(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】水素の生成のための方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/06 20060101AFI20240201BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20240201BHJP
C08G 77/12 20060101ALI20240201BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240201BHJP
C08K 5/549 20060101ALI20240201BHJP
C07F 7/21 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C01B3/06
C01B3/00 B
C08G77/12
C08L83/05
C08K5/549
C07F7/21
(21)【出願番号】P 2021510531
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019061106
(87)【国際公開番号】W WO2019211300
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-03-30
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520426151
【氏名又は名称】イシラブズ サス
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】バーチャー、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ロメ、ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ベノワ、レミ
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-534322(JP,A)
【文献】特開2007-045859(JP,A)
【文献】特表2015-531003(JP,A)
【文献】特開平04-300885(JP,A)
【文献】国際公開第2010/094785(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/070001(WO,A1)
【文献】特表2009-513548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00- 3/58
C01B 33/00-33/46
C07F 7/02- 7/21
C08G 77/00-77/62
C08L 83/05
C08K 5/549
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の存在下における液体
環状シロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化による水素の生成のための方法であって、
前記液体
環状シロキサン水素キャリア化合物は環状化学構造を有し、かつ式(I)の1つ又はより多くの単位を含む:
【化1】
[式中、nは繰り返し単位の数に相当する整数である]
【請求項2】
前記式(I)において、nが2以上の整数である請求項1に記載の水素の生成のための方法。
【請求項3】
前記式(I)において、nが3以上かつ500以下の整数である請求項2に記載の水素の生成のための方法。
【請求項4】
前記式(I)において、nが4以上でかつ32以下の整数である請求項3に記載の水素の生成のための方法。
【請求項5】
前記
液体環状シロキサン水素キャリア化合物が、トリ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、テトラ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、ペンタ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、ヘキサ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、ヘプタ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、オクタ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、ノナ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、デカ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、ウンデカ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、ドデカ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、トリデカ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、テトラデカ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、ペンデカ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、ヘキサデカ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、ヘプタデカ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)、及び/又はそれらの2つ又はより多くの混合物から選択される請求項1~3の何れか1項に記載の水素の生成のための方法。
【請求項6】
前記液体環状シロキサン水素キャリア化合物が、0.1及び10000mPa.sの間の絶対粘度を20℃の温度及び1.01325×10
5Paの圧力において有する請求項1~5の何れか1項に記載の水素の生成のための方法。
【請求項7】
前記液体環状シロキサン水素キャリア化合物が0.2及び50mPa.sの間の絶対粘度を有する請求項6に記載の水素の生成のための方法。
【請求項8】
前記液体環状シロキサン水素キャリア化合物が130から800g/molの分子量を有する請求項1~7の何れか1項に記載の水素の生成のための方法。
【請求項9】
前記液体環状シロキサン水素キャリア化合物が、1及び2の間の屈折率を、20℃の温度においてかつ589nmの波長において有する請求項1~8の何れか1項に記載の水素の生成のための方法。
【請求項10】
前記液体環状シロキサン水素キャリア化合物の2つ又はより多くの混合物からの
請求項1~9の何れか1項に記載の水素の生成のための方法。
【請求項11】
直鎖状化学構造を有し、かつ式(I)の1つ又はより多くの単位を含む
液体シロキサン水素キャリア化合物と、
前記液体環状シロキサン水素キャリア化合物の混合物とからの請求項1~9の何れか1項に記載の水素の生成のための方法。
【化1】
[式中、nは繰り返し単位の数に相当する整数である]
【請求項12】
水/[SiOH
2]単位モル比が0.1以上である請求項11に記載の水素の生成のための方法。
【請求項13】
水素放出開始剤/[SiOH
2]単位モル比が0.01以上である、少なくとも1つの水素放出開始剤の存在下における請求項11~12の何れか1項に記載の水素の生成のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン水素キャリア化合物に関し、及び前記シロキサン水素キャリア化合物から水素を生成するための方法に関する。本発明はシロキサン水素キャリア化合物を生成するため及び再生するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
安全な、便利な、かつ環境に優しい様式のソースによって水素を貯蔵、輸送、及び放出する能力、並びに効率的に、経済的にかつ安全に水素を生成及び貯蔵する能力は、エネルギーベクトルとしての水素の使用を普及するために克服されるべき主たる課題である。
【0003】
現行では、水素はパイプラインによって、圧縮ガスとしてチューブトレーラーによって、又はその液化形態で専用タンカーによっての何れかにより送達される。
【0004】
水素送達のためには、典型的には6つの経路がある:それはパイプラインによってガスとして輸送され得て、それはオンサイトで生成される、それは圧縮ガスとしてチューブトレーラーによって輸送される(例えば、特許文献1に開示されている通り)、それは凝縮した液体として低温トラックによって輸送される(例えば、特許文献2に開示されている通り)、それは固体状水素キャリア材料中に貯蔵され及びオンサイトで放出される(例えば、特許文献3に開示されている通り)、並びに液体状水素キャリア材料中に貯蔵され及びオンサイトで放出される。
【0005】
水素は2つの手段によってオンサイトで生成され得る。それは1つの方法によってオンサイトで生成され、別の方法に直接的に消費され、これは自家消費型水素として定義される。オンサイト生成の別の手段は水電解によってであり、これは水及び電気から水素を生成する。再生可能エネルギーを動力とする場合には、それは環境に優しい水素を生成すると見なされる。
【0006】
低温及び圧縮水素である既存の送達の解決策に加えて、水素を提供するための代替的な解決策:水素キャリアが新興しつつある。水素キャリアは、水素を貯蔵し、必要とされるときに、それを放出する能力を有する固体状又は液体状の何れかの材料である。それらは既存の解決策と比較して輸送又は貯蔵の何れかにとっての利点をもたらす。固体状キャリアは金属系水素化物を包含し、金属水素化物に帰着する金属粒子上への吸着によって水素の取り込みを可能にする。それらのうち、マグネシウム水素化物は低い圧力及び標準的な温度において安定であり、それを輸送及び貯蔵することを便利にしている。必要なときには、材料は加熱されて水素ガスを放出する。固体状解決策は、再生可能エネルギーからのエネルギー貯蔵の同一拠点可逆方法に最も良く適しているとして同定されている。実際に、固体材料を取り扱うことは、ガス又は液体のものを取り扱うほど便利ではない。
【0007】
液体水素キャリアは特定の条件下で水素を放出することができる何れかの液体状材料であり得る。液体有機水素キャリア(LOHC)のクラスは液体水素キャリアのうち最も代表的である。熱の形態のエネルギーを要求する触媒反応である水素化と呼ばれる方法の間に、水素は液体有機キャリアに化学結合される。典型的には、例えば特許文献4又は特許文献5に記載されている通り、トルエンなどの不飽和及び/又は芳香族炭化水素であるキャリアは水素と反応させられて、標準的な温度及び圧力において液体状で輸送されるべき対応する飽和炭化水素を生成する。LOHC中に貯蔵されるべき水素の量は水素化方法の収率に依存するが、それは液体キャリアの質量当り最高で7.2%質量の水素が含有される。それから、水素が脱水素化と呼ばれる方法によって飽和炭化水素から放出される。これは触媒反応であり、反応の吸熱的性質を原因として、熱の形態の(典型的には300℃よりも上の)追加のエネルギーを必要とする。水素を必要に応じて生成するためには、熱はグリッド電気から生成され得るか(その起源及びその環境影響についての制御なしに)、又は熱は有機キャリアの一部を燃焼することによって回収され得る。
【0008】
特許文献6及び特許文献7は、水素を生成するための方法に関し:a)1つ又はより多くの基Si-Hを含む化合物(C)をフッ化物イオン源と反応させ、それによって水素及び副生成物(C1)を形成すること;並びにb)得られた水素を回収することからなるステップを含む。全ての例はシラン化合物を水素キャリアとして用いる;ただし、例12ではポリメチルヒドロシロキサン(「PHMS」)、例16ではテトラメチルジシロキサンである。
【0009】
特許文献8は水素を生成するための方法に関し:i)1つ又はより多くの基Si-Hを含む化合物(C)を塩基の存在下において、溶媒としての水中で3価リンに基づく触媒と接触させ、それによって、何れかのエネルギー投入(例えば熱、電力など…)を必要とすることなしに、水素及び副生成物(C1)を形成するステップ;並びにii)得られた水素を回収するステップを含む。全ての例はシラン化合物を水素キャリアとして用いる;テトラメチルジシロキサンは、あり得る水素キャリアのリストに記載されている唯一のシロキサン含有化合物である。特許文献8は、得られた副生成物(C1)をハロゲン化アシルによってリサイクルし、得られた生成物を金属水素化物と接触させ、それによって化合物(C)を再生するステップc)をも開示しており、ハロゲン化アシルはCH3C(=O)Clであり、金属水素化物はLiAlH4である。
【0010】
特許文献9は水素を生成するための方法に関し:i)1つ又はより多くの基Si-Hを含む化合物(C)をアルコール又は水溶液から選択される溶媒中でアミンに基づく触媒と接触させ、それによって、何れかのエネルギー投入(例えば熱、電力など…)を必要とすることなく水素及び副生成物(C1)を形成するステップ;並びにii)得られた水素を回収するステップを含む。例の殆どはシラン化合物を水素キャリアとして用いる;ただし、例12ではポリメチルヒドロシロキサン(「PHMS」)、例16ではテトラメチルジシロキサンである。特許文献9は得られた副生成物(C1)をハロゲン化アシルによってリサイクルし、得られた生成物を金属水素化物と接触させ、それによって化合物(C)を再生するステップc)をも開示しており、ハロゲン化アシルはCH3C(=O)Clであり、金属水素化物はLiAlH4である。
【0011】
特許文献6、特許文献7、特許文献8、及び特許文献9は、既に、水素を必要に応じて放出する水素に基づくキャリアシステムの領域における打開策に相当するが、前記技術は改善された効率、性能、及び費用効果によってなお利益を得るであろう;加えて、特許文献8及び特許文献9の両方に従う水素に基づくキャリアの全体的な再生方法は、酸化アルミニウム副生成物に至る高価なLiAlH4還元剤の使用を必要とし、この再処理方法はエネルギー消費性であり(大量の電気が電解ステップに必要とされる)、汚染性であり、かつ二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、フッ素化された廃水、及び多環式芳香族炭化水素(PAH)を放出するので、水素に基づくキャリアに適用可能なより環境に優しくかつ炭素を排出しない再生方法を開発するために、なされるべき幾らかの進歩がある。
【0012】
従って、水素送達及び水素を基盤とする構造物などの種々の適用について、このようなクリーンエネルギーベクトルの効率、性能、及び費用効果の更なる改善の必要性が依然としてある。輸送されるべき水素のより多大な量、向上した効率、性能を示し、かつ費用効果的である改善の必要性が依然としてある。追加のエネルギーの必要なしに、水素を要求に応じて放出することができる環境に優しい液体状水素キャリアの重大な必要性が依然としてある。加えて、水素キャリアが価値ある水素源として用いられ得るのみならず、炭素含有反応物を必要とすることなく、及び/又は炭素排出なしに生成され得て、かつ環境に優しくかつ実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、水素分離の副生成物から再生され得る統合されたクリーンな方法の必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2013/109918号パンフレット
【文献】国際公開第2011/141287号パンフレット
【文献】国際公開第2009/080986号パンフレット
【文献】国際公開第2014/082801号パンフレット
【文献】国際公開第2015/146170号パンフレット
【文献】国際公開第2010070001号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第2206679号明細書
【文献】国際公開第2011098614号パンフレット
【文献】国際公開第2010094785号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
液体環状シロキサン水素キャリア化合物
本発明は液体環状シロキサン水素キャリア化合物に関し、これらは好ましくは次の化合物から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【0016】
或る実施形態では、本発明は環状化学構造を有し、かつ式(I)の1つ又はより多くの単位を含む液体シロキサン水素キャリア化合物に関し:
【化1】
式中、nは1以上、好ましくは2以上、例えば3以上、又は更には4以上の整数(繰り返し単位の数に相当する)である。本発明の或る実施形態では、nは500以下、例えば50以下である。
【0017】
このような化合物は、それらのポリ(ヒドロメチル)シロキサンアナログ(ROMenHnSinOnR’)と比較して優れた利点を有する。例として、ポリ(ヒドロメチル)シロキサンと比較したときには、ポリ(ビス(ヒドロ))シロキサンは2倍よりも多くの(厳密には同じ重量では2.61)量の水素ガスを放出し得る。また、それらの背景に炭素断片を含有するアナログと比較して、ポリ(ビス(ヒドロ))シロキサン化合物は完全な炭素を排出しないリサイクル性を示す(本発明による水素生成及びシロキサン生成/再生方法に用いられるとき)。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は環状化合物、例えば式H2nSinOnの環状化合物であり、nは2以上、例えば3以上、又は更には4以上の整数である。本発明の或る実施形態では、nは500以下、例えば32以下、例えば17以下である。
【0019】
本発明の或る実施形態では、液体シロキサン水素キャリア化合物は、式(I)の上記定義されているシロキサン水素キャリア化合物の1つからなる。
【0020】
本発明の別の実施形態では、液体シロキサン水素キャリア化合物は、式(I)の上記定義されているシロキサン水素キャリア化合物の何れかの2つ又はより多くの混合物からなる。
【0021】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、0.1及び10000mPa.sの間の絶対粘度を、20℃の温度及び1.01325×105Paの圧力において有する。本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、0.2及び50mPa.sの間の絶対粘度を20℃の温度及び1.01325×105Paの圧力において提示する。式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の20℃の温度及び1.01325×105Paの圧力における絶対粘度は、何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはISO1628-1規格に従って決定され得る。
【0022】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体環状シロキサン水素キャリア化合物の分子量は、130から800g/molの範囲であり得る。式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の分子量は、何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはGC-MS、例えばアジレントGC/MSD5975C機によって行われるGC-MS分析によって決定され得る。
【0023】
本発明の或る実施形態では、FT-IRによって分析されたときには、式(I)の液体環状シロキサン水素キャリア化合物は、SiH2単位に対応する800及び1000cm-1の間の特徴的な強くかつ鋭い吸収帯を有する。本発明の或る実施形態では、式(I)の環状シロキサン水素キャリア化合物は、850及び950cm-1の間の特徴的な強くかつ鋭い吸収帯を有する。
【0024】
本発明の或る実施形態では、
図4に例示されている通り、25℃においてCDCl
3中で
1H-NMRによって分析されたときには、式(I)の液体環状シロキサン水素キャリア化合物はSiH
2O単位に対応する4.5及び4.9ppmの間の特徴的な共鳴を有する。
1H-NMR分析は何れかの適当なスペクトロメータ、例えば400MHzブルカースペクトロメータによって行われ得る。
【0025】
本発明の或る実施形態では、
図5に例示されている通り、25℃においてCDCl
3中で
29Si-NMRによって分析されたときには、式(I)の液体環状シロキサン水素キャリア化合物は、SiH
2O単位に対応する-45及び50ppmの間の特徴的な共鳴を有する。
29Si-NMR分析は何れかの適当なスペクトロメータ、例えば400MHzブルカースペクトロメータによって行われ得る。
【0026】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、1及び2の間の屈折率を、20℃の温度においてかつ589nmの波長において有する。本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、1.2及び1.5の間の屈折率を、20℃の温度においてかつ589nmの波長において有する。式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の屈折率は、何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはASTM-D1218規格に従って決定され得る。
【0027】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、30及び500℃の間の、例えば50及び500℃の間の沸点、例えば50及び150℃の間に含まれる沸点を、1.01325×105Paの圧力において有する。式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物の沸点は、何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはISO918規格に従って決定され得る。
【0028】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、50及び500℃の間の引火点を有する。式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の引火点は、何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはISO3679規格に従って決定され得る。
【0029】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、式
【化2】
を有する環状シロキサン化合物から選択され、式中、nは1以上、好ましくは2以上、例えば3以上、又は更には4以上の整数(繰り返し単位の数に相当する)である。本発明の或る実施形態では、nは500以下、例えば32以下、例えば17以下である。本発明の或る実施形態では、液体シロキサン水素キャリア化合物は、前記液体環状シロキサン化合物の2つ又はより多くの混合物からなる。
【0030】
本発明によると、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物は液体である(標準温度及び圧力(NTP)において;例えば20℃の温度及び1.01325×105Paの絶対圧力において)。
【0031】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物は、次の環状シロキサン化合物から選択されるか、又は次の環状シロキサン化合物の2つ又はより多くの混合物からなる:
【表1-A】
【表1-B】
【表1-C】
【0032】
本発明は、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物及び水の混合物を含む水素キャリア化合物にも関する。本発明による水素生成方法の目的のためには、前記水は反応物と見なされる。有利には、水は例えば淡水、流水、水道水、塩水、脱イオン水、及び/又は蒸留水などの種々のソースから選択され得る。
【0033】
本発明の或る実施形態では、シロキサン及び水の前記混合物は0.1以上である水/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。本発明の或る実施形態では、シロキサン及び水の前記混合物は、2及び10の間に、例えば2及び2.5の間に含まれる水/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。
【0034】
例えば、ポリヒドロシロキサン「PHS」では、対応する水/PHS混合物は、比H2O/PHS=(mH2O/MH2O)/(mPHS/MSiH2O)=(mH2O/18)/(mPHS/46.11)として計算されるモル比値を特徴とするであろう。
【0035】
本発明は、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物及び少なくとも1つの水素放出開始剤及び水の混合物を含む水素キャリア化合物にも関する。本発明による水素生成方法の目的のためには、前記水素放出開始剤は試薬と見なされる。それが式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化が好ましく;従って、シロキサン反応が対応する水素放出に至る限りは、本発明に従って用いられ得る水素放出開始剤の型について、如何なる制限もない。例えば、シロキサンの加水分解的酸化を好ましいであろう何れかの化合物が水素放出開始剤として有利に用いられ得る。
【0036】
本発明の或る実施形態では、水素放出開始剤は次のリストの1つ又はより多くの化合物から選択される:
- 無機塩基。例えば、無機塩基は水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物であり得て、水酸化ナトリウムが特に好ましい;
- 例えば、式RR’R” R'”ZYの化合物などのシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化を行うことができる求核剤を放出することができる化合物。ZはN又はPであり、YはOH、F、Cl、又はBrであり、R、R’、R”、及びR'”は有利にはC1~C15アルキル又はC6~C10アリールから選択され得て、R、R’、R”、R'”は同じか又は異なる;
- 例えば鉄、ルテニウム、レニウム、ロジウム、銅、クロム、イリジウム、亜鉛、及び/又はタングステンなど…に基づく有機金属系錯体などの、シロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化を促進することができる均一系有機金属系触媒;並びに
- 例えば、金属ナノ粒子、[M/AlO(OH)、M=Pd、Au、Rh、Ru、及びCu]、Pd/C、及び/又は好ましくは無機支持体上に固定化された前述の金属の何れかなどの、シロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化を促進することができる不均一系触媒。
【0037】
本発明の或る実施形態では、水素放出開始剤は炭素を排出しない水素放出開始剤、例えば水酸化ナトリウムから選択される。
【0038】
本発明は、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物、水、上で定義されている通りの水素放出開始剤、及び任意に触媒Cの混合物を含む水素キャリア化合物にも関する。本発明による水素生成方法の目的のためには、前記触媒Cは試薬と見なされる。それが式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化のキネティクス(即ち、水素が放出される速度)を増大させ;従って水/シロキサン/水素放出開始剤/触媒C反応が対応する水素放出に至る限りは、本発明に従って用いられ得る触媒Cの型について如何なる制限もない。例えば、シロキサンの加水分解的酸化のキネティクスを、有意に増大させるであろう何れかの化合物が触媒Cとして有利に用いられ得る。
【0039】
本発明の或る実施形態では、触媒Cは次のリストの1つ又はより多くの化合物から選択される:
- 3価リンに基づく触媒(例えば、1つ又はより多くの3価リン基を持つポリマー担持触媒);
- アミンに基づく触媒(例えば、1つ又はより多くのアミン基を持つポリマー担持触媒)、又はアンモニウム塩、例えばRR’R” R'”NOH。R、R’、R”、R'”はC1~C15アルキル又はC6~C10アリールであり、R、R’、R”、R'”は同じか又は異なる;
- フッ化物イオン源触媒(例えばフッ化テトラブチルアンモニウム);及び
- ヘキサメチルホスホロアミド(「HMPA」)。
【0040】
本発明の或る実施形態では、個々に記載されている上記の触媒Cの何れも水素生成方法の間に用いられない。
【0041】
本発明の或る実施形態では、シロキサン、水、及び水素放出開始剤、並びに任意の触媒Cの前記混合物は、0.01以上である水素放出開始剤/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。本発明の或る実施形態では、シロキサン、水、及び水素放出開始剤の前記混合物は、0.05及び3の間に、例えば0.05及び0.35の間に含まれる水素放出開始剤/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。
【0042】
本発明の或る実施形態では、シロキサン、水、水素放出開始剤、及び触媒Cの前記混合物は、0.01から0.5の範囲である化合物(I)中の[SiOH2]モノマー単位に対して相対的な触媒のモル比を特徴とする。好ましくは、化合物(I)中の[SiOH2]モノマー単位に対して相対的な触媒Cのモル比は0.02から0.1の範囲である。より好ましくは、化合物(I)中の[SiOH2]モノマー単位に対して相対的な触媒Cのモル比は0.05より低く、例えば0.04に等しい。
【0043】
開始剤及び触媒C対[SiOH2]単位モル比の上記計算の目的のために、選ばれる化合物が同時に水素放出開始剤定義及び触媒C定義に当てはまるときには、両方の比に用いられるのはその総量である。
【0044】
本発明の別の実施形態では、炭素含有反応物を要求することなく、及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、液体シロキサン水素キャリア化合物がシリカ化合物、及び/又はケイ酸塩化合物から生成され得ることも発見された。
【0045】
本発明によるシリカ化合物は、シリカ含有化合物、及び/又は前記シリカ含有化合物の2つ又はより多くの混合物として定義され得る。
【0046】
本発明の或る実施形態では、シリカ化合物は:
・ 一般式SiO2,xH2Oのシリカ化合物、
・ 2以上のnを有する[SiO2]n、又は
・ 前記シリカ化合物の2つ又はより多くの混合物、
から選択される。
【0047】
本発明によるケイ酸塩化合物は、ケイ酸塩含有化合物、及び/又は前記ケイ酸塩含有化合物の2つ又はより多くの混合物として定義され得る。
【0048】
本発明の或る実施形態では、ケイ酸塩化合物は:
・ 0及び2の間に含まれる整数であるxを有する一般式Na2xSiO2+x又はK2xSiO2+xのケイ酸ナトリウム又はカリウム化合物、或いは
・ 0及び4の間に含まれる整数であるxを有する一般式[SiOx(OH)4-x]x-の、又はn=1のときにx=0又は1及びn=2のときにx=1/2又は3/2を有する一般式[SiOx(OH)4-2x]nのケイ酸化合物、或いは
・ ポリマー構造を有するケイ酸塩化合物、例えば構造(Si2O7)6-の二ケイ酸イオン、又は2以上のnを有する一般構造[SiO3
2-]n、[Si4O11
6-]n、又は[Si2O5
2-]nのマクロアニオン、或いは
・ 前記ケイ酸塩化合物の2つ又はより多くの混合物、
から選択される。
【0049】
炭素含有反応物を必要とすることなく、及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、液体シロキサン水素キャリア化合物が再生され得るということもまた発見された。
【0050】
本発明の生成/再生方法の最も重要な利点は、それを連続的に適用する可能性からなる;また、このような連続的方法は、以降に説明される通り、原材料投入を必要とすることなく、及び/又は副生成物排出なしに操作され得る。
【0051】
幾つかの液体シロキサン水素キャリア化合物を用いることによって、
・ それを放出するためのエネルギー投入なしに、水素が大量に、高収率でもって、非常に短時間で、かつ非常に低い生成コストによって生成され得た;かつ
・ 実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、エネルギーを貯蔵すること及び水素生成から出される副生成物をリサイクルすることによって、前記シロキサン水素キャリア化合物を作り出すことが可能であった、
ということも発見された。
【0052】
用語「水素キャリア化合物」は、水素を貯蔵、水素を輸送、及び水素を要求に応じて放出することができる化学的な化合物として理解され得る;本発明による水素キャリア化合物の特徴は、それらが何れかのエネルギー投入(例えば熱、電力など…)を必要とすることなく、水素を貯蔵/輸送/放出し得ることである。
【0053】
液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するための方法
本発明は、炭素含有反応物を必要とすることなく及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物から液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するための方法に関する。
【0054】
下記に定義されるシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)は、本発明による液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するための方法の出発材料として好ましいソースであるが、例えばジルコン、ヒスイ、雲母、石英、クリストバライト、砂など…などのシリカ、及び/又は他のケイ酸塩含有鉱物が、液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するための方法の出発材料のソースとして有利に用いられ得る。本発明及び添付の請求項の目的のためには、好ましくは、シリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)は、シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)の加水分解的酸化から生成されるシリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物である。
【0055】
シロキサン水素キャリア化合物を再生するための方法
本発明は液体シロキサン水素キャリア化合物を再生するための方法にも関し、前記方法は、水素並びにシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)の生成のためのシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化のステップと、前記シリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)から液体シロキサン水素キャリア化合物への変換のステップとを含み、前記方法は炭素含有反応物を必要とせず、及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしである。
【0056】
本発明による液体シロキサン水素キャリア化合物の生成及び再生は次の記載によって更に詳述及び説明される。炭素含有反応物を必要とせずに、及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、対応する方法を開発し得たことは、水素エネルギー、水素輸送、及び自動車産業用水素の領域における打開策に相当する。
【0057】
シロキサン水素キャリア化合物
別の実施形態では、本発明は、直鎖状化学構造を有し、かつ式(I)の1つ又はより多くの単位を含む、液体シロキサン水素キャリア化合物にも関し:
【化1】
式中、nは1以上、好ましくは2以上、例えば3以上、又は更には4以上の整数(繰り返し単位の数に相当する)である。本発明の或る実施形態では、nは500以下、例えば50以下である。
【0058】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は直鎖状化合物、例えば式ROH2nSinOnR’の直鎖状化合物であり、nは1以上、好ましくは2以上、例えば3以上、又は更には4以上の整数であり、R及びR’は有利にはMe、Et、Pr、iPr、Bu、tBu、Ph、及び/又はSiR”3から選択され得て、R”はH、Me、Et、Pr、iPr、Bu、tBu、及び/又はPhから選択される。本発明の或る実施形態では、nは500以下、例えば50以下である。
【0059】
本発明の別の実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は直鎖状化合物、例えば式ROH2nSinOnR’の直鎖状化合物であり、nは1以上、好ましくは2以上、例えば3以上、又は更には4以上の整数であり、式中、R及びR’ラジカルは炭素を含有しない;R及びR’は好ましくは前段のパラグラフにおいて定義されているラジカルから選択され、R及びR’ラジカルは炭素を含有しない;R及びR’は最も好ましくはSiH3である。本発明の或る実施形態では、nは500以下、例えば50以下である。
【0060】
直鎖状シロキサン水素キャリア化合物では、炭素を排出しないラジカル(例えばSiH3)鎖末端が選択される。何故なら、それは多くの利点を有するからである(例えばSiMe3などの他の炭素含有鎖末端と比較して):
- シロキサン化合物の重量分析上のより良好な重量効率を許容する、より低い分子量。その全体的な分子量と比較して、化合物によって担われる水素の重量の間のより高い比を意味する。
- 例えばSiMe3と比較されたときに、単純かつ何れかの炭素排出なしのSiH3鎖末端のリサイクル。何故なら、H3SiClは再生方法の副生成物であり(ステップ4を参照)、従ってこれは評価され、そのリサイクルのための外からの原材料投入を必要としないからである。
【0061】
本発明の或る実施形態では、液体シロキサン水素キャリア化合物は炭素原子を含有しない。しかし、本発明及び請求項の目的のために、かつ本発明の範囲の不適切な制限を防ぐために、出願人は幾らかの炭素排出を許容するための表現「実質的な炭素排出なしに」を用いた;例えば、本発明のシロキサン水素キャリア化合物は、前記シロキサン水素キャリア化合物の対応する炭素含量が25wt%よりも低い限りは、炭素を含み得る。前記炭素含量は、シロキサン水素キャリア化合物中に含有される全ての炭素原子の分子量(g/molによる)と、シロキサン水素キャリア化合物との総分子量(g/molによる)との間の比を求めることによって計算され得る。本発明の或る実施形態では、炭素含量は10wt%よりも低く、好ましくは5wt%よりも低く、例えば2wt%よりも低く、又は更により好ましくは0wt%に等しい。
【0062】
本発明による好ましい実施形態では、
- 液体シロキサン水素キャリア化合物が脱炭素であるときには、如何なる炭素排出もなく、
- シロキサン水素キャリア化合物が炭素を含有するときには、対応する炭素排出は、生成及び/又はリサイクルされるシロキサン水素キャリア化合物のkg当り0.924kgのCO2よりも少なく、好ましくは0.462よりも少なく、より好ましくは0.231よりも少なく、例えば0.1よりも少なく、又は更には0.05kgのCO2よりも少ないであろう。
【0063】
本発明の別の実施形態では、液体シロキサン水素キャリア化合物は、式(I)の上記定義されている直鎖状シロキサン水素キャリア化合物の何れかの2つ又はより多くの混合物からなる。
【0064】
本発明の別の実施形態では、液体シロキサン水素キャリア化合物は、式(I)の上記定義されている環状及び直鎖状シロキサン水素キャリア化合物の何れかの2つ又はより多くの混合物からなる。
【0065】
この「混合物」の実施形態では、式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物が、混合物中の重量による主な種に相当する(即ち、50重量パーセントよりも多くに相当する)ときには、式(I)の環状シロキサン水素キャリア化合物の量を混合物中において20重量パーセントよりも少なく、例えば10重量パーセントよりも少なく制限することが有利である;或る実施形態では、有利には、0.01重量パーセントよりも多く、又は更には0.1重量パーセントよりも多くの式(I)の環状シロキサン水素キャリア化合物が前記混合物中に存在し得る。
【0066】
この「混合物」の実施形態では、式(I)の環状シロキサン水素キャリア化合物が、混合物中の重量による主な種に相当する(即ち、50重量パーセントよりも多くに相当する)ときには、式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物の量を混合物中において20重量パーセントよりも少なく、例えば10重量パーセントよりも少なく制限することが有利である;有利には、0.01重量パーセント、又は更には0.1重量パーセントの式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物が前記混合物中に存在し得る。
【0067】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、0.1及び10000mPa.sの間の絶対粘度を、20℃の温度及び1.01325×105Paの圧力において有する。本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、0.2及び50mPa.sの間の絶対粘度を、20℃の温度及び1.01325×105Paの圧力において有する。式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の20℃の温度、及び1.01325×105Paの圧力における絶対粘度は、何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはISO1628-1規格に従って決定され得る。
【0068】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体直鎖状シロキサン水素キャリア化合物の数平均分子量(Mn)及び/又は分子量分布(D)は、それぞれ64から30000g/mol及び1.1から50の範囲であり得る。式(I)の直鎖状シロキサン水素キャリア化合物の平均分子量及び分子量分布は、何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはISO16014規格に従って決定され得る。
【0069】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、1及び2の間の屈折率を20℃の温度において、かつ589nmの波長において提示する。本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、1.2及び1.5の間の屈折率を、20℃の温度においてかつ589nmの波長において有する。式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の屈折率は何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはASTM-D1218規格に従って決定され得る。
【0070】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、1.01325×105Paの圧力において、30及び500℃の間の、例えば50及び500℃の間の沸点、例えば50及び150℃の間に含まれる沸点を有する。式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物の沸点は、何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはISO918規格に従って決定され得る。
【0071】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、50及び500℃の間の引火点を有する。式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の引火点は、何れかの適当な方法に従って測定され得る;例えば、それはISO3679規格に従って決定され得る。
【0072】
本発明の或る実施形態では、式(I)の液体シロキサン水素キャリア化合物は、式
【化3】
を有する直鎖状シロキサン化合物から選択され、nは1以上、好ましくは2以上、例えば3以上、又は更には4以上の整数である。本発明の或る実施形態では、nは500以下、例えば50以下である。本発明の或る実施形態では、液体シロキサン水素キャリア化合物は、前記液体直鎖状シロキサン化合物の2つ又はより多くの混合物からなる。
【0073】
本発明によると、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物は液体である(標準温度及び圧力(NTP)において;例えば20℃の温度及び1.01325×105Paの絶対圧力において)。
【0074】
本発明は式(I)のシロキサン水素キャリア化合物及び水の混合物を含む水素キャリア化合物にも関する。本発明による水素生成方法の目的のためには、前記水は反応物と見なされる。有利には、水は例えば淡水、流水、水道水、塩水、脱イオン水、及び/又は蒸留水などの種々のソースから選択され得る。
【0075】
本発明の或る実施形態では、シロキサン及び水の前記混合物は0.1以上である水/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。本発明の或る実施形態では、シロキサン及び水の前記混合物は2及び2.5の間に含まれる水/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。
【0076】
例えば、ポリヒドロシロキサン「PHS」では、対応する水/PHS混合物は、比H2O/PHS=(mH2O/MH2O)/(mPHS/MSiH2O)=(mH2O/18)/(mPHS/46.11)として計算されるモル比値を特徴とするであろう。
【0077】
本発明は、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物、及び少なくとも1つの水素放出開始剤及び水の混合物を含む水素キャリア化合物にも関する。本発明による水素生成方法の目的のためには、前記水素放出開始剤は試薬と見なされる。それが、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化を好み;従って、シロキサン反応が対応する水素放出に至る限りは、本発明に従って用いられ得る水素放出開始剤の型について如何なる制限もない。例えば、シロキサンの加水分解的酸化を好むであろう何れかの化合物が水素放出開始剤として有利に用いられ得る。
【0078】
本発明の或る実施形態では、水素放出開始剤は次のリストの1つ又はより多くの化合物から選択される:
- 無機塩基。例えば、無機塩基は水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物であり得て、水酸化ナトリウムが特に好ましい;
- 例えば式RR’R” R'”ZYの化合物などのシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化を行うことができる求核剤を放出することができる化合物。ZはN又はPであり、YはOH、F、Cl、又はBrであり、R、R’、R”、及びR'”は有利には、C1~C15アルキル又はC6~C10アリールから選択され得て、R、R’、R”、R'”は同じか又は異なる;
- 例えば鉄、ルテニウム、レニウム、ロジウム、銅、クロム、イリジウム、亜鉛、及び/又はタングステンなど…に基づく有機金属系錯体などの、シロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化を促進することができる均一系有機金属系触媒;並びに
- 例えば、金属ナノ粒子、[M/AlO(OH)、M=Pd、Au、Rh、Ru、及びCu]、Pd/C、及び/又は好ましくは無機支持体上に固定化された前述の金属の何れかなどの、シロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化を促進することができる不均一系触媒。
【0079】
本発明の或る実施形態では、水素放出開始剤は炭素を排出しない水素放出開始剤、例えば水酸化ナトリウムから選択される。
【0080】
本発明は、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物、水、上記定義されている通りの水素放出開始剤、及び任意に触媒Cの混合物を含む水素キャリア化合物にも関する。本発明による水素生成方法の目的のためには、前記触媒Cは試薬と見なされる。それが、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化のキネティクス(即ち、水素が放出される速度)を増大させ;従って水/シロキサン/水素放出開始剤/触媒C反応が対応する水素放出に至る限りは、本発明に従って用いられ得る触媒Cの型について如何なる制限もない。例えば、シロキサンの加水分解的酸化のキネティクスを有意に増大させるであろう何れかの化合物は、触媒Cとして有利に用いられ得る。
【0081】
本発明の或る実施形態では、触媒Cは次のリストの1つ又はより多くの化合物から選択される:
- 3価リンに基づく触媒(例えば、1つ又はより多くの3価リン基を持つポリマー担持触媒);
- アミンに基づく触媒(例えば、1つ又はより多くのアミン基を持つポリマー担持触媒)、又はアンモニウム塩、例えばRR’R” R'”NOH。R、R’、R”、R'”はC1~C15アルキル又はC6~C10アリールであり、R、R’、R”、R'”は同じか又は異なる;
- フッ化物イオン源触媒(例えばフッ化テトラブチルアンモニウム);及び
- ヘキサメチルホスホロアミド(「HMPA」)。
【0082】
本発明の或る実施形態では、個々の上記触媒Cの何れも水素生成方法の間に用いられない。
【0083】
本発明の或る実施形態では、シロキサン、水、及び水素放出開始剤、並びに任意の触媒Cの前記混合物は、0.01以上である水素放出開始剤/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。本発明の或る実施形態では、シロキサン、水、及び水素放出開始剤の前記混合物は、0.05及び0.35の間に含まれる水素放出開始剤/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。
【0084】
本発明の或る実施形態では、シロキサン、水、水素放出開始剤、及び触媒Cの前記混合物は、0.01から0.5の範囲である化合物(I)中の[SiOH2]モノマー単位に対して相対的な触媒のモル比を特徴とする。好ましくは、化合物(I)中の[SiOH2]モノマー単位に対して相対的な触媒Cのモル比は0.02から0.1の範囲である。より好ましくは、化合物(I)中の[SiOH2]モノマー単位に対して相対的な触媒Cのモル比は0.05よりも低く、例えば0.04に等しい。
【0085】
開始剤及び触媒C対[SiOH2]単位モル比の上の計算の目的のために、選ばれる化合物が同時に水素放出開始剤定義及び触媒C定義に当てはまるときには、両方の比に用いられるのはその総量である。
【0086】
液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するための方法
本発明は、炭素含有反応物を要求することなしに及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物から液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するための方法に関する。
【0087】
このように定義されるシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)は、本発明による液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するための方法の出発材料として好ましいソースであるが、例えばジルコン、ヒスイ、雲母、石英、クリストバライト、砂など…などのシリカ及び/又は他のケイ酸塩含有鉱物が、液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するための方法の出発材料のソースとして有利に用いられ得る。本発明及び添付の請求項の目的のためには、好ましくは、シリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)は、シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)の加水分解的酸化から生成されるシリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物である。
【0088】
シロキサン水素キャリア化合物を再生するための方法
本発明は液体シロキサン水素キャリア化合物を再生するための方法にも関し、前記方法は、水素並びにシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)の生成のためのシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化のステップと、前記シリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)から液体シロキサン水素キャリア化合物への変換のステップとを含み、前記方法は炭素含有反応物を必要とせず、及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしである。
【0089】
本発明による液体シロキサン水素キャリア化合物の生成及び再生は次の記載によって更に詳述及び説明される。炭素含有反応物を必要とせずに及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、対応する方法を開発し得たことは、水素エネルギー、水素輸送、及び自動車産業用水素の領域における打開策に相当する。
【0090】
水素生成
本発明は水の存在下におけるシロキサンの加水分解的酸化による水素の生成のための方法にも関し、シロキサンは液体シロキサン水素キャリア化合物であり、既に本明細書において上記定義されている液体シロキサン、好ましくは本明細書において上記定義されている環状シロキサンから選択される。
【0091】
本発明の或る実施形態では、水素の生成のための方法は、水/[SiOH2]単位モル比が0.1以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、シロキサン及び水の前記混合物は、2及び10の間に、例えば2及び2.5の間に含まれる水/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。
【0092】
本発明の或る実施形態では、水素の生成のための方法は、水の存在下におけるシロキサンの加水分解的酸化の間の少なくとも1つの水素放出開始剤の存在を特徴とする。それが、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化が好ましく;従って、水/シロキサン反応が対応する水素放出に至る限りは、本発明に従って用いられ得る水素放出開始剤の型について如何なる制限もない。例えば、シロキサンの加水分解的酸化が好ましいであろう何れかの化合物が水素放出開始剤として有利に用いられ得る;有用な水素放出開始剤は既に本明細書において定義されている。本発明の或る実施形態では、シロキサン、水、及び水素放出開始剤、並びに任意の触媒Cの前記混合物は、0.01以上である水素放出開始剤/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。本発明の或る実施形態では、シロキサン、水、及び水素放出開始剤の前記混合物は、0.05及び3の間に、例えば0.05及び0.35の間に含まれる水素放出開始剤/[SiOH2]単位モル比を特徴とする。
【0093】
本発明の或る実施形態では、水素の生成のための方法は、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物、水、上記定義されている通りの水素放出開始剤、及び触媒Cの混合物の存在を特徴とする。それが、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物の加水分解的酸化のキネティクス(即ち、水素が放出される速度)を増大させ;従って水/シロキサン/水素放出開始剤/触媒C反応が対応する水素放出に至る限りは、本発明に従って用いられ得る触媒Cの型について如何なる制限もない。例えば、シロキサンの加水分解的酸化のキネティクスを有意に増大させるであろう何れかの化合物は、触媒Cとして有利に用いられ得る;有用な触媒Cは既に本明細書において定義されている。本発明の或る実施形態では、シロキサン、水、水素放出開始剤、及び触媒Cの前記混合物は、0.01から0.5の範囲である化合物(I)中の[SiOH2]モノマー単位に対して相対的な触媒のモル比を特徴とする。好ましくは、化合物(I)中の[SiOH2]モノマー単位に対して相対的な触媒Cのモル比は0.02から0.1の範囲である。より好ましくは、化合物(I)中の[SiOH2]モノマー単位に対して相対的な触媒Cのモル比は0.05よりも低く、例えば0.04に等しい。
【0094】
本発明は、水素の生成のための式(I)の選択されたシロキサン水素キャリア化合物の使用にも関する。
【0095】
水/式(I)の水素キャリア化合物からの水素放出が追加のエネルギーを必要とせず、かつ水素産業の要求を満たす限りは、本発明による水素生成方法に用いられ得る方法の型について如何なる制限もない。
【0096】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物からの水素の生成のための方法の温度は広い範囲で変わり得て、特に0から200℃の範囲であり得る。より好ましくは、温度は15から30℃の範囲である。
【0097】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物からの水素の生成のための方法の圧力は広い範囲で変わり得て、特に1×105Paから500×105Paの範囲であり得る。
【0098】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物からの水素の生成のための方法は溶媒の存在を許容し得る。式(I)の水素キャリア化合物からの水素放出が水素産業の要求を満たす限りは、本発明による水素生成方法に用いられ得る溶媒の型について如何なる制限もない。本発明の或る実施形態では、前記溶媒は、アルコール(例えばメタノール)、水系溶媒、有機溶媒、及び/又は前記溶媒の2つ又はより多くの混合物から選択される。本発明による水素生成方法の目的のためには、前記溶媒は試薬と見なされる。
【0099】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物からの水素の生成のための方法は次のステップを含む:a)式(I)のシロキサン水素キャリア化合物及び触媒Cを接触させて、シロキサン/触媒混合物を形成すること、並びに:b)シロキサンを触媒Cの存在下において、水素放出開始剤の水溶液と組み合わせて、水素を生成すること。ステップa)及びb)は逐次的に又は同時的に起こり得る。
【0100】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア化合物からの水素の生成のための方法に用いられる反応混合物は、
- 式(I)のシロキサン水素キャリア化合物、
- 対応するケイ酸塩型の副生成物、
- 水素、
- 水、
- 水素放出開始剤(単数又は複数)、並びに
- 任意の触媒、及び
- 任意の溶媒
が、前記反応混合物の少なくとも90重量パーセント、好ましくは少なくとも95重量パーセント、例えば少なくとも99重量パーセントに相当することを特徴とする。
【0101】
或る実施形態では、本発明は、上記記載されている方法に従って、水素を生成するための装置にも関し、前記装置は:
- 反応混合物入口。前記混合物は式(I)のシロキサン水素キャリア化合物及び任意の溶媒を含む;
- 水素出口;
- 任意に、副生成物捕集部;並びに
- 任意に、上記記載されている通り、ポリマー担持触媒によってコーティングされた、前記混合物と接触することを意図される表面
を含む反応チャンバーを含む。
【0102】
液体シロキサン生成及び液体シロキサン再生
本明細書において説明されている通り、本発明の目的は、水素生成から出される副生成物をリサイクルすることによって、環境に優しく及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、水素キャリア化合物を生成すること及び水素キャリア化合物を再生することでもある。
【0103】
従って、本発明は、炭素含有反応物を必要とすることなく、及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしに、シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物から、好ましくはシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)から液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するための方法に関する。
【0104】
本発明は、シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)を再生するための方法にも関し、前記方法は、水素並びにシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(単数又は複数)(B)の生成のためのシロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)の加水分解的酸化のステップと、前記シリカ及び/又はケイ酸塩化合物(単数又は複数)(B)からシロキサン水素キャリア化合物、好ましくは同じシロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)への変換のステップとを含み、前記方法は炭素含有反応物を必要とせず、及び/又は実質的な炭素排出なしに、好ましくは炭素排出なしである。
【0105】
本発明の或る実施形態では、次の逐次的ステップを含む反応経路X、Y、又はZからなる液体シロキサン水素キャリア化合物の生成のための方法が提供される:
・ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を提供すること、
- 反応経路Xでは、
・ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物をハロゲン化ステップに付して四ハロゲン化ケイ素を生成すること、
・ 四ハロゲン化ケイ素を還元ステップに付してハロシランを生成すること、及び
・ ハロシランを加水分解ステップに付して液体シロキサン水素キャリア化合物を生成すること;
- 反応経路Yでは、
・ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元ステップに付してケイ素を生成すること、
・ ケイ素をヒドロハロゲン化ステップに付してハロシランを生成すること、及び
・ ハロシランを加水分解ステップに付して液体シロキサン水素キャリア化合物を生成すること;
- 反応経路Zでは、
・ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物をハロゲン化ステップに付して四ハロゲン化ケイ素を生成すること、
・ 四ハロゲン化ケイ素を還元ステップに付してケイ素を生成すること、
・ ケイ素をヒドロハロゲン化ステップに付してハロシランを生成すること、及び
・ ハロシランを加水分解ステップに付して液体シロキサン水素キャリア化合物を生成すること。
【0106】
ケイ酸塩/シリカ.
本発明の或る実施形態では、即ち、ケイ酸塩がシロキサン生成/再生方法の出発材料として選択されるときには、有利には、ケイ酸塩の追加の処理(例えば、溶媒蒸発、酸による化学処理、熱分解…)がシリカ(SiO2)を得るために用いられ得る。後者はシロキサン生成方法の原材料として用いられる。
【0107】
本発明の或る実施形態では、反応経路Yの還元ステップに付されることに先行して、及び/又は反応経路X及びZのハロゲン化ステップに付されることに先行して、シリカ及び/又はケイ酸塩化合物は追加の機械的処理、例えば磨砕及び/又は篩分けに付され得る。
【0108】
反応経路Yに関係する本発明の或る実施形態では、シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物を還元ステップに付してケイ素を生成するその最初のステップは、1又は2ステップで行われ得る;例えば、1ステップ還元方法、又はSiOの中間体生成を有する2ステップ還元方法である。
【0109】
本明細書及び請求項の目的のためには、次の付番が個々の反応ステップに用いられた:
- 反応経路X及びZでは、
・ 四ハロゲン化ケイ素の生成のためのシリカ、及び/又はケイ酸塩化合物のハロゲン化はステップ2(a)に対応する;それが四ハロゲン化ケイ素の生成を好む限りは、何れかの好適なハロゲン化物源がステップ2(a)に用いられ得る;
- 反応経路Yでは、
・ ステップ2(c)はケイ素を生成するためのシリカ化合物、及び/又はケイ酸塩化合物の1ステップ還元に対応する;
・ ステップ2(b)及び3(c)はケイ素を生成するためのシリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物の2ステップ還元に対応する;
- 反応経路Zでは、
・ ステップ3(a’)及び/又はステップ3(b)はケイ素を生成するための四ハロゲン化ケイ素の還元に対応する;
- 反応経路Xでは、
・ ステップ3(a)はハロシランを生成するための四ハロゲン化ケイ素の還元に対応する;
- 反応経路Y及びZでは、
・ ステップ4はハロシランを生成するためのケイ素のヒドロハロゲン化方法に対応する;
- 反応経路X、Y、及び/又はZでは、
・ ステップ5は液体シロキサン水素キャリア化合物を生成するためのハロシランの加水分解に対応する。
【0110】
例解的なかつ限定しない目的のために、シロキサン生成方法の例が
図1に詳述されており、
図2は個々の方法ステップの例を例解している;
-
図2のステップ3(b)では、Naが還元剤として用いられるケースでは(ステップ3(b))、形成された4当量のNaFはリサイクルされて、ここでは開示されない方法において、4Na及び4HFを再生する。
-
図2のステップ3(c)では、SiO経路の水素ガス還元が使用されるケースでは(ステップ3(c))、2当量のSiが形成される。有利には、後者の1当量は方法へのSiの何れかの投入を回避するために、ステップ2(b)に再注入され得て、別の当量(「余剰な」含量)は有利には方法の次段のステップ4において消費される。
-
図2では、生成方法のステップ4は、ここでは完全には開示されない多段階方法である。
【0111】
本発明の或る実施形態では、液体シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)の再生のための方法が提供され、水素並びにシリカ及び/又はケイ酸塩化合物(B)の生成のためのシロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)の加水分解的酸化、次いで、次の逐次的ステップを含む反応経路X、Y、又はZを含む:
- 反応経路Xでは、
・ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物(B)をハロゲン化ステップに付して四ハロゲン化ケイ素を生成すること、
・ 四ハロゲン化ケイ素を還元ステップに付してハロシランを生成すること、及び
・ ハロシランを加水分解ステップに付して、液体シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)、好ましくは同じ液体シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)を再生すること;
- 反応経路Yでは、
・ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物(B)を還元ステップに付してケイ素を生成すること、
・ ケイ素をヒドロハロゲン化ステップに付してハロシランを生成すること、及び
・ ハロシランを加水分解ステップに付して、液体シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)、好ましくは同じ液体シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)を再生すること;
- 反応経路Zでは、
・ シリカ化合物及び/又はケイ酸塩化合物(B)をハロゲン化ステップに付して四ハロゲン化ケイ素を生成すること、
・ 四ハロゲン化ケイ素を還元ステップに付してケイ素を生成すること、
・ ケイ素をヒドロハロゲン化ステップに付してハロシランを生成すること、及び
・ ハロシランを加水分解ステップに付して、液体シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)、好ましくは同じ液体シロキサン水素キャリア化合物(単数又は複数)を再生すること。
【0112】
例解的なかつ限定しない目的のために、シロキサン水素キャリア化合物トリ(ビス(ヒドロ)シクロシロキサン)(3つの繰り返し単位「D3」を有する)から出発する再生方法の例が
図3に詳述されている;
-
図3のステップ3(b)では、Naが還元剤として用いられるケースでは、形成された4当量のNaFはリサイクルされて、ここでは開示されない方法において4当量のNa及び4当量のHFを再生する。
-
図3のステップ3(c)では、SiO経路の水素ガス還元が使用されるケースでは(ステップ3(c))、2当量のSiが形成される。後者の1当量は方法へのSiの何れかの投入を回避するためにステップ2(b)に再注入され、別の当量(「余剰な」含量)は有利には方法の次段のステップ4において消費される。
【0113】
有利には、前記再生されたシロキサン水素キャリア化合物は本発明による水素生成方法に用いられ得て、これはサイクルを再び始めてもよい。
【0114】
水素に基づくエネルギーキャリアとしての本発明によるポリジヒドロシロキサン化合物によってもたらされる優れた利点(中心のケイ素原子に結合した非加水分解性のメチル部分の存在を原因として、PHMS及びTMDSとは反対に)は、水素遊離方法の間のそれらの完全な加水分解が固有にシリカ/ケイ酸塩化合物(単数又は複数)(B)に至るということである;前記シリカ/ケイ酸塩化合物(単数又は複数)(B)は、環境に優しく及び/又は実質的な炭素排出なしの(好ましくは完全に炭素排出なし)方法、まさに出発燃料油を回収してもよい、詳しく例示される少量経済的な再生方法の即時の出発材料である。
【0115】
ステップ2(a) - シリカ/ケイ酸塩型生成物のハロゲン化(反応経路X又はZ)
本発明の或る実施形態では、四ハロゲン化ケイ素化合物の生成のためのハロゲン化物源によるシリカ/ケイ酸塩化合物(B)のハロゲン化のための方法が提供される。何れかのハロゲン化物源が有利に用いられ得る。ハロゲン化水素は好ましいハロゲン化物源である;有利には、前記ハロゲン化水素は水溶液又はガス、例えばフッ化水素(HF)であり得る。例えば、フッ化水素がハロゲン化ステップに用いられるときには、四フッ化ケイ素及び副生成物としての水が形成される;水は、方法の更なるステップに再利用されるために、又は電解され水素及び酸素ガスを形成するために捕集され得て、前者は例えば直接的に方法の次段のステップにおいて消費される。
【0116】
ステップ2(b) - SiOを形成するためのシリカ/ケイ酸塩型生成物の還元(反応経路Y - 2ステップ還元の第1ステップ)
本発明の或る実施形態では、SiOの生成のための元素状ケイ素の存在下におけるシリカ/ケイ酸塩化合物(B)の還元のための方法が提供される。何れかの元素状ケイ素源が有利に用いられ得る。冶金グレードケイ素は好ましい元素状ケイ素源である。元素状ケイ素が還元ステップに用いられるので、2当量のSiOが転換されたケイ酸塩当り形成される;形成されたSiOは例えば直接的に方法のステップ3(c)において消費される。
【0117】
このケースでは、シリカ(SiO
2)として象徴されるシリカ/ケイ酸塩化合物(B)からのSi生成の方法の例が
図1に見られ、これはステップ2(b)及び3(c)の組み合わせである。
【0118】
ステップ2(c) - Siを形成するためのシリカ/ケイ酸塩型生成物の還元(反応経路Y - 1ステップ還元)
本発明の或る実施形態では、元素状ケイ素の生成のための水素ガスの存在下における、シリカ/ケイ酸塩化合物(B)の還元のための方法が提供される。生成される元素状ケイ素は冶金又は太陽電池グレード何れかであり得る。他のガス(単数又は複数)、例えばアルゴン又は窒素などの不活性ガスが水素に加えて任意に使用され得る。水素によるシリカ/ケイ酸塩化合物の還元の反応は吸熱的であるので、熱源が要求される;何れかの熱源、例えばアーク放電テクノロジー、誘導加熱、マイクロウェーブ、ホットフィラメント、プラズマテクノロジーが選択され得る。プラズマが特に好ましい;例えば、有利には、対応するプラズマテクノロジーはプラズマジェットを生ずることを許すプラズマトーチを含み得る。好ましくは、プラズマジェットは、(例えばアルゴンなどの)追加のガス(単数又は複数)あり又はなしに、電極を通過する水素ガスから作られる。ケイ素及び水を形成するために2000及び20000°Kの間に含まれる温度において、気相中で水素と反応することに先行して、シリカが真空下で水素プラズマジェット中に導入され得る。それから、ケイ素は凝縮され、固体として回収される。
【0119】
水素ガスによるシリカ/ケイ酸塩化合物の還元反応は水を副生成物として生成する。有利には、形成された水は他の実用性のための化学反応物として、及び/又は加熱源として用いられ得るか、及び/又は水素ガスを再形成するために電解装置によって転換され得るか、及び/又は電気を生成するための蒸気タービンを動かすために用いられ得る。
【0120】
ステップ3(a)及び3(a’) - 四ハロゲン化ケイ素の還元
本発明の或る実施形態では、元素状ケイ素[ステップ3(a’)]及び/又はハロシラン(単数又は複数)[ステップ3(a)]、例えばシラン(SiH4)、モノハロシラン(H3SiX)及び/又はジハロシラン(H2SiX2)及び/又はトリハロシラン(HSiX3)及び/又はテトラハロシラン(SiX4)の生成のための、水素ガス(例えば、前段のステップから捕集された水の電解によって形成された水素;又は方法の別のステップから;又は外部の方法から捕集された致命的な水素から回収された水素)による四ハロゲン化ケイ素化合物の還元のための方法が提供される。四フッ化ケイ素(SiF4)が四ハロゲン化ケイ素源として用いられるケースでは、水素ガスを使用する還元ステップは元素状ケイ素に至り、かつ副生成物としてフッ化水素(HF)を放出し得る[ステップ3(a’)]。モノフルオロシラン及び/又はジフルオロシラン及び/又はトリフルオロシラン及び/又はテトラフルオロシランに至る部分的還元も起こり得て、フッ化水素(HF)を副生成物として放出し得る[ステップ3(a)]。有利には、前記形成されたHFは上のハロゲン化ステップ[ステップ2(a)]に再注入され得て、生成/再生方法のステップ(2)及び(3)の平衡化した物質収支に至る。
【0121】
ステップ3(b) - 四ハロゲン化ケイ素化合物の還元
本発明の或る実施形態では、元素状ケイ素の生成のための金属系還元体による四ハロゲン化ケイ素化合物の還元のための方法が提供される。有利には、アルカリ金属、例えばナトリウムが金属系還元体として選択され得る。ナトリウムなどのアルカリ金属を使用する還元ステップは、元素状ケイ素に至りかつフッ化ナトリウム(NaF)を放出し得て、後者は有利にはマルチステップ方法においてリサイクルされ、Na及びHFを再生する。有利には、前記再生されたNaは還元体としてここで言及されたステップ3(b)に再利用され得、平衡化した物質収支に至る。有利には、前記再生されたHFは例えば方法のステップ2(a)に再利用され得て、平衡化した物質収支に至る。
【0122】
ステップ3(c) - 水素ガスによるSiOの還元
本発明の或る実施形態では、元素状ケイ素の生成のための水素ガスによるSiOの還元のための方法が提供される。有利には、生成された元素状ケイ素の一部は方法への元素状ケイ素の何れかの投入を回避するために、ステップ2(b)に再注入され得て、生成された元素状ケイ素の別の一部(「余剰」な)は、直接的に方法の次段のヒドロハロゲン化ステップ4において消費される。
【0123】
ステップ4 - 元素状ケイ素のヒドロハロゲン化
本発明の或る実施形態では、ハロシラン、例えばモノハロシラン(H3SiX)、ジハロシラン(H2SiX2)、トリハロシラン(HSiX3)、及び/又はテトラハロシラン(SiX4)、又はこれらの化合物の混合物(Xはハロゲン化物である)の生成のための、元素状ケイ素のヒドロハロゲン化のための方法が提供される。ヒドロハロゲン化ステップに用いられる元素状ケイ素は好ましくは方法の前段のステップに由来する。塩化水素(HCl)は元素状ケイ素からジクロロシラン(H2SiCl2)、及び/又はトリクロロシラン(HSiCl3)及び/又はテトラクロロシラン(SiCl4)への前記ヒドロハロゲン化のための好ましいハロゲン化水素源である;有利には、前記塩化水素は水溶液又はガスであり得る。塩化水素が用いられるケースでは、ケイ素塩化水素化反応の主生成物であるHSiCl3を触媒による不均化反応によって、H3SiCl、H2SiCl2、HSiCl3、及びSiCl4の混合物へと再分配するための方法が設計され得る。有利には、SiCl4は元素状ケイ素の存在下における水素ガスによる還元によって、H2SiCl2、HSiCl3、及びSiCl4の混合物へとリサイクルされ得る。SiCl4還元ステップに用いられる元素状ケイ素は好ましくは方法の前段のステップに由来する。有利には、SiCl4還元ステップに用いられる水素ガスは、方法の別のステップの、例えば上記の元素状ケイ素ヒドロハロゲン化ステップからの副生成物であり得る。種々のその後の分離及び精製ステップは、純粋なH2SiCl2を単離してもよく、これは直接的に方法の次段のステップ(5)において消費され得る。
【0124】
ステップ5 - ハロシランの制御された加水分解
本発明の或る実施形態では、シロキサン水素キャリア化合物を生成/再生するために、水によるハロシランの制御された加水分解のための方法が提供される。H2SiCl2がハロシラン源として前記制御された加水分解に用いられるケースでは、HClが副生成物として形成される。有利には、形成されたHClは方法のステップ4に再注入され得る。H2SiF2がハロシラン源として前記制御された加水分解に用いられるケースでは、HFが副生成物として形成される。有利には、形成されたHFは方法のステップ2(a)に再注入され得る。有利には、前記加水分解は鎖終結剤、好ましくは炭素を排出しない鎖終結剤、例えばH3SiCl…などの存在下において行われ得る。有利には、最終処理ステップ、例えば無機塩基を含有するか又は含有しない水による洗浄、ガスストリッピング、乾燥ステップなど…が行われ得る。
【0125】
本発明の或る実施形態では、式(I)の全体的なシロキサン水素キャリア生成方法によって必要とされるエネルギー消費は、1及び200kWh/生成されるシロキサンのkgの間に、例えば1及び35kWh/生成されるシロキサンのkgの間に含まれ得る。
【0126】
本発明の或る実施形態では、式(I)の全体的なシロキサン水素キャリア再生方法によって必要とされるエネルギー消費は、1及び2000kWh/遊離されるH2のkgの間に、例えば1及び400kWh/遊離されるH2のkgの間に含まれ得る。
【0127】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(a)によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成されるSiF4のkgの間に含まれ得る。
【0128】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(a)におけるSiF4の生成のための方法の温度は、広い範囲で変わり得て、特に0から1000℃の範囲であり得る。
【0129】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(a)におけるSiF4の生成のための方法の圧力は、広い範囲で変わり得て、特に1から1.107Paの範囲であり得る。
【0130】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(a)は、フッ化水素(HF)/ケイ酸塩化合物(B)の混合物モル比が1以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、HF及びケイ酸塩化合物(B)の前記混合物は4及び100の間に含まれるHF/(B)モル比を特徴とする。
【0131】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(a)によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は1及び10の間に含まれ得る。
【0132】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(b)によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成されるSiOのkgの間に含まれ得る。
【0133】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(b)におけるSiOの生成のための方法の温度は、広い範囲で変わり得て、特に1000から2000℃の範囲であり得る。
【0134】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(b)におけるSiOの生成のための方法の圧力は、広い範囲で変わり得て、特に1から1.107Paの範囲であり得る。より好ましくは、圧力は100から10000Paの範囲である。
【0135】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成方法のステップ2(b)は、ケイ酸塩化合物(B)/Siの混合物モル比が0.1以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、ケイ酸塩化合物(B)及びSiの前記混合物は0.5及び1.5の間に含まれる化合物(B)/Siモル比を特徴とする。好ましくは、ケイ酸塩化合物(B)/Siモル比は1である。
【0136】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(b)によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は、1及び10の間に含まれ得る。
【0137】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(c)によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成されるSiのkgの間に含まれ得る。
【0138】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(c)におけるSiの生成のための方法の温度は、広い範囲で変わり得て、特に30から6000℃の範囲であり得る。
【0139】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(c)におけるSiの生成のための方法の圧力は、広い範囲で変わり得て、特に1から1.107Paの範囲であり得る。より好ましくは、圧力は10から10000Paの範囲である。
【0140】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(c)は、H2ガス/ケイ酸塩化合物(B)の混合物モル比が0.1以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、H2ガス及びケイ酸塩化合物(B)の前記混合物は、2及び100の間に、好ましくは2及び20の間に含まれるH2ガス/化合物(B)モル比を特徴とする。
【0141】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ2(c)によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は、1及び10の間に含まれ得る。
【0142】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a)によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成されるH2SiF2のkgの間に含まれ得る。
【0143】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a)におけるH2SiF2の生成のための方法の温度は、広い範囲で変わり得て、特に1000から2000℃の範囲であり得る。
【0144】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a)におけるH2SiF2の生成のための方法の圧力は、広い範囲で変わり得て、特に1から1.107Paの範囲であり得る。
【0145】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a)は、水素ガス(H2)/SiF4の混合物モル比が1以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、H2及びSiF4の前記混合物は、1及び100の間に含まれるH2/SiF4モル比を特徴とする。
【0146】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a)によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は、1及び10の間に含まれ得る。
【0147】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a’)によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成されるSiのkgの間に含まれ得る。
【0148】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a’)におけるSiの生成のための方法の温度は、広い範囲で変わり得て、特に30から6000℃の範囲であり得る。
【0149】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a’)におけるSiの生成のための方法の圧力は、広い範囲で変わり得て、特に1から1.107Paの範囲であり得る。
【0150】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a’)は、水素ガス(H2)/SiF4の混合物モル比が2以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、H2及びSiF4の前記混合物は2及び100の間に含まれるH2/SiF4モル比を特徴とする。
【0151】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(a)によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は、1及び10の間に含まれ得る。
【0152】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(b)によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成されるSiのkgの間に含まれ得る。
【0153】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(b)におけるSiの生成のための方法の温度は、広い範囲で変わり得て、特に100から1000℃の範囲であり得る。
【0154】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(b)におけるSiの生成のための方法の圧力は、広い範囲で変わり得て、特に1から1.107Paの範囲であり得る。
【0155】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(b)は、ナトリウム(Na)/SiF4の混合物モル比が1以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、Na及びSiF4の前記混合物は4及び100の間に含まれるNa/SiF4モル比を特徴とする。
【0156】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(b)によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は、1及び10の間に含まれ得る。
【0157】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(c)によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成されるSiのkgの間に含まれ得る。
【0158】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(c)におけるSiの生成のための方法の温度は、広い範囲で変わり得て、特に500から2000℃の範囲であり得る。
【0159】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(c)におけるSiの生成のための方法の圧力は、広い範囲で変わり得て、特に1から1.107Paの範囲であり得る。
【0160】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(c)は、水素ガス(H2)/SiOの混合物モル比が1以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、H2及びSiOの前記混合物は5及び10の間に含まれるH2/SiOモル比を特徴とする。本発明の或る実施形態では、H2及びSiOの前記混合物は6であるH2/SiOモル比を特徴とする。
【0161】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ3(c)によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は、1及び10の間に含まれ得る。
【0162】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ4によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成される[H2SiCl2]のkgの間に含まれ得る。
【0163】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ4によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は、1及び20の間に含まれ得る。
【0164】
有利には、本発明によるステップ5のハロシランの制御された加水分解は、
図2に図示されている通りステップ5(a)又はステップ5(b)の何れかによって例解され得る。
【0165】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(a)によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成される[H2SiO]のkgの間に含まれ得る。
【0166】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(a)における[H2SiO]の生成のための方法の温度は、広い範囲で変わり得て、特に50から100℃の範囲であり得る。
【0167】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(a)における[H2SiO]の生成のための方法の圧力は、広い範囲で変わり得て、特に1から1.107Paの範囲であり得る。
【0168】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(a)は、水(H2O)/H2SiCl2の混合物モル比が0.1以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、H2O及びH2SiCl2の前記混合物は、0.1及び10000の間に含まれるH2O/H2SiCl2モル比を特徴とする。
【0169】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(a)によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は、1及び10の間に含まれ得る。
【0170】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(b)によって必要とされるエネルギー消費は、1及び50kWh/生成される[H2SiO]のkgの間に含まれ得る。
【0171】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(b)における[H2SiO]の生成のための方法の温度は、広い範囲で変わり得て、特に50から100℃の範囲であり得る。
【0172】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(b)における[H2SiO]の生成のための方法の圧力は、広い範囲で変わり得て、特に1から1.107Paの範囲であり得る。
【0173】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(b)は、水(H2O)/H2SiF2の混合物モル比が0.1以上であることを特徴とする。本発明の或る実施形態では、H2O及びH2SiF2の前記混合物は、0.1及び10000の間に含まれるH2O/H2SiF2モル比を特徴とする。
【0174】
本発明の或る実施形態では、式(I)のシロキサン水素キャリア生成/再生方法のステップ5(b)によって必要とされる単位操作(例えば反応、分離、精製など…)の数は、1及び10の間に含まれ得る。
【0175】
本明細書に含有される次の用語及び表現は以下の通り定義される:
- 水素キャリアは、必要とされるときには分子二水素(H2)として、直ちに放出可能な水素原子を含有する固体状又は液体状何れかの材料である。
【0176】
請求される通りの本発明の適用の領域から外れることなしに、本発明は多数の他の特定の形態による実施形態を可能にするということは当業者には自明であるはずである。結論として、本実施形態は例解と見なされなければならないが、請求項の範囲による定まった領域において改変され得て、本発明は上記の詳細に限定されてはならない。
【実施例】
【0177】
液体PHS(ポリ(ジヒドロシロキサン))はジクロロシラン(H2SiCl2)の制御された加水分解によって調製し、無色液体として得た。固体PHSは鎖終結剤としての塩化トリメチルシリル(Me3Si-Cl)の存在下における、ジクロロシラン(H2SiCl2)の制御された加水分解によって調製し、無色結晶として得た。PHMS(ポリ(ヒドロメチルシロキサン))は商業的なソースから無色液体として得た。
【0178】
図6は、経時的な水素ガスの遊離した体積の記録によって、3つの異なるシロキサン水素キャリアからの水素放出実験を図示している。次の表は結果をまとめている。
【表2】
【0179】
3つの反応は全て定量的な収率を示している。各化合物の化学構造の結論として、環状構造を持つ液体ポリ(ジヒドロシロキサン)は、飛び抜けて最も高い体積の遊離した水素ガスを示している。重量分析上のその水素重量効率を低めるその炭素含有SiMe3鎖終結を原因として、直鎖状構造を提示する固体ポリ(ジヒドロシロキサン)はより低い性能を実証する。それはヒドロメチルシロキサン繰り返し単位当り1つの水素化物のみを担うので、PHMSは液体PHSと比較されたときに2倍よりも低い性能を示す。
【0180】
実験セットアップの記載
60mLのPETプリフォームを、水素ガス排気のための出口ノズルとステンレスストップコックを装備したステンレス針が反応物注入のためにクリンプされる雌ねじとを備えた耐圧ボールロック式カプラーに(ねじ込みによって)接続した。水素放出のキネティクスを監視するために、水素ガス出口ノズルを流量計に接続した。水素ガスは、追加の体積測定装置として用いられる水を満たした倒置された2L目盛付きメスシリンダー中に捕集した。メスシリンダー中に放出される水素ガスの流れはニードルバルブによって制御した。
【0181】
例1
60mLのPETプリフォームに1.007g(16.75mmol、1.0equiv.)のポリ(ヒドロメチルシロキサン)を仕込み、2mLのNaOH(水中に20wt%)(12.2mmol、0.73equiv.)を、激しい撹拌下の反応媒体上に注入針から5mLシリンジによって手早く追加した。ストップコックを閉じ、400mL(>99%収率)の水素ガスを20秒の期間に渡ってメスシリンダー中に捕集した。
【0182】
例2
60mLのPETプリフォームに1.003g(21.75mmol、1.0equiv.)の直鎖状固体ポリ(ジヒドロシロキサン)を仕込み、5mLのNaOH(水中に20wt%)(30.5mmol、1.40equiv.)を、激しい撹拌下の反応媒体上に注入針から5mLシリンジによって手早く追加した。ストップコックを閉じ、750mL(>99%収率)の水素ガスを95秒の期間に渡ってメスシリンダー中に捕集した。
【0183】
例3
60mLのPETプリフォームに1.005g(21.80mmol、1.0equiv.)の環状液体ポリ(ジヒドロシロキサン)を仕込み、5mLのNaOH(水中に20wt%)(30.5mmol、1.40equiv.)を、激しい撹拌下の反応媒体上に、注入針から5mLシリンジによって手早く追加した。ストップコックを閉じ、1040mL(>99%収率)の水素ガスを50秒の期間に渡ってメスシリンダー中に捕集した。