(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】硬化した減衰コーティングでコーティングされた基材を提供する方法およびそのように提供されたコーティングされた基材
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20240201BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240201BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240201BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240201BHJP
C08F 20/26 20060101ALI20240201BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/61
C09D7/63
C09D5/00 Z
C08F20/26
F16F15/02 Q
(21)【出願番号】P 2020557897
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 US2019029257
(87)【国際公開番号】W WO2019212879
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドラムライト、レイ イー.
(72)【発明者】
【氏名】フ、ツェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ギンバル、ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーリン、クレイグ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】チン、シン
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522393(JP,A)
【文献】特表2005-505653(JP,A)
【文献】特開平08-283627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00,101/00-201/10
C08F 20/26
F16F 15/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化した振動減衰コーティングでコーティングされた基材を提供するための方法であって、
(a)硬化性液体振動減衰組成物を基材に適用することと、
(b)前記適用された硬化性振動減衰組成物を0℃~250℃の温度で乾燥/硬化して、前記硬化した振動減衰コーティングでコーティングされた前記基材を提供することと、
を含み、
前記硬化性液体振動減衰組成物が、
1つ以上の多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体、
アセトアセテート化合物、シアノアセテート化合物、アセトアセトアミド化合物、およびシアノアセトアミド化合物からなる群から選択される1つ以上の多官能性マイケル供与体、
多官能性マイケル供与体(複数可)の官能基のモル当量あたり0.001~1.0モルの塩基触媒、
前記硬化性液体振動減衰組成物の重量に基づいて、0.1重量%~10重量%のレオロジー調整剤、ならびに
固体
粒子状充填剤
の混合剤を含み、
前記固体
粒子状充填剤が、前記レオロジー調整剤とは異なる材料であり、
前記1つ以上の多官能性マイケル受容体(複数可)の官能基のモル当量対前記1つ以上の多官能性マイケル供与体(複数可)の官能基のモル当量の比が、0.3~3.0であり、
前記1つ以上の多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体が、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した際に、200~10,000のMnを有し、
前記硬化性
液体振動減衰組成物が、20%~70%の顔料体積濃度
の量で前記固体粒子状充填剤を含む、方法。
【請求項2】
前記硬化性液体振動減衰組成物が、45%~65%の顔料体積濃度
の量で前記固体粒子状充填剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の多官能性マイケル受容体(複数可)の官能基のモル当量対前記1つ以上の多官能性マイケル供与体(複数可)の官能基のモル当量の比が、0.75~1.25である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法により形成された前記硬化した振動減衰コーティングでコーティングされた基材。
【請求項5】
前記硬化した振動減衰コーティングが、2mm~6mmの乾燥/硬化した厚さを有する単一のコーティングである、請求項4に記載のコーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化した減衰コーティングでコーティングされた基材を提供する方法に関し、基材は、音および振動を減衰することができる硬化したコーティングを担持する。本発明は、特に、(a)硬化性液体減衰組成物を基材に適用することであって、前記硬化性液体減衰組成物が、1つ以上のオリゴマー多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体、アセトアセテート化合物、シアノアセテート化合物、アセトアセトアミド化合物、およびシアノアセトアミド化合物からなる群から選択される1つ以上の多官能性マイケル供与体、多官能性マイケル供与体(複数可)の当量あたり0.001~1.0モルの塩基触媒、液体減衰組成物の重量に基づいて、0.1重量%~10重量%のレオロジー調整剤、ならびに固体充填剤の混合剤を含み、充填剤が、レオロジー調整剤とは異なる材料であり、前記1つ以上の多官能性マイケル受容体(複数可)の当量対前記1つ以上の多官能性マイケル供与体(複数可)の当量の比が、0.3~3.0であり、硬化性減衰組成物が、20%~70%の顔料体積濃度(PVC)を有する、適用することと、(b)適用された硬化性減衰組成物を0℃~250℃の温度で乾燥/硬化することと、を含む硬化した減衰コーティングでコーティングされた基材を提供するための方法に関する。また、本発明は、そのように提供された硬化コーティングされた基材に関する。
【0002】
本発明は、減衰組成物でコーティングされた基材を提供するための方法およびそのように形成された硬化コーティングされた基材を提供するのに役立ち、乾燥硬化したコーティングは、好ましくは本発明ではないエマルションポリマー系コーティングに対して実質的に改善された耐水性、良好な外観特性、特に優れた減衰特徴を有する。
【0003】
米国特許第8,389,630号は、好ましくは制御されたラジカル重合によって生成される、平均して末端に1つ以上の架橋性官能基を有するビニル系ポリマー、ならびに求核剤、好ましくはアミン化合物および/またはチオール化合物を含有する硬化性組成物を開示している。マイケル反応を介すると開示された硬化は、触媒および任意のエポキシ樹脂の存在下で進行した。
【0004】
しかしながら、優れた耐水性ならびに音響および振動減衰性能を有するコーティングされた基材が依然として必要とされている。改善された耐水性、良好な外観特性、特に、乾燥およびまたは硬化時に同等の水系または溶剤型コーティングによって提供されるものに対して、驚くほど優れた減衰性能を有する、硬化性液体減衰組成物を使用して、そのようなコーティングされた基材を提供するための方法が、提供されてきた。本発明の硬化性液体減衰組成物はまた、最小限の環境および安全上の懸念を提供する。
【0005】
本発明の第1の態様では、(a)硬化性液体減衰組成物を基材に適用することであって、前記硬化性液体減衰組成物が、1つ以上のオリゴマー多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体、アセトアセテート化合物、シアノアセテート化合物、アセトアセトアミド化合物、およびシアノアセトアミド化合物からなる群から選択される1つ以上の多官能性マイケル供与体、前記1つ以上の多官能性マイケル供与体(複数可)の当量あたり0.001~1.0モルの塩基触媒、前記液体減衰組成物の重量に基づいて、0.1重量%~10重量%のレオロジー調整剤、ならびに固体充填剤の混合剤を含み、前記オリゴマー多官能性マイケル受容体(複数可)の当量対前記多官能性マイケル供与体(複数可)の当量の比が、0.3~3.0であり、前記硬化性減衰組成物が、20%~70%のPVCを有する、適用することと、(b)前記適用された硬化性減衰組成物を0℃~250℃の温度で乾燥/硬化することと、を含む、硬化した減衰コーティングでコーティングされた基材を提供するための方法が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様の硬化した減衰コーティングでコーティングされた基材が提供される。
【0007】
本発明の方法では、硬化性液体減衰組成物が形成される。硬化性液体減衰組成物は、オリゴマー多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体、アセトアセテート化合物、シアノアセテート化合物、アセトアセトアミド化合物、およびシアノアセトアミド化合物からなる群から選択される多官能性マイケル供与体、多官能性マイケル供与体の当量あたり0.001~1.0モルの塩基触媒、レオロジー調整剤、ならびに固体充填剤の混合剤であり、多官能性マイケル受容体の当量対多官能性マイケル供与体の当量の比が、0.3~3.0であり、硬化性液体減衰組成物が、20%~70%のPVCを有する。
【0008】
本明細書で使用される場合、アクリレートなどの別の用語が続く用語「(メタ)」の使用は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を指す。例えば、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかを指す。同様に、用語「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸またはアクリル酸を指す。
【0009】
本明細書における「硬化性」組成物とは、オリゴマー多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体(複数可)または多官能性マイケル供与体(複数可)のいずれかの反応の程度が、硬化性組成物がその程度の反応をもたらすのに十分な時間の間、硬化温度に供され、したがって「硬化した」組成物を提供するときの等価基準で、10%を超え、好ましくは25%を超えることを意味する。
【0010】
本明細書における「液体」組成物とは、組成物が、ASTM D445-17aによって測定した際に25℃で10,000mPa*s~25℃で2,000,000mPa*sの初期粘度を有することを意味する。
【0011】
本明細書における「減衰」組成物とは、硬化した組成物が、本明細書における「試験方法」に開示された方法によって測定したときに振動減衰性能を提供することを意味する。
【0012】
本明細書における「オリゴマー」とは、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した際に、200~10,000のMnを有する化合物を意味する。
【0013】
本明細書における「多官能性」とは、2以上、好ましくは2.5を超えるいくつかの官能単位を意味する。
【0014】
マイケル付加反応は、マイケル供与体と呼ばれる求核試薬の、マイケル受容体と呼ばれる求電子試薬への付加に基づく。
【0015】
硬化性液体減衰組成物は、1つ以上のオリゴマー多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体を含む。本明細書におけるオリゴマー多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体は、組成、分子量、または分子あたりのマイケル受容体の当量数が独立して変化するオリゴマー多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体のブレンドであり得る。多官能性(メタ)アクリレートマイケル受容体は、例えば、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、ビスフェノールAグリセロレートジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリル化ポリエステルオリゴマー、ビスフェノールAジアクリレート、アクリル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、(メタ)アクリル化脂肪族ウレタンオリゴマー、(メタ)アクリル化芳香族ウレタンオリゴマー、(メタ)アクリル化ポリエステル、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、1,12ドデカンジメタクリレート、1,3ブチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびそれらの混合物であり得る。
【0016】
硬化性液体減衰組成物は、アセトアセテート化合物、シアノアセテート化合物、アセトアセトアミド化合物、およびシアノアセトアミド化合物からなる群から選択される1つ以上の多官能性マイケル供与体を含む。マイケル供与体は、モノ、ジ、トリ、またはポリヒドロキシル化合物のエステルであってもよく、典型的なマイケル供与体は、例えば、メチルアセトアセテート、t-ブチルアセトアセテート、ブタンジオールアセトアセテート、プロピレングリコールジアセトアセテート、ペンタエリスリトールトリアセトアセテート、シアノアセテート官能性ブタジエンオリゴマーなどを含む。
【0017】
硬化性液体減衰組成物中のオリゴマー多官能性マイケル受容体(複数可)の当量対多官能性マイケル供与体(複数可)の当量の比は、0.3~3.0、好ましくは0.75~1.25である。
【0018】
硬化性液体減衰組成物は、多官能性マイケル供与体(複数可)の当量あたり0.001~1.0モルの塩基触媒を含み、塩基触媒は、通常、強塩基触媒、本発明のマイケル受容体とマイケル供与体との間のマイケル反応を触媒するのに効果的な本文脈における触媒として特徴付けられる。そのような触媒には、第三級アミン化合物、第四級水酸化アンモニウム、アルカリ金属アルコキシ供与体などが含まれる。典型的な触媒には、例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、水酸化テトラメチルアンモニウム、およびナトリウムフェノキシドが含まれる。
【0019】
硬化性減衰組成物は、硬化性減衰組成物の重量に基づいて、0.1重量%~10重量%の量のレオロジー調整剤を含む。レオロジー調整剤の量は、選んだ方法によって減衰組成物の適用を容易にするように選択される。典型的には、レオロジー調整剤の量は、ASTM D445で測定した際に、25℃で10,000mPa*s~25℃で2,000,000mPa*sの初期粘度を提供するように選択される。典型的なレオロジー調整剤は、ベントナイト粘土、ポリアミド、およびナノ粒子、すなわち、例えばカーボンブラック、ヒュームドシリカ、またはTiO2などの平均直径が100nm未満の粒子である。レオロジー調整剤はまた、高分子レオロジー調整剤を含む、コーティング組成物で使用される任意の典型的なレオロジー調整剤を含むことができる。特定の実施形態では、特に比較的より高いPVC組成物において、有機溶媒は、任意で、減衰組成物に組み込まれてもよく、そのような溶媒には、例えば、トルエン、グリコールエーテル、およびアルコールなどの有機溶媒が含まれる。固形分体積百分率(1-(溶媒の体積%/すべての成分の体積)として定義)*100は、好ましくは60%超、より好ましくは80%超、最も好ましくは100%である。
【0020】
硬化性減衰組成物は、硬化性液体減衰組成物が20%~70%、好ましくは45%~65%の顔料体積濃度(「PVC」)を有するような量で固体粒子状充填剤を含む。典型的な粒子状充填剤には、ポリマー粒子などの有機粒子、例えばポリスチレンおよびポリ塩化ビニルビーズ、発泡性ポリマーミクロスフェア、合成または天然繊維、グラファイト、および例えばROPAQUE(商標)不透明ポリマーなどのボイドまたはベシクルを含有するミクロスフェア顔料が含まれる。典型的な粒子状充填剤には、TiO2、SiO2、CaCO3、BaSO4、カーボンブラックなどのような無機粒子も含まれる。触媒の失活を防ぐために、酸官能化充填剤は、避けるべきである。
【0021】
顔料体積濃度は、以下の式によって算出される。
PVC(%)=100x[乾燥体積充填剤(複数可)]/[乾燥体積充填剤(複数可)+乾燥体積結合剤(複数可)]
【0022】
硬化性液体減衰組成物は、コーティング分野で周知の技法によって調製される。典型的には、硬化性液体減衰組成物は、1パック(単一成分)または2パック(2成分)組成物として調製される。1パックの実施形態では、構成成分のすべては、典型的には、基材への適用前に一緒に混合される。混合剤のポットライフが比較的長い場合、基材への適用は、すぐに行う必要はなく、さらなる変形例において、触媒などの構成成分のうちの1つは、例えば、ブロッキング実体の熱、光、または蒸発によって、基材への適用の直前、最中、または直後に活性化されてもよい。2パックの実施形態では、2つの以前に調製された成分が混合されて、硬化性減衰組成物を形成する。例えば、マイケル受容体、充填剤、およびレオロジー調整剤を含む第1の成分が形成され、マイケル供与体、充填剤、レオロジー調整剤、および触媒を含む第2の成分が形成され、次いで、2つの成分は、基材に適用する直前に混合される。代替の2パックの実施形態では、第1の成分は、第2の成分の代わりに触媒を含有し得る。さらなる2パックの実施形態では、成分のうちの1つのみが、充填剤またはレオロジー調整剤を含む。さらなる2パックの実施形態では、触媒を含まない成分は、マイケル受容体およびマイケル供与体の一部もしくはすべて、またはその逆を含み得る。2パックの実施形態の2つの成分のそのような混合は、例えば、混合デバイスが取り付けられた適切な容器内で、または適用中に2つの成分を混合するように適合されたスプレーガン内で生じ得ることが企図される。任意の構成成分には、独立して、消泡剤、界面活性剤、分散剤、殺生物剤、UV吸収剤、および他のコーティング補助剤が含まれ得る。
【0023】
硬化性液体減衰組成物は、典型的には、例えば、金属、プラスチック、予め塗装されたまたは下塗りされた表面、および風化した表面などの基材に適用される。車両部品への適用が特に企図される。硬化性減衰組成物は、例えば、エアーアトマイズスプレー、エアアシストスプレー、エアレススプレー、高容量低圧スプレー、およびエアアシストエアレススプレーなどの従来のコーティング適用方法を使用して基材に適用され得る。硬化性液体減衰組成物は、典型的には、1mm~10mm、好ましくは2mm~6mmの乾燥/硬化した厚さを有する単一のコーティングとして適用される。基材の厚さの2~5倍、最も好ましくは基材の厚さの4~5倍の乾燥/硬化した厚さを有する単一コーティングとしての硬化性液体減衰組成物の適用が好ましい。
【0024】
存在する場合、任意の揮発性成分の部分的または実質的に完全な除去が望まれる場合の乾燥、特に、硬化性減衰組成物の硬化は、典型的には、例えば、0℃~250℃で、好ましくは20℃~200℃、より好ましくは100℃~200℃で、本明細書で定義される硬化した状態を実現するのに十分な時間の間、単一の操作で行われ得る。減衰性能は、温度の関数として生じ、本明細書では「ピーク減衰性能温度」と呼ばれる中央ピークの周りに分布があり、これはピークCLF(以下の試験方法で定義)が測定される温度である。CLFは、所与の用途に有用な温度範囲にわたって測定される。自動車用途の場合、ピーク減衰性能温度についての妥当な範囲は、-5~60℃、好ましくは10~40℃である。コーティングに使用されるポリマー系のガラス転移温度を制御することにより、ピーク減衰性能温度を制御することができる。ポリマーシステムのガラス転移温度は、典型的には、ピーク減衰性能温度よりも約20℃低く、10℃/分の加熱速度で-90℃~150℃の温度を走査する示差走査熱量測定(DSC)で測定することができる。
【0025】
以下の非限定的な実施例は、本発明を説明するために提示される。
【0026】
試験方法:
硬化したコーティングの吸水:
吸水は、2mmの湿潤厚のコーティング試料をアルミニウムパネルに伸ばすことによって評価した。試料を硬化させ(12時間(実施例1ならびに比較例AおよびB)または168時間(実施例2および比較例C~E))、そのまま試験するか、または150℃のオーブンに30分間入れた。試料を冷却し、水道水に48時間完全に浸した。pH=4(酸性雨のpHの代表として取得)での試験では、試料を0.1モルの酢酸(82%)および0.1モルの酢酸ナトリウム(18%)の緩衝液に浸した。吸水は、24時間および48時間の浸水後のコーティング質量の百分率として報告した。試料は、三連で試験した。
【0027】
振動減衰
複合損失係数(CLF)は、振動減衰の尺度である。ASTM e-757に従って、厚さ1.6mm×幅12.7mm×長さ200mmの硬質炭素鋼オーバーストバー上にコーティングを形成することによって、CLFを評価した。CLFデータは、所与の用途についての有用な温度範囲にわたって200Hzの周波数補間について報告した。自動車用途の場合、ピーク減衰性能温度についての妥当な範囲は、-5~60℃、好ましくは10~40℃である。CLFは、カバレッジに依存しているため、コーティングカバレッジおよび厚さをデータ表で報告した。
【数1】
式中、
【表1】
【0028】
実施例で使用される材料:
マイケル受容体:
エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート(SR601、Sartomerから入手可能)
エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(SR602、Sartomerから入手可能)ペンタエリスリトールトリアクリレート(SR444、Sartomerから入手可能)
触媒:1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG、Sigma-Aldrichから入手可能)マイケル供与体:アセト酢酸メチル(MeAcAc、Sigma Aldrichから入手可能)
【0029】
実施例1.硬化性減衰組成物の形成
組成物は、以下のように2つの成分で調製した。成分1A:マイケル受容体:5.75gのSR601、5.75gのSR602、0.5gのSR444、25gのトルエン(Sigma-Aldrich)、および54.4gのCaCO3(充填剤、TITAN(商標)-200)を容器に添加し、テフロン3-パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。0.1gのTMG触媒を添加し、再び10分間混合した。最後に、3gのCLAYTONE(商標)AF(BYK)レオロジー調整剤を添加し、再び10分間混合した。成分1B:マイケル供与体:2.46gのMeAcAc、4gのトルエン、および10gのCaCO3(TITAN(商標)-200)を容器に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。2つの成分を一緒にブレンドし、使用前に空気動力ミキサーで完全に混合した。焼き付けた試料を、試験前に150℃で30分間焼き付けた。
【0030】
比較例A.比較用減衰組成物の形成
100gのPARALOID(商標)B-72(Tgが40℃および重量平均分子量が105K、トルエン中50%のアクリル系熱可塑性樹脂)ならびに9.6gのトルエンをガラス瓶に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを使用して混合した。225gのTITAN(商標)-200充填剤を混合しながらゆっくりと添加し、15分間混合した。コーティングは、2.5gのCLAYTONE(商標)AF(BYK)レオロジー調整剤で増粘し、さらに15分間混合した。次いで、試験前に、組成物を150℃のオーブンで30分間加熱した。
【0031】
比較例B.比較用減衰組成物の形成
80gのアクリルラテックス(Tgが0℃、水中の固形分50%)、0.5gのBYK-093、0.32gのBAYFERROX(商標)318M、125gのTITAN(商標)-200(Omya)、0.3gのEXPANCEL(商標)031WUFX40、および4gのKOLLOTEX(商標)1500(AVEBE GmbH)を、標準のオーバーヒアードミキサーを使用して15分間混合した。0.4gのACRYSOL(商標)RM12-Wをさらに混合しながら添加した。コーティングを形成し、次いで、試験前に150℃のオーブンで30分間加熱する。
【0032】
実施例2.硬化性減衰組成物の形成。
組成物は、以下のように2つの成分で調製した。成分A:マイケル受容体、5.75gのSR601、5.75gのSR602、0.5gのSR444、および24gのCaCO3(TITAN(商標)-200)を容器に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。0.1gのTMGを添加し、再び10分間混合した。最後に、2gのCLAYTONE(商標)AFを添加し、再び10分間混合した。成分B:マイケル供与体、2.46gのMeAcAc、および7gのCaCO3(TITAN(商標)-200)を容器に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。2つの成分を一緒にブレンドし、使用前に空気動力ミキサーで完全に混合した。
【0033】
比較例C.比較用減衰組成物の形成
組成物は、以下のように2つの成分で調製した。成分1:マイケル受容体、5.75gのSR601、5.75gのSR602、0.5gのSR444、および27gのCaCO3(TITAN(商標)-200)を容器に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。2gのCLAYTONE(商標)AFを添加し、再び10分間混合した。成分2:マイケル供与体、1.296gのトリエチレンテトラミン、および3gのCaCO3(TITAN(商標)-200)を容器に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。2つの成分(1:1受容体:供与体)を一緒にブレンドし、使用前に空気動力ミキサーで完全に混合した。
【0034】
比較例D.比較用減衰組成物の形成
組成物は、以下のように2つの成分で調製した。成分1:マイケル受容体、5.75gのSR601、5.75gのSR602、0.5gのSR444、および27gのCaCO3(TITAN(商標)-200)充填剤を容器に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。4gのCLAYTONE(商標)AFを添加し、再び10分間混合した。成分2:マイケル供与体、6.178gのトリエチレンテトラミン、および15gのCaCO3(TITAN(商標)-200)を容器に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。2つの成分(1:6受容体:供与体)を一緒にブレンドし、使用前に空気動力ミキサーで完全に混合した。
【0035】
比較例E.比較用減衰組成物の形成
組成物は、以下のように2つの成分で調製した。成分1:マイケル受容体、5.75gのSR601、5.75gのSR602、0.5gのSR444、および27gのCaCO3(TITAN(商標)-200)を容器に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。4gのCLAYTONE(商標)AF(BYK)を添加し、再び10分間混合した。成分2:マイケル供与体、5.169gのペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、0.2gのトリエチレンテトラミン、および12gのCaCO3(TITAN(商標)-200)を容器に添加し、テフロン3パドルブレードを備えた空気動力ミキサーを10分間使用して混合した。2つの成分(1:1受容体:供与体)を一緒にブレンドし、使用前に空気動力ミキサーで完全に混合した。
【0036】
注:PARALOID(商標)およびACRYSOL(商標)は、The Dow Chemical Companyの商標である。TITAN(商標)は、Omya Incの商標である。BAYFERROX(商標)は、Lanxess AGの商標である。EXPANCEL(商標)は、AkzoNobel N.Vの商標である。KOLLOTEX(商標)は、Avebe GmbHの商標である。CLAYTONE(商標)は、(BYK)Altana Group AGの商標である。
【0037】
実施例3.適用された乾燥/硬化した減衰コーティングの評価
【表2】
【0038】
本発明の実施例1は、本発明ではない技術を表す比較例AおよびBに対して、優れたまたは並外れた吸水および驚くほど優れた振動減衰性能(CLF高さ)を提供した。
【0039】
実施例4.適用された乾燥/硬化した減衰コーティングの評価
【表3】
【0040】
本発明の実施例2は、本発明のものではない比較例C~Eに対して並外れた吸水を提供した。