(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ペロブスカイト様材料の膜を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20240201BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240201BHJP
H10K 71/10 20230101ALI20240201BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K71/10
(21)【出願番号】P 2021514548
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 RU2018000875
(87)【国際公開番号】W WO2020060436
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】519236860
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー クラスノヤルスク ハイドロパワー プラント(ジェイエスシー クラスノヤルスク エイチピーピー)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ガディリン,エヴゲーニイ アレクセイヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】タラソフ,アレクセイ ボリソヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】グリシコ,アレクセイ ユーリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】フィンケルバーグ,ヤーシャ ミハイロヴィッチ
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522394(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107881472(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107240643(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0248118(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106098947(CN,A)
【文献】WANG, Shenghao et al.,Accelerated degradation of methylammonium lead iodide perovskites induced by exposure to iodine vapour,nature energy,2016年12月22日,2, Article number: 16195 (2017),pp.1-8,DOI: 10.1038/nenergy.2016.195
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト構造を有する材料の半導体膜を形成する方法であって、所定の厚さの前記ペロブスカイト構造を有する材料の層が基板上に堆積され、前記層が部分的に液化するまでハロゲンに曝され、その後、前記ハロゲンが前記層から徐々に除去される方法であって、これにより、
所定の厚さの前記ペロブスカイト構造を有する材料の層が基板上に堆積された時点の
前記層内の前記ペロブスカイト構造を有する材料の粒子サイズよりも大きいサイズの前記ペロブスカイト構造を有する材料の粒子の形成を伴う、基板上の前記ペロブスカイト構造を有する材料の漸進的な結晶化
が行われ、
前記半導体膜である光電層の形成中に、100nm~100μmの範囲のサイズの粒子の形成が提供され、前記層を液化するために、分圧が0.000001気圧~0.99気圧であるヨウ素蒸気が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ペロブスカイト構造を有する材料の前記層が、所望のペロブスカイト構造を有する材料の成分に加えて、他の化学物質を含む前記ペロブスカイト構造を有する材料の前駆体の形態で作製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前駆体が溶媒分子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体
膜が、ABX
3の化学組成を有し、式中、CH
3NH
3
+または(NH
2)
2CH
+またはC(NH
2)
3
+またはCs
+またはRb
+カチオンまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つが、成分Aとして使用され、元素Pb、Sn、Bi、Cu、Ge、Ca、Sr、Tiまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つが成分Bとして使用され、成分XとしてハロゲンCl
-またはBr
-またはI
-またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲンに曝露される前記半導体膜が、元素組成物中に前記ABX
3の前記成分A、成分B、及び成分Xを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板からの
前記ハロゲン除去の速度が調節されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板からのハロゲン除去の初期速度が、前記基板の単位面積あたりの所定の数の結晶化中心を有する結晶化中心の前記層における形成を
行うために選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板上の前記ハロゲンが気相から分離されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基板が、純粋な液体ハロゲンまたはハロゲンを含む溶液の形態で使用される
前記ハロゲンに曝されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
気相から
前記ハロゲンを
前記半導体膜に適用し、
前記成分Aの蒸気を含むガス混合物を使用することを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項11】
前記ハロゲンによる前記半導体膜の曝露中に、前記基板及び/または溶
液が加熱されることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記ハロゲンを含む反応混合物が加圧下で供給されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層を形成するための方法に関し、結晶性を改善し、光電変換器の製造における光吸収層の電気的特性及び光電的特性を改善するために、半導体材料の膜の後処理に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
化合物ABX3の薄膜を後処理するための様々な方法が先行技術から知られており、AはCH3NH3
+または(NH2)2CH+またはC(NH2)3
+またはCs+またはRb+またはそれらの混合物を示し、B=Sn2
+またはPb2
+、またはそれらの混合物は、特に、Bi及びCuを添加し、かつ成分Xとしてハロゲン化物イオン(Cl-またはBr-またはI-またはそれらの混合物)として作用できる。より一般的には、他の陽イオンも成分A及びBとして作用し得るため、それらの総電荷は+3になり、陰イオンの電荷のバランスを取る。
【0003】
後処理の最も一般的な方法は、100~120℃の温度範囲でのアニーリングであり、120℃を超える温度での短期間の高温アニーリングが含まれる場合がある。
【0004】
文献[Saliba,Michaelら、「Influence of thermal processing protocol upon the crystallization and photovoltaic performance of organic-inorganic lead trihalide perovskites.」The Journal of Physical Chemistry C 118.30(2014):17171-17177.]では、CH3NH3PbI3膜を100℃の温度で45分間、乾燥窒素雰囲気下でアニーリングすると、この層の光電特性が向上することを示している。
【0005】
文献[Xiao Z.ら、Solvent Annealing of Perovskite-Induced Crystal Growth for Photovoltaic-Device Efficiency Enhancement//Adv.Mater.2014.Vol.26,No.37.P.6503-6509]では、乾式アニーリングと比較して、ジメチルホルムアミド蒸気中でのアニーリングは、粒子サイズの増加、欠陥の濃度の減少、電荷キャリアの寿命の増長及びそれらの平均自由行程の増加、電子及び正孔伝導層へのキャリア注入の効率の増加をもたらすことが示された。この作業では、アニーリングは100℃の温度で60分間実施した。
【0006】
上記の方法の欠点は、1)比較的高い温度を維持する必要があること、2)後処理段階の期間が長いことである。
【0007】
メチルアミン蒸気(MA)中でペロブスカイト膜を後処理する方法は、公知である-[Zhao T.ら、Design rules for the broad application of fast(1s)methylamine vapor based,hybrid perovskite post deposition treatments//RSC Adv.2016.Vol.6,No.33.P.Pp27475-27484]。この試薬を使用すると、液相の形成を伴うハイブリッド有機-無機材料の迅速な可逆分解が可能になり、MA蒸気の除去後に初期または初期化合物に関連する結晶化が可能になる。このアプローチの重大な欠点は、MA蒸気で処理するときに、元の材料の一部である有機成分が、処理中に気相から導入された成分に置き換わることである。最終材料の機能特性は、ペロブスカイト様化合物のカチオンの比率に実質的に依存するため、MA蒸気による処理は、混合Aカチオン組成のペロブスカイト様化合物の膜の後処理に完全に適用することはできない。
【0008】
提唱された発明に最も近いのは、ホルムアミジン(FA)蒸気中のペロブスカイト膜の後処理のための上記と同様の方法である-[Zhou,Yuanyuanら、「Exceptional morphology-preserving evolution of formamidinium lead triiodide perovskite thin films via organic-cation displacement.」Journal of the American Chemical Society 138.17(2016):5535-5538]。この試薬を使用する場合には、液相の形成を伴うハイブリッド有機-無機材料の急速な可逆的破壊があり、FA蒸気の除去後に初期化合物または関連する初期化合物の結晶化が可能になる。このアプローチの重大な欠点は、FA蒸気で処理する場合、元の材料の一部である有機成分が、処理中に気相を介して導入された成分で置換されることもある。最終材料の機能特性は、ペロブスカイト様化合物内のカチオンの比率に実質的に依存するため、MA蒸気による処理はまた、カチオンAによって混合された組成のペロブスカイト様化合物の膜の後処理に完全に適用することはできない。
したがって、ペロブスカイト太陽電池の光吸収層を後処理して、その電気的特性及び光電的特性を高めるための現在公知である方法は、この層を比較的高温で長時間アニーリングするか、または混合カチオン組成物と適合しない必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Saliba,Michaelら、「Influence of thermal processing protocol upon the crystallization and photovoltaic performance of organic-inorganic lead trihalide perovskites.」The Journal of Physical Chemistry C 118.30(2014):17171-17177.
【文献】Xiao Z.ら、Solvent Annealing of Perovskite-Induced Crystal Growth for Photovoltaic-Device Efficiency Enhancement//Adv.Mater.2014.Vol.26,No.37.P.6503-6509
【文献】Zhao T.ら、Design rules for the broad application of fast(1s)methylamine vapor based,hybrid perovskite post deposition treatments//RSC Adv.2016.Vol.6,No.33.P.Pp27475-27484
【文献】Zhou,Yuanyuanら、「Exceptional morphology-preserving evolution of formamidinium lead triiodide perovskite thin films via organic-cation displacement.」Journal of the American Chemical Society 138.17(2016):5535-5538
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在の最先端技術に存在する技術的問題は、ペロブスカイト様ABX3組成物を含む光吸収材料の薄膜の比較的高温(100~120℃)での連続アニーリングによる後処理の必要性であり、A=CH3NH3
+または(NH2)2CH+またはC(NH2)3
+またはCs+またはRb+またはそれらの混合物であり、B=Sn2
+またはPb2
+、あるいはそれらの混合物は、おそらくBi及びCuがドープされており、X=Cl-またはBr-またはI-またはそれらの混合物であり、これにより必要な品質のコーティングを実現し、製造後に必要な電気的特性及び光電的特性をもたらす。
【0011】
本発明を使用するときに達成される技術的結果は、半導体膜の品質の改善であり、そのパラメータが、確立された要件を満たさない完全なデバイスのカリングを減少させることである。さらに、本発明により、ABX3組成物のペロブスカイト様構造を有する光吸収材料の薄膜の電気的特性、光電的特性を改善し、粒子サイズを増大させる可能性がもたらされる。膜の物理的構造の改善は、元の膜の化学組成及び特性の許容できない変化なく生じるが、これは、例えば、メチルアミンまたはホルムアミジンなどの既知の試薬を使用した場合には達成できない。
【0012】
追加の技術的結果は、後処理プロセスの加速であり、これにより、高温処理に基づく方法と比較して、ペロブスカイト様ABX3組成を有する光吸収材料の薄膜の形態学的特性、電気的特性、光電特性の改善につながる。
【0013】
追加の技術的結果は、メチルアミンまたはホルムアミジンで処理されている膜に対する蒸気の影響に基づく方法と比較した、混合カチオンから構成されるペロブスカイト様化合物への本出願に記載のアプローチの適用可能性である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この技術的結果は、ペロブスカイト様材料の半導体膜、ペロブスカイト様材料の基板、または所定の厚さのペロブスカイト様材料の前駆体を形成する方法が基板上に適用され、その後、層が液化するまでハロゲンを層に適用し、その後、ハロゲンを基板から徐々に除去し、これにより基板上のペロブスカイト様材料の段階的な結晶化が確実に行われ、元の膜よりも大きいサイズのペロブスカイト様材料の粒子を形成することによって達成される。この方法を実施する特定の場合において、半導体材料層は、化学組成ABX3を有し、式中、CH3NH3
+または(NH2)2CH+またはC(NH2)3
+またはCs+またはRb+陽イオンまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つは、成分Aとして使用され、成分Bは、元素Pb、Sn、Bi、Cu、Ge、Ca、Sr、Tiまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つ、及びハロゲンCl-またはBr-またはI-またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つが成分Xとして使用され、本明細書において、処理される膜は、化合物ABX3の成分A、B、Xを含み得、特に、最終ABX3ペロブスカイト以外の化合物内に含まれ得る-この場合、最初の膜のハロゲンへの曝露は、結果としてペロブスカイト様材料の形成となり得る。本発明の特定の場合では、基板からのハロゲン除去の速度が制御され、その一方で、基板からのハロゲン除去の初期速度は、基板の単位面積あたりの所定の数の結晶化中心を有する結晶化中心の層における形成を確実にするために選択され得る。同時に、ペロブスカイト様材料の前駆体は、ペロブスカイト様材料と他の物質との化合物または混合物であり、例えば、ペロブスカイト様材料及び溶媒の付加物(2つの化合物間の付加反応の生成物)の形態である。ペロブスカイト様材料の前駆体をハロゲンで処理したときに、前駆体内に化学的に結合した副物質が放出され、ハロゲンと一緒に除去される。ハロゲンは、気相を介して、または純粋な液体ハロゲンとして、またはハロゲンを含む溶液として、サンプルと共に反応セルに導入することができる。気相からハロゲンを導入する場合、ハロゲン及び/または成分A蒸気を含むガス混合物が使用され得る。この方法を実施するときは、ハロゲンによる半導体膜の処理中に、基板及び/または溶液及び/またはハロゲンを含むガス混合物を加熱することができ、ハロゲン含有反応混合物が加圧下で供給され得る。過剰なハロゲン及び/または反応生成物の除去は、冷却もしくは加熱などの熱処理を使用する場合、または反応セルを不活性ガスを含む半導体膜でパージする場合、または半導体材料の膜をハロゲンに曝した直後に減圧下に維持することによって生じ得る。この方法を実施する特定の場合において、光電層の形成中に、100nm~100μmの範囲のサイズの粒子の形成が提供され、層を液化するために、分圧が0.000001気圧~0.99気圧であるヨウ素蒸気が使用される。最適な厚さの層を形成して基板上に粒子を均一に分布させるために、粒子サイズは、ハロゲン除去後の平均層厚0.9~1.1、またはハロゲン除去後の平均層厚の0.45~0.55に設定される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態の1つとして、キャリア基板上のABX3組成物のペロブスカイト様構造を有する光吸収材料の薄膜は、気相または溶液からの分子ヨウ素に曝露され、その結果、BX2と平衡状態にある液体AXnの形成を伴うABX3相の可逆性分解がもたらされる。特に、ペロブスカイト様構造においてABI3のみを使用した場合、AIn液体はBI2と平衡状態で形成される。
【0016】
次に、ヨウ素の分圧が所定のレベルまで低下した場合、または例えば基板温度を上昇させるか、ハロゲン非含有ガス流でパージすることによってヨウ素と基板との接触が完全に消失する場合、ヨウ素はBX2と平衡状態にあるAXn液体から一定の速度で除去され、ABX3相が結晶化する。ヨウ素溶液またはヨウ素蒸気を含むガス混合物の除去速度により、ABX3の結晶化速度が決定し、これにより結晶化度が決定し、その結果、この材料の電気的特性及び光電的特性が決定される。
【0017】
本発明の内容では、ペロペロブスカイト様構造という用語は、ペロブスカイト鉱物(CaTiO3)の結晶構造及び特定の構造偏差を有する結晶構造(歪んだ構造のペロブスカイト)(例えば、格子対称性(例えば、正方晶のシンゴニー))の両方、または任意の他の層(例えば、Aurivilliusの相、ルドルスデン-ポッパー相、Dion-Jacobson相)と交互になっているペロブスカイト層を含む結晶構造を指す。ペロブスカイト様化合物は、ペロブスカイト様構造を有する化合物を意味する。本明細書での薄膜とは、50nm~3μmの厚さの膜を指す。
【0018】
公知であるとおり、粒界は、半導体材料の機能的特性に負の影響を有する潜在的な欠陥の原因である。粒子サイズの増大は、体積対表面比の増加及び粒界数の減少につながり、最終的には材料の電気的特性及び光電的特性の改善につながる。
【0019】
ABX3光吸収材料に低温及び短い後処理時間を使用する可能性は、ABX3化合物が分子ヨウ素と相互作用して、組成AXnの反応性の高い液相を形成する能力に基づき、ABX3化合物の集中的な物質移動が発生する接触時に、その再結晶化が促進される。
【0020】
より一般的な場合、式ABX3は、Xがハロゲン化物であり、A、Bが金属カチオンまたは有機カチオンであり、これによりカチオンA及びBの総電荷が+3である、すなわちヘテロ価ドーピングなど、他の無機元素または有機カチオンのドーピングが可能である化合物として理解することができる。さらに、このアプローチは、所与の組成のペロブスカイト様構造を有するABX3の化合物に固有のものではなく、ABX3以外のペロブスカイト様及び化学組成とは異なる結晶構造を有する化合物に拡張できる。
【0021】
技術的結果を達成して様々な実施形態で提唱された方法を実施する可能性は、以下の実施例によって確認される。
【実施例1】
【0022】
厚さ300nmの、ジメチルスルホキシド中の溶液から堆積することによって得られた組成物CH3NH3PbI3膜を、密閉ガラス容器内でヨウ素蒸気で処理し、その底に結晶性ヨウ素を置いた。この処理は室温で3分間行われ、その後、最初の膜がヨウ素の雰囲気から除去され、走査型電子顕微鏡によって検査した。顕微鏡写真の分析では、平均粒子サイズが約50nm~約200nmに増加していることが明らかになった。
【実施例2】
【0023】
実施例A(実施例1)と同様であるが、反応容器をT=40℃で1分間維持しながら処理を実施した。顕微鏡写真の分析では、平均粒子サイズが約50nm~約300nmに増加していることが明らかになった。
【実施例3】
【0024】
実施例Aと同様に、基板の温度をT=60℃に維持しながらプロセスを実施し、これを、T=40℃に維持された結晶性ヨウ素に吹き込むガス流で3分間処理した。膜の顕微鏡写真の分析では、平均粒子サイズが約50nm~約400nmに増大していることが明らかになった。
実施例4:実施例Aと同様であるが、組成Cs0.05(MA0.17FA0.83)PbI3の膜をT=40℃での処理に3分間さらした。顕微鏡写真の分析では、平均粒子サイズが約50nm~約200nmに増大することが明らかになり、膜の相組成の分析では、その中のカチオンAの比率が最初のものと比較して変化しないことを示した。
【0025】
初期溶液中のハロゲン濃度及びハロゲン除去速度に対する粒子サイズ及びそれらの特性の分析的依存性が見出されていないことにもかかわらず、必要なパラメータは経験的に決定され得る。
【0026】
さらに、層の単位体積あたりまたは基板の単位表面積あたりに必要な数の結晶化中心が形成された後、ハロゲン除去速度が3倍以上大幅に低下することにより、一定量の安定したサイズの粒子が確実に形成される。