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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 68/10 20090101AFI20240201BHJP
   H04W 74/06 20090101ALI20240201BHJP
   H04M 3/42 20060101ALI20240201BHJP
   H04W 4/06 20090101ALI20240201BHJP
   H04W 4/90 20180101ALI20240201BHJP
【FI】
H04W68/10
H04W74/06
H04M3/42 101
H04W4/06
H04W4/90
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021036202
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136539
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 泰知
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-273802(JP,A)
【文献】特開2015-065600(JP,A)
【文献】特開2019-176223(JP,A)
【文献】特表2011-524109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
H04M 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一斉指令を行う指令台と、端末と無線通信を行う複数の基地局と、前記指令台及び前記複数の基地局に接続し、回線制御を行う回線制御装置とを備えた無線通信システムであって、
前記回線制御装置が、前記複数の基地局のそれぞれに対応して、前記各基地局に接続される端末を、送信順位を付して記憶しており、前記指令台から前記一斉指令の受令確認の要求を受信すると、前記複数の基地局のそれぞれに対して、前記送信順位が第1番目の各端末宛の前記受令確認の要求を同時に送信し、前記各基地局を介して前記第1番目の各端末から前記受令確認の応答を受信すると、前記複数の基地局のそれぞれに対して、前記送信順位が第2番目の各端末宛の前記受令確認の要求を同時に送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記回線制御装置が、複数の基地局のそれぞれに接続される端末に送信順位を付して端末リストとして記憶しており、前記複数の基地局のそれぞれに対して受令確認の要求を同時に送信し、前記受令確認の応答を受信する処理において、前記受令確認の要求の宛先となる端末を、前記端末リストの送信順位に基づいて順次変更し、前記各基地局に接続される端末の数が異なっている場合に、前記基地局に接続する端末の数が少ない基地局から、当該基地局に接続する全端末への前記受令確認に対する応答が完了した時点で順次前記送信の対象から外すことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記回線制御装置が、特定の端末から前記受令確認の応答を受信しなかった場合には、次の前記複数の基地局に同時に前記受令確認の要求を送信するタイミングで、前記特定の端末が接続する基地局に対して、前記特定の端末宛の前記受令確認の要求を送信するリトライを行うことを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記回線制御装置が、前記複数の基地局のいずれかに接続されているものの、どの基地局に接続されているかを把握していない端末がある場合に、全ての基地局に対して、当該端末宛の前記受令確認の要求を送信することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に指令台からの一斉指令に対する端末からの受令確認を迅速に行うことができる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明:図7
防災行政無線等に用いられる無線通信システムの構成例について図7を用いて説明する。図7は、無線通信システムの概略構成を示す説明図である。
図7に示すように、無線通信システムは、指令台1と、回線制御装置2と、複数の基地局3(基地局A(3a)、基地局B(3b)、基地局C(3c))とを備えている。ここでは、基地局3は3つしか記載していないが、これに限るものではない。回線制御装置2と基地局3とがLAN(Local Area Network)等のネットワークを介して接続されていてもよい。
【0003】
図7の例では、基地局A(3a)のエリア内には、端末局(1)(図では端末1と記載)4a、端末局(2)4b、端末局(3)4cが存在(在圏、接続)し、基地局B(3b)のエリア内には、端末局(4)4d、端末局(5)4eが存在し、基地局C(3c)のエリア内には、端末局(6)4fが存在している。各端末局を区別しない場合には、端末局4と記載することもある。
【0004】
指令台1は、指令本部等に設けられた有線卓であり、有線回線を介して回線制御装置2に接続する。そして、指令台1は、全ての端末4に対して同時に同一の指令を送信する一斉指令の機能を備える。
回線制御装置2は、回線接続、切断等の回線制御を行って、通信を実現する。
基地局3は、有線回線を介して回線制御装置2に接続すると共に、自己のエリア内に在圏する端末4と無線通信を行う。
【0005】
[一斉指令]
上述したように、例えば自治体が運用している防災行政無線システムは、災害情報等をシステム内の端末4に一斉に配信する、一斉指令機能を有する。一斉指令では、指令台1からシステム内の端末4に対して、同時に情報を送信する。
端末4は、一斉指令を受信すると、指令台1からの要求に基づいて、受信したか否かを指令台1に通知する(受令確認応答、受令応答)。
ここで、回線制御装置2は、自己が属する無線通信システム内に在圏する端末局の情報を記憶している。
【0006】
[従来の受令確認のシーケンス:図8
ここで、従来の受令確認のシーケンスについて図8を用いて説明する。図8は、従来の受令確認のシーケンスを示す説明図である。
図8では、図7に示した無線通信システムにおける受令確認のシーケンスを示している。
指令台1は、一斉指令の送話終了後、一斉指令用のチャネルを用いて、端末局4に受令確認開始の指示を送信する(S51)。
【0007】
回線制御装置2は、受令確認開始の指示を受信すると、まず、端末局(1)4a宛ての受令確認の要求(受令確認要求)を、全ての基地局3に送信する(S52)。受令確認要求には、宛先情報として、例えば、端末局(1)4aのIDが含まれている。一斉指令用のチャネルは、1チャネルのみであるため、端末局4からの通信は1局ずつしか行えない。
【0008】
各基地局3は、受令確認要求を受信すると、自己のエリアに無線出力する。受令確認を受信した端末局4は、自己宛てでなければ破棄する。
自己宛ての受令確認要求を受信した端末局(1)4aは、受令応答を送信し(S53)、基地局3aは、受令応答を回線制御装置2に送出する。
【0009】
回線制御装置2は、応答を受信すると(S54)、次の端末局(2)4bについて同様に受令確認要求を全ての基地局3に送信する(S55)。
端末局(2)4bが受令確認要求を受信して受令応答を送信し(S56)、回線制御装置2が受令応答を受信する(S57)。
以下同様にして、受令確認要求の送信及び受令応答の受信を行って(S58~S69)、全ての端末局4について終了すると、回線制御装置2は、指令台1に、受令確認終了を送信する(S70)。
このようにして、従来の受令確認のシーケンスが行われていた。
【0010】
つまり、従来のシーケンスでは、各端末局4の受令確認時には、回線制御装置2が、端末局4に対して、1局ずつ順番に、全ての基地局3a~3cを介して受令確認を送信し、受令応答を受信してから次の端末局4宛ての受令確認を送信するようになっていた。
そのため、システムの規模が大きくなって端末局4の数が増大すると、受令確認に要する時間が長くなってしまうという問題があった。
【0011】
[関連技術]
尚、無線通信システムにおける一斉指令に関する従来技術としては、特開2019-176223号公報「無線通信システム」(特許文献1)がある。
特許文献1には、一斉指令系システムの一斉指令台から一斉受令装置に一斉指令を発令すると共に、移動系無線通信システムの各移動局へ一斉指令を同時に発令することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2019-176223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来の無線通信システムでは、端末局4に対して1局ずつ受令確認要求を送信し、受令応答を受信してから、次の端末局4の受令確認要求を送信するようにしていたため、全ての端末局4について受令確認が完了するまでには時間がかかるという問題点があった。
【0014】
尚、特許文献1には、回線制御装置が、各基地局に対して、当該基地局に接続する端末局宛ての受令確認要求のみを送信することで、システム全体の受令確認に要する時間を短縮することは記載されていない。
【0015】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、一斉指令に対する受令確認を迅速に行うことができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、一斉指令を行う指令台と、端末と無線通信を行う複数の基地局と、指令台及び複数の基地局に接続し、回線制御を行う回線制御装置とを備えた無線通信システムであって、回線制御装置が、複数の基地局のそれぞれに対応して、各基地局に接続される端末を、送信順位を付して記憶しており、指令台から一斉指令の受令確認の要求を受信すると、複数の基地局のそれぞれに対して、送信順位が第1番目の各端末宛の受令確認の要求を同時に送信し、各基地局を介して第1番目の各端末から受令確認の応答を受信すると、複数の基地局のそれぞれに対して、送信順位が第2番目の各端末宛の受令確認の要求を同時に送信することを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、回線制御装置が、複数の基地局のそれぞれに接続される端末に送信順位を付して端末リストとして記憶しており、複数の基地局のそれぞれに対して受令確認の要求を同時に送信し、受令確認の応答を受信する処理において、受令確認の要求の宛先となる端末を、端末リストの送信順位に基づいて順次変更し、各基地局に接続される端末の数が異なっている場合に、基地局に接続する端末の数が少ない基地局から、当該基地局に接続する全端末への前記受令確認に対する応答が完了した時点で順次送信の対象から外すことを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、回線制御装置が、特定の端末から受令確認の応答を受信しなかった場合には、次の複数の基地局に同時に受令確認の要求を送信するタイミングで、特定の端末が接続する基地局に対して、特定の端末宛の受令確認の要求を送信するリトライを行うことを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、回線制御装置が、複数の基地局のいずれかに接続されているものの、どの基地局に接続されているかを把握していない端末がある場合に、全ての基地局に対して、当該端末宛の受令確認の要求を送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一斉指令を行う指令台と、端末と無線通信を行う複数の基地局と、指令台及び複数の基地局に接続し、回線制御を行う回線制御装置とを備えた無線通信システムであって、回線制御装置が、複数の基地局のそれぞれに対応して、各基地局に接続される端末を、送信順位を付して記憶しており、指令台から一斉指令の受令確認の要求を受信すると、複数の基地局のそれぞれに対して、送信順位が第1番目の各端末宛の受令確認の要求を同時に送信し、各基地局を介して第1番目の各端末から受令確認の応答を受信すると、複数の基地局のそれぞれに対して、送信順位が第2番目の各端末宛の受令確認の要求を同時に送信する無線通信システムとしているので、複数の基地局に、それぞれの基地局に接続する端末局に対する受令確認要求を同時に送信することで、複数の端末局に対する受令確認を一度に実施することができ、受令確認の処理に要する時間を短縮し、システム全体の受令確認を迅速に実施することができる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、回線制御装置が、複数の基地局のそれぞれに接続される端末に送信順位を付して端末リストとして記憶しており、複数の基地局のそれぞれに対して受令確認の要求を同時に送信し、受令確認の応答を受信する処理において、受令確認の要求の宛先となる端末を、端末リストの送信順位に基づいて順次変更し、各基地局に接続される端末の数が異なっている場合に、基地局に接続する端末の数が少ない基地局から、当該基地局に接続する全端末への前記受令確認に対する応答が完了した時点で順次送信の対象から外す上記無線通信システムとしているので、基地局毎に異なる端末に同時に受令確認を送信して、効率を向上させると共に、同一基地局からは一度に1つの端末のみに受令確認を送信して、衝突を防ぐことができる効果がある。
【0022】
また、本発明によれば、回線制御装置が、特定の端末から受令確認の応答を受信しなかった場合には、次の複数の基地局に同時に受令確認の要求を送信するタイミングで、特定の端末が接続する基地局に対して、特定の端末宛の受令確認の要求を送信するリトライを行う上記無線通信システムとしているので、リトライのための時間を別に設ける必要はなく、受令確認に要する時間を一層短縮することができる効果がある。
【0023】
また、本発明によれば、回線制御装置が、複数の基地局のいずれかに接続されているものの、どの基地局に接続されているかを把握していない端末がある場合に、全ての基地局に対して、当該端末宛の受令確認の要求を送信する上記無線通信システムとしているので、どの基地局に接続されているのか不明な端末についても確実に受令確認を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本無線通信システムにおける受令確認のシーケンスを示す説明図である。
図2】回線制御装置における受令確認処理を示すフローチャートである。
図3】リトライを行う場合のシーケンスを示す説明図である。
図4】移動可能な端末局がある場合の概略構成を示す説明図である。
図5】移動可能な端末局がある場合の受令確認のシーケンスを示す説明図である。
図6】端末リストの例を示す説明図である。
図7】無線通信システムの概略構成を示す説明図である。
図8】従来の受令確認のシーケンスを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム、本システム)は、回線制御装置が、システム内の複数の基地局について、各基地局に接続される端末局の識別情報に順位(送信順位、送信順)を付して記憶しており、指令台からの一斉指令の後、受令確認開始通知を受信すると、各基地局に対して、各基地局に接続され、送信順位が1番の端末局宛ての受令確認要求を同時に送信し、全ての1番の端末局から応答を受信すると、各基地局に対して、送信順位が2番の端末局宛ての受令確認要求を同時に送信するようにしており、複数の基地局に、それぞれの基地局に接続する端末局に対する受令確認要求を同時に送信することで、複数の端末局に対する受令確認を一度に実施することができ、受令確認の処理に要する時間を短縮し、迅速に行うことができるものである。
【0026】
また、本無線通信システムは、回線制御装置が、移動可能な端末局や所在が不明な端末局があることを認識すると、当該端末局宛ての受令確認要求を、全ての基地局に送信するようにしており、どの基地局に接続しているかわからない端末局についても確実に受令確認を行うことができるものである。
【0027】
[本無線通信システムの構成]
本無線通信システムは、図7に示した一般的な無線通信システムと基本的な構成は同様であるため図示は省略するが、従来の回線制御装置2の代わりに、回線制御装置20が設けられている。尚、指令台1、基地局3、端末局4は従来と同様の構成及び動作となっている。
また、各基地局3は、それぞれ異なる周波数により自己のエリア内の端末局4と無線通信を行う。
【0028】
回線制御装置20は、無線通信システムの中核装置であり、指令台1、基地局3、端末局4からの要求に応じて音声・データ転送のための通信路を確立する呼制御及び回線制御の機能を有する制御部を備えている。
回線制御装置20は、本無線通信システムの特徴部分であり、指令台1からの一斉指令後に行われる受令確認を迅速に実施する受令確認処理を行うものである。そして、本無線通信システムでは、受令確認のシーケンスが従来とは異なっている。
回線制御装置20における処理については後述する。
【0029】
本無線通信システムの回線制御装置20は、複数の基地局3のそれぞれに対応して、各基地局3に無線接続される端末局4の識別情報を、順位を付したリスト(端末リスト)として記憶している。順位は、受令確認要求の送信順を示す情報である。
【0030】
図7の例に対応する端末リストでは、例えば、基地局A(3a)に対応して、端末局(1)4a、端末局(2)4b、端末局(3)4cがこの順で記憶され、基地局B(3b)に対応して、端末局(4)4d、端末局(5)4eがこの順で記憶され、基地局C(3c)に対応して、端末局(6)4fが記憶されている。
尚、本無線通信システムでは、ほとんどの端末局4は、特定の基地局3のエリアに固定された状態で運用される。
【0031】
また、端末リストでは、本システム内に存在するものの、車載用の端末等、移動可能な端末局や、後からシステムに参入(後追い参入)して所在が確定していない端末局など、どの基地局3のエリア内に存在するか不明な端末局4(以下、移動可能な端末局として説明する)の識別情報についても記憶している。
【0032】
回線制御装置20は、固定型や移動可能なこれらの端末局4が設置(導入)される際に、各端末局4の識別情報を取得し、固定型の端末局4であれば基地局3に対応付けて順位を付して端末リストに記憶し、移動可能な端末局4であれば基地局3に対応付けずに端末リストに記憶するようにしている。
【0033】
[端末リストの例:図6
本無線通信システムの受令確認のシーケンスについて説明する前に、回線制御装置20が記憶している端末リストの例について図6を用いて説明する。図6は、端末リストの例を示す説明図である。
端末リストは、各基地局に接続される端末局4に送信順位を対応付けて記憶したものであり、基地局毎に、受令確認処理を行う端末局の順位リストとなっている。尚、端末局の順位は、基地局内の端末局同士の距離関係や利用効率など利便性に応じて適宜変更可能とする。
【0034】
図6(a)は、固定型の端末のリストであり、基地局3毎に、接続される端末局のIDが順位に対応して記憶されている。図6の例では、基地局Aに対応して、端末局(端末)1、端末2、端末3が順位と共に記憶されている。基地局B、基地局Cについても、それぞれ接続される端末が順位付けされて記憶されている。端末リストの順位の数字が小さいものを上位、大きいものを下位とする。
図6(b)は、移動可能な端末のリストであり、図6の例では端末7が記憶されている。移動型端末が複数あってもよく、順位に対応して記憶されている。
【0035】
[本無線通信システムにおける受令確認のシーケンス:図1
次に、本無線通信システムにおける受令確認のシーケンスについて図1を用いて説明する。図1は、本無線通信システムにおける受令確認のシーケンスを示す説明図である。
図1では、図7に示した運用状態における受令確認のシーケンスを示している。
図1に示すように、一斉指令の終了後、指令台1から受令確認開始の指示が出力される(S1)と、回線制御装置20は、記憶している端末リストから、基地局3毎に、順位が1番(順位が最上位)の端末局4のIDを読み出して、当該端末局4を宛先とする受令確認要求を送信する。
上述したように、端末リストは、各基地局3に接続する端末局4が受令確認要求の送信順に並べられたリストであり、予め回線制御装置20に記憶されている。
【0036】
具体的には、基地局A(3a)に対して、端末(1)4aへの受令確認要求を送信し(S2)、基地局B(3b)に対して、端末(4)4dへの受令確認要求を送信し(S3)、基地局C(3c)に対して、端末(6)4fへの受令確認要求を送信する(S4)。図1において、各基地局3から端末4に対する送信については符号は省略している。
【0037】
つまり、本無線通信システムでは、回線制御装置20が、複数(ここでは3台)の基地局3を介して、同時に複数(基地局と同数、ここでは3台)の端末局4に対して受令確認要求を送信する。そして、各基地局3は、それぞれ異なる端末局4宛の受令確認要求をエリア内に送信することになる。
【0038】
受令確認の要求を受信した端末(1)4aは、受令応答を送信し(S5)、基地局A(3a)がそれを受信して回線制御装置20に送信する(S6)。同様に、端末(4)4dが受令応答を送信し(S7)、基地局B(3b)がそれを受信して回線制御装置20に送信し(S8)、端末(6)4fが受令応答を送信し(S9)、基地局C(3c)がそれを受信して回線制御装置20に送信する(S10)。回線制御装置20は各基地局3からの受令応答を受信する。各基地局3から各端末局4に対する受令確認要求、各端末局4から各基地局3に対する受令応答は、それぞれ異なる周波数で送受信される。
【0039】
各端末局4は、受令確認の要求を受信すると直ちに応答を送信するので、回線制御装置20では、ほぼ同じタイミングで3台の端末局4の受令応答を受信することになる。
これにより、従来の1/3の時間で3台の端末局4に対する受令確認が完了する。
基地局3の台数が増えれば、それだけ受令確認に要する時間は短縮され、最短の場合には、従来の1/基地局数に短縮されることになる。
【0040】
そして、回線制御装置20は、1回目の受令確認が完了すると、2回目として、端末リストで順位が2番である全ての端末局4宛てに受令確認の要求を送信する。つまり、受令確認要求の宛先を、端末リストの上位から下位に順次変更して送信する。
【0041】
具体的には、基地局A(3a)に対して、端末(2)4bへの受令確認要求を送信し(S11)、基地局B(3b)に対して、端末(5)4eへの受令確認要求を送信する(S12)。基地局C(3c)については、端末リストに2位以降の端末局が記憶されていないため、受令確認要求は送信されない。
このように、基地局3に接続される端末局4の数が異なる場合には、接続される端末4の数が少ない基地局3から順に、回線制御装置20が受令確認要求を同時に送信する処理の対象から外れていく。
【0042】
受令確認要求を受信した端末(2)4bは、受令応答を送信し(S13)、基地局A(3a)がそれを受信して回線制御装置20に送信し(S14)、端末(5)4eが受令応答を送信し(S15)、基地局B(3b)がそれを受信して回線制御装置20に送信する(S16)。
【0043】
回線制御装置20は、2回目の受令確認が完了すると、3回目の受令確認要求を送信する。3回目は基地局A(3a)に対して、端末(3)4cへの受令確認要求を送信する(S17)。
そして、端末(3)4cが受令応答を送信し(S18)、基地局A(3a)がそれを受信して回線制御装置20に送信し(S19)、回線制御装置20が受令応答を受信する。
これにより、端末(1)4a~端末(6)4fの受令確認が完了する。
回線制御装置20は、指令台1に対して、受令確認終了を報知して(S20)、処理を終わる。
【0044】
この運用例の場合、従来のシステムでは6台の端末局4に対して6回の指示(受令確認要求の送信)で受令確認結果を収集していた(図8参照)が、本無線通信システムでは、3回の指示で収集を完了できるものであり、受令確認を迅速に行うことができるものである。
【0045】
従来のシーケンスでは、例えば、図8の処理S1では、端末局(1)4aに対する受令確認要求を送信する際に、当該端末が接続する基地局Aだけでなく、接続しない基地局B及び基地局Cに対しても送信していたが、本無線通信システムでは、各基地局3に対して、当該基地局に接続することがわかっている端末局4宛の受令確認要求のみを送信して応答させることにより、効率を大幅に向上させることができるものである。
【0046】
また、本無線通信システムでは、端末リストにより、各基地局3における受令確認要求の送信順を規定しておくことで、各基地局3のエリアでは受令確認応答を行う端末局4は1局のみとなり、衝突が発生することはない。
このようにして、本無線通信システムにおける受令確認のシーケンスが行われる。
【0047】
[回線制御装置20における受令確認処理:図2
次に、回線制御装置20における受令確認処理について図2を用いて説明する。図2は、回線制御装置における受令確認処理を示すフローチャートである。
図2に示すように、回線制御装置20は、指令台1から受令確認開始の指示を受信すると(100)、パラメータiに1を代入する(i=1)(102)。
【0048】
そして、回線制御装置20は、端末リストから、各基地局3に対応する順位i番目の端末局のIDを読み出す(104)。最初は1番目の端末局4のIDを読み出す。
更に、回線制御装置20は、各基地局3に当該端末局宛ての受令確認の要求を送信する(106)。
【0049】
回線制御装置20は、受令応答を受信したかどうかを判断し(108)、受信していなければ(Noの場合)、処理108に戻って受信を待ち受ける。
また、処理108で受令確認を受信した場合には(Yesの場合)、回線制御装置20は、端末リストを参照して、全ての端末局4について受令確認が完了したかどうかを判断し(110)、まだ完了していない場合(Noの場合)には、iに1を加算して(i=i+1)、処理104に移行し、同様の処理を繰り返す。
【0050】
また、処理110で全ての端末局4について受令確認が完了したと判断した場合には(Yesの場合)、回線制御装置20は、指令台1に対して受令確認終了を送信し(114)、処理を終わる。
このようにして回線制御装置20における受令確認処理が行われるものである。
【0051】
[リトライを行う場合のシーケンス:図3
次に、リトライを行う場合のシーケンスについて図3を用いて説明する。図3は、リトライを行う場合のシーケンスを示す説明図である。
尚、図3において、S1~S8は、図1に示した処理と同様であるため、説明は省略する。
【0052】
回線制御装置20は、受令確認の要求を送信すると、予め設定された一定時間、受令応答を待ち受ける。そのため、受令確認の要求送信後、待ち受け時間の計時を開始する。
ここでは、1回目の受令確認の要求に対して、端末局(6)4fからの応答が何らかの不具合により基地局C(3c)に受信されず、応答なしとなった場合(S9)について説明する。
【0053】
回線制御装置20は、受令確認要求の送信後、受令応答の待ち受け時間を過ぎたか(受令応答タイムアウトか)どうかを判断し(S21)、タイムアウトしていなければ(Noの場合)待ち受けを継続し、タイムアウトした場合(Yesの場合)には、応答を受信しなかった端末IDを保持しておき、次の受令確認要求を送信する。
【0054】
次の受令確認の要求の送信時には、基地局A(3a)と基地局B(3b)については、端末リストの順位が2番の端末局4宛ての受令確認要求を送信し(S22、S23)、基地局C(3c)には、先ほど受令応答を受信できなかった端末局(6)4f宛ての受令確認要求を再度送信する(リトライ)(S24)。
【0055】
このように、リトライ対象の端末局4について受令確認要求の再送信を行う際は、リトライのみを独立して行うのではなく、他の基地局3に接続する端末局4に対する受令確認要求の送信時に合わせてリトライを行う。
これにより、リトライ対象となった端末局4とは異なる基地局3に接続する端末局4についての受令確認を、滞らせずに行うことができるものである。
【0056】
図3の例では、リトライによって端末局(6)4fから受令応答が送信され(S29)、基地局C(3c)が受信して回線制御装置に送信し(S30)、回線制御装置20で端末局(6)4fからの受令応答が受信されている。
【0057】
リトライは、予め設定された特定回数まで複数回行うことが可能であるが、それでも受令応答を受信できない場合には、回線制御装置20は、当該端末局4は応答なし、として指令台1に報告する。
【0058】
[移動可能な端末局がある場合:図4
次に、移動可能な端末局がある場合の運用例について図4を用いて簡単に説明する。図4は、移動可能な端末局がある場合の運用例を示す説明図である。
上述したように、本無線通信システムにおいては、ほとんどの端末局4は特定の基地局3のエリア内に固定的に存在するが、他にも、移動可能な端末や、後からシステムに参入することになった後追い参入の端末もある。
【0059】
図4の例では、端末局(7)4gが移動可能な端末局であり、回線制御装置20は、端末局(7)4gの識別番号を取得して、端末リストに記憶しているものの、どの基地局3のエリアにいるのかは不明となっている。
【0060】
[移動可能な端末局がある場合の受令確認のシーケンス:図5
移動可能な端末局がある場合の受令確認のシーケンスについて図5を用いて説明する。図5は、移動可能な端末局がある場合の受令確認のシーケンスを示す説明図である。
図5において、処理S1~S19によって、各基地局3を介して回線制御装置20が固定型の端末局4について、受令確認を行う。処理S1~S19は、図1と同じであるため説明は省略する。
【0061】
そして、回線制御装置20は、固定型の端末局4の受令確認が終了した後、端末リストを参照して、移動可能な端末局4がある場合には、当該端末局(ここでは端末局(7)4g)についての受令確認要求を、全ての基地局3宛に送信する(S41,S42,S43)。
【0062】
端末局(7)は、基地局C(3c)から受令確認要求を受信して(S44)、受令応答を回線制御装置20に送信する(S45)。
このように、どの基地局3に接続しているかわからない移動可能な端末や後追い端末には、全ての基地局3を介して受令確認要求を送信するようにしているので、確実に受令確認を実施することができるものである。
【0063】
[実施の形態の効果]
本無線通信システムによれば、回線制御装置20が、システム内の複数の基地局3に対応して、各基地局3に接続された端末局4の識別情報に順位(送信順位、送信順)を付した端末リストを記憶しており、一斉指令の後、指令台1から受令確認開始通知を受信すると、複数の基地局3に対して、当該基地局3に対応する端末リストに基づいて送信順位が1番の端末局宛ての受令確認の要求を同時に送信し、全ての1番の端末局4から応答を受信すると、各基地局3に対して、送信順位が2番の端末局4宛ての受令確認要求を同時に送信するようにしているので、複数の基地局3に、それぞれの基地局3に接続する端末局4宛の受令確認要求を同時に送信することで、複数の端末局4に対する受令確認を効率よく実施することができ、受令確認の処理に要する時間を大幅に短縮し、迅速に行うことができる効果がある。
【0064】
また、本無線通信システムによれば、回線制御装置20が、受令確認応答を受信しない端末局4があった場合には、複数の基地局3に同時に受令確認要求を送信するタイミングに合わせて、当該端末局4に接続する基地局3に、当該端末局4宛の受令確認要求を再度送信するリトライを行うようにしているので、リトライのために他の基地局3に接続する端末局4に対する受令確認を滞らせる必要がなく、一層効率的に受令確認を行うことができる効果がある。
【0065】
また、本無線通信システムによれば、回線制御装置20が、移動可能な端末局や所在が不明な端末局4があることを認識すると、当該端末局4宛ての受令確認要求を、全ての基地局3に送信するようにしており、どの基地局3に接続しているかわからない端末局4についても確実に受令確認を行うことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、指令台からの一斉指令に対する端末からの受令確認を迅速に行うことができる無線通信システムに適している。
【符号の説明】
【0067】
1…指令台、 2,20…回線制御装置、 3…基地局、 4…端末
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8