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特許7429640燃料電池システムのための廃ガス後処理システム、反応器システム及び廃ガス後処理の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】燃料電池システムのための廃ガス後処理システム、反応器システム及び廃ガス後処理の方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240201BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20240201BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20240201BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240201BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240201BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20240201BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240201BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04007
H01M8/043
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/0662
H01M8/12 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020532768
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 AT2018060301
(87)【国際公開番号】W WO2019113621
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】A51034/2017
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザイドル ミヒャエル
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-119081(JP,A)
【文献】特開2007-317543(JP,A)
【文献】特開2005-32697(JP,A)
【文献】特開2013-85985(JP,A)
【文献】特開2015-228386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 50/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム(2)の廃ガス後処理システム(1a、1b)であって、
前記燃料電池システム(2)のプロセス廃ガスから廃ガス凝縮物を生成するための凝縮部(3)と、
前記凝縮部(3)の下流に設けられ、生成された前記廃ガス凝縮物を収集するための収集部(7)と、
前記燃料電池システム(2)内に真空を生成することによって、前記燃料電池システム(2)から前記凝縮部(3)にプロセス廃ガスを吸引するための吸引装置(4)と、
前記収集部(7)の下流に設けられ、生成された前記廃ガス凝縮物を精製するための精製部(5)と、
精製された廃ガス凝縮物を前記燃料電池システム(2)に再循環するためのバルブアセンブリ(6)と、を備え、
前記バルブアセンブリ(6)は、再循環が遮断される遮断状態と、廃ガス凝縮物が前記燃料電池システム(2)内の前記真空によって再循環される少なくとも1つの通過状態と、の間で切り替えられる、廃ガス後処理システム。
【請求項2】
前記収集部(7)は、前記収集された廃ガス凝縮物の少なくとも一時的な保管のためのバッファリザーバを有することを特徴とする、請求項1に記載の廃ガス後処理システム(1a、1b)。
【請求項3】
前記廃ガス凝縮物を前記収集部(7)から前記精製部(5)に吸い上げるためのポンプ(8)は、前記収集部(7)の下流であって、前記精製部(5)の上流に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の廃ガス後処理システム(1a、1b)。
【請求項4】
精製された廃ガス凝縮物を保管するための再循環リザーバ(9)は、前記精製部(5)の下流であって、前記バルブアセンブリ(6)の上流に配置されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の廃ガス後処理システム(1a、1b)。
【請求項5】
所定量の精製された廃ガス凝縮物を前記燃料電池システム(2)に設定するための流量計(10)は、前記再循環リザーバ(9)の下流であって、前記バルブアセンブリ(6)の上流に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の廃ガス後処理システム(1a、1b)。
【請求項6】
前記再循環リザーバ(9)を換気するための換気バルブ(13)は、前記再循環リザーバ(9)に配置されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の廃ガス後処理システム(1b)。
【請求項7】
前記再循環リザーバ(9)から前記再循環リザーバ(9)の周囲(11)への所定量の精製された廃ガス凝縮物のための出口バルブ(14)は、前記再循環リザーバ(9)に配置されることを特徴とする、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の廃ガス後処理システム(1b)。
【請求項8】
前記凝縮部(3)は、前記廃ガス凝縮物を生成するための熱交換器を有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の廃ガス後処理システム(1a、1b)。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の廃ガス後処理システム(1a、1b)と、固定燃料電池システム(2)と、を備え、前記固定燃料電池システムによって、前記プロセス廃ガスが生成される、反応器システム。
【請求項10】
燃料電池システム(2)の廃ガス後処理方法であって、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の廃ガス後処理システム(1a、1b)を有し、
前記方法は、
前記吸引装置(4)により、前記燃料電池システム(2)内に真空を生成することによって、前記燃料電池システム(2)から前記凝縮部(3)にプロセス廃ガスを吸引するステップと、
前記凝縮部(3)から、前記廃ガス凝縮物を精製するための前記精製部(5)に、生成された前記廃ガス凝縮物を導くステップと、
前記バルブアセンブリの上流から前記バルブアセンブリの下流に向けて圧力が低下している間、前記バルブアセンブリ(6)を前記通過状態に設定するステップと、を含む方法。
【請求項11】
前記燃料電池システム(2)の圧力が前記精製部(5)内及び/又は前記精製部(5)における圧力、及び/又は、精製された廃ガス凝縮物を保管するための再循環リザーバ(9)内及び/又は前記再循環リザーバ(9)における圧力よりも低く設定されている間、前記精製された廃ガス凝縮物は、前記精製部(5)から前記燃料電池システム(2)に再循環されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記バルブアセンブリ(6)の前記通過状態は、前記廃ガス凝縮物の不連続的な再循環のために所定の開放期間に設定されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムのための廃ガス後処理システム、廃ガス後処理システム及び固定燃料電池システムを有する反応器システム、並びに、燃料電池システムのための廃ガス後処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、本発明は、固定高温燃料電池システムのための廃ガス後処理システムに関する。当業者であれば、高温燃料電池システムが溶融炭酸塩燃料電池システム又はMCFCシステムを意図したものであると理解されるであろう。溶融炭酸塩燃料電池システム又はMCFCシステムは、例えば、約580℃~675℃の動作温度で動作する。このような種類の燃料電池において、通常、電解質として、リチウムと炭酸カリウムとからなる混合アルカリ金属炭酸塩溶融物が使用される。
【0003】
固体酸化物燃料電池システム又はSOFCシステムは、同様に、高温燃料電池システムである。SOFCシステムは、約650℃~1000℃の動作温度で動作する。このような電池タイプの電解質は、酸素イオンを伝導可能であるが、電子に対して絶縁効果を有する固体セラミック材料からなる。電極、すなわち、カソード及びアノードは、電解質層の両側に設けられる。電極はガス透過性導電体である。酸素イオン伝導性電解質は、例えば、エネルギーをほとんど消費せずに酸素イオンを移すことができるように、薄い膜として提供される。電解質とは反対側のカソードの外側は、空気によって取り囲まれ、外側のアノード側は、燃焼ガスによって取り囲まれる。一般的に、未使用の空気及び未使用の燃焼ガス、並びに、プロセス廃ガスの形式の燃焼生成物は、吸い出される。
【0004】
従来技術として知られている燃料電池システムでは、抽出されたプロセス廃ガスは、燃料電池システムの周囲に直接排出され、及び/又は、廃ガス凝縮物として、少なくとも部分的に凝縮され、適切な保管容器に保管される。上述した廃ガス凝縮物は、クロム及び/又はニッケルのような汚染物質で汚染されている可能性があることから、適切に廃棄される必要がある。これは、燃料電池システムの動作シーケンスにおける介入を引き起こす可能性があり、これは、燃料電池システムの望ましくない一時的な停止につながる。さらに、保管容器を空にすること又は交換することは、出来る限り避けなければならない労力に関連する。
【0005】
国際公開WO2010/096028A1は、廃ガス凝縮物が燃料電池システムにおいて局所的に精製される燃料電池システムのための凝縮物処理システムを開示している。より正確には、水タンクに保管された凝縮物は、水タンクの下流に配置されるフィルタシステムによって精製され、蒸発器を介して燃料電池システムの加熱領域に戻される。しかしながら、WO2010/096028A1によれば、これは、複雑なライン及びポンプシステムを必要とし、設置スペースを必要とするだけでなく、対応するコストにも関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の問題の少なくとも一部を考慮することである。特に、本発明の目的は、燃料電池システムの周囲への汚染物質の排出を、簡略的、効率的かつ信頼性のある方法で防止することができると共に、燃料電池システムをできるだけ効率的かつ中断することなく動作することのできる、廃ガス後処理システム、反応器システム、及び、燃料電池システムの廃ガス後処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、特許請求の範囲によって達成される。特に、上記目的は、請求項1に記載の廃ガス後処理システム、請求項9に記載の反応器システム、及び、請求項10に記載の方法によって達成される。本発明のさらなる利点は、従属請求項、説明、及び、図面から明らかになるであろう。ここで、廃ガス後処理システムに関して記載される特徴及び詳細は、当然、本発明による反応器システム、本発明による方法に関連して適用され、それぞれの場合において、その逆も同様であり、したがって、開示に関して、本発明の個々の態様を相互に参照する又は常に参照することができる。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、燃料電池システムのための廃ガス後処理システムが利用可能になる。廃ガス後処理システムは、燃料電池システムのプロセス廃ガスから廃ガス凝縮物を生成するための凝縮部と、凝縮部の下流に配置され、生成された廃ガス凝縮物を収集するための収集部と、を有する。さらに、廃ガス後処理システムは、燃料電池システム内に真空(負圧)を生成することによって、燃料電池システムから凝縮部にプロセス廃ガスを吸引する吸引装置を有する。廃ガス後処理システムは、さらに、収集部の下流に配置され、生成された廃ガス凝縮物を精製するための精製部と、精製された廃ガス凝縮物を燃料電池システムに再循環させるためのバルブアセンブリとを有する。バルブアセンブリは、再循環が遮断される遮断状態と、廃ガス凝縮物が燃料電池システム内の真空によって再循環され得る少なくとも1つの通路状態と、の間で切り替えられ得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の文脈において、吸引装置によって精製された真空は、生成された廃棄ガス凝縮物をプロセス水として簡略的かつ効率的な方法で燃料電池システムに戻すために、燃料電池システムにおいて使用され得ることが発見された。本発明によれば、燃料電池システム内の真空によって燃料電池システムに吸引された生成された廃ガス凝縮物による受動的再循環が用いられる。凝縮物の再循環のために付加的に必要とされるポンプシステムを省略することが可能である。これにより、既存の廃ガス後処理システムを特に低コストかつ省スペースで実施することが可能である。吸引装置は、凝縮部を介して燃料電池システムから廃ガス後処理システムの周囲へ廃ガス凝縮物を搬送するための流体搬送装置と解釈することができる。
【0010】
その簡略的な構造により、図示された廃ガス後処理システムは、さらに、既存の燃料電池システムに特に容易に追加され得る。この場合、既存の燃料電池システムに実質的な変更を加える必要はない。一体化された精製部により、燃料電池システムは、さらに、汚染された廃ガス凝縮物の処分を考慮する必要なく、家庭用及び/又は商業用ユニットの固定発電装置として問題なく一体化され得る。
【0011】
精製後に再使用するために、廃ガス凝縮物を燃料電池システムに再循環させることができるという事実により、汚染された廃ガス凝縮物の高価な処分を省くことが可能である。これにより、特に、汚染された廃ガス凝縮物の処分中に燃料電池システムの動作を中断しなければならないことを保証することが可能である。
【0012】
廃ガス後処理システムは、固定燃料電池システム、特に、固定高温燃料電池システム、例えば、SOFCシステムで使用するように構成されることが好ましい。凝縮部は、燃料電池システムのすぐ下流、特に「ホットボックス」と呼ばれる燃料電池システムの高温部のすぐ下流に配置されることが好ましい。吸引装置は、凝縮部のすぐ下流に配置されることが好ましい。これにより、特に効率的且つ効果的な方法でプロセス廃ガスを燃料電池システム又はホットボックスから凝縮部に吸引することが可能である。このような配置では、吸引装置は遮断バルブ機能を提供する。すなわち、このような配置により、吸引装置の上流側の一方の側で真空を維持することができ、一方、吸引装置の下流側の一方の側で周囲圧力を使用することができる。
【0013】
精製部から燃料電池システムへの精製された廃ガス凝縮物の再循環中、燃料電池システムの少なくともいくつかの部分において、特に、燃料電池システムの高温領域において、真空が設定され、一方、過剰圧力が精製部内及び/又は精製部において設定され、周囲圧力が再循環リザーバ内及び/又は再循環リザーバにおいて設定される。
【0014】
精製部は、廃ガス凝縮物中のクロム及び/又はニッケルなどの不要な物質を濾過するためのフィルタシステムを有する。フィルタシステムは、例えば、クロム及び/又はニッケルイオンを結合するイオン交換体(カートリッジ内の粒状樹脂)として設計することができる。精製部は、また、有利には、すべての法的限界、例えば、亜硝酸塩の限界又はpH値に従うことができるように設計され得る。バルブアセンブリは、燃料電池システムの方向への廃ガス凝縮物の流れの開ループ及び/又は閉ループ制御を遮断又は可能にするように構成される。この目的のために、バルブアセンブリは、遮断バルブ又は流量制御バルブを有することが好ましい。遮断状態において、精製部から燃料電池システムへの流路が少なくとも1点で遮断される。精製部とバルブアセンブリとの間に、別の機能構成要素を配置することができる。バルブアセンブリの通過状態において、燃料電池システム内の真空によって、バルブアセンブリを介して精製された廃ガス凝縮物を精製部から燃料電池システム内に吸引することができる。別の機能構成要素をバルブアセンブリと精製部との間に配置することができる。別の機能構成要素を介して、廃ガス凝縮物が精製部から燃料電池システムへの途中を通過することができるか、又は、通過しなければならない。すなわち、バルブアセンブリが精製部の下流に配置されているという事実は、バルブアセンブリが精製部のすぐ下流に、すなわち、間に配置される廃ガス後処理システムの機能構成要素がない状態で配置されることを意味すると解釈する必要はない。
【0015】
プロセス廃ガスはプロセスガスを含む。ホットボックス内であっても、アノード廃ガスは、カソード廃ガスと混合され、燃料残留物は、オキシキャット(oxicat)内で燃焼される。その結果、廃ガス冷却器内で凝縮するプロセス廃ガスは、一般的に、いかなる燃焼ガスも含まなくなる。凝縮部を介して、廃ガス凝縮物を収集部の方向に運ぶことができ、凝縮されていないプロセス廃ガスを廃ガス後処理システムの周囲に運ぶことができる。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、収集部は、収集された廃ガス凝縮物の少なくとも一時的な保管のためのバッファリザーバを有することが可能である。バッファリザーバは、存在する凝縮物が少なすぎると廃ガスが精製部に吸い上げられないことを保証する。バッファリザーバは、ポンプが作動しているときに搬送され得る最小量を保証する。特に、バッファリザーバは、精製部の方向への廃ガス凝縮物の流量を可能な限り均一にすることができ、その結果、精製部が最適に機能する流量及び圧力を均一に供給することができるだけでなく、正確に利用可能にすることもできる。バッファリザーバは、好ましくは、液体タンクとして解釈されるべきである。液体タンク又はバッファリザーバは、凝縮部から廃ガス凝縮物を受け入れるための流体入口と、一時的に保管された廃ガス凝縮物を精製部の方向に排出するための流体出口と、を有することができる。
【0017】
さらに、本発明による廃ガス後処理システムの場合には、廃ガス凝縮物を収集部から精製部内に吸い上げるポンプを、収集部の下流であって、精製部の上流に配置することが可能である。本発明によれば、ポンプは二重機能を果たす。一方では、ポンプによって、所定量の廃ガス凝縮物を収集部から又はバッファリザーバから精製部に常に搬送することができる。他方では、ポンプはバルブ機能を有しており、その手段によって、収集部、凝縮部、及び、ポンプの上流の燃料電池システム、及び/又は、ポンプの下流の精製部において、所望の圧力レベルを維持することができる。しかしながら、安全性をさらに高めるために、追加のチェックバルブを設けることも可能である。ポンプの上流では、特に、真空を維持することができ、一方、高圧又は過圧は、ポンプのポンプ処理によって、ポンプの下流に配置される少なくともいくつかの部分において、維持及び/又は生成することができる。この圧力勾配は、所望の廃ガス凝縮物の再循環にプラスの影響を与える。この目的のために、ポンプは、容積式ポンプとして構成されることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明による廃ガス後処理システムの場合には、精製された廃ガス凝縮物を保管するための再循環リザーバを精製部の下流であって、バルブアセンブリの上流に配置することが可能である。再循環リザーバを用いて、できるだけ均一及び/又は所定の廃ガス凝縮物の再循環流量を設定することができる。再循環リザーバにより、廃ガス凝縮物の再循環は、精製部の精製動作とは比較的独立した方法で実行され得る。すなわち、精製部が非作動状態の間、ポンプは、いかなる廃ガス凝縮物も収集部から精製部に一時的に吸い上げないので、それにもかかわらず又は特にそのような状態で保管された精製された廃ガス凝縮物は、再循環リザーバから燃料電池システムに導かれ又は吸引され得る。再循環リザーバは、精製された廃ガス凝縮物の一時的な保管のための別のバッファリザーバとして、解釈され得る。
【0019】
さらに、本発明の1つの設計変形例の場合には、燃料電池システムに再循環される廃ガス凝縮物の規定量を設定するための流量計を、再循環リザーバの下流であって、バルブアセンブリの上流に配置することが可能である。流量計を用いて、燃料電池システム内への過度に高い又は過度に低い再循環量を防止することができ、それに応じて、燃料電池システムを保護することができる。さらに、流量計を使用して、再循環リザーバが燃料電池システムの方向へ非常に速く及び/又は非効率的に空になることを防止することも可能である。代替的に又は付加的に、水を選択的に添加することによって、効率性を高めることもできる。
【0020】
さらに、本発明による廃ガス後処理システムでは、再循環リザーバを換気するための換気バルブを再循環リザーバに配置することが可能である。換気バルブによって、再循環リザーバ、したがって、バルブアセンブリの上流における所望の圧力を常に簡単な方法で確保することができる。それにより、バルブアセンブリが開いているとき、再循環リザーバと燃料電池システムとの間の所望の圧力勾配を可能にすることが簡単な方法で可能となる。したがって、追加のポンプを必要とすることなく、廃ガス凝縮物を常に再循環リザーバから燃料電池システムに吸引することが可能となる。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、再循環リザーバから再循環リザーバの周囲への精製された廃ガス凝縮物の所定の排出のための出口バルブが、廃ガス後処理システム内の再循環リザーバに配置されることが可能である。再循環リザーバ内に十分な量の精製された廃ガス凝縮物が存在する、又は、再循環リザーバ内に最大許容量の廃ガス凝縮物が存在するとすぐに、出口バルブを通過状態に切り換えるか又は開くことができる。これにより、例えば、再循環リザーバの過剰充填を防止するために、精製部の動作を中断する必要性を防止することが可能である。出口バルブは、再循環リザーバの下流の別個の流体ラインに配置されることが好ましい。しかしながら、出口バルブを再循環リザーバの上流に配置することもできる。その結果、この時点で、再循環リザーバへのバイパスが形成される。このようにして、再循環リザーバに到達する前であっても、精製された廃ガス凝縮物を精製部から再循環リザーバ又は廃ガス後処理システムの周囲に直接向けることができる。
【0022】
本発明による廃ガス後処理システムでは、凝縮部は、廃ガス凝縮物を生成するための熱交換器又は伝熱装置を有することができる。すなわち、熱交換器は、燃料電池システムのプロセス廃ガスから廃ガス凝縮物を生成するように配置及び構成されている。本発明の範囲内の実験において、熱交換器は、特に効率的かつ効果的な方法で所望の凝縮に好適であることが見出された。燃料電池システム及び吸引装置が熱交換器の1つの低温側又は複数の低温側に面するように、熱交換器は廃ガス後処理システム内に配置されることが好ましい。熱交換器の1つの高温側又は複数の高温側を提供するために、前記熱交換器は、適切な加熱源を備えることができ、特に、それと流体的に接続することができる。交換器を加熱するために、交換機を燃料電池システムの加熱源に流体的に接続することができる。この加熱源は、唯一又は追加の加熱源としての役割を果たすことができる。次いで、燃料電池システムの加熱源は、熱交換器の高温側に対応する方法で流体的に接続される。このようにして、特に、燃料電池システムの高温のプロセス流体によって熱交換器を加熱することができる。
【0023】
熱交換器は、原則として、システムからの廃熱を利用するように設計され配置されている。熱エネルギーは、例えば、廃ガス熱交換器を介してシステム及び/又はボイラーに供給され得る。冷却温度が低いほど、システム全体の効率が向上する。水の凝縮により、燃料の発熱量を利用することができるため、効率をさらに高める。SOFCの廃ガスは、熱交換器の高温側を介して通過する。ほとんどの用途では、特に、冷却は、冷房に使用される建物システムの水で行われる。
【0024】
本発明の別の態様によれば、上記に詳細に説明した廃ガス後処理システムとプロセス廃ガスが生成される固定燃料電池システムとを有する反応器システムが提供される。したがって、本発明による反応器システムは、本発明による廃ガス後処理システムを参照して詳細に説明した利点と同じ利点を提供する。特に、反応器システムの燃料電池システムは、固定燃料電池システムとして、好ましくは、固定SOFCシステムとして構成される。したがって、固定発電装置として燃料電池システムを解釈することができる。
【0025】
さらに、上記に詳細に説明した廃ガス後処理システムを有する燃料電池システムのための廃ガス後処理方法が利用可能になる。この方法は、以下のステップを含む。
‐吸引装置によって、燃料電池システム内に真空を生成することによって、燃料電池システムから凝縮部にプロセス廃ガスを吸引するステップ、
‐凝縮部から生成された廃ガス凝縮物を、廃ガス凝縮物を精製するための精製部に導くステップ、
‐バルブアセンブリの上流からバルブアセンブリの下流に向けて圧力が低下している間、バルブアセンブリを通過状態に設定するステップ。
【0026】
したがって、本発明による方法は、本発明による廃ガス後処理システムを参照して詳細に説明した利点と同じ利点を提供する。本発明の範囲内の実験において、燃料電池システムから廃ガスを吸引することによって0.9バール~1バールの間の範囲の真空が燃料電池システム内に生成されると、廃ガス凝縮物の特に有利な再循環を達成することができることが見出された。バルブアセンブリの上流からバルブアセンブリの下流に向けて圧力が低下している間、バルブアセンブリが通過状態に設定されると、精製された廃ガス凝縮物は、開放されたバルブアセンブリの上流に配置された燃料電池システムに、すなわち、任意選択で流量計を介して精製部から又は再循環リザーバから自動的に吸引され得る。この場合、好ましくは、所定量の精製された廃ガス凝縮物が再循環リザーバ内に存在する場合にのみ通過状態に設定されるように、バルブアセンブリは設定される。これにより、燃料電池システムがこの時点で空気も吸引しないようにすることが可能であり、その結果、燃料電池システムが損傷する可能性があり、及び/又は、真空状態が失われる可能性がある。
【0027】
さらに、本発明による方法の場合には、燃料電池システム内が精製部内及び/又は精製部及び/又は再循環リザーバ内及び/又は再循環リザーバよりも低い圧力に設定されている間、精製された廃ガス凝縮物を精製部から燃料電池システムに再循環させることが可能である。特に、真空は、好ましくは、ポンプによって、精製部内及び/又は精製部に生成され、一方、周囲圧力は、優勢であるか、又は、再循環リザーバの領域に設定される。精製された廃ガス凝縮物が燃料電池システムに再循環されるとすぐに、この状態において、ポンプを遮断状態に切り替え、バルブアセンブリを通過状態に切り替えることが可能である。
【0028】
本発明の別の設計変形例によれば、方法の場合には、廃ガス凝縮物の不連続的な再循環のために、バルブアセンブリの通過状態を所定の開放持続時間に設定することが可能である。これにより、燃料電池システムに過剰な廃ガス凝縮物が供給されるのを自動的に防止することが可能になる。好ましくは、燃料電池システムの動作状態及び/又は再循環リザーバの充填状態に応じて、開放持続時間を設定又は事前定義することができる。しかしながら、連続的な再循環がより有利であると考えられる。
【0029】
本発明を改善するさらなる手段は、図面に概略的に示される本発明の様々な例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるのであろう。特許請求の範囲、説明又は図面から明らかになる特徴及び/又は利点は、すべて、設計の詳細及び空間的配置を含めて、それ自体又は様々な組み合わせのいずれかで本発明に不可欠であり得る。以下の図は、それぞれ概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態による廃ガス後処理システムと燃料電池システムとを有する反応器システムを示す。
図2】本発明の第2実施形態による廃ガス後処理システムと燃料電池システムとを有する反応器システムを示す。
図3】本発明による方法を説明するためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1図3において、同一の機能及び動作モードを有するエレメントには、それぞれ同一の参照符号が付されている。
【0032】
図1は、燃料電池システム2と、それに接続された廃ガス後処理システム1aとを有する反応器システムを示す。燃料電池システム2は、ホットボックスと呼ばれる高温部12を有する。プロセス廃ガスは、この高温部から廃ガス後処理システム1aに導かれる又は吸引され得る。廃ガス後処理システム1aは、燃料電池システム2のプロセス廃ガスから廃ガス凝縮物を生成するための熱交換器の形態の凝縮部3を有する。廃ガス後処理システム1aは、さらに、生成された廃棄ガス凝縮物を収集するための収集部7を凝縮部3の下流に有する。収集部7は、収集された廃ガス凝縮物の少なくとも一時的な保管のためのバッファリザーバを有する。
【0033】
廃ガス後処理システム1aは、さらに、燃料電池システム2内に真空を生成ことによって、プロセス廃ガスを燃料電池システム2から凝縮部3内に吸引する吸引装置4を有する。吸引装置4は、凝縮部の低温側では、低温のためより安定的かつより効率的に動作可能であることから、凝縮部4のすぐ下流に配置される。したがって、吸引装置4によって、凝縮部3を介して、凝縮されていないプロセス廃ガスを反応器システムの周囲に吸引又は導くことが可能である。
【0034】
廃ガス後処理システム1aは、さらに、生成された廃ガス凝縮物を精製するための精製部5を収集部7の下流に有する。廃ガス凝縮物を収集部7から精製部5に吸い上げるためのポンプ8は、精製部5の上流であって、凝縮部3の下流に配置される。廃ガス後処理システム1aは、さらに、精製された廃ガス凝縮物を燃料電池システム2内に再循環させるためのバルブアセンブリ6を有する。バルブアセンブリ6は、再循環が遮断される遮断状態と、廃ガス凝縮物が燃料電池システム2内の真空によって再循環され得る少なくとも1つの通過状態と、の間で切り替えられ得る。
【0035】
精製された廃ガス凝縮物を保管するための再循環リザーバ9は、精製部5の下流であって、バルブアセンブリ6の上流に配置される。燃料電池システム2に再循環される廃ガス凝縮物の規定量を設定するための流量計10は、再循環リザーバ9の下流であって、バルブアセンブリ6の上流に配置される。
【0036】
図1は、反応器システムの動作状態を示す。反応器システムの動作状態において、バルブアセンブリ6が通過状態の場合、精製された廃ガス凝縮物は、制御された方法で、再循環リザーバから燃料電池システム2に吸引される。この場合、図1に示すように、燃料電池システム2、凝縮部3、及び、収集部7は、真空領域U内に配置され、精製部5は、高圧領域H内に配置され、再循環リザーバ、流量計10、及び、バルブアセンブリ6は、周囲圧力領域内に配置される。その結果、それぞれの機能構成要素は、同様に、対応する圧力状態にある。高圧領域Hは、真空領域U及び周囲圧力領域Aよりも高い圧力を有する反応器システムの領域として理解されるべきである。
【0037】
図2は、本発明の第2実施形態による廃ガス後処理システム1bを有する反応器システムを示す。図2に示す廃ガス後処理システム1bでは、再循環リザーバ9を換気するための換気バルブ13が閉鎖した再循環リザーバ9に配置される。再循環リザーバ9から再循環リザーバ9の周囲11へ所定量の精製された廃ガス凝縮物を排出するための出口バルブ14は、さらに、再循環リザーバ9の下流に配置される。精製された廃ガス凝縮物は、例えば、送管を介して周囲に排出され得る。送管内の凝縮物の蓄積を避けるために、戻りラインが送管に直接設けられる。戻りラインを介して、凝縮物は、送管から収集部7に吸引される。これにより、凝縮物は、収集部7に収集され、生成された廃ガス凝縮物と共に排出される。これにより、アノード廃ガスは、それでも送管に到達し、そこで凝縮する場合、周囲に排出される前にシステム内に再循環されることが保証される。もちろん、この戻りラインを図1に示す実施形態に設けることができる。真空下での周囲11の動作を回避するために、一方向換気バルブを設置することも有利であり得る。この場合、出口バルブ14は、固定値に設定される圧力放出バルブとして設計され得る。
【0038】
次に、図3を参照して、図1に示すような廃ガス後処理システム1aを有する燃料電池システム2の廃ガス後処理方法を説明する。第1のステップS1において、プロセス廃ガスは、吸引装置4によって、燃料電池システム2内に真空が生成されることによって、燃料電池システム2から凝縮部3に吸引される。この目的のために、バルブアセンブリ6は、遮断状態に切り換えられる。
【0039】
第2のステップS2において、生成された廃ガス凝縮物は、凝縮部3から廃ガス凝縮物を精製するための精製部5に導かれる。
【0040】
燃料電池システム2又は燃料電池システム2の高温部12への精製された廃ガス凝縮物の再循環のために、第3のステップにおいて、バルブアセンブリ6の上流から下流に向けて圧力が低下する間、バルブアセンブリ6は、通過状態に切り替えられる。図示された実施形態によれば、燃料電池システム2において、精製部5及び再循環リザーバ9よりもより低い圧力が設定されると、精製された廃ガス凝縮物は、精製部5から燃料電池システム2に再循環される。この場合、バルブアセンブリ6の通過状態は、燃料電池システム2の動作状態及び再循環リザーバ9の充填レベルに応じて、廃ガス凝縮物の不連続な再循環のために、所定の開放期間に設定される。
【0041】
例示された実施形態に加えて、本発明は、さらなる構成原理を許容する。すなわち、本発明は、例示された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0042】
1a、1b 廃ガス後処理システム
2 燃料電池システム
3 凝縮部
4 吸引装置
5 精製部
6 バルブアセンブリ
7 収集部
8 ポンプ
9 再循環リザーバ
10 流量計
11 周囲
12 高温部
13 換気バルブ
14 出口バルブ
A 周囲圧力
H 高圧
U 真空
図1
図2
図3