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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】複合層凝集型吸着剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20240201BHJP
   C01B 39/22 20060101ALI20240201BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B01J20/18 D
C01B39/22
B01J20/30
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021577011
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2020098147
(87)【国際公開番号】W WO2020259595
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】201910560834.0
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高寧寧
(72)【発明者】
【氏名】王輝國
(72)【発明者】
【氏名】劉宇斯
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-534479(JP,A)
【文献】特開平2-175606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0221702(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101497022(CN,A)
【文献】国際公開第2015/057280(WO,A1)
【文献】特表2014-516305(JP,A)
【文献】特表2012-533427(JP,A)
【文献】特表2018-505772(JP,A)
【文献】特開2012-116723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/18
C01B 39/22
B01J 20/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合層凝集型吸着剤であって、低シリカX分子篩を含有する外側吸着剤層と高シリカX分子篩を含有する内側吸着剤層とを含み、前記低シリカX分子篩のシリカ/アルミナのモル比は2.07~2.18であり、前記高シリカX分子篩のシリカ/アルミナのモル比は2.2~2.5であり、前記吸着剤の総量に対して、前記吸着剤は95.0~100質量%の前記X分子篩と、0~5.0質量%の基質とを含み、前記吸着剤の前記X分子篩のカチオンサイトはIIA族金属により占有される、またはIA族金属およびIIA族金属により共同で占有される、
複合層凝集型吸着剤。
【請求項2】
前記吸着剤は95.0~99.5質量%の前記X分子篩と0.5~5.0質量%の前記基質とを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
前記吸着剤において、前記低シリカX分子篩の含有量が前記X分子篩の総量の5~40質量%であることを特徴とする、
請求項1に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記低シリカX分子篩はナノX分子篩自己凝集体であり、前記X分子篩自己凝集体の粒径は、1.0~3.0ミクロンであり、前記ナノX分子篩の結晶径は0.1~0.8ナノメートルであることを特徴とする、
請求項1に記載の吸着剤。
【請求項5】
前記高シリカX分子篩の結晶径は0.1~2.5ミクロンであることを特徴とする、
請求項1に記載の吸着剤。
【請求項6】
前記IIA族金属はBaであり、前記IA族金属はK、LiおよびNaのうち少なくとも1つであることを特徴とする、
請求項1に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記基質は、カオリン鉱物の原位置結晶化による形質転換後の残存物であることを特徴とする、
請求項1に記載の吸着剤。
【請求項8】
前記カオリン鉱物は、カオリナイト、ディッカイト、ナクル石、オーブンストーンおよびハロイサイトのうち少なくとも1つから選ばれることを特徴とする、
請求項7に記載の吸着剤。
【請求項9】
以下のステップを含む、請求項1または2に記載の吸着剤の製造方法:
(1)球体への圧延成形:高シリカX分子篩および粘着剤を、88~95:5~12の質量比で均一に混合し、回転盤の中に置いて水を吹きかけながら圧延し、固体凝集体を内核としての小さな球体に形成し、
その後、88~95:5~12の質量比で混合した低シリカX分子篩および粘着剤の粉末原料を添加し、水を吹きかけながら圧延し続けて、小さな球体の外層を形成し、
粒径が300~850ミクロンの小さな球体を得て、乾燥させた後、500~700℃で焼成するステップ、
(2)原位置結晶化:ステップ(1)で焼成された小さな球体を得て、アルカリ性溶液を用いて原位置結晶化処理を行い、その後乾燥させ、
前記アルカリ性溶液は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの混合溶液であり、
前記混合溶液中の水酸化物イオンの濃度は、0.1~3.0mol/Lであり、
/(Na+K)のモル比は、0.1~0.6であるステップ、
(3)イオン交換:IIA族金属の可溶性塩溶液、またはIIA族金属の可溶性塩およびIA族金属の可溶性塩の溶液を用いて、ステップ(2)において乾燥させた小さな球体に対してカチオン交換処理を行った後、乾燥させ、活性化する、ステップ。
【請求項10】
ステップ(1)において、球体に圧延している間、水の添加量は、固体粉末原料の総量の6~22質量%であることを特徴とする、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(1)において、前記X分子篩の総量において、前記低シリカX分子篩は、5~40質量%であることを特徴とする、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ性溶液を用いた、前記原位置結晶化の温度は、80~100℃であることを特徴とする、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(3)において、前記IIA族金属の可溶性塩および前記IA族金属の可溶性塩の混合溶液を用いて、ステップ(2)において乾燥した小さな球体をカチオン交換処理する、あるいは前記IIA族金属の可溶性塩溶液または前記IA族金属の可溶性塩溶液を用いて、ステップ(2)において乾燥した小さな球体を、それぞれカチオン交換処理することを特徴とする、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記IIA族金属の可溶性塩は、硝酸バリウムまたは塩化バリウムから選ばれ、
前記IA族金属の可溶性塩は、その硝酸塩およびその塩化物のうち少なくとも1つから選ばれることを特徴とする、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記IA族金属は、K、LiおよびNaのうち少なくとも1つであることを特徴とする、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記低シリカX分子篩は、X分子篩自己凝集体であり、その製造方法は、下記のステップを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法:
(i)シリコン原料、アルミニウム原料、水、および水酸化ナトリウムを、SiO/Al=2~25、NaO/Al=3~30、およびHO/Al=100~500のモル比で混合し、
混合物を、0~60℃で1~72時間熟成して指向剤を作製するステップ、
(ii)無機塩基、カリウム原料、アルミニウム原料、シリコン原料、ステップ(i)で作製した指向剤、および水を、均一に混合して分子篩合成体系を形成するステップ、
前記合成体系における原料のモル比は下記であり:
SiO/Al=2~2.5、MO/SiO=1.8~4.0、HO/SiO=40~96、K/(Na+K)=0.10~0.65、
ここで、MはNaおよびKであり、前記分子篩合成体系中のAlの総量に対する、前記指向剤中のAlの量のモル比は、0.01~2.0%である、
(iii)ステップ(ii)で得た前記分子篩合成体系を、50~120℃で2~72時間水熱結晶化し、
結晶化後に得た固体を、洗浄及び乾燥して、X分子篩自己凝集体を得るステップ。
【請求項17】
前記アルミニウム原料は、アルカリ度が低い、メタアルミン酸ナトリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびアルミン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アルカリ度が低いメタアルミン酸ナトリウム中のNaOの含有量は、7.6~23.7質量%であり、Alの含有量は7.0~15.0質量%であることを特徴とする、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、凝集型吸着剤およびその製造方法に関する。具体的に、X分子篩を活性成分とする吸着剤およびその製造方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
p-キシレン(PX)は重要な基礎化学工業原料物質であり、主にポリエステル繊維の生産に用いられる。現在、混合C芳香族炭化水素からp-キシレンを分離するために、吸着分離方法が工業において広く用いられている。吸着分離技術は、p-キシレンを選択的に吸着し得る吸着剤と、連続逆流模擬移動床吸着分離工程とを含む。中でも、高性能吸着剤の使用は、純度が高いp-キシレン製品を得る鍵である。
【0003】
工業用の吸着分離のためのp-キシレン吸着剤の活性成分の多くは、X分子篩である。X分子篩と粘土とを所定の比率で均一に混合し、球体への圧延成形、乾燥、焼成、及びカチオン交換を経て、小さな吸着剤球体を得る。圧縮強度、選択性、吸着容量、及び物質移動性能は、吸着剤を評価する重要な指標である。
【0004】
US3997620は、BaKXと比較すると、Sr2+及びBa2+を交換したX分子篩は、p-キシレン/m-キシレン(PX/MX)及びp-キシレン/o-キシレン(PX/OX)に対する低い選択性を有するが、p-キシレン/エチルベンゼン(PX/EB)及びp-キシレン/p-ジエチルベンゼン(PX/PDEB)に対する優位に改良された選択性有することを見出した。
【0005】
CN1275926Aは、凝集型沸石吸着剤を開示しており、活性成分は、1~1.15のSi/Alの原子比を有するX分子篩であり、粘着剤は、沸石化可能な粘土である。アルカリ処理後、比較的高い圧縮強度及び吸着容量を得るため、粘土は、X分子篩に転換され得る。
【0006】
CN1565718Aは、吸着剤の物質移動性能を改良し、かつ、吸着容量を向上するため、結晶径が0.1~0.4ミクロンの小さな結晶X分子篩を、吸着剤の活性成分として用いている。
【0007】
CN101497022Aには、凝集型吸着剤およびその製造方法が開示されている。当該方法において、孔形成剤が、吸着剤を製造するために混合粉末原料に添加され、故に、孔分布が集中した多数の結晶間孔が、形質転換後の吸着剤粒子に形成され、その結果、吸着剤の物質移動性能が有意に向上した。
【0008】
US3558732には、トルエンを脱着剤として使用して、混合C芳香族炭化水素からp-キシレンを吸着分離する体系が開示されており、使用した吸着剤の活性成分は、BaKX分子篩である。ベンゼンを脱着剤として用いた場合と比較すると、BaKX分子篩は、高い吸着選択性及び高い製品純度を示す。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、複合層凝集型吸着剤およびその製造方法を提供することである。当該吸着剤は、脱着剤として軽質芳香族炭化水素を使用して、C芳香族炭化水素からPXを吸着分離する工程に適し、優れた吸着選択性と良好な物質移動性能とを有する。
【0010】
本発明は、複合層凝集型吸着剤を提供する。当該複合層凝集型吸着剤は、低シリカX分子篩を含有する外側吸着剤層と高シリカX分子篩を含有する内側吸着剤層とを含み、前記低シリカX分子篩のシリカ/アルミナのモル比は2.07~2.18であり、前記高シリカX分子篩のシリカ/アルミナのモル比は2.2~2.5であり、前記吸着剤の総量に対して、前記吸着剤は95.0~100質量%の前記X分子篩と、0~5.0質量%の基質とを含み、前記吸着剤の前記X分子篩のカチオンサイトはIIA族金属により占有される、またはIA族金属およびIIA族金属により共同で占有される。
【0011】
本発明において、高シリカ/アルミナ及び低シリカ/アルミナのモル比の異なる2つのX分子篩を、複合層凝集型吸着剤の活性成分として使用し、高シリカX分子篩を含有する吸着剤を内層に配置し、低シリカX分子篩を含有する吸着剤を外層に配置する。前記複合層凝集型吸着剤は、C芳香族炭化水素からのPXの吸着分離に適し、軽質芳香族炭化水素は、脱着剤として使用され、分離する目的製品の純度を向上し得、吸着分離装置の生産能力を増加し得る。
【0012】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕実施例1により作製した低シリカX分子篩のX線回折(XRD)パターンである。
図2〕実施例1により作製した低シリカX分子篩の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図3〕実施例2により作製した低シリカX分子篩のSEM画像である。
図4〕実施例3より作製した高シリカX分子篩のXRDパターンである。
図5〕実施例3により作製した高シリカX分子篩のSEM画像である。
図6〕小規模の模擬移動床における吸着分離の模式図である。
【0013】
〔発明を実施するための形態〕
本明細書に記載の任意の実施形態は、本明細書に記載の1つ以上の他の実施形態と自由に組み合わせることができ、組み合わせにより生じた技術的解決法または技術的思想は、本発明の最初の公開または最初の記載の一部と見なされ、当該組み合わせが明らかに非合理的であると当業者が認定する場合を除いて、本明細書に開示されていない、または予期していなかった新たな内容と見なすべきではない。
【0014】
本発明の複合層凝集型吸着剤において、X分子篩(X型分子篩、X沸石、X型沸石とも呼ぶ)は、吸着活性成分である。具体的に、本発明において、内層としての高シリカX分子篩を含有する吸着剤(以下、内層と略称する場合がある)、および外層としての低シリカX分子篩を含有する吸着剤(以下、外層と略称する場合がある)を使用して、複合層吸着剤を製造する。
【0015】
本発明の複合層凝集型吸着剤において、外層における吸着剤は、低シリカ/アルミナのモル比のX分子篩(低シリカX分子篩)を含み、エチルベンゼン(EB)に対するよりもp-キシレン(PX)に対する吸着剤の吸着選択性の向上に有利であるため、吸着分離する際、外層における吸着剤は、吸着剤におけるエチルベンゼンの吸着をより少なくすることができる。一方、内層における吸着剤は、高シリカ/アルミナのモル比のX分子篩(高シリカX分子篩)を含み、m-キシレン(MX)に対するよりもp-キシレンに対して、および、o-キシレン(OX)に対するよりもp-キシレンに対して、より高い吸着選択性を提供でき、その結果、C芳香族炭化水素からのPXの吸着分離における複合層吸着剤の全体としての性能が、向上され得る。
【0016】
本発明の吸着剤において、吸着剤の総量に対するX分子篩の含有量は、吸着剤に含まれるX分子篩の総含有量を指し、高シリカX分子篩、低シリカX分子篩、およびカオリン鉱物の形質転換後に生成されたX分子篩を含む。基質の含有量は、内層および外層に含まれる基質の総量を指す。さらに、X分子篩のカチオンサイトは、複合層凝集型吸着剤に含まれるX分子篩中の全てのカチオンサイトを指す。
【0017】
随意的に、本発明に記載の複合層凝集型吸着剤は、95.0~99.5質量%のX分子篩と0.5~5.0質量%の基質とを含む。さらに、前記複合層凝集型吸着剤は、97.0~99.5質量%のX分子篩と0.5~3.0質量%の基質とを含み得る。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、複合層凝集型吸着剤中の低シリカX分子篩の含有量は、前記X分子篩の総量の5~40質量%であり、好ましくは、X分子篩の総量の10~40質量%である。
【0019】
本発明において、外層中の低シリカX分子篩は、シリカ/アルミナのモル比が2.07~2.18である。外層中の低シリカX分子篩は、好ましくは、X分子篩自己凝集体であり、当該自己凝集体は、小さい結晶径を有するナノスケールX分子篩結晶の凝集によって、形成される。当該自己凝集体の粒径は、好ましくは、1.0~3.0ミクロンであり、より好ましくは1.0~2.0ミクロンである。ナノスケールX分子篩の結晶径は、好ましくは0.1~0.8ナノメートルである。
【0020】
本発明において、内層中の高シリカX分子篩は、シリカ/アルミナのモル比が2.2~2.5であり、好ましくは2.2~2.4である。本発明の一実施形態において、前記高シリカX分子篩の結晶径は、好ましくは、0.1~2.5ミクロンであり、より好ましくは0.5~2.0ミクロンである。
【0021】
本発明において、吸着剤中の基質は、カオリン鉱物の原位置結晶化による形質転換後の残存物である。カオリン鉱物は、カオリナイト、ディッカイト、ナクル石、オーブンストーン、およびハロイサイトのうち少なくとも1つから選ばれる。
【0022】
本発明の吸着剤において、X分子篩のカチオンサイトは、IIA族金属により占有される、またはIA族金属およびIIA族金属により共同で占有される。IIA族金属は、好ましくはBaであり、IA族金属は、好ましくはK、LiおよびNaのうち少なくとも1つである。X分子篩のカチオンサイトが、BaイオンとIA族金属のイオンにより共同で占有される場合、IA族金属の酸化物に対する酸化バリウムのモル比(酸化バリウム/IA族金属の酸化物)は、2~60であり、好ましくは5~46である。
【0023】
本発明の前記複合層吸着剤は、好ましくは小さな球体の形をし、前記小さな球体の平均粒径は、好ましくは300~850ミクロンである。
【0024】
本発明の前記吸着剤の製造方法は、以下のステップを含む:
(1)球体への圧延成形:高シリカX分子篩および粘着剤を、88~95:5~12の質量比で均一に混合し、回転盤の中に置いて水を吹きかけながら圧延し、固体凝集体を内核としての小さな球体に形成し、
その後、88~95:5~12の質量比で混合した低シリカX分子篩および粘着剤の粉末原料を添加し、水を吹きかけながら圧延し続けて、小さな球体の外層を形成し、
粒径が300~850ミクロンの小さな球体を得て、乾燥させた後、500~700℃で焼成するステップ、
(2)原位置結晶化:ステップ(1)で焼成された小さな球体を得て、アルカリ性溶液を用いて原位置結晶化処理を行い、その後乾燥させ、
前記アルカリ性溶液は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの混合溶液であり、
前記混合溶液中の水酸化物イオンの濃度は、0.1~3.0mol/Lであり、
/(Na+K)のモル比は、0.1~0.6であるステップ、
(3)イオン交換:IIA族金属の可溶性塩溶液、またはIIA族金属の可溶性塩およびIA族金属の可溶性塩の溶液を用いて、ステップ(2)において乾燥させた小さな球体に対してカチオン交換処理を行った後、乾燥させ、活性化する、ステップ。
【0025】
上述の方法において、ステップ(1)は、X分子篩および粘着剤に対し、球体へ圧延することによって、成形を行う。球体に圧延している間、異なるシリカ/アルミナのモル比を有するX分子篩をそれぞれ粘着剤と混合し、2つの連続する一群に分けて、球体に圧延することによって成形する。すなわち、高シリカX分子篩および粘着剤の混合物を、内核(すなわち内側吸着剤層)としての小さな球体に圧延し、続いて、低シリカX分子篩および粘着剤の混合物を添加して、小さな球体の外層(すなわち外側吸着剤層)を形成するために圧延する。
【0026】
本発明の一実施形態において、ステップ(1)における球体への圧延成形に用いた低シリカX分子篩の量は、前記X分子篩の総量の5~40質量%であり、好ましくは10~40質量%である。ステップ(1)の球体への圧延成形に用いた、粘着剤に対する高シリカX分子篩の質量比は、好ましくは10~15:1であり、用いた粘着剤に対する低シリカX分子篩の質量比は、好ましくは10~15:1である。
【0027】
本発明の一実施形態において、粘着剤はカオリン鉱物である。カオリン鉱物は、カオリナイト、ディッカイト、ナクル石、オーブンストーン、ハロイサイトまたはこれらの混合物から選ばれる。カオリン鉱物における結晶物質の質量分率は、少なくとも90%であり、好ましくは93~99%である。
【0028】
本発明の一実施形態において、ステップ(1)における球体への圧延成形用装置は、回転盤、塗膜釜、またはローラーであってもよい。球体に圧延成形している間、均一に混合した固体原料物質を回転装置に入れ、水を吹きかけながら圧延して、固体粉末付着物及び固体粉末凝集体を小さな球体に形成した。球体に圧延している間、水の添加量は、固体粉末原料の総量の6~22質量%であり、好ましくは6~16%である。
【0029】
ステップ(1)の球体への圧延成形後に得た球体は、ふるい分けされ、粒径が300~850ミクロンの小さな球体を得て、乾燥させた後、500~700℃で焼成して吸着剤前駆体を得る。乾燥温度は、好ましくは60~110℃であり、乾燥時間は、好ましくは2~12時間である。本発明の一実施形態において、焼成温度は、好ましくは520~600℃であり、焼成時間は、好ましくは1.0~6.0時間である。焼成した後、小さな球体中のカオリン鉱物は、メタカオリンに形質転換され、ステップ(2)において、X分子篩への原位置形質転換を促進する。
【0030】
本発明の前記方法において、ステップ(2)は、ステップ(1)で作製した小さな球体を原位置結晶化するステップであり、原位置結晶化に用いたアルカリ性溶液は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの混合溶液であり、水酸化物イオンの濃度は、好ましくは0.2~1.6mol/Lであり、K/(Na+K)のモル比は、好ましくは0.15~0.45である。
【0031】
ステップ(2)において、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの混合溶液を用いた、カオリン鉱物の原位置結晶化のための液体/固体比は、1.5~5.0L/kgであることが好ましい。Xタイプの分子篩へのカオリン鉱物の原位置結晶化のための結晶化温度は、好ましくは80~100℃であり、より好ましくは85~100℃であり、原位置結晶化時間は、好ましくは0.5~8時間である。原位置結晶化後の小さな球体は、乾燥され、乾燥温度は、60~110℃であることが好ましく、乾燥時間は、2~12時間であることが好ましい。
【0032】
本発明の前記方法において、ステップ(3)は、ステップ(2)において乾燥させた小さな球体に対してカチオン交換を行うステップである。IIA族金属は、好ましくはBaである。IIA族金属の可溶性塩は、好ましくは硝酸バリウムまたは塩化バリウムである。IA族金属の可溶性塩は、好ましくは、その硝酸塩およびその塩化物のうち少なくとも1つである。IA族金属は、好ましくはK、LiおよびNaのうち少なくとも1つである。
【0033】
ステップ(3)におけるカチオン交換は、釜型容器またはカラム型容器の中で行ってもよく、連続的に交換するために、カラム型容器の中で行うことが好ましい。交換温度は、好ましくは40~120℃であり、より好ましくは85~95℃である。交換時間は、好ましくは5~25時間であり、より好ましくは8~16時間である。交換の液空間速度は、好ましくは0.2~10時間-1であり、より好ましくは2~8時間-1である。
【0034】
本発明の一実施形態において、複合層凝集型吸着剤は、IIA族金属から選ばれたイオン及びIA族金属から選ばれたイオンの両方を含有する場合、ステップ(2)において乾燥された小さな球体に対し、IIA族金属の可溶性塩およびIA族金属の可溶性塩の混合溶液を用いて、同時にカチオン交換処理をしてもよく、IIA族金属の可溶性塩溶液およびIA族金属の可溶性塩溶液をそれぞれ調製し、その後、ステップ(2)において乾燥された小さな球体を、最初にIIA族金属のイオンを用いて、その後IA族金属のイオンを用いて、あるいは、最初にIA族金属のイオンを用いて、その後IIA族金属のイオンを用いて、それぞれカチオン交換処理を行ってもよい。
【0035】
ステップ(3)においてカチオン交換した小さな球体を洗浄し、乾燥し、活性化して、ナトリウムイオンおよび水を除去し、複合層凝集型吸着剤を得る。
【0036】
ステップ(3)における乾燥及び活性化は、流動する熱い空気または窒素の中で行ってもよい。乾燥温度は、好ましくは40~120℃であり、より好ましくは60~110℃である。乾燥時間は、好ましくは5~60時間であり、より好ましくは18~40時間である。活性化温度は、好ましくは150~250℃であり、より好ましくは160~220℃である。活性化時間は、好ましくは5~20時間であり、より好ましくは5~10時間である。
【0037】
本発明において、前記低シリカX分子篩は、好ましくはX分子篩自己凝集体であり、その製造方法は、以下のステップを含む:
(i)シリコン原料、アルミニウム原料、水、および水酸化ナトリウムを、SiO/Al=2~25、NaO/Al=3~30、およびHO/Al=100~500のモル比で混合し、
混合物を、0~60℃、好ましくは20~50℃で1~72時間熟成して指向剤を作製するステップ、
(ii)無機塩基、カリウム原料、アルミニウム原料、シリコン原料、ステップ(i)で作製した指向剤、および水を、均一に混合して分子篩合成体系を形成するステップ、
前記合成体系における原料のモル比は下記であり:
SiO/Al=2.0~2.5、MO/SiO=1.8~4.0、HO/SiO=40~96、K/(Na+K)=0.10~0.65、
ここで、MはNaおよびKであり、前記分子篩合成体系中のAlの総量に対する、前記指向剤中のAlの量のモル比は、0.01~2.0%であり、好ましくは0.1~1.0%である、
(iii)ステップ(ii)で得た前記分子篩合成体系を、50~120℃で2~72時間水熱結晶化し、
結晶化後に得た固体を、洗浄及び乾燥して、X分子篩自己凝集体を得るステップ。
【0038】
前記方法のステップ(i)において、シリコン原料、アルミニウム原料、水および水酸化ナトリウムは、好ましくは、SiO/Al=8~21、NaO/Al=10~25、及びHO/Al=100~400のモル比で混合される。
【0039】
前記方法のステップ(ii)において、合成体系における原料のモル比は、好ましくは下記である:SiO/Al=2.0~2.5、MO/SiO=2.5~4.0、及びHO/SiO=50~80。K/(K+Na)は、好ましくは0.2~0.5である。
【0040】
本発明の高シリカX分子篩は、従来の方法で製造してもよい。前記高シリカX分子篩は、以下の方法によって製造することが好ましく、当該方法は以下のステップを含む:
(ii-1)無機塩基、アルミニウム原料、シリコン原料、ステップ(i)で作製した指向剤、および水を均一に混合して分子篩合成体系を形成するステップ、
前記合成体系における原料のモル比は下記であり:
SiO/Al=2.5~3.0、NaO/SiO=0.7~1.8、HO/SiO=40~96、
ここで、分子篩合成体系中のAl総量に対する、前記指向剤中のAlの量のモル比は、0.01~2.0%であり、好ましくは0.1~1.0%である、
(iii-1)ステップ(ii-1)で得た分子篩合成体系を、50~120℃で2~72時間水熱結晶化し、
本発明の前記高シリカX分子篩を得るために、結晶化後に得た固体を、洗浄および乾燥するステップ。
【0041】
X分子篩を製造する前記方法において、分子篩の合成に用いるアルミニウム原料は、アルカリ度が低い、メタアルミン酸ナトリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびアルミン酸ナトリウムのうち少なくとも1つから選ばれる。アルカリ度が低い、メタアルミン酸ナトリウム中のNaOの含有量は、7.6~23.7質量%であり、好ましくは8~14質量%である。Alの含有量は、好ましくは7.0~15.0質量%である。
【0042】
X分子篩を製造する前記方法において、分子篩の合成に用いるカリウム原料は、水酸化カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウム、および硫酸カリウムのうち少なくとも1つから選ばれる。
【0043】
X分子篩を製造する前記方法において、分子篩の合成に用いるシリコン原料は、オルトケイ酸エチル、シリカゾル、水ガラス、ケイ酸ナトリウム、シリカゲル、およびホワイトカーボンブラックのうち少なくとも1つから選ばれる。
【0044】
X分子篩を製造する前記方法において、無機塩基は、好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0045】
X分子篩を製造する前記方法において、分子篩合成体系を水熱結晶化する温度は、好ましくは70~100℃であり、より好ましくは80~100℃である。水熱結晶化する時間は、好ましくは3~24時間である。
【0046】
本発明によって提供される複合層吸着剤は、C芳香族炭化水素からp-キシレンを液相吸着分離することに適し、吸着分離に用いる脱着剤は、トルエンであることが好ましい。液相吸着分離は、直列に接続された複数のカラム内で行ってもよいし、ロータリーバルブまたは電磁弁群を用いることによって成立した模擬移動床において行ってもよい。吸着分離の運転圧力は、0.3~1.5MPaであり、運転温度は、120~180℃である。
【0047】
吸着剤の性能を評価する3つの重要な指標は、吸着容量、選択性、ならびに分離する目的製品(例えば、p-キシレン)の吸着速度および脱離速度である。
【0048】
吸着剤の吸着性能を評価するため、ダイナミックパルス実験装置を用いて、吸着剤の吸着選択性および分離する目的製品の吸着速度および脱離速度を測定してもよい。当該装置は、原料供給システム、吸着カラム、加熱炉、圧力制御バルブ等を備える。吸着カラムは、Φ6×1800mmのステンレス鋼管である。吸着カラムの下端入口は、原料および窒素の供給システムと接続され、上端出口は、圧力制御バルブと接続されてから、廃液収集器と接続されている。
【0049】
吸着剤の吸着選択性の測定方法は、以下である:
秤量された粒径が300~850μmの測定用吸着剤粒子を吸着カラムに装填し、吸着剤粒子同士をぎっしり詰め、160~190℃で窒素雰囲気下において脱水することにより活性化する;
次に、脱着剤を供給して、システムにおける気体を排除する。システムの圧力を0.8MPaまで上昇させ、温度を145℃まで上昇させ、脱着剤の供給を停止する。1.0時間-1の容積測定の空間速度で8mLのパルス原料供給液を供給し、原料供給液は、非吸着トレーサを含む。次に、同様の容積測定の空間速度で脱着剤を供給し、2分ごとに3滴の脱着液サンプルを取り、ガスクロマトグラフィーによって分析する。脱着用脱着剤の体積を横軸とし、パルス原料供給液の各成分の濃度を縦軸として、パルス原料供給液の各成分の脱着曲線を描く。中でも、吸着システムの死体積を得るために、非吸着トレーサが用いられ得る。トレーサの半ピーク幅の中点をゼロポイントとし、各成分の半ピーク幅の中点からゼロポイントまでの全補正保持容量Rを測定する。任意成分の全補正保持容量は、吸着均衡時の分配係数と正比例となり、各成分と吸着剤との間の作用力を表わしている;
2つの成分の全補正保持容量比は、選択性βであり、例えば、EBの全補正保持容量に対するPXの全補正保持容量比は、EBへの吸着剤の吸着性能に対するPXへの吸着剤の吸着性能の比であり、EBと比較したPXの吸着選択性であり、βP/Eとして記される;
MXの全補正保持容量に対するPXの全補正保持容量比は、MXへの吸着剤の吸着性能対するPXへの吸着剤の吸着性能の比であり、MXと比較したPXの吸着選択性であり、βP/Mとして記される;
OXの全補正保持容量に対するPXの全補正保持容量比は、OXへの吸着剤の吸着性能対するPXへの吸着剤の吸着性能の比であり、OXと比較したPXの吸着選択性であり、βP/Oとして記される。
【0050】
PXの吸着速度および脱着速度と、PXとT(トルエン)との間の吸着選択性とを表わすため、PXの吸着速度[S10-90および脱着速度[S90-10を用いる。吸着速度[S10-90は、PXのパルス脱着曲線におけるPXの濃度が10%から90%に上昇する際に必要とされる脱着剤の体積であり、脱着速度[S90-10は、脱着曲線におけるPXの濃度が90%から10%に低下する際に必要とされる脱着剤の体積であり、[S10-90/[S90-10の比は、PXと脱着剤との間の吸着選択性βPX/Tとして定義される。
【0051】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0052】
実施例において、トルエン気相吸着実験を用いて、吸着剤の吸着容量を測定する。具体的な操作方法は、以下である:
トルエンが吸着均衡に達するまで、トルエンを運んでいる窒素(トルエンの分圧は0.5MPa)と、所定の質量の吸着剤とを、35℃で接触させる。トルエンの吸着前後の吸着剤の質量の差分に基づき、以下の式により被測定吸着剤の吸着容量を算出する。
【数1】
【0053】
Cは吸着容量であり、単位はmg/gである;
は、トルエンを吸着する前の被測定吸着剤の質量であり、単位はグラムである;
は、トルエンを吸着した後の被測定吸着剤の質量であり、単位はグラムである。
【0054】
吸着剤の吸着性能の測定方法:
50グラムの吸着剤を、液相パルス実験に供し、PXの吸着選択性、ならびに吸着速度および脱着速度を測定する。実験に用いる脱着剤は、30体積%のトルエン(T)および70体積%のn-ヘプタンである。パルス原料供給液の成分は、それぞれ5体積%を占める、エチルベンゼン(EB)、p-キシレン(PX)、m-キシレン(MX)、o-キシレン(OX)、n-ノナン(NC9)、および75体積%の脱着剤であり、n-ノナンはトレーサである。
【0055】
(実施例1)
以下の実施例では、本発明の低シリカX分子篩を作製した。
【0056】
(1)指向剤の作製
【0057】
4.02kgの水酸化ナトリウム、7.81kgの脱イオン水、5.32kgのアルカリ度が低いメタアルミン酸ナトリウム溶液(9.99質量%のAl含量、および10.93質量%のNaO含量を含む、以下同様)および23.24kgの水ガラス(20.17質量%のSiO含量、および6.32質量%のNaO含量を有する、以下同様)を反応釜に添加し、均一に撹拌混合し、静置させ、35℃で24時間熟成させて指向剤を得た。指向剤中の各原料のモル比は、SiO/Al=15、NaO/Al=16、HO/Al=320であった。
【0058】
(2)低シリカX分子篩の作製
7.50kgの水酸化ナトリウム、8.67kgの水酸化カリウム、51.59kgの脱イオン水、35.16kgのアルカリ度が低いメタアルミン酸ナトリウム溶液、23.30kgの水ガラス、および0.54kgのステップ(1)で作製した指向剤を、反応釜に添加し、均一に撹拌混合して分子篩合成体系を形成した。分子篩合成体系の各原料の総モル比は、以下であった:
SiO/Al=2.30、MO/SiO=3.25、HO/SiO=70、
ここで、Mは、KおよびNaであり、K/(K+Na)=0.30、分子篩合成体系中のAlの総量に対する、添加した指向剤中のAlの量のモル比は、0.2%であった。
【0059】
続けて、前述した分子篩合成体系を30分間、連続的に撹拌し、乳白色のゾルを形成した。それを反応釜に移し、95℃で12時間水熱結晶化し、濾過した。生じた固体を、濾過液がpH=8~9になるまで脱イオン水で洗浄し、80℃で12時間乾燥させて低シリカX分子篩aを得た。図1に示したXRDパターンは、純X分子篩であることを明らかにし、図2に示した走査型電子顕微鏡写真(SEM)は、低シリカX沸石がX分子篩結晶粒の自己凝集体であることを明らかにした。自己凝集体の粒径は、1.4ミクロンであり、自己凝集体中のX分子篩結晶粒子の粒径は、0.6ナノメートルであり、X線蛍光(XRF)によって測定したシリカ/アルミナのモル比は、2.09であった。
【0060】
(実施例2)
以下を除いて、実施例1の方法に基づいて低シリカX分子篩を作製した:
ステップ(2)において、5.84kgの水酸化ナトリウム、11.56kgの水酸化カリウム、53.73kgの脱イオン水、32.35kgのアルカリ度が低いメタアルミン酸ナトリウム溶液、23.33kgの水ガラス、および0.49kgのステップ(1)で作製した指向剤を、反応釜に添加し、均一に撹拌混合して分子篩合成体系を形成した。分子篩合成体系中の各原料の総モル比は、以下であった:
SiO/Al=2.50、MO/SiO=3.25、HO/SiO=70、
ここで、MはKおよびNaであり、K/(K+Na)=0.40、分子篩合成体系中のAlの総量に対する、添加した指向剤中のAlの量のモル比は、0.2%であった。
【0061】
分子篩合成体系を水熱結晶化し、濾過し、洗浄し、乾燥して、低シリカX分子篩cを得た。純X分子篩であることを明らかにしたXRD、図3に示された走査型電子顕微鏡写真(SEM)は、低シリカX沸石がX分子篩の結晶粒の自己凝集体であることを明らかにした。自己凝集体の粒径は、1.3ミクロンであり、自己凝集体のX分子篩結晶粒子の粒径は、0.5ナノメートルであり、XRFによって測定されたシリカ/アルミナのモル比は、2.16であった。
【0062】
(実施例3)
本発明の高シリカX分子篩の作製
【0063】
1.07kgの水酸化ナトリウム、58.40kgの脱イオン水、30.18kgのアルカリ度が低いメタアルミン酸ナトリウム溶液、23.34kgの水ガラス、および0.46kgの実施例1のステップ(1)で作製した指向剤を、反応釜に添加し、均一に撹拌混合して分子篩合成体系を形成した。分子篩合成体系の各原料の総モル比は以下であった:
SiO/Al=2.70、NaO/SiO=1.25、HO/SiO=70、
分子篩合成体系中のAlの総量に対する、添加した指向剤中のAlの量のモル比は、0.2%であった。
【0064】
続けて、前述した分子篩合成体系を30分間、連続的に撹拌し、乳白色ゾルを形成した。それを反応釜に移し、95℃で12時間水熱結晶化し、濾過した。生じた固体を、濾過液がpH=8~9になるまで脱イオン水で洗浄し、80℃で12時間乾燥させて高シリカX分子篩bを得た。図4に示されたXRDパターンは、純X分子篩であることを明らかにした。図5に示された走査型電子顕微鏡写真(SEM)は、結晶粒子の粒径が1.0ミクロンであることを明らかにした。自己凝集体はほぼ形成しておらず、XRFによって測定したシリカ/アルミナのモル比は、2.26であった。
【0065】
(実施例4)
本発明の複合層吸着剤の作製
【0066】
(1)球体への圧延成形:88kg(焼成ベースの質量、以下同様)の実施例3で作製した高シリカX分子篩b、および6.62kgのカオリン(結晶化物質の含有量は90質量%、以下同様)を均一に混合して混合物Iを得た。5kgの実施例1で作製した低シリカX分子篩aおよび0.38kgのカオリンを、均一に混合して混合物IIを得た。混合物Iを回転盤の中に置いて適量の脱イオン水を吹きかけながら圧延し、固体粉末凝集体を内核としての小さな球体に形成した;
次に、混合物IIを添加し、水を連続的に吹きかけながら前記混合物を圧延することによって、成形し、小さな球体の外層を形成した。圧延している間に吹きかける水の量は、固体粉末の総質量の8質量%であった。ふるい分けをした後、粒径が300~850ミクロンの小さな球体を得て、80℃で10時間乾燥し、540℃で4時間焼成した。
【0067】
(2)原位置結晶化:64kgのステップ(1)で焼成された小さな球体を、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの混合溶液200リットルに入れ、混合溶液中の水酸化物イオンの濃度は、0.3mol/Lであり、K/(Na+K)のモル比は、0.2であり、原位置結晶化処理は、95℃で4時間行われ、洗浄液のpHが10未満になるまで、結晶化後の固体を水で洗浄し、80℃で10時間乾燥させた。
【0068】
(3)イオン交換:ステップ(2)で乾燥された130mLの小さな球体を、イオン交換カラムに充填して、カチオン交換を行った。0.18mol/Lの硝酸バリウムと、0.07mol/Lの塩化カリウムとの混合溶液を用いて、6.0時間-1の容積測定の空間速度、0.1MPa、94℃で8時間、連続交換を連続的に行った。混合溶液の総量は、5000mLであった。イオン交換が完了後、700mLの脱イオン水を用いて、70℃で固体を洗浄し、70℃において、窒素雰囲気下で30時間乾燥し、180℃で6時間、窒素雰囲気下で脱水及び活性化を行い、吸着剤Aを作製した。吸着剤Aの内層は、高シリカX分子篩を含有する内側吸着剤層であり、外層は、低シリカX分子篩を含有する外側吸着剤層であった。X分子篩の含有量は、98.6質量%であり、基質の含有量は、1.4質量%であり、吸着剤中のKOに対するBaOのモル比は、36であった。
【0069】
1.0gの吸着剤Aのトルエン吸着容量を測定し、結果を表1に示した。
【0070】
50gの吸着剤Aを、液相パルス実験に供し、その吸着選択性およびPXの吸着速度および脱着速度を測定した。測定した吸着性能を、表1に示した。
【0071】
(実施例5)
以下を除いて、実施例4の方法に基づいて複合層吸着剤を作製した:
ステップ(1)において、78kgの実施例3で作製した高シリカX分子篩bおよび5.87kgのカオリンを均一に混合して、混合物Iを得た。15kgの実施例1で作製した低シリカX分子篩aおよび1.13kgのカオリンを均一に混合して、混合物IIを得た。球体への圧延成形、原位置結晶化、およびイオン交換を経て吸着剤Bを作製した。吸着剤Bの内層は、高シリカX分子篩を含有する内側吸着剤層であり、外層は、低シリカX分子篩を含有する外側吸着剤層であった。X分子篩の含有量は、98.4質量%であり、基質の含有量は、1.6質量%であった。それぞれ1gおよび50gの吸着剤Bをそれぞれ得て、トルエン吸着容量および吸着性能を測定した。結果を表1に示した。
【0072】
(実施例6)
以下を除いて、実施例4の方法に基づいて複合層吸着剤を作製した:
ステップ(1)において、68kgの実施例3で作製した高シリカX分子篩bおよび5.13kgのカオリンを均一に混合して、混合物Iを得た。25kgの実施例1で作製した低シリカX分子篩aおよび1.87kgのカオリンを均一に混合して、混合物IIを得た。球体への圧延成形、原位置結晶化、およびイオン交換を経て、吸着剤Cを作製した。吸着剤Cの内層は、高シリカX分子篩を含有する内側吸着剤層であり、外層は、低シリカX分子篩を含有する外側吸着剤層であった。X分子篩の含有量は、98.5質量%であり、基質の含有量は、1.5質量%であり、1gおよび50gの吸着剤Cをそれぞれ得て、トルエン吸着容量および吸着性能を測定した。結果を表1に示した。
【0073】
(実施例7)
以下を除いて、実施例4の方法に基づいて複合層吸着剤を作製した:
ステップ(1)において、78kgの実施例3で作製した高シリカX分子篩bおよび5.87kgのカオリンを均一に混合して、混合物Iを得た。15kgの実施例2で作製した低シリカX分子篩cおよび1.13kgのカオリンを均一に混合して、混合物IIを得た。球体への圧延成形、原位置結晶化、およびイオン交換を経て、吸着剤Dを作製した。吸着剤Dの内層は、高シリカX分子篩を含有する内側吸着剤層であり、外層は、低シリカX分子篩を含有する外側吸着剤層であった。X分子篩の含有量は、97.9質量%であり、基質の含有量は、2.1質量%であり、1gおよび50gの吸着剤Dをそれぞれ得て、トルエン吸着容量および吸着性能を測定した。結果を表1に示した。
【0074】
(実施例8)
以下を除いて、実施例4の方法に基づいて複合層吸着剤を作製した:
ステップ(1)において、68kgの実施例3で作製した高シリカX分子篩bおよび5.13kgのカオリンを均一に混合して、混合物Iを得た。25kgの実施例2で作製した低シリカX分子篩cおよび1.87kgのカオリンを均一に混合して、混合物IIを得た。球体への圧延成形、原位置結晶化、およびイオン交換を経て、吸着剤Eを作製した。吸着剤Eの内層は、高シリカX分子篩を含有する内側吸着剤層であり、外層は、低シリカX分子篩を含有する外側吸着剤層であった。X分子篩の含有量は、98.0質量%であり、基質の含有量は、2.0質量%であり、1gおよび50gの吸着剤Eをそれぞれ得て、トルエン吸着容量および吸着性能を測定した。結果を表1に示した。
【0075】
(実施例9)
以下を除いて、実施例4の方法に基づいて複合層吸着剤を作製した:
ステップ(1)において、58kgの実施例3で作製した高シリカX分子篩bおよび4.37kgのカオリンを均一に混合して、混合物Iを得た。35kgの実施例2で作製した低シリカX分子篩cおよび2.63kgのカオリンを均一に混合して、混合物IIを得た。球体への圧延成形、原位置結晶化、およびイオン交換を経て、吸着剤Fを作製した。吸着剤Fの内層は、高シリカX分子篩を含有する内側吸着剤層であり、外層は、低シリカX分子篩を含有する外側吸着剤層であった。X分子篩の含有量は、98.2質量%であり、基質の含有量は、1.8質量%であった。1gおよび50gの吸着剤Fをそれぞれ得て、トルエン吸着容量および吸着性能を測定した。結果を表1に示した。
【0076】
(比較例1)
93kgの実施例1で作製した低シリカX分子篩aおよび7kgのカオリンを均一に混合し、回転盤の中に置いて適量な脱イオン水を吹きかけながら圧延し、固体粉末凝集体を小さな球体に形成した。球体へ圧延している間に吹きかけた水の量は、固体粉末の総質量の8質量%であった。ふるい分けをした後、粒径が300~850ミクロンの小さな球体を、80℃で10時間乾燥し、540℃で4時間焼成した。次に、実施例4のステップ(2)および(3)に従って、原位置結晶化およびイオン交換を行い、吸着剤Gを作製した。吸着剤GのX分子篩の含有量は、98.3質量%であり、基質の含有量は、1.7質量%であった。1gおよび50gの吸着剤Gをそれぞれ得て、トルエン吸着容量および吸着性能を測定した。結果を表1に示した。
【0077】
(比較例2)
以下を除いて、比較例1の方法に基づいて吸着剤を作製した:
93kgの実施例2で作製した高シリカX分子篩bおよび7kgのカオリンを均一に混合し、球体への圧延成形、原位置結晶化、およびイオン交換を経て、吸着剤Hを作製した。吸着剤HのX分子篩の含有量は、97.5質量%であり、基質の含有量は、2.5質量%であった。1gおよび50gの吸着剤Hを得て、トルエン吸着容量および吸着性能を測定した。結果を表1に示した。
【0078】
(比較例3)
25kgの実施例1で作製した低シリカX分子篩a、68kgの実施例2で作製した低シリカX分子篩b、および7kgのカオリンを均一に混合し、回転盤の中に置いて適量な脱イオン水を吹きかけながら圧延し、固体粉末凝集体を小さな球体に形成した。球体へ圧延している間に吹きかける水の量は、固体粉末の総質量の8質量%であった。ふるい分けをした後、粒径が300~850ミクロンの小さな球体を、80℃で10時間乾燥させ、540℃で4時間焼成した。次に、実施例4のステップ(2)および(3)にしたがって、原位置結晶化、およびイオン交換を行い、吸着剤Iを作製した。吸着剤IのX分子篩の含有量は、98.5質量%であり、基質の含有量は、1.5質量%であった。1gおよび50gの吸着剤Iを得て、トルエン吸着容量および吸着性能を測定した。結果を表1に示した。
【0079】
(比較例4)
以下を除いて、比較例3の方法に基づいて吸着剤を作製した:
低シリカX分子篩aの代わりに、25kgの実施例2で作製した低シリカX分子篩cを用いて吸着剤Jを作製した。吸着剤JのX分子篩の含有量は、98.0質量%であり、基質の含有量は、2.0質量%であった。1gおよび50gの吸着剤Jを得て、トルエン吸着容量および吸着性能を測定した。結果を表1に示した。
【0080】
(実施例10)
吸着剤Aを用いてp-キシレンを分離する実験は、連続逆流を用いた小規模模擬移動床上で行った。
【0081】
小規模模擬移動床装置は、直列に接続した24本の吸着カラムを含み、各カラムの長さは195mmであり、内径は30mmであった。吸着剤の総充填量は、3300mLであった。直列に接続した24本のカラムの先端および下端を循環ポンプに接続し、図6に示すように、閉回路を形成した。4つの出入流、すなわち、吸着供給原料、脱着剤、抽出液、および抽残液によって、24本の吸着カラムを4つの区域に分けた。すなわち、吸着供給原料(カラム15)と抽残液(カラム21)との間の7本の吸着カラムは、吸着区域を形成し、抽出液(カラム6)と吸着供給原料(カラム14)との間の9本の吸着カラムは、精製区域を形成し、脱着剤(カラム1)と抽出液(カラム5)との間の5本の吸着カラムは、脱着区域を形成し、抽残液(カラム22)と脱着剤(カラム24)との間の3本の吸着カラムは緩衝区域を形成した。吸着システム全体の温度は、145℃に制御され、圧力は、0.8MPaに制御されている。
【0082】
稼働中に、模擬移動床中に、脱着剤であるトルエンおよび供給原料を、それぞれ2118mL/時間および1925mL/時間の流速で連続的に注入し、抽出液および抽残液を、それぞれ1540mL/時間および2503mL/時間の流速で、模擬移動床から抽出した。供給原料の成分は、以下である:
9.3質量%のエチルベンゼン、18.5質量%のp-キシレン、45.5質量%のm-キシレン、17.4質量%のo-キシレン、および9.3質量%の非芳香族炭化水素成分。
【0083】
循環ポンプの流速を4890mL/時間に設定し、4つの流れを、80秒毎に、液体の流れ方向と同じ方向に、1本の吸着カラムずつ一斉に移動させた(図6では、実線から点線、その他は、これに応じて類推され得る)。安定した稼働状態では、吸着剤Aを用いて得られたp-キシレンの純度は、99.80質量%であり、収率は98.53質量%であった。
【0084】
(実施例11)
小規模模擬移動床装置に吸着剤Bを充填し、実施例10の方法に従って、p-キシレンの吸着分離実験を行った。安定した稼働状態では、得られたp-キシレンの純度は、99.80質量%であり、収率は、98.95質量%であった。
【0085】
(比較例5)
小規模模擬移動床装置に比較吸着剤Gを充填し、実施例10の方法に従って、p-キシレンの吸着分離実験を行った。安定した稼働状態では、得られたp-キシレンの純度は、98.71質量%であり、収率は97.55質量%であった。
【0086】
(比較例6)
小規模模擬移動床装置に比較吸着剤Hを充填し、実施例10の方法に従って、p-キシレンの吸着分離実験を行った。安定した稼働状態では、得られたp-キシレンの純度は、98.86質量%であり、収率は97.43質量%であった。
【0087】
(比較例7)
小規模模擬移動床装置に比較吸着剤Iを充填し、実施例10の方法に従って、p-キシレンの吸着分離実験を行った。安定した稼働状態では、得られたp-キシレンの純度は、99.26質量%であり、収率は98.05質量%であった。
【0088】
(比較例8)
小規模模擬移動床装置に比較吸着剤Jを充填し、実施例10の方法に従って、p-キシレンの吸着分離実験を行った。安定した稼働状態では、得られたp-キシレンの純度は、99.10質量%であり、収率は98.01質量%であった。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】実施例1により作製した低シリカX分子篩のX線回折(XRD)パターンである。
図2】実施例1により作製した低シリカX分子篩の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図3】実施例2により作製した低シリカX分子篩のSEM画像である。
図4】実施例3より作製した高シリカX分子篩のXRDパターンである。
図5】実施例3により作製した高シリカX分子篩のSEM画像である。
図6】小規模の模擬移動床における吸着分離の模式図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6