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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】サイホン排水システム
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020203556
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090944
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 健人
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-090942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口から流入した排水を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に接続され、前記貯留槽からの前記排水を横方向に排出する横引き管と、
前記横引き管よりも下流側に配置され、前記横引き管からの前記排水を流下させることによりサイホン力を発生させる竪管と、
一端側の開口が前記横引き管に連結され、他端側の開口が前記貯留槽内に配置され、前記流入口の上端よりも鉛直方向下側の管側面に吸気孔が形成され、前記貯留槽内の空気を前記横引き管の内部へ流入可能な給気管と、
を備え、
前記給気管は、前記他端側の開口が鉛直方向の最下部となるように延在する給気上流部、を有する、
サイホン排水システム。
【請求項2】
前記給気管は、前記他端側の開口が、前記横引き管の前記貯留槽への接続開口よりも前記貯留槽内の鉛直方向上側に配置されている、請求項1に記載のサイホン排水システム。
【請求項3】
前記吸気孔は、鉛直方向の同一高さに複数形成されている、請求項1または請求項2に記載のサイホン排水システム。
【請求項4】
前記給気上流部は、鉛直斜め方向に延在され、前記吸気孔は前記管側面の上面側に形成されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のサイホン排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水を一時的に貯留して排出する貯留槽を備えたサイホン排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、サイホン排水管のサイホン力を利用した排水システムにおいて、水廻り器具とサイホン排水管の横引き管との間に貯留槽を設け、水廻り器具からの排水をサイホンが開始するまで貯留槽に一時的に貯留する構成が知られている。特許文献1に示す排水システムでは、例えば、浴槽から排水が行われると、浴槽から排出された排水が貯留槽に流れ込む。貯留槽に流れ込んだ排水は、サイホン排水管の横引き管を流れ、その後、竪管に流れ込む。
【0003】
サイホン排水管では、竪管が排水で満流になって竪管内を落下しないとサイホン力が発生しないので、サイホン力が発生するまでは、サイホン排水管による排水量が、貯留槽内に流入する排水の排水量よりも小さいため、貯留槽の排水の水位が上昇する。その後、竪管が排水で満流になってサイホン力が発生すると、サイホン排水管による排水量が、貯留槽内に流入する排水の排水量を上回り、排水の水位が低下してゆく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-190626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サイホン力が発生したサイホン排水管は、貯留槽内の排水を吸引する。したがって、ある程度貯留槽内の水位が下がると、サイホン排水管の近傍の水面がサイホン排水管の近くまで下がり、サイホン排水管が貯留槽内部の空気を吸い込む場合がある。
【0006】
サイホン排水管が排水と共に貯留槽内部の空気を吸い込むと、ズーズーという異音が発生し、この異音が貯留槽の空気層で響く。貯留槽の空気層で異音が響くと貯留槽の壁面を振動させ、最終的に貯留槽の外側へ異音が放出される場合がある。そこで、特許文献1では、前述の異音を抑制するために、貯留槽の外部の空気をサイホン排水管の内部に流入させる通気部を設け、貯留槽よりも下流側で空気を吸い込むことで、貯留槽内の排水に作用する吸引力を適度に低下させている。これにより、貯留槽内において、サイホン排水管の開口部分から空気が吸い込まれることが抑えられ、貯留槽内部で異音の発生が抑えられている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、貯留槽の外部の空気を常時サイホン排水管の内部に流入させてサイホン力を弱めているため、排水能力の低下が懸念される。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑み、サイホン力による排水能力を維持しつつ、貯留槽内での異音の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のサイホン排水システムは、流入口から流入した排水を貯留する貯留槽と、前記貯留槽に接続され、前記貯留槽からの前記排水を横方向に排出する横引き管と、前記横引き管よりも下流側に配置され、前記横引き管からの前記排水を流下させることによりサイホン力を発生させる竪管と、一端側の開口が前記横引き管に連結され、他端側の開口が前記貯留槽内に配置され、前記流入口の上端よりも鉛直方向下側の管側面に吸気孔が形成され、前記貯留槽内の空気を前記横引き管の内部へ流入可能な給気管と、を備え、前記給気管は、前記他端側の開口が鉛直方向の最下部となるように延在する給気上流部、を有する
【0010】
請求項1に記載のサイホン排水システムでは、貯留槽に排水が流入すると一時的に排水が貯留槽内に貯留される。貯留槽に流入した排水は、横引き管を介して竪管に流れ込み、満流となった排水が竪管内を重力により落下すると、サイホン力が発生する。サイホン力が発生すると、貯留槽内の排水は竪管に向かって吸引され、排水が満流流れとなって流下し、迅速かつ効率的に排水が行われるようになる。
【0011】
ところで、貯留槽に排水が流入した段階で、未だ竪管内が満流となっていない初期状態では、サイホン力が発生していないため、貯留槽に流れ込む単位時間当たりの排水量に対して、サイホン排水管による単位時間当たりの排水量が少なく、貯留槽において排水の水位が上昇する。
【0012】
そして、竪管内が満流となってサイホン力が発生すると、横引き管内が負圧となり、貯留槽の排水が吸引されて、貯留槽に設けられた横引き管の開口から横引き管へ排水が流入すると共に、給気管からも横引き管へ排水が流入し、効率よくサイホン力を利用して排水を行うことができる。
【0013】
このサイホン力は、水位が貯留槽の流入口の上端よりも鉛直方向下側の吸気孔まで下がるまで継続する。したがって、貯留槽内の水位が、流入口よりも上流側に接続された機器排水管が閉塞される程度の時には、サイホン力を低下させずに排水が行われ、排水を促進することができる。なお、貯留槽の水位が充分に高い時には、横引き管の開口から空気の吸い込みは生じないため、これに起因する異音は発生しない。
【0014】
サイホン力による排水で貯留槽の水位が給気管の吸気孔近くまで下がると、当該吸気孔から空気が入り込み、給気管を介して横引き管に空気が流入する。これにより、サイホン力による排水は継続されているが、その吸引力は低下する。吸引力が低下することにより、横引き管の開口部分からの空気の吸い込みが抑えられ、貯留槽内部における異音の発生を抑制することができる。
【0015】
なお、「排水を横方向に排出する横引き管」の「横方向」とは、水平方向に限らず、若干の傾斜(例えば、5度以下)も含むものである。
【0016】
請求項2に記載のサイホン排水システムは、請求項1に記載のサイホン排水システムにおいて、前記給気管は、前記他端側の開口が、前記横引き管の前記貯留槽への接続開口よりも前記貯留槽内の鉛直方向上側に配置されている。
【0017】
請求項2に記載のサイホン排水システムでは、サイホン力による排水が進んで水位が下がり、吸気孔からの空気の流入により吸引力が低下した後、さらに水位が下がると、横引き管の接続開口からの空気の吸い込み前に、給気管の他端側の開口から空気の吸い込みが始まる。これにより、低水位時に、より多くの空気を横引き管へ流入させることができ、サイホンの吸引力を低下させて、横引き管の接続開口からの空気の吸い込みによる異音の発生を抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載のサイホン排水システムは、前記吸気孔は、鉛直方向の同一高さに複数形成されている。
【0019】
請求項3に記載のサイホン排水システムによれば、吸気孔を複数個形成することにより、1個当たりの大きさを小さくして必要な吸い込み空気量を確保することができ、吸気孔の形成を容易に行うことができる。
【0020】
請求項4に記載のサイホン排水システムは、前記給気上流部は、鉛直斜め方向に延在され、前記吸気孔は前記管側面の上面側に形成されている。
【0021】
請求項4に記載のサイホン排水システムによれば、吸気孔から流入した空気が、給気上流部の内壁面に沿って移動するので、給気管内において、排水をスムーズに流すことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のサイホン排水システムによれば、サイホン力による排水能力を維持しつつ、貯留槽内での異音の発生を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係るサイホン排水システムの全体構成を示す側面図である。
図2】本実施形態に係るサイホン排水システムの貯留槽とその内部を示す断面図である。
図3】本実施形態に係るサイホン排水システムの給気上流部の孔の近傍図である。
図4】本実施形態に係るサイホン排水システムの排水を説明する(A)及び、(A)よりも水位が上昇した状態を示す(B)、及び(B)よりも水位が上昇した状態を示す(C)図である。
図5】本実施形態に係るサイホン排水システムの排水を説明する図4(C)よりも水位が低下した状態を示す(D)、(D)よりも水位が上昇した状態を示す(E)、及び(E)よりも水位が上昇した状態を示す(F)図である。
図6】本実施形態の変形例に係るサイホン排水システムの貯留槽とその内部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係るサイホン排水システム10について、図面を用いて説明する。本実施形態に係るサイホン排水システム10は、サイホン力を利用して水回り器具からの排水を効率よく排出する排水システムである。
【0025】
図1に示すように、建物12のスラブ14の上側には、スラブ14と間隔を開けて床パネル16が配置されている。床パネル16の上には、水廻り器具17が配置されている。水廻り器具17は、例えば、浴槽、台所流し、及び食洗機等の排水を流すものであるが、洗面台、浴室防水パン等その他のものであってもよい。
【0026】
水廻り器具17には、水廻り器具17から排出される排水を流す配管18の一端が接続されている。なお、配管18は、例えば、塩ビ製の管であるが、他の合成樹脂で形成されていても良い。
【0027】
(貯留槽)
図2にも示すように、スラブ14の上には、サイホン排水システム10の一部を構成する貯留槽20が配置されている。
【0028】
貯留槽20は、水廻り器具17からの排水を一時的に貯留可能であり、箱状に形成されている。貯留槽20は、略直方体とされ、天板20A、及び底板20Bが、図面矢印L方向側に向けて下がるように傾斜している。貯留槽20は、例えば、塩ビ等の合成樹脂材料で形成されている。
【0029】
貯留槽20の図面矢印R方向側の一方の側壁20Cには、流入口18Aが形成され、配管18の他端が接続されている。配管18を介して、水廻り器具17からの排水が貯留槽20の内部に流入するように構成されている。貯留槽20の一方の側壁20Cと対向する図面矢印L方向側の他方の側壁20Dの下側には、接続開口としての流出口22Aが形成されている。流出口22Aには、配管22の一端が接続されている。流入口18Aは、流出口22Aよりも、鉛直方向上側に配置されている。
【0030】
貯留槽20の天板20Aには、点検口20Eが形成されている。点検口20Eは、開閉可能な蓋21で閉鎖されている。また、天板20Aには、通気管23の一端が接続されている。通気管23の他端は、後述する合流継手29(図1参照)を介して立て管28(図1参照)に接続されている。
【0031】
なお、配管22、通気管23は、例えば、塩ビ製の管であるが、他の合成樹脂で形成されていても良い。
【0032】
配管22は、矢印L方向側に向けて下がるように傾斜している。配管22の他端側には、T字型継手24が配置されている。T字型継手24は、配管22が接続される第1接続部24A、第1接続部24Aの反対側に配置される第2接続部24B、第1接続部24Aと第2接続部24Bとの間に配置されて、第1接続部24Aと第2接続部24Bとを結ぶ方向と直交する上方に向けて延びる第3接続部24Cを備えている。第1接続部24Aと第2接続部24Bとは同軸上に設けられており、第1接続部24Aと第2接続部24Bの中心線CLは、矢印L方向側に向けて下がるように傾斜している。
【0033】
T字型継手24の第1接続部24Aの中心線CL1と第2接続部24Bの中心線CL2との交点Pから貯留槽20の内面までの距離DLは、排水時に、交点Pと貯留槽20との間の排水経路が排水で満流となるように設定すればよく、距離DLが短くなるように配管22を廃止してT字型継手24を貯留槽20に直接接続してもよく、距離DLが長くなるように図2よりも配管22を長くしてもよい。
【0034】
なお、T字型継手24は、例えば、塩ビで形成されているが、他の合成樹脂で形成されていても良い。
【0035】
(サイホン排水管)
T字型継手24の第2接続部24Bには、サイホン排水システム10の一部を構成するサイホン排水管26が接続されている。サイホン排水管26は、横引き管26A及び竪管26Bを備えている。第2接続部24Bには、横引き管26Aの上流端が接続されている。横引き管26Aは、T字型継手24の近傍の一部分が傾斜しているが、その下流側はスラブ14の上で横方向に無勾配で配設されている。竪管26Bは、図1に示すように、横引き管26Aの下流側端部から下方向(鉛直方向下向き)に連続して延び、下流端が後述する合流継手29に接続されている。
【0036】
本実施形態のサイホン排水管26は、ポリブテンで形成されているが、可撓性を有する他の合成樹脂で形成されていてもよい。
【0037】
なお、本実施形態においては、横引き管26A、T字型継手24の第1接続部24Aから第2接続部24Bまでの間、及び配管22が本発明の横引き管に相当している。
【0038】
建物12には、鉛直方向に延びる立て管28が配設されている。立て管28には、合流継手29が取り付けられており、サイホン排水管26で流された排水は、合流継手29を介して立て管28に排出される。
【0039】
T字型継手24の第3接続部24Cには、給気管30が接続されている。給気管30は、サイホン排水管26と同程度もしくはサイホン排水管26よりも小径の管で構成されており、給気上流部32、給気中流部34、及び給気下流部36、を有している。給気下流部36は、一端側(給気管30の一端側)の開口36Aが第3接続部24Cに接続され、上方へ延出されている。給気中流部34は、給気下流部36の上流端から貯留槽20へ向かい、側壁20Dを貫通して貯留槽20内に延出されている。
【0040】
給気上流部32は、貯留槽20内に配置された給気中流部34の先端から矢印R方向に向かうにつれて底板20Bに近づくように傾斜配置されている。給気上流部32の先端(給気管30の他端側)の開口32Aは、流出口22Aの上端E2よりも鉛直方向上方に配置されている。また、開口32Aは、上面視で点検口20Eと重なり合う位置に配置されている。
【0041】
給気上流部32の側壁には、吸気孔32Bが形成されている。図2に示されるように、吸気孔32Bは、流入口18Aの上端E1よりも下側、且つ、開口32Aよりも上側に形成されている。また、吸気孔32Bは、傾斜配置された給気上流部32の側壁の上面側、言い換えると、上面から視認可能な位置に形成されている。さらに、吸気孔32Bは、鉛直方向の同一高さに複数(本実施形態では2個)形成されている。吸気孔32Bの開口断面積は、開口32Aよりも小さく設定されている。
【0042】
(作用、効果)
次に、本実施形態のサイホン排水システム10の作用、効果を説明する。
水廻り器具17からの排水は、配管18を介して貯留槽20に流入する(図4(A)参照)。
【0043】
貯留槽20の底板20Bは、サイホン排水管26側が、排水の流入する配管18側よりも下方となるように傾斜しているため、排水は貯留槽20の中を配管18側からサイホン排水管26側(流出口22A側)へ流れ、かつ、サイホン排水管26側から溜まり初め、配管18側よりもサイホン排水管26側の水深が深くなる(図4(B)参照)。
【0044】
そして、貯留槽20に排水が流入して貯留槽20内の排水の水位が上昇するに伴い、貯留槽20内の空気は押されて貯留槽20の天板20Aに接続される通気管23、及び合流継手29を介して立て管28に排出される。これにより、貯留槽20内に迅速、かつ効率的に排水を流入させることができる。
【0045】
貯留槽20に排水が流入した段階で、未だサイホン排水管26の竪管26B内が満流となっていない初期状態では、サイホン力が発生していないため、貯留槽20に流れ込む単位時間当たりの排水量に対して、サイホン排水管26による単位時間当たりの排水量が少なく、貯留槽20において排水の水位が上昇する。
【0046】
サイホン排水管26の竪管26B内が満流となって、排水が竪管26B内を重力により落下すると、サイホン水頭Hsのポテンシャルエネルギ-により、サイホン力が発生する。サイホン力が発生すると、貯留槽20の排水が流出口22Aから吸引され、排水速度が上がる。また、サイホン力の発生時に、貯留槽20の排水の水位が吸気孔32Bよりも高い位置にある場合、貯留槽20内の排水は吸気孔32B及び開口32Aからも吸引され、給気管30を通ってサイホン排水管26へ送出される(図4(C)参照)。
【0047】
なお、水位が流入口18Aの上端E1よりも高くなると、配管18に排水が溜まり水廻り器具17への影響が懸念されるため、水位が流入口18Aの上端E1に達する前にサイホン力が発生して貯留槽20内からの排水が促進されるように設定されている。
【0048】
図4(C)に示されるように、貯留槽20内の排水の水位が吸気孔32Bよりも高い場合には、吸気孔32B及び開口32Aは水面下に配置されているので、給気管30への空気の吸い込みは生じない。したがって、サイホン力を低下させることなく、排水を促進することができる。
【0049】
図5(D)に示されるように、貯留槽20内の排水の水位が吸気孔32Bよりも低くなると、吸気孔32Bから給気管30を介して、サイホン排水管26内へ空気Aが取り込まれる。これにより、サイホン力が適度に低下し、貯留槽20内の排水に作用する吸引力が適度に低下する。このとき、サイホン力は排水に作用し続けるため、サイホン力が作用していない場合と比較して、貯留槽20内の排水の排出速度は速い。
【0050】
図5(E)に示されるように、貯留槽20内の排水の水位がさらに低下して、開口32A近くになると、給気管30からの吸引力により、開口32Aの近傍の水面が部分的に下がって、開口32Aから空気Aが給気管30へ吸い込まれる。このとき、前述した吸気孔32Bからの空気Aの流入により、サイホン力は適度に低下しており吸引力は弱まっているため、空気の吸い込みによる異音の発生を抑制することができる。
【0051】
そして、貯留槽20内の排水の水位がさらに低下して給気管30への排水流入がなくなり、給気管30へ空気Aのみ流入し、サイホン排水管26への空気Aの流入量が多くなり、サイホン力が更に低下する。これにより、貯留槽20内の排水に作用する吸引力がさらに低下する。したがって、貯留槽20内において、配管22の流出口22A近くまで水位が低下しても(図5(F)参照)、流出口22A近傍の水面が部分的に下がって貯留槽20内の空気を吸い込むことが抑えられ、異音の発生を抑制することができる。
【0052】
本実施形態のサイホン排水システム10では、貯留槽20内の水位が流入口18Aの上端E1よりも鉛直方向下側の吸気孔32Bまで下がるまで、通常のサイホン力で排水が継続する。したがって、貯留槽20内の水位が、流入口18Aよりも上流側に接続された配管18が閉塞される程度の時には、サイホン力を低下させずに排水が行われ、排水を促進することができる。
【0053】
また、貯留槽20内の水位が吸気孔32Bまで下がると、吸気孔32Bから空気Aを流入させることにより、サイホン力による排水を継続させつつ、その吸引力を低下させ、さらに、流出口22Aからの空気Aの吸い込み前に、開口32Aから空気Aを流入させる。これにより、2段階でサイホン力を低下させることができ、流出口22Aからの空気Aの吸い込みによる異音の発生を抑制しつつ、水面高さ(貯水量)に応じた排水能力を確保することができる。
【0054】
また、本実施形態のサイホン排水システム10では、サイホン力が発生している状態で貯留槽20内の水位が流出口22A付近まで低下しても、開口32Aから空気Aが横引き管26Aに供給されるので、吸引力が低下することにより、横引き管の開口部分からの空気の吸い込みが抑えられ、貯留槽内部における異音の発生を抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、給気管30の給気上流部32を、先端から矢印R方向に向かうにつれて底板20Bに近づくように傾斜配置したが、図6に示すように、鉛直方向に延在するように配置してもよい。本実施形態のように、傾斜配置とすることにより給気管30内において排水及び空気をスムーズに流すことができる。
【0056】
また、本実施形態では、吸気孔32Bは、傾斜配置された給気上流部32の側壁の上面側に形成したが、必ずしも上面側に形成する必要はなく、下面側に形成してもよい。本実施形態のように上面側に形成することにより、空気Aが給気上流部32の管内を径方向に横切ることが抑制され、排水及び空気をスムーズに流すことができる。
【0057】
また、本実施形態では、吸気孔32Bを2個形成したが、吸気孔32Bは1個でも3個以上でもよい。本実施形態のように、吸気孔32Bを複数個とすることにより、大きい吸気孔とする場合と比較して、容易に吸気孔32Bを形成することができる。
【0058】
また、本実施形態では、給気上流部32の開口32Aが、上面視で点検口20Eと重なり合う位置に配置されているので、点検口から給気上流部32の保守・点検を容易に実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 サイホン排水システム
18A 流入口、 20 貯留槽、 22A 流出口(接続開口)
26A 横引き管、 26B 竪管
30 給気管、 32 給気上流部
32A 開口、 32B 吸気孔
36A 開口、 E1 上端
図1
図2
図3
図4
図5
図6