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特許7429714粒子捕捉システムにおける漏出制御のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】粒子捕捉システムにおける漏出制御のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240201BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20240201BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12Q1/6834 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021561795
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020022902
(87)【国際公開番号】W WO2020214300
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】16/564,375
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/834,824
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502416811
【氏名又は名称】バイオ-ラッド ラボラトリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハンディーク,カリヤン
(72)【発明者】
【氏名】スターク,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤドウィンダー,デオル
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,ヴィシャル
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0060902(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0212881(US,A1)
【文献】国際公開第2016/191533(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面平面に規定されたウェルのアレイ内に標的細胞のセットを、単一細胞フォーマットで、受け取ることであって、前記ウェルのアレイの各ウェルは、前記基材内の前記表面平面に垂直にかつ前記表面平面内に延在する、受け取ることと、
前記ウェルのアレイ内に粒子のセットを受け取り、それによって、前記ウェルのアレイ全体で前記標的細胞のセット及び前記粒子のセットを共捕捉することと、
前記ウェルのアレイ上の流体リザーバ内に洗浄流体を受け取る際に前記ウェルのアレイについて所望の状態を達成し、かつ、前記ウェルのアレイから前記粒子のセットの余分な粒子を移動させることと、
前記流体リザーバ内に溶解緩衝液を受け取る際に前記細胞のセットについて溶解環境を提供することと、
前記溶解緩衝液を受け取り、かつ、前記細胞のセットの溶解を開始した後、前記流体リザーバからの前記溶解緩衝液をガスと置換することによって、前記表面平面で前記ウェルのアレイのうちの隣接するウェルからウェルの各々を単離することと、
パーティショニング流体を前記流体リザーバ内に受け取る際に前記ウェルのアレイの内容物の蒸発を防止することと、
前記ウェルのアレイ内に熱を伝導して、前記ウェルのアレイ内で、前記標的細胞のセットの細胞内物質を保持することと、を含む方法。
【請求項2】
前記基材は、短軸と、長軸と、前記短軸に優先的に整列されて前記流体リザーバに結合された1以上の流路を規定する流体チャネルのネットワークと、を備え、前記溶解緩衝液及び前記パーティショニング流体のうちの1以上を受け取ることは、前記流体チャネルのネットワーク内に前記溶解緩衝液及び前記パーティショニング流体のうちの1以上を受け取ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウェルのアレイの各ウェルは、前記粒子のセットのうちの粒子に対して前記標的細胞のセットのうちの標的細胞の横方向に隣接する位置決めを防止するように構成された幅を備え、前記粒子のセット及び前記標的細胞のセットを受け取ることは、前記標的細胞のセットよりも前記表面平面の近くに前記粒子のセットを保持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶解緩衝液を受け取ることは、1℃~15℃の温度で前記溶解緩衝液を受け取ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶解緩衝液を受け取ることは、40秒未満の滞留時間で前記流体リザーバ内に前記溶解緩衝液を保持することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細胞内物質を保持することは、前記ウェルのアレイ内で個々に前記粒子のセットにハブリダイゼーションされた、前記標的細胞のセットのmRNA物質を保持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子のセットの各々は、ポリスチレンコーティングと、固有の生体高分子複合物質バーコードと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞のセットを受け取ることは、前記ウェルのアレイの50%未満の占有率で構成された第1濃度で前記細胞のセットを受け取り、それによって、単一細胞フォーマットで前記細胞のセットの捕捉を促進することを含み、前記粒子のセットを受け取ることは、前記第1濃度よりも高い第2濃度で前記粒子のセットを受け取ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ウェルのアレイの各ウェルの断面は多角形を規定し、前記ウェルのアレイの各ウェルは、前記粒子のセットの粒子直径と前記標的細胞のセットの細胞直径との合計よりも大きい深さを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記パーティショニング流体は油を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
基材の表面平面に規定されたウェルのアレイ内に標的細胞のセットを、単一細胞フォーマットで、受け取ることと、
前記ウェルのアレイ内に粒子のセットを受け取り、それによって、前記ウェルのアレイ全体で前記標的細胞のセット及び前記粒子のセットを共捕捉することと、
前記ウェルのアレイ上の流体リザーバ内に洗浄流体を受け取る際に前記ウェルのアレイについて所望の状態を達成し、かつ、前記ウェルのアレイから前記粒子のセットの余分な粒子を移動させることと、
前記流体リザーバ内に溶解緩衝液を受け取る際に前記細胞のセットについて溶解環境を提供することと、
前記溶解緩衝液を受け取り、かつ、前記細胞のセットの溶解を開始した後、前記流体リザーバ内にパーティショニング流体を受け取り、それによって、前記流体リザーバから前記溶解緩衝液を移動させ、かつ、前記表面平面で前記ウェルのアレイのうちの隣接するウェルからウェルの各々を単離することと、
前記ウェルのアレイ内に前記粒子のセットと共に個別に、前記標的細胞のセットの細胞内物質を保持し、それによって、前記ウェルのアレイの第2ウェルへの第1ウェルの細胞内物質の漏出を軽減することと、を含む方法。
【請求項12】
前記基材は、前記基材の短軸に優先的に整列されて前記流体リザーバに結合された1以上の流路を規定する流体チャネルのネットワークを備え、前記溶解緩衝液及び前記パーティショニング流体のうちの1以上を受け取ることは、前記流体チャネルのネットワーク内に前記溶解緩衝液及び前記パーティショニング流体のうちの1以上を受け取ることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子のセット及び前記標的細胞のセットを受け取ることは、前記標的細胞のセットよりも前記表面平面の近くで前記粒子のセットを保持することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記標的細胞のセット、前記粒子のセット、前記洗浄流体、前記溶解緩衝液及び前記パーティショニング流体のうちの少なくとも1つを受け取ることは、層流プロセスで受け取ることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記パーティショニング流体は、空気及び油のうちの少なくとも1つを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記溶解緩衝液を受け取ることは、1℃~15℃の温度で前記溶解緩衝液を受け取ることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記溶解緩衝液は、前記ウェルのアレイ上で前記流体リザーバに入る前に15℃未満に予冷却される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記溶解緩衝液を受け取ることは、40秒未満の滞留時間で前記流体リザーバ内に前記溶解緩衝液を保持することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
細胞内物質を保持することは、前記基材を通じて前記ウェルのアレイ内に熱を伝導し、前記ウェルのアレイ内に15℃~35℃のウェル温度を生成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
細胞内物質を保持することは、前記ウェルのアレイ内で個々に、前記粒子のセットに結合されたオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイゼーションされた、前記標的細胞のセットの、mRNA物質を保持することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子のセットへのmRNA物質のハイブリダイゼーション後、50マイクロリットル/秒超の流量で前記ウェルのアレイ上で未結合RNAを除去するように構成された洗浄緩衝液を流すことをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ウェルのアレイ内で、保持されたmRNA物質とともに逆転写プロセスを実行することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] 本願は、2019年9月9日に出願された米国出願番号第16/564,375号及び2019年4月16日に出願された米国仮出願番号第62/834,824号の利益を主張し、これらの両出願の全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、概して、細胞捕捉及び細胞処理の分野、より具体的には、細胞捕捉及び細胞処理の分野内の漏出制御のための新規で有用な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 細胞特異的な薬物検査、診断及びその他のアッセイへの関心が高まるにつれ、個々の細胞の単離、バーコード化、識別及び回収を可能にするシステム及び方法が非常に望まれるようになっている。単一細胞捕捉システム及び方法は、これらの用途に特に有利であることが示されてきた。しかしながら、生物学的標的物質(例えば、細胞溶解後の細胞に由来する物質、無細胞核酸物質など)のドリフト(drifting)は、これらのシステム及び方法において特に問題となり得、標的物質(例えば、メッセンジャーリボ核酸[mRNA]、タンパク質など)の非特異的捕捉、及び/又は、捕捉デバイスのチャンバ若しくはパーティション間の標的物質の漏出を引き起こす。
【0004】
[0004] したがって、細胞捕捉及び細胞処理の分野では、細胞を捕捉及び/又は処理している間の漏出制御のための新規で有用なシステム及び方法を考案する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】[0005] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステムの一実施形態の概略図である。
図1B】[0006] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステムの一実施形態の概略図である。
図2A】[0007] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステムの構成要素の変形例を示している。
図2B】[0007] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステムの構成要素の変形例を示している。
図2C】[0007] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステムの構成要素の変形例を示している。
図3】[0008] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステムの構成要素の特定の例を示している。
図4】[0009] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のための方法の一実施形態の概略図である。
図5A】[0010] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のための方法の一変形例を示している。
図5B】[0010] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のための方法の一変形例を示している。
図5C】[0010] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のための方法の一変形例を示している。
図5D】[0010] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のための方法の一変形例を示している。
図5E】[0010] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のための方法の一変形例を示している。
図5F】[0010] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のための方法の一変形例を示している。
図5G】[0010] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のための方法の一変形例を示している。
図5H】[0010] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のための方法の一変形例を示している。
図6A】[0011] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステム及び方法の一変形例を示している。
図6B】[0011] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステム及び方法の一変形例を示している。
図6C】[0011] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステム及び方法の一変形例を示している。
図6D】[0011] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステム及び方法の一変形例を示している。
図6E】[0011] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステム及び方法の一変形例を示している。
図6F】[0011] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステム及び方法の一変形例を示している。
図6G】[0011] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステム及び方法の一変形例を示している。
図7A】[0012] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステム及び方法の構成の一変形例を示している。
図7B】[0012] 漏出制御による、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステム及び方法の構成の一変形例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0013] 本発明の好ましい実施形態の以下の説明は、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定することを意図しているのではなく、当業者が本発明を作成及び使用することを可能にすることを意図している。
【0007】
1.システム
[0014] 図1Aに示すように、単一細胞の捕捉及び処理のためのシステムの一実施形態は、細胞31のセット、粒子32のセット及び他の任意の適切な物質(例えば、試薬)のいずれか又はすべてを受け取るように構成されたウェル20のセットを規定するスライド10を含む。追加又は代替として、システムは、各々がこの参照によりそれら全体が組み込まれる、2018年7月27日に出願された米国出願番号第16/048,104号、2018年7月30日に出願された米国出願番号第16/049,057号、2017年11月22日に出願された米国出願番号第15/821,329号、2017年10月12日に出願された米国出願番号第15/782,270号、2018年7月30日に出願された米国出願番号第16/049,240号及び2018年8月28日に出願された米国出願番号第16/115,370号に記載されているシステム構成要件のいずれか又はすべてを含むことができる。
【0008】
[0015] より詳細には、図1Bに示す一実施形態に関して、細胞のセットを単離及び分析するためのシステム100は、広い面を有する基材110と、基材の第1面112(例えば、広い上面)に規定されたウェル120のアレイと、第1面112に規定された開放表面122を含む、ウェル120のアレイ内の各ウェル128と、第1面112の正反対の第2面114(例えば、広い下面)の近位で基材内に規定されたベース表面124と、ベース表面124と開放表面122との間で延在してウェル128のウェルキャビティを形成する壁126のセットと、を含む。ウェル120のアレイは、基材の活性領域に、又は、他の任意の適切な配置で配列されることができる。ウェル120のアレイへのサンプル又は流体の送達を容易にするため、システム100は、基材110に結合し、かつ、細胞のセット及び/又は別の流体を包含するサンプルをウェル120のアレイに移送するように構成された流体送達モジュール140をさらに含むことができる。追加又は代替として、システム100は、システム100を通じた流体(例えば、生物学的サンプル、処理試薬、非細胞粒子を包含する溶液)の流れ(例えば、方向、速度、流体の体積)、並びに、制御及び/又は作動を必要とするシステムを通る任意の他の適切な流れ、を制御するように構成された流れ制御サブシステム(例えば、圧力ポンプシステム)180を含むことができる。追加又は代替として、システム100は、システム100の一部の温度を制御するための熱制御モジュール190を含むことができる。追加又は代替として、システム100は、ウェル120のアレイの内容物の光学的イメージング、照明又は照射を実行し、かつ、ウェル120のアレイのうちのウェルによって保持される細胞の識別、位置特定及び定量化を可能にするように構成されたイメージングサブシステム194を含むことができる。追加又は代替として、システム100は、ウェルのアレイから、標的細胞、粒子、細胞-粒子ペア、遺伝子複合体及び/又は遺伝子産物のうちの1以上を抽出することができる抽出モジュールを含むことができる。しかしながら、システム100の変形例は、各々この参照によってその全体が組み込まれる、「細胞捕捉システム及びその使用方法」の発明の名称で2016年10月25日に出願された米国出願番号第15/333,420号、「細胞を捕捉及び分析するためのシステム」の発明の名称で2014年3月13日に出願された米国出願番号第14/208,298号、及び「細胞を単離及び分析するためのシステム及び方法」の発明の名称で2014年5月28日に出願された米国出願番号第14/289,155号で説明されるような、任意の適切な構成及び/又は組み合わせで任意の他の適切な構成要素を含むことができる。
【0009】
[0016] 説明されるシステムの実施形態は、下流のサンプル処理ステップの性能を促進するため、標的物質(例えば、メッセンジャーリボ核酸[mRNA]、タンパク質など)の非特異的捕捉、及び/又は、システムのウェル間の標的物質の漏出を防止するように機能する。説明されるシステムの実施形態は、以下のセクション2で説明される方法の実施形態のステップ、及び/又は、任意の他の適切な方法を実行するように構成される。
【0010】
[0017] 説明されるシステムの実施形態はまた、既知のアドレス可能な位置で、単一細胞フォーマット及び単一クラスタフォーマットのうちの少なくとも1つで、細胞集団のうちの細胞を単離、捕捉、保持及び分析するように機能し、かつさらに、個々の標的細胞(例えば、生物学的サンプル中の希少細胞)又は細胞のクラスタ(例えば、ダブレット、トリプレット)で実行されることができる複数の単一細胞アッセイの性能を促進するように機能する。好ましい実施形態では、システム100はまた、細胞捕捉として、近接したその後の配列決定のための、かつ、同じデバイス内での、捕捉された単一細胞の遺伝子ライブラリ(例えば、溶解された標的細胞から捕捉されたmRNAから生成されたcDNA、増幅されたcDNA、増幅されたDNA)の調製を容易にするように機能する。単一細胞捕捉ウェルによって決定された規定の位置で細胞が捕捉されると、システム100の流体送達モジュールが使用されて、試薬を同時に、連続して及び/又は繰り返し提供並びに送達して、様々な細胞反応、細胞内反応又は分子反応が単一細胞/細胞クラスタの各々で実行されることを可能にすることができる。追加又は代替として、システム100は、非細胞粒子(例えば、核酸物質、他の生物学的物質、他の非生物学的物質、分子プローブ又は試薬を包含する粒子など)、並びに、単一細胞及び単一非細胞粒子(例えば、個々のマイクロウェル内で細胞-粒子ペアを共捕捉する場合)の組み合わせを捕捉及び処理するように機能することができる。さらにシステム100は、細胞又は生物学的物質の生存性を維持するために、生物学的アッセイの効率を高めるために、かつ、ウェルのセット内で様々な生化学的プロセスを実行するために、ウェルのアレイの、並びに、追加又は代替としてウェルのアレイに送達された流体の、制御された迅速な熱変調(例えば、95℃から1℃までの加熱及び冷却サイクル)を可能にすることができる。システム100は、単一細胞/単一クラスタレベルで、捕捉された細胞の各々のイベントの光学的調査及び検出も可能にすることができる。システム100は、さらなる処理及び分析のため、追加又は代替として、捕捉された細胞又は非細胞粒子のうちの1以上の選択的放出及び/又は選択的除去を可能にすることができる。例えば、システム100は、個々のウェル内の単一細胞及び粒子の共捕捉、溶解ステップを通じた細胞からの細胞内内容物(例えば、mRNAなど)の放出、粒子のバーコードプローブへの細胞内内容物の結合、ウェル内の逆転写(RT)反応の性能、及び、ウェルからの細胞内内容物に関連する標的増幅内容物の選択的回収を可能にすることができる。
【0011】
[0018] ある実施形態では、システム100は、リアルタイムの細胞追跡、生細胞及び/又は他の生物学的物質の回収、生化学的プロセス(例えば、細胞溶解、細胞固定、ポリメラーゼ連鎖反応、逆転写など)、並びに、同じマイクロ流体チップ又はオフチップのいずれかでの選択的分子分析(例えば、電気泳動、配列決定、蛍光イメージング)の利点を与えることができる。ある実施形態では、システム100は、循環腫瘍細胞(CTC)及び循環幹細胞(CSC)などのCTCの亜集団を捕捉するために使用されることができるが、追加又は代替として、任意の他の適切な細胞(例えば、赤血球、単球、マクロファージ、破骨細胞、樹状細胞、ミクログリア細胞、T細胞、B細胞、巨核球、生殖細胞、ナース細胞、神経細胞、幹細胞など)又は対象の生物学的物質を捕捉するために使用されることができる。システム100は、好ましくは基材100上、より好ましくはマイクロ流体チップ上に規定されるが、代替として、任意の適切な基材上に配置される又は基材によって規定されることができる。
【0012】
[0019] 特定の例では、システム100は、単一細胞分子反応に対して動作可能な方法で使用されることができ、そうしたシステムは、ウェル内の単一細胞フォーマット(又は単一クラスタフォーマット)内の細胞(例えば、100個の細胞、1000個の細胞、10,000個の細胞、100,000個の細胞、1,000,000個の細胞など)の高効率の捕捉、並びに、細胞捕捉-分子反応ワークフローを提供するための、ウェルへのオンチップ試薬送達、インキュベーション及び熱循環を促進する。より詳細には、システムのマイクロ流体及び他の部分は、単一細胞又は単一細胞クラスタ分解能でサンプル(例えば、前立腺臨床サンプル)を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してアッセイ(例えば、ARV7 mRNAに関連するアッセイ)を実行するように動作可能であり得る。特定の例では、システム100は、ウェル120のアレイに関連する流体リザーバ160内で、最小10μlから最大1mLまでのオーダのサンプル体積に対応することができ、サンプルは、500個~100000個の標的細胞を包含することができ、それによって、多数の対象の細胞を包含するより大きなサンプル体積を処理する能力を提供する。
【0013】
[0020] システムは、任意の数又はタイプの細胞を含む、及び/又は、任意の数若しくはタイプの細胞と相互作用するように構成されることができる。細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、マウス細胞など)、胚、幹細胞、植物細胞又は他の任意の適切な種類の細胞のいずれか又はすべてを含むことができる。細胞は、好ましくは、細胞内で発生し、かつ、最終的に放出され、かつ、細胞捕捉システムによって捕捉される標的物質(例えば、標的溶解物)を包含するが、追加又は代替として、1以上の細胞内又は細胞上に他の任意の物質を含むことができる。ある変形例では、標的細胞物質はmRNAを含む。追加又は代替として、標的細胞物質は、任意の適切なRNA、DNA、タンパク質又は他の物質を含むことができる。
【0014】
[0021] システムはさらに、粒子のセットを含み、及び/又は、粒子のセットと相互作用するように構成されることができ、粒子のセットは各々、好ましくは、細胞の標的物質と結合するように構成されたプローブのセットで官能化される。プローブは、好ましくは、ヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドなど)を含み、追加又は代替として、粒子は、他の方法で官能化されるか、官能化されないか、若しくは、他の任意の適切なフォーマットで存在することができる。粒子の直径は、好ましくは、以下に記載されるように、ウェル直径及び/又は細胞直径に実質的に類似している(例えば、等しい)。この直径は、細胞を包含する各ウェルに単一粒子のみが入ることができるように、10~30ミクロン(例えば、20ミクロン)であり得る。代替として、粒子直径は、単一粒子のみが任意のウェルに入ることができ、複数の粒子が各ウェルに入ることができ、かつ、粒子が任意の適切な直径(例えば、10ミクロン未満、30ミクロン超、可変など)を有することができるようなサイズを有する。関連の実施形態では、ウェルは、ウェルの長手方向軸に沿って(又は主にそれに沿って)単一細胞及び単一粒子を共捕捉するように構成されるが、ウェルは任意の他の適切な方法で構成されることができる。
【0015】
[0022] 粒子は、好ましくは、ビーズの形態であり、さらに好ましくは、ミクロスフェアの形態であるが、粒子は、追加又は代替として、任意の適切な形態の他の任意の物質を含むことができる。粒子は、任意の適切な物理的特性(例えば、非膨潤挙動、溶解性など)、磁気的特性、光学的特性、表面特性(例えば、多孔性、非多孔性、特定のサイズ範囲の細孔など)、化学的特性(例えば、生体適合性、表面官能基、結合親和性など)、熱的特性、又は、他の特性などの任意の適切な特性のセットを有することができる。ある変形例では、粒子は、(例えば、生体高分子複合物質を使用して、官能化されて又は他の方法で処理されて)固有のバーコードでバーコード化されている。粒子は、ポリスチレン、ガラス、PMMA、磁気コアを有するポリマー、ヒドロゲル表面を有するポリマー、及び/又は、1以上の他の適切な物質の組み合わせのいずれか又はすべてを含むことができる。特定の例では、粒子には、単分散(+/-10%Cv)20ミクロン高密度バイオビーズ(HDBB)が含まれる。
【0016】
[0023] 粒子の密度は、好ましくは、粒子が個々のマイクロウェルに入って留まるように構成されるように、方法100中に使用される緩衝液(例えば、初期緩衝液含有溶液、溶媒など)及び/又は流動溶液の大部分又はすべてよりも大きい。代替又は代替として、粒子は、溶液の1以上よりも小さい密度、可変密度、又は、任意の他の適切な密度を有することができる。一変形例では、粒子は、HDBBと溶解細胞から放出されたmRNAとの間の結合を最大化するように構成された最適なリンカー密度を有するHDBB粒子のセットを含む。別の変形例では、ミクロスフェアは、ポリスチレンコーティングを有するガラスビーズを含み、かつ、直径が約20ミクロン(例えば、15~30ミクロン)である。しかしながら、システム100は、追加又は代替として、他の任意の適切な粒子で動作することができる。
【0017】
[0024] 個々の細胞及び/又は粒子の捕捉は、好ましくは、流体層内の単一細胞のグループを包含するサンプルを、ウェル120のアレイ上で、基材の広い表面に対して平行な方向(例えば、実質的に平行、平行の0.1度以内、平行の1度以内、平行の45度以内、完全に平行など)に流す又は分配し、かつ、重力の影響下で細胞が流体層を通ってウェル120のアレイに向かって下降した時点で細胞を捕捉することによって達成される。代替として、個々の細胞の捕捉は、単一細胞のグループを包含するサンプルを、流体リザーバ160によって提供される流体層に、ウェル120のアレイ上で、基材の広い表面に垂直な方向に送達し、かつ、重力の影響下で細胞が流体層を通ってウェル120のアレイに向かって下降した時点で捕捉することによって達成されることができる。しかしながら、ある変形例では、個々の細胞の捕捉は、追加又は代替として、ウェルのセットのうちのウェルへの単一細胞の移送を促進するための任意の適切な機構によって達成されることができる。さらに、システム100は、好ましくは、細胞を基材から持ち上げる、又は、細胞が捕捉されて完全に内部に保持されるウェルキャビティ128から細胞/細胞クラスタを移動させることができる望ましくない流体流を阻止するように構成される。しかしながら、ある変形例では、システム100は、任意の適切な方法で細胞/細胞クラスタの移動を容易にするように構成されることができる。システム100を通る流体(例えば、生物学的サンプル、処理試薬)の流路は、好ましくは多方向で均一であり、その結果、システム100内の各細胞/細胞クラスタは、一貫した条件(例えば、圧力、密度、温度、溶液組成及びその他の適切な特性などの流れ特性の、流路に沿った勾配長さスケールが、システムの長さスケールに対して大きい)を経るが、流路は、代替として、単一方向、双方向であり得、又は、その他の適切な特性を有することができる。
【0018】
[0025] 特定の例の変形例では、図2A図2Cに示すように、システムを通る流体の流路141は、等しい長さ(例えば、実質的に等しい長さ、製造可能性の許容範囲内で等しい長さなど)の流体経路146(例えば、ウェルのアレイに結合されたマニホールドの)のセットを含み、流体経路146は、マニホールド入口440で流体経路146のセットに供給された試薬が、入口444の各アレイに実質的に同じ時点(例えば、同時に、1秒以内、1分以内など)に到達し(例えば、単一のウェル、リザーバの第1縁の領域に沿って、基材の活性領域の第1縁の領域に沿ってなど)、かつ、出口445のアレイを通ってマニホールド出口442まで通じる(例えば、ウェル120のアレイを包含する)基材の活性領域116(例えば、ウェル120のアレイを包含する)を横切って通過するように構成される。細胞の輸送、単離、選別及び生存性の維持は、システム全体のサンプル流量を制御することによって(例えば、流量の特性長さスケールがウェルの特性長さスケールと同様のオーダになるように流量を調整することによって、高流量条件と低流量条件との間で流量をディザリングすることによってなど)、又は、任意の他の適切な手段を通じて、さらに達成されることができる。しかしながら、システム100を通る流体の流れ特性は他の方法で構成され得る。
【0019】
[0026] 動作中、システム100は、好ましくは、標的細胞集団を含む生物学的サンプルを受け取り、かつ、ウェル120のアレイ全体に生物学的サンプルを均一に分配することを容易にする(例えば、均一な交差流、塗抹、サイトスピン手順、アレイの様々な領域のアリコートのピペット操作など)。しかしながら、システム100は、追加又は代替として、流れ制御サブシステム180によって加えられる正圧(例えば、アレイへの入口での正圧)及び/又は負圧(例えば、アレイの出口での負圧)を使用して、ウェルのセット全体にわたる流体(例えば、生物学的サンプル、処理試薬、非細胞粒子)の分配を促進することができる。追加又は代替として、サンプル分配を容易にする作動圧力は、パルス幅変調方式又は正弦波方式で循環させられて、入口で正味の正又は出口で正味の負のいずれかの正味の作動圧力を提供することができる。したがって、生物学的サンプルがウェル120のアレイを横切って流れる際に、明確な特性(例えば、サイズベースの特性、密度ベースの特性、接着ベースの特性など)を有する所望の細胞がウェル128内にトラップされることができる。例えば、CTCを捕捉するように構成されたシステム100の変形例では、ウェルは、好ましくは、単一細胞又は単一クラスタフォーマットでのCTCの捕捉及び保持を容易にするために、CTC細胞の形態学的特徴を規定することに基づいて構成されること。しかしながら、システム100は、追加又は代替として、他の任意の適切なフォーマットでの任意の他の適切な対象の粒子を保持してその処理を促進するように構成されることができる。作動圧力は、好ましくは、システム100と流体連通する流れ制御サブシステム180(例えば、手動操作ピペット、自動流体処理ロボット、真空圧力システム、電気機械式マイクロポンプなど)によって提供されるが、代替又は追加として、任意の適切な機構によって提供されることができる。
【0020】
[0027] 一変形例では、システム100は、単一細胞フォーマットで(例えば、ウェル120のアレイ内のウェルの数より少ない密度/総数)ウェル120のアレイで細胞の集団の捕捉を促進する第1密度及び/又は細胞の総数で細胞の集団を受け取る。この変形例では、システム100は、粒子の集団との細胞の集団の共捕捉を促進する、第1密度及び/又は粒子の総数よりも高い第2密度で粒子の集団を受け取る。しかしながら、他の変形例では、ウェル120のアレイは、他の任意の適切な方法で細胞及び/又は粒子を受け取ることができる。システム構成要素については以下のセクションでより詳細に説明される。
【0021】
1.1 システム-基材
[0028] 図1Bに示すように、基材110は、ウェル120のアレイ(マイクロウェル、マイクロウェル、ウェルのセット)が規定されることができる培地を提供するように機能する。変形例では、基材110は、第1面(例えば、広い上面)112と、第1面と正反対の第2面(例えば、広い下面)と、を有することができる。基材110の広い上面112は、好ましくは平面であり、その結果、システム100のマイクロ流体要素(例えば、入口、出口、入口マニホールド、出口マニホールド、流体チャネルなど)も、少なくとも部分的に平面で規定される。代替として、基材110の広い上面112は非平面であることができ、その結果、システム100のマイクロ流体要素が少なくとも部分的に非平面で規定される。変形例では、非平面は、凹面、凸面、若しくは、凹面、平面及び/又は凸面を有する表面であり得る。そうした変形例は、ウェル120のアレイにサンプルを堆積及び分配する様々な方法を容易にすることができる。非平面の広い上面112を含む基材110の任意の変形例において、非平面部分は、好ましくは、浅い(例えば、広い表面の幅に対して浅い深さを有する)又は短い(例えば、広い表面の幅に対して低い高さを有する)が、非平面部分は、追加又は代替として、深い(例えば、広い表面の幅に対して大きな深さを有する)又は高い(例えば、広い表面の幅に対して大きな高さを有する)部分を含むことができる。しかしながら、表面は、任意の他の適切な軸又は対称のタイプを有することができ、又は、非対称であることもできる。
【0022】
[0029] 基材110の組成物は、機械的特性(例えば、機械的刺激としての基材の機械的特性)、光学的特性(例えば、透明性)、電気的特性(例えば、導電性)、熱的特性(例えば、伝導率、比熱など)、物理的特性(例えば、湿潤性、多孔性など)、及び、任意のその他の適切な特性のうちの任意の1以上に関する所望の特性を提供することができる。基材110は、捕捉された単一細胞/細胞クラスタを分析するための基材110の画像化を容易にするために、好ましくは、高い透明度を有する剛性材料(例えば、透明材料、半透明材料)から構成される。高透明材料は、好ましくは光学的に透過性を有するが、追加又は代替として、電磁スペクトルの他の部分(例えば、マイクロ波、近赤外線、紫外線など)に対して透過性及び/又は半透過性を有し得る。いくつかのそうした変形例では、基材110は、ガラス、溶融シリカ、セラミック、シリコーンベースの材料(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))、ポリマー(例えば、アガロース、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレングリコールなど)、紙、多孔質物質、及び、透明度の高いそれらの複合物質を含む任意の他の適切な材料から構成されることができる。代替として、基材110は、任意の他の適切な光学的特性を有する任意の他の適切な材料から構成されることができる。追加又は代替として、基材は、セラミック物質、半導体物質、ポリマー及び任意の他の適切な材料のうちの任意の1以上から構成されることができる。
【0023】
[0030] 基材110は、エッチング方法、成形方法、印刷方法(例えば、3D印刷プロセス)、機械加工方法、及び、脆性、弾性又は延性の基材材料に適した他の任意の適切な製造プロセスのうちのいずれか1以上を使用して処理されることができる。さらに、ウェルのアレイを含む広い上面112で規定された特徴は、成形、研磨、流動相での材料の回転の後の材料の硬化、機械加工、印刷(例えば、3D印刷)、エッチング及びその他の適切なプロセスのうちのいずれか1以上によって生成されることができる。特定の例では、ウェル120のアレイは、フォトリソグラフィプロセス及び深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスを使用してシリコン型内で規定され、マイクロ流体要素をシリコン型内にエッチングする。特定の例では、シリコン型のエッチングされた要素は、その後、ホットエンボス加工プロセスを使用して基材110としてポリメチルメタクリレート(PMMA)シートに転写される。特定の例の基材110は、ガラス顕微鏡スライドの寸法と実質的に一致させるために、3インチ×1インチの寸法を有する。特定の例の変形例では、及び/又は、ウェル120のアレイの他の変形例では、環状オレフィンポリマー(COP)のホットエンボス加工がPMMAに代用されて、ウェル120のアレイのマイクロ流体構造を形成することができる。しかしながら、基材110は、代替として、他の任意の適切な方法で処理された任意の他の適切な基材120であり得る。
【0024】
[0031] 好ましくは、基材は、システム100の他のサブ構成要素への相互作用(例えば、可逆的又は非可逆的な付着、結合)を可能にする特徴を含む。一変形例では、基材110は、流体送達モジュール140の構成要素に結合されることができ、基材は、流体を基材の活性領域に出し入れするための1以上の入口及び出口(その例は図2A図2Cに示す)を含む。別の例では、基材110は、ウェルのアレイの上方に整列されたアダプタ150(図1Bに示す)に結合されて、上述したように、システム100の動作中にもウェルのアレイ全体に流体を移送する流体リザーバ160を協働で規定することができる。
【0025】
[0032] 基材110は、追加又は代替として、プラットフォーム、加熱素子(例えば、熱制御モジュール190)、及び/又は、その上でアッセイが実行されるステージに基材を可逆的に取り付けて整列させるように機能する基材プラットフォームに結合されることができ、ステージは、イメージングサブシステム194、熱制御モジュール190及び/又は抽出モジュールなどのシステムの他の要素へのウェルのアレイのアクセスを改善するために、システム100内の基材の位置を物理的に調整するために使用されることができる。好ましくは、基材プラットフォームは、様々なアレイ構成(例えば、50000個のウェルを有するアレイ、100万個のウェルを有するアレイなど)を有する基材を高精度で収容、固定及び操作するように構成されることができ、かつ、任意選択的な基材取り付け機構を含むことができる。
【0026】
1.2 システム-ウェルのアレイ
[0033] ウェル120のアレイ(マイクロウェルのセット、マイクロウェル、ウェル)は、細胞のセットが個別に識別、処理及び分析されることができるように、アドレス可能な既知の位置にある細胞のセットを捕捉するように機能する。したがって、ウェル120のアレイは、好ましくは、単一細胞フォーマット及び単一クラスタ(例えば、細胞-粒子ペア)フォーマットのうちの少なくとも1つでの細胞捕捉を容易にするように構成されている。しかしながら、ウェル120のアレイは、追加又は代替として、任意の他の適切なフォーマットで、任意の他の適切なタイプの粒子を受け取るように構成されることができる。例えば、ウェル120のアレイは、哺乳動物細胞、エンビロ、ミクロスフェア、粒子、細胞-粒子ペア、及び、ミクロスフェアに接合された細胞を受け取るように構成(例えば、サイズ決定、成形)されることができる。
【0027】
[0034] 図1Bに示すように、ウェル120のアレイは、好ましくは、基材110の広い上面112に規定され、ウェル120のアレイ内の各ウェル128は、基材内及び第2面(例えば、広い下面114)の近位に規定されたベース表面124と、ベース表面124の正反対で、かつ、広い上面の近位にある開放表面122と、ベース表面とウェルのウェルキャビティ128を規定する開放表面との間で延在する壁126のセットと、を含む。
【0028】
[0035] ウェル120のアレイは、基材110の活性領域に規定され、活性領域は、基材(図2A図2C)の任意の適切な領域(例えば、1平方インチ、10cm、2平方インチ、3平方インチ、4平方インチなど)であり得る。好ましくは、基材の活性領域(及びウェルのアレイ)は、捕捉された単一細胞の単離、処理及び分析を実行するために、イメージングサブシステム194、流体送達モジュール140、熱制御モジュール190及び/又は抽出モジュールを含む、システム100の他の構成要素によってアクセス可能である。ウェル120のアレイは、任意の適切な数のウェルを含むことができる(例えば、100個、1,000個、10,000個のウェル、50,000個のウェル、100,000個のウェル、100万個のウェル、200万個のウェル、300万個のウェル、400万個のウェル、500万個のウェル、600万個のウェル、700万個のウェル、900万個のウェル、1000万個のウェルなど)。好ましい変形例では、ウェルのアレイは少なくとも250000個のウェルを含む。特定の例では、ウェルのアレイには約100万個のウェルが含まれる。しかしながら、ウェルのアレイは他の任意の適切な方法で構成されることができる。
【0029】
[0036] ベース表面124及び開放表面122に関して、各ウェル128は、好ましくは、ベース表面124と開放表面122との間で延在する少なくとも1つの壁(例えば、壁のセット)126を有している。一変形例では、少なくとも図1Bに示すように、各ウェル126の壁は、個々のウェル128を少なくとも1つの他の隣接するウェルから少なくとも部分的に物理的及び流体的に分離し、ウェルの深さ、幅及び/又は断面寸法を規定し、かつ、好ましくは、開放表面122の水平軸によって規定される平面に垂直である。好ましくは、壁126の壁厚は4~5マイクロメートルであるが、20マイクロメートル未満の任意の寸法であり得る。壁126は、開放表面122によって規定された平面からベース表面124まで垂直に延在して、ウェルキャビティ128を規定することができ、したがって、ある変形例では、ウェルのアレイ内の各ウェルのウェルキャビティ128は角柱状であり得る(例えば、円筒形角柱状、六角形角柱状、多角形角柱状、非多角形角柱状など)。特定の例では、各ウェルのウェルキャビティは、粒子のセットの粒子直径と標的細胞のセットの細胞直径との合計よりも大きい深さを有する六角形角柱を規定する。しかしながら、壁126は、他の変形例(例えば、湾曲した壁、真っ直ぐな壁、曲がった壁など)において、他の任意の適切な方法で開放表面122とベース表面124との間に延在することができる。例えば、壁126のセットの壁は、ウェルの特徴的な寸法(例えば、直径、水平断面、垂直断面)を、開放表面からベース表面まで(例えば、個々の段階を形成することによって、特性の寸法を任意の適切な勾配で線形又は非線形に徐々に調整することによってなど)徐々に減少させることができる。しかしながら、ある変形例では、ウェル128は、開放表面122によって規定された平面に垂直な明確に規定された壁126を有しない場合がある(例えば、ベース表面は、何らかの方法で、開放表面に垂直な壁を形成することなく、開放表面まで直接延在することができる。例では、ベース表面124及び開放表面122は、壁の有無にかかわらず、0.5ミクロン~50ミクロン(例えば、単一標的細胞の捕捉を包含する用途の場合は約25ミクロン、単一の細胞-粒子ペアの捕捉を包含する用途の場合は約40ミクロン)の距離(例えば、ウェルキャビティ128の高さ)によって分離されることができる。しかしながら、ウェルのアレイのうちのウェルは、方法200に記載されている単離、処理及び分析のステップを実行するために、他の任意の物理的特性及び/又は寸法で構成されることができる。追加又は代替として、壁のセットが、ウェル120のアレイ内の少なくとも1つの隣接するウェルに各ウェルを流体的に結合するチャネルのセットを含むことができる。そうした変形例では、チャネルのセットのうちのチャネルは、隣接するウェル間の基材110の領域内で規定されることができ、又は、隣接するウェルの部分を重ねることによって規定されることができる。特定の例では、チャネルは5ミクロンの特徴的な寸法を有することができ、特定の例の変形例では、チャネルは、0.5ミクロン~75ミクロンの範囲の特徴的な寸法を有することができる。
【0030】
[0037] さらに、ウェル120のアレイは、好ましくは、充填(packed)アレイで配列されるが、代替として、任意の他の適切な方法で配列され得る。一例では、ウェル120のアレイは、六角形の密充填アレイで配列されることができる。別の例では、ウェルのアレイは長方形のアレイで配列されることができる。別の例では、ウェル120のアレイは、例えば、ウェル120のアレイのある部分からウェル120のアレイの別の部分への流体の流れを容易にするために、任意の適切な不規則又は不均一な方法で配列されることができる。特定の例では、各ウェルの中心から、ウェルのアレイのうちの隣接するウェルの中心までの最短距離は約30ミクロンである。しかしながら、ウェルのアレイ120は、代替として、ウェル間の任意の適切な間隔で(例えば、充填構成又は非充填構成で)、及び、任意の他の適切な方法で配列されることができる。
【0031】
[0038] 図3に示すようなウェルのセットの特定の例示的な構成では、ウェルのアレイは、六角形の密充填構成で配列され、ウェルのアレイのうちの各ウェルは、基材の広い表面(例えば、表面平面118)に整列された六角形の開放表面を含む。さらに、各ウェルは、六角形の開放表面に対向するベース表面に六角形のフットプリントを含む。ウェルのアレイのうちの各ウェルは、六角形角柱を形成するウェルキャビティ128を有しており、ウェルキャビティ128は、約5ミクロンの厚さ、約40マイクロメートルの高さ及び約25マイクロメートルの特徴的な幅を有する壁のセットを含む。基材は、約150平方ミリメートルである基材の活性領域内に267000個のそうした六角形のウェルを規定する。しかしながら、ウェルのアレイは、他の任意の適切な方法で構成されることができる。
【0032】
1.3 システム-流体送達モジュール、熱制御モジュール及びイメージングサブシステム
[0039] システム100は、細胞の集団、粒子の集団、並びに/又は、処理試薬及び/若しくは分配流体などの別の流体を包含するサンプルをウェル120のアレイに移送するように機能し、かつ、基材110に結合されることができる流体送達モジュール140を含むことができる。したがって、流体送達モジュールは、システムの様々な部分への、システムの様々な部分からの、及び、システムの様々な部分全体への流体の移送を可能にする1以上の入口、出口、流体ガイド及び/又は構造を含むことができる。
【0033】
[0040] システム100は、システム100の動作中にウェルのセットの内容物の温度を及び/又は流体送達モジュールを制御するために、基材及びその内容物を加熱及び/又は冷却するように機能する熱制御モジュール190をさらに含むことができる。変形例では、熱制御モジュールは、対象の細胞及び/又は流体を包含する生物学的サンプルを加熱及び/又は冷却して、細胞の捕捉及び分析を容易にし、かつさらに、細胞溶解、プローブハイブリダイゼーションのための酵素活性化、及び、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの分子診断プロトコルのための生物学的サンプル混合物の熱循環などの、低温から高温への循環を必要とする反応を容易にするように機能することができる。熱制御モジュール190は、ヒータ、ヒートシンク、センサ、ファン及び1以上のプロセッサを備えることができるが、熱制御モジュールは、ウェルのアレイの温度を感知及び調整するための任意の適切な構成要素を、かつ、任意の指示(例えば、特定のアッセイに従って、ユーザ入力された、自動的に、事前設定された温度スケジュールなど)に従って、含むことができる。変形例では、熱制御モジュールのヒータ192は、好ましくは、生物学的サンプル及び/又は流体を制御可能に加熱及び冷却するように構成された薄いヒータ(例えば、ペルチェ素子)である。熱制御モジュール190は、追加及び/又は代替として、温度センサ、又は、温度制御を容易にするように構成された任意の他の適切な要素を含むことができる。例えば、温度センサは、熱伝導性基材、加熱素子又は板状ヒータに結合することができる。温度制御は、ファジー論理制御、比例積分微分アルゴリズム、又は、任意の他の適切な手段を通じたパルス幅変調を使用して有効にされることができる。温度制御は、1℃の分解能、又は、用途に応じた任意の他の適切な分解能で提供されることができる。
【0034】
[0041] システム100は、ウェルのセットの内容物を画像化するように機能し、かつさらに、ウェルのセットに捕捉された標的オブジェクト(例えば、CTC、標識細胞、ミクロスフェア)を、システム100内に導入されたサンプル内の他の細胞又はオブジェクトから区別するように機能することができるイメージングサブシステム194をさらに含むことができる。イメージングサブシステム194は、好ましくは、蛍光顕微鏡を含むが、追加又は代替として、任意の適切なイメージング機構(例えば、光学顕微鏡、CCDカメラ、フォトダイオードアレイ、発光ダイオード、反射器、1以上のプロセッサなど)を含むことができる。蛍光顕微鏡は、好ましくは、ウェルのセットのうちの1以上内の標的オブジェクトから放出される蛍光信号を検出し、かつそれによって、ウェルが標的オブジェクトを包含することを識別するように動作可能(例えば、識別モード、検出モードなどで)である。特定の例では、イメージングシステム(例えば、蛍光イメージングシステム)は、アッセイに従って処理されたサンプルのリアルタイム又はほぼリアルタイムの蛍光イメージングを提供するためのモードで動作可能であり得る。イメージングサブシステム194は、好ましくは、基材の下方に位置決めされ、かつ、基材の透明な(又は半透明の)材料を通じてウェルのセットの内容物を画像化するように配向され、代替として、イメージングサブシステム194は、基材の上方に位置決めされ、かつ、基材自体の材料によって遮られないウェルのセットの内容物を画像化するように配向され得る。しかしながら、イメージングサブシステム194は、他の任意の適切な方法で位置決めされることができる。
【0035】
[0042] システム100の構成要素の実施形態の他の態様は、2018年8月28日に出願された米国出願番号第16/115,059号でさらに詳細に説明されており、各々、この参照によってその全体が組み込まれる。
【0036】
2. 方法
[0043] 図4に示すように、単一細胞の捕捉及び処理のための方法200は、細胞のセットをウェルのセット内に受け取ることS210と、粒子のセットをウェルのセット内に受け取ることS220と、ウェルのセットに連通しているキャビティ内に洗浄流体を受け取り、それによって余分な粒子及び浮遊バイオマーカ(mRNA、タンパク質など)を洗い流すことS230と、細胞のセットに冷溶解緩衝液(温度<15℃)を適用することS250と、ウェルのアレイの各々をパーティショニングすることS260と、細胞のセットに溶解環境を提供することS270と、未結合の物質を洗い流すことS290と、を含む。さらに、方法100は、ウェルの内容物を浸漬することS240と、温度を調整する(例えば、温度を下げる)ことS280と、細胞物質(例えば、標的細胞物質)を処理することS299と、システム実施形態の説明に関連して上述した処理のいずれか、及び、任意の他の適切な処理のいずれか又はすべてを含むことができる。
【0037】
[0044] 方法200は、下流のサンプル処理ステップの性能を促進するために、標的物質(例えば、メッセンジャーリボ核酸[mRNA]、タンパク質など)の非特異的捕捉、及び/又は、システムのウェル間の標的物質の漏出を防止するように機能する。特定の捕捉の望ましい状態の一例が図6A(右、上)に示されており、かつ、非特異的捕捉及び漏出の望ましくない状態の例が図6A(右、下)に示されている。説明された方法の実施形態は、好ましくは、上述のセクション1で説明された1以上のシステムの実施形態、及び/又は、任意の他の適切なシステム構成要素によって実施される。
【0038】
2.1 方法-細胞及び粒子のローディング
[0045] 図4に示すように、方法200は、スライドのウェルのアレイ内に細胞のセット(標的細胞の亜集団を含む)を受け取ることS210を含み、一実施形態では、ブロックS210は、単一細胞フォーマットで、基材の表面平面に規定されたウェルのアレイ内に標的細胞を受け取ることを含み得、ウェルのアレイ内の各ウェルは、基材の表面平面に垂直にかつ表面平面内に延在する。ブロックS210は、上述した基材、ウェルのアレイ及び/又は流体送達モジュールの実施形態を使用して実施されることができる。ブロックS210は、追加又は代替として、他のシステム構成要素によって実施されることができる。
【0039】
[0046] 細胞のセットは、上述した対象の標的細胞、及び/又は、任意の他の適切な細胞、組織若しくは他の生物学的物質(例えば、非細胞生物学的物質)を含むことができる。図5Aに示すように、一変形例では、細胞のセットは、解離した組織から得られ、表面タンパク質の任意の抗体タグ付けとともに単一細胞懸濁液内に処理される。しかしながら、細胞のセットは、追加又は代替として、任意の他の適切な供給源から得られ、及び/又は、他の任意の適切な方法で処理され得る。細胞のセットには、(図6Bに示すような)同じ種又は異なる種の細胞を含めることもできる。
【0040】
[0047] 細胞のセットを受け取ることは、好ましくは、ウェルのアレイ全体で単一細胞フォーマットの細胞の捕捉を促進するために、スライドのウェルの数に対して細胞のセットをアンダーローディングすること(underloading)を含む(例えば、ウェルの占有率が10%未満を標的とする、ウェルの占有率が20%未満を標的とする、ウェルの占有率が30%未満を標的とするなど)。細胞ローディングのプロセスは、穏やかなローディングプロセス(例えば、重力ローディング、低遠心分離など)を使用することによって細胞の生存性を維持し、かつ、ローディング後の細胞の生存性を維持するように構成されている。細胞ローディングには、重力による侵入(例えば、ピペッティング)、低遠心分離、磁気引力、力の作用(例えば、スライドの広い面に平行な軸に沿った、スライドの広い面に対して垂直な軸に沿ったなど)、スライドの向きの変更(例えば、サイトスピニング、傾斜、ロッキングなど)、又は、任意の他の適切なプロセスのいずれか又はすべてが含まれることができる。第1例では、細胞のセットをローディングすることは、各々50~500マイクロリットルの間のアリコートをウェル内にピペット操作することを含む。細胞のセットをローディングすることは、任意の適切な緩衝液又は他の流体をローディングすることを含み得る。
【0041】
[0048] 図5Bに示すように、細胞のセットを受け取ることは、ウェルのアレイ全体にわたる細胞のセットの適切なローディングを観察するために、上述したイメージングサブシステムを使用して品質管理工程を実行することを含み得る。しかしながら、ブロックS210は、追加又は代替として、ウェルのアレイ全体にわたる細胞のセットの適切なローディングを決定するための任意の他の適切な品質管理工程(例えば、センサベースアプローチによる)を含むことができる。
【0042】
[0049] 図4図5C及び図6Cに示すように、方法200は、スライドのウェル内に粒子のセットを受け取り、それによって、ウェルのアレイ全体にわたって標的細胞のセット及び粒子のセットを共捕捉することS220をさらに含む。図面に示すように、ウェルのアレイのウェルは高アスペクト比であり、その結果、細胞のセットは下位領域のウェル内に位置するように構成され、かつ、粒子のセットは、ウェルの上位領域(単一細胞及び単一粒子を所望の状態で包含するウェルの場合)で細胞のセットの上方に位置するように構成され、それによって、ウェル内の同じ平面内での細胞及び粒子の横方向の位置決めを阻止する。しかしながら、ウェルは、ウェルのアレイ全体にわたる細胞のセット及び粒子のセットの共捕捉に関して、別の方法で構成されることができる。
【0043】
[0050] 粒子のセットは、好ましくは、細胞に関してオーバーローディングされる(例えば、ビーズ濃度は、細胞懸濁液中の細胞濃度よりも高い粒子懸濁液である)が、追加又は代替として、細胞に関してアンダーローディングされ、ウェルの数に関してオーバーローディングされ、ウェルの数に関してアンダーローディングされ、又は、その他の方法で(例えば、バッチで)ローディングされることができる。細胞濃度に対するビーズ濃度の比率は10:1~20:1であり得る。代替として、細胞濃度に対するビーズ濃度は、10:1未満、20:1以上、又は、他の任意の適切な比率であり得る。
【0044】
[0051] 粒子のセットを受け取ることは、好ましくは、細胞ローディングと粒子ローディングとの間の時間を短縮することが細胞の望ましくない溶解を阻止するように機能することができるので、ブロックS210で細胞のセットを受け取ることと同時に実行される(例えば、同時に、少なくとも部分的に時間的に重複するなど)。代替として、粒子のセットを受け取ることは、ブロックS210の後、S100の前、ブロックS210に関して時間遅延(例えば、5分未満、0~60分の間、60分超などの)、又は、任意の他の適切な時間に実行されることができる。粒子のセットを受け取ることは、細胞ローディング(例えば、重力ローディング)のための上述したローディングプロセスのいずれか又はすべて、若しくは、任意の他の適切なローディングプロセスを含むことができる。
【0045】
[0052] 一変形例では、細胞のセットが同じ穏やかなローディングプロセスを通じてウェル内にローディングされた後、粒子のセットが穏やかなローディングプロセス(例えば、重力ローディング)を通じてスライドのウェル内にローディングされる。特定の例では、細胞のセットはウェルのセットに関してアンダーローディングされ、粒子のセットは細胞のセットに関してオーバーローディングされた。
【0046】
[0053] 代替の変形例では、細胞のセット及び粒子のセットが共に(例えば、同じ懸濁液から)ローディングされる。しかしながら、ブロックS210及びS220は、追加又は代替として、任意の他の適切な順序又は方法で実行されることができる。
【0047】
[0054] 図5Cに示すように、粒子のセットを受け取ることは、ウェルのアレイ全体にわたる粒子のセット(例えば、細胞のセットに関して)の適切なローディングを観察するために、上述したイメージングサブシステムを使用して、品質管理工程を実行することを含み得る。しかしながら、ブロックS220は、追加又は代替として、ウェルのアレイ全体にわたる細胞のセットの適切なローディングを決定するための任意の他の適切な品質管理工程(例えば、センサベースアプローチによる)を含むことができる。
【0048】
2.2 方法-余分な粒子の除去及びウェルの浸漬
[0055] 図4及び図5Dに示すように、方法200は、任意選択的に、余分な粒子を洗い流すことS230を含むことができ、これは、ウェルの上方に浮遊する余分な粒子(例えば、ウェルの上方に完全に、ウェルから部分的に露出しているなど)を除去するように機能する。したがって、ブロックS230は、ウェルのアレイに連通しているキャビティ内に洗浄流体を受け取り、かつ、ウェルのアレイから離れるように粒子のセットの余分な粒子を伝達する際に、ウェルのアレイについて所望の状態を達成することを含む。ブロックS230は、追加又は代替として、任意の他の余分な物質(例えば、通常より速く溶解された細胞からの浮遊細胞物質、破片など)を除去するように機能することができる。ブロックS230で使用される1以上の洗浄剤は、任意の適切な緩衝液、液体(例えば、水、油など)、空気又は任意の他の適切な物質を含むことができる。洗浄流量は、好ましくは、ウェル内から物質(例えば、細胞、粒子、緩衝液、液体など)を除去することなく、ウェルの壁の上方の物質を除去するように構成され、追加又は代替として、洗浄流量は、1以上の洗浄緩衝液がウェルのセット内に入るのを阻止するように構成されることができる。したがって、洗浄は、好ましくは、層流プロセス(図5Dに示すように)で適用されるが、追加又は代替として、乱流を含む又は誘発することができる。流量は、好ましくは、毎秒100マイクロリットル未満であるが、代替として、毎秒100マイクロリットルと等しい、毎秒マイクロリットル超、又は、任意の他の適切な流量を有することができる。追加又は代替として、他の流れパラメータ(例えば、流れ持続時間)、構造パラメータ(例えば、1以上の流体経路の直径、流体経路の配列、ウェルのセットにわたる流体経路の位置、ウェルの高さ、ウェルの幅など)などの任意の他の適切なパラメータが、ウェルからの1以上の物質の流出を防止するように構成されることができる。
【0049】
[0056] 第1変形例では、流れの特徴的な長さスケールは、ウェルの特徴的な長さスケール(例えば、高さ、幅など)と同様のオーダである。
【0050】
[0057] 方法200は、任意選択的に、ウェルの内容物を浸漬することS240を含むことができ、これは、細胞が所望の時点の前(例えば、溶解緩衝液送達前、溶解緩衝液送達中など)に溶解することを防止し、細胞及び/又は粒子にウェルのセット内に沈降するための時間を与え又は任意の他の適切な機能を実行することを可能にするように機能する。ウェルは、洗浄緩衝液(例えば、余分な粒子を洗い流すために上で使用される)、異なる緩衝液(例えば、細胞及び/又は粒子のローディングに使用される初期緩衝液、細胞懸濁液緩衝液、粒子懸濁緩衝液など)、水、又は、任意の他の適切な流体に浸漬されることができる。ブロックS240は、ブロックS230の後、ブロックS230の前、ブロックS230の間に、方法中に複数回、又は、方法中の任意の適切な時点で実行されることができる。代替として、方法は、ブロックS240がない状態で実行されることができる。第1変形例では、ブロックS230の後、ウェルは4℃で11分間浸漬されるが、浸漬プロセスは、別の適切な温度、持続時間又は他の浸漬パラメータを使用して実行されることができる。
【0051】
2.3 方法-漏出防止のためのウェルパーティショニングによる細胞溶解
[0058] 図4図5E及び図6Dに示すように、方法200は、ウェルのアレイで溶解緩衝液を受け取り、それによって細胞に溶解緩衝液を送達することS250を含み、それが、細胞の溶解を開始し(例えば、即時の、時間遅延後のなど)、それによって標的細胞物質の放出が粒子のセットによって捕捉されることを可能にするように機能する。したがって、ブロックS250は、ウェルのアレイに流体連通するキャビティ(例えば、上述したリザーバ)内に溶解緩衝液を受け取る際に、細胞のセットに溶解環境を提供することに寄与することができる。溶解緩衝液は、好ましくは、ウェルから内容物を除去することなく溶解緩衝液がウェルに入ることを可能にするように構成された流れパラメータ(例えば、流速、流量、流れの持続時間など)と共に受け取られる。ブロックS250は、好ましくは、ウェルのセット上に(例えば、図1Bに示す方向でウェルのアレイの上方に位置するキャビティ又はリザーバ内に)溶解緩衝液を流すことを含むが、追加又は代替として、ウェルのセットを通じて溶解緩衝液を流すこと、ウェルのセットに直接(例えば、上方から、下方からなど)、若しくは、他の流体チャネル又は流路を使用して他の方法で細胞に溶解緩衝液を適用することを含む。好ましい変形例では、溶解緩衝液は、好ましくは、層流を通じて適用されるが、追加又は代替として、乱流を含む又は誘発することができる。溶解緩衝液は、好ましくは、ブロックS230で使用されるのと同じ流体マニホールド(例えば、流体リザーバ、流体経路、流体経路のセットに流体的に接続された流体リザーバなど)を通じて適用されるが、代替として、ウェルに流体的に接続された別の流体マニホールドが使用されることができる。追加又は代替として、以下で説明されている流体送達サブシステム(例えば、リザーバ、流体経路など)のいずれか又はすべてが使用されることができる:2018年7月27日に出願された米国出願番号第16/048,104号;2018年7月30日に出願された米国出願番号第16/049,057号;2017年11月22日に出願された米国出願番号第15/821,329号;2017年10月12日に出願された米国出願番号第15/782,270号;2018年7月30日に出願された米国出願番号第16/049,240号;及び、2018年8月28日に出願された米国出願番号第16/115,059号、それらの各々はこの参照によってその全体が組み込まれる。
【0052】
[0059] ブロックS250’に関して図6Dに示すように、溶解緩衝液は、好ましくは、冷却され(例えば、4℃まで、10℃未満まで、0℃~20℃まで、20℃超までなど)、これは、細胞及び/又はウェルのセットからの標的細胞物質(例えば、mRNA)の拡散時間を遅くするように機能する。ウェルの構造(例えば、深さ、幅、形状、形状など)は、追加又は代替として、mRNAの拡散時間を遅くするように構成されることができる。溶解緩衝液の濃度は、好ましくは、溶解緩衝液送達時間中の細胞溶解を防止するように構成される。溶解緩衝液は、好ましくは、以下のいずれか又はすべてなどの1以上の溶解剤を含む:トリトンX-100(例えば、1%、1%未満、1%超など)、デオキシコール酸ナトリウム[DOC](例えば、0.1%、0.1%未満、0.1%超など)、ドデシル硫酸ナトリウム[SDS](例えば、0.2%、0.2%未満、0.2%超など)、又は、その他の適切な溶解剤。追加又は代替として、溶解緩衝液は、トリス(例えば、100mM、100mM未満、100mM超、pH7.5、pH7.5未満、pH7.5超など)、塩化リチウム[LiCl](例えば、500mM、500mM未満、500mM超など)、エチレンジアミン四酢酸[EDTA](例えば、2mM、2mM未満、2mM超など)、ジチオスレイトール[DTT](例えば、5mM、5mM未満、5mM超など)、及び/若しくは、任意の他の適切な試薬又は成分、のいずれか又はすべてを含むことができる。
【0053】
[0060] 一変形例では、溶解緩衝液は、pH7.5の100mMのトリス、500mMのLiCl、1%のトリトンX-100、2mMのEDTA、0.1%のDOC、0.2%のSDS、及び5mMのDTTを含む。しかしながら、溶解緩衝液の変形例は、修正された成分及び/又は成分の濃度を含み得る。
【0054】
[0061] 図6Dに示すように、溶解緩衝液の滞留時間(例えば、S280までの時間、S290までの時間など)は、好ましくは60秒以下(例えば、5~60秒)、さらに好ましくは30秒以下(例えば、5~30秒、20秒、15秒、10秒、5秒など)である。代替として、滞留時間は、30秒超、60秒超、又は、他の適切な値を有することができる。
【0055】
[0062] 図6Dに関連して説明される一変形例では、溶解緩衝液は、溶解緩衝液送達時間中に十分な溶解剤がウェルのセットに送達されるが、細胞の溶解を開始するのに十分な長さではないように最適化される。追加又は代替として、溶解緩衝液は、ウェルに送達するのに十分な溶解剤を含むことができるが、標的細胞物質(例えば、mRNA)を放出するのに、標的細胞物質をウェルから拡散させるのに、又は、任意の他の適切な結果をもたらすのに十分な長さではない。適用される溶解緩衝液の量(例えば、体積、送達の時間など)は、溶解緩衝液の濃度、臨界溶解剤の拡散性、及び、マイクロウェル上での溶解緩衝液の滞留時間に基づいて決定されることが好ましいが、代替として、可変である又は他の方法で決定されることができる。別の実施形態では、溶解緩衝液は、その送達中に不活性状態にあり、かつ、熱、光、溶解反応開始剤の添加若しくは任意の他の適切なプロセス又は薬剤のいずれか又はすべてによってその後に活性化されるように構成される。さらに、ある実施形態では、溶解緩衝液は、マイクロウェル上のキャビティに入る前に15℃未満に予冷却される。
【0056】
[0063] 図4に示すように、方法200は、隣接するウェル及びそれらの内容物を互いに単離し、かつ、ウェルの外側(例えば、ウェルから上向きにドリフトする)及び別のウェル内への物質(例えば、標的細胞物質、細胞破片、粒子など)のドリフトを防止するように機能する、ウェルをパーティショニングすることS260をさらに含む。したがって、ブロックS260は、ウェルのアレイに流体連通しているキャビティ又はリザーバから溶解緩衝液をパーティショニング流体(例えば、ガス、非混和性液体)で置換する際に、ウェルのアレイの隣接するウェルからウェルのアレイの各々をパーティショニングすることを含むことができる。ブロックS260は、追加又は代替として、余分な溶解緩衝液(例えば、ウェルの外側の溶解緩衝液)を除去し、溶解緩衝液のインキュベーション期間中に隣接するウェルの分離を維持し、又は、任意の他の適切な機能を実行するように機能することができる。ブロックS260は、好ましくは、ブロックS250の実行中又はブロックS250の実行後の既定の期間(例えば、5~60秒後)に実行されるが、追加又は代替として、方法200の実行中の任意の他の適切な時間に実行されることができる。
【0057】
[0064] ブロックS260は、例えば、ウェルのアレイに流体連通しているキャビティ又はリザーバを有する、ウェル上に1以上のバリアを導入することを含むことができる。バリアは、物理的バリア、2次流体(例えば、パーティショニング流体)、又は、任意の適切なバリアを含むことができる。バリアは、ブロックS210、S220及び/又はS230のうちの1以上に関連して同じマニホールド内に導入されることができ、若しくは、他の方法で導入されることができる。2次流体は、気体、液体(例えば、非極性、極性、粘性、非粘性など)、コロイド、又は、任意の他の適切な流体のいずれか又はすべてを含むことができる。2次流体は、マイクロウェルのいずれかから流出する任意の標的バイオマーカに結合することができる標的バイオマーカスカベンジャを包含する非沈降粒子を含み得る。
【0058】
[0065] ブロックS260は、好ましくは、(例えば、流体経路サブシステムを通じて)パーティショニング流体(例えば、空気、油、緩衝液、水など)を、ウェルの各セットの近位(例えば、上方)に(例えば、S260’に関しては図6Eに示す配向で、S260”に関しては図6Fに示す配向で)分配することを含むみ、これは、バリア(例えば、半透性、非透過性、選択的透過性など)を形成して、ウェルがウェルから外にドリフトするのを防止するように機能する。一変形例では、パーティショニング流体(例えば、空気)は、パーティショニング流体の流量に基づいてこのバリアを達成する(例えば、S260’に関して図6Eに示す)。特定の例では、既定の閾値を超える流量でウェルのセット上にパーティション流体をポンプで送ることは、ウェル内の物質が上にドリフトしてウェルから出るのを防止するように機能する。追加又は代替として、流量は、物質が別のウェル内にドリフトする前に、壁の上方をドリフトする可能性のある物質を(例えば、水平方向に)除去するように機能することができる。第2変形例では、パーティション流体は、ウェルからの液体の蒸発を防止することによってバリアを達成する(例えば、長いインキュベーションステップ中)。これは、パーティション流体の密度(例えば、パーティション流体が溶解緩衝液よりも密度が低い場合)、パーティション流体の重量、パーティション流体によって達成される圧力、パーティション流体及び/又はスライド(例えば、冷却されたスライド)の温度、又は、任意の他の適切な特徴のいずれか又はすべてによって達成されることができる。
【0059】
[0066] ブロックS260は、好ましくは、垂直軸に沿って物質を仕切り(例えば、水平パーティションである)、パーティションは、ウェルのセットを規定する1以上の壁の高さに配置される。追加又は代替として、パーティションは、1以上の壁の高さより下(例えば、ウェル内)、1以上の壁の高さより上、可変高さ、又は、他の任意の適切な位置に確立されることができる。さらに追加又は代替として、ブロックS260は、水平軸に沿って、別の軸に沿って、又は、他の任意の適切な方法で、パーティショニング物質を含むことができる。第1変形例(例えば、図6E及び図6Fに示す)では、物質(例えば、図6Eのような空気及び図6Fのような油)は、垂直軸に沿って十分なパーティショニングを提供し、パーティションは、ウェルの壁の終端部分に対応する高さで確立される。
【0060】
[0067] ブロックS260は、少なくとも部分的に、スライドと相互作用する流体経路サブシステム(例えば、流体経路の位置及び配置、流体経路の数、流体経路の長さ、流体経路の直径、スライド内の流体経路サブシステム、スライドの外部の流体経路サブシステムなど)、及び/又は、流体経路サブシステムを通じた1以上の流体(例えば、緩衝液、空気、油など)の流れパラメータ(例えば、流量、流れ体積、流れ持続時間など)によって可能にされることができる。第1変形例では、流体経路サブシステムは、流体を流体マニホールドからウェルのセットの上方の領域に移送するように構成される。特定の例では、パーティション流体(例えば、空気、油、緩衝液、水など)を分配するように構成された流体経路が、ウェルのセットの壁の上方の空間と同様のサイズの直径を有する。さらに、流体経路は、パーティション流体がウェルのセットの上方の層流に分配されるように、ウェルのセットの上方に入口を規定することができる。第2変形例では、パーティション流体(例えば、空気、油など)の流量は、ウェルのセットの上方の空間を満たすように構成される(例えば、パーティション流体の分配の持続時間の少なくとも大部分の間、パーティション流体が分配される時間の80%超の時間など)。追加又は代替として、S600は、パーティション流体特性(例えば、密度、粘度など)、温度、又は、任意の他の適切な特性のいずれか又はすべてによって可能にされることができる。
【0061】
[0068] 変形例(例えば、図6E図6Gに示す、図6Gは、仕切られたウェル内の細胞溶解の態様も説明及び描写する)において、ブロックS260は、(例えば、ブロックS250から残っている)余分な溶解緩衝液(例えば、図6Eに示す)を除去し、かつ、ウェルを互いに仕切るように機能する、空気を分配すること(図6Eに示す)と、その後に、ウェルのセットからの液体又は他の内容物の蒸発を防止する又は1つのマイクロウェルから別のマイクロウェルへの分子の拡散を防止するように機能する、油を分配すること(図6Fに示す)と、を含む。代替の変形例では、空気のみが分配されるか、油のみが分配されるか、若しくは、他の流体又は流体の組み合わせが分配される。
【0062】
[0069] 図4及び図5Eに示すように、方法200は、細胞から標的細胞物質(例えば、mRNA)を放出するように機能する、細胞のセットに溶解環境を提供することS270を含むことができる。ブロックS270に関連して、各ウェルについて、標的細胞物質の少なくともサブセットが、その後、ウェル内の細胞と最初に共捕捉された粒子のプローブ(例えば、オリゴヌクレオチドフラグメント)に結合する。標的細胞物質のプローブへの結合は、好ましくは、標的細胞物質(例えば、mRNA)上に存在するポリ(A)、及び、粒子上に存在するポリ(T)を通じて達成される。しかしながら、粒子のプローブへの標的内容物の結合は、追加又は代替として、他の任意の適切な反応又はプロセスを通じて達成されることができる。
【0063】
[0070] ブロックS270は、好ましくは、ブロックS260に関連して説明されるようなバリア(例えば、油)が維持されている間に実行され、これは、細胞物質がソースウェルから隣接するウェル内に移動又は漏れるのを防ぐ。ある変形例では、これを可能にするために、パーティション流体の速度及び/又はパーティション流体のバリアが重要である。追加又は代替として、溶解緩衝液の既定のカクテルは、結合時間又は他の結合条件を維持するために重要である可能性がある。特定の例では、この方法は、標的細胞物質(例えば、mRNA)の溶解及び粒子のセットへの結合を既定の時間(例えば、15~30分、15分未満、30分超など)待つことを含む。
【0064】
[0071] 細胞が溶解される温度は、好ましくは、20℃~30℃である(例えば、室温、20℃~25℃、26℃など)。したがって、図6Gに関連して、ブロックS270’は、ウェルのアレイ内の内容物を保持しながら溶解を容易にするために、ウェルのアレイへの熱の伝達を含むことができる。代替として、細胞は、20℃未満、30℃超の温度、又は、他の任意の適切な温度で溶解されることができる。
【0065】
[0072] 第1変形例では、細胞は室温で15~30分にわたって溶解される。特定の例では、細胞は26℃で25分間にわたって溶解される。別の変形例では、細胞は、40℃又は50℃の温度で溶解され得る。
【0066】
2.4 方法-追加のステップ
[0073] 図4に示すように、方法200は、任意選択的に、温度を下げて浸漬することS280を含むことができ、これは、非結合標的細胞物質がウェルのセットから外側に移動すること(例えば、蒸発を通じて、拡散を通じてなど)を防止するように機能することができる。この温度は、好ましくは、0℃~5℃であり、かつ、浸漬時間は、好ましくは、5分~20分である。特定の例では、ブロックS280には、温度を2℃まで下げ、11分間にわたって保持することが含まれる。追加又は代替として、S800は任意の適切なパラメータで任意の他の適切なプロセスを含むことができる。
【0067】
[0074] 図4に示すように、方法200は、任意選択的に、溶解後の未結合標的細胞物質(例えば、非結合mRNA)を除去するように機能する未結合物質を洗い流すことS290を含むことができる。S900中のスライド温度は、好ましくは、室温に維持されるが、追加又は代替として、別の適切な温度、可変、室温又は任意の他の適切な温度に維持されることができる。S900は、好ましくは、(例えば、前のステップで使用されるような流体経路のいずれか又はすべてを通じて)洗浄緩衝液中を流れることを含む。洗浄緩衝液は、界面活性剤、好ましくはRNAase阻害剤を含むPBS(例えば、1%IGEPALを有するPBS)を含むことができる。追加又は代替として、他の任意の液体又は物質を使用して未結合物質を洗い流すことができる。洗浄流量は、好ましくは、ウェルからの浮遊標的細胞物質が、隣接するウェル内に拡散する機会がないように廃棄物リザーバにポンプで送られるように構成される。この流量は、一変形例では、毎秒50~1000マイクロリットルである。一実施形態では、未結合物質の洗浄は、粒子のセットへのmRNA物質のハイブリダイゼーション後、50マイクロリットル/秒を超える流量でウェルのアレイ上で非結合RNAを除去するように構成された洗浄緩衝液を流すことを含み得る。
【0068】
[0075] ブロックS290は、任意選択的に、好ましくは、空気中を流れることを通じて実行される(例えば、空気洗浄)、洗浄緩衝液を除去することを含むことができる。ブロックS290は、追加又は代替として、洗浄ビーズでウェルを洗浄することを含むことができ、洗浄ビーズは、移動性標的細胞物質に結合する(例えば、ウェルのセットの上方で浮遊する、ウェルのセット内で浮遊するなど)。洗浄ビーズのセットは、好ましくは磁性(例えば、オリゴd(T)磁性ビーズ、オリゴ(dT)磁性ビーズなど)であるが、追加又は代替として、非磁性であり得、任意の適切なプローブに結合するように構成され、又は、その他の方法で構成されることができる。したがって、洗浄ビーズは、システムからの、結合された不要な又は漏出した物質とともの洗浄ビーズの回収を容易にする組成物であり得る。
【0069】
[0076] 洗浄プロセスは、好ましくは、複数回(例えば、2回、3回、1~10回など)実行されるが、代替として、1回実行されることもでき、又は、方法は洗浄なしで実行されることができる。
【0070】
[0077] 第1変形例では、ブロックS290は、洗浄ビーズのない洗浄緩衝液でスライドを洗浄することを含む。第2変形例では、S900は、磁気洗浄ビーズのセットでスライドを洗浄することを含む。第1の特定の例では、1ミクロンの磁性オリゴd(T)ビーズが使用される。第2の特定の例では、8ミクロンの磁性オリゴd(T)ビーズが使用される。別の変形例では、洗浄緩衝液は、伸長不可能な塩基を包含するオリゴdTフラグメントを包含し得る。これらのオリゴdTフラグメントは、マイクロウェルに出て行くか又は残っている未結合標的mRNA分子に結合するが、結合後、オリゴdT配列の周りに非伸長性の塩基が存在するので、下流の逆転写中にCDNAに変換されることができない。
【0071】
[0078] 図4に示すように、方法は、任意選択的に、細胞の任意の処理S299を含むことができる。細胞は、ウェル内、ウェル外(例えば、個々の細胞が抽出された後、すべての細胞が抽出された後など)、若しくは、他の適切な位置又は位置の組み合わせで処理されることができる。
【0072】
[0079] 一変形例では、ブロックS299は、図5FにS299aとして示される、オンチップ逆転写酵素プロセスを含む第1工程を含む。第1例では、これは58℃の温度で16分間の持続時間で実行される。別の変形例では、オンチップ逆転写酵素プロセスは、そのマイクロウェルに仕切られている間、細胞の溶解の直後に実行される。このプロセスでは、逆転写試薬が、最適化されて溶解緩衝液カクテルと共に送達される。
【0073】
[0080] ブロックS299はまた、標的細胞物質に結合した粒子のセットを除去し、図5GにS299bとして示される、DNA配列決定のための物質を準備するための一連のステップに進むことを含み得る。一例では、これは、ウェルのアレイから粒子のセットを抽出すること(例えば、吸引プロセスを使用する、圧力駆動プロセスを使用する、磁気回収プロセスを使用する、重力又は遠心力関連プロセスを使用するなど)と、それらを残りの洗浄ビーズから分離すること(例えば、最初のビーズのセットを除去する前、最初のビーズのセットを除去した後など)と、を含む。
【0074】
[0081] ブロックS299は、追加又は代替として、他の任意の適切な処理及び分析ステップを行うことができる。これには、細胞の将来の処理(例、逆転写を通じて)、ポリメラーゼ連鎖反応配列決定(例、単一細胞ゲノム、DNA/RNA配列決定、ライブラリ調製、図5HにS299cとして示すなど)、データ分析、又は、任意の他の適切なプロセスのいずれか又はすべてが含まれる。
【0075】
[0082] 漏出をさらに防止するためのシステム構成に関連して、図7A及び図7Bは、隣接のウェルへのウェルの内容物の漏出の防止に関連する、基材全体の流体ネットワーク構成及び流れ方向の例を示す。図7Aは、ウェルのアレイの基材が、短軸と、長軸と、長軸に優先的に整列されてマイクロウェル領域に流体連通するキャビティに結合された1以上の流路を規定する流体チャネルのネットワークと、を含む第1構成を示している。図7Aに示す構成は、ウェルのアレイを横切る流体の移動がより長い距離の構成であるので、ウェルの内容物の漏出のより高いリスクに寄与する可能性がある。図7Bは、代替として、ウェルのアレイの基材が、短軸と、長軸と、短軸に優先的に整列されてマイクロウェル領域に流体連通するキャビティに結合された1以上の流路を規定する流体チャネルのネットワークと、を含む第2構成を示している。図7Bに示す構成は、ウェルのアレイを横切る流体の移動距離が短い構成であるので、ウェルの内容物の漏出のリスクを低減するのに役立つ。したがって、上述したブロックS230、S250、S260、S270及びS290に関連して、方法200は、マイクロウェルのアレイに連通する流体チャネルの構成に起因した移動のより短い距離に沿った流体チャネルのネットワーク内に、洗浄緩衝液、溶解緩衝液及びパーティショニング流体のうちの1以上を受け取ることを含むことができる。
【0076】
2.5 方法-例
[0083] 一例では、方法200は、マイクロウェルのセット内で細胞を捕捉することと、マイクロウェルのセットで20ミクロンの粒子(例えば、HDBB)を捕捉することと、余分な粒子を洗い流すことと、マイクロウェルを4℃で11分間にわたって浸漬することと、冷たい(例えば、4℃)溶解緩衝液を30秒以内流すことと、空気に続いて油を使用してウェルをパーティショニングすることと、室温で25分間にわたって細胞を溶解させることと、温度を2℃まで下げて、ウェルの内容物を11分間にわたって浸漬することと、洗浄緩衝液(例えば、RNAase阻害剤を含むPBS)に流すことと、空気洗浄剤を使用して最初の洗浄緩衝液を除去することと、もう一度洗浄緩衝液に流すことと、空気洗浄剤を使用して洗浄緩衝液を除去することと、オンチップ逆転写酵素を58℃で16分間にわたって実行することと、スライドから粒子を除去して配列決定及びデータ分析に進むことと、を含む。しかしながら、例の変形例は他の適切な方法で実行されることができる。
【0077】
[0084] 追加又は代替として、方法200は、任意の適切な順序で実行される任意の他の適切なプロセスを含むことができる。
【0078】
[0085] 図面は、好ましい実施形態に係る、システム、方法及びコンピュータプログラム製品、例示的な構成及びそれらの変形例の可能な実施のアーキテクチャ、機能及び動作を示している。この点、フローチャート又はブロック図の各ブロックは、特定された論理関数を実施するための1以上の実行可能命令を備える、モジュール、セグメント又はコードの一部を表し得る。ある代替の実施では、ブロックに示されている機能が、図面に示されている順序から外れて発生する可能性があることにも留意する必要がある。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際には実質的に同時に実行される場合があり、又は、関連する機能に応じて、ブロックが逆の順序で実行される場合がある。ブロック図及び/又はフローチャート図の各ブロック並びにブロック図及び/又はフローチャート図のブロックの組み合わせは、特定された機能又は動作若しくは特別な目的のハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせを実行する特別な目的のハードウェアベースのシステムによって実施されることができることにも留意されたい。
【0079】
[0086] 当業者は、前述の詳細な説明及び図面及び特許請求の範囲から、以下の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の好ましい実施形態に修正及び変更が加えられることができることを認識している。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
【図 】
図6G
図7A
図7B