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特許7429643落射蛍光測定用の光学フローサイトメータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】落射蛍光測定用の光学フローサイトメータ
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20240101AFI20240201BHJP
   G01N 15/1434 20240101ALI20240201BHJP
   G01N 15/12 20240101ALI20240201BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G01N15/14 C
G01N15/14 D
G01N15/14 G
G01N15/12 Z
G01N21/05
G01N21/49 Z
G01N21/64 Z
G01N27/02 D
G01N33/48 M
G01N33/483 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020537882
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 IB2017001345
(87)【国際公開番号】W WO2019058152
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-09-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】520096703
【氏名又は名称】ビーアイティー グループ フランス
【氏名又は名称原語表記】BIT GROUP FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】マニン,オリヴィエ
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】渡戸 正義
【審判官】渡▲辺▼ 純也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-184841(JP,A)
【文献】特表2012-525589(JP,A)
【文献】特表2015-512029(JP,A)
【文献】特開2002-207035(JP,A)
【文献】特開平3-235037(JP,A)
【文献】特開平8-136440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液細胞特性評価用の光学フローサイトメータ(1)であって、
血液細胞流れを提供するフローセル(3)と、
前記フローセル(3)内を流れる血液細胞を照射する少なくとも一つの発光ダイオード(9)と、
第1レンズ群(13)を使用して前記血液細胞流れに励起光(8、4)を集束し、各血液細胞から来る蛍光を集光する落射蛍光モジュール(2)、および前記第1レンズ群(13)から来る落射蛍光を検出する単一ピクセル光検出器(14)と、
少なくとも1つの光散乱測定モジュール(5、19、24、25、26)と、
を備える光学フローサイトメータであって、
前記光散乱測定モジュール(5、19、24、25、26)は、
前記フローセル(3)から放射される光を集光する第2レンズ群(19)と、
前記第2レンズ群(19)から来る散乱光を検出する単一ピクセル光検出器(26)及び前記散乱光の伝播の少なくとも一つの方向に沿って光を選択する絞り(24)を含む少なくとも一つの散乱検出チャネル(24、25、26)と、
を備え、
前記絞り(24)は、前記第2レンズ群(19)と単一ピクセル光検出器(26)との間に配置され、前記第2レンズ群(19)及び前記絞りが、照射ビーム発散に対して0度及び5度の間の角度で前記血液細胞流れにより散乱される前方散乱光のみを集光するように設計され、前記第2レンズ群(19)から来る前記散乱光が血液細胞の体積に関連している、光学フローサイトメータ。
【請求項2】
前記第2レンズ群(19)を含んで構成される軸方向光損失測定モジュール(5、19、20、23、22)を備え、
前記軸方向光損失測定モジュール(5、19、20、23、22)は、少なくとも一つの軸方向光検出チャネル(20、23、22)を備え、
前記軸方向光検出チャネル(20、23、22)は、
他の単一ピクセル光検出器(22)と、
前記第2レンズ群(19)から来る光の一部を、前記他の単一ピクセル光検出器(22)に向けるビームスプリッタ(20)を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の光学フローサイトメータ。
【請求項3】
前記第1レンズ群(13)が、前記フローセル(3)に対して前記第2レンズ群(19)の反対側に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学フローサイトメータ。
【請求項4】
前記第1レンズ群(13)は、前記発光ダイオード(9)により放射される光を、前記フローセル(3)内の110μm×30μmの光学検査区域に成形および集束するように設計されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学フローサイトメータ。
【請求項5】
前記発光ダイオード(9)が、700nm未満のピーク波長を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学フローサイトメータ。
【請求項6】
前記発光ダイオード(9)により放射される光に対して蛍光を分離するダイクロイックミラー(12)を備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学フローサイトメータ。
【請求項7】
前記第1レンズ群(13)および前記第2レンズ群(19)が少なくとも一つの非球面を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学フローサイトメータ。
【請求項8】
前記第1レンズ群(13)が、前記発光ダイオードにより放射される光(8)を集束し、少なくとも0.1ステラジアンの立体角に沿って、1.1ステラジアンの立体角に沿って落射蛍光を集光することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の光学フローサイトメータ。
【請求項9】
前記第2レンズ群(19)が、前記第1レンズ群(13)の開口数より大きな開口数を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学フローサイトメータ。
【請求項10】
前記フローセル(3)が、流体力学的集束、または受動シースもしくはシース無しの技術に従って前記血液細胞流れを生成するように構成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学フローサイトメータ。
【請求項11】
コールター原理により循環血液細胞のインピーダンスを測定するために前記フローセルに電気検知区域を作製する二つの電極を含む粒子インピーダンス測定モジュールを更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学フローサイトメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液細胞流れに蛍光を当てることによる血液細胞特性評価用の光学フローサイトメータに関する。本発明は、液体媒体に浮遊している粒子の計数および特性評価のための自動装置の分野に関し、より具体的には、血液サンプルに含まれる様々なタイプの細胞を計数および特性評価する血液機器の分野に関する。
【0002】
このように、最新技術および提案する発明は、例えば、血液サンプルに含まれる白血球の数をカウントし、光散乱および蛍光に基づいて様々な亜集団内の相対的分布を測定する装置に関する。
【0003】
既知の光学フローサイトメータにおいて、サンプルは細胞流れに集束する。集束されたレーザビームは、流れる血液細胞に対して垂直に向けられる。
【0004】
蛍光フローサイトメータの光学機構においてレーザ光源が使用されるとすぐに、レーザ光の方向に対して垂直に蛍光が測定される。
【0005】
レーザは、フローセル内部に集束されたビームを、典型的な寸法100μm×30μmの楕円形ガウススポットに送る。
【0006】
レーザ集束光学系に対する設計上の制約は、レーザ出力ビームの非常に特殊な性質に由来する。典型的なレーザ集束光学系は、長い焦点距離(>15mm)を有するため、必要とされる100μm×30μmのスポットサイズをフローセルに得ることができる。ほとんどのレーザ集束光学系はまた、出力ビームの円形プロファイルを、フローサイトメトリ測定にさらに適した楕円形のものに変更する一または複数の円柱レンズも有する。
【0007】
焦点距離が短いレーザ集束光学系を使用すると、出力ビームを、集束光学系に入る前にもう一度処理する必要がある。
【0008】
さらに、焦点距離が長い光学系を使用して蛍光を集光することは実際にはできない。この種の光学系は高い開口数を必要とする。長い焦点距離を使用すると、現実的ではない極めて大きなレンズ径を伴うことになる。
【0009】
そのため、レーザビームを100μm×30μmの楕円形スポットに集束すること、および高開口数(NA)で蛍光を集光することの両方を良好に実行する光学系を設計することはできない。
【0010】
そのため、すべてのレーザ使用型蛍光フローサイトメトリ機構は、レーザ励起ビームを集束し、蛍光を集光するために異なるレンズに依拠する。
【0011】
これが、レーザ使用型蛍光フローサイトメトリ機構において、蛍光が常に励起ビームに対して垂直な方向に沿って集光される理由である。
【0012】
結果として、蛍光検出を備えたレーザフローサイトメトリのすべての機構は、フローセルの三つの異なる壁の近くに三つのレンズを伴う。この場合、フローセルの三つの異なる壁に沿ってすべての光学系を固定するスペースがほとんどないため、構造設計は極めて困難になる。
【0013】
既知の文書である米国特許出願第2009/0068726号明細書は、励起軸に対して90度に配置された蛍光測定用のレンズ群を備えるシステムを記載している。
【0014】
光学機構が二つの異なる光源を含む場合、落射蛍光および粒子散乱が容易に測定されることはよく知られている。通常、粒子散乱測定にはレーザが使用され、落射蛍光測定には追加の拡張型光源(一般にはアークランプ)が使用される。散乱光検出器に衝突する光線は、レーザ光源から発生する。落射蛍光測定のため、サンプルはアークランプ光源により励起される。
【0015】
この種の機構については、文書「シングルアークランプおよび分散エレメントを使用したフローサイトメトリにおける多波長照射」サイトメトリA、第8巻、445~452頁(1987)に記載されている。この種のハイブリッド機構は、非常に異なる二つの光源が使用されるため、極めて高価である。各光源は、独自の集束光学系および独自の光検出器を有する。この種の機構の複雑さは、そのようなシステムの設計、製造、および調整に関して言えば制限要因である。この複雑な機構を、ルーチン分析装置用の頑丈な産業用変換器に変えることは極めて困難である。
【0016】
本発明の目的は、蛍光測定および散乱測定を実行するコンパクトな光学フローサイトメータを提案することである。
【0017】
本発明の別の目的は、頑丈な光学フローサイトメータを提案することである。
【0018】
上記の目的のうち少なくとも一つは、血液細胞特性評価用の光学フローサイトメータにおいて、
-血液細胞流れを提供するフローセルと、
-フローセル内を流れる血液細胞を照射する少なくとも一つの発光ダイオードと、
-同じ第1レンズ群を使用して血液細胞流れに励起光を集束し、各血液細胞から来る蛍光を集光する落射蛍光モジュール、および第1レンズ群から来る落射蛍光を検出する第1一体型光検出器と、
-光散乱測定モジュール、軸方向光損失測定モジュール、および粒子インピーダンス測定モジュールのうち少なくとも一つと
を備える光学フローサイトメータを用いて実現される。
【0019】
本発明に係る光学フローサイトメータは、細胞の分析を可能にするために、落射蛍光検出を実行できるサイトメータと、測定モジュールとを提供する。
【0020】
本発明によれば、光散乱測定モジュールは、フローセルから放射される光を集光する第2レンズ群と、第2レンズ群から来る散乱光を検出する一体型光検出器を含む少なくとも一つの散乱検出チャネルとを備えてもよい。
【0021】
例えば、軸方向光損失測定モジュールは、フローセルから放射される光を集光する第2レンズ群と、第2レンズ群から来る散乱光を検出する一体型光検出器を含む少なくとも一つの軸方向光検出チャネルとを備えてもよく、また光学フローサイトメータが光散乱測定モジュールも含む場合に同じ第2レンズ群を備えてもよい。
【0022】
本発明に係る光学フローサイトメータは、落射蛍光および散乱の測定が同じ光源から実行されるため、根本的に異なる。
【0023】
同じ光源が、血液細胞蛍光励起および血液細胞散乱測定の両方に使用される。
【0024】
現在の光学フローサイトメータは、従来技術のシステムより安価であり、はるかに頑丈であり、工業的な製造とルーチン分析装置での使用とに完全に適合する。
【0025】
二つのレンズ群のみが、光の集束および集光に使用される。第1レンズ群は、励起光の集束および蛍光の集光に使用される。第3の90度レンズ群は必要ない。
【0026】
標準的な落射蛍光顕微鏡の機構とは異なり、本発明に係る光学フローサイトメータは、検査区域、フローセルを通過する際に血液細胞により散乱される光の測定を可能にする。
【0027】
すべての標準的な落射蛍光顕微鏡システムは、一または複数のCCDカメラに依拠して、検査区域の一または複数の画像を取得する。標準的な蛍光顕微鏡システムにおける血液細胞特性評価は、プロセッサユニットにおいて実行される画像処理ソフトウェアにより実行される。
【0028】
本発明に係る光学フローサイトメータは、血液細胞特性評価が画像取得に依拠せず、粒子散乱および落射蛍光測定に依拠するため、典型的な落射蛍光顕微鏡とは根本的に異なる。これは、一体型検出器が、検出された光の強度に基づいてアナログ信号(パルス)を検出することを意味する。信号は光の大きさを表す。画像は無い。このように、処理ユニットにより実行される測定は、フローセル内を連続的に流れる各細胞に関する。
【0029】
本発明に係る血液細胞特性評価は、多次元ドットプロットのクラスタリングに依拠してもよい。従来技術のようにカメラを使用する場合、血液細胞特性評価はカメラ画像取得からの形状認識を必要とする。
【0030】
本発明によれば、血液細胞特性評価は、白血球、赤血球、網状赤血球、および網状血小板などの特性評価を含んでもよい。
【0031】
したがって、本発明の光学フローサイトメータは二つのレンズ群のみを使用し、細胞流れの励起軸に対して垂直な測定は行わない。そのため、構造設計がより簡単になる場合がある。そのため、先行技術のシステムに関して、後流寸法を備えた光学フローサイトメータを作製することができる。
【0032】
また、本発明に係る光学フローサイトメータでは、同じレンズ群が励起および蛍光集光に使用されるため、光学調整が少なくて済む。光学アライメントは、従来技術の標準的な垂直機構では三つなのに対し、二つのみが必要である。
【0033】
LEDは非コヒーレント光源であるため、均一な強度および長方形状を有する検査区域を生成することができる。集光レンズおよび長方形の開口部を使用できる。
【0034】
均一な強度および長方形状を有する検査区域は、流れる粒子の横方向の位置決め感度を大幅に緩和する。光パルスの特性(振幅、幅)は、検査区域の表面全体に亘って一定である。
【0035】
従来技術の標準的なレーザフローサイトメトリ機構において、検査区域はガウス強度プロファイルを持つ楕円形である。流れる粒子の、検査区域中心からの偏向は、光パルスの振幅および幅の低下を伴う。
【0036】
具体的には、第1レンズ群は、フローセルに対して第2レンズ群の反対側に配置されてもよい。
【0037】
このような配置により、構造設計が簡素化される。
【0038】
好ましくは、第1レンズ群は、発光ダイオードにより放射される光を、フローセル内の好ましくは110μm×30μmの光学検査区域に成形および集束するように設計してもよい。言い換えれば、LEDは、フローセル内部に集束したビームを、一つずつのセル測定に適合する寸法の均一且つ長方形の検査区域に送る。
【0039】
好ましくは、発光ダイオードは、700nm未満のピーク波長を有してもよい。この短波長は、血液細胞の内部構造による光散乱を強化する。それは血液細胞の亜集団間のより良い差別化につながる。
【0040】
本発明によれば、散乱検出チャネルは、少なくとも一つの方向に沿って光を選択する絞りを備えてもよい。
【0041】
血液細胞により前方方向に散乱される光の測定は、血液細胞の体積に関連する。この方向は励起ビームと非常に近く、通常5度未満である。この測定を実行するには、フローセルから放射される光を特定の方向に沿って集光する必要がある。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2レンズ群は、照射ビーム発散に対して角度5度および/または5~20度に含まれる角度で血液細胞流れにより散乱される前方散乱光を集光するように設計される。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、軸方向光検出チャネルは、軸方向光損失を測定する光学手段を備えてもよい。
【0044】
軸方向光損失は、細胞がビームを通過するときにゼロ度で照射ビームから失われる総光の測定値である。
【0045】
光学フローサイトメータは、発光ダイオードにより放射される光に対して蛍光を分離するダイクロイックミラーを備えてもよい。
【0046】
有利には、第1レンズ群および第2レンズ群は、少なくとも一つの非球面を含んでもよい。
【0047】
非球面レンズを使用することで、集光光学系に対する高レベルな収差補正を実現することが可能になる。
【0048】
LED出力光の集光効率、およびフローセルにおける小さなスポット、例えば100μm×30μmへの再集束は、高開口数(NA)集束光学系を用いて実現できる高度発散ビームを伴う。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1レンズ群は、発光ダイオードにより放射される光を集束し、少なくとも0.1ステラジアンの立体角に沿って、好ましくは1.1ステラジアンの立体角に沿って落射蛍光を集光する。このような値は、それぞれ少なくとも0.17、好ましくは0.57といった高開口数に対応する。
【0050】
本発明によれば、高開口数の第1レンズ群を使用することにより、LEDから可能な限り最大の光量を集光すること、およびフローセルから可能な限り最大量の蛍光を集光することが両方可能になる。
【0051】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1レンズ群は、4mm~7mmの等価焦点距離(EFL)を持つ約10mmの直径を有してもよい。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1レンズ群は約0.1までの倍率を有し、血液細胞流れは50mm~90mmの距離に配置されてもよい。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、第2レンズ群は、少なくとも0.1ステラジアンの立体角に沿って、好ましくは1.1ステラジアンの立体角に沿って血液細胞により散乱される光を集光してもよい。
【0054】
高開口数を有する第2レンズ群により、フローセルから可能な限り最大量の散乱光を集光することができる。
【0055】
光が粒子により散乱される場合、それは、入射光線が粒子によりその初期方向から偏向されることを意味する。光線は、フローセルへの入射角より大きな角度でフローセルから出ることになる。好ましくは、第2レンズ群は、第1レンズ群の開口数より高い開口数を有してもよい。
【0056】
言い換えれば、第1レンズ群は通常、θ=30度の半角でフローセルにビームを集束してもよい。それは、αが前方散乱角度範囲であるとして、第2レンズ群が角度θ+αの光線を処理する必要があることを意味する。ビームがこのような高開口を有する場合、入射照射ビームと、粒子により散乱される偏向ビームとの境界を区別することは非常に困難になる。好ましくは、高レベルの収差補正をレンズ群に適用してもよい。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、第2レンズ群は、第1レンズ群の直径より大きな直径を有してもよい。
【0058】
本発明の有利な実施形態によれば、フローセルは、流体力学的集束、または受動シースもしくはシース無しの技術に従って血液細胞流れを生成するように構成されてもよい。LEDは、レーザとは異なり、受動シースまたはシース無しでも正常に機能する。
【0059】
本発明の別の実施形態によれば、粒子インピーダンス測定モジュールは、コールター原理により循環血液細胞のインピーダンスを測定するためにフローセルに電気検知領域を作製する二つの電極を備えてもよい。
【0060】
このインピーダンス測定は、DC電流、AC電流、またはその両方で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明を説明する目的で、現在好ましい形態が図面に示されている。ただし本発明は、正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
図1は、本発明に係る光学フローサイトメータの構成要素を示す概略図である。
図2は、光学部品の配置および光の軌跡を示す概略図である。
図3は、インピーダンス測定用の電極の配置を示す概略図である。
【0062】
本発明には様々な修正例および代替形態が可能であるが、その特定の実施形態を図面に例示し、本明細書で詳細に説明する。ただし、図面およびその詳細な説明は、開示される具体的な形態に本発明を限定することを意図するものではなく、反対に、添付の特許請求の範囲により定義されるように、本発明の範囲内にあるすべての修正例、等価物、および代替物を本発明が網羅することを理解されたい。
【0063】
以下、添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態を説明することにより、本発明を詳細に説明する。図中において同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0064】
図1は、本発明の例示的な実施形態に係る光学フローサイトメータの構成要素を示す概略図である。
【0065】
図1を参照すると、本発明の光学フローサイトメータ1は、フローセル3に向けて励起光を生成し、落射蛍光測定を実行するためにフローセルから来る光を集光する励起/落射蛍光モジュール2を含む。光学フローサイトメータ1は、シース液に囲まれるか、または囲まれない流れにサンプル細胞または血液細胞を駆動および集束するための起電および/または他の手段を備える。血液細胞はフローセル3内を循環する。励起/落射蛍光モジュール2により生成される集束ビーム4は、細胞流れに対して垂直に向けられ、蛍光サンプル粒子の蛍光を誘導する。血液細胞からの落射蛍光は、励起/落射蛍光モジュール2の同じレンズ群により集光される。
【0066】
フローセル3から来る光6を集光するために、散乱測定モジュール5が設けられている。
【0067】
落射蛍光信号の励起および検出のために励起/落射蛍光モジュール2を制御するために、プロセッサユニット7が設けられている。プロセッサユニット7はまた、直接および/または間接散乱信号を検出するために散乱測定モジュール5を制御する。
【0068】
本発明によれば、フローセルに集束される励起光4、フローセルから直接来る落射蛍光4、およびフローセルから直接来る散乱光6は同一平面上にある。散乱測定モジュール5は、励起/落射蛍光モジュール2の反対側に配置されている。
【0069】
図2は、光学部品の詳細な配置および光の軌跡を示す概略図である。図2を参照すると、本発明に係る光学フローサイトメータへの落射蛍光および/または散乱測定を実行するのに適した機構が示されている。励起光8は、青色またはUV波長で動作する発光ダイオード(LED)により生成される。超高輝度LEDは、短波長、例えば700nm未満のピーク波長で使用できる。使用できるLED9は、連続モード、変調モード、またはパルスモードである。
【0070】
レーザは単色の点光源であるのに対し、LEDは拡張型且つ発散型の広帯域光源である。
【0071】
集光器10は、LEDからの集光を最適化し、光学検査区域においてフローセルへの均一性を確保するために設けられるレンズである。例として、LED9は1.0mmの発光面積を有する。励起/蛍光群に典型的なレンズ径は10.0mmである。したがって、集光器10の有効焦点距離は、通常3.0mm~8.0mmから選択される。
【0072】
集光器10はLED9の近くに配置されているため、その直径は2.0mm~8.0mmとすることができる。
【0073】
このような集光器は、微細な収差補正を必要とせず、一つまたは二つのレンズを用いて実現できる。したがって、集光器10は、少なくとも一つの屈折率分布型レンズ、少なくとも一つのフレネルレンズ、少なくとも一つの非球面、少なくとも一つの反射面、または少なくとも一つの回折面を備えてもよい。
【0074】
励起光は励起フィルタ11を通過して、LEDスペクトル(すなわち励起光スペクトル)を短くし、蛍光との重複が確実に起きないようにする。
【0075】
ダイクロイックミラー12は励起光軸上に配置されている。このダイクロイックミラー12の特性は、LED9からの励起光がフローセル3に向かって反射される一方で、フローセル3からの落射蛍光は透過されるように選択される。
【0076】
次いで励起光は、励起光をスポットまたは光学検査区域として細胞流れに集束することを目的とする第1レンズ群13に向けられる。
【0077】
第1レンズ群はまた、サンプルからの落射蛍光を蛍光一体型光検出器14に集光および集束することも目的としている。蛍光信号を誘発および検出できるようにするために、第1レンズ群は、少なくとも0.1ステラジアン、すなわち0.17の開口数(NA)に沿って光を集束および集光する。1.1ステラジアンの立体角(NA=0.57)を使用すると、検出された蛍光信号対ノイズ比が改善され、設計の複雑さが中程度になる。
【0078】
典型的なレンズ径は約10.0mmであり、これは、この第1レンズ群13が4.0mm~7.0mmの等価焦点距離(EFL)を有することを意味する。
【0079】
第1レンズ群は、フローセル内の光学検査区域が小さな寸法を有することができるようにする倍率を提供する。倍率は例えばγ=-0.1であり、これは、選択されたEFLに応じて、対象である細胞が第1レンズ群の第1主面から50.0mm~90mmに配置されるべきであることを意味する。この場合、第1レンズ群の第2主面から約4.0mm~8.0mmに画像が形成される。これは、標準的なフローセルに必要なスペースと完全に適合する。
【0080】
選択された開口数に応じて、第1レンズ群13は1~4個のレンズを含むことができる。図2の実施形態は、二つのレンズ15および16の例を示す。
【0081】
レンズは、単レンズ、接合二重レンズ、または接合三重レンズにすることができる。
【0082】
したがって、第1レンズ群13は、少なくとも一つの屈折率分布型レンズ、少なくとも一つのフレネルレンズ、少なくとも一つの非球面、少なくとも一つの反射面、または少なくとも一つの回折面を備えてもよい。前記レンズの組み合わせが考慮されてもよい。
【0083】
第1レンズ群13の出力において、光4は、フローセル内部の流れに対して光学検査区域として高度に集束される。
【0084】
血液細胞からの蛍光は、同じ第1レンズ群13により集光される。励起光および落射蛍光は反対方向に伝播する。
【0085】
次いで落射蛍光はダイクロイックミラー12を通過し、ダイクロイックミラー12は、落射蛍光17を蛍光フィルタ18を介して一体型光検出器14に向けて前方に透過する。
【0086】
蛍光フィルタ18は、測定された落射蛍光から残留青色迷光または後方散乱光を除去する。
【0087】
好ましい機構は、一体型(単一ピクセル)光検出器に基づく。
【0088】
一体型光検出器は、各血液細胞などから放出される蛍光の強度に比例したアナログ信号を生成する。アナログ信号は次いで、蛍光測定用の処理ユニットに転送される。
【0089】
光源はLED(レーザではない)であるため、フローセル3内の検査区域で完全に均一な光強度を実現するのは非常に簡単である。このため、特性評価されるべき血液細胞を運ぶ流れの直径を制限することはもはや必須ではない。
【0090】
標準的なフローサイトメトリ機構は、流体力学的集束を持つフローセルを必要とするため、提案する光学機構は、流体力学的集束、受動シース、またはシース無しといったすべてのタイプのフローセルで正常に機能する。
【0091】
第2レンズ群19は、フローセル3に対して第1レンズ群13の反対側に、同じ光軸に設けられている。第2レンズ群19は、細胞により透過および散乱される光6を集光する。検出される散乱光は、血液細胞特性評価に役立つ情報を提供するため、有用である。
【0092】
この第2レンズ群19に対する制約は、第1レンズ群13に対する制約とかなり類似している。散乱光を検出するために、開口数のみが少し増加している。レンズ群をフローセルに近づけすぎることは機械的に難しいため、僅かに大きなレンズ径を使用することが好ましい。典型的なレンズ径は約11.0mmである。
【0093】
第2レンズ群19は、フローセルから放射される光ビームをコリメートまたは集束することができる。
【0094】
複数の測定(すなわち、複数の散乱角または軸方向光損失)が実行される場合、コリメートされたビームを有することが好ましい。これにより、一または複数のビーム分割部品に対して十分なスペースが確保されることになる。
【0095】
単一の測定が実行される場合、散乱レンズ群は、一体型光検出器にビームを直接集束することができる。
【0096】
選択された開口数に応じて、第2レンズ群19は1~4個のレンズを含むことができる。図2の実施形態は、二つのレンズ26および27の例を示す。
【0097】
これらのレンズは、単レンズ、接合二重レンズ、または接合三重レンズにすることができる。
【0098】
したがって、第2レンズ群19は、少なくとも一つの屈折率分布型レンズ、少なくとも一つのフレネルレンズ、少なくとも一つの非球面、少なくとも一つの反射面、または少なくとも一つの回折面を備えてもよい。前記レンズの組み合わせが考慮されてもよい。
【0099】
図2の実施形態は、例えば前方散乱測定および軸方向光損失測定という二つの測定を可能にする単一のビームスプリッタを備える。
【0100】
軸方向光損失測定のために、散乱光21の一部を集束レンズ23を介して一体型光検出器22に向けるビームスプリッタ20が設けられている。
【0101】
前方散乱測定のため、ビームスプリッタ20を直接通過する光21は、特定の角度、例えば低角または中角でのみ散乱された光を透過することを目的とした散乱ストップまたは絞り24に向けられる。散乱ストップ24を通過する光を一体型光検出器26に向けるために、集束レンズ25が設けられている。
【0102】
ビームスプリッタにより、集光されたビームから複数の散乱(または光損失)測定を実行することができる。三つ以上の測定値を取得するために、複数のビームスプリッタを考慮することができる。
【0103】
ビームスプリッタは、特定の半反射コーティングに依拠するか、またはコーティングされていない光透過性材料によるフレネル損失に依拠することができる。
【0104】
追加の直角光学系を使用して、励起ビームに対して垂直に散乱する光を測定することもできる。
【0105】
図3を参照すると、フローサイトメータは、例えばシース液32に囲まれた細胞流れ31に集束されたサンプルを持つフローセル30を備える。集束されたLED光4は、細胞流れに対して垂直に向けられ、細胞に光が当たるのに応じて蛍光を誘導する。散乱光6は、提供される場合、第2レンズ群19により集光される。
【0106】
フローセル30はまた、セルまたは粒子が通過するように意図された狭窄部33を備えることもできる。好ましくは、狭窄部33は細胞流れ31の軸内にある。励起光4は、細胞流れ31に対して垂直に、狭窄部33を介してフローセルを横断するように配置されている。
【0107】
図3に描かれた例において、粒子インピーダンス測定を目的とする場合、狭窄部33が設けられる。さもなければ、フローセルは狭窄部を備えなくてもよい。
【0108】
狭窄部33がある場合、フローセル30の二つの部分、すなわち狭窄部33の各側に配置された上部および下部を画定することができる。
【0109】
本発明によれば、電極28および29は、フローセル3のそれぞれ上部および下部に設けられる。二つの電極間の流体の電気インピーダンスの変化を検出するために、電源34および測定装置35が設けられている。
【0110】
図3は、シース液を備えたフローサイトメータに基づく。ただし、本発明に係るインピーダンス測定モジュールを、受動シースまたはシース無しのフローサイトメータに含めることができる。
【0111】
インピーダンス測定は、フローセル内部の落射蛍光測定の光学検査区域を含むか、またはこの光学検査区域と重なる狭窄部を使用するが、インピーダンス測定は、光学検査区域の外、上流、または下流で実行してもよい。光学検査区域は、励起光ビームと粒子流れとの交点により定義されるフローセル内部の体積に対応する。また、インピーダンス測定は、軸方向光損失測定の有無にかかわらず、また光散乱測定の有無にかかわらず実行してもよい。
【0112】
上記の開示が完全に理解されると、多くの変形例および修正例が当業者に明らかになるであろう。以下の特許請求の範囲は、そのようなすべての変形例および修正例を包含すると解釈されることを意図している。
図1
図2
図3