(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ロータアセンブリおよびロータアセンブリを含む風車
(51)【国際特許分類】
F03D 7/06 20060101AFI20240201BHJP
F03D 3/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
F03D7/06 B
F03D3/06 C
(21)【出願番号】P 2021520899
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 NL2019050338
(87)【国際公開番号】W WO2019245362
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-05
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520501573
【氏名又は名称】タッチウィンド ブルー ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ クリッペ、フレデリクス
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/060108(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0091136(US,A1)
【文献】特開2011-007085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心とする支持構造に対するロータアセンブリの回転のために、前記ロータアセンブリを前記支持構造に回転可能に取り付けるためのロータマストと、
仮想平面内で
単一の長手方向に延びる2つのロータブレードを有するロータであって、前記2つのロータブレードが空気流によって駆動されるように配置されたロータと、
旋回軸を規定する旋回装置であって、当該旋回装置によって、前記旋回軸を中心として前記ロータマストに対して前記2つのロータブレードを同時に旋回させるために前記ロータは前記ロータマストに旋回可能に接続される、旋回装置と、
を備え、
前記長手方向と前記仮想平面における前記旋回軸の投影は、前記仮想平面において一定の鋭角をなすロータアセンブリ。
【請求項2】
前記旋回軸は前記回転軸に実質的に垂直である請求項1に記載のロータアセンブリ。
【請求項3】
前記鋭角は、10°~45°の範囲である請求項1または2に記載のロータアセンブリ。
【請求項4】
前記2つのロータブレードが互いに剛結合された請求項2から3のいずれかに記載のロータアセンブリ。
【請求項5】
前記2つのロータブレードが、前記長手方向に、前記回転軸を含むさらなる仮想平面内に延びている請求項1から4のいずれかに記載のロータアセンブリ。
【請求項6】
前記ロータは、前記2つのロータブレードの間に中央ロータ部分を備え、前記ロータマストに隣接する前記仮想平面内における前記長手方向に垂直な半径方向における前記中央ロータ部分の寸法は、前記仮想平面において前記2つのロータブレードが占めるブレード領域を、前記長手方向における前記2つのロータブレードの長さで割った比の0.3~2倍の範囲にある請求項1から5のいずれかに記載のロータアセンブリ。
【請求項7】
前記仮想平面における前記長手方向に垂直な前記2つのロータブレードのそれぞれの幅は、前記回転軸までの距離に依存して減少する請求項1から6のいずれかに記載のロータアセンブリ。
【請求項8】
前記長手方向に垂直な方向の前記仮想平面における前記2つのロータブレードのそれぞれの断面は、当該断面の第1の側は凹状のプロファイルを備え、当該断面の第2の側は、当該第1の側とは反対に、凸状のプロファイルを備える請求項1から7のいずれかに記載のロータアセンブリ。
【請求項9】
前記2つのロータブレードは一体構造として形成される請求項1から8のいずれかに記載のロータアセンブリ。
【請求項10】
前記2つのロータブレードのそれぞれは、前記長手方向に30メートル延びる請求項1から9のいずれかに記載のロータアセンブリ。
【請求項11】
支持構造と、請求項1から10のいずれかに記載のロータアセンブリと、を備え、前記ロータアセンブリは、前記支持構造に対して前記回転軸を中心として前記2つのロータブレードを回転させるために、前記ロータマストによって、前記支持構造に回転可能に取り付けられる風車。
【請求項12】
本風車は、電気を生成するための発電機を備え、前記ロータアセンブリは、前記回転軸を中心とする前記ロータアセンブリの回転時に前記電気を生成するために前記発電機に結合される請求項11に記載の風車。
【請求項13】
前記ロータアセンブリは前記支持構造の第1位置で前記支持構造に回転可能に取り付けられ、前記風車は前記風車を水に浮かせるための浮体をさらに備え、前記浮体は前記ロータアセンブリから離れた位置で前記支持構造に取り付けられ、前記ロータアセンブリは、使用中の風速の増加が前記ロータアセンブリの前記回転軸を直立位置に向かって移動させるように前記支持構造に取り付けられる請求項11または12に記載の風車。
【請求項14】
本風車は、前記支持構造の第2位置で前記支持構造に取り付けられる釣り合いおもりを備え、前記浮体は前記第1位置と前記第2位置との間で前記支持構造に取り付けられ、前記釣り合いおもりは前記ロータアセンブリが前記支持構造に対して前記回転軸を中心に回転していないとき、前記ロータアセンブリを前記水の水面のより上に持ち上げるように配置される請求項13に記載の風車。
【請求項15】
本風車は、前記支持構造の第3位置で前記支持構造に接続されるバランスブイを備え、当該第3位置は、前記浮体と前記ロータアセンブリとの間にあり、前記バランスブイは前記ロータアセンブリを前記水の前記水面に向かって引き寄せるように配置されている請求項14に記載の風車。
【請求項16】
前記バランスブイは、前記ロータアセンブリを前記水の前記水面よりも上の高さまで移動させるために前記バランスブイと前記支持構造との距離を変化させるための調整要素を介して前記支持構造に接続される請求項15に記載の風車。
【請求項17】
前記調整要素はウインチである請求項16に記載の風車。
【請求項18】
請求項11から17のいずれかに記載の風車を複数備え、前記複数の風車のうちの隣接する風車間の公称相互距離は、前記ロータの直径の1~6倍の範囲にあり、
前記公称相互距離は、隣接する風車を設置するための相互距離である風力発電所。
【請求項19】
前記公称相互距離は、前記ロータの直径の4~4.5倍の範囲にある請求項18に記載の風力発電所。
【請求項20】
前記公称相互距離は、前記空気流の方向における距離である、請求項18または19に記載の風力発電所。
【請求項21】
請求項11から17のいずれかに記載の風車を複数備える風力発電所であって、本風力発電所の容量は15~50MW/km
2の範囲にある風力発電所。
【請求項22】
前記容量は、25MW/km
2である請求項21に記載の風力発電所。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
第1態様によれば、本開示は、
回転軸を中心とする支持構造体に対するロータアセンブリの回転のために、当該ロータアセンブリを当該支持構造に回転可能に取り付けるためのロータマストと、
仮想平面内で長手方向に延びる2つのロータブレードを有するロータであって、当該2つのロータブレードが空気流によって駆動されるよう配置されているロータと、
旋回軸を規定する旋回装置であって、当該旋回装置によって、旋回軸を中心として上記ロータマストに対して上記2つのロータブレードを同時に旋回させるために上記ロータは上記ロータマストに旋回可能に接続される、旋回装置と、
を備えるロータアセンブリに関する。
【0002】
第2態様によれば、本開示は、支持構造および本開示の第1態様によるロータアセンブリを備える風車に関する。
【0003】
第3態様によれば、本開示は、本開示の第2態様による風車を複数備える風力発電所に関する。
【0004】
公知のロータアセンブリは、例えばジャイロコプターの一部として使用される。ジャイロコプターは、ジャイロプレーンまたはオートジャイロとしても知られ、動力のないロータを自由自動回転で使用して揚力を発生させる回転翼航空機の一種である。ジャイロコプターの自由回転ロータは、空気がロータを通過することにより回転する。これら公知のロータアセンブリの欠点は、ロータマストで比較的大きな振動が発生する可能性があることである。
【0005】
本開示の目的は、公知のロータアセンブリのこの欠点を克服するロータアセンブリを提供することである。
【0006】
この目的は、上記仮想平面における上記長手方向と上記旋回軸の投影とが、上記仮想平面において鋭角、好ましくは一定の鋭角をなす請求項1に記載のロータアセンブリによって達成される。請求項1による上記旋回軸を設けることにより、ロータの回転によって発生される揚力の方向は、比較的安定し、ロータマストおよび回転軸と高度に一致し、それにより、旋回軸を中心とするロータブレードの旋回による揚力の方向の変化に起因する振動が回避されるか、または少なくとも大幅に低減される。これにより、比較的信頼性の高い構造を維持しながら、ロータアセンブリに取り付けられる構造をより軽量化し、よりコスト効率の高いものとすることができる。
【0007】
本開示は、公知のロータアセンブリのロータの回転中の揚力の方向が回転軸に対して変化し、それによってロータ軸に振動を誘発するという見識に少なくとも部分的に依存している。上記仮想平面における旋回軸の投影が鋭角、好ましくは一定の鋭角をなすように当該旋回軸が設けられることによって、当該仮想平面においてロータブレードと回転軸との間の角度が比較的に安定に維持されることに留意されたい。ここで、上記長手方向は、回転軸に垂直である。ロータブレードと回転軸の間の角度を比較的安定に保つことは、振動を低減するために有益である。
【0008】
本開示はさらに、公知のロータアセンブリについて、ロータブレードの旋回軸を中心とする旋回速度が比較的小さく、それによってロータマストに整列していない揚力の方向がロータマストに整列した状態に比較的ゆっくりと変化するという見識に少なくとも部分的に依存している。請求項1による上記旋回軸を設けることにより、ロータマストと整列した揚力の方向の変化は比較的速く、それにより限られた変動のみ発生させる。
【0009】
本開示の第1態様によるロータアセンブリのさらなる利点は、回転軸に実質的に垂直な方向に空気流がロータを通過することによりロータアセンブリが回転を開始または回転を維持しうることである。上記2つのロータブレードが上記旋回軸を中心として旋回すると、所与の空気流方向に対するブレード角度が変化する。言い換えると、ブレードは、2つのロータブレードの長手方向に延在する軸を中心に旋回する。これにより、旋回軸を中心としたロータの旋回角度が増加すると、空気流方向に垂直な2つのロータブレードの総表面積の投影が増加する。2つのロータブレードの総表面積の投影のこの増加のために、ロータは比較的低い空気速度にさらされたときに回転を開始または回転を維持しうる。
【0010】
本開示の文脈内で、空気流によって駆動されるように配置されたロータブレードという表現は、エンジンなどの駆動装置を介してロータを回転させることによってヘリコプターの揚力を発生させるためのロータブレードとは対照的に、自由自動回転で揚力を発生させるための動力のないロータに使用されるように設計されたロータブレードとして理解されるべきである。
【0011】
米国特許4449889Aは、仮想平面における旋回軸の投影が、上記仮想平面において旋回軸に垂直であるロータアセンブリを開示する。
【0012】
好ましくは、仮想平面は平坦な仮想平面である。
【0013】
上記旋回軸が上記回転軸に実質的に垂直であると有益である。これは、ロータアセンブリの使用中に、ロータマストの回転軸を中心とする回転速度の変動を低減し、それによって振動を低減するために有益である。
【0014】
好ましくは、上記鋭角は、10°から45°の範囲にある。これは、本開示の第1態様によるロータアセンブリの利点を比較的大分部実現するために有利である。
【0015】
上記2つのロータブレードが互いに剛性的に接続されていると有利である。これは、ロータアセンブリの使用中に上記2つのロータブレードを仮想平面内に維持し、それによってロータアセンブリの振動を低減するのに有利である。さらに、剛性的な接続は、ロータアセンブリの製造中にコスト面で有利になりうる。さらに、剛結合は、上記長手方向に比較的長いロータブレードを可能にする。
【0016】
第1態様によるロータアセンブリの実際的な実施の形態では、上記2つのロータブレードは、上記回転軸を含むさらなる仮想平面内を上記長手方向に延在する。好ましくは、上記さらなる仮想平面は、平坦な仮想平面である。
【0017】
上記ロータが上記2つのロータブレードの間に中央ロータ部分を備え、上記ロータマストに隣接する上記仮想平面において上記長手方向に垂直な半径方向における上記中央ロータ部分の寸法が、上記仮想平面において上記2つのロータブレードが占めるブレード面積を、上記長手方向における上記2つのロータブレードの長さで割った比の0.3~2倍の範囲内にある場合、有益である。そのような中央ロータ部分は、少なくとも一部、好ましくは完全に、上記2つのロータブレードの間の領域を空気力学的に閉鎖するのに有益である。
【0018】
好ましくは、上記仮想平面において上記長手方向に垂直な上記2つのロータブレードのそれぞれの幅は、上記回転軸までの距離に依存して減少する。これは、空気流に対するロータブレードの比較的小さな抵抗を実現しながら、比較的大きな揚力を実現するのに有益である。
【0019】
第1態様によるロータアセンブリの実際的な実施の形態では、上記長手方向に垂直な方向の上記仮想平面における上記2つのロータブレードのそれぞれの断面は、当該断面の第1の側は凹状のプロファイルを備え、当該断面の第2の側は、当該第1の側とは反対に、凸状のプロファイルを備える。凹状のプロファイルおよび凸状のプロファイルを有するロータブレードは、空気流にさらされたときに比較的大きな揚力を実現するのに有益である。
【0020】
上記2つのロータブレードが一体構造として形成されていると有利である。これは、比較的低コストで比較的堅牢なロータアセンブリを実現するのに有利である。
【0021】
好ましくは、上記2つのロータブレードのそれぞれは、上記長手方向に30メートル延びる。これは、比較的大きな揚力を実現するのに有益である。
【0022】
第2態様によれば、本開示は、支持構造および本開示の第1態様によるロータアセンブリを備える風車に関し、上記ロータアセンブリは、上記支持構造に対して上記回転軸を中心として上記2つのロータブレードを回転させるために、上記ロータマストによって、上記支持構造に回転可能に取り付けられている。風車の実施の形態は、本開示の第1態様によるロータアセンブリの実施の形態に対応する。風車の利点は、先に提示された本開示の第1態様によるロータアセンブリの利点に対応する。
【0023】
好ましくは、上記風車は、電気を生成するための発電機を備え、上記ロータアセンブリは、上記回転軸を中心とする上記ロータアセンブリの回転時に上記電気を生成するために上記発電機に結合される。第2態様による風車を設けることは、比較的堅牢な風車を実現するのに有益である。
【0024】
上記ロータアセンブリが上記支持構造の第1位置で上記支持構造に回転可能に取り付けられ、上記風車が上記風車を水に浮かせるための浮体をさらに備え、上記浮体が上記ロータアセンブリから離れた位置で上記支持構造に取り付けられ、上記ロータアセンブリが、使用中の風速の増加が上記ロータアセンブリの上記回転軸を直立位置に向かって移動させるように上記支持構造に取り付けられる場合に有益である。この実施形態は、第2態様による風車を海や湖のような開放水域に配置するのに有益である。開放水域に風車を配置することは、比較的大きな空気流が比較的頻繁に存在するため、魅力的である。使用中の風速の増加により上記ロータアセンブリが上記支持構造を直立位置に向かって移動させるように上記ロータアセンブリを取り付けることは、比較的大きな風速で上記風車の上記ロータアセンブリを回転状態に維持するのに有利である。支持構造を直立位置に向かって移動させることにより、ロータアセンブリの回転軸は、回転軸が垂直方向にますます延びる位置に向かって移動する。つまり、回転軸が直立位置に向かって移動する。結果として、比較的大きな風速によって誘発される力は、ロータアセンブリの損傷の危険性を回避または少なくとも大幅に低減しつつ、ロータアセンブリが回転軸を中心に回転し続けることができる範囲に維持されうる。
【0025】
実質的に水平な位置に維持される回転軸を有する従来の風車は、ロータアセンブリの損傷の危険性を回避または少なくとも大幅に低減するために、比較的大きな風速で運転を停止する必要があることが知られている。比較的大きな風速では、タービンおよびロータアセンブリは、空気流がロータブレードに比較的低い力を誘発する位置にロータブレードを配置するように垂直軸を中心に旋回する。
【0026】
これに関して、上記風車が上記支持構造の第2位置で上記支持構造に取り付けられる釣り合いおもりを備え、上記浮体が上記第1位置と上記第2位置との間で上記支持構造に取り付けられ、上記釣り合いおもりが、上記ロータアセンブリが上記支持構造に対して上記回転軸を中心に回転していないとき、上記ロータアセンブリを上記水の水面のより上に持ち上げるように配置されている場合、有利である。これは、上記ロータブレードが開放水域に接触することを回避することにより、風車の比較的長い稼働時間と寿命を実現するのに有利である。
【0027】
上記風車が上記支持構造の第3位置で上記支持構造に接続されるバランスブイを備え、当該第3位置が上記浮体と上記ロータアセンブリとの間にあり、当該バランスイブが上記ロータアセンブリを上記水の上記水面に向かって引き寄せるように配置される場合、有利である。これは、ロータアセンブリを水の水面の上に比較的正確に位置決めするのに有益である。これは、風車の比較的長い稼働時間と効率を実現するのに有利である。
【0028】
一実施形態では、上記バランスブイは、上記ロータアセンブリを上記水の上記水面より上の高さまで移動させるために上記バランスブイと上記支持構造との間の距離を変化させるための調整要素、好ましくはウインチを介して上記支持構造に接続される。これは、例えばロータアセンブリのメンテナンス中にロータアセンブリを水面に向かって下げるのに有利である。さらにこれは、ロータアセンブリを上昇させる、すなわち、例えば嵐の間、ロータアセンブリを水面から遠ざけるように移動させるのに有利である。
【0029】
本開示はさらに、支持構造および本開示の第1態様によるロータアセンブリを備えるジャイロコプターに関し、当該ロータアセンブリは、上記支持構造に対して上記回転軸を中心として上記2つのロータブレードを回転させるために上記ロータマストによって上記支持構造に回転可能に取り付けられている。ジャイロコプターの実施の形態は、本開示の第1態様によるロータアセンブリの実施の形態に対応する。ジャイロコプターの利点は、先に提示された本開示の第1態様によるロータアセンブリの利点に対応する。
【0030】
第3の態様によれば、本開示は、本開示の第2態様による風車を複数備える風力発電所に関し、当該複数の風車のうちの隣接する風車間の公称相互距離は、上記ロータの直径の1~6倍の範囲にある。風力発電所の実施形態は、本開示の第2態様による風車の実施の形態に対応する。風力発電所の利点は、先に提示された本開示の第2態様による風車の利点に対応する。
【0031】
本開示の文脈の中では、公称相互距離は、隣接する風車を設置するための相互距離として理解されるべきである。
【0032】
上記複数の風車のそれぞれが上記風車(501)を水に浮かせるための上記浮体を備える風力発電所の実施形態では、隣接する風車間の実際の相互距離は、個々の風車の浮動により変化しうる。
【0033】
ロータの直径の4~6倍の範囲の公称相互距離で上記複数の風車を設けることは、空気流からの比較的大きなエネルギーの抽出を実現するのに有益である。風車は空気流から運動エネルギーを抽出するので、風車を通過した後の空気流の速度は低下する。空気流から抽出されうる運動エネルギーは、空気流の速度の3乗に比例するので、速度の低下は、上記複数の風車のうちの他の風車の風下にある、上記複数の風車のうちのある風車が、空気流からより少ない量のエネルギーを抽出することができることを意味する。
【0034】
好ましくは、上記公称相互距離は、上記ロータの直径の4~4.5倍の範囲にある。これは、上記風力発電所が比較的小さな表面積しか占めていない一方で、空気流からの比較的高いエネルギーの抽出を実現するのに有益である。
【0035】
好ましくは、上記公称相互距離は、上記風力発電所の隣接する風車のロータマスト間の距離である。
【0036】
上記相互距離が上記空気流の方向にある場合、有利である。
【0037】
本開示は、本開示の第2態様による風車を複数備える風力発電所に関し、当該風力発電所の容量は、15~50MW/km2の範囲にあり、好ましくは25MW/km2である。この風力発電所の利点は、先に提示された本開示の第2態様による風車の利点に対応する。
【0038】
本開示は、本開示の第1態様によるロータアセンブリの好ましい実施の形態、および本開示の第2態様による風車の実施の形態によって説明され、そこでは以下の概略図が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明によらない公知のロータアセンブリが示される。
【
図2】本発明によるロータアセンブリの上面図が示される。
【
図3】
図2のロータアセンブリの異なる位置における側面図が示される。
【
図4】
図2のロータアセンブリの異なる位置における側面図が示される。
【
図5】
図2のロータアセンブリの異なる位置における側面図が示される。
【
図9】本開示によるロータアセンブリのさらなる実施の形態が示される。
【
図10】本開示によるロータアセンブリのさらなる実施の形態が示される。
【
図11】本開示によるロータアセンブリの別の実施の形態が示される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1に示す公知のロータアセンブリ1は、長手方向Lに延びる第1ロータブレード3および第2ロータブレード5を備える。第1ロータブレード3および第2ロータブレード5は、中央ロータ部分7を介して強固に接続されている。中央ロータ部分7は、ロータマスト9に旋回可能に接続され、中央ロータ部分7、第1ロータブレード3および第2ロータブレード5が第1仮想平面W内で旋回軸Pを中心としてロータマスト9に対して旋回することを可能にしている。上記第1仮想平面Wは、上記旋回軸Pと90°の角度Aをなす。言い換えると、上記長手方向Lは、ピボット軸Pに垂直である。ロータマスト9は、ロータアセンブリ1を支持構造(不図示)に対して回転方向rに相対的に回転させるために、ロータアセンブリ1を支持構造に回転可能に取り付けるように構成されている。
【0041】
本開示によるロータアセンブリ101は、長手方向Lに延びる第1ロータブレード103および第2ロータブレード105を備える。第1ロータブレード103および第2ロータブレード105は、中央ロータ部分107を介して剛性的に接続され、平坦な仮想平面V内に広がっている。中央ロータ部分107は、ロータマスト109に旋回可能に接続され、中央ロータ部分107、第1ロータブレード103および第2ロータブレード105が旋回軸Pを中心としてロータマスト109に対して旋回することを可能にしている。上記第1ロータブレード103、上記第2ロータブレード105および上記中央ロータ部分109を通って上記長手方向Lに延びる第1仮想平面Wは、上記旋回軸Pに対して30°の一定の鋭角をなす。ロータマスト9は、上記ロータアセンブリ101を支持構造(不図示)に対して回転軸Rを中心に回転方向rに相対的に回転させるために、上記ロータアセンブリ1を上記支持構造に回転可能に取り付けるように構成されている。
【0042】
上記中央部分107を上記旋回軸Pを中心に方向tに旋回させることによって、上記中心部分107と上記回転軸Rとの間の第1角度Bおよび第2角度Cが変化する。角度Bは、上記長手方向Lにおける平坦な仮想平面Vと、回転軸Rとがなす角度に相当する。角度Cは、上記長手方向Lに直交する方向における平坦な仮想平面Vと、回転軸Rとがなす角度に相当する。
図3に示す第1位置では、角度Bおよび角度Cは両方とも90°である。中央ロータ部分107を反時計回り方向に傾けると、鋭角Aが0°から90°の間にあるため、角度Bおよび角度Cの両方が増加する。同様の理由で、中央ロータ部分107を時計回り方向に傾けると、角度Bおよび角度Cの両方が減少する。
図6、7、8に示す第1ロータブレード103の断面は、非常に概略的である。ロータブレード103,105の実際の実施形態では、第1表面113は凹状のプロファイルを有し、上記断面の上記第1の側とは反対側の第2の側の第2表面115は凸状のプロファイルを有する。
【0043】
ロータアセンブリ201は、中央部分207が、上記ロータマスト209に隣接する上記仮想平面Vにおいて上記長手方向Lに直交する半径方向における上記中央ロータ部分207の幅zが、上記仮想平面Vにおいて上記2つのロータブレード203,205が占めるブレード面積を、上記長手方向Lにおける上記2つのロータブレード203,205の合計の長さL1,L2で割った比の0.3~2倍の範囲内にあるように形成されている点で、ロータアセンブリ101と主に異なる。言い換えると、中央部分207は、空気が上記第1ロータブレード203と上記第2ロータブレード205との間で上記ロータを通過できないように形成され、それにより、上記ロータマスト209の近くでロータアセンブリ201を横切る圧力損失を回避するか、または少なくとも大幅に低減する。ロータアセンブリ201の要素と類似するロータアセンブリ101の要素には、ロータアセンブリ101の要素の参照符合を100だけ引き上げたものと等しい参照符合が与えられる。
【0044】
ロータアセンブリ301は、上記中央部分307、第1ロータブレード303および第2ロータブレード305が、上記仮想平面Vにおいて上記長手方向Lに垂直な上記2つのロータブレード303,305のそれぞれの幅yおよび上記仮想平面Vにおいて上記長手方向Lに垂直な半径方向における上記中央ロータ部分307の幅zが、上記回転軸Rまでの距離xに依存して減少するように形成されている点で、ロータアセンブリ201と主に異なる。ロータアセンブリ201の要素と類似するロータアセンブリ301の要素には、ロータアセンブリ201の要素の参照符合を100だけ引き上げたものと等しい参照符合が与えられる。
【0045】
ロータアセンブリ401は、上記中央部分307、第1ロータブレード303および第2ロータブレード305が一体部品411として形成され、上記仮想平面Vにおいて上記長手方向Lに垂直な当該一体部品のそれぞれの幅yが上記回転軸Rまでの距離xに依存して減少する点で、ロータアセンブリ301と主に異なる。ロータアセンブリ301の要素と類似するロータアセンブリ401の要素には、ロータアセンブリ301の要素の参照符合を100だけ引き上げたものと等しい参照符合が与えられる。
【0046】
風車501は、当該風車501の発電機519を介して支持構造517に回転可能に取り付けられたロータアセンブリ401を備える。風車501は、支持構造517に取り付けられた浮体521および釣り合いおもり523をさらに備える。浮体521は、上記風車501を水量525の水面527に浮いた状態を維持するように構成される。釣り合いおもり523は、浮体521が上記釣り合いおもり523と上記ロータアセンブリ401の間に位置するように上記支持構造517に取り付けられている。釣り合いおもり523の重量および釣り合いおもり523の上記浮体521までの距離は、上記ロータアセンブリ401が上記支持構造517に対して上記回転軸Rを中心に回転しないとき、上記ロータアセンブリ401が上記水面527より上に上昇するようなものである。風車501はさらにバランスブイ529を備える。バランスブイ529は、ウィンチ531を介して支持構造517に接続されている。
【0047】
使用中、上記ロータアセンブリ401が
図12において矢印で示される方向に或る風速で流れる空気流AFによって駆動されると、上記ロータアセンブリ401によって上記支持構造517に上記回転軸Rに沿った力Ftotが作用する。力Ftotの大きさは、気流の風速、角度BおよびC、および回転軸Rと気流AFの方向との間の角度に依存する。回転軸Rは、上記ロータアセンブリ401と上記浮体521の仮想旋回軸とを横断する仮想線Sと角度Dに配置されている。ロータアセンブリ401を上記支持構造517に所定の角度D取り付けることにより、上記ロータアセンブリ401によって及ぼされる力Ftotは、使用中、上記支持構造517に対する上記回転軸Rを中心とするロータアセンブリ401の回転に起因して、より低いまたはより高い持ち上げ力FLをもたらすことがある。上記支持構造517に対する上記回転軸Rを中心とするロータアセンブリ401の回転速度が増加すると、上記支持構造517は上記風車501のバランスの取れた位置が得られるまで方向e1に回転する。一方、上記支持構造517に対する上記回転軸Rを中心とするロータアセンブリ401の回転速度が減少すると、上記支持構造517は風車のバランスの取れた位置が得られるまで方向e2に回転する。
【0048】
風力発電所601は、複数の風車501を備える。上記複数の風車501の隣接する風車501間の公称相互距離MDは、上記風車501の上記ロータの直径の4倍である。