体管部52の軸方向と交わる方向において、継手50の設置スペースをコンパクト化できる。
【0079】
なお、清掃口Eは、必ずしも屈曲部52Cを覆って配置する必要はない。例えば清掃口Eは、屈曲部52Cにおいて、少なくとも竪管48の上方を覆うものであればよい。この場合、蓋58も、当該清掃口Eを覆って配置すればよい。
【0080】
また、本発明の実施形態に係る継手50では、蓋58における屈曲部58Cが、本体管部52の流路の一部を形成している。すなわち、蓋58における屈曲部58Cと本体管部52における屈曲部58Cとで、流路を形成している。このため、流路を形成するための中子部材が必要ない。これにより、継手の部品点数を削減できる。
【0081】
(本体管部及び蓋の固定部による効果)
また、本発明の実施形態に係る継手50では、
図2に示すように、固定部としてのフランジ59A、54Aに、蓋58及び本体管部52を連通する貫通孔(雌ねじ部H1及び貫通孔H2)が形成されている。同様に、フランジ59B、54Bにも、蓋58及び本体管部52を連通する貫通孔が形成されている。
【0082】
そして、雌ねじ部H1に、上方から下向きに固定部材であるボルトBを捩じ込むことで、清掃口Eを上方から閉鎖する蓋58が本体管部52へ固定される。このため、上方からの作業によって蓋58を本体管部52へ固定することができる。
【0083】
これにより、蓋58の側方へ作業空間を確保する必要がない。このため、本体管部52の軸方向と交わる方向に継手を並べて配置した場合でも、蓋58の取り付け及び取り外し作業が容易である。
【0084】
また、フランジ59A(及びフランジ54A)は、
図7に示すように、平面視で蓋58の両側(本体管部の軸方向と交わる方向の両側)に設けられている。そして、フランジ59Aは、本体管部52の軸方向において異なる位置に配置されている(位置P1、P2)。
【0085】
このため、本体管部52の軸方向と交わる方向に継手50を並べて配置した場合でも、フランジ59A同士が干渉し難い。これにより、本体管部52の軸方向と交わる方向において、継手50の設置スペースをコンパクト化できる。
【0086】
(蓋の材質による効果)
また、本発明の実施形態に係る継手50では、蓋58が、光透過性を有する材料で形成されている。このため、継手50の外部から蓋58の内部が視認可能とされている。なお、蓋58の全体を、光透過性を有する合成樹脂で形成する必要はなく、一部に光透過性を有する仕様とすればよい。すなわち、一部に透明部(半透明部)を備えていればよい。
【0087】
なお、
図2に示すように、蓋58における透明部には遮光部材70を貼り付けることができる。排水経路内の排水状況を点検する際には、遮光部材70を剥がすことで点検できる。このため蓋58を取り外す作業が不要となり、点検作業が容易になる。さらに、遮光部材70を貼り付けることで、配管経路内へ光が侵入することを抑制できるため、配管経路における藻などの発生を抑制できる。
【0088】
なお、本発明において、蓋58は必ずしも光透過性を備えている必要はなく、不透明な合成樹脂で形成してもよい。蓋58を不透明な合成樹脂で形成しても、排水の流動性に影響は与えない。
【0089】
(本体管部の固定部による効果)
また、本発明の実施形態に係る継手50では、
図5に示すように、本体管部52と一体的に形成された固定部56がスラブ14に固定されることにより、本体管部52がスラブ14に固定される。このように、固定部56を本体管部52と一体的に形成することにより、本体管部52のスラブに対する高さを所定の高さに保持することができる。
【0090】
2つの異なる本体管部52を並べて配置した際に、一方の本体管部52における固定部56(
図5においては、右側の固定部56における固定部56A)と他方の本体管部52における固定部56(
図5においては、左側の固定部56における固定部56B)とは、上下に重なって配置された状態で、一体的にスラブ14に固定される。これにより、本体管部52の軸方向と交わる方向において、継手50の設置スペースをコンパクト化できる。
【0091】
これに対して、一方の本体管部52における固定部56Aと、他方の本体管部52における56Bと、をそれそれぞれ重ねない場合、一方の本体管部52における固定部56Aと、他方の本体管部52における56Bとが、本体管部52の軸方向と交わる方向に並べて配置される。このため、設置スペースをコンパクト化することは難しい。
【0092】
また、一方の本体管部52における固定部56Aと、他方の本体管部52における56Bとを、それぞれ近接した位置でスラブ14に対してビスで固定すると、スラブ14における穿孔位置が近くなる。これにより、スラブ14がコーン破壊する可能性がある。
【0093】
また、本発明の実施形態に係る継手50では下板部(
図5においては、左側の固定部56における板部56BA)の溝部56BBに、上板部(
図5においては、右側の固定部56における板部56AA)から下方に突出した固定脚56ABが係合される。さらに、固定脚56ABには、上板部(板部56AA)をスラブ14に固定するビスを挿通可能な貫通孔56ACが形成されている。
【0094】
このため、下板部(板部56BA)の溝部56BBに、固定脚56ABを係合させた状態で、ビスを上板部(板部56AA)の貫通孔56ACへ挿通することで、一方の固定部56Aと他方の固定部56Bとをスラブ14に固定できる。
【0095】
また、本発明の実施形態に係る継手50では、一方の固定部56Aと他方の固定部56Bとが、固定脚56ABだけでなく位置決め脚56ADによって互いに係合される。これにより、一方の固定部56Aと他方の固定部56Bとの位置決め精度を高くすることができる。
【0096】
<その他の実施形態>
本実施形態においては、
図2に示すように、閉塞部材である蓋58が流路の一部を形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば閉塞部材は、蓋及び中子で構成してもよい。この場合、中子を用いて流路の一部を形成し、蓋は中子の上方を覆うものとすればよい。このような実施兄弟においても、中子及び蓋を本体管部52の軸方向に沿う形状とすることで、継手50の設置スペースをコンパクト化できる。
【0097】
また、本実施形態においては、本体管部52及び蓋58にそれぞれフランジ54A、54B、フランジ59A、59Bを形成して雌ねじ部H1を形成し、この雌ねじ部H1にボルトBを捩じ込んで本体管部52に蓋58を固定しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0098】
例えばフランジ54A、54Bの下面にナットを固定して、このナットにボルトBを捩じ込んでもよい。この場合、フランジ54A、54Bには雌ねじ部H1を形成する必要はなく、貫通孔を形成すれはよい。
【0099】
または、フランジ54A、54Bの上面に、上方向に突出する雄ねじ部を設けてもよい。この場合、雄ねじ部をフランジ59A、59Bの貫通孔H2に挿通させて、上方からナットを捩じ込むことにより、本体管部52に蓋58を固定できる。
【0100】
例えば蓋58における折り返し部58EB(
図3参照)の内側に突起(不図示)を設けて、この突起と壁部58A、58B、58Dとの間で本体管部52の壁部52A、52B、52Dを挟むことにより、本体管部52に蓋58を固定してもよい。すなわち、本体管部52に蓋58を固定するためのフランジ54A、54B、フランジ59A、59Bや雌ねじ部は必ずしも必要ない。
【0101】
また、本実施形態においては、
図5に示すように、固定部56Aに位置決め脚56ADを形成し、この位置決め脚56ADを固定部56Bにおける貫通孔である位置決め孔56BDへ挿入しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0102】
まず、位置決め孔56BDは貫通孔ではなく有底の孔としてもよい。この場合、位置決め脚56ADの長さを適宜調整すればよい。また、位置決め脚56AD及び位置決め孔56BDを省略してもよい。これらを省略しても、固定部56Aの固定脚56ABを、固定部56Bの溝部56BBに係合させることで、並べて配置した本体管部52又は継手50の位置を簡易的に位置決めすることができる。
【0103】
また、本実施形態においては、固定部56が本体管部52と一体的に形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば本体管部52には固定部56を形成しなくてもよい。
【0104】
この場合、例えば本体管部52に跨って固定部材(樹脂や金属製のサドル)を配置して、この固定部材をスラブ14へ固定することで、本体管部52をスラブ14へ固定してもよい。また、必ずしも本体管部52をスラブ14へ固定しなくても、横引き管46や継手32をスラブ14に固定することで、本体管部52の振れを抑制してもよい。
【符号の説明】
【0105】
14…スラブ(固定対象) 20…水回り器具 46…横引き管(管材)
48…竪管(管材)52…本体管部 52C…屈曲部 56…固定部 56A…固定部
56AA…板部(上板部) 56AB…固定脚 56AC…貫通孔
56AD…位置決め脚 56B…固定部 56BA…板部(下板部)
56BB…溝部 56BD…位置決め孔 58…蓋(閉塞部材)
フランジ54A…固定部 フランジ54B…固定部 フランジ59A…固定部
フランジ59B…固定部 70…遮光部材
B…ボルト(固定部材)E…清掃口 H1…雌ねじ部 H2…雌ねじ部